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▶ 井関農機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039044
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20240313BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240313BHJP
   A01D 43/063 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B60K1/00
B60K1/04 Z
A01D43/063
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220651
(22)【出願日】2023-12-27
(62)【分割の表示】P 2021154598の分割
【原出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】増田 龍太郎
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電装品に対する振動の影響等を抑制して電装品の破損を防止できる電動作業車両を提供する。
【解決手段】走行車体の前部に左右一対の前輪2を設け、該走行車体の後部に左右一対の後輪3を設け、前記走行車体に作業機4を装着した作業車両において、前記走行車体の前側に所定の空間が形成されたボンネット部を設け、該ボンネット部の後側に操縦者が搭乗する操縦部を設け、前記後輪3を駆動する電動機30を、前記操縦部の操縦席60の下方後側に設け、前記電動機30に供給する電力を蓄電するバッテリ50を、前記ボンネット部に設け、前記操縦席60の下方に、前記バッテリ50の直流電圧を交流電圧に変換するインバータ装置80を設け、前記インバータ装置80の筐体を弾性材料で形成された防振部材を介して、前記走行車体に連結したことを特徴とする作業車両。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)の前部に左右一対の前輪(2)を設け、該走行車体(1)の後部に左右一対の後輪(3)を設け、前記走行車体(1)に作業機(4)を装着した作業車両において、
前記走行車体(1)の前側に所定の空間が形成されたボンネット部(5)を設け、該ボンネット部(5)の後側に操縦者が搭乗する操縦部(6)を設け、
前記後輪(3)を駆動する電動機(30)を、前記操縦部(6)の操縦席(60)の下方後側に設け、
前記電動機(30)に供給する電力を蓄電するバッテリ(50)を、前記ボンネット部(5)に設け、
前記操縦席(60)の下方に、前記バッテリ(50)の直流電圧を交流電圧に変換するインバータ装置(80)を設け、
前記インバータ装置(80)の筐体(80A)を弾性材料で形成された防振部材(86)を介して、前記走行車体(1)に連結したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
芝等の雑草を刈取る前記作業機(4)で刈取られた草を集草容器(7)に搬送するシュータ(46)を備え、前記筐体(80A)の下壁の後側後部を、前記シュータ(46)の上壁と平行な後上がり傾斜に形成し、前記筐体(80A)の下壁と前記シュータ46の上壁の間の空間部にハーネス(89)を配策した請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
前記ハーネス(89)は前記インバータ装置(80)の後側に設けられるバッテリ監視装置(81)とバッテリ(50)とを接続する請求項2記載の作業車両。
【請求項4】
前記インバータ装置(80)の側方に前記バッテリ(50)とは別体の補助バッテリ(82)を設けた請求項3記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公園等を走行させて園内に植立する芝等の刈取りを行う作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車両の後輪を駆動する後輪用電動機の間に作業機を駆動する作業機用電動機を設け、作業車両のボンネット部にこれらの電動機に電力を供給するバッテリを設ける手段が知られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-218951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1には、電動の作業車両インバータ装置等の電装部品が必要であるが、適切に設置しないと走行や作業による振動の影響を受けて正常な動作を阻害する恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明は、電動の作業車両において電装品に対する振動の影響等を抑制して電装品の破損を防止できる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
