(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039082
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】センサを固定する固定治具及び固定方法
(51)【国際特許分類】
F16B 2/08 20060101AFI20240314BHJP
G01D 11/30 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
F16B2/08 Z
F16B2/08 C
G01D11/30 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143363
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青山 慶子
(72)【発明者】
【氏名】中井 正義
(72)【発明者】
【氏名】久瀬 善治
(72)【発明者】
【氏名】山口 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】米村 英敏
【テーマコード(参考)】
3J022
【Fターム(参考)】
3J022DA15
3J022EA15
3J022EB14
3J022EC17
3J022FB03
3J022FB04
3J022FB07
3J022FB12
3J022FB24
3J022GA03
3J022GA06
3J022GB43
3J022GB45
(57)【要約】
【課題】高温環境下でも長時間センサを固定可能な固定治具及び固定方法を提供する。
【解決手段】配管の表面にセンサを固定する固定治具は、少なくとも1つの緩衝材と、表面に沿って配管に取り付けられるバンド部材と、バンド部材の一方の端部を含む第1端部部分とバンド部材の他方の端部を含む第2端部部分とを組み合わせてバンド部材をリング形状にし、リング形状の直径を調節する調節部とを備え、少なくとも1つの緩衝材には、2つのスリットが互いに間隔をあけて形成され、少なくとも1つの緩衝材の一方の面である第1面からバンド部材の第1端部部分を2つのスリットの一方に通し、少なくとも1つの緩衝材の他方の面である第2面からバンド部材の第1端部部分を2つのスリットの他方に挿入して、第1面側にバンド部材の第1端部部分及び第2端部部分が位置する状態で、少なくとも1つの緩衝材がバンド部材に取り付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の表面にセンサを固定する固定治具であって、
前記固定治具は、
少なくとも1つの緩衝材と、
前記表面に沿って前記配管に取り付けられるバンド部材と、
前記バンド部材の一方の端部を含む第1端部部分と前記バンド部材の他方の端部を含む第2端部部分とを組み合わせて前記バンド部材をリング形状にし、該リング形状の直径を調節する調節部と
を備え、
前記少なくとも1つの緩衝材には、2つのスリットが互いに間隔をあけて形成され、前記少なくとも1つの緩衝材の一方の面である第1面から前記バンド部材の前記第1端部部分を前記2つのスリットの一方に通し、前記少なくとも1つの緩衝材の他方の面である第2面から前記バンド部材の前記第1端部部分を前記2つのスリットの他方に挿入して、前記第1面側に前記バンド部材の前記第1端部部分及び前記第2端部部分が位置する状態で、前記少なくとも1つの緩衝材が前記バンド部材に取り付けられている固定治具。
【請求項2】
前記少なくとも1つの緩衝材の前記第2面と前記バンド部材との間に金属製の板部材が設けられている、請求項1に記載の固定治具。
【請求項3】
前記板部材は矩形である、請求項2に記載の固定治具。
【請求項4】
前記板部材は、前記バンド部材に向かって突出するように湾曲した形状を有する、請求項2または3に記載の固定治具。
【請求項5】
前記バンド部材は、前記配管を形成する材料の線膨張係数との差が1.0×10-6/℃以下の線膨張係数を有する材料から形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の固定治具。
【請求項6】
前記緩衝材はセラミックペーパーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の固定治具。
【請求項7】
配管の表面に少なくとも1つのセンサを固定する固定方法であって、
請求項1~3のいずれか一項に記載の固定治具を準備するステップと、
前記表面上における前記少なくとも1つのセンサを固定する位置に接着剤を塗布し、塗布した接着剤の上に前記少なくとも1つのセンサを載置するステップと、
前記固定治具により前記少なくとも1つのセンサを前記表面に向かって押し付けるステップと、
前記接着剤を硬化させるステップと
