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特開2024-3906情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003906
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20240109BHJP
   E02D 29/00 20060101ALI20240109BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20240109BHJP
   F16L 1/11 20060101ALI20240109BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20240109BHJP
   H02G 9/02 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G06Q50/08
E02D29/00
G06Q50/06
F16L1/11
H02G1/06
H02G9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103259
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 拓也
【テーマコード(参考)】
2D147
5G352
5G369
5L049
【Fターム(参考)】
2D147AA00
2D147AC00
5G352CA04
5G352CA08
5G352CA10
5G352CC06
5G352CG01
5G369AA16
5G369AA19
5G369BA01
5G369BA04
5G369EA01
5G369EA03
5G369EA04
5L049CC06
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】地下に埋設しようとしている第1埋設物の掘削エリアを掘削したときの、地下に埋設されている第2埋設物に対する影響の有無を効率的に判定する
【解決手段】プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置であって、過去において、地下に埋設しようとしている一方の埋設物の掘削エリアと、地下に埋設されている他方の埋設物と、の関係を示す特徴量と、前記一方の埋設物の前記掘削エリアを掘削したときの前記他方の埋設物に対する影響の有無を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデル、を記憶し、現在において、地下に埋設しようとしている第1埋設物の掘削エリアと、地下に埋設されている第2埋設物と、の関係を示すデータを前記学習モデルに入力し、前記第1埋設物の前記掘削エリアを掘削したときの前記第2埋設物に対する影響の有無を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ及び記憶装置を有し、
過去において、地下に埋設しようとしている一方の埋設物の掘削エリアと、地下に埋設されている他方の埋設物と、の関係を示す特徴量と、前記一方の埋設物の前記掘削エリアを掘削したときの前記他方の埋設物に対する影響の有無を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデル、を記憶し、
現在において、地下に埋設しようとしている第1埋設物の掘削エリアと、地下に埋設されている第2埋設物と、の関係を示すデータを前記学習モデルに入力し、前記第1埋設物の前記掘削エリアを掘削したときの前記第2埋設物に対する影響の有無を判定する、
情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記特徴量は、
前記掘削エリアと前記他方の埋設物との間の水平方向における最短距離、
前記掘削エリアと前記他方の埋設物との間の垂直方向における最短距離、
前記他方の埋設物の敷設方式、
前記他方の埋設物に設置されるケーブルの種類、
の少なくとも1つのデータを含む、
情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記敷設方式は、暗きょ式、管路式、直接埋設式の何れかである、
情報処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記ケーブルの種類は、送電線、配電線、通信線の何れかである、
情報処理装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の情報処理装置であって、
前記一方の埋設物、前記他方の埋設物、前記第1埋設物、前記第2埋設物は、電力設備を含む、
情報処理装置。
【請求項6】
プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置が、
