(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039046
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】缶の製造方法及び製造システム
(51)【国際特許分類】
B21D 22/26 20060101AFI20240313BHJP
B21D 51/26 20060101ALI20240313BHJP
B21D 22/02 20060101ALI20240313BHJP
B21D 22/28 20060101ALI20240313BHJP
B30B 13/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B21D22/26 C
B21D51/26 F
B21D22/02 A
B21D22/28 L
B30B13/00 A
B30B13/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220885
(22)【出願日】2023-12-27
(62)【分割の表示】P 2022120500の分割
【原出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大堀 圭
(72)【発明者】
【氏名】長船 達矢
(72)【発明者】
【氏名】中川 高則
(57)【要約】
【課題】本発明は、安価かつ短納期で供給できる缶製造方法及び製造システムを提供することを課題とする。
【解決手段】プレス機の深絞り加工による缶の製造方法において、前工程プレス機、後工程プレス機及び前記前工程プレス機から前記後工程プレス機へブランクを搬送する搬送手段を備え、前記前工程プレス機で金属板に対してブランク加工及びブランクの板厚を減少させるコイニング加工を行う第1プレス工程と、前記前工程プレス機から前記後工程プレス機へブランクを搬送する搬送工程と、後工程プレス機で絞り加工及び/又は絞りしごき加工を行い角型缶の成形を行う第2プレス工程とを含むことを特徴とする缶の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機の深絞り加工による缶の製造方法において、
前工程プレス機、後工程プレス機及び前記前工程プレス機から前記後工程プレス機へブランクを搬送する搬送手段を備え、
前記前工程プレス機で金属板に対してブランク加工及びブランクの板厚を減少させるコイニング加工を行う第1プレス工程と、
前記前工程プレス機から前記後工程プレス機へブランクを搬送する搬送工程と、
前記後工程プレス機で絞り加工及び/又は絞りしごき加工を行い角型缶の成形を行う第2プレス工程とを含むことを特徴とする缶の製造方法。
【請求項2】
前記前工程プレス機のストロークは前記後工程プレス機のストロークよりも短いことを特徴とする請求項1に記載の缶の製造方法。
【請求項3】
前記前工程プレス機の加圧能力は前記後工程プレス機の加圧能力よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の缶の製造方法。
【請求項4】
前記前工程プレス機は前記ブランク加工により形成された前記ブランクを搬送するフィンガーを備え、
前記第1プレス工程では、前記ブランク加工を前記コイニング加工より先に行い、前記ブランク加工により形成された前記ブランクを前記前工程プレス機内でフィンガー搬送する工程を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の缶の製造方法。
【請求項5】
前記後工程プレス機は前記ブランクを絞り加工及び/又は絞りしごき加工した成形品を搬送するフィンガーを備え、
前記フィンガーは樹脂材、またはゴム材で構成された接触部を備え、前記接触部により前記成形品を把持して搬送することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の缶の製造方法。
【請求項6】
前記缶はアルミ缶であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の缶の製造方法。
【請求項7】
プレス機の深絞り加工による缶の製造システムにおいて、
前工程プレス機、後工程プレス機及び前記前工程プレス機から前記後工程プレス機へブランクを搬送する搬送手段を備え、