【0007】
すなわち、請求項1記載の発明は、走行車体(1)の前部に左右一対の前輪(2)を設け、該走行車体(1)の後部に左右一対の後輪(3)を設け、前記走行車体(1)に作業機(4)を装着した作業車両において、前記走行車体(1)の前側に所定の空間が形成されたボンネット部(5)を設け、該ボンネット部(5)の後側に操縦者が搭乗する操縦部(6)を設け、前記後輪(3)を駆動する電動機(30)を、前記操縦部(6)の操縦席(60)の下方後側に設け、前記電動機(30)に供給する電力を蓄電するバッテリ(50)を、前記ボンネット部(5)に設け、前記操縦席(60)の下方に、前記バッテリ(50)の直流電圧を交流電圧に変換するインバータ装置(80)を設け、前記インバータ装置(80)の筐体(80A)を弾性材料で形成された防振部材(86)を介して、前記走行車体(1)に連結したことを特徴とする作業車両である。
【0008】
請求項2記載の発明は、芝等の雑草を刈取る前記作業機(4)で刈取られた草を集草容器(7)に搬送するシュータ(46)を備え、前記筐体(80A)の下壁の後側後部を、前記シュータ(46)の上壁と平行な後上がり傾斜に形成し、前記筐体(80A)の下壁と前記シュータ46の上壁の間の空間部にハーネス(89)を配策した請求項1記載の作業車両である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記ハーネス(89)は前記インバータ装置(80)の後側に設けられるバッテリ監視装置(81)とバッテリ(50)とを接続する請求項2記載の作業車両である。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記インバータ装置(80)の側方に前記バッテリ(50)とは別体の補助バッテリ(82)を設けた請求項3記載の作業車両である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により電装品に対する振動の影響等を抑制して破損を防止できる
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】作業車両の左側面図である。
図2】ボンネットカバーを開放姿勢にした作業車両の左側面図である。
図3】作業車両の一部を破断した要部の斜視図である。
図4】作業車両の背面図である。
図5】後輪と作業機の要部の平面図である。
図6】後輪と作業機の要部の左側面図である。
図7】後輪用の電動機と作業機用の電動機の左側面図である。
図8】走行車体の斜視図である。
図9】ステアリングポストの斜視図である。
図10】バッテリとバッテリブラケットの斜視図である。
図11】バッテリブラケットの斜視図である。
図12】前輪と、バッテリと、バッテリブラケットの正面図である。
図13】バッテリの保護フレームの斜視図である。
図14】保護フレームと安全フレームで形成される保護空間の説明図である。
図15】作業車両の一部を破断した要部の平面図である。
図16】電装部品の斜視図である。
図17】操縦席の下方に設けられた電装部品の斜視図である。
図18】インバータ装置の筐体の前方斜視図である。
図19】インバータ装置の筐体の後方斜視図である。
図20】インバータ装置の筐体の上筐体の下方に作業機を昇降させる付勢手段を設けた説明図である。
図21】インバータ装置の筐体の左側面図である。
図22】作業機のシュータとインバータ装置の筐体の間にハーネスを配策した説明図である。
図23】インバータ装置の筐体の底面図である。
図24】バッテリ監視装置の筐体の斜視図である。
図25】操縦部の前進用アクセルペダルと後進用アクセルペダルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、乗用芝刈り機等の作業車両は、走行車体1と、走行車体1の前部に左右一対の前輪2が設けられ、走行車体1の後部に左右一対の後輪3が設けられ、走行車体1の下側における前輪2と後輪3の間に芝等を刈取る作業機4が設けられている。また、走行車体1の上側の前部にボンネット部5が設けられ、ボンネット部5の後側には操縦者が搭乗する操縦部6が設けられ、操縦部6の後側には操縦者を保護する安全フレーム(ロプス)8が設けられ、安全フレーム8の下部には作業機4で刈取られた芝等を貯留する集草容器7が設けられている。
