(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039092
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240314BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143378
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國信 茂太
(72)【発明者】
【氏名】王 亜成
(72)【発明者】
【氏名】愛須 英之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 琢史
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】取引対象の最適な入札量をより高精度に求める。
【解決手段】情報処理装置は、処理部を備える。処理部は、複数の発電量実績情報と、第2発電量予測値と、に基づいて、複数の第3発電量予測値を含む複数の発電量シナリオを作成する。処理部は、複数の発電量シナリオに基づいて、第1市場に対して入札する発電量の範囲を示す入札範囲を算出する。処理部は、複数の価格実績情報と、第2価格予測値と、に基づいて、価格の複数の第3価格予測値を含む複数の価格シナリオを作成する。処理部は、入札範囲と、複数の価格シナリオと、に基づいて、第1市場に対して入札する発電量を表す入札量を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1市場を含む複数の市場で取り引きされる取引対象の第1取引量予測値および前記第1取引量予測値に対応する取引量の実績値をそれぞれ含む複数の取引量実績情報と、前記取引対象の第2取引量予測値と、に基づいて、複数の第3取引量予測値を含む複数の取引量シナリオを作成し、
複数の前記取引量シナリオに基づいて、前記第1市場に対して入札する取引量の範囲を示す入札範囲を算出し、
複数の前記市場における前記取引対象の価格の予測値である第1価格予測値および前記第1価格予測値に対応する価格の実績値をそれぞれ含む複数の価格実績情報と、前記価格の第2価格予測値と、に基づいて、前記価格の複数の第3価格予測値を含む複数の価格シナリオを作成し、
前記入札範囲と、複数の前記価格シナリオと、に基づいて、前記第1市場に対して入札する取引量を表す入札量を算出する、
処理部
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記処理部は、複数の前記取引量シナリオに含まれる複数の前記第3取引量予測値を含む範囲のうち、前記入札範囲の下限のパーセンタイルを示す下限パーセンタイル値を下限値とし、前記入札範囲の上限のパーセンタイルを示す上限パーセンタイル値を上限値とする前記入札範囲を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記処理部は、指定された取引量シナリオ数分の前記取引量シナリオを作成し、指定された価格シナリオ数分の前記価格シナリオを作成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記第1取引量予測値と前記取引量の実績値との誤差についての経験分布を求め、前記経験分布を用いて選択した複数の誤差量を前記第2取引量予測値に加算した複数の第3取引量予測値を含む複数の前記取引量シナリオを作成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記第1価格予測値と前記価格の実績値との誤差についての経験分布を求め、前記経験分布を用いて選択した複数の誤差量を前記第2価格予測値に加算した複数の第3価格予測値を含む複数の前記価格シナリオを作成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記処理部は、複数の前記価格シナリオのうち、前記入札量が前記入札範囲に含まれ、かつ、利益を最大とする前記価格シナリオを求める最適化問題を解くことにより、前記入札量を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記最適化問題は、CVaR(Conditional Value at Risk)、または、VaR(Value at Risk)により定式化される、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記処理部は、
前記取引量シナリオを作成する取引量シナリオ作成部と、
前記入札範囲を算出する範囲算出部と、
前記価格シナリオを作成する価格シナリオ作成部と、