前記前工程プレス機は金属板に対してブランク加工及びブランクの板厚を減少させるコイニング加工を行うよう構成されており、
前記後工程プレス機は絞り加工及び/又は絞りしごき加工を行い角型缶を成形するよう構成されたことを特徴とする缶の製造システム。
【請求項8】
前記前工程プレス機のストロークは前記後工程プレス機のストロークよりも短いことを特徴とする請求項7に記載の缶の製造システム。
【請求項9】
前記前工程プレス機の加圧能力は前記後工程プレス機の加圧能力よりも高いことを特徴とする請求項7に記載の缶の製造システム。
【請求項10】
前記前工程プレス機は、前記ブランク加工を前記コイニング加工より先に行うよう構成され、前記ブランク加工により形成された前記ブランクを前記前工程プレス機内で搬送するフィンガーを有することを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載の缶の製造システム。
【請求項11】
前記後工程プレス機は前記ブランクを絞り加工及び/又は絞りしごき加工した成形品を搬送するフィンガーを備え、
前記フィンガーの前記成形品との接触部は樹脂材、またはゴム材で構成されていることを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載の缶の製造システム。
【請求項12】
前記缶はアルミ缶であることを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載の缶の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶を深絞り加工により製造する方法及び缶を深絞り加工するための製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、缶の深絞り加工では、板金からブランクを打ち抜くブランク加工、有底の筒状カップを形成する絞り加工等の複数の加工を1台のプレス機を使用して行うことが普通である(特許文献1、2参照)。
そして、その1台のプレス機は、製品の種類やサイズに対応した専用の1台のプレス機を使用することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-23942号公報
【特許文献2】特開2003-275833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレス機として、缶の種類やサイズ等に応じた複数種類の機種がラインアップされており、これらの機種を元に缶製造メーカーの工法等に合わせて、専用のプレス機を設計製造するが、必ずしも、缶製造メーカーの工法等に合わせて仕様を細かく設定できるとは限らないので、オーバースペックとなることがあった。さらに、専用のプレス機であるから、他の製品の製造への転用も難しく、缶製造において、高コスト化の要因となっていた。
また、専用のプレス機を設計製造するには、かなりの期間を要するので、納期が長くなるという欠点もあった。
【0005】
そこで、本発明は、安価かつ短納期で供給できる缶製造方法及び製造システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の、プレス機の深絞り加工による缶の製造方法は、
前工程プレス機、後工程プレス機及び前記前工程プレス機から前記後工程プレス機へブランクを搬送する搬送手段を備え、前記前工程プレス機で金属板に対してブランク加工及びブランクの板厚を減少させるコイニング加工を行う第1プレス工程と、前記前工程プレス機から前記後工程プレス機へブランクを搬送する搬送工程と、前記後工程プレス機で絞り加工及び/又は絞りしごき加工を行い角型缶の成形を行う第2プレス工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の、プレス機の深絞り加工による缶の製造システムは、
前工程プレス機、後工程プレス機及び前記前工程プレス機から前記後工程プレス機へブランクを搬送する搬送手段を備え、前記前工程プレス機は金属板に対してブランク加工及びブランクの板厚を減少させるコイニング加工を行うよう構成されており、前記後工程プレス機は絞り加工及び/又は絞りしごき加工を行い角型缶を成形するよう構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上述した構成により、加工する製品やサイズ、その加工工程に最適な製造システムを構築することができ、さらに、安価で提供できるとともに、短い期間で設計製造することができる。
