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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039060
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/72 20060101AFI20240313BHJP
   F24C 7/02 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H05B6/72 C
F24C7/02 511E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004382
(22)【出願日】2024-01-16
(62)【分割の表示】P 2023562339の分割
【原出願日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2022108222
(32)【優先日】2022-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514011859
【氏名又は名称】株式会社ダイレクト・アール・エフ
(71)【出願人】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 一幸
(72)【発明者】
【氏名】南里 直人
(57)【要約】      (修正有)
【課題】様々な被調理物を効率的に加熱する。
【解決手段】加熱調理器は、被調理物が収納される容器ユニットと、高周波を出力する高周波回路30から給電された前記高周波を、前記被調理物を加熱するための電磁波として、前記容器ユニット内に放射するアンテナ50と、前記被調理物が載置される載置面250Aと、を備え、前記容器ユニットは、前記アンテナから放射された前記電磁波に共振する共振キャビティを形成するよう構成され、前記アンテナと前記載置面に載置された前記被調理物との間の第1距離が変更可能となるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物が収納される容器ユニットと、
高周波を出力する高周波回路から給電された前記高周波を、前記被調理物を加熱するための電磁波として、前記容器ユニット内に放射するアンテナと、
前記被調理物が載置される載置面と、
を備え、
前記容器ユニットは、前記アンテナから放射された前記電磁波に共振する共振キャビティを形成するよう構成され、
前記アンテナと前記載置面に載置された前記被調理物との間の第1距離が変更可能となるように構成された、
加熱調理器。
【請求項2】
前記載置面に載置された前記被調理物が位置するための被調理物収納空間が、前記容器ユニット内において前記アンテナと前記載置面との間に存在するように配置されている
請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記アンテナは、前記容器ユニット内において、前記載置面の上方に配置され、
前記載置面は、前記容器ユニット内において、上下方向に移動可能に設けられている
請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記電磁波の放射中における前記高周波回路の動作状態を監視し、前記動作状態に応じて、前記第1距離の大きさを制御するコントローラを更に備える
請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記載置面は、前記電磁波の放射前は、初期位置である第1位置に存在し、
前記コントローラは、前記電磁波の放射中において、前記動作状態に応じて前記載置面を、前記第1位置から、第2位置へ移動させるよう構成され、
前記第2位置は、前記載置面が前記第1位置にあるときよりも前記第1距離が小さい位置である
請求項4に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記載置面は、前記アンテナとの間の第2距離が変更されるように、前記容器ユニット内において移動可能に設けられ、
前記第1位置は、前記第2距離が最大となる位置である
請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記容器ユニットは、前記載置面に載置された前記被調理物が位置するための被調理物収納空間と前記アンテナとの間に、前記載置面が前記第1位置にあるときには前記被調理物が存在しないマージン空間を有し、
前記マージン空間は、前記載置面が前記第2位置へ移動したときに、前記被調理物が存在し得る空間である
請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記容器ユニットは、前記容器ユニットの体積が可変に構成されている
請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記電磁波の放射中における前記高周波回路の動作状態を監視し、前記動作状態に応じて、前記体積を調整するためのコントローラを更に備える請求項8に記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記電磁波の放射中における前記高周波回路の動作状態を監視し、前記動作状態に応じて、前記第1距離の大きさを制御するとともに前記体積を調整するコントローラを更に備える請求項8に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱調理器に関する。本出願は、2022年7月5日出願の日本出願第2022-108222号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器として、アンテナから放射された電磁波によって被調理物を加熱する装置が知られている。特許文献1は、電磁加熱される物体が内部に配置されるキャビティが、UHFまたはマイクロ波範囲の周波数で共振する共振キャビティ(resonant cavity)であることを開示している。キャビティが共振することで、電磁波のエネルギー損失を抑えて、効率よく物体を加熱することができる。
【0003】
特許文献2は、マイクロ波加熱共振キャビティを有するセパレート型電子レンジを開示している。特許文献2のセパレート型電子レンジは、載置プレートを含む。載置プレートは、マイクロ波加熱共振キャビティ内に位置する。被加熱物は、載置プレートの上に置かれる。特許文献1において、マイクロ波加熱共振キャビティ内にマイクロ波を案内するための電磁波ガイド部材が、載置プレートの直下に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-238617号公報
【特許文献2】特表2019-509585号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献2では、マイクロ波加熱共振キャビティを構成する複数のケースユニットが結合した状態において、電磁波の放射源である電磁波ガイド部材と載置プレートとの位置関係は、固定であり、変化しない。
【0006】
本発明者らは、被調理物の効率的な加熱のためには、電磁波を放射するアンテナと被調理物との間の距離を変化させたほうがよいことを実験的に見出した。例えば、大きな被調理物の場合は、アンテナ-被調理物間距離は近くてもよいが、小さな被調理物の場合は、アンテナ-被調理物間距離は大きい方がよい。
【0007】
また、効率的な加熱のための最適なアンテナ-被調理物間距離は、加熱の進行に伴って小さくなることが多い。
【0008】
したがって、様々な被調理物を効率的に加熱するには、アンテナ-被調理物間距離を調整可能であることが望まれる。
【0009】
本開示のある側面は、加熱調理器である。開示の加熱調理器は、被調理物が収納される容器ユニットと、高周波を出力する高周波回路から給電された前記高周波を、前記被調理物を加熱するための電磁波として、前記容器ユニット内に放射するアンテナと、前記被調理物が載置される載置面と、を備え、前記容器ユニットは、前記アンテナから放射された前記電磁波に共振する共振キャビティを形成するよう構成され、前記アンテナと前記載置面に載置された前記被調理物との間の第1距離が変更可能となるように構成されている。
【0010】
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、加熱調理器の内部断面構造図である。
図2図2は、分離及び接合する容器ユニットの模式図である。
図3図3は、容器ユニットの分解断面図である。
図4図4は、第2分割体ユニットの模式図である。
図5図5は、加熱調理器の回路図である。
図6図6は、加熱調理器の動作のフローチャートである。
図7図7は、第2分割体ユニットの水平移動を示す平面図である。
図8図8は、伸縮する容器ユニットの模式図である。
図9図9は、載置面の高さ調整可能なである容器ユニットの模式図である。
図10図10は、電磁波の放射を示す断面図である
図11図11は、図10のXI-XI線断面図である。
図12図12は、下釜水平移動の説明図である。
図13図13は、載置面の移動の他の例を示す図である。
図14図14は、実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<1.加熱調理器の概要>
【0013】
(1)実施形態に係る加熱調理器は、被調理物が収納される容器ユニットと、高周波を出力する高周波回路から給電された前記高周波を、前記被調理物を加熱するための電磁波として、前記容器ユニット内に放射するアンテナと、前記被調理物が載置される載置面と、を備え、前記容器ユニットは、前記アンテナから放射された前記電磁波に共振する共振キャビティを形成するよう構成され、前記アンテナと前記載置面に載置された前記被調理物との間の第1距離が変更可能となるように構成されている。かかる構成によれば、アンテナ-被調理物間距離が調整可能となり、様々な被調理物を効率的に加熱することができる。第1距離を変更するには、例えば、アンテナを位置固定とし、載置面を移動させることで実現され得る。例えば、載置面は、第1距離が変更可能となるように第1ユニット内において移動可能に設けられているのが好ましい。また、第1距離を変更するには、載置面を位置固定とし、アンテナを移動させることでも実現され得る。また、アンテナ及び載置面の両方が移動可能であってもよい。