過去において、地下に埋設しようとしている一方の埋設物の掘削エリアと、地下に埋設されている他方の埋設物と、の関係を示す特徴量と、前記一方の埋設物の前記掘削エリアを掘削したときの前記他方の埋設物に対する影響の有無を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデル、を記憶し、
現在において、地下に埋設しようとしている第1埋設物の掘削エリアと、地下に埋設されている第2埋設物と、の関係を示すデータを前記学習モデルに入力し、前記第1埋設物の前記掘削エリアを掘削したときの前記第2埋設物に対する影響の有無を判定する、
情報処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の情報処理方法であって、
前記特徴量は、
前記掘削エリアと前記他方の埋設物との間の水平方向における最短距離、
前記掘削エリアと前記他方の埋設物の間の垂直方向における最短距離、
前記他方の埋設物の敷設方式、
前記他方の埋設物に設置されるケーブルの種類、
の少なくとも1つのデータを含む、
情報処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の情報処理方法であって、
前記敷設方式は、暗きょ式、管路式、直接埋設式の何れかである、
情報処理方法。
【請求項9】
請求項7に記載の情報処理方法であって、
前記ケーブルの種類は、送電線、配電線、通信線の何れかである、
情報処理方法。
【請求項10】
請求項6~9の何れか一項に記載の情報処理方法であって、
前記一方の埋設物、前記他方の埋設物、前記第1埋設物、前記第2埋設物は、電力設備を含む、
情報処理方法。
【請求項11】
プロセッサ及び記憶装置を有するコンピュータに、
過去において、地下に埋設しようとしている一方の埋設物の掘削エリアと、地下に埋設されている他方の埋設物と、の関係を示す特徴量と、前記一方の埋設物の前記掘削エリアを掘削したときの前記他方の埋設物に対する影響の有無を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデル、を記憶する処理と、
現在において、地下に埋設しようとしている第1埋設物の掘削エリアと、地下に埋設されている第2埋設物と、の関係を示すデータを前記学習モデルに入力し、前記第1埋設物の前記掘削エリアを掘削したときの前記第2埋設物に対する影響の有無を判定する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下に埋設しようとしている第1埋設物の掘削エリアを掘削したときの、地下に埋設されている第2埋設物に対する影響の有無を効率的に判定するための情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、事業者ごとに異なった深度の地盤内に埋設された各埋設物についての敷設情報に基づいて、特定の事業者が自らの埋設物に工事を実施する際に他の事業者の埋設物に影響が発生すると判断される場合に、当該他の事業者との間での事前協議を促して工事遂行を円滑化する地下埋設物管理システムが開示されている。地下埋設物管理システムは、敷設情報を事業者ごとに管理するとともに、他事業者への影響の有無を判定する地図管理サーバと、事業者ごとに割り当てられたユーザID及びパスワードを管理するアクセスサーバと、事業者間のメール情報を送受信するメールサーバと、事業者間とメールサーバとを接続する通信網と、を備える。特許文献1によれば、工事を実施する特定の事業者が地図管理サーバにログインすることにより、工事位置における他事業者の埋設物の有無を確認できるため、事故を未然に防止して工事の効率化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-58971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、特定の事業者が自らの埋設物に工事を実施しようとする工事位置に他事業者の埋設物が確認されると、特定の事業者による工事が他事業者の埋設物に影響を与えないように、特定の事業者と他事業者との間で工事に関する事前協議を行う必要があり、特定の事業者と他事業者に対して多大な労力を強いる虞があった。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、地下に埋設しようとしている第1埋設物の掘削エリアを掘削したときの、地下に埋設されている第2埋設物に対する影響の有無を効率的に判定することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明のうちの1つは、プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置であって、過去において、地下に埋設しようとしている一方の埋設物の掘削エリアと、地下に埋設されている他方の埋設物と、の関係を示す特徴量と、前記一方の埋設物の前記掘削エリアを掘削したときの前記他方の埋設物に対する影響の有無を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデル、を記憶し、現在において、地下に埋設しようとしている第1埋設物の掘削エリアと、地下に埋設されている第2埋設物と、の関係を示すデータを前記学習モデルに入力し、前記第1埋設物の前記掘削エリアを掘削したときの前記第2埋設物に対する影響の有無を判定する。