【0014】
図2,3に示すように、ボンネット部5には、後輪3を駆動する電動機30等に供給する電力を蓄電するバッテリ50が設けられ、バッテリ50はボンネットカバー51で覆われている。なお、ボンネットカバー51は、走行車体1の前部に設けられた左右方向に延在する支軸(図示省略)に支持されている。これにより、ボンネット部5に形成される空間を有効に活用することができ、また、作業車両の前後方向の重量バランスの相違を抑制することができる。
【0015】
操縦部6の操縦席60の下側には、電装部品61が設けられている。これにより、操縦席60の下側に形成される空間を有効に活用することができる。
【0016】
安全フレーム8は、上下方向に延在する左支柱部8Lと、上下方向に延在する右支柱部8Rと、左支柱部8Lと右支柱部8Rの上部を連結する逆U字形状の連結部8Aから形成されている。
【0017】
図4~7に示すように、電装部品61の下側には後輪3を駆動する3相交流電圧波形で操作される同期電動機や誘導電動機等の電動機30が設けられている。電動機30の左右方向に延在して形成された出力軸30Aは、出力軸30Aから伝動される出力回転を減速して出力トルクを大きくしたり回転方向を逆さにするギアボックス31の上部に連結されている。なお、電動機30は左右方向の中央よりも左側に偏移した位置に設けられている。
【0018】
ギアボックス31で増減速された出力回転は、ギアボックス31の下部に設けられ差動歯車等で形成されたディファレンシャルギア32を介して左右方向に延在するドライブシャフト33に伝動される。ドライブシャフト33に伝動された出力回転は、ドライブシャフト33の両端部に支持された後輪3に伝動される。
【0019】
電動機30の下側には作業機4を駆動する3相交流電圧波形で操作される同期電動機や誘導電動機等の電動機40が設けられている。電動機40の前後方向に延在して形成された出力軸40Aは、前後方向に延在して設けられた自在継手41の後部に連結されている。また、出力軸40Aは、ドライブシャフト33の上側に、ドライブシャフト33と直交して設けられている。これにより、電動機30の下側に形成された空間を有効に活用することができる。また、電動機40と作業機4の間の伝動経路を短くすることができるので電動機40の出力回転を作業機4に効率良く伝動することができる。なお、電動機40は左右方向の中央よりも左側に偏移した位置に設けられている。
【0020】
自在継手41の前部は、自在継手41から伝動される出力回転を減速して出力トルクを大きくするギアボックス42に連結されている。ギアボックス42に伝動された出力回転は、ギアボックス42の上下方向に延在して形成された出力軸を介して作業機4の左排出通路45Lに設けられた左刈刃(図示省略)に伝動される。
【0021】
ギアボックス42の左部には、左右方向に延在する連結部材43が連結され、連結部材43の右部はギアボックス44に連結されている。ギアボックス44に伝動された出力回転は、ギアボックス44の上下方向に延在して形成された出力軸を介して作業機4の右排出通路45Rに設けられた右刈刃(図示省略)に伝動される。なお、ギアボックス42の出力軸とギアボックス44の出力軸の出力回転の回転速度は同一速度であり、回転方向は逆方向、すなわち、平面視において、ギアボックス42出力軸は時計方向に回転し、ギアボックス44の出力軸は反時計方向に回転する。
【0022】
左排出通路45Lと右排出通路45Rの搬出口は、刈取られた芝等を集草容器7に搬送するシュータ46の搬入口に連結されている。シュータ46の搬出口は集草容器7の搬入口に連結されている。
【0023】
平面視において、シュータ46の前部は自在継手41の右側に設けられ、シュータ46の後部はギアボックス31の右側に設けられ、背面視において、シュータ46と集草容器7は、ギアボックス31と右側の後輪3の間に設けられている。これにより、自在継手41とギアボックス31の右側に形成される空間に大きなシュータ46を設けることができ、作業機4で刈取った芝等を効率良く集草容器7に搬送することができる。
【0024】
側面視において、シュータ46の上壁は後上がり傾斜に形成され、シュータ46の後部は電装部品61の下側を下方に向かって延在して設けられている。これにより、シュータ46の後部を大きくしてシュータ46の内部での芝等の詰まりを防止することができる。
【0025】
図8,9に示すように、走行車体1は、前輪2と後輪3を支持する走行車体本体10と、ステアリングシャフト63を支持するステアリングポスト11から形成されている。
【0026】
走行車体本体10には、前後方向に延在する左前後フレーム10Lと右前後フレーム10Rが形成され、ステアリングポスト11の下部には、前方に延出する左連結部11Lと右連結部11Rが形成されている。
