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特開2024-39056リアクタモジュール、液体燃料合成方法、分離膜モジュール及び分離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039056
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】リアクタモジュール、液体燃料合成方法、分離膜モジュール及び分離方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20240313BHJP
   B01D 63/06 20060101ALI20240313BHJP
   C07C 31/04 20060101ALI20240313BHJP
   C07C 29/152 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D63/06
C07C31/04
C07C29/152
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024002054
(22)【出願日】2024-01-10
(62)【分割の表示】P 2023542809の分割
【原出願日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2022017956
(32)【優先日】2022-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022134439
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】中川 剛佑
(72)【発明者】
【氏名】飯田 和希
(72)【発明者】
【氏名】菅 博史
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 淳史
(72)【発明者】
【氏名】塩見 誠
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 行成
(72)【発明者】
【氏名】清水 克哉
(57)【要約】
【課題】効率的に温度制御可能なリアクタモジュール、液体燃料合成方法、分離膜モジュール及び分離方法を提供する。
【解決手段】リアクタ1は、分離膜30の透過側の第2流路12を有する。第2流路12は、第1封止部4と流量調整部6との間の第1空間P1に開口する流入口d1と、第2封止部5と流量調整部6との間の第2空間P2に開口する流出口d2とを含む。ハウジング3は、第1空間P1に掃引ガスを供給するための掃引ガス供給口3aと、第2空間P1から掃引ガスを排出するための掃引ガス排出口3bとを有する。リアクタ1の側面視において、流量調整部6を介して第1空間P1から第2空間P2に流れる掃引ガスの向きは、第2流路12を流れる掃引ガスの向きと同じである。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びるモノリス型のリアクタと、
前記リアクタを収容するハウジングと、
前記ハウジングと前記リアクタの第1端部との間を封止する環状の第1封止部と、
前記ハウジングと前記リアクタの第2端部との間を封止する環状の第2封止部と、
前記長手方向において前記第1封止部と前記第2封止部との間に配置され、通気性を有する環状の流量調整部と、
を備え、
前記リアクタは、水素及び酸化炭素を含有する原料ガスから液体燃料への転化反応の生成物を透過させる分離膜と、前記分離膜の非透過側の第1流路と、前記分離膜の透過側の第2流路とを有し、
前記第2流路は、前記第1封止部と前記流量調整部との間の第1空間に開口する流入口と、前記第2封止部と前記流量調整部との間の第2空間に開口する流出口とを含み、
前記ハウジングは、前記第1空間に掃引ガスを供給するための供給口と、前記第2空間から前記掃引ガスを排出するための排出口とを有し、
前記リアクタの側面視において、前記流量調整部を介して前記第1空間から前記第2空間に流れる前記掃引ガスの向きは、前記第2流路を流れる前記掃引ガスの向きと同じである、
リアクタモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のリアクタモジュールを用いた液体燃料合成方法であって、
前記供給口から前記第1空間に前記掃引ガスを供給する工程を備え、
前記リアクタの側面視において、前記流量調整部を介して前記第1空間から前記第2空間に流れる前記掃引ガスの向きは、前記第2流路を流れる前記掃引ガスの向きと同じである、
液体燃料合成方法。
【請求項3】
長手方向に延びるモノリス型の分離フィルタと、