【0014】
(2)前記載置面に載置された前記被調理物が位置するための被調理物収納空間が、前記容器ユニット内において前記アンテナと前記載置面との間に存在するように配置されているのが好ましい。
【0015】
(3)前記アンテナは、前記容器ユニット内において、前記載置面の上方に配置され、前記載置面は、前記容器ユニット内において、上下方向に移動可能に設けられているのが好ましい。
【0016】
(4)加熱調理器は、前記電磁波の放射中における前記高周波回路の動作状態を監視し、前記動作状態に応じて、第1距離の大きさを制御するコントローラを更に備えるのが好ましい。コントローラ40は、載置面の移動、及び、アンテナの移動の少なくともいずれか一つを制御し得る。
【0017】
(5)前記載置面は、前記電磁波の放射前は、初期位置である第1位置に存在し、前記コントローラは、前記電磁波の放射中において、前記動作状態に応じて前記載置面を、前記第1位置から、第2位置へ移動させるよう構成され、前記第2位置は、前記載置面が前記第1位置にあるときよりも前記第1距離が小さい位置であるのが好ましい。コントローラは、前記第2位置だけでなく、前記載置面が前記第1位置にあるときよりも前記第1距離が大きい第3位置へ、前記載置面を移動させるよう構成されていてもよい。
【0018】
(6)前記載置面は、前記アンテナとの間の第2距離が変更されるように、前記容器ユニット内において移動可能に設けられ、前記第1位置は、前記第2距離が最大となる位置であるのが好ましい。
【0019】
(7)前記容器ユニットは、前記被調理物収納空間と前記アンテナとの間に、前記載置面が前記第1位置にあるときには前記被調理物が存在しないマージン空間を有し、前記マージン空間は、前記載置面が前記第2位置へ移動したときに、前記被調理物が存在し得る空間であるのが好ましい。
【0020】
(8)前記容器ユニットは、前記容器ユニットの体積が可変に構成されているのが好ましい。ここでの体積は、容器ユニット内の容積であり、キャビティの体積に等しい。容器ユニットの体積を変えることで、共振周波数を調整することができる。なお、前記容器ユニットは、体積が可変でなくてもよく、体積が固定であってもよい。
【0021】
(9)前記電磁波の放射中における前記高周波回路の動作状態を監視し、前記動作状態に応じて、前記体積を調整するためのコントローラを更に備えるのが好ましい。この場合、反射波に応じて体積が適切に調整される。
【0022】
(10)加熱調理器は、前記電磁波の放射中における前記高周波回路の動作状態を監視し、前記動作状態に応じて、前記第1距離の大きさを制御するとともに前記体積を調整するコントローラを更に備えるのが好ましい。
【0023】
また、前記容器ユニットは、複数の分割体を備えるとともに、前記容器ユニット内を閉鎖空間にするように前記複数の分割体が接合された第1状態と、前記第1状態から前記複数の分割体の少なくともいずれか一つが移動することで、前記被調理物を前記容器ユニット内に入れるための開口が現れる第2状態と、に変更可能に構成され、前記複数の分割体は、前記アンテナが設けられた第1分割体と、前記載置面が設けられた第2分割体と、を備え、前記第1状態と第2状態との間での前記容器ユニットの状態変更のため、前記第2分割体は、前記載置面に直交する方向へ移動するよう構成されているのが好ましい。この場合、アンテナが設けられた第1分割体ではない第2分割体が、載置面に直交する方向へ移動することができる。
【0024】
なお、容器ユニットは、前記被調理物を収納するために前記複数の分割体が接合した前記第1状態において、前記アンテナから放射された前記電磁波に共振する共振キャビティを形成するよう構成されているのが好ましい。この場合、共振キャビティを構成する容器ユニットが、複数の分割体によって構成された分割構造であり、複数の分割体が接合した第1状態において、共振キャビティを形成する。容器ユニットが分割構造であることで、容器の分割体それぞれに対して、適切な役割を担わせることができる。
【0025】
前記複数の分割体は、それぞれ、内部に部分キャビティを備え、前記共振キャビティは、前記第1状態において、前記複数の分割体それぞれの前記部分キャビティが連通した空間として形成されるのが好ましい。この場合、キャビティは、複数の部分キャビティの組み合わせによって構成される。キャビティが分割構造であることで、複数の部分キャビティそれぞれに対して、適切な役割を担わせることができる。
【0026】
前記複数の分割体に備わった部分キャビティのうちの少なくともいずれか一つの部分キャビティには、前記被調理物が載置される載置面が設けられ、前記第1状態と第2状態との間での前記容器ユニットの状態変更のため、前記複数の分割体のうちの少なくともいずれか一つの分割体は、前記載置面に直交する方向へ移動するよう構成されているのが好ましい。この場合、移動する分割体の移動方向は、載置面に直交する方向になる。
【0027】
さらに、前記第1分割体は、前記加熱調理器における固定した位置に設けられているのが好ましい。アンテナが設けられた第1分割体が固定した位置に設けられていることで、共振周波数の変動が大きくなるおそれのある第1分割体の移動を回避できる。
【0028】
また、前記容器ユニットは、前記被調理物を前記容器ユニット内に入れるための開口を有し、前記電磁波の放射は、前記開口が閉じられた状態で行われ、前記被調理物収納空間は、前記開口から前記容器ユニット内に入れて前記開口を閉じることができる最大の大きさの前記被調理物に対応した大きさの空間であるのが好ましい。
【0029】
なお、被調理物が位置するための被調理物収納空間は、アンテナと載置面との間に存在しなくてもよい。例えば、アンテナは、載置面からみて、被調理物収納空間がある側とは反対側に設けられていてもよい。
【0030】
<2.加熱調理器の例>
【0031】
以下、図面に基づき、実施形態に係る加熱調理器10の一例を説明する。図1は、実施形態に係る加熱調理器10の内部断面構造を示している。図1において、図の左側が、加熱調理器10の正面側であり、図の右側が、加熱調理器10の背面側である。図1及び他の図において、X方向は、加熱調理器10の左右方向を示し、Y方向は、加熱調理器10の前後方向を示し、Z方向は、加熱調理器10の高さ方向を示す。なお、XY平面は、水平面である。
【0032】
加熱調理器10は、被調理物が配置される容器ユニット20を備える。加熱調理器10は、容器ユニット20に収納された被調理物を加熱する。被調理物は、例えば、冷凍肉、冷凍ケーキ、炊飯のために水に浸した米である。ここでの調理は、被調理物の単なる加熱を含む概念である。
【0033】
容器ユニット20は、複数の分割体210,220を備える。図1の容器ユニット20は、一例として、第1分割体210と、第2分割体220と、を備える。容器ユニット20は、3個以上の分割体を備えてもよい。図1に示す第1分割体210は、上容器210又は上釜210と呼んでもよい。図2に示す第2分割体220は、下容器220又は下釜220と呼んでもよい。
【0034】
複数の分割体210,220は、それぞれ、導体によって形成されている。導体としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、又は銅である。
【0035】
容器ユニット20は、その内部に配置された内部容器250を備える。内部容器250は、例えば、ガラス容器又は陶器である。内部容器250を構成する材料は、絶縁体であるのが好ましいが、導体であってもよい。また、内部容器250は、発熱体であってもよい。この場合、内部容器250からの発熱によって、被調理物を補助的に加熱することもできる。
【0036】
内部容器250は、載置面250Aを形成する底部250Bと、底部250Bの周縁から上方に立ち上がり形成された側壁250Cと、を備える。ここでの載置面250Aは、水平面(XY平面)である。底部250Bは、例えば、平面視において円形である。側壁250Cの上部には、内部容器250の径外方向に延びる係合部250Dが形成されている。係合部250Dは、容器ユニット20内における内部容器250の位置決めのため、被係合部224に係合する。内部容器250は、容器ユニット20内で移動自在に設けられ得る。内部容器250は、一例として、容器ユニット20内において、上下方向(Z方向)に移動自在である。内部容器250がガラスなどの絶縁体によって形成されている場合、容器250は、金属等の導体を備え得る。容器250が備える導体は、例えば、ステンレス鋼(SUS)である。容器250が備える導体は、例えば、底部250Bの下側に配置され得る。導体は、底部205Bのほぼ全面に配置され得る。底部205Bの下側に配置される導体は、容器250に一体的に取り付けられていてもよいし、容器250とは分離可能に底部205Bの下側に配置されていてもよい。導体は、容器ユニット20内において、容器250とともに上下方向に移動する。
【0037】
容器ユニット20は、複数の分割体210,220を組み合わせた分割構造を有する。複数の分割体210,220は、互いに接合及び分離が可能である。容器ユニット20は、複数の分割体210,220が図1のように互いに接合した第1状態(閉状態)になることで、容器ユニット20内部に単一のキャビティ200を形成する。キャビティ200は、被調理物が収納される調理室として機能する。第1状態において、キャビティ200は閉鎖空間である。
【0038】
