IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社中村自工の特許一覧

<>
  • 特開-自在継手 図1
  • 特開-自在継手 図2
  • 特開-自在継手 図3
  • 特開-自在継手 図4
  • 特開-自在継手 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039081
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】自在継手
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/38 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
F16D3/38 Z
F16D3/38 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143361
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000150408
【氏名又は名称】株式会社ナジコ
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和樹
(72)【発明者】
【氏名】茂木 仁
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れる自在継手を提供する。
【解決手段】十字軸2と、十字軸の各軸に設けられる軸受3と、十字軸及び軸受を介して互いに回動自在に結合される一対のヨーク4、5と、各々の軸受を覆うベアリングキャップ6とを備え、ヨークの軸受の外周面3aとの当接面4a、5aにショットピーニング加工が施されている自在継手1。ヨークの軸受外周面との当接面にダブルショットピーニング加工を施してもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
十字軸と、該十字軸の各軸に設けられる軸受と、前記十字軸及び軸受を介して互いに回動自在に結合される一対のヨークと、前記各々の軸受を覆うベアリングキャップとを備え、前記ヨークの前記軸受の外周面との当接面にショットピーニング加工が施されていることを特徴とする自在継手。
【請求項2】
前記ヨークの前記軸受外周面との当接面にダブルショットピーニング加工が施されていることを特徴とする請求項1に記載の自在継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自在継手に関し、特に耐久性の向上を図った自在継手に関する。
【背景技術】
【0002】
軸芯の異なる駆動軸と従動軸とを連結するために用いられる自在継手は、例えば、図1及び図2に示すように、十字軸2と、十字軸2の各軸を支持する軸受3と、十字軸2及び軸受3を介して互いに回動自在に結合される一対のヨーク4、5と、各々の軸受3を覆うようにボルト7でヨーク4、5に固定されるベアリングキャップ6とを2組ずつ備え、これらをチューブ8で連結して構成される(特許文献1参照)。
【0003】
上記自在継手1は、一対のヨーク4、5の各々とベアリングキャップ6の接合面にダブルショットピーニング加工を施すことで、当該両接合面の疲労強度を向上させ、耐久性を高めることができる(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-038600号公報
【特許文献2】特開2022-026409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2に記載の発明は材料の疲労特性向上に有効であるが、自在継手1の一対のヨーク4、5の各々が軸受3の外周面に当接する面はトルク伝達による変形で滑りが生じるため、特にフレッティングコロージョン(微動摩耗)が生じる環境下ではフレッティング疲労によりヨークにき裂が生じ長期間使用することが困難であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来の技術に鑑みてなされたものであって、耐久性に優れる自在継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、自在継手であって、十字軸と、該十字軸の各軸に設けられる軸受と、前記十字軸及び軸受を介して互いに回動自在に結合される一対のヨークと、前記各々の軸受を覆うベアリングキャップとを備え、前記ヨークの前記軸受の外周面との当接面にショットピーニング加工が施されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ヨークの軸受外周面との当接面にショットピーニング加工を施したため、該当接面の耐フレッティング性能を向上させることができ、自在継手の耐久性を向上させることができる。
【0009】
上記自在継手において、前記ヨークの前記軸受外周面との当接面にダブルショットピーニング加工を施すことで、該当接面の耐フレッティング性能をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、耐久性に優れる自在継手を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明及び従来の自在継手の全体構造の一例を示す概略図である。
図2図1の自在継手の分解斜視図である。
図3図1の自在継手における十字軸の各軸を支持する軸受及びその近傍を示す概略図である。
図4図1における自在継手のヨークの軸受外周面との当接面における疲労試験結果を示すグラフである。
図5】ヨークの軸受外周面との当接面にダブルショットピーニング処理を施工する前後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
本発明に係る自在継手は、上記従来の自在継手1と基本的な構成は同じであるが、図3に示す一対のヨーク4、5の軸受3の外周面3aとの当接面4a、5aにショットピーニング加工が施されており、この点が本発明の特徴部分である。ショットピーニング加工は、微細な球体を金属表面に噴射して衝突させ、金属表面の硬さを増強し、また繰返し荷重に対して表面層に付与された圧縮残留応力が相殺する形で作用して疲れ強さを向上させるものであり、2段階に分けてショットピーニング加工を行うダブルショットピーニング加工を行うのがより好ましい。
【0014】
以下、本発明の試験例について説明する。
【0015】
SCM440調質材からなるヨーク4(5)の軸受3の外周面3aとの当接面4a(5a)に、ショット粒径0.2mmのショットピーニング加工の後、さらにショット粒径0.05mmのショットピーニング加工を施した(ダブルショットピーニング)ものを実施例1、何も処理を施していないものを比較例1~5とし、ねじり疲労試験を行った。その結果を図4に示す。
【0016】
比較例1~5(#1~#5)は、いずれも○印の時点でヨーク4(5)の軸受3の外周面3aとの当接面4a(5a)に亀裂が入って破損した。一方、実施例1(#6)は、比較例5と同じ±9.5kN・mのトルクを、比較例5よりも10倍以上の回数多く繰り返しかけても破損しなかった。これにより、ショットピーニング加工、より好ましくはダブルショットピーニングによりヨーク4(5)の耐久性が向上することが判る。
【0017】
図5は、ヨーク4(5)の軸受3の外周面3aとの当接面4a(5a)にダブルショットピーニング処理を施工する前後の写真である。施工後(図5(b))は、施工前(図5(a))に比べて表面の金属光沢が曇って一様に梨地模様となり、ざらざらした質感となっている。
【符号の説明】
【0018】
1 自在継手
2 十字軸
3 軸受
4、5 ヨーク
6 ベアリングキャップ
7 ボルト
8 チューブ
図1
図2
図3
図4
図5