前記分離フィルタを収容するハウジングと、
前記ハウジングと前記分離フィルタの第1端部との間を封止する環状の第1封止部と、
前記ハウジングと前記分離フィルタの第2端部との間を封止する環状の第2封止部と、
前記長手方向において前記第1封止部と前記第2封止部との間に配置され、通気性を有する環状の流量調整部と、
を備え、
前記分離フィルタは、混合流体から所定成分を分離するための分離膜と、前記分離膜の非透過側の第1流路と、前記分離膜の透過側の第2流路とを有し、
前記第2流路は、前記第1封止部と前記流量調整部との間の第1空間に開口する流入口と、前記第2封止部と前記流量調整部との間の第2空間に開口する流出口とを含み、
前記ハウジングは、前記第1空間に掃引ガスを供給するための供給口と、前記第2空間から前記掃引ガスを排出するための排出口とを有し、
前記分離フィルタの側面視において、前記流量調整部を介して前記第1空間から前記第2空間に流れる前記掃引ガスの向きは、前記第2流路を流れる前記掃引ガスの向きと同じである、
分離膜モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の分離膜モジュールを用いて混合流体から所定成分を分離する分離方法であって、
前記供給口から前記第1空間に前記掃引ガスを供給する工程を備え、
前記分離フィルタの側面視において、前記流量調整部を介して前記第1空間から前記第2空間に流れる前記掃引ガスの向きは、前記第2流路を流れる前記掃引ガスの向きと同じである、
分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクタモジュール、液体燃料合成方法、分離膜モジュール及び分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素及び酸化炭素を含有する原料ガスからメタノールやエタノールなどの液体燃料(具体的には、常温常圧下で液体状態の燃料)への転化反応において、液体燃料とともに生成される水蒸気を分離することによって転化効率を向上させることのできるリアクタが開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、転化反応の生成物の一つである水蒸気を透過させる分離膜と、原料ガスが流れる非透過側流路と、掃引ガスが流れる透過側流路とを備えるチューブ型のリアクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-8940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のリアクタによれば、透過側流路に掃引ガスを流すことによって転化反応で生じる反応熱を除去できるため、転化効率をより向上させることができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のリアクタでは、リアクタ内の透過側流路にのみ掃引ガスが流されているため、反応熱を除去するにも限界がある。
【0007】
また、分離フィルタを備える分離膜モジュールにおいては、混合流体に含まれる所望成分を透過させるための分離膜を適温に制御するために、透過側流路に掃引ガスを流すことによって分離膜を冷却又は加熱したい場合がある。
【0008】
本発明は、効率的に温度制御可能なリアクタモジュール、液体燃料合成方法、分離膜モジュール及び分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るリアクタモジュールは、長手方向に延びるモノリス型のリアクタと、リアクタを収容するハウジングと、ハウジングとリアクタの第1端部との間を封止する環状の第1封止部と、ハウジングとリアクタの第2端部との間を封止する環状の第2封止部と、長手方向において第1封止部と第2封止部との間に配置され、通気性を有する環状の流量調整部とを備える。リアクタは、水素及び酸化炭素を含有する原料ガスから液体燃料への転化反応の生成物を透過させる分離膜と、分離膜の非透過側の第1流路と、分離膜の透過側の第2流路とを有する。第2流路は、第1封止部と流量調整部との間の第1空間に開口する流入口と、第2封止部と流量調整部との間の第2空間に開口する流出口とを含む。ハウジングは、第1空間に掃引ガスを供給するための供給口と、第2空間から掃引ガスを排出するための排出口とを有する。リアクタの側面視において、流量調整部を介して第1空間から第2空間に流れる掃引ガスの向きは、第2流路を流れる掃引ガスの向きと同じである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、効率的に温度制御可能なリアクタモジュール、液体燃料合成方法、分離膜モジュール及び分離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るリアクタ1の斜視図