を含む固定方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのセンサは複数のセンサを含み、
前記複数のセンサのそれぞれに接続するケーブルを前記表面に固定するステップを含む、請求項7に記載の固定方法。
【請求項9】
前記複数のセンサは前記配管の軸方向に沿って設けられ、前記軸方向に隣り合うセンサのそれぞれに接続する前記ケーブルは、前記軸方向に隣り合うセンサのそれぞれから前記軸方向において反対方向に延びるように設けられている、請求項8に記載の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサを固定する固定治具及び固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高温用超音波センサと検査対象部とを耐熱無機系セラミックス接着剤により接合することが記載されている。特許文献2には、配管の外表面に無機系高温接着剤によって耐熱超音波センサを取り付けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-4713号公報
【特許文献2】特許第5406881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2のようにセンサを無機系セラミックス接着剤で取り付けただけでは、その後に付与される熱応力によって無機系セラミックス接着剤が劣化し、接着強度が落ちてしまうといった課題があった。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、高温環境下でも長時間センサを固定可能な固定治具及び固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る固定治具は、配管の表面にセンサを固定する固定治具であって、前記固定治具は、少なくとも1つの緩衝材と、前記表面に沿って前記配管に取り付けられるバンド部材と、前記バンド部材の一方の端部を含む第1端部部分と前記バンド部材の他方の端部を含む第2端部部分とを組み合わせて前記バンド部材をリング形状にし、該リング形状の直径を調節する調節部とを備え、前記少なくとも1つの緩衝材には、2つのスリットが互いに間隔をあけて形成され、前記少なくとも1つの緩衝材の一方の面である第1面から前記バンド部材の前記第1端部部分を前記2つのスリットの一方に通し、前記少なくとも1つの緩衝材の他方の面である第2面から前記バンド部材の前記第1端部部分を前記2つのスリットの他方に挿入して、前記第1面側に前記バンド部材の前記第1端部部分及び前記第2端部部分が位置する状態で、前記少なくとも1つの緩衝材が前記バンド部材に取り付けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の固定治具によれば、配管の表面に接着剤で固定されたセンサを固定治具によって表面に対して固定することで、センサに対する配管への押し付け力も維持されるので、高温環境下でも長時間センサを固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態1に係る固定治具の構成図である。
【
図2】本開示の実施形態1に係る固定治具の平面図である。
【
図3】本開示の実施形態1に係る固定治具によってセンサを固定している状態の断面図である。
【
図4】本開示の実施形態1に係る固定方法のフローチャートである。
【
図5】本開示の実施形態1に係る固定治具によってセンサを配管の外表面に対して固定している状態の平面図である。
【
図6】本開示の実施形態2に係る固定治具によってセンサを固定している状態の断面図である。
【
図7】本開示の実施形態2に係る固定治具によってセンサを配管の外表面に対して固定している状態の平面図である。
【
図8】本開示の実施形態2に係る固定治具における板部材の例を示す模式図である。
【
図9】本開示の実施形態2に係る固定治具における板部材の好ましい例を示す模式図である。
【
図10】本開示の実施形態4に係る固定治具によってセンサを配管の外表面に対して固定している状態の斜視図である。
【
図11】本開示の実施形態5に係る固定治具によってセンサを配管の外表面に対して固定している状態の斜視図である。
【
図12】本開示の実施形態5に係る固定治具によって固定される2つのセンサの配置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態による固定治具について、図面に基づいて説明する。以下で説明する実施形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
(実施形態1)
<本開示の実施形態1に係る固定治具の構成>