容器ユニット20は、開状態である第2状態になることもできる。第2状態は、第1状態から前記複数の分割体の少なくともいずれか一つが移動して得られる。第2状態では、被調理物を容器ユニット20内に入れるための開口が現れる。第2状態は、例えば、第1分割体210と第2分割体220とが分離した状態である。第2状態において、キャビティ200は外部に開放される。第1分割体210と第2分割体220とは、一例として、上下方向(Z方向)に分離する。分離又は接合のため、第1分割体210及び第2分割体220のいずれか一方又は両方が移動し得るが、第1分割体210は移動せず、第2分割体220が移動するのが好ましい。なお、第2状態は、第1分割体210と第2分割体22の一部が結合又は接触したまま、両分割体210,220の少なくともいずれか一つが移動(ここでの移動は、例えば、回動又はスライド)して、被調理物を入れるための開口が現れてもよい。
【0039】
加熱調理器10は、第2分割体220を有して構成された第2分割体ユニット300を備える。第2分割体220は、第2分割体ユニット300内において、体積が変更可能に構成されている。また、内部容器250は、第2分割体ユニット300内において、移動可能に設けられている。第2分割体ユニット300は、ユニット筐体310内に第2分割体220を取り付けて構成されている。ユニット筐体310内には、後述の調整機構80の一部が設けられる。
【0040】
加熱調理器10が備える調整機構80は、例えば、第2分割体220の体積調整を行う。また、調整機構80は、内部容器250の高さ調整を行う。
【0041】
第2分割体ユニット300は、筐体13に対して移動自在に設けられている。筐体13には第1分割体210が位置固定的に設けられているため、第2分割体ユニット300は、第1分割体210に対して移動自在である。第2分割体ユニット300は、例えば、上下方向(Z方向)に移動自在である。第2分割体ユニット300は、下容器ユニット300又は下釜ユニット300と呼んでもよい。
【0042】
第2分割体ユニット300は、第1分割体210に対して接合及び分離可能に設けられている。調整機構80は、第2分割体ユニット300の位置も調整する。すなわち、調整機構80は、第2分割体ユニット300の位置調整を通じて、容器ユニット20を第1状態と第2状態との間で状態変更することもできる。
【0043】
調整機構80は、第2分割体ユニット300の外部に設けられた外部機構81と、第2分割体ユニット300の内部に設けられた内部機構82と、を備える。外部機構81と内部機構82とは、互いに接続されている。外部機構81は、筐体13内に配置され、筐体13に取り付けられている。外部機構81は、例えば、ベース部13D上に取り付けられている。外部機構81は、駆動部90によって駆動されて動作する。駆動部90は、例えば、電動モータである。調整機構80の更なる詳細については後述される。
【0044】
加熱調理器10が備える筐体13は、前面部13Aと、天井部13Bと、背面部13Cと、ベース部13Dと、を備える。筐体13は、その内部に、第1分割体210、高周波回路30、コントローラ40、温度センサ70、調整機構80、駆動部90などを備える。
【0045】
前面部13Aには、入出力装置15が設けられている。入出力装置15は、加熱調理器10のユーザによる入力操作を受け付け、必要な情報をユーザに対して出力する。入出力装置15は、一例として、タッチパネルである。
【0046】
加熱調理器10は、アンテナ50を備える。アンテナ50は、被調理物を加熱するための電磁波をキャビティ200内に放射する。アンテナ50は、一例として、第1分割体210に設けられる。アンテナ50の数は、1つでもよいし、複数でもよい。アンテナ50は、第2分割体220に設けられてもよいが、後述のように、アンテナ50は、第1分割体210にだけ設けられ、第2分割体220に設けられないのが好ましい。図示のアンテナ50は、容器ユニット20内において位置固定的に設けられているが、アンテナ50は容器ユニット20内において移動可能に設けられていてもよい。
【0047】
アンテナ50から放射される電磁波の周波数は、特に限定されないが、一例として915MHz(波長λは約328mm)である。アンテナ50は、一例として、ループアンテナである。ループアンテナは、導体エレメントをループ状に形成したアンテナである。ループの巻数は、例えば、1であるが、1よりも大きくてもよい。ループアンテナの導体エレメントのエレメント長は、例えば、λ/2程度に設定され得る。アンテナ50は、例えば、図1に示すように、載置面250Aの上方の位置において、ループ面が載置面250A(水平面)とほぼ平行になるように設けられる。
【0048】
アンテナ50は、給電線を介して、高周波回路30に接続されている。高周波回路30は、アンテナ50に対して、電磁波として放射される高周波を給電する。高周波回路30はコントローラ40によって制御される。
【0049】
加熱調理器10は、被調理物を加熱するための熱を放射するヒータ60を備える。ヒータ60は、一例として、通電により赤外線を放射する赤外線ヒータである。ヒータ60は、例えば、載置面の250の上方の位置に設けられ得る。図1において、ヒータ60は、アンテナ50の近傍に配置されている。ヒータ60は、コントローラ40によって制御される。
【0050】
加熱調理器10は、アンテナ50から放射された電磁波、及び、ヒータ60から放射された熱の両方又はいずれか単独で、被調理物を加熱することができる。電磁波は、被調理物の内部を加熱するのに好適である。また、ヒータ60から放射された熱は、被調理物の表面を加熱するのに好適である。また、ヒータ60は、キャビティ200内の温度を上昇させるためにも好適である。
【0051】
加熱調理器10は、キャビティ200(容器ユニット20)の温度の測定のため、温度センサ70を備える。温度センサ70は、例えば、第1分割体210に設けられる。温度センサ70は、キャビティ200の外部において温度を測定するよう設けられていてもよいし、キャビティ200の外部において温度を測定するように設けられていてもよい。温度センサ70は、コントローラ40に接続されている。コントローラ40は、測定した温度に基づいて、ヒータ60を制御する。コントローラ40は、測定した温度に基づいて、アンテナ50から放射される電磁波のパワー又は周波数を制御してもよい。
【0052】
加熱調理器10は、容器ユニット20の保温のため断熱材17を備える。図1において、断熱材17は、第1分割体210を覆うように設けられている。断熱材17は、第2分割体220も覆うように設けられてもよい。
【0053】
図2の容器ユニット20Aは、第1状態にある容器ユニット20を模式的に示している。なお、図2に示す容器ユニット20Aは、理解の容易のため、第1分割体210と第2分割体220とがわずかに分離して描かれている。
【0054】
図2にも示すように、キャビティ200は、第1分割体210の内部に形成された第1部分キャビティ210Aと、第2分割体220の内部に形成された第2部分キャビティ220Aと、を備える。
【0055】
第1分割体210は、第1開口210Bを備える。第1分割体210は、第1状態において、第1分割体210内の第1部分キャビティ210Aを、第2分割体220内の第2部分キャビティ220Aと連通させる。第1開口210Bは、一例として、第1分割体210の下部に形成された下部開口である。第1分割体210は、上面部210Dと、上面部の210D全周縁から下方に延びて形成された周壁210Eを備える。上面部210Dは、一例として、円形である。第1開口210Bは、周壁210Eの下部に形成されている。第1分割体210内の第1部分キャビティ210Aは、一例として、上面部210Dと周壁210Eとで囲まれた空間である。第1部分キャビティ210Aは、第1開口210Bを介して、第1分割体210の外部に連通する。アンテナ50は、一例として、第1分割体210内に設けられ得る。
【0056】
第2分割体220は、第2開口220Bを備える。第2分割体220は、第1状態において、第2分割体220内の第2部分キャビティ220Aを、第1分割体210内の第1部分キャビティ210Aと連通させる。第2開口220Bは、一例として、第2分割体220の上部に形成された上部開口である。第2分割体220は、下面部220Dと、下面部220Dの全周縁から上方に延びて形成された周壁220Eを備える。下面部220Dは、一例として、円形である。第2開口220Bは、周壁220Eの上部に形成されている。第2分割体220内の第2部分キャビティ220Aは、一例として、下面部220Dと周壁220Eとで囲まれた空間である。第2部分キャビティ220Aは、第2開口220Bを介して、第2分割体220の外部に連通する。一例として、第2分割体220内には、被調理物が載置される載置面250Aが設けられる。なお、周壁220Eは、上下方向に伸縮自在である。この点については後述される。
【0057】
図2の容器ユニット20Bは、第1分割体210と第2分割体220とが上下に分離した第2状態(開状態)にある容器ユニット20を模式的に示している。ここでは、一例として、第1分割体210は加熱調理器10における固定した位置に設けられており移動しないが、第2分割体220が移動することで、第1分割体210と第2分割体220とが分離する。一例として、第2分割体220は、上下方向(Z方向)に移動自在に設けられており、第1状態における位置から下方へ移動することで、第1分割体210から離れる。
【0058】
第2状態では、第1開口210Bと第2開口220Bとが、互いに離反する。第2状態では、第1部分キャビティ210Aと第2部分キャビティ220Aとは、分離しており、第1開口210B及び第2開口220Bを介して、キャビティ200が外部に開放される。このように、実施形態に係る容器ユニット20は、単一のキャビティ200が、分離した複数の部分キャビティ210A,220Aになることができる。このような容器ユニット20は、キャビティ分割型容器ユニット20と呼ばれてもよい。
【0059】
第2状態では、第2分割体220の第2開口220Bから、第2部分キャビティ220Aに被調理物100を入れることができる。第2分割体220内に入れられた被調理物100は、載置面250Aに載置される。なお、被調理物100は、図示しない皿などを介して、載置面250Aに載置されてもよい。また、第2状態では、第2開口220Bから、容器ユニット20Bに収納された被調理物100を容器ユニット20B外部へ取り出すこともできる。