図2図1のA-A断面図
図3図1のB-B断面図
図4図2のC-C断面図
図5】実施形態に係るリアクタモジュールの透視側面図
図6】実施形態に係るリアクタモジュールの断面図
図7】実施形態に係るリアクタモジュールの断面図
図8】変形例3に係る流量調整部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なっている場合がある。
【0013】
(リアクタ1)
図1は、リアクタ1の斜視図である。図2は、図1のA-A断面図である。図3は、図1のB-B断面図である。図4は、図2のC-C断面図である。
【0014】
リアクタ1は、原料ガスを液体燃料へ転化させるための所謂メンブレンリアクタである。原料ガスは、少なくとも水素及び酸化炭素を含有する。酸化炭素としては、一酸化炭素及び二酸化炭素の少なくとも一方を用いることができる。原料ガスは、いわゆる合成ガス(Syngas)であってよい。液体燃料は、常温常圧で液体状態の燃料、又は、常温加圧状態で液化可能な燃料である。常温常圧で液体状態の燃料としては、例えばメタノール、エタノール、C2(m-2n)(mは90未満の整数、nは30未満の整数)で表される液体燃料、及びこれらの混合物が挙げられる。常温加圧状態で液化可能な燃料としては、例えばプロパン、ブタン、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0015】
例えば、二酸化炭素および水素を含む原料ガスを触媒存在下で接触水素化することでメタノールを合成する際の反応式(1)は次の通りである。
【0016】
CO+3H ⇔ CHOH+HO (1)
【0017】
上記反応は平衡反応であり、転化効率及び反応速度の両方を高めるには高温高圧下(例えば、180℃以上、2MPa以上)で実施されることが好ましい。液体燃料は、合成された時点では気体状態であり、少なくともリアクタ1から流出するまでは気体状態のまま維持される。リアクタ1は、所望の液体燃料の合成条件に適した耐熱性及び耐圧性を有することが好ましい。
【0018】
図1に示すように、リアクタ1は、モノリス型に形成される。モノリスとは、長手方向に貫通した複数の孔を有する形状を意味し、ハニカムを含む概念である。リアクタ1は、長手方向に延びる。リアクタ1は、柱状に形成される。本実施形態において、リアクタ1は円柱状に形成されているが、リアクタ1の外形は特に限られない。
【0019】
リアクタ1は、第1端部1a及び第2端部1bを有する。第1端部1aは、リアクタ1を長手方向に5等分した場合に、リアクタ1の一端部から2/5までの部分である。第2端部1bは、リアクタ1を長手方向に5等分した場合に、リアクタ1の他端部から2/5までの部分である。本実施形態において、リアクタ1の第1端部1aは原料ガスの流入側であり、リアクタ1の第2端部1bは液体燃料の流出側である。
【0020】
リアクタ1は、第1端面S1、第2端面S2及び側面S3を有する。第1端面S1は、第1端部1a側の端面である。第2端面S2は、第2端部1b側の端面である。第1端面S1は、第2端面S2の反対側に設けられる。側面S3は、第1端面S1及び第2端面S2の外縁に連なる。
【0021】
図1図4に示すように、リアクタ1は、多孔質支持体10、触媒20、分離膜30、第1シール部40及び第2シール部50を備える。
【0022】
多孔質支持体10は、リアクタ1の長手方向に延びる柱体である。多孔質支持体10は、多孔質材料によって構成される。
【0023】
多孔質材料としては、セラミック材料、金属材料、樹脂材料などを用いることができ、特にセラミック材料が好適である。セラミック材料の骨材としては、例えば、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ムライト(Al・SiO)、セルベン及びコージェライト(MgAlSi18)のうち少なくとも一つを用いることができる。セラミック材料の無機結合材としては、例えば、チタニア、ムライト、易焼結性アルミナ、シリカ、ガラスフリット、粘土鉱物、易焼結性コージェライトのうち少なくとも一つを用いることができる。ただし、セラミック材料は、無機結合材を含んでいなくてよい。
【0024】
図2図3に示すように、多孔質支持体10は、多数の第1流路11及び複数の第2流路12を有する。
【0025】
各第1流路11は、図4に示すように、リアクタ1の長手方向に沿って形成される。各第1流路11は、分離膜30の非透過側である。各第1流路11には、原料ガスが流される。各第1流路11は、貫通孔である。各第1流路11は、リアクタ1の第1端面S1及び第2端面S2それぞれに開口する。各第1流路11は、第1端面S1に形成される原料ガスの流入口e1と、第2端面S2に形成される液体燃料の流出口e2とを有する。