また、汎用プレス機を使用することにより、加工する製品の種類やサイズの変更があった時でも、比較的容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のセルケースの成形工程を示した図である。
【
図2】本実施形態の製造システム1の側面説明図である。
【
図3】本実施形態の製造システム1の上面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0011】
[実施形態]
以下、本発明の、プレス機の深絞り加工による缶、例えば、リチウムイオン電池などの電池のセルケースのような角型缶の製造方法及び該製造方法に使用する製造システムの実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)は、開口部が長方形状のリチウムイオン電池のセルケースを製造する製造方法及び製造システムである。
【0012】
[製造工程]
図1は、本実施形態のセルケースの成形工程を示した図である。
本実施形態でのセルケースの製造工程を、
図1を参照して、説明する。
(1)アンコイラーは、コイル状に巻かれたアルミニウムシートSを巻き出す装置であり、巻き出したアルミニウムシートSを前工程プレス機2に供給する。
(2)前工程プレス機2では、第1プレス工程を行う。第1プレス工程は、ブランク加工工程、コイニング加工工程の順にブランク加工を行う工程である。
(3)ブランク加工工程は、アンコイラーから巻き出されたアルミニウムシートSから、深絞り加工により缶を製造するための楕円形状や複合R形状などの扁平形状のブランクBを打ち抜く工程である。ブランク加工工程後、ブランクBを次のコイニング加工工程にフィンガー搬送する工程を有する。
(4)コイニング加工工程は、ブランクBの一部分をパンチにより押しつぶして板厚を薄くする工程であり、本実施形態では、缶の最終形状において缶底となる部分及び/又はその近傍にコイニング加工を施して、板厚を薄くする工程である。コイニング加工工程後、ブランクBをブランク搬送装置4にフィンガー搬送する工程を有する。
(5)前工程プレス機2でブランク加工とコイニング加工を行い、続いて、後工程プレス機3で加工するために、ブランク搬送装置4で、ブランクBを後工程プレス機3に搬送する搬送工程を有する。
(6)後工程プレス機3では、第2プレス工程を行う。第2プレス工程は、複数工程の成形加工により、ブランクBを最終的なカップ形状に加工していく工程である。
(7)複数工程の成形加工工程は、楕円形状や複合R形状などの扁平形状のカップCに絞り加工する1st成形加工、カップCを最終製品の長辺・短辺寸法に絞り加工する最終成形加工工程を有する。各加工工程後には、カップCを次の加工工程、カップ搬送装置5にフィンガー搬送する工程を有する。
なお、1st成形加工工程と最終成形加工工程の間に、必要な成形加工工程を追加してもよい。また、各成形加工工程では絞り加工または絞りしごき加工を適宜選択できる。
(8)後工程プレス機3で、他の成形加工工程を行い、続いて、プレス加工後工程へ、カップ搬送装置5で、カップC(角型缶)を搬送する搬送工程を有する。
(9)プレス加工後工程では、必要に応じて、角型缶に付着した潤滑油や異物を除去する洗浄工程や、完成した角型缶をカメラ等を用いて外観検査を行い、検査に合格した良品を梱包する検査・梱包工程を有する。
【0013】
上記工程のうち、ブランク加工工程、コイニング加工工程、各成形加工工程がプレス機で行われる工程である。
プレス機で行う工程のうち、ブランク加工工程及びコイニング加工工程で使用するプレス機は、ストロークは短いものでよいが、高い加圧能力が必要であるのに対して、絞り加工又は絞りしごき加工を行う各成形加工工程で使用するプレス機は、長いストロークを必要とするが、加圧能力は低いものでよい。
【0014】