【0060】
図2の容器ユニット20Cは、第2状態から第1状態に戻った容器ユニット20を模式的に示している。第2状態における第2分割体220が、上方に移動し、第2分割体220の周壁220Eの上部が、第1分割体210の周壁210Eの下部に密着することで、第1開口210B及び第2開口220Bが塞がれ、第1部分キャビティ210A及び第2部分キャビティ220Aが閉じた単一のキャビティ200になる。このように、容器ユニット20は、第1状態と第2状態との間で、その形態を変更可能に構成されている。
【0061】
容器ユニット20の内部に形成されたキャビティ200は、第1状態において、アンテナ50から放射された電磁波に共振する共振キャビティ(resonant cavity)を形成する。共振キャビティは、一般的には、マイクロ波を発振させるキャビティ共振器(cavity resonator)のためのキャビティとして用いられる。キャビティ共振器は、マイクロ波フィルター又はマイクロ波発振器として用いられるのが一般的である。キャビティ共振器は、金属などの導体壁で囲まれた閉空間であるキャビティ(空洞)を備える。キャビティ共振器が共振する周波数(波長)は、キャビティの大きさ及び形状によって決まる。例えば、円筒導波管の両端を導体で短絡した構造を有する円筒キャビティ共振器であれば、円筒キャビティの半径及び円筒軸方向長さによって、共振周波数が決まる。
【0062】
実施形態においては、第1状態において、キャビティ200が共振キャビティとなるように、第1分割体210及び第2分割体220の大きさ及び形状が設定されている。複数の分割体210,220は、第1状態において、共振キャビティとなる閉鎖空間を形成する単一の導体容器であるとみなせるように、互いに密接する。実施形態に係る第1分割体210及び第2分割体220の大きさ及び形状の設計方法は、キャビティ共振器における共振キャビティの設計方法に従うことができる。また、共振キャビティを形成する容器ユニット20は、グランド電位に接続される。
【0063】
なお、多少のエネルギー損失を許容すれば、共振キャビティに共振し得る周波数には所定の幅があるため、共振キャビティの設計値としての周波数と、アンテナ50から放射される電磁波の周波数とには、多少の差があってもよい。例えば、共振キャビティの設計値としての周波数は、アンテナ50から放射される電磁波の周波数の80%から120%の範囲であるのが好ましく、アンテナ50から放射される電磁波の周波数の90%から110%の範囲であるのがより好ましい。ただし、共振キャビティは、Q値が大きく、共振し得る周波数帯域がそれほど広くはない。また、被調理物100が収容される共振キャビティの共振周波数は、被調理物の大きさ、材質、物質状態、被調理物とアンテナとの距離などによって、変化し得る。なお、物質状態とは、例えば、被調理物100中の水分が固定になっている冷凍状態、又は、水分が液体である冷蔵・常温状態である。物質状態は、被調理物100中の水分量によって示される状態であってもよい。被調理物100の物質状態は、調理の進行に伴って変化し得る。
【0064】
このように、容器ユニット20の共振キャビティとしての特性は、容器ユニット20内に配置された被調理物100によっても変動し得る。つまり、被調理物100によって共振周波数は変動し得る。したがって、共振キャビティの設計にあたっては、想定される被調理物100の大きさ・特性を考慮しておくのが好ましい。
【0065】
また、被調理物100の大きさ及び種類は様々なものが想定されるため、被調理物100の大きさ種類に応じて、共振周波数は変動し得る。また、調理の進行による被調理物100の特性変化によっても、共振周波数は変動し得る。共振周波数の変動に対応するには、例えば、アンテナ50と被調理物100との距離を調整すればよい。そこで、実施形態に係る容器ユニット20は、被調理物100の載置面250Aからアンテナ50までの距離が可変に構成されている。アンテナ50と被調理物100との距離を調整することで、共振周波数の変動による電磁波の損失を抑えて、効率よく加熱することができる。また、共振周波数の変動に対応した調整は、容器ユニット20の体積の調整でも可能である。そこで、実施形態に係る容器ユニット20は、容器ユニット20の体積が可変に構成されている。容器ユニット20の体積(キャビティ200の体積)を調整することで、電磁波の損失を抑えて、効率よく加熱することができる。なお、容器ユニット20の体積は固定であってもよい。
【0066】
アンテナから放射される電磁波の周波数が915MHzである場合、第1分割体210内の第1部分キャビティ210Aの高さH1は、一例として、150mmから250mm程度であり得る。また、第2分割体220内の第2部分キャビティ220Aの高さH2は、一例として、150mmから250mm程度であり得る。ただし、高さH1,H2は、可変であり得る。また、キャビティ200の全体形状は、概ね、円筒形状であり得る。円筒形状のキャビティ200の直径Rは、250mmから300mm程度であり得る。なお、キャビティ200の全体形状は、四角形筒状などの多角形筒状であってもよい。915MHzの周波数帯は、適切な大きさの調理室として共振キャビティを形成でき、好適である。
【0067】
図2に示すように、被調理物100は、第2分割体220の内部に収納される。したがって、図2に示す第2部分キャビティ220A(第2分割体220の内部空間)において、載置面250Aより上方の空間は、載置面250Aに載置された被調理物が位置するための被調理物収納空間Sになっている。第1分割体210に設けられたアンテナ50は、被調理物収納空間Sよりも上方に位置する。したがって、アンテナ50は、載置面250Aに載置された被調理物が位置するための被調理物収納空間Sが、容器ユニット20内においてアンテナ50と載置面250Aとの間に存在するように配置されている。
【0068】
また、アンテナ50からみると、アンテナ50と載置面250Aとの間には、マージン空間Mを介して、被調理物収納空間Sが存在する。つまり、被調理物収納空間Sとアンテナ50との間には、マージン空間Mが存在する。マージン空間Mは、被調理物100が存在しない空間である。図2に示すように、第1部分キャビティ210A(第1分割体210の内部空間)が、マージン空間Mになっている。マージン空間Mが存在することで、被調理物100をアンテナ100に近づけるように載置面250Aを移動させることが可能である。
【0069】
最適な電磁波の放射条件は、被調理物100の大きさ等によって異なることがある。そこで、被調理物250Aを載置面250Aに載置した直後(以下、「初期状態」とい、初期状態における載置面250Aの位置を「第1位置」又は「初期位置」という))においては、マージン空間Mによって、被調理物100とアンテナ50との距離が大きく確保しておくことで、大きな距離が必要とされる被調理物100に対応することができる。また、小さな距離が望ましい被調理物100については、マージン空間Mに被調理物100が進入するように載置面250Aを移動させることで、被調理物100とアンテナ50との距離を小さくできる。このように、マージン空間Mは、被調理物100がアンテナ50に近づくように移動させるための調整代となっている。
【0070】
仮に、マージン空間Mが存在せず、初期状態において、被調理物100とアンテナ50との距離が小さい場合、被調理物100とアンテナ50との距離を変化させようとする場合、初期状態から、被調理物100がアンテナ50から遠ざかるように移動させる必要がある。しかし、加熱が進むと、被調理物100がアンテナ50に近づくように移動させることになる。したがって、一旦、被調理物100をアンテナ50から遠ざけた後に、逆に近づける動作が必要となり、煩雑である。
【0071】
これに対して、本実施形態のように、初期状態において、アンテナ50と被調理物100との間に、調整代となるマージン空間Mが存在することで、小さな距離が望ましい被調理物100については、被調理物100がアンテナ50に近づくように移動させればよく、加熱が進んでも、同じく被調理物100がアンテナ50に近づくように移動させればよいため有利である。また、アンテナ50と被調理物100との間の距離は、基本的に大きい方が、共振周波数の変動への影響を小さくできるため、マージン空間Mの存在は、その観点からも有利である。なお、アンテナ50が、マージン空間M内に移動してもよい。つまり、マージン空間Mは、容器ユニット20内において移動可能に設けられたアンテナ50の移動を許容するための空間であってもよい。
【0072】
なお、本実施形態においては、容器ユニット20の構造上、初期状態において、マージン空間Mには、被調理物100が存在し得ない。この点については後述される。
【0073】
図3は、容器ユニット20の分解断面図を示している。図3にも示すように、第1分割体210は、円形の上面部210Dと、その上面部210Dの周縁から下方に延びて形成された円筒状の周壁210Eと、を備える。第1分割体210は、周壁210Eの下端の全周縁から径外方に延びる拡径部210Fを備える。拡径部210Fは、その下面210G(第2分割体220側の面)が、第1状態において、第2分割体220と接触する第1接触面210Gになっている。第1接触面210Gは、周壁210Eの下端全周に形成されており、リング状形状を持つ。第1接触面210Gは、一例として、径外方向に向かうにつれて上方に向かう傾斜面になっている。なお、拡径部210Fは、傾斜している必要はなく、水平に径外方向に向かうように形成されていてもよい。水平な拡径部210Fの下面が、第1接触面210Gになる。
【0074】