【0026】
各第1流路11内には、触媒20が配置される。第1流路11の本数、位置及び形状などは適宜変更可能である。
【0027】
各第2流路12は、分離膜30の透過側である。各第2流路12には、分離膜30を透過した水蒸気を掃引するための掃引ガスが流される。掃引ガスとしては、不活性ガス(例えば窒素)や空気などを用いることができる。発熱反応である本実施形態において、掃引ガスの温度は、リアクタ1の作動温度より低い。第2流路12の本数、位置及び形状などは適宜変更可能である。
【0028】
ここで、各第2流路12は、図2図3に示すように、複数のセル13、流入スリット14及び流出スリット15によって構成される。
【0029】
複数のセル13は、リアクタ1の短手方向(長手方向に垂直な方向)に沿って一列に並ぶ。各セル13は、図4に示すように、リアクタ1の長手方向に沿って形成される。各セル13の両端は、第1及び第2目封止部17,18によって封止される。第1及び第2目封止部17,18は、上述した多孔質材料によって構成することができる。
【0030】
流入スリット14は、図1に示すように、長手方向におけるリアクタ1の第1端部1aに形成される。流入スリット14は、図2に示すように、リアクタ1の短手方向に沿って形成される。流入スリット14は、複数のセル13を貫通する。流入スリット14の両端は、側面S3に開口する。流入スリット14は、側面S3に形成される一対の流入口d1を有する。一対の流入口d1は、長手方向における第2流路12の一端である。
【0031】
流出スリット15は、図1に示すように、長手方向におけるリアクタ1の第2端部1bに形成される。流出スリット15は、図3に示すように、リアクタ1の短手方向に沿って形成される。流出スリット15は、複数のセル13を貫通する。流出スリット15の両端は、側面S3に開口する。流出スリット15は、側面S3に形成される一対の流出口d2を有する。一対の流出口d2は、長手方向における第2流路12の他端である。
【0032】
触媒20は、各第1流路11内に配置される。触媒20は、各第1流路11内に充填されていることが好ましいが、分離膜30の表面に層状に配置されていてもよい。触媒20は、上記式(1)に示したように、原料ガスから液体燃料への転化反応を促進させる。
【0033】
触媒20は、所望の液体燃料への転化反応に適した既知の触媒を用いることができる。触媒20としては、例えば、金属触媒(銅、パラジウムなど)、酸化物触媒(酸化亜鉛、ジルコニア、酸化ガリウムなど)、及び、これらを複合化した触媒(銅-酸化亜鉛、銅-酸化亜鉛-アルミナ、銅-酸化亜鉛-酸化クロム-アルミナ、銅-コバルト-チタニア、及びこれらにパラジウムを修飾した触媒など)が挙げられる。
【0034】
分離膜30は、多孔質支持体10によって支持される。分離膜30は、第1流路11を取り囲む。分離膜30は、第1流路11と第2流路12との間に配置される。
【0035】
分離膜30は、原料ガスから液体燃料への転化反応の生成物の一つである水蒸気を透過させる。これにより、平衡シフト効果を利用して上記式(1)の反応平衡を生成物側にシフトさせることができる。
【0036】
分離膜30は、100nmol/(s・Pa・m)以上の水蒸気透過係数を有することが好ましい。水蒸気透過係数は、既知の方法(Ind.Eng.Chem.Res.,40,163-175(2001)参照)で求めることができる。
【0037】
分離膜30は、100以上の分離係数を有することが好ましい。分離係数が大きいほど、水蒸気を透過しやすく、かつ水蒸気以外の成分(水素、二酸化炭素及び液体燃料など)を透過させにくい。分離係数は、既知の方法(「Separation and Purification Technology 239 (2020) 116533」のFig.1参照)で求めることができる。
【0038】
分離膜30としては、無機膜を用いることができる。無機膜は、耐熱性、耐圧性、耐水蒸気性を有するため好ましい。無機膜としては、例えばゼオライト膜、シリカ膜、アルミナ膜、これらの複合膜などが挙げられる。特に、シリコン元素(Si)とアルミニウム元素(Al)とのモル比(Si/Al)が1.0以上3.0以下であるLTA型のゼオライト膜は、水蒸気透過性に優れているため好適である。
【0039】
第1シール部40は、図1に示すように、多孔質支持体10の第1端面S1と側面S3の一部とを覆う。第1シール部40は、原料ガスが多孔質支持体10に侵入することを抑制する。第1シール部40は、図4に示すように、第1流路11の流入口e1を塞がないように形成される。第1シール部40は、第1目封止部17を覆う。第1シール部40は、ガラス、金属、ゴム、樹脂などによって構成することができる。