そこで、ブランク加工工程及びコイニング加工工程を同じプレス機で行うこととして、短ストロークで、高い加圧能力を有する汎用プレス機から選択して、前工程プレス機2とし、各成形加工工程を同じプレス機で行うこととして、長ストロークで、低い加圧能力を有する汎用プレス機から選択して、後工程プレス機3とする。
これら前工程プレス機2と後工程プレス機3を、ブランク搬送装置4を介して接続し、さらに、後工程プレス機3からカップCを搬出するカップ搬送装置5を組み合わせて、
図2及び
図3に示すように一連の製造システム1として配置する。
【0015】
[製造システム]
図2は本実施形態の製造システム1の側面説明図、
図3は上面説明図である。
本実施形態の前工程プレス機2、後工程プレス機3、ブランク搬送装置4及びカップ搬送装置5を有する製造システム1を、
図2及び
図3を用いて説明する。
【0016】
前工程プレス機2、後工程プレス機3は、いわゆる、汎用プレス機であるが、前工程プレス機は2つの加工ステージを有する汎用プレス機から選択し、後工程プレス機は複数の加工ステージを有する汎用プレス機から選択する。
【0017】
前工程プレス機2は、前工程加工ステージ21として、ブランク加工ステージ21a、コイニング加工ステージ21bを一列に並べて備えている。
前工程加工ステージ21はパンチ221とダイ231を有し、ブランク加工ステージ21a、コイニング加工ステージ21bは、それぞれ、互いに対向するパンチ221とダイ231を備えている。2つのパンチ221は、スライド22の設けられたパンチホルダに保持されて所定の間隔で一列に並び、2つのダイ231は、ボルスター23に設けられたダイホルダに保持されて所定の間隔で一列に並んでいる。
【0018】
また、前工程プレス機2は、ブランクBを搬送するトランスファー装置24を有する。トランスファー装置24は、ブランク加工ステージ21a、コイニング加工ステージ21bから、それぞれ、次のコイニング加工ステージ21b、ブランク搬送装置4に、ブランクBを搬送するように配置されており、パンチ221が昇降する毎に、ブランクBを次のコイニング加工ステージ21b、ブランク搬送装置4に移動させる。
【0019】
後工程プレス機3は、後工程加工ステージ31として、受取ステージ31a、1st成形加工ステージ31b、最終成形加工ステージ31cを一列に並べて備えている。なお、1st成形加工ステージ31bと最終成形加工ステージ31cの間に、必要な成形加工ステージを追加してもよい。
後工程加工ステージ31のうち、1st成形加工ステージ31b、最終成形加工ステージ31cは、それぞれ、互いに対向するパンチ321とダイ331を備えている。3つのパンチ321は、スライド32の設けられたパンチホルダに保持されて所定の間隔で一列に並び、3つのダイは、ボルスター33に設けられたダイホルダに保持されて所定の間隔で一列に並んでいる。
受取ステージ31aには、汎用プレス機が本来有する最初の加工ステージの構成を取り除いて、ブランク搬送装置4の終端部が配置されている。
【0020】
また、後工程プレス機3は、ブランクBやカップCを搬送するトランスファー装置34を有する。トランスファー装置34は、受取ステージ31a、1st成形加工ステージ31b、最終成形加工ステージ31cから、それぞれ、次の、1st成形加工ステージ31b、最終成形加工ステージ31c、カップ搬送装置5に、ブランクBやカップCを搬送するように配置されており、パンチ321が昇降する毎に、ブランクBやカップCを、次の1st成形加工ステージ31b、最終成形加工ステージ31c、カップ搬送装置5に移動させる。
【0021】
[トランスファー装置]
図3に示すように、前工程プレス機2に設けられたトランスファー装置24として、ブランク加工ステージ21a、コイニング加工ステージ21bに、それぞれ、一対のフィンガー241が対向配置されている。これら二対のフィンガー241は、一体的に連結されていて、パンチ221の昇降と同期して駆動される。この一対のフィンガー241が、ブランクBを把持して、次のコイニング加工ステージ21b、ブランク搬送装置4に移動させる。
【0022】
また、後工程プレス機3に設けられたトランスファー装置34として、受取ステージ31a、1st成形加工ステージ31b、最終成形加工ステージ31cに、それぞれ、一対のフィンガー341が対向配置されている。これら複数対のフィンガー341は、一体的に連結されていて、パンチ321の昇降と同期して駆動される。この一対のフィンガー341が、ブランクB、カップCを把持して、次の1st成形加工ステージ31b、最終成形加工ステージ31c、カップ搬送装置5に移動させる。
