(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039078
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H01F 7/20 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
H01F7/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143355
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】722010770
【氏名又は名称】新川 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】新川 雅樹
(57)【要約】
【課題】永久磁石による吸着力を電力で制御するアクチュエータを提供する。
【解決手段】本発明のアクチュエータ1は、磁性体で形成され、一対の略直線部11aおよび一対の略直線部11aを連結する連結部11bからなる略U字型のコイルコア11と、N極およびS極のそれぞれがコイルコア11の内側において一対の略直線部11aに当接するように配置された永久磁石10と、連結部11bの少なくとも一部に巻かれているコイル12と、一対の略直線部11aの端面と所望の可動域30を介して配置されたブリッジコア13とを具備し、コイル12に電流を流すことによって、ブリッジコア13は一対の略直線部11aの端面に当接するように可動域30を可動し、コイル12に電流を流さないことによって、ブリッジコア13は可動域30を自由に可動することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体で形成され、一対の略直線部および前記一対の略直線部を連結する連結部からなる略U字型のコイルコアと、
N極およびS極のそれぞれが前記コイルコアの内側において前記一対の略直線部に当接するように配置された永久磁石と、
前記連結部の少なくとも一部に巻かれているコイルと、
前記一対の略直線部の端面と所望の可動域を介して配置されたブリッジコアとを具備し、
前記コイルに電流を流すことによって、前記ブリッジコアは前記一対の略直線部の端面に当接するように前記可動域を可動し、前記コイルに電流を流さないことによって、前記ブリッジコアは前記可動域を自由に可動することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記ブリッジコアの可動域は1mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記ブリッジコアが前記一対の略直線部の端面と当接しているとき、前記ブリッジコアと前記永久磁石の間の距離は1mm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記連結部のうち前記コイルが巻かれる部分の断面積は、前記略直線部のうち前記永久磁石が接する部分の断面積の0.5~0.9倍の大きさであることを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石による吸着力を電力で制御するアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
押す力や引く力を作用させるアクチュエータには、磁力によるもの、圧力によるもの、化学反応によるもの等、多様な動力源によるものが提案されている。
【0003】
このうち磁力を利用するアクチュエータの動力源には、力を制御することのできる電磁石が主に用いられている。
【0004】
一方で、電磁石とともに永久磁石を利用するアクチュエータも提案されている。例えば、特許文献1の段落番号[0062]~[0072]には、第1面、第2面と、永久磁石と2つの電磁石を含み、第1面と第2面の間を移動可能なポールピースアセンブリとからなるアクチュエータが開示されている。ポールピースアセンブリが第1面に接して、ポールピースアセンブリ内の永久磁石が第1面と閉磁路を形成しているとき、電力を投入せずともポールピースアセンブリは第1面に吸着した状態を維持する。一方で、ポールピースアセンブリと第1面の間に設置した電磁石を永久磁石の磁束を減らす方向に磁化させ、ポールピースアセンブリと第2面の間に設置した電磁石を永久磁石の磁束を増やす方向に磁化させると、ポールピースアセンブリには第2面に吸着する力が作用する。