第1分割体210は、第1接触面210Gに取り付けられたシールド材210Hを備える。シールド材210Hは、第1分割体210と同様に導体によって形成されている。シールド材210Hは、リング状に形成され、リング状の第1接触面210Gの全周にわたって配置される。シールド材210Hは、第1状態において、第1分割体210の第1接触面210Gと、第2分割体220の第2接触面223Aとの間から、電磁波が漏洩するのを防止する。なお、シールド材210Hは、第2分割体220側に設けられていてもよい。
【0075】
シールド材210Hは、第1分割体よりも柔軟、又は、第1分割体よりも弾性変形しやく構成されている。シールド材210Hは、例えば、シールドメッシュをリング状に形成して構成され得る。このようなシールド材210Hは、第1分割体210と第2分割体220との密接状態を確保して、接合した第1分割体210及び第2分割体220の電気的特性を安定化させる。第1分割体210と第2分割体220との接触状態は、共振キャビティ200の共振周波数に影響を与える。しかし、第1分割体210と第2分割体220との間にシールド材210Hが介在していると、シールド材210Hが両分割体210,220の安定的な接触状態を確保して、共振周波数の変動を抑えることができる。また、シールド材210Hによって、電磁波の損失を抑えて、効率よく加熱することができる。
【0076】
第2分割体220は、本体221と、本体221に対して上下方向にスライド自在に設けられたスライド部225と、を備える。本体221は、第2分割体ユニット300のユニット筐体310に対して位置固定的に設けられている。したがって、本体221は、ユニット筐体310とともに移動する。一方、スライド部225は、ユニット筐体310内において上下方向に移動自在である。本体221に対してスライド部225が上下方向にスライドすることで、第2分割体220内の第2部分キャビティ220Aの体積が変化する。第2部分キャビティ220Aの体積の変化によって、キャビティ200全体の体積が変化する。
【0077】
第2分割体220の本体221は、第2分割体220の周壁220Eの一部を構成する内筒部222と、内筒部222の上部から延設されたテーパ部223と、を備える。内筒部222は、上下が開口した円筒形状である。テーパ部223は、上方ほど開口径が大きくなるように傾斜している。テーパ部223の内面は、第1分割体210の第1接触面210Gに対して接触する第2接触面223Aになっている。第2接触面223Aは、第1接触面210Gに対して平行である。第2接触面223Aは、シールド材210Hを介して間接的に、又は、直接的に、接触する。第2接触面223Aもリング状である。なお、テーパ部223は、内筒部222の上部から水平に径外方向へ延びる水平リング部223であってもよい。水平リング部223の上面は、第1分割体210の水平な拡径部210Fの下面である第1接触面210Gに対して平行である水平な第2接触面223Aになる。
【0078】
第1接触面210Gと第2接触面223Aとの間から電磁波が外部へ漏洩しようとすると、電磁波は、斜め上方に向かう必要がある。しかし、アンテナ50から被調理物100へ向かう電磁波は、主に、下方に向かうものであるため、第1接触面210Gと第2接触面223Aとの間からの電磁波の漏洩が、接触面210G,223Aの構造自体でも抑制される。このように、テーパ部223は、アンテナ50に近づくほど開口径が広がるように形成されているのが好ましい。
【0079】
第2分割体220は、内筒部222に取り付けられた外筒部222Aを更に備え得る。外筒部222Aは、内筒部222よりも径が大きな円筒形状であり、内筒部222の径方向外側において、内筒部222と同心状に配置されている。外筒部222Aは、その上部が内筒部222に取り付けられており、外筒部222Aの上部は閉じている。外筒部222Aの下端は、内筒部222の下端よりも下方に延びている。外筒部222Aの下部は、開口している。内筒部222の外周面と外筒部222Aの内周面との間の空間は、スライド部225が挿入されるスライド空間である。
【0080】
第2分割体220のスライド部225は、筒部226と、筒部226の下部に設けられた底部227と、を備える。筒部226の上部は開口している。筒部226は、第2分割体220の周壁220Eの一部を構成する。筒部226の上部は、内筒部222の外周面と外筒部222Aの内周面との間のスライド空間に挿入される。底部227は、第2分割体220の下面部220Dを構成する。
【0081】
底部227は、挿通孔228を備える。挿通孔228は、調整機構80が備える操作体820が上下方向に移動自在に挿通される。操作体820は、下方に移動することで、スライド部225を押し下げる。また、操作体820は、上方に移動することで、内部容器250を押し上げる。操作体820は、内部容器250の押し上げに必要な上下方向(Z方向)長さを有する。図1及び図4に示す操作体820の上下方向長さは、単なる例示であり、特に限定されない。操作体820の上下方向長さを大きくすることで、内部容器250を大きく押し上げることができる。操作体820の上下方向長さは、図1及び図4に示す長さの2倍から3倍程度あってもよい。
【0082】
スライド部225は、当接部229を備える。当接部229は、第2分割体ユニット300のユニット筐体310に設けられたストッパ311に当接することで、スライド部225の上方移動を阻止する。したがって、スライド部225は、当接部229がストッパ311に当接した位置よりも下方範囲において移動自在である。
【0083】
図4は、操作体820の動作による内部容器250及びスライド部225の動作を示している。図4の第2分割体ユニット300Aは、図1に示す第2分割体ユニット300との状態から、内部容器250が上方に押し上げられる様子を示している。また、図4の第2分割体ユニット300Bは、図1に示す第2分割体ユニット300の状態から、スライド部225が押し下げられる様子を示している。
【0084】
操作体820を備える内部機構82は、ユニット筐体310内において上下に移動自在な第1操作アーム825を備える。第1操作アーム825は、ユニット筐体310の外部まで延びており、外部機構81に接続されている。第1操作アーム825は、外部機構81によって上下に移動される。内部機構82は、第1操作アーム825と、スライド部225に設けられた当接部229との間に設けられたバネ827を備える。バネ827は、一例として、圧縮バネである。バネ827は、押し上げられた第1操作アーム825を下方に付勢する。
【0085】
操作体820は、スライド部225の挿通孔228(図3参照)に対して挿通される挿通体821と、挿通体821の上部に設けられ、挿通孔228よりも径が大きい操作ヘッド823と、を備える。挿通体821は、挿通孔228を上下に移動自在に設けられる。操作ヘッド823は、スライド部225内に位置している。操作ヘッド823は、挿通孔228よりも大きいため挿通孔228からのスライド部225外への抜け出しが防止されている。
【0086】
図4に示す第2分割体ユニット300Aのように、第1操作アーム825が上昇駆動されると、操作体820の操作ヘッド823が上昇する。上昇した操作ヘッド823は、内部容器250に下方から当接して、内部容器250を押し上げる。これにより、内部容器250(載置面250A)とアンテナ50との距離が小さくなる。また、第1操作アーム825が上昇すると、第1操作アーム825と当接部229との間隔が小さくなり、バネ827が圧縮される。
【0087】
第1操作アーム825の上昇駆動力が解除されると、バネ827の付勢力により、第1操作アーム825が下降する。なお、第1操作アーム825の下降は重力だけを利用してもよい。
【0088】
第1操作アーム825が下降して元の位置に戻ると、操作ヘッド823も下降する。操作ヘッド823の下降に伴い、内部容器250は自重により下降する。内部容器250の下降は、係合部250Dが被係合部224に係合するまで行われる。係合部250Dが被係合部224に係合すると、内部容器250はその位置で保持される。
【0089】
また、図4に示す第2分割体ユニット300Bのように、第1操作アーム825が下降駆動されると、操作ヘッド823が下降する。下降した操作ヘッド823は、スライド部225に上方から当接して、スライド部225を押し下げる。これにより、第2分割体220の本体221に対してスライド部225が下方移動する。この結果、第2分割体220の体積が大きくなる。
【0090】
なお、第1操作アーム825が上昇して元の位置に戻ると、バネ827及び当接部229を介して第1操作アーム825に支持されたスライド部225も上方の位置に復帰し、第2分割体220の体積が元に戻る。
【0091】
図1に戻り、調整機構80のうち、外部機構81について説明する。外部機構81は、駆動部90によって回転駆動される第1軸810を備える。第1軸810は、上下方向に延びる軸であり、上下方向の軸心回りに回転自在に設けられている。第1軸810は、例えば、ベース部13D上に立設されている。第1軸810は、ねじ軸であり、第1軸810の回転によって上下に直線移動する昇降部811を備える。駆動部90の回転が、ベルト等を介して第1軸810に伝えられると、第1軸810の回転によって、昇降部811が上昇又は下降する。上昇及び下降は、第1軸810の回転方向によって切り替えられる。
【0092】
外部機構81は、第1軸810と並行に立設された第2軸812を備える。第2軸812は、例えば、ベース部13D上に立設されている。第2軸812は、第2軸812の軸方向(上下方向)に沿って移動自在な上部昇降体813と下部昇降体814とを備える。第2軸812は、上部昇降体813及び下部昇降体814の上下移動をガイドする。上部昇降体813は、内部機構82から延びる第1操作アーム825に取り付けられている。したがって、第1操作アーム825の上下移動は、上部昇降体813を介して、第2軸812によってガイドされる。また、下部昇降体814は、第2分割体ユニット300に取り付けられた第2操作アーム815に取り付けられている。したがって第2操作アーム815の上下移動は、下部昇降体814を介して、第2軸812によってガイドされる。
【0093】