【0007】
本発明の情報処理装置によれば、第1埋設物の掘削エリアを掘削したときの第2埋設物に対する影響の有無を効率的に判定することが可能となる。
【0008】
上記目的を達成するための本発明のうちの他の1つは、情報処理装置であって、前記特徴量は、前記掘削エリアと前記他方の埋設物との間の水平方向における最短距離、前記掘削エリアと前記他方の埋設物との間の垂直方向における最短距離、前記他方の埋設物の敷設方式、前記他方の埋設物の設備であるケーブルの種類、の少なくとも1つのデータを含む。
【0009】
本発明の情報処理装置によれば、特徴量は、一方の埋設物の掘削エリアに対して他方の埋設物における複数の特徴を選択的に組み合わせて構成することが可能となるため、学習モデルは、学習データに基づいて深層学習を行うことが可能となる。よって、第1埋設物の掘削エリアを掘削したときの第2埋設物に対する影響の有無を、高精度で判定することが可能となる。
【0010】
上記目的を達成するための本発明のうちの他の1つは、情報処理装置であって、前記敷設方式は、暗きょ式、管路式、直接埋設式の何れかである。
【0011】
本発明の情報処理装置によれば、敷設方式を具体的に限定することにより、第1埋設物の掘削エリアを掘削したときの第2埋設物に対する影響の有無を、高精度で判定することが可能となる。
【0012】
上記目的を達成するための本発明のうちの他の1つは、情報処理装置であって、前記ケーブルの種類は、送電線、配電線、通信線の何れかである。
【0013】
本発明の情報処理装置によれば、ケーブルの種類を具体的に限定することにより、第1埋設物の掘削エリアを掘削したときの第2埋設物に対する影響の有無を、高精度で判定することが可能となる。
【0014】
上記目的を達成するための本発明のうちの他の1つは、情報処理装置であって、前記一方の埋設物、前記他方の埋設物、前記第1埋設物、前記第2埋設物は、電力設備を含む。
【0015】
本発明の情報処理装置によれば、電力設備A(第1埋設物)の掘削エリアを掘削したときの電力設備B(第2埋設物)に対する影響の有無を効率的に判定することが可能となり、その結果、電力設備Bから需要家へ電力を確実に供給することが可能となる。
【0016】
その他、本願が開示する課題、およびその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、地下に埋設しようとしている第1埋設物の掘削エリアを掘削したときの、地下に埋設されている第2埋設物に対する影響の有無を効率的に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る影響有無判定装置の概略的な構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態で用いる学習データの一例を示す図である。
図3A】一方の電力設備の掘削エリアと他方の電力設備との位置関係を、地上から地下へ垂直方向に沿って眺めたときの平面図である。
図3B】一方の電力設備の掘削エリアと他方の電力設備との位置関係を、地下の中で水平方向に沿って眺めたときの横断図である。
図4】本実施形態で用いる学習モデルの一例である深層ニューラルネットワークの構造を示す図である。
図5】本実施形態に係る情報処理装置のハードウェアの一例を示すブロック図である。
図6】本実施形態に係る影響有無判定装置が学習データを用いて学習モデルの学習を行う際の処理を示すフローチャートである。
図7】本実施形態において、電力設備Aの掘削エリアを掘削したときの電力設備Bに対する影響の有無を、本実施形態に係る影響有無判定装置が判定する際の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。以下、本発明をその一実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置を用いる影響有無判定装置の概略的な構成を示すブロック図である。尚、本実施形態では、以下に説明する、一方の埋設物、他方の埋設物、第1埋設物、第2埋設物は、地下に埋設される電力設備(以下、「一方の電力設備」、「他方の電力設備」、「電力設備A」、「電力設備B」と称する。)であることとする。特に、一方の電力設備は、過去において地下に埋設しようとしている電力設備であり、他方の電力設備は、過去において地下に埋設されている電力設備であり、電力設備Aは、現在において地下に埋設しようとしている電力設備であり、電力設備Bは、現在において地下に埋設されている電力設備であることとする。以下、図1を参照しつつ、影響有無判定装置10について具体的に説明する。