ポールピースアセンブリが第2面と接して、ポールピースアセンブリ内の永久磁石が第2面と閉磁路を形成すると、電磁石の電流をオフにしてもポールピースアセンブリは第2面に吸着した状態を維持する。このように、動くときだけ電力を投入するだけでポールピースが第1面に吸着した状態と第2面に吸着した状態、これら2つの状態を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のアクチュエータは、第1面に吸着した状態から第2面に吸着した状態に移行するとき、永久磁石と同等以上の磁力が必要となり、大きな電力を投入する必要があった。
【0007】
また、ポールピースやガイド棒といった多くの構成部品が必要で、小型化、軽量化が困難であった。さらに、永久磁石と第1面や第2面との間に電磁石を設置する必要があるため、永久磁石と第1面、第2面との間の距離が大きくなり、永久磁石の磁力の損失が大きく、大きな吸着力を得るためには大きな永久磁石が必要となり、やはり小型化、軽量化が困難であった。
【0008】
また、第1面、第2面のいずれに吸着した状態においても吸着力が作用するため、何らの力も作用せずに可動自在な状態を作ることはできなかった。
【0009】
本発明は、上記課題に着目してなしたものであり、少ない電力で永久磁石の吸着力を制御することができ、永久磁石の吸着力を最大限に活かし、かつ吸着力を作用させない状態(可動自在な状態)を作ることのできるアクチュエータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のアクチュエータは、磁性体で形成され、一対の略直線部および一対の略直線部を連結する連結部からなる略U字型のコイルコアと、N極およびS極のそれぞれがコイルコアの内側において一対の略直線部に当接するように配置された永久磁石と、連結部の少なくとも一部に巻かれているコイルと、一対の略直線部の端面と所望の可動域を介して配置されたブリッジコアとを具備し、コイルに電流を流すことによって、ブリッジコアは一対の略直線部の端面に当接するように可動域を可動し、コイルに電流を流さないことによって、ブリッジコアは可動域を自由に可動することを特徴とする。
【0011】
また、前述したアクチュエータでは、ブリッジコアの可動域を1mm以下とするとなお良い。
【0012】
また、前述したアクチュエータでは、ブリッジコアが一対の略直線部の端面と当接しているとき、ブリッジコアと永久磁石の間の距離を1mm以下とするとなお良い。
【0013】
また、前述したアクチュエータでは、連結部のうちコイルが巻かれる部分の断面積を、略直線部のうち永久磁石が接する部分の断面積の0.5~0.9倍の大きさとするとなお良い。
【発明の効果】
【0014】
力を作用させたい対象物に、本発明に係るアクチュエータのブリッジコアを接続しておく。コイルに流す電流がゼロのとき、ブリッジコアに吸着力は発生せず可動域を自由に動くことができるため、対象物も可動域を自由に動くことができる。一方でコイルに適切な電流を流したとき、ブリッジコアはコイルコアに当接するため、対象物も固定された状態になる。
【0015】
このとき、コイルの電流によって、永久磁石による吸着力をゼロから永久磁石が本来持つ吸着力まで制御できるため、コイルによる電磁石のみによって吸着力を制御する場合と比べて、小型、軽量、かつ少ない電力での制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るアクチュエータの構造、および永久磁石や電磁石による磁束がとりうる状態を示す説明図である。
【
図3】本発明に係るアクチュエータに電流を流していない状態を示す説明図である。
【
図4】本発明に係るアクチュエータに電流を流しているが作動に至っていない状態を示す説明図である。
【
図5】本発明に係るアクチュエータに電流を流し作動している状態を示す説明図である。
【
図6】本発明に係るアクチュエータの動作を示す説明図である。
【
図7】
図6に示したアクチュエータに電流を流したときの磁束の変化を示す説明図である。
【
図8】
図6に示したアクチュエータに電流を流したときの吸着力の変化を示す説明図である。
【
図9】
図6に示したアクチュエータに電流を流したときの対象物の変位の変化を示す説明図である。