【0040】
第2シール部50は、図1に示すように、多孔質支持体10の第2端面S2と側面S3の一部とを覆う。第2シール部50は、液体燃料が多孔質支持体10に侵入することを抑制する。第2シール部50は、図4に示すように、第1流路11の流出口e2を塞がないように形成される。第2シール部50は、第2目封止部18を覆う。第2シール部50は、ガラス、金属、ゴム、樹脂などによって構成することができる。
【0041】
(リアクタ1を用いた液体燃料合成方法)
図4を参照しながら、リアクタ1を用いた液体燃料合成方法について説明する。
【0042】
リアクタ1を用いた液体燃料合成方法は、分離膜30の非透過側に設けられた第1流路11に原料ガスを流しながら、分離膜30の透過側に設けられた第2流路12に掃引ガスを流す工程を備える。
【0043】
原料ガスは、第1流路11の流入口e1から第1流路11内に流入する。第1流路11内では、上記式(1)に従って、液体燃料とともに水蒸気が生成される。合成された液体燃料は、第1流路11の流出口e2から流出する。生成物の一つである水蒸気は、分離膜30及び多孔質支持体10を順次透過して、第2流路12に移動する。ただし、流出口e2から流出する液体燃料には、転化反応に用いられなかった残原料ガスや転化反応の生成物の一つである水蒸気などが混じっていてよい。
【0044】
掃引ガスは、流入スリット14の流入口d1から流入した後、流入スリット14からセル13に流入する。次に、流入スリット14からセル13に流入した掃引ガスは、分離膜30を透過した水蒸気を取り込むとともに、転化反応に伴って発生した反応熱を吸収しながら流出スリット15側に向かってセル13内を流れる。流出スリット15に到達した掃引ガスは、流出スリット15の流出口d2から流出する。
【0045】
図4に示すように、本実施形態では、分離膜30の側面視において、第2流路12を流れる掃引ガスの向きは、第1流路11を流れる原料ガスの向きと同じである。すなわち、第2流路12を流れる掃引ガスは、第1流路11を流れる原料ガスと平行な向きに流れる。
【0046】
ただし、分離膜30の側面視において、第2流路12を流れる掃引ガスの向きは、第1流路11を流れる原料ガスの向きと逆であってもよい。すなわち、第2流路12を流れる掃引ガスは、第1流路11を流れる原料ガスと対向する向きに流されてもよい。
【0047】
(リアクタモジュール2)
実施形態に係るリアクタモジュール2について説明する。図5は、リアクタモジュール2の透視側面図である。
【0048】
図5に示すように、リアクタモジュール2は、上述したモノリス型のリアクタ1、ハウジング3、環状の第1封止部4、環状の第2封止部5及び環状の流量調整部6を備える。
【0049】
ハウジング3は、例えば金属材料(ステンレス鋼など)によって構成される。ハウジング3は、内部にリアクタ1を収容する。ハウジング3は、掃引ガス供給口3a、掃引ガス排出口3b、原料ガス供給口3c及び液体燃料排出口3dを有する。ハウジング3の内部は、第1封止部4、第2封止部5及び流量調整部6によって、第1乃至第4空間P1~P4に区画される。
【0050】
第1空間P1は、第1封止部4と流量調整部6との間の空間である。第1空間P1には、リアクタ1の側面S3に形成された掃引ガスの流入口d1が開口する。第1空間P1には、第1空間P1に掃引ガスを供給するための掃引ガス供給口3aが開口する。第2空間P2は、第2封止部5と流量調整部6との間の空間である。第2空間P2には、リアクタ1の側面S3に形成された掃引ガスの流出口d2が開口する。第2空間P2には、第2空間P2から掃引ガスを排出するための掃引ガス排出口3bが開口する。第1空間P1と第2空間P2は、流量調整部6によって区画される。
【0051】
第3空間P3には、第3空間P3に原料ガスを供給するための原料ガス供給口3cが開口する。第3空間P3には、リアクタ1の第1端面S1に形成された原料ガスの流入口e1(図4参照)が開口する。第4空間P4には、第4空間P4から液体燃料を排出するための液体燃料排出口3dが開口する。第4空間P4には、リアクタ1の第2端面S2に形成された液体燃料の流出口e2(図4参照)が開口する。第1空間P1と第3空間P3とは第1封止部4によって区画され、第2空間P2と第4空間P4とは第2封止部5によって区画される。
【0052】
第1封止部4は、環状に形成される。第1封止部4は、リアクタ1の第1端部1aをハウジング3に固定する。第1封止部4は、リアクタ1の側面S3とハウジング3の内面T1とに接続される。第1封止部4は、リアクタ1の第1端部1aとハウジング3との間を封止する。第1封止部4の構成材料としては、例えばガラス、銀ろう、はんだ、無機系接着剤などが挙げられる。
【0053】