【0021】
電力設備Aを地下に埋設する場合、電力設備Aの掘削エリアを掘削する必要がある。しかし、電力設備Aの掘削エリアを電力設備Aの事業者のみの判断で掘削すると、電力設備Bの損傷や送電支障等の影響を生じる虞がある。そこで、影響有無判定装置10は、電力設備Aの掘削エリアを掘削したときの電力設備Bに対する影響の有無を、人工知能であるAI(Artificial Intelligence)を用いて判定する。このような態様により、電力設備A,Bの事業者同士が電力設備Aの掘削エリアについて事前協議を行う前に、電力設備Aの掘削エリアを掘削したときの電力設備Bに対する影響の有無を判定することが可能となる。この結果、電力設備A,Bの事業者同士の事前協議を不要にすることも可能となり、電力設備A,Bの事業者に対する負担軽減を図ることが可能となる。特に、地下には電力設備の他にも様々な事業者の設備(ガス、上下水道、通信、地下鉄等)が埋設されており、これらの事業者との事前協議を減らせることは大きな負担軽減となる。
【0022】
影響有無判定装置10は、上記の判定処理を実行する手段として、記憶部20、入力部30、判定部40、出力部50、表示部60を備える。
【0023】
記憶部20は、制御プログラム21、学習データ22、学習モデル23を記憶する。
【0024】
制御プログラム21は、電力設備Aの掘削エリアを掘削したときの電力設備Bに対する影響の有無を判定するとき、影響有無判定装置10が解読して実行するプログラムである。
【0025】
学習データ22は、過去において、地下に埋設しようとしている一方の電力設備の掘削エリアと、地下に埋設されている他方の電力設備と、の関係を示す特徴量と、一方の電力設備の掘削エリアを掘削したときの他方の電力設備に対する影響の有無を示すラベルと、を対応付けたデータ(教師ありデータ)である。
【0026】
図2は、学習データ22の一例を示す図である。特徴量は、例えば、(1)一方の電力設備の掘削エリアと他方の電力設備との間の水平方向における最短距離、(2)一方の電力設備の掘削エリアと他方の電力設備との間の垂直方向における最短距離、(3)他方の電力設備の敷設方式、(4)他方の電力設備に設置されるケーブルの種類、を示すデータである。尚、特徴量は、(1)~(4)のうちの何れか1つのデータであってもよいし、(1)~(4)の何れかを選択的に組み合わせたデータであってもよい。ラベルは、一方の電力設備の掘削エリアを掘削したときの他方の電力設備に対する影響の有無を示し、特徴量に対応付けられるデータである。学習データ22は、例えば、一方の電力設備及び他方の電力設備の事業者同士の過去における事前協議の結果得られた様々な値の特徴量の夫々に対して、一方の電力設備の掘削エリアを掘削したときの他方の電力設備に対する影響の有無を示すラベルを対応付けることで形成されるデータである。そのため、学習データ22は、電力設備Aの掘削エリアを掘削したときの電力設備Bに対する影響の有無を影響有無判定装置10が判定するための十分な根拠を有することとなる。
【0027】
図3Aは、一方の電力設備の掘削エリアと他方の電力設備との位置関係を、地上から地下へ垂直方向に沿って眺めたときの平面図であり、図3Bは、一方の電力設備の掘削エリアと他方の電力設備との位置関係を、地下の中で水平方向に沿って眺めたときの横断図である。
【0028】
特徴量(1)の「一方の電力設備の掘削エリアと他方の電力設備との間の水平方向における最短距離」とは、図3Aから明らかなように、一方の電力設備の掘削エリアと他方の電力設備との間の水平方向における複数の直線距離の中で最短の直線距離のことであり、水平方向における最短距離が大きくなるほど、他方の電力設備に対する影響は小さくなる。
【0029】
特徴量(2)の「一方の電力設備の掘削エリアと他方の電力設備との間の垂直方向における最短距離」とは、図3Bから明らかなように、一方の電力設備の掘削エリアと他方の電力設備との間の垂直方向における複数の直線距離の中で最短の直線距離のことであり、垂直方向における最短距離が大きくなるほど、他方の電力設備に対する影響は小さくなる。
【0030】
特徴量(3)の「他方の電力設備の敷設方式」とは、暗きょ式、管路式、直接埋設式の何れかのことである。暗きょ式とは、敷設・撤去・保守を行う作業者が立ち入れる程度の径を有する洞道、共同溝等のトンネルを地下に設置し、トンネル内に通信線、ガス管、上水管、下水管等とともに電力線をまとめて収容する方式である。暗きょ式は、トンネルの径が大きいため、電力線等を管理することが容易となり、電力線等の放熱が十分となる等のメリットを有するが、トンネルの設置工事に関して多大な時間及びコストが掛かるデメリットも有する。また、管路式とは、鉄管、鉄筋コンクリート管、強化プラスチック管等の管を地下に設置し、管内に電力線を挿入する方式である。管路式は、複数の電力線をまとめて管理することが容易となるメリットを有するが、管の径が小さいため、電力線の放熱が不十分となり、電力線を流れる許容電流が制限されるデメリットも有する。また、直接埋設式とは、地面を掘削した後、電力線と電力線を保護するカバーとを地下に直接埋設する方式である。直接埋設式は、電力線及びカバーの埋設工事に関して時間及びコストが抑えられるメリットを有するが、電力線が損傷を受けやすいデメリットも有する。他方の電力設備の周囲の状況を同一と仮定すると、他方の電力設備の敷設方式として直接埋設式、管路式、暗きょ式を採用する順に、他方の電力設備に対する影響は小さくなる。他方の電力設備の事業者は、他方の電力設備が埋設される周囲の状況に応じて、暗きょ式、管路式、直接埋設式の夫々のメリット及びデメリットを勘案した上で、暗きょ式、管路式、直接埋設式のうち何れかの敷設方式を採用している。