【0023】
フィンガー241、フィンガー341は、扁平形状のブランクBやカップCを、長軸方向の両側から挟み込むように把持する。これにより、搬送のピッチを短くすることができ、また、カップCが把持力で変形することを抑制できる。
フィンガー241、フィンガー341のうち、ブランクBやカップCと接触する接触部2411,3411は、アルミニウム製のブランクBやカップCに傷がつきにくい材料、例えば、樹脂材やゴム材などで構成されている。プレス加工により、ブランクBやカップCは熱くなるので、接触部2411,3411は、所定の耐熱性を必要とし、また、ブランクBやカップCの挟持と解放を繰り返し行うので耐摩耗性などの耐久性も必要とされる。この点も考慮して、ポリアミドイミド、ポリアセタール、モノマーキャストナイロン、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴムなどから適宜選択する。また、耐熱温度としては100℃以上、より好ましくは150℃以上が好ましい。
【0024】
[変形例]
上記では、本実施形態の製造システム1について説明したが、この例に限らず、様々な変形例が考えられる。
(1)本実施形態の製造システム1は、前工程プレス機2と後工程プレス機3の2台の汎用プレス機で構成されるものであるが、これには限られず、3台以上の汎用プレス機で構成されるものとしてもよい。このとき、それぞれの汎用プレス機は、加圧能力、ストローク、加工ステージ数などが異なるものから、最適なものが選択される。
また、各加工工程に要する加圧能力、ストロークが同程度のものであっても、加工ステージ数が多い場合、専用プレス機1台を使用する代りに、汎用プレス機を複数台接続して、製造システムを構成することもできる。
【0025】
(2)本実施形態の製造システム1では、加圧能力が高く、ストロークが短い前工程プレス機2と、加圧能力が低く、ストロークが長い後工程プレス機3を組み合わせたが、この組み合わせ以外のどのような組み合わせであってもよい。
【0026】
(3)本実施形態の製造システム1では、前工程プレス機2ではブランク加工とコイニング加工を、後工程プレス機3で複数の成形加工を行うものであったが、それぞれのプレス機で、どのような加工をどのような順序で行うかは、製造する製品の種類、形状、大きさ等、具体的な成形加工プロセスに応じて、適宜設計し得るものである。
例えば、前工程プレス機2は、コイニング加工ステージ21bを備える必要はなく、ブランク加工ステージ21aは、ブランクを打ち抜くのみ、または、ブランクの打ち抜き及びパンチにより絞り加工を行うものであってもよい。
また、後工程プレス機3は、絞り加工を行う1st成形加工ステージ31b、最終成形加工ステージ31cに加えて、必要な数の成形加工ステージを中間に配置してもよい。また、リフォーム工程や段差加工工程、潤滑油塗布工程など、他に必要な加工ステージを任意の位置に追加することも可能である。
【0027】
(4)本実施形態の製造システム1は、アルミニウム製のリチウムイオン電池のセルケースを加工するものであったが、セルケースに限らず、他の任意の種類のアルミ缶を加工するものでもよい。また、ステンレスなどの他の金属製の任意の種類のケースや缶を加工するものであってもよいし、金属に樹脂等を被覆した積層構造の任意の種類のケースや缶を加工するものであってもよい。
【0028】
(5)本実施形態の製造システム1は、開口部が長方形状の缶を製造するものであった。このほかに、開口部が正方形の缶、さらには、四角形に限らず、円形の缶、楕円形の缶などの他の形状の缶を製造するものであってもよい。
【0029】
[発明の他の実施形態]
(1)プレス機の深絞り加工による缶の製造方法において、
前工程プレス機、後工程プレス機及び前記前工程プレス機から前記後工程プレス機へブランクを搬送する搬送手段を備え、
前記前工程プレス機で金属板に対してブランク加工及びブランクの板厚を減少させるコイニング加工を行う第1プレス工程と、
前記前工程プレス機から前記後工程プレス機へブランクを搬送する搬送工程と、
前記後工程プレス機で絞り加工及び/又は絞りしごき加工を行い角型缶の成形を行う第2プレス工程とを含むことを特徴とする缶の製造方法。