【0027】
左前後フレーム10Lに左連結部11Lがボルト等の締結手段によって固定され、右前後フレーム10Rに右連結部11Rボルト等の締結手段によって固定されて一体となり走行車体1を形成している。
【0028】
左前後フレーム10Lの前部には左支持部材12Lが設けられ、左支持部材12Lの連結部は左上がり傾斜に形成されている。また、右前後フレーム10Rの前部には右支持部材12Rが設けられ、右支持部材12Rの連結部は右上がり傾斜に形成されている。なお、左支持部材12Lと右支持部材12Rはチャンネル鋼材で形成されている。
【0029】
左連結部11Lの前部には左支持部材13Lが設けられ、左支持部材13Lの連結部は左上がり傾斜に形成されている。また、右連結部11Rの前部には右支持部材13Rが設けられ、右支持部材12Rの連結部は右上がり傾斜に形成されている。なお、左支持部材13Lと右支持部材13Rはチャンネル鋼材で形成されている。
【0030】
ステアリングポスト11の下部には、左右方向に所定の間隔を隔てて前側に突出すると突出部14が形成され、突出部14の先端にはゴム部材等から形成された緩衝部材15が設けられている。
【0031】
左前後フレーム10Lの後部には上方に延在する左上下フレーム20Lが設けられ、右前後フレーム10Rの後部には上方に延在する右上下フレーム20Rが設けられ、左上下フレーム20Lと右上下フレーム20Rの上部は左右方向に延在する左右フレーム21に連結されている。
【0032】
左右フレーム21の左部には安全フレーム8の左支柱部8Lの下部が連結される左連結部22Lが設けられ、左右フレーム21の右部には安全フレーム8の右支柱部8Rの下部が連結される右連結部22Rが設けられている。
【0033】
図10に示すように、ボンネット部5内に設けられるバッテリ50の下部は、バッテリブラケット52の内周部に内嵌されている。バッテリ50は、複数のエネルギ密度が高いリチウムイオンバッテリを直列と並列に接続して形成されている。これにより、ボンネット部5に形成された空間を有活用できる。また、リチウムイオンバッテリはエネルギ密度が高いので、一回のフル充電によって作業車両を長距離走行させることができる。
【0034】
図11に示すように、バッテリブラケット52は、前後方向に延在する左前後フレーム52L及び右前後フレーム52Rと、左前後フレーム52Lと右前後フレーム52Rの前部を連結する前左右フレーム52Aと、左前後フレーム52Lと右前後フレーム52Rの後部を連結する後左右フレーム52Bで形成されている。なお、左前後フレーム52L及と右前後フレーム52Rはアングル鋼材で形成され、前左右フレーム52Aと後左右フレーム52Bはチャンネル鋼材で形成されている。
【0035】
左前後フレーム52Lの連結部は左上がり傾斜に形成され、右前後フレーム52Rの連結部は左上がり傾斜に形成されている。なお、背面視において、左支持部材13Lの連結部、左支持部材12Lの連結部、及び左前後フレーム52Lの連結部の左上がり傾斜は同一傾斜角度に形成され、右支持部材12Rの連結部、右支持部材12Rの連結部、及び右前後フレーム52Rの連結部の右上がり傾斜は同一傾斜角度に形成されている。
【0036】
左前後フレーム52Lの連結部の下面には、前後方向に所定の間隔を隔てて丸形の左防振部材53Lが設けられ、右前後フレーム52Rの連結部の下面には、前後方向に所定の間隔を隔てて丸形の右防振部材53Rが設けられている。
【0037】
左前後フレーム52Lは、左防振部材53Lを介して左前後フレーム10Lの左支持部材12Lと左連結部11Lの左支持部材13Lに連結され、右前後フレーム52Rは、右防振部材53Rを介して右前後フレーム10Rの右支持部材12Rと右連結部11Rの右支持部材13Rに連結される。これにより、作業車両の走行時に発生する走行車体本体10の振動がバッテリ50に伝わるのを抑制して、バッテリ50の破損等を防止することができる。
【0038】
図12に示すように、左前後フレーム52Lの連結部は、左防振部材53Lの中心と左側の左前輪2Lの中心を結ぶ左仮想線55Lに対して直交して設けられている。また、右前後フレーム52Rの連結部は、右防振部材53Rの中心と右側の右前輪2Rの中心を結ぶ右仮想線55Rに対して直交して設けられている。これにより、前輪2と後輪3を介して走行面の凹凸に起因する大きな振動を抑制して、バッテリ50の破損等を防止することができる。なお、符号57は左右の前輪2を支持する前輪支持フレームを示し、符号56は前輪支持フレームと走行車体本体10との連結部であり、前輪支持フレームの揺動軸を示している。
【0039】