【0031】
特徴量(4)の「他方の電力設備に設置されるケーブルの種類」とは、送電線又は配電線の何れかのことである。送電線は配電線よりも送電電力が大きいため、他方の電力設備に送電線が設置される場合における一方の電力設備の掘削エリアと他方の電力設備との間の水平方向及び垂直方向における最短距離は、他方の電力設備に配電線が設置される場合における一方の電力設備の掘削エリアと他方の電力設備との間の水平方向及び垂直方向における最短距離よりも大きくする必要がある。他方の埋設物及び第2埋設物が通信設備である場合、ケーブルは複数種類の通信線の何れかである。
【0032】
尚、学習データ22は、学習モデル23の学習を行うときのみ必要になるデータであるため、記憶部20に記憶する代わりに、外部のコンピュータの記憶装置(不図示)に記憶するようにしてもよい。そして、影響有無判定装置10が通信ネットワークを介して外部のコンピュータから学習データ22を取得し、影響有無判定装置10上で学習データ22を用いて学習モデル23の学習を行うようにしてもよい。或いは、外部のコンピュータ上で学習データ22を用いて学習モデル23の学習を行い、影響有無判定装置10が通信ネットワークを介して外部のコンピュータから学習済みの学習モデル23を取得して記憶部20に記憶するようにしてもよい。
【0033】
学習モデル23は、学習データ22を用いて学習を行うことにより、一方の電力設備及び他方の電力設備が夫々電力設備A及び電力設備Bに対応することとして、現在において、新たに地下に埋設しようとする電力設備Aの掘削エリアを掘削したときの、既に地下に埋設されている電力設備Bに対する影響の有無を判定するように形成された機械学習モデルである。学習モデル23は、より多くの学習データ22を用いて学習を行うほど、より正確な判定を行うことが可能となる。尚、本実施形態では、学習モデル23は、例えば深層ニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)であることとするが、勾配ブースティング(GBDT:Gradient Boosting Decision Tree)等の他の種類のモデルであってもよい。
【0034】
図4は、学習モデル23の一例である深層ニューラルネットワークの構造を示す図である。
【0035】
学習モデル23は、入力層231、中間層232、出力層233の3層を含んで構成される。入力層231は、現在において、新たに地下に埋設しようとする電力設備Aの掘削エリアと、既に地下に埋設されている電力設備Bと、の関係を示す、図2の特徴量と同一種類のデータが入力される層である。中間層232は、学習データ22を用いて学習を行うことにより調整されるパラメータを含む1つ以上のノードからなる1つ以上の隠れ層を含む層である。中間層232は、入力層231に入力されるデータに基づき、電力設備Aの掘削エリアを掘削したときの電力設備Bに対する影響の有無を判定する。出力層233は、中間層232による判定結果を出力する層である。
【0036】
図1に戻り、入力部30は、影響有無判定装置10が学習モデル23を用いて電力設備Aの掘削エリアを掘削したときの電力設備Bに対する影響の有無を判定するとき、電力設備Aの掘削エリアと電力設備Bとの関係を示すデータが入力される。
【0037】
判定部40は、学習モデル23の入力層231へのデータ入力動作、学習モデル23の中間層232による判定動作、学習モデル23の出力層233からの判定出力動作を制御する。つまり、判定部40が学習モデル23の動作を制御することにより、入力層231には電力設備Aの掘削エリアと電力設備Bとの関係を示すデータが入力され、中間層232では電力設備Aの掘削エリアを掘削したときの電力設備Bに対する影響の有無が判定され、出力層233からは判定結果が出力される。学習モデル23は、例えば、電力設備Aの掘削エリアと電力設備Bとの間の水平方向における最短距離が、影響の有無を判定する際の閾値とされる距離(例えば10m)よりも大きい場合であっても、電力設備Aの掘削エリアと電力設備Bとの間の垂直方向における最短距離、電力設備Bの敷設方式、電力設備Bに設置される電力線の種類等の他のデータを含めて総合的に学習実績と比較し、電力設備Aの掘削エリアを掘削したときの電力設備Bに対する影響を「有り」と判定する場合がある。このように、学習モデル23は、電力設備A,Bの埋設に関する様々な特徴から電力設備Bに対する影響の有無を総合的に判定する場合に有効な手段である。