第1軸810に設けられた昇降部811は、図1に示す位置から上昇すると、第1操作アーム825を押し上げることができる。第1操作アーム825が押し上げられた状態から昇降部811が下降すると、それに連れて第1操作アーム825も下降する。第1操作アーム825の上昇量に応じて、前述の内部容器250及びスライド部225が移動する。
【0094】
昇降部811は、図1に示す位置から下降すると、第2操作アーム815に当接して、第2操作アーム815を押し下げることができる。第2操作アーム815は、第2分割体ユニット300のユニット筐体310に取り付けられているため、第2操作アーム815が下降すると、第2分割体ユニット300全体が下降する。これにより、第2分割体ユニット300が、第1分割体210から分離する。第2操作アーム815が下降すると、下部昇降体814とベース部13Dとの間に設けられたバネ816が圧縮される。
【0095】
第2操作アーム815の下降駆動力が解除されると、バネ816の付勢力により、第2操作アーム815が上昇する。第2操作アーム815の上昇により、第2分割体ユニット300が上昇する。これにより、第2分割体ユニット300が、第1分割体210に接合することができる。この接合状態は、バネ816の付勢力により、密着化される。
【0096】
なお、図示の実施形態では、単一の駆動部90によって、内部容器250の昇降、第2分割体ユニット300の昇降、及び第2分割体220の体積調整が行われるが、それぞれ別の駆動源90によって行われてもよい。
【0097】
図5は、加熱調理器10の回路図を示している。アンテナ50は、高周波を出力する高周波回路30に接続されている。高周波回路30は、図示しない発振回路から出力された高周波を増幅する増幅器31を備える。増幅器31の出力がアンテナ50に給電される。アンテナは、高周波回路から給電された高周波を、加熱のための電磁波として放射する。高周波回路30は、反射波をモニタするモニタ回路33を備える。アンテナ50から放射された電磁波の反射波が大きいと損失が大きくなる。モニタ回路33は、その反射波をモニタし、モニタ結果をコントローラ40へ与える。なお、ここでの反射波は、被調理物100等に吸収されず、アンテナ50によって受信された電磁波である。また、高周波回路30は、反射波以外の動作状態を、コントローラ40に与えてもよい。図5には、高周波回路の他の例も示されている。他の例に係る高周波回路30Aは、増幅器31の出力側に接続されたサーキュレータ35を備える。サーキュレータ35は、増幅器31から出力された高周波を、アンテナ50側へ出力する。また、サーキュレータ35は、反射波を、ダミーロード37(終端器)側へ出力する。サーキュレータ35は、反射波が、増幅器31側へ流れるのを防止する。
【0098】
コントローラ40は、モニタ回路33等を用いて、高周波回路30の動作状態を監視し、高周波回路30の動作状態に応じて、駆動部90を制御する。コントローラ40は、駆動部90を制御して、例えば、反射波が抑えられるように、第2分割体220の体積調整又は載置面250Aとアンテナ50との距離を調整する。これにより、反射波を抑えて、損失を小さくすることができる。損失が小さくなれば、キャビティ200は、より理想的な共振キャビティとなり、効率的に被調理物100を加熱できる。なお、コントローラ40は、載置面250Aとアンテナ50との距離を調整するため、載置面250の移動を制御してもよいし、アンテナ50の移動を制御してもよい。
【0099】
コントローラ30が監視する高周波回路30の動作状態は、例えば、高周波のリターンロス(反射損失)である。リターンロスは、高周波回路30が伝送する進行波と反射波との比を示す。コントローラ30は、第2分割体220の体積調整又は載置面250Aとアンテナ50との距離を調整し、リターンロスが小さくなる体積又は載置面250Aの位置を探索することができる。リターンロスが小さくなる状態で電磁波が放射されることで、効率的な加熱が行える。コントローラ30が監視する高周波回路30の動作状態の他の例は、高周波回路30における消費電力、利得、又は高周波の周波数である。高周波回路30の動作状態に合わせて、駆動部90を制御することで、容器ユニット20の特性を変化させることができる。
【0100】
なお、コントローラ40は、入出力装置15、ヒータ60、及び温度センサ70にも接続されている。コントローラ40は、入出力装置15から与えられたユーザ操作に応じた制御を行うことができる。また、コントローラ40は、温度センサ70による温度測定結果に基づいてヒータ60を制御することができる。
【0101】
図6は、コントローラ40によって制御される加熱調理器10の動作を示している。加熱調理器10の動作は、例えば、コントローラ40のメモリに保存されたコンピュータプログラムをコントローラ40のプロセッサが実行することによって実現される。
【0102】
まず、容器ユニット20内に被調理物100を配置するため、下釜ユニット300(第2分割体ユニット300)が下降する(ステップS61)。下釜ユニット300の下降は、例えば、入力装置15に対するユーザ操作に応じてなされる。下釜ユニット300は、ステップS61の下降した後に、水平移動してもよい(図7参照)。また、下釜ユニット300は、下降することなく水平移動してもよい。そして、ユーザは、下釜220(第2分割体220)の内部容器250に、被調理物100を配置する(ステップS61A)。その後、下釜ユニット300が上昇する(ステップS62)。下釜ユニット300は、水平移動している場合、上昇する前に、水平方向における元の位置に戻るように移動してもよい。また、単に、水平方向における元の位置に戻るように移動してもよい。
【0103】
ステップS62により、下釜220(第2分割体220)が上釜210(第1分割体210)に密着する。なお、前述のように、下釜220は、下降した状態において、上釜210に対して、水平方向に移動してもよい(図7参照)。下釜220が水平方向に移動すると、分離した下釜220と上釜210との上下間隔が小さくても、下釜220に対する被調理物100の出し入れが容易となる。図7に示すように、下釜220は、例えば、前後方向(Y方向)に直線移動してもよいし、水平面(XY平面)内で円弧を描くように移動してもよい。
【0104】
下釜220が水平移動する場合、図1に示す第1操作アーム825は、下釜220の移動を許容するように、伸縮自在に設けられているのが好ましい。例えば、第1操作アーム825は、方向外部機構81に設けられた第1部材と、下釜220に設けられた第2部材とを備え、第2部材は、第1部材に対して水平方向に移動自在に設けられているのが好ましい。また、第2操作アーム815も同様に、下釜220の移動を許容するように、伸縮自在に設けられているのが好ましい。例えば、第2操作アーム815は、外部機構81に設けられた第1部材と、下釜220に設けられた第2部材とを備え、第2部材は、第1部材に対して水平方向に移動自在に設けられているのが好ましい。なお、下釜220の水平移動は、人力で行われてもよいし、駆動源によって駆動されてもよい。
【0105】
また、調理条件を設定するためのユーザ操作が行われる(ステップS63)。調理条件は、例えば、ユーザが希望する被調理物の仕上がり状態、又は、加熱時間である。設定された調理条件に応じて、電磁波のパワー、放射タイミング、放射時間、ヒータの温度、及びヒータによる加熱時間などの加熱条件が設定される。なお、ステップS63の調理条件の設定は、ステップS61よりも前に行われてもよい。
【0106】
容器ユニット20内に被調理物100が配置されると、被調理物100に対して最適な電磁波を与えるため、下釜220の体積調整と、内部容器250の載置面250Aからアンテナ50までの距離の調整と、が行われる(ステップS64)。調整は、体積調整及び距離調整のいずれか一方だけでもよい。調整のため、アンテナ50から放射された電磁波の反射波がモニタ回路33によって測定される。コントローラ40は、反射波が小さくなるように、体積調整及び距離調整を行う。これらの調整は、例えば、アンテナ50から電磁波を放射しつつ、体積及び距離を適宜変化させて、反射波が最小になったときの体積及び距離に決定するように行われる。なお、載置面250Aからアンテナ50までの距離(第2距離)が変化すると、アンテナ50と被調理物100との間の第1距離が変化する。
【0107】
ステップS64の調整が完了すると、被調理物100の加熱が開始される(ステップS65)。加熱は、アンテナ50からの電磁波放射、及び、ヒータ60からの熱放射のいずれか一方又は両方によって行われる。
【0108】
電磁波放射による加熱中においても、断続的に高周波回路30の動作状態がモニタされる。ここでの動作状態のモニタは、一例として、反射波のモニタである。コントローラ40は、加熱中においても、反射波が小さくなるように、体積調整及び距離調整を行うことができる(ステップS66)。加熱によって被調理物100の特性が変化して、被調理物100を含む容器ユニット20全体の共振周波数が変動しても、加熱中に行われる調整によって、共振周波数の変動を抑えて、電磁波の損失を抑えることができる。加熱が進むと共振周波数が低下し、アンテナ50と被調理物100との間の第1距離を小さくしたほうがよいため、加熱中の距離調整は、主に、距離を小さくするように制御される。
【0109】
図8の容器ユニット20Dは、体積が比較的小さい容器ユニット20を模式的に示す。また、図8の容器ユニット20Eは、体積が比較的大きい容器ユニット20を模式的に示す。容器ユニット20Dでは、第2分割体220の高さがH2-1である。容器ユニット20Eでは、第2分割体220の高さがH2-2であり、容器ユニット20Dよりも大きくなっている。被調理物100の影響で、被調理物100を含めた容器ユニット20D全体の共振周波数が変動するため、その変動を打ち消すために、容器ユニット20の体積を調整することで、より理想的な共振キャビティが得られる。体積を調整可能であるため、様々な被調理物100に応じて、適切な対応が可能である。
【0110】