また、バッテリブラケット52の後左右フレーム52Bの後面には、ステアリングポスト11の緩衝部材15の先端部が押当てられている。これにより、作業車両の発進時にバッテリ50の後方への移動を抑制して、バッテリ50の破損等を防止することができる。
【0040】
図13,14に示すように、バッテリ50の前後方向の中間部には、バッテリ50の外周部に沿って延在する保護フレーム58を設けられている。これにより、作業車両の転倒時にバッテリ50が破損するのを抑制することができる。
【0041】
保護フレーム58は、左前後フレーム10Lから上方に延在する左支柱部58Lと、右前後フレーム10Rから上方に延在する右支柱部58Rと、左支柱部58Lと右支柱部58Rの上部を連結する逆U字形状の連結部58Aから形成されている。
【0042】
側面視において、保護フレーム58の連結部58Aの基部と安全フレーム8の連結部8Aの頂部を結ぶ仮想線59がステアリングホイール62よりも上側に位置するように形成されている。これにより、仮想線59の下側に大きな保護空間を形成して、作業車両の走行時に操縦者が外部の木の枝等に衝突するのを抑制して作業安全性を高めることができる。
【0043】
図2,3に示すように、操縦部6の操縦席60の前側にはステアリングホイール62が設けられ、ステアリングホイール62は上下方向に延在するステアリングシャフト63の上部に支持されている。
【0044】
操縦席60の左側の左フェンダ64Lには、シュータ46の内部に残った刈草を後側の集草容器7へ搬送等を操作するクリーナレバー65が設けられ、操縦席60の右側のフェンダ64Rには、作業機4の昇降層を操作する操作レバー66が設けられている。また、操縦時に操縦者が足を載せるフロア67の左前部には、ブレーキペダル68が設けられ、右前部には、前進用アクセルペダル70と後進用アクセルペダル71が並設されている。
【0045】
図15~17に示すように、作業機4のシュータ46と操縦席60の間に形成された空間に設けられた電装部品61は、バッテリ50から供給される直流電圧を交流電圧に変換して電動機30等を操作する3相交流電圧波形を生成するインバータ装置80と、バッテリ50の温度、充電状態、電圧保護、各セル短絡状態を監視するバッテリ監視装置81と、操縦席60の前側に設けられた走行速度等を表示するメータパネル(図示省略)に供給する電池を蓄電する鉛蓄電池等の補助バッテリ82と、バッテリ50から供給される直流電圧をクリーナレバー65等の操作位置を検出するセンサに供給する直流電圧に変更するコンバータ装置83から形成されている。
【0046】
インバータ装置80は、電動機30を操作するインバータ装置84と電動機40を操作するインバータ装置85から形成されている。また、インバータ装置84には、回生ブレーキの作動時、すなわち、すなわち、前進用アクセルペダル75又は後進用アクセルペダル76が解放されて走行車体1の慣性力よって出力軸30Aが回転して電動機30が発電機として作動する場合には、電動機30からインバータ装置80に供給された電力をバッテリ50に充電する充電装置としての機能も兼ね備えている。
【0047】
平面視において、操縦席60の下側の前部にインバータ装置80が設けられ、インバータ装置80の後側にバッテリ監視装置81が設けられている。また、インバータ装置80の左側に補助バッテリ82が設けられ、バッテリ監視装置81の左側で補助バッテリ82の後側にコンバータ装置83が設けられている。これにより、操縦席60の下側に形成された空間を有効に活用することができる。また、重量が重いバッテリ監視装置81を後側に設けることにより、走行車体本体10の前部と後部に加わる重量の相違を抑制して走行安定性能を高めることができる。
【0048】
図18,19に示すように、インバータ装置80の筐体80Aは、下部が開口された箱状の上筐体90と箱状の下筐体91から形成され、上筐体90の前後壁を下筐体91の前後壁にボルト等の締結部材で固定して一体化している。なお、上筐体90内には、インバータ装置84とインバータ装置85が設けられ、下筐体91内には、ハーネスを接続するジャンクションと充電用リレー等が設けられている。
【0049】
左右方向において、上筐体90と下筐体91の左壁は同一に位置に形成され、上筐体90の右壁は下筐体91の右壁よりも右側に延出して形成されている。これにより、上筐体90の右部の下側で下筐体91の右部の右側に空間を形成して、図20に示すように、作業機4の右部に設けられた作業機4を引上げるスプリング等の付勢手段47を設けることができる。
【0050】
上筐体90の後壁の右上部には、インバータ装置84と電動機30を接続するハーネスやインバータ装置85と電動機40を接続するハーネスを挿通させる開口部90Aが形成されている。また、下筐体91の後壁の左下部には、バッテリ監視装置81と充電用リレー等を接続するハーネスを挿通させる開口部91Aが形成されている。