【
図10】本発明に係るアクチュエータを握力アシスト機器に適用した例を示す説明図である。
【
図12】
図10に示した握力アシスト機器を人差し指に装着した場合のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明に係るアクチュエータの構造、および永久磁石や電磁石による磁束がとりうる状態を示す説明図である。また
図2は、コイルコア単体の形状を示す説明図である。アクチュエータ1は永久磁石10と、磁性体で形成され、一対の略直線部11aおよび一対の略直線部11aを連結する連結部11bからなる略U字形状のコイルコア11と、連結部11bに巻かれているコイル12と、可動域30を介して配置されたブリッジコア13からなる。
【0018】
永久磁石10のN極およびS極のそれぞれはコイルコア11の内側において一対の略直線部11aに当接するように配置される。また、ブリッジコア13は一対の略直線部11aの端面と可動域30を介して配置され、可動域30内を自由に動くことができる。
【0019】
永久磁石10の磁束は、コイル12内を通る第一経路20と、可動域30の空間(空気)およびブリッジコア13内を通る第二経路21を主として流れる。第一経路20はブリッジコア13を通らないため、ブリッジコア13には永久磁石10による力は作用しない。一方で第二経路21はブリッジコア13を通るため、ブリッジコア13には可動域30の空間を小さくする方向、すなわちコイルコア11に向けた吸着力が作用する。ただし磁束の流れやすさは、磁性体のみからなり空間が存在しない第一経路20の方が流れやすい。
【0020】
コイル12による電磁石の磁束は、磁束密度の高い永久磁石10内を流れることは困難なため、可動域30の空間(空気)およびブリッジコア13内を通る経路22を主として流れる。経路22の向きは、経路20に対して磁気抵抗が生じるように、すなわち、逆向きとなるように、コイル12に流す電流の向きを設定する。
【0021】
磁束は、空間(空気)、逆向きの磁束、磁性体によって磁気抵抗を受け、電流や水と同じく磁気抵抗のもっとも小さい経路を主として流れる性質がある。本発明に係るアクチュエータ1では、コイル12による電磁石の磁束が経路22を流れる量をコイル12に流す電流によって制御することによって、永久磁石10の磁束の主流を第一経路20と第二経路21とで切り替え、第一経路20を流れるときはブリッジコア13に吸着力が作用していない状態、第二経路21を流れるときはブリッジコア13に吸着力が作用している状態としている。
【0022】
そしてアクチュエータ1によって動かしたい対象物をブリッジコア13またはコイルコア11に連結し、コイル12に流す電流を制御することによって、当該対象物に吸着力が作用しない状態と、吸着力が作用する状態を作り出している。
【0023】
永久磁石を利用すると、小型、軽量、省電力化が可能となる。電磁石を利用するとき、磁束を発生するのに必要なのは電流であり、コイルは電流の通り道にすぎず吸着力を発生するわけではないため、コイルが占有する体積や重量は小型化、軽量化を阻害する。そこでアクチュエータ1では、コイル12の磁束は永久磁石10の磁束の経路の切り替えを主目的として利用し、主な吸着力源は永久磁石10とすることでコイル12の体積や重量を抑制し、小型、軽量化を可能としている。これに対して、吸着力までコイルによる磁束のみ、すなわち電磁石で得ようとすると、コイルの占有する体積や重量が大きくなる分、小型、軽量化に不利となり、またアクチュエータ1よりも大きな電力が必要となる。
【0024】
図3は、本発明に係るアクチュエータに電流を流していない状態を示す説明図である。このときコイル12に磁束は発生しないため、永久磁石10の磁束は磁性体のみからなる第一経路20を主として流れ、第二経路21にはほとんど流れない。したがって、ブリッジコア13に磁束による吸着力はほぼ発生せず、ブリッジコア13は可動域30内を自由に動くことができる。
【0025】
図4は、本発明に係るアクチュエータに電流を流しているが作動に至っていない状態を示す説明図である。コイル12に電流を流し始めると、経路22に磁束が発生し、第一経路20は経路22の磁気抵抗を受けて磁束が流れにくくなる。その結果、第二経路21を流れる磁束の量が増える。第二経路21および経路22を流れる磁束によってブリッジコア13にはコイルコア11の方向に吸着力が作用するが、動くには至っていない。