(2)前記前工程プレス機のストロークは前記後工程プレス機のストロークよりも短いことを特徴とする前記(1)に記載の缶の製造方法。
(3)前記前工程プレス機の加圧能力は前記後工程プレス機の加圧能力よりも高いことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の缶の製造方法。
(4)前記前工程プレス機は前記ブランク加工により形成された前記ブランクを搬送するフィンガーを備え、
前記第1プレス工程では、前記ブランク加工を前記コイニング加工より先に行い、前記ブランク加工により形成された前記ブランクを前記前工程プレス機内でフィンガー搬送する工程を含むことを特徴とする前記(1)~(3)のいずれか一つに記載の缶の製造方法。
(5)前記後工程プレス機は前記ブランクを絞り加工及び/又は絞りしごき加工した成形品を搬送するフィンガーを備え、
前記フィンガーは樹脂材、またはゴム材で構成された接触部を備え、前記接触部により前記成形品を把持して搬送することを特徴とする前記(1)~(4)のいずれか一つに記載の缶の製造方法。
(6)前記缶はアルミ缶であることを特徴とする前記(1)~(5)のいずれか一つに記載の缶の製造方法。
【0030】
(7)プレス機の深絞り加工による缶の製造システムにおいて、
前工程プレス機、後工程プレス機及び前記前工程プレス機から前記後工程プレス機へブランクを搬送する搬送手段を備え、
前記前工程プレス機は金属板に対してブランク加工及びブランクの板厚を減少させるコイニング加工を行うよう構成されており、
前記後工程プレス機は絞り加工及び/又は絞りしごき加工を行い角型缶を成形するよう構成されたことを特徴とする缶の製造システム。
(8)前記前工程プレス機のストロークは前記後工程プレス機のストロークよりも短いことを特徴とする前記(7)に記載の缶の製造システム。
(9)前記前工程プレス機の加圧能力は前記後工程プレス機の加圧能力よりも高いことを特徴とする前記(7)又は(8)に記載の缶の製造システム。
(10)前記前工程プレス機は、前記ブランク加工を前記コイニング加工より先に行うよう構成され、前記ブランク加工により形成された前記ブランクを前記前工程プレス機内で搬送するフィンガーを有することを特徴とする前記(7)~(9)のいずれか一つに記載の缶の製造システム。
(11)前記後工程プレス機は前記ブランクを絞り加工及び/又は絞りしごき加工した成形品を搬送するフィンガーを備え、
前記フィンガーの前記成形品との接触部は樹脂材、またはゴム材で構成されていることを特徴とする前記(7)~(10)のいずれか一つに記載の缶の製造システム。
(12)前記缶はアルミ缶であることを特徴とする前記(7)~(11)のいずれか一つに記載の缶の製造システム。
【0031】
以上、本発明に係る実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、前述の各実施形態は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 製造システム
2 前工程プレス機
21 前工程加工ステージ
21a ブランク加工ステージ
21b コイニング加工ステージ
22 スライド
221 パンチ
23 ボルスター
231 ダイ
24 トランスファー装置
241 フィンガー
2411 接触部
3 後工程プレス機
31 後工程加工ステージ
31a 受取ステージ
31b 1st成形加工ステージ
31c 最終成形加工ステージ
32 スライド
321 パンチ
33 ボルスター
331 ダイ
34 トランスファー装置
341 フィンガー
3411 接触部
4 ブランク搬送装置
5 カップ搬送装置
B ブランク
C カップ
S アルミニウムシート
【手続補正書】
【提出日】2023-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機の深絞り加工による缶の製造方法において、
金属板に対してブランク加工を行う工程と、
前記金属板又はブランクの板厚を減少させるコイニング加工を行う工程と、
前記ブランクに絞り加工及び/又は絞りしごき加工を行い角型缶の成形を行う工程を含み、
前記プレス機は前記ブランク加工により形成された前記ブランクを搬送するフィンガーを備え、