前記入札量を算出する入札量算出部と、
を備える、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記取引対象は、電力であり、
前記取引量は、発電量である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
情報処理装置で実行される情報処理方法であって、
第1市場を含む複数の市場で取り引きされる取引対象の第1取引量予測値および前記第1取引量予測値に対応する取引量の実績値をそれぞれ含む複数の取引量実績情報と、前記取引対象の第2取引量予測値と、に基づいて、複数の第3取引量予測値を含む複数の取引量シナリオを作成するステップと、
複数の前記取引量シナリオに基づいて、前記第1市場に対して入札する取引量の範囲を示す入札範囲を算出するステップと、
複数の前記市場における前記取引対象の価格の予測値である第1価格予測値および前記第1価格予測値に対応する価格の実績値をそれぞれ含む複数の価格実績情報と、前記価格の第2価格予測値と、に基づいて、前記価格の複数の第3価格予測値を含む複数の価格シナリオを作成するステップと、
前記入札範囲と、複数の前記価格シナリオと、に基づいて、前記第1市場に対して入札する取引量を表す入札量を算出するステップと、
を含む情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、
第1市場を含む複数の市場で取り引きされる取引対象の第1取引量予測値および前記第1取引量予測値に対応する取引量の実績値をそれぞれ含む複数の取引量実績情報と、前記取引対象の第2取引量予測値と、に基づいて、複数の第3取引量予測値を含む複数の取引量シナリオを作成するステップと、
複数の前記取引量シナリオに基づいて、前記第1市場に対して入札する取引量の範囲を示す入札範囲を算出するステップと、
複数の前記市場における前記取引対象の価格の予測値である第1価格予測値および前記第1価格予測値に対応する価格の実績値をそれぞれ含む複数の価格実績情報と、前記価格の第2価格予測値と、に基づいて、前記価格の複数の第3価格予測値を含む複数の価格シナリオを作成するステップと、
前記入札範囲と、複数の前記価格シナリオと、に基づいて、前記第1市場に対して入札する取引量を表す入札量を算出するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項12】
第1市場を含む複数の市場で取り引きされる取引対象の第1発電量予測値および前記第1発電量予測値に対応する発電量の実績値をそれぞれ含む複数の発電量実績情報と、前記取引対象の第2発電量予測値と、の入力を受け付け、
複数の前記発電量実績情報と、前記第2発電量予測値と、に基づいて、複数の第3発電量予測値を含む複数の発電量シナリオを作成し、
前記第1市場以外の市場から取引対象を買い戻す買戻しリスク、および、前記第1市場以外の市場に対して取引対象を追加売りする追加売りリスクそれぞれの重要度を示すリスク情報と、複数の前記発電量シナリオと、に基づいて、前記第1市場に対して入札する発電量を表す入札量を算出する、
処理部
を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電事業者などが発電した電力を取引するための電力取引市場が知られている。例えば日本では、日本卸電力取引所(JEPX:Japan Electric Power Exchange)が開設する複数の市場で電力が取り引きされる。複数の市場は、例えば、スポット市場および時間前市場を含む。スポット市場は、翌日に売却または購入する電力を前日までに入札し、売買を成立させる市場である。時間前市場(当日市場)は、実需給の直前まで活用可能な市場である。
【0003】
また、発電事業者が発電した発電量をどのような比率で複数の市場(スポット市場、時間前市場など)に分けて入札すれば利益が最大化されるかを算出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】枇々木規雄, “ポートフォリオ最適化入門”,機関紙「オペレーションズ・リサーチ」, Vol.61, 2016年6月号, p335-340.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電力などの市場での取引対象の最適な入札量をより高精度に求めることできる情報処理装置、情報処理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の情報処理装置は、処理部を備える。処理部は、複数の発電量実績情報と、第2発電量予測値と、に基づいて、複数の第3発電量予測値を含む複数の発電量シナリオを作成する。処理部は、複数の発電量シナリオに基づいて、第1市場に対して入札する発電量の範囲を示す入札範囲を算出する。処理部は、複数の価格実績情報と、第2価格予測値と、に基づいて、価格の複数の第3価格予測値を含む複数の価格シナリオを作成する。処理部は、入札範囲と、複数の価格シナリオと、に基づいて、第1市場に対して入札する発電量を表す入札量を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態にかかる情報処理装置のブロック図。