【0038】
出力部50は、判定部40による判定結果を外部に出力する。
【0039】
表示部60は、判定部40による判定結果を表示する。
【0040】
図5は、影響有無判定装置10の実現に用いる情報処理装置100のハードウェアの一例を示すブロック図である。情報処理装置100は、プロセッサ110、主記憶装置120、補助記憶装置130、入力装置140、出力装置150、通信装置160を備える。情報処理装置100は、例えば、パーソナルコンピュータ、オフィスコンピュータ、各種サーバ装置、汎用機等である。情報処理装置100は、その全部又は一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。影響有無判定装置10は、通信可能に接続された複数の情報処理装置100を用いて実現されるものであってもよい。
【0041】
プロセッサ110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成される。
【0042】
主記憶装置120は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0043】
補助記憶装置130は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード、SDカード、光学式記録媒体等の記録媒体の読取/書込装置、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置130には、記録媒体の読取装置や通信装置160を介してプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置130に記憶されているプログラムやデータは主記憶装置120に随時読み込まれる。
【0044】
入力装置140は、外部からの入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0045】
出力装置150は、処理経過や処理結果等の各種情報を出力するインタフェースである。出力装置150は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、情報処理装置100は、通信装置160を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0046】
入力装置140および出力装置150は、ユーザとの間で情報の受け付けや情報の提示を行うユーザインタフェースを構成する。
【0047】
通信装置160は、通信ネットワーク5等の通信基盤を介した他の装置との間での通信(有線通信又は無線通信)を実現する装置であり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール等を用いて構成される。
【0048】
尚、情報処理装置100には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(Data Base Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0049】
影響有無判定装置10が備える機能は、情報処理装置100のプロセッサ110が、主記憶装置120に読み込まれているプログラム(制御プログラム)を解読して実行することにより実現され、又は、影響有無判定装置10を構成するハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)自体の機能により実現される。例えば、図1の記憶部20は主記憶装置120及び補助記憶装置130により実現され、図1の入力部30は入力装置140により実現され、図1の判定部40はプロセッサ110により実現され、図1の出力部50及び表示部60は出力装置150及び通信装置160により実現される。
【0050】
図6は、影響有無判定装置10が学習データ22を用いて学習モデル23の学習を行う際の処理を示すフローチャートである。
【0051】
先ず、影響有無判定装置10は、過去において、地下に埋設しようとする一方の電力設備の掘削エリアと、地下に埋設されている他方の電力設備と、の関係を示す説明変数である特徴量と、一方の電力設備の掘削エリアを掘削したときの他方の電力設備に対する影響の有無を示す目的変数であるラベルと、を対応付けた学習データ22を生成する(S1000)。
【0052】
次に、影響有無判定装置10は、学習データ22を用いて学習モデル23の学習を行う(S1010)。尚、影響有無判定装置10は、学習済みの学習モデル23に対して予測精度の検証を行うようにしてもよい。その場合、影響有無判定装置10は、学習データ22として学習用データ及び検証用データを用意し、学習用データを用いて学習モデル23の学習を行い、検証用データを用いて学習モデル23の検証を行う。
【0053】