図1に示されるように、本開示の実施形態1に係る固定治具1は、緩衝材2と金属製のバンド部材3と、バンド部材3の一方の端部3aを含む第1端部部分6と他方の端部3bを含む第2端部部分7とを互いに組み合わされてバンド部材3をリング形状にし、さらにそのリング形状の直径を調節可能な調節部5とを備えている。緩衝材2として使用可能な材料は、以下の(1)~(5)の条件を満たす材料である。(1)力が加えられると厚み方向にある程度変形可能で、押さえ付けられる対象物(本開示では後述するセンサ)の形状にフィットする。(2)500℃程度の温度で焼損しない。(3)容易に加工することができる。(4)対象物が取付けられる物品(本開示では後述する配管)に接触しても、腐食等の悪影響を及ぼす成分を含まない。(5)物品に接触しても、物品に傷等の損傷を及ぼすほど硬くない。条件(1)~(5)の条件を満たす材料の一例として、セラミックペーパーを使用することができる。
【0011】
緩衝材2は好ましくは長方形の形状を有し、緩衝材2の長手方向に対して間隔をあけて2つのスリット4a,4bが緩衝材2に形成されている。スリット4a,4bはそれぞれ、後述するようにスリット4a,4bを通るバンド部材3の長手方向に対して垂直であることが好ましい。緩衝材2の一方の面である第1面2aからバンド部材3の第1端部部分6を一方のスリット4aに通し、緩衝材2の他方の面である第2面2bからバンド部材3の第1端部部分6を他方のスリット4bに挿入して、第1面2a側にバンド部材の第1端部部分とバンド部材3の第2端部部分7とが位置する状態で、緩衝材2がバンド部材3に取り付けられている。尚、一方の端部3a及び他方の端部3bは便宜上区別しているだけで、バンド部材3の両端のどちらが端部3a又は3bなのかを特定するものではない。
【0012】
調節部5の構成は特に限定されず、例えば、イワブチ株式会社から市販されている締め付け金具(SLS-1N)を調節部5として使用することができる。バンド部材3として、例えば、株式会社モノタロウから市販されているステンレスベルトSUS430を使用することができる。また、調節部5が設けられたバンド部材3として、例えば、株式会社ミスミから市販されているホースバンド(HOSBS200N)を使用することができる。
【0013】
図2に示されるように、バンド部材3(
図1参照)の幅をA(mm)とし、スリット4a,4bそれぞれの長さをB(mm)とし、緩衝材2の短手方向の幅をC(mm)とし、スリット4a,4b間の間隔をD(mm)とし、緩衝材2の長手方向の幅をE(mm)とする。Aは、押さえ付けられる対象物(センサ)の幅に対して+5mm程度であることが好ましい。この条件であれば、固定治具1で対象物を押さえつける際に、バンド部材3の中心と対象物の中心とが揃わないことを想定し、バンド部材3の幅に裕度を持たせることができる。
【0014】
Bは、Aよりも2mm程度大きい(B=A+2)ことが好ましい。スリット4a,4bのそれぞれにバンド部材3を差し込む際に、バンド部材3の幅よりもスリット4a,4bの幅がわずかに大きいので、差し込み易くなる一方で、緩衝材2の短手方向における緩衝材2に対するバンド部材3の位置のずれを極力抑制することができる。
【0015】
Cは、Aよりも15mm以上大きい(C≧A+15)ことが好ましい。この条件であれば、スリット4a,4bが緩衝材2の短手方向に進展して緩衝材2が破れてしまうリスクを極力避けることができる。Dは、Aの2倍以上(D≧2×A)であることが好ましい。この条件は、本開示の発明者らの実験により、対象物に押し付け力を付加するために好ましい条件として決定したものである。Eは、Aよりも50mm以上大きい(E≧A+50)ことが好ましい。この条件であれば、スリット4a,4bが緩衝材2の長手方向に進展して緩衝材2が破れてしまうリスクを極力避けることができる。
【0016】
<本開示の実施形態1に係る固定治具の使用方法>
次に、本開示の実施形態1に係る固定治具の使用方法の一例として、固定治具1によって配管の外表面にセンサを固定する方法を説明する。
図3には、配管10の外表面10a上に薄膜状のセンサ11を固定治具1によって固定している状態が示されている。センサ11は接着剤によって外表面10aに接着されており、センサ11の全体が緩衝材2によって覆われた状態で、リング形状のバンド部材3が配管10を締め付けるようにしてバンド部材3が配管10に固定されている。リング形状のバンド部材3が配管10を締め付けることにより、バンド部材3が緩衝材2を介してセンサ11を外表面10aに向かって押し付けている。上述したように、バンド部材3の幅をセンサ11の幅よりも5mm程度大きくすることで、バンド部材3がセンサ11に対して確実に押し付け力を付与することができる。尚、外表面10aへのセンサ11の接着に使用される接着剤は無機系セラミックス接着剤に限定されず、エポキシ系接着剤を使用することもできる。