【
図9】線形計画問題に定式化する際に利用する定数の定義を示す図。
【
図10】線形計画問題に定式化する際に利用する変数の定義を示す図。
【
図11】第1の実施形態における入札量算出処理のフローチャート。
【
図12】第2の実施形態にかかる情報処理装置のブロック図。
【
図13】第2の実施形態における入札量算出処理のフローチャート。
【
図14】実施形態にかかる情報処理装置のハードウェア構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる情報処理装置の好適な実施形態を詳細に説明する。以下では、市場および当該市場での取引対象を、電力取引市場および電力とする例を説明するが、市場および取引対象はこれらに限られない。この例では、市場で取引対象(電力)が取り引きされる量を表す取引量は発電量に相当する。
【0010】
(第1の実施形態)
JEPXでは、発電される電力はできるだけスポット市場で約定し、当日発生する発電量の過不足分を時間前市場で売買することが規定されている。従来技術では、このような規定を考慮した構成とされていないため、規定が守られない場合が生じうる。以下では、スポット市場を主要取引市場(第1市場の一例)という場合がある。また、時間前市場を含む、スポット市場以外の市場を、非主要取引市場という場合がある。
【0011】
本実施形態は、JEPXのように2つ以上の電力取引市場があり、主要取引市場に発電した発電量をなるべく過不足が発生しないように入札すること(JEPXの規定を守ること)を前提とする。そして、本実施形態の情報処理装置は、この前提の元で、主要取引市場への最適な入札量を決定する。
【0012】
以下では、複数の市場は、主要取引市場および非主要取引市場の2つの市場である場合を例に説明する。非主要取引市場は、例えば時間前市場であるが、時間前市場以外の市場をさらに含んでもよい。また、以下では、発電事業者が発電した電力を複数の市場で売却する場合を例に説明する。電力需要者が電力を購入する場合の入札量についても同様の手順で決定することができる。
【0013】
本実施形態にかかる情報処理装置は、例えば、以下の機能を有し、主要取引市場への適切な入札量を決定する。
(F1)過去の複数の発電量実績情報、および、発電量の予測値(以下、発電量予測値PEbとする)を用いて、予測誤差(リスク)を考慮した発電量の範囲(入札範囲)を算出する機能
(F2)複数の市場(主要取引市場、非主要取引市場)での、過去の複数の価格実績情報、および、価格の予測値(以下、価格予測値PCbとする)を用いて、できるだけ安定高収入となるように、かつ、入札範囲内で主要取引市場への入札量を決定する機能
【0014】
発電量実績情報は、例えば、過去の発電量予測値PEa(第1取引量予測値)、および、発電量予測値PEaに対して実際に取り引きされた発電量の実績値を含む。発電量予測値PEb(第2取引量予測値)は、例えば翌日に実際に取引される電力量の予測値で、天気予報などから予測される発電量である。
【0015】
価格実績情報は、例えば、過去の価格予測値PCa(第1価格予測値)、および、価格予測値PCaに対して実際に取り引きされた価格の実績値を含む。価格予測値PCb(第2価格予測値)は、例えば翌日に実際に取引される市場価格の予測値である。なお、価格(価格予測値、市場価格を含む)とは、主要取引市場での価格のみでなく、非主要取引市場での価格も含む。
【0016】
機能F1では、例えば、複数の発電量予測値PEc(第3取引量予測値)を含む複数の発電量シナリオが作成され、複数の発電量シナリオに基づいて、経験分布に基づいた発電量分布が作成され、発電量分布を用いて入札範囲が算出される。発電量シナリオは、発電量予測値PEbに含まれるであろう予測誤差を考慮した、実際に起こり得る発電量の候補を示す情報に相当する。
【0017】
機能F2では、例えば、複数の価格予測値PCc(第3価格予測値)を含む複数の価格シナリオが作成され、複数の価格シナリオに基づいて、入札範囲で主要取引市場への入札量が算出される。価格シナリオは、実際に起こり得る主要取引市場での価格(主要取引市場価格)と非主要取引市場での価格(非主要取引市場価格)との組の候補を示す情報に相当する。