【0026】
図5は、本発明に係るアクチュエータに電流を流し作動している状態を示す説明図である。コイル12に流す電流を大きくしていき、すなわち経路22の磁束を大きくしていくとやがて、永久磁石10の磁束は第二経路21を主として流れるようになる。第二経路21および経路22を流れる磁束によってブリッジコア13に所望の吸着力が作用し、コイルコア11に当接する。
【0027】
可動域30の大きさには望ましい範囲がある。吸着力はコイルコア11とブリッジコア13の間の距離の2乗に反比例することが知られているため、可動域30が大きい場合には可動域30内での場所によってブリッジコア13をコイルコア11に当接させるのに必要な電流が大きく変動してしまい、制御ロジックが複雑になってしまう。これを回避するためには可動域30を1mm以下に設定することが望ましい。
【0028】
コイルコア11の断面積には望ましい範囲がある。コイルコア11の連結部11bには第一経路20および経路22の磁束が互いに逆向きに流れる。経路22の磁束によって永久磁石10の磁束を第一経路20と第二経路21とで容易に切り替えるためには、連結部11bに流すことのできる磁束の許容量が、電流を流していないときに第一経路20を流れる永久磁石10の磁束にほぼ等しくなるよう、連結部11bの断面積を設定するのが望ましい。このように設定することで、電流を流して経路22による磁気抵抗が第一経路20に作用したとき、第一経路20の磁束が即座にあふれて容易に第二経路21に流れるようになる。
【0029】
一方で永久磁石10が当接する略直線部11aには第二経路21および経路22の磁束が同じ向きに流れる。これらの磁束は吸着力の源となるため可能な限り多く流すことが望ましい。そのため略直線部11aに流すことのできる磁束の許容量が、永久磁石10の全磁束と経路22を流れる磁束を加えたものと同等以上になるよう、略直線部11aの断面積を設定するのが望ましい。
【0030】
連結部11bの断面積は略直線部11aのそれより小さくすることが望ましいが、さまざまなテストを行った結果、連結部11bの断面積を略直線部11aの断面積に対して0.5~0.9倍に設定すると、吸着力のON/OFF制御の容易さと吸着力最大化の両立に対して望ましいことが判明した。
【0031】
永久磁石10の位置には望ましい範囲がある。磁性体であるコイルコア11には、小さいとはいえ磁気抵抗が存在しており、吸着力最大化のために磁気抵抗の低減は重要である。そのためには略直線部11aの長さを最小限に抑制することが有効である。具体的には、ブリッジコア13がコイルコア11に当接しているとき、ブリッジコア13と永久磁石10の間の距離が1mm以下になるよう永久磁石10の位置を設定すると、磁気抵抗によるロスは無視することができる。
【0032】
次に動作について説明する。
【0033】
図6は、本発明に係るアクチュエータの動作を示す説明図である。対象物50および51の間にアクチュエータ1を接続した構造である。対象物50は固定され、対象物51は対象物50に対して蝶番52によって回転運動することができ、アクチュエータ1内のブリッジコア13と対象物51はワイヤ53によって連結され、ブリッジコア13がコイルコア11側に移動することによって対象物51は図の上方向に重力に逆らって動く。コイル12に電流を加えていったときの磁束の変化、吸着力の変化、対象物51の高さ方向変位の変化の模式図をそれぞれ
図7、
図8および
図9に示す。
【0034】
電流がゼロのとき
図7に示すように磁束は第二経路21をほとんど流れないため、
図8に示すように吸着力はほとんど発生せず、
図9に示すように変位はゼロである。
【0035】
電流を大きくして電流値55の状態にすると、第一経路20を流れていた磁束の一部は第二経路21に移り(
図7)、吸着力が発生する(
図8)が、対象物51の自重や蝶番52の摩擦力により変位はゼロのまま(
図9)である。
【0036】
さらに電流を大きくして電流値56の状態にすると、第二経路21の磁束は大きくなり(
図7)、それに伴って吸着力も大きくなり(
図8)、吸着力が対象物51の自重や蝶番52の摩擦力に打ち勝って対象物51に変位が生じる(