【0017】
固定治具1を用いて配管10の外表面10a上にセンサ11を固定する固定方法を、
図4のフローチャートを用いて説明する。まず、配管10の外表面10a上に、チョークやマジック等でセンサ11の固定位置にマーキングを行う(ステップS1)。配管10の表面が塗装されていて金属表面が露出していない場合は、外表面10a上におけるセンサ11の固定位置をグラインダ、スコッチ・ブライト(商標)、サンドペーパー等を用いて研磨し、塗装、黒皮(酸化被膜)、スケール等を除去する(ステップS2)。尚、配管10に塗装が無い場合には、ステップS2は省略可能である。ただし、配管10に塗装が無い場合でも、凹凸をならすことや表面の粗さを大きくして接着剤の接着性を向上させることを目的としてステップS2を行ってもよい。外表面10a上におけるセンサ11の固定位置に水等の接触媒質を極少量塗布した上で、起動状態のセンサ11を上からウエス等を被せながら外表面10aに押し付け、センサ11から発せられた信号の配管10の内表面10bにおける反射信号が返ってくるか否かを検出し、センサ11に異常がないかどうかを確認する(ステップS3)。
【0018】
固定治具1を準備する(ステップS4)。実施形態1では、ステップS4として固定治具1を準備しているが、ステップS1の前からステップS2の後までのいずれかのタイミングでステップS4を行ってもよい。外表面10a上におけるセンサ11の固定位置に接着剤を塗布し、塗布した接着剤の上にセンサ11を載置する(ステップS5)。続いて、
図3の状態になるように固定治具1を取付け(ステップS6)、固定治具1によりセンサ11に押し付け力を付与する。尚、押し付け力の調節は、調節部5によりリング形状のバンド部材3の直径を調節することで行う。
図5に示されるように、センサ11には、信号を送信するためのケーブル、例えばMIケーブル12が接続されている。MIケーブル12が外表面10aから浮いた状態になっていると、センサ11による計測中にセンサ11が外表面10aからはがれやすくなるため、センサ11から延びるMIケーブル12を外表面10aに対して固定する(ステップS7)。MIケーブル12の固定は例えば、固定治具1を構成するバンド部材3と同じ構成のバンド部材13を準備し、少なくとも1つのバンド部材13と外表面10aとの間にMIケーブル12を挟むようにしてバンド部材13を配管10に取り付けることにより可能である。
【0019】
次に、ドライヤ又はヒートガン等を用いて接着剤を硬化させる(ステップS8)。この際、緩衝材2の下に熱電対の先端を差し込んでセンサ11の温度監視を行う。ドライヤ又はヒートガン等からの温風を緩衝材2に直接当ててしまうと、センサ11の貼り付け部近傍の配管の温度を正確に測定することができないため、温風は、緩衝材2のスリット4a,4b間に現れるバンド部材3に当てることが好ましい。最後に、センサ11から発せられた信号の配管10の内表面10bにおける反射信号が明瞭に確認可能な程度の信号強度に維持されているか否かを確認する(ステップS9)。ステップS1~S9により、センサ11が固定治具1により配管10の外表面10a上に固定される。
【0020】
このように、配管10の外表面10aに接着剤で固定されたセンサ11を固定治具1によって外表面10aに対して固定することで、センサ11に対する配管10への押し付け力も維持されるので、高温環境下でも長時間センサ11を固定することができる。
【0021】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る固定治具について説明する。実施形態2に係る固定治具は、実施形態1に対して、緩衝材2とバンド部材3との間に金属製の板状の部材を追加したものである。尚、実施形態2において、実施形態1の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0022】
<本開示の実施形態2に係る固定治具の構成>
図6に示されるように、本開示の実施形態2に係る固定治具1は、スリット4a,4b間において緩衝材2とバンド部材3とによって挟まれるように設けられた金属製(限定はしないが例えばSUS製)の板部材20をさらに備えている。
図7に示されるように、板部材20は緩衝材2を介してセンサ11に重なっているが、センサ11の一部の領域が板部材20よりもはみ出るようになっている。これにより、板部材20による押し付け力によりセンサ11とMIケーブル12の接続部に剪断力が働き、断線することを防ぐことができる。その他の構成は実施形態1と同じである。
【0023】
<本開示の実施形態2に係る固定治具を使用することによる作用効果>