前記フィンガーは前記ブランクを把持して搬送することを特徴とする缶の製造方法。
【請求項2】
プレス機の深絞り加工による缶の製造方法において、
金属板に対してブランク加工を行う工程と、
前記金属板又はブランクの板厚を減少させるコイニング加工を行う工程と、
前記ブランクに絞り加工及び/又は絞りしごき加工を行い角型缶の成形を行う工程を含み、
前記プレス機は前記絞り加工及び/又は絞りしごき加工により成形された成形品を搬送するフィンガーを備え、
前記フィンガーは樹脂材又はゴム材で構成された接触部を備え、前記接触部により前記成形品を把持して搬送することを特徴とする缶の製造方法。
【請求項3】
前記缶はアルミ缶であることを特徴とする請求項1又は2に記載の缶の製造方法。
【請求項4】
少なくとも1つのプレス機の深絞り加工による缶の製造システムにおいて、
金属板に対してブランク加工を行うための構成、前記金属板又はブランクの板厚を減少させるコイニング加工を行うための構成並びに絞り加工及び/又は絞りしごき加工を行い角型缶を成形するための構成は、同一の前記プレス機又は複数の異なる前記プレス機に備えられており、
前記ブランク加工により形成された前記ブランクを前記プレス機内で搬送するフィンガーを備えていることを特徴とする缶の製造システム。
【請求項5】
少なくとも1つのプレス機の深絞り加工による缶の製造システムにおいて、
金属板に対してブランク加工を行うための構成、前記金属板又はブランクの板厚を減少させるコイニング加工を行うための構成並びに絞り加工及び/又は絞りしごき加工を行い角型缶を成形するための構成が、同一の前記プレス機又は複数の異なる前記プレス機に備えられており、
前記絞り加工及び/又は絞りしごき加工により成形された成形品を搬送するフィンガーを備え、
前記フィンガーの前記成形品との接触部は樹脂材又はゴム材で構成されていることを特徴とする缶の製造システム。
【請求項6】
前記缶はアルミ缶であることを特徴とする請求項4又は5に記載の缶の製造システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の、プレス機の深絞り加工による缶の製造方法は、
金属板に対してブランク加工を行う工程と、
前記金属板又はブランクの板厚を減少させるコイニング加工を行う工程と、
前記ブランクに絞り加工及び/又は絞りしごき加工を行い角型缶の成形を行う工程を含み、
前記プレス機は前記ブランク加工により形成された前記ブランクを搬送するフィンガーを備え、
前記フィンガーは前記ブランクを把持して搬送することを特徴とする。
また、本発明の、プレス機の深絞り加工による缶の製造方法は、
金属板に対してブランク加工を行う工程と、
前記金属板又はブランクの板厚を減少させるコイニング加工を行う工程と、
前記ブランクに絞り加工及び/又は絞りしごき加工を行い角型缶の成形を行う工程を含み、
前記プレス機は前記絞り加工及び/又は絞りしごき加工により成形された成形品を搬送するフィンガーを備え、
前記フィンガーは樹脂材又はゴム材で構成された接触部を備え、前記接触部により前記成形品を把持して搬送することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
また、本発明の、少なくとも1つのプレス機の深絞り加工による缶の製造システムは、
金属板に対してブランク加工を行うための構成、前記金属板又はブランクの板厚を減少させるコイニング加工を行うための構成並びに絞り加工及び/又は絞りしごき加工を行い、角型缶を成形するための構成は、同一の前記プレス機又は複数の異なる前記プレス機に備えられており、
前記ブランク加工により形成された前記ブランクを前記プレス機内で搬送するフィンガーを備えていることを特徴とする。
また、本発明の、少なくとも1つのプレス機の深絞り加工による缶の製造システムは、
金属板に対してブランク加工を行うための構成、前記金属板又はブランクの板厚を減少させるコイニング加工を行うための構成並びに絞り加工及び/又は絞りしごき加工を行い角型缶を成形するための構成が、同一の前記プレス機又は複数の異なる前記プレス機に備えられており、
前記絞り加工及び/又は絞りしごき加工により成形された成形品を搬送するフィンガーを備え、
前記フィンガーの前記成形品との接触部は樹脂材又はゴム材で構成されていることを特徴とする。