図7は、電力設備Aの掘削エリアを掘削したときの電力設備Bに対する影響の有無を影響有無判定装置10が判定する際の処理を示すフローチャートである。
【0054】
先ず、影響有無判定装置10では、電力設備Aの掘削エリアと電力設備Bとの関係を示すデータが入力部30に入力されたかどうかを判定する(S2000)。電力設備Aの掘削エリアと電力設備Bとの関係を示すデータが入力部30に入力されていないとき(S2000:NO)、影響有無判定装置10は、ステップS2000の判定動作を繰り返す。
【0055】
一方、電力設備Aの掘削エリアと電力設備Bとの関係を示すデータが入力部30に入力されると(S2000:YES)、影響有無判定装置10では、学習モデル23を用いて、電力設備Aの掘削エリアを掘削したときの電力設備Bに対する影響の有無を判定する(S2010)。
【0056】
次に、影響有無判定装置10は、学習モデル23による判定結果を外部に出力するか、或いは表示部60に表示する(S2020)。例えば、電力設備Aの掘削エリアを掘削すると電力設備Bが影響を受けると判定された場合、電力設備Aの事業者は、電力設備Bに影響を与えないエリアに掘削エリアを変更することが可能となる。
【0057】
以上説明したように、プロセッサ110及び記憶装置(主記憶装置120、補助記憶装置130)を有する情報処理装置100は、過去において、地下に埋設しようとしている一方の電力設備の掘削エリアと、地下に埋設されている他方の電力設備と、の関係を示す特徴量と、一方の電力設備の掘削エリアを掘削したときの他方の電力設備に対する影響の有無を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデル、を記憶し、現在において、地下に埋設しようとしている電力設備Aの掘削エリアと、地下に埋設されている電力設備Bと、の関係を示すデータを学習モデル23に入力し、電力設備Aの掘削エリアを掘削したときの電力設備Bに対する影響の有無を判定する。
【0058】
情報処理装置100によれば、電力設備Aの掘削エリアを掘削したときの電力設備Bに対する影響の有無を効率的に判定することが可能となり、その結果、電力設備Bから需要家へ電力を確実に供給することが可能となる。更に、電力設備A,Bの事業者同士が電力設備Aの掘削エリアについて事前協議を行う前に、電力設備Aの掘削エリアを掘削したときの電力設備Bに対する影響の有無を判定することが可能となり、この結果、電力設備A,Bの事業者同士の事前協議が不要となって、電力設備A,Bの事業者に対する負担軽減を図ることも可能となる。
【0059】
また、情報処理装置100において、学習データ22における特徴量は、電力設備Aの掘削エリアと電力設備Bとの間の水平方向における最短距離、電力設備Aの掘削エリアと電力設備Bとの間の垂直方向における最短距離、電力設備Bの敷設方式、電力設備Bの設備であるケーブル(電力線)の種類、の少なくとも1つのデータを含む。
【0060】
情報処理装置100によれば、特徴量は、電力設備Aの掘削エリアに対して電力設備Bにおける複数の特徴を選択的に組み合わせて構成することが可能となるため、学習モデル23は、学習データ22に基づいて深層学習を行うことが可能となる。よって、電力設備Aの掘削エリアを掘削したときの電力設備Bに対する影響の有無を、高精度で判定することが可能となる。
【0061】
また、情報処理装置100において、電力設備Bの敷設方式は、暗きょ式、管路式、直接埋設式の何れかである。
【0062】
情報処理装置100によれば、敷設方式を具体的に限定することにより、電力設備Aの掘削エリアを掘削したときの電力設備Bに対する影響の有無を、高精度で判定することが可能となる。
【0063】
また、情報処理装置100において、電力設備Bに設置される電力線の種類は、送電線、配電線の何れかである。
【0064】
情報処理装置100によれば、電力線の種類を具体的に限定することにより、電力設備Aの掘削エリアを掘削したときの電力設備Bに対する影響の有無を、高精度で判定することが可能となる。
【0065】
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。本実施形態では、地下に埋設される他方の埋設物及び第2埋設物を電力設備としたが、電力設備以外のガス、上下水道、通信、地下鉄等の設備であっても、本実施形態の学習モデル23を適用することは可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 影響有無判定装置
20 記憶部
21 制御プログラム
22 学習データ
23 学習モデル
30 入力部
40 判定部
50 出力部
60 表示部
100 情報処理装置
110 プロセッサ
120 主記憶装置
130 補助記憶装置
140 入力装置
150 出力装置
160 通信装置
231 入力層
232 中間層
233 出力層
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7