配管10が100mm以上の外径を有する大口径配管の場合、緩衝材2及びバンド部材3のみからなる実施形態1の固定治具1では、100mm以下の外径を有する小口径配管と比較して、配管の表面状態、例えば溶接や塗装等によって生じた凹凸による変形の影響を大きく受けるため、センサ11を配管10の外表面10aに対して垂直な方向に沿って押し付ける押し付け力が小さくなることが一般的である。これに対し、上述の実施形態2に係る固定治具1を使用すれば、バンド部材3による押し付け力が板部材20を介してセンサ11に付与されるので、大口径配管にセンサ11を設置する場合でも、センサ11を外表面10aに対して垂直な方向に沿って押し付ける押し付け力が十分付与されるので、高温環境下でも長時間センサ11を固定することができる。
【0024】
<本開示の実施形態2に係る固定治具の板部材の好ましい形態>
板部材20は、センサ11の全体(ただし碍子部14を除く)を押し付けるため、センサ11の縦横の寸法に対して0~2mm大きい縦横の寸法を有することが好ましい。また、バンド部材3はセンサ11を長時間固定するため、キンク等が生じて損傷するおそれがある。このため、キンク等の発生を抑制するために、板部材20には面取りを施すことが好ましい。
【0025】
板部材20は、円形よりも矩形の形状を有することが好ましい。
図8に示されるように板部材20が円形の場合には、バンド部材3からの押し付け力を周縁上の2点P
1及びP
2で受けることになり、安定してセンサ11を押さえることができない。これに対し、
図9に示されるように板部材20が矩形の場合には、バンド部材3からの押し付け力を矩形の2つの辺E
1及びE
2で受けることになり、安定してセンサ11を押さえることができる。
【0026】
板部材20は、バンド部材3と緩衝材2との間に設けられた状態で、バンド部材3に向かって突出するように湾曲した形状を有することが好ましい。この湾曲の曲率半径は、配管10の外径と同等である。このような構成によれば、センサ11に対して押し付け力を付与することができる板部材20の面積が大きくなるので、大口径配管に対しても安定してセンサ11を固定することができる。ただし、本開示の発明者らの検討によれば、この効果が存在するのは、配管10の外径が100~300mmの範囲の場合であり、300mm以上の外径を有する配管10に対しては、湾曲した板部材20及び平坦な板部材20のいずれを使用しても、センサ11への押し付け力については大きな違いはなかった。このため、300mm以上の外径を有する配管10に対しては、平坦な板部材20を使用してもよい。
【0027】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係る固定治具について説明する。実施形態3に係る固定治具は、実施形態1または2に対して、配管10及びバンド部材3のそれぞれの材質を限定したものである。以下の説明では、実施形態1に対してこのような限定を付したものを実施形態3とするが、実施形態2に対してこのような限定を付して実施形態3としてもよい。尚、実施形態3において、実施形態1の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0028】
実施形態2でも述べたように、大口径配管にセンサ11を固定する場合、緩衝材2及びバンド部材3のみからなる実施形態1の固定治具1ではセンサ11を固定することが難しい。配管10を形成する材料とバンド部材3を形成する材料とのそれぞれの線膨張係数の差が大きい場合、配管10及びバンド部材3の温度が上昇すると、バンド部材3が緩んでしまうおそれがある。このため、実施形態3では、実施形態1に対して、バンド部材3は、配管10を形成する材料の線膨張係数との差が1.0×10-6/℃以下の線膨張係数を有する材料から形成されている。
【0029】
例えば、配管10が10.8×10-6/℃の線膨張係数を有する炭素鋼から形成される場合、バンド部材3は、10.4×10-6/℃の線膨張係数を有するSUS430から形成されることが好ましい。また、配管10が16.5×10-6~17.3×10-6/℃の線膨張係数を有するSUS304又はSUS316Lから形成される場合、バンド部材3は、17.3×10-6/℃の線膨張係数を有するSUS304から形成されることが好ましい。これら2つの例は、実施形態3の構成を限定するものではなく単なる例示であり、バンド部材3の材料をSUS材に限定するものではない。例えば500℃程度の高温状態で劣化しないインコネルでバンド部材3を形成してもよい。
【0030】
このように、配管10の材料とバンド部材3の材料とのそれぞれの線膨張係数の差を小さくすることにより、配管10及びバンド部材3の温度が上昇してもバンド部材3が緩むおそれを低減することができる。
【0031】
(実施形態4)