第2封止部5は、環状に形成される。第2封止部5は、リアクタ1の第2端部1bをハウジング3に固定する。第2封止部5は、リアクタ1の側面S3とハウジング3の内面T1とに接続される。第2封止部5の第4空間P4側は高温の液体燃料や水蒸気に曝されるため、高温の液体燃料の化学的負荷に対する耐性と水蒸気に対する耐性とが第2封止部5の構成材料には求められる。第2封止部5の構成材料としては、例えばガラス、銀ろう、はんだ、無機系接着剤などが挙げられる。第2封止部5の構成材料としてゴムやプラスチックは適していない。
【0054】
流量調整部6は、環状に形成される。流量調整部6は、長手方向において第1封止部4と第2封止部5との間に配置される。流量調整部6は、第1空間P1と第2空間P2との間を区画する。
【0055】
流量調整部6は、通気性を有する。流量調整部6は、第1空間P1から第2空間P2へ掃引ガスを通過させることができる。流量調整部6は、流量調整部6を介して第1空間P1から第2空間P2へ流れる掃引ガスの流量を調整するための部材である。流量調整部6の通気性は、流量調整部6を構成する材料の気孔率、長手方向における流量調整部6の幅、或いは、流量調整部6の個数によって調整することができる。
【0056】
流量調整部6は、多孔質材料によって構成することができる。多孔質材料としては、膨張黒鉛、多孔質ゴム、多孔質樹脂などによって構成することができる。
【0057】
掃引ガスは、掃引ガス供給口3aから第1空間P1に供給される。掃引ガスの一部は、第1空間P1から第2空間P2に向かって流量調整部6を通過する。残りの掃引ガスは、リアクタ1の流入口d1から第2流路12に流入する。第2流路12内で水蒸気を取り込むとともに反応熱を吸収した掃引ガスは、リアクタ1の流出口d2から第2空間P2に流出する。流量調整部6を通過した掃引ガスと第2流路12を通過した掃引ガスとは、第2空間P2において合流して掃引ガス排出口3bから外部に排出される。
【0058】
このように、第2流路12を流れる掃引ガスによってリアクタ1を内部から冷却するとともに、流量調整部6を通過する掃引ガスによってリアクタ1を外部から冷却することができる。特に、流量調整部6を掃引ガスが通過することによって、流量調整部6周辺で掃引ガスが滞留してしまうことを抑制できるため、特別の構造を付与することなく外部からの冷却効率を高めることができる。従って、転化反応によって生じる反応熱を効率的に除去できるため、より転化効率を向上させることができる。
【0059】
また、図5に示すように、リアクタ1の側面視において、流量調整部6を介して第1空間P1から第2空間P2に流れる掃引ガスの向きは、第2流路12を流れる掃引ガスの向きと同じである。従って、リアクタ1の内部を通過していない比較的冷たい掃引ガスでリアクタ1を外部から冷却できるため、外部からの冷却効率を更に高めることができる。
【0060】
なお、図5では、ハウジング3に形成された掃引ガス供給口3a及び掃引ガス排出口3bが、断面視においてリアクタ1の軸心と交差する直線上に配置されている。これによって、各第2流路12を介して掃引ガス供給口3aから掃引ガス排出口3bまで流れる掃引ガスの各流路長を同等にできるため、掃引ガスの流れが偏ることを抑制できる。ただし、掃引ガス供給口3a及び掃引ガス排出口3bそれぞれの位置関係は適宜変更可能である。
【0061】
(実施形態の変形例)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0062】
(変形例1)
図6は、図5に示したリアクタモジュール2の断面図である。図6では、リアクタ1の軸心に垂直な断面が図示されている。
【0063】
図6に示すように、リアクタ1の内部を流出スリット15が延びる第1延在方向は、掃引ガス排出口3bから外部に排出される掃引ガスの排出方向に対して傾斜又は直交していることが好ましい。具体的には、排出方向に対する第1延在方向の角度θ1は、45度以上135度以下が好ましい。これによって、流出スリット15の両側の開口部から掃引ガス排出口3bまでのガス流れの偏りを抑制できるため、掃引ガスの偏流を抑制できる。
【0064】
図7は、図5に示したリアクタモジュール2の断面図である。図7では、リアクタ1の軸心に垂直な断面が図示されている。
【0065】
図7に示すように、リアクタ1の内部を流入スリット14が延びる第2延在方向は、掃引ガス供給口3aから供給される掃引ガスの供給方向に対して傾斜又は直交していることが好ましい。具体的には、供給方向に対する第2延在方向の角度θ2は、45度以上135度以下が好ましい。これによって、掃引ガス供給口3aから流入スリット14の両側の開口部までのガス流れの偏りを抑制できるため、掃引ガスの偏流を抑制できる。
【0066】
(変形例2)