【0018】
図1は、第1の実施形態にかかる情報処理装置100の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、情報処理装置100は、記憶部121と、受付部101と、発電量シナリオ作成部102(取引量シナリオ作成部の一例)と、価格シナリオ作成部103と、範囲算出部104と、入札量算出部105と、出力制御部106と、を備えている。
【0019】
記憶部121は、情報処理装置100で用いられる各種データを記憶する。例えば記憶部121は、受付部101により受け付けられたデータ、および、その他の各部による処理結果などを記憶する。
【0020】
なお、記憶部121は、フラッシュメモリ、メモリカード、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、および、光ディスクなどの一般的に利用されているあらゆる記憶媒体により構成することができる。
【0021】
受付部101は、情報処理装置100で用いられる各種データの入力を受け付ける。例えば受付部101は、複数の発電量実績情報、発電量予測値PEb、複数の価格実績情報、および、価格予測値PCbを受け付ける。受付部101は、入札範囲を算出するために用いる情報を受け付けてもよい。この情報は、例えば、入札範囲の下限のパーセンタイルを示す下限パーセンタイル値と、入札範囲の上限のパーセンタイルを示す上限パーセンタイル値と、である。受付部101は、さらに、作成する発電量シナリオの個数(発電量シナリオ数)、および、作成する価格シナリオの個数(価格シナリオ数)を受け付けてもよい。
【0022】
発電量シナリオ作成部102は、複数の発電量実績情報と、発電量予測値PEbと、に基づいて、複数の発電量予測値PEcを含む複数の発電量シナリオを作成する。発電量シナリオ数が入力された場合、発電量シナリオ作成部102は、発電量シナリオ数分の発電量シナリオを作成する。
【0023】
価格シナリオ作成部103は、複数の価格実績情報と、価格予測値PCbと、に基づいて、複数の価格予測値PCcを含む複数の価格シナリオを作成する。価格シナリオ数が入力された場合、価格シナリオ作成部103は、価格シナリオ数分の価格シナリオを作成する。
【0024】
範囲算出部104は、複数の発電量シナリオに基づいて、主要取引市場に対して入札する発電量の範囲を示す入札範囲を算出する。例えば範囲算出部104は、複数の発電量シナリオに含まれる複数の発電量予測値PEcの、下限パーセンタイル値を下限値とし、上限パーセンタイル値を上限値とする範囲を、入札範囲として算出する。
【0025】
入札量算出部105は、入札範囲と、複数の価格シナリオと、に基づいて、主要取引市場に対して入札する発電量を表す入札量を算出する。例えば入札量算出部105は、入札量が入札範囲に含まれ、かつ、評価利益を最大とする複数の価格シナリオに共通な入札量を算出する。評価利益の定義としては、収益の期待値、CVaR(Conditional Value at Risk)の考え方での収益、VaR(Value at Risk)の考え方での収益等がある。
【0026】
出力制御部106は、情報処理装置100で用いられる各種データの出力を制御する。例えば出力制御部106は、入札量算出部105により算出された入札量を出力する。出力制御部106による出力方法はどのような方法であってもよいが、例えば、外部の装置(サーバ、他の情報処理装置など)にデータを送信する方法、液晶ディスプレイなどの表示装置に表示する方法、および、プリンタなどの画像形成装置を用いて記録媒体に出力する方法などを適用できる。
【0027】
上記各部(受付部101、発電量シナリオ作成部102、価格シナリオ作成部103、範囲算出部104、入札量算出部105、および、出力制御部106)の少なくとも一部は、1つの処理部により実現されてもよい。上記各部は、例えば、1または複数のプロセッサにより実現される。例えば上記各部は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサにプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現してもよい。上記各部は、専用のIC(Integrated Circuit)などのプロセッサ、すなわちハードウェアにより実現してもよい。上記各部は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。複数のプロセッサを用いる場合、各プロセッサは、各部のうち1つを実現してもよいし、各部のうち2つ以上を実現してもよい。
【0028】