次に、実施形態4に係る固定治具について説明する。実施形態4に係る固定治具は、実施形態1~3のいずれかに対して、配管10の周方向に沿って複数のセンサ11を固定するようにしたものである。以下の説明では、実施形態1に対してこのような変更をしたものを実施形態4とするが、実施形態2または3に対してこのような変更をして実施形態4としてもよい。尚、実施形態4において、実施形態1の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0032】
図10に示されるように、本開示の実施形態4に係る固定治具1は、バンド部材3に複数の緩衝材2が互いに間隔をあけるようにして取り付けられている。各緩衝材2がバンド部材3に取り付けられる形態は、実施形態1で説明した形態と同じである。その他の構成は実施形態1と同じである。このような固定治具1を用いることにより、配管10の周方向に沿って設けられた複数のセンサ11を固定することができる。
【0033】
隣り合う緩衝材2,2同士の干渉、又は、固定治具1の取り付け時における作業の干渉を避けるために、配管10の周方向において隣り合うセンサ11の間隔は少なくとも200mmとすることが好ましい。また、センサ11に接続されるケーブルとして、柔軟性に乏しいMIケーブル12を用いる場合には、固定治具1によってセンサ11を固定する前に、MIケーブル12を予め配管10に固定しておくことが好ましい。尚、配管10に対するMIケーブル12の固定は、実施形態1で例示した方法で行ってもよいし、別の方法で行ってもよい。
【0034】
(実施形態5)
次に、実施形態5に係る固定治具について説明する。実施形態5に係る固定治具は、実施形態1~3のいずれかに対して、配管10の軸方向に沿って複数のセンサ11を固定するようにしたものである。以下の説明では、実施形態1に対してこのような変更をしたものを実施形態5とするが、実施形態2または3に対してこのような変更をして実施形態5としてもよい。尚、実施形態5において、実施形態1の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0035】
図11に示されるように、配管10の軸方向に沿って複数のセンサ11を固定する場合には、実施形態1に係る固定治具1を複数使用する。固定治具1の緩衝材2が配管10の軸方向に沿って並ぶように、隣り合う固定治具1が互いに間隔をあけるようにして取り付けられている。
【0036】
各センサ11から各MIケーブル12が同一方向に延びる場合には、他のセンサ11を覆う緩衝材2との干渉を避けるために、MIケーブル12を曲げる必要があるが、MIケーブル12は柔軟性に乏しいので、大きく曲げるとMIケーブル12が断線するおそれがある。このため、小さな曲げでMIケーブル12と緩衝材2との干渉を避けるようにするために、隣り合うセンサ11,11の間隔は少なくとも200mmとすることが好ましい。尚、配管10に対するMIケーブル12の固定については実施形態4と同じである。
【0037】
図12に示されるように、配管10の軸方向に沿って2つのセンサ11,11を固定する場合、各センサ11から反対方向にMIケーブル12を延ばすようにすれば、隣り合うセンサ11,11の間隔を200mmよりも短く、例えば40mm程度まで隣り合うセンサ11,11を近づけることができる。
【0038】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0039】
[1]一の態様に係る固定治具は、
配管(10)の表面(外表面10a)にセンサ(11)を固定する固定治具(1)であって、
前記固定治具(1)は、
少なくとも1つの緩衝材(2)と、
前記表面(10a)に沿って前記配管(10)に取り付けられるバンド部材(3)と、
前記バンド部材(3)の一方の端部(3a)を含む第1端部部分(6)と前記バンド部材(3)の他方の端部(3b)を含む第2端部部分(7)とを組み合わせて前記バンド部材(3)をリング形状にし、該リング形状の直径を調節する調節部(5)と
を備え、
前記少なくとも1つの緩衝材(2)には、2つのスリット(4a,4b)が互いに間隔をあけて形成され、前記少なくとも1つの緩衝材(2)の一方の面である第1面(2a)から前記バンド部材(3)の前記第1端部部分(6)を前記2つのスリットの一方(4a)に通し、前記少なくとも1つの緩衝材(2)の他方の面である第2面(2b)から前記バンド部材(3)の前記第1端部部分(6)を前記2つのスリットの他方(4b)に挿入して、前記第1面(2a)側に前記バンド部材(3)の前記第1端部部分(6)及び前記第2端部部分(7)が位置する状態で、前記少なくとも1つの緩衝材(2)が前記バンド部材(3)に取り付けられている。
【0040】