上記実施形態において、分離膜30は、原料ガスから液体燃料への転化反応の生成物の一つである水蒸気を透過させることとしたが、これに限られない。分離膜30は、原料ガスから液体燃料への転化反応によって生成される液体燃料自体を透過させてもよい。この場合においても、上記式(1)の反応平衡を生成物側にシフトさせることができる。
【0067】
また、分離膜30が液体燃料を透過させる場合には、水蒸気が生成されない反応(例えば、H+CO ⇔ CHOH)によって液体燃料を生成するときにおいても、反応平衡を生成物側にシフトさせることができる。
【0068】
(変形例3)
上記実施形態において、通気性を有する環状の流量調整部6は、多孔質材料によって構成されることとしたが、これに限られない。流量調整部6は、第1空間P1から第2空間P2へ掃引ガスを通過させることができる構造を有していればよい。
【0069】
ここで、図8は、流量調整部6の断面図である。図8に示すように、流量調整部6は、支持部材61、パッキン62、シール部材63及び押圧部材64によって構成することができる。
【0070】
支持部材61は、環状に形成される。支持部材61は、リアクタ1(多孔質支持体10)を取り囲むように配置される。支持部材61は、パッキン62及びシール部材63を支持する。支持部材61には、通気孔61aが形成されている。通気孔61aは、第1空間P1と第2空間P2に連通する。掃引ガスは、通気孔61aを介して第1空間P1から第2空間P2へ流れる。掃引ガスの流量は、通気孔61aのサイズ及び形状を変更することによって適宜調整することができる。
【0071】
パッキン62は、環状の弾性部材である。パッキン62は、締結部材62aによって支持部材61に固定されている。パッキン62は、支持部材61とハウジング3の間に配置される。パッキン62は、支持部材61とハウジング3の隙間を封止する。
【0072】
シール部材63は、環状のグランドパッキンである。シール部材63は、例えば膨張黒鉛によって構成することができる。シール部材63は、支持部材61とリアクタ1(多孔質支持体10)の間に配置される。シール部材63は、押圧部材64によって圧縮される。シール部材63の通気性は、押圧部材64の押圧力によって調整することができる。掃引ガスは、シール部材63を介して第1空間P1から第2空間P2へ流れる。掃引ガスの流量は、押圧部材64の圧縮力によって適宜調整することができる。
【0073】
押圧部材64は、締結部材64aによって支持部材61に固定されている。押圧部材64は、シール部材63を押圧する。押圧部材64の押圧力は、締結部材64aの締め込み量によって適宜調整することができる。
【0074】
このように、図8に示した流量調整部6は、支持部材61の通気孔61aとシール部材63とが掃引ガスの流路として機能することによって通気性を発揮する。
【0075】
なお、図8に示した流量調整部6は、通気孔61aとシール部材63のいずれか一方のみを有していてもよい。
【0076】
(変形例4)
上記実施形態では、リアクタを備えるリアクタモジュールについて説明したが、本発明は、分離フィルタを備える分離膜モジュールにも適用可能である。分離フィルタは、混合流体から所定成分を分離するための分離膜を有する点以外は、上記実施形態に係るリアクタ1と同じ構成を備える。
【0077】
このような分離膜モジュールでは、分離膜を適温に制御するために、透過側流路に掃引ガスを流すことによって分離膜を加熱又は冷却したい場合がある。この際、上記実施形態と同様、分離フィルタの側面視において、流量調整部6を介して第1空間P1から第2空間P2に流れる掃引ガスの向きを、第2流路12を流れる掃引ガスの向きと同じにすることによって、分離フィルタの内部を通過していない掃引ガスで分離フィルタを外部から効率的に冷却又は加熱することができる。
【0078】
なお、上記実施形態では、掃引ガスの温度がリアクタ1の作動温度より低いこととしたが、分離膜モジュールでは、分離膜を冷却したい場合には掃引ガスの温度を分離フィルタの温度より低くする必要があり、分離膜を加熱したい場合には掃引ガスの温度を分離フィルタの温度より高くする必要がある。
【符号の説明】
【0079】
1 リアクタ
2 リアクタモジュール
3 ハウジング
3a 掃引ガス供給口
3b 掃引ガス排出口
3c 原料ガス供給口
3d 液体燃料排出口
4 第1封止部
5 第2封止部
6 流量調整部
10 多孔質支持体
11 第1流路
e1 流入口
e2 流出口
12 第2流路
13 セル
14 流入スリット
d1 流入口
15 流出スリット
d2 流出口
20 触媒
30 分離膜
40 第1シール部
50 第2シール部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8