図9)。するとブリッジコア13とコイルコア11の間の空間(空気)による磁気抵抗が減少することによって第二経路21の磁束が増加し、それによって吸着力が増加し、変位がさらに大きくなる雪崩現象を起こし、一気にブリッジコア13がコイルコア11に当接するまで変位する。ブリッジコア13がコイルコア11に当接すると、第二経路21を流れる磁束は急激に増大し(
図7)、これによって吸着力も急激に増大し(
図8)、対象物51は強い力で固定された状態となる。
【0037】
さらに電流を大きくして電流値57の状態にすると、経路22の磁束が増加(
図7)する分だけ吸着力が増加する(
図8)。一方で対象物51はすでに固定されているため変位は変化しない(
図9)。
【0038】
このように、本発明に係るアクチュエータ1は、永久磁石10の磁束の経路(第一経路20および第二経路21)を切り替えることによって、対象物51が自由に動ける状態と固定された状態の2つを作り出すことができる。
【0039】
図10は、本発明に係るアクチュエータを握力アシスト機器に適用した例を示す説明図である。また
図11は、
図10に示した握力アシスト機器の側面図である。
図10および
図11において、握力アシスト機器60は駆動部61、関節部68、指アシスト部67、および指固定部69からなる。握力アシスト機器60は関節部68を軸に駆動部61と指アシスト部67がくの字状に曲がる動作をする。そして指固定部69を一本の指に挿入して指に固定し、握力をアシストする。
【0040】
駆動部61はファイバーユニット62を複数並列に配置し、それぞれのファイバーユニット62の一端を固定部64によりケース65に固定したものである。ファイバーユニット62の反対側の端部は繊維状の力伝達子66を介して指アシスト部67に連結される。このとき力伝達子66を図の左方向に引くと、関節部68を軸に指アシスト部67が曲がるように力伝達子66を配置する。
【0041】
ファイバーユニット62は連結子63を介してアクチュエータ1を複数直列に連結したものである。複数のアクチュエータ1に1個、2個・・・と順次電流を流すことにより、固定部64に向かって変位を段階的に変化させながら縮むことができる。力伝達部66では、複数のファイバーユニット61が縮む力が合わさり、図の左向きに大きな力を得ることができる。
【0042】
握力アシスト機器60に示すように手の甲に複数のアクチュエータ1を載せるためには、アクチュエータ1のサイズを例えば数mm程度にしなければ実用性を担保できない。このサイズのアクチュエータにおいて、電磁石のみでは、電流やコイルの巻き数が制限されるために、指をアシストできるだけの力を得ることは困難である。一方で、永久磁石を利用するアクチュエータ1であれば十分な力を得ることができるため、握力アシスト機器60の実現が可能となる。
【0043】
図12は、
図10に示した握力アシスト機器を人差し指に装着した場合のイメージ図である。第2関節と第3関節の間に指固定部69を挿入し、駆動部61は手の甲に位置するように装着する。握力アシスト機器60を駆動させて、くの字状に曲げると、指固定部69は指を、駆動部61は手の甲を、それぞれ押す力が発生し、指を曲げる力をアシストすることができる。
【0044】
図13は、握力アシスト機器の変形例である。また
図14は、
図13に示した握力アシスト機器の側面図である。握力アシスト機器70の駆動部71は、アクチュエータ1を縦方向の連結子73および横方向の連結子74を介して複数連結している。連結子73は長さ方向にはほとんど伸びないがそれと垂直な方向には自由に動くことのできる繊維状のものであり、連結子74は繊維状あるいはゴム状の弾性体である。本変形例では、一つのアクチュエータ1の変位と吸着力が隣接するアクチュエータ1に作用し、握力アシスト機器70の変位や指を曲げる力は握力アシスト機器60のそれらよりもより滑らかに変化させることができる。その結果、より自然な握力アシストが可能となる。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。また握力アシスト機器のみならず、人体のさまざまな部位をアシストする機器、あるいは既存のアクチュエータと同じく、人体以外の対象物に対して力を作用させる用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 アクチュエータ
10 永久磁石
11 コイルコア
11a 略直線部
11b 連結部
12 コイル
13 ブリッジコア
30 可動域