本開示の固定治具によれば、配管の表面に接着剤で固定されたセンサを固定治具によって表面に対して固定することで、センサに対する配管への押し付け力も維持されるので、高温環境下でも長時間センサを固定することができる。
【0041】
[2]別の態様に係る固定治具は、[1]の固定治具であって、
前記少なくとも1つの緩衝材(2)の前記第2面(2b)と前記バンド部材(3)との間に金属製の板部材(20)が設けられている。
【0042】
配管の外径が大きくなるほど、バンド部材によって配管の外表面に対して垂直な方向に沿ってセンサを押し付ける力が小さくなる。これに対し、上記[2]の構成によれば、配管表面に対して垂直な方向に沿った押し付け力が板部材によってセンサに与えられるので、外径の大きな配管に対してもセンサを固定することができる。
【0043】
[3]さらに別の態様に係る固定治具は、[2]の固定治具であって、
前記板部材(20)は矩形である。
【0044】
このような構成によれば、矩形の板部材の少なくとも2辺でセンサに対して押し付け力を付与することができるので、外径の大きな配管に対してもセンサを安定して固定することができる。
【0045】
[4]さらに別の態様に係る固定治具は、[2]または[3]の固定治具であって、
前記板部材(20)は、前記バンド部材(3)に向かって突出するように湾曲した形状を有する。
【0046】
このような構成によれば、センサに対して押し付け力を付与することができる板部材の面積が大きくなるので、外径の大きな配管に対しても安定してセンサを固定することができる。
【0047】
[5]さらに別の態様に係る固定治具は、[1]~[4]のいずれかの固定治具であって、
前記バンド部材(3)は、前記配管(10)を形成する材料の線膨張係数との差が1.0×10-6/℃以下の線膨張係数を有する材料から形成されている。
【0048】
配管の外径が大きくなるほど、配管の材料とバンド部材の材料との線膨張係数の差により、加熱中にバンド部材が緩むおそれがある。これに対し、上記[5]の構成によれば、配管の材料とバンド部材の材料とのそれぞれの線膨張係数の差が小さいので、配管及びバンド部材の温度が上昇してもバンド部材が緩むおそれを低減することができる。
【0049】
[6]さらに別の態様に係る固定治具は、[1]~[5]のいずれかの固定治具であって、
前記緩衝材(2)はセラミックペーパーである。
【0050】
このような構成によれば、固定治具の施工作業性を向上することができる。
【0051】
[7]一の態様に係る固定方法は、
配管(10)の表面(外表面10a)に少なくとも1つのセンサ(11)を固定する固定方法であって、
[1]~[6]のいずれかの固定治具(1)を準備するステップと、
前記表面(10a)上における前記少なくとも1つのセンサ(11)を固定する位置に接着剤を塗布し、塗布した接着剤の上に前記少なくとも1つのセンサ(11)を載置するステップと、
前記固定治具(1)により前記少なくとも1つのセンサ(11)を前記表面(10a)に向かって押し付けるステップと、
前記接着剤を硬化させるステップと
を含む。
【0052】
本開示の固定方法によれば、配管の外表面に接着剤で固定されたセンサを固定治具によって外表面に対して押し付けることができるので、高温環境下でも長時間センサを固定することができる。
【0053】
[8]別の態様に係る固定方法は、[7]の固定方法であって、
前記少なくとも1つのセンサ(11)は複数のセンサを含み、
前記複数のセンサのそれぞれに接続するケーブル(MIケーブル12)を前記表面(10a)に固定するステップを含む。
【0054】
このような方法によれば、ケーブルとして柔軟性に乏しいMIケーブルを使用する場合、外表面にケーブルを固定しておくことにより、センサを固定する作業性を向上することができる。
【0055】
[9]さらに別の態様に係る固定方法は、[8]の固定方法であって、
前記複数のセンサ(11)は前記配管(10)の軸方向に沿って設けられ、前記軸方向に隣り合うセンサ(11,11)のそれぞれに接続する前記ケーブル(12)は、前記軸方向に隣り合うセンサ(11,11)のそれぞれから前記軸方向において反対方向に延びるように設けられている。
【0056】
このような方法によれば、隣り合うセンサの間隔を200mmよりも短く、例えば40mm程度まで隣り合うセンサを近づけることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 固定治具
2 緩衝材
2a (緩衝材の)第1面
2b (緩衝材の)第2面
3 バンド部材
3a (バンド部材の)端部
3b (バンド部材の)端部
4a スリット
4b スリット
5 調節部
6 第1端部部分
7 第2端部部分
10 配管
10a (配管の)外表面
11 センサ
12 MIケーブル(ケーブル)
20 板部材