以下、上記各部の処理の詳細についてさらに説明する。なお、以下の各処理は、一定の対象期間(時間コマ:JEPXのいう商品)ごとに実行される。対象期間は、例えば、JEPXなどの電力取引市場の運営主体によって予め定められる電力の入札が行われる期間に応じて定められる。例えば、対象期間は、30分ごとの期間である。この場合、1日は、48個の対象期間に分けられる。48個の対象期間は、1~48の識別情報で識別することができる。例えば、0:00~0:30の識別情報は「1」、0:30~1:00の識別情報は「2」、・・・、23:30~0:00の識別情報は「48」である。
【0029】
まず、発電量シナリオ作成部102の処理の詳細を説明する。発電量シナリオ作成部102は、当日の対象期間の発電量予測値PEbと、前日以前の同じ識別情報、または、近傍の識別情報で識別される対象期間ごとの発電量実績情報とから、指定された発電量シナリオ数分の複数の発電量シナリオを作成する。発電量シナリオ数は、どのような値であってもよいが、例えば、数百個程度とすると、より高精度に入札範囲(入札量)を求めることができる。
【0030】
なお、過去の発電量の実績値をそのまま発電量シナリオとすることも可能であるが、過去のデータが十分でない場合、精度よく入札範囲を算出できない可能性がある。本実施形態では、発電量シナリオ数を指定可能とすることで、より適切な個数の発電量シナリオを作成可能となる。
【0031】
発電量シナリオ作成部102は、以下のステップを実行する。
・ステップ1-1:発電量シナリオ作成部102は、対象期間の識別情報をt、類似時間帯を設定するための期間数をΔtとする。類似時間帯とは、対象期間と類似する発電量が得られると想定される時間帯を表す。類似時間帯から、対象期間と類似すると想定される発電量実績情報である類似時間帯データが抽出される。発電量シナリオ作成部102は、過去の発電量実績情報において、以下の(1)式で表される範囲から、類似時間帯データを抽出する。
【数1】
【0032】
Δtの値は、例えば、発電方式に応じて設定される。例えば、太陽光発電のように時間帯により大きく発電量が変化する発電方式の場合は、Δt=0のように小さな値に設定される。なお、Δt=0は、過去の発電量実績情報のうち、入札量を算出する対象とする当日の対象期間と同じ識別情報の対象期間の発電量実績情報を、類似時間帯データとして抽出することを意味する。
【0033】
・ステップ1-2:ステップ1-1で抽出されたデータ数をA個、近傍比率をX(%)とする。近傍比率は、類似時間帯データのうち、発電量予測値PEbにより近いデータ(近傍データ)が含まれる範囲(近傍範囲)を求めるために用いられる。近傍比率は、例えばユーザにより指定され、受付部101により受け付けられる。発電量シナリオ作成部102は、発電量予測値PEbを中心として、以下の(2)式で表されるm個の類似時間帯データが含まれる近傍範囲を算出し、近傍範囲に含まれるm個の類似時間帯データを近傍データとして選択する。
【数2】
【0034】
図2は、選択された近傍データの例を示す図である。データ201は、発電量予測値PEbに相当する。データ201以外の丸で表される複数のデータ202は、抽出された類似時間帯データに相当する。範囲210は、近傍範囲に相当する。範囲210内の4つのデータd
1~d
4は、選択された近傍データに相当する。
【0035】
・ステップ1-3:発電量シナリオ作成部102は、近傍データの誤差量を算出する。誤差量は、例えば、発電量実績情報(類似時間帯データ)に含まれる発電量予測値PEaと実績値との差分である。以後、近傍データの誤差量が小さい順にデータ番号を0,1,・・・,m-1とする。データ番号は、近傍データを識別する情報であり、0以上の整数である。
【0036】
・ステップ1-4:発電量シナリオ作成部102は、横軸を近傍データの誤差量、縦軸をデータ番号とする座標系に近傍データをプロットする。
図3は、プロットされた近傍データの分布(分布関数)を表す図である。
図3に示す分布は、誤差量についての経験分布に基づいた分布関数になる。
【0037】
・ステップ1-5:発電量シナリオ作成部102は、データ番号0~M-1の間の値をランダムに選択する。選択する値は、実数であってよい。発電量シナリオ作成部102は、
図3のような経験分布を用いて、選択された値に対応する誤差量を求める。近傍データの間に相当する値が選択された場合は、発電量シナリオ作成部102は、補間などにより、選択された値に対応する誤差量を求めることができる。
【0038】
図4は、誤差量を求める処理の例を示す図である。
図4の例では、データ番号5と6の間の値401に対応する誤差量402が求められる。
【0039】
発電量シナリオ作成部102は、求めた誤差量を発電量予測