図9の容器ユニット20Fは、載置面250Aからアンテナ50までの距離D1が比較的大きい容器ユニット20を模式的に示す。図9の容器ユニット20Gは、載置面250Aからアンテナ50までの距離D2が中程度である容器ユニット20を示す。図9の容器ユニット20Hは、載置面250Aからアンテナ50までの距離D3が比較的小さい容器ユニット20を示す。被調理物100の影響で、被調理物100を含めた容器ユニット20D全体の共振周波数が変動するため、その変動を打ち消すために、被調理物100の載置面250Aの位置を調整することで、より理想的な共振キャビティが得られる。
【0111】
しかも、体積調整及び距離調整の両方を行うことで、いずれか一方だけを調整する場合に比べて、調整代が大きくなり、有利である。
【0112】
図9の容器ユニット20Fにおける載置面250Aの位置P1は、アンテナ50からの電磁波の放射前の初期位置P1(第1位置)に対応し得る。電磁波の放射前の初期位置P1は、被調理物100が容器ユニット20に収容され、容器ユニット20が閉状態となっているが、電磁波の放射(図7のステップS64)が行われる前における載置面250Aの位置である。すなわち、初期位置は、ステップS64による調整前における位置である。載置面250Aの初期位置P1は、一例として、アンテナ50と載置面250Aとの間の距離(第2距離)が最大となる位置である。この場合、載置面250Aの位置が調整されると、アンテナ50と載置面250Aとの間の距離は小さくなる。初期位置P1から調整された後の載置面250Aの位置を「第2位置」ともいう。第2位置は、初期位置である第1位置よりも、アンテナ50に近い位置であり得る。アンテナ50と載置面250Aとの間の距離(第2距離)が小さくなると、アンテナ50と被調理物100との間の距離(第1距離)も小さくなる。
【0113】
コントローラ40は、ステップS64の調整のための電磁波の放射中において、載置面250Aの位置を、第2位置に調整し得る。図9の容器ユニット20G及び容器ユニット20Hにおける載置面250Aの位置それぞれは、第2位置である。載置面250Aが第2位置へ移動すると、被調理物100は、マージン空間M(第1分割体の内部空間)に存在し得る。
【0114】
さて、加熱が終了すると(ステップS67)、容器ユニット20内の被調理物100を取り出すため、下釜ユニット300(第2分割体ユニット300)が下降する(ステップS68)。下釜ユニット300の下降は、例えば、ユーザ操作に応じてなされる。そして、ユーザは、下釜220(第2分割体220)の内部容器250から、被調理物100を取り出す(ステップS68A)。その後、下釜ユニット300が上昇する(ステップS69)。取出しの際にも、下釜ユニット300は水平移動(図7参照)してもよい。
【0115】
図10及び図11は、アンテナ50からの電磁波Eの放射の様子を示している。図11に示すように、アンテナ50がループアンテナである場合、電磁波は、主に、ループアンテナの径外方向に向けて放射される。したがって、アンテナ50から放射された電磁波は、グランド電位にある第1分割体210の周壁210Eによって反射されて被調理物100に到達するものが主であり、アンテナ50から被調理物100に直接到達するものは比較的少ない。
【0116】
以上のように例示的に説明された容器ユニット20は、分割構造であるが、共振キャビティとしての特性が損なわれるのを抑制するのに適した構造となっている。例えば、実施形態の容器ユニット20は、複数の分割体210,220の接合部位がアンテナ50から比較的離れているため、複数の分割体210,220が分離可能であっても、共振キャビティの共振周波数の変動が抑えられる。
【0117】
すなわち、共振キャビティの共振周波数は、容器ユニット20の大きさ及び形状によって影響を受けるが、アンテナ50により近い位置における容器ユニット20の部分ほど、共振周波数の変動に与える影響が大きい。したがって、第1分割体210と第2分割体220との接合部位が、アンテナ50に近いほど、共振周波数の変動に与える影響が大きくなる。第1分割体210と第2分割体220との接合部位は、接合及び分離を繰り返すたびに、電気的特性(例えば、インピーダンス)が変動するおそれがある部位である。第1分割体210と第2分割体220との密着性が変動又は低下すると、第1分割体210と第2分割体220との間に電位差が生じ得る。共振キャビティは、キャビティを囲む導体全体が同電位であるのが好ましいが、第2分割体220が第1分割体210に対して電位差が生じると、共振キャビティの特性が変化してしまう。しかも、第1分割体210に対する第2分割体220の密着度合いが変動すると、図10に示すように第1分割体210がグランド電位に接続されていても、第2分割体220の電位がグランド電位からずれることになる。
【0118】
これに対して、実施形態に係る容器ユニット20においては、第1分割体210と第2分割体220との接合部位がアンテナ50から比較的離れているため、共振周波数の変動を抑えることができる。
【0119】
しかも、アンテナ50が設けられている第1分割体210は、図10に示すように、グランド電位に接続されており、アンテナ50から放射された電磁波Eの反射面になっている。アンテナから50から放射された電磁波Eは、第1分割体210に反射して、被調理物100に到達する。容器ユニット20における反射面は、電磁波Eの反射特性を損なわないようにするため、グランド電位にあることが望まれる。しかし、第1分割体210と第2分割体220との接合部位が、アンテナ50に近い位置にあると、電磁波Eは、第1分割体210を介してグランド電位に接続された第2分割体220において反射することになる。第2分割体220はグランド電位からずれるおそれがあるため、電磁波Eの反射特性が損なわれ、電磁波による加熱の効率が低下する。これに対して、実施形態に係る容器ユニット20においては、第1分割体210と第2分割体220との接合部位がアンテナ50から比較的離れている。このため、アンテナ50から放射された電磁波Eの反射は、被調理物100に到達するまでの間において、主に、グランド電位に直接接続された第1分割体210においてなされる。この結果、電磁波の損失が抑えられる。
【0120】
アンテナ50が設けられる第1分割体210は、位置固定的に設けられているため、移動する第2分割体220のように移動のための機構80が不要である。つまり、図2,8,9に示すいずれの動作においても、第1分割体210は移動することはない。
【0121】
また、第1分割体210は、第2分割体220のように上下方向に伸縮することもないため伸縮のための機構80が不要である。さらに、内部容器250は、第2分割体220内で昇降するため、内部容器250の昇降のための機構80も第1分割体210には不要である。つまり、図9に示す動作において、内部容器250の位置が変動しても、第1分割体210の位置は変動しない。このように、第1分割体210は、位置不動であり、可動部材が取り付けられていない。
【0122】
第1分割体210が移動したり、第1分割体210に伸縮等の変形が生じたりすると、共振周波数が変動するおそれがある。また、第1分割体210の移動等のための機構80の存在又は動作が、共振周波数の変動を生じさせるおそれがある。これに対して、実施形態では、アンテナ50が設けられる第1分割体210は、移動せず、機構80による動作もないため、共振周波数の変動が抑えられる。そして、第2分割体220は、アンテナ50から離れているため、移動したり、機構80によって動作したりしても、共振周波数への影響が比較的小さく有利である。
【0123】
このように、第1分割体210は、キャビティ200全体のうち、アンテナ50に近い範囲にある第1部分キャビティ210Aを、動作がなく、電気的な特性の変化が抑えられた安定的な空間にしている。アンテナ50に近い第1部分キャビティ210Aを安定な空間にしておくことで、共振周波数の変動を抑えることができる。
【0124】
アンテナ50に近い側において安定的な空間として形成された第1部分キャビティ210Aは、共振周波数の変動を抑えるため、キャビティ200に占める割合ができるだけ大きいのが好ましい。例えば、第1部分キャビティ210Aの体積は、キャビティ200全体の体積の20%以上であるのが好ましく、30%以上であるのがより好ましく、40%以上であるのが更に好ましい。ただし、第2部分キャビティ220Aも、被調理物100が配置されるのに十分な体積が必要である。このため、第1部分キャビティ210Aの体積は、キャビティ200全体の体積の80%以下であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、60%以上であるのが更に好ましい。
【0125】
より具体的には、第1部分キャビティ210Aの体積は、キャビティ200全体の体積の20%以上80%以下であるのが好ましく、30%以上70%以下であるのがより好ましく、40%以上60%以下であるのが更に好ましい。
【0126】
図12は、容器ユニット20内の被調理物収納空間S及びマージン空間Mを示している。本実施形態では、一例として、マージン空間Mは、容器ユニット20の構造上、被調理物100が存在し得ない空間になっている。
【0127】
図12の容器ユニット20Jは、被調理物100が収納される前の容器ユニット20を模式的に示す。容器ユニット20Jは、図6のステップS61より前の状態の容器ユニット20である。また、図12の容器ユニット20K,20Lは、下釜220が上釜210に対して水平移動した状態の容器ユニット20を模式的に示す。被調理物100は、容器ユニット20Kのように、下釜220が水平移動した状態で、下釜220の第2開口220Bから下釜220内に入れられる。被調理物100が入れられた後、容器ユニット20Jの状態に戻るように、下釜220が水平移動する。この場合、容器ユニット20の開口210B,220Bを閉じるには、被調理物100は、下釜220内に完全に収納される大きさ、若しくは、下釜220の第2開口220Bからわずかに出る程度の大きさでなければならない。仮に、容器ユニット20Lのように、被調理物100が、下釜220の第2開口220Bから大きく出るほどの大きさである場合、下釜220Bを水平移動させると、被調理物100が上釜210に衝突するため、容器ユニット20の開口210B,220Bを閉じることができない。したがって、容器ユニット20に入れることができる被調理物100の最大の大きさは、容器ユニット20の開口210B,220Bを閉じることができるように、下釜220の内部空間に対応した大きさに制約される。したがって、下釜220の内部空間である被調理物収納空間Sは、開口220Bから被調理物100を入れて開口220Bを閉じることができる最大の大きさの被調理物100に対応した大きさの空間である。この結果、上釜210の内部にあるマージン空間Mは、容器ユニット20の構造上、被調理物100が存在し得ない空間になっている。