【0051】
図21に示すように、上筐体90の前壁は、上壁の前端部から前下がり傾斜した後に、下方に延在して形成されている。これにより、操縦席60に着席した操縦者の脚が上筐体90の前壁と接触するのを防止することができる。
【0052】
下筐体91の下壁は、前壁の下端部から後方に延在した後に、作業機4のシュータ46の上壁と平行に後上がり傾斜に形成されている。これにより、図22に示すように、バッテリ50とバッテリ監視装置81を接続するハーネス89における下筐体91の後下部に対向する部位が過度に屈曲されるのを防止してハーネス89の破断等を防止することができる。
【0053】
下筐体91の下壁の隅部には、丸形のグロメット(請求項の「防振部材」)86が設けられている。また、下筐体91は、グロメット86を介して走行車体本体10の後部に設けられた左右方向に延在する左右フレーム16の両側に設けられた前後方向に延在する支持部材16Aに連結されている。これにより、作業車両の走行時に発生する走行車体本体10の振動がインバータ装置84等に伝わるのを抑制して、インバータ装置84等の破損等を防止することができる。また、図22に示すように、下筐体91の下壁と作業機4のシュータ46の上壁の間に所定の空間を形成して、バッテリ50とバッテリ監視装置81を接続するハーネス89をこの空間を利用して容易に配策することができる。
【0054】
図23に示すように、下筐体91の下壁の右部に設けられた前後一対の右グロメット86Rは、下筐体91の下壁の左部に設けられた前後一対の左グロメット86Lよりも後側に設けられている。これにより、右グロメット86Rを挿通して支持部材16Aの下方に延出する固定ピン88が作業機4のシュータ46の上壁に接触するのを防止することができる。
【0055】
前側の左グロメット86Lに挿通される固定ピン88は、後側の左グロメット86Lに挿通される固定ピン88よりも細く形成され、後側の右グロメット86Rに挿通される固定ピン88は、前側の左グロメット86Lに挿通される固定ピン88よりも細く形成されている。これにより、下筐体91を固定ピン88を介して左右一対の支持部材16Aに容易に装着することができる。
【0056】
図24に示すように、バッテリ監視装置81の筐体81Aの下壁には、前後方向と左右方向に所定の間隔を隔てて丸形のグロメット87が設けられている。また、筐体81Aは、グロメット87を介して左右フレーム16の後側に設けられた左右フレーム17に連結された支持フレーム18に連結されている。これにより、作業車両の走行時に発生する走行車体本体10の振動がバッテリ監視装置81に伝わるのを抑制して、バッテリ監視装置81の破損等を防止することができる。また、グロメット87に形成された中空部にバッテリ監視装置81とバッテリ50を接続する電線等を挿通させて電線等の配策を容易に行うことができる。
【0057】
図25に示すように、前進用アクセルペダル70の基部は、フロア67の右前部に立設する支持部材72の後部に設けられた左右方向に延在する支軸に回転自在に支持され、後進用アクセルペダル71の基部は、支持部材72の前後方向の中間部に設けられた左右方向に延在する支軸に回転自在に支持されている。また、前進用アクセルペダル70の踏込み量に相当する前進用アクセルペダル70の回転角度と後進用アクセルペダル71の踏込み量に相当する後進用アクセルペダル71の回転角度は、支持部材72の前部に設けられたポテンションメート等の角度センサ73によって測定される。
【0058】
角度センサ73で測定された回転角度はインバータ装置80に送信される。これにより、インバータ装置80では、送信されてきた回転角度に応じて3相交流電圧波形の周波数と振幅の増減が行われて電動機30の出力軸30Aの出力回転の増減速を行うことができる。
【符号の説明】
【0059】
1 走行車体
2 前輪
3 後輪
4 作業機
5 ボンネット部
6 操縦部
8 安全フレーム
8A 連結部(第1連結部)
16 左右フレーム
16A 支持部材
30 電動機(第1電動機)
40 電動機(第2電動機)
46 シュータ
50 バッテリ
58 保護フレーム
58A 連結部(第2連結部)
59 仮想線
60 操縦席
62 ステアリングホイール
80 インバータ装置
80A 筐体
81 バッテリ監視装置
86 グロメット(防振部材)
86L 左グロメット(左防振部材)
86R 右グロメット(右防振部材)
90 上筐体
91 下筐体
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