【0128】
なお、マージン空間Mを被調理物100が存在し得ない空間にするには、容器ユニット20の機械的構造による方法のほか、他の方法によって行われてもよい。例えば、マージン空間Mに被調理物100が存在するような大きさの被調理物100がセンサによって検出されると容器ユニット20が閉じないように制御されてもよい。また、容器ユニット20が閉じられた状態において、マージン空間Mに被調理物100が存在することがセンサによって検出されると、出力装置15にエラー表示するなどして、加熱調理が行われないように制御されることで、少なくともアンテナ50からの電磁波の放射時において、マージン空間Mに被調理物100が存在することがないようにしてもよい。
【0129】
図13は、被調理物の移動の他の例を示している。被調理物とアンテナ50の距離を変化させるには、被調理物が載置された載置面250Aとアンテナ50との間の距離が変化する必要はなく、載置面250Aが、その面に平行に移動してもよい。かかる移動は、載置面250Aの直線移動でもよいし、載置面250Aの回転であってもよい。図13は、載置面250Aの回転を例示している。図13では、載置面250Aは、図示しない駆動源によって回転駆動される回転軸250Eによって回転自在に設けられている。回転は、コントローラ40によって制御され得る。載置面250Aが回転すると、被調理物は、例えば、100Aの位置から100Bの位置へ移動する。被調理物が、100Aの位置から100Bの位置へ移動すると、被調理物はアンテナ50に近づく。
【0130】
被調理物とアンテナ50との距離を変化させるには、被調理物が載置された載置面250Aとアンテナ50との間の距離を変化させることに加えて、載置面250Aをその面に平行に移動させてもよい。また、被調理物とアンテナ50との距離を変化させるには、被調理物が載置された載置面250Aとアンテナ50との間の距離を変化させることなく、載置面250Aをその面に平行に移動させてもよい。また、アンテナ50を載置面250Aの下方に設けておき、載置面250Aを上下に移動させることで、被調理物とアンテナ50との距離を変化させてもよい。
【0131】
図14は、アンテナと被調理物との距離と共振周波数との関係を、被調理物の重量を変えて調べた実験結果を示している。実験では、図1等に示す容器ユニット20を用いた。アンテナ50から放射される電磁波の周波数は、915MHzとした。容器ユニット20は、その内部に被調理物が存在しない状態で、その共振周波数(自己共振周波数)が、アンテナ50から放射される電磁波の周波数の近傍になって共振キャビティが得られるように、大きさ及び形状を設定した。
【0132】
実験では、被調理物として100g、200g、300g、400g、550gの冷凍牛肉を使用した。それぞれの重さの冷凍牛肉について、アンテナ50と冷凍牛肉間の距離を変化させて、容器ユニット20の共振周波数を測定した。なお、共振周波数は、加熱がほとんど進んでいない状態で測定した。
【0133】
図14に示すように、冷凍牛肉の重量によって、共振周波数は異なる。したがって、アンテナ50と冷凍牛肉間の距離の調整、及び、容器ユニット20の体積調整の少なくともいずれか一方を行うことで、異なる重量の被調理物に対応して適切な電磁波放射を行うことが可能になる。特に、550gの冷凍牛肉のように、被調理物の重量が大きい場合、距離を変化させると、共振周波数が大きく変化するため、重量が大きい被調理物には、距離調整がより好適である。また、100gの冷凍牛肉のように、被調理物の重量が小さい場合、距離を変化させても、共振周波数の変化は小さいため、容器ユニット20の体積調整がより好適である。
【0134】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0135】
10 :加熱調理器
13 :筐体
13A :前面部
13B :天井部
13C :背面部
13D :ベース部
15 :入出力装置
17 :断熱材
20 :容器ユニット
20A :容器ユニット
20B :容器ユニット
20C :容器ユニット
20D :容器ユニット
20E :容器ユニット
20F :容器ユニット
20G :容器ユニット
20H :容器ユニット
20J :容器ユニット
20K :容器ユニット
20L :容器ユニット
30 :高周波回路
31 :増幅器
33 :モニタ回路
40 :コントローラ
50 :アンテナ
60 :ヒータ
70 :温度センサ
80 :調整機構
81 :外部機構
82 :内部機構
90 :駆動部
100 :被調理物
100A :被調理物
100B :被調理物
200 :キャビティ
210 :第1分割体
210A :第1部分キャビティ
210B :第1開口
210D :上面部
210E :周壁
210F :拡径部
210G :第1接触面
210H :シールド材
220 :第2分割体
220A :第2部分キャビティ
220B :第2開口
220D :下面部
220E :周壁
221 :本体
222 :内筒部
222A :外筒部
223 :テーパ部
223A :第2接触面
224 :被係合部
225 :スライド部
226 :筒部
227 :底部
228 :挿通孔
229 :当接部
230 :空間
250 :内部容器
250A :載置面
250B :底部
250C :側壁
250D :係合部
250E :回転軸
300 :第2分割体ユニット
300A :第2分割体ユニット
300B :第2分割体ユニット
310 :ユニット筐体
311 :ストッパ
810 :第1軸
811 :昇降部
812 :第2軸
813 :上部昇降体
814 :下部昇降体
815 :第2操作アーム
816 :バネ
820 :操作体
821 :挿通体
823 :操作ヘッド
825 :第1操作アーム
827 :バネ
D1 :距離
D2 :距離
D3 :距離
E :電磁波
H1 :高さ
H2 :高さ
M :マージン空間
S :被調理物収納空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-02-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物が収納される容器ユニットと、
高周波を出力する高周波回路から給電された前記高周波を、前記被調理物を加熱するための電磁波として、前記容器ユニット内に放射するアンテナと、
前記被調理物が載置される載置面と、
を備え、
前記容器ユニットは、前記アンテナから放射された前記電磁波に共振する共振キャビティを形成するよう構成されている
加熱調理器。
【請求項2】
前記載置面は、前記容器ユニット内において上下に移動可能である、
請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記容器ユニットは、上容器と、前記上容器の下部に接合する下容器と、を備える、
請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記アンテナは、前記上容器に設けられている
請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記容器ユニットは、前記上容器に対して、前記下容器が移動することで、前記被調理物を前記下容器の内部空間内に入れるための開口が現れるよう構成されている、
請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記アンテナは、前記上容器に設けられ、
前記容器ユニットは、位置固定して設けられた前記上容器に対して、前記下容器が移動することで、前記被調理物を前記下容器の内部空間内に入れるための開口が現れるよう構成されている、
請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項7】
筐体を更に備え、
前記上容器は、筐体に対して位置固定して設けられている、
請求項6に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記電磁波の放射中における前記高周波回路の動作状態を監視し、前記動作状態に応じて、前記載置面の位置を制御するコントローラを更に備える
請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項9】
筐体と、
コントローラと、を更に備え、
前記載置面は、前記容器ユニット内において上下に移動可能であり、
前記容器ユニットは、第1内部空間を有する上容器と、前記上容器の下部に接合する下容器と、を備え、前記下容器は、第2内部空間を有し、
前記アンテナは、前記上容器に設けられ、
前記容器ユニットは、前記筐体に対して位置固定して設けられた前記上容器に対して、前記下容器が移動することで、前記被調理物を前記下容器の前記第2内部空間内に入れるための開口が現れるよう構成され、
前記コントローラは、前記電磁波の放射中における前記高周波回路の動作状態を監視し、前記動作状態に応じて、前記載置面の位置を制御する、
請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記容器ユニットは、前記容器ユニットの体積が可変に構成されている、
請求項1に記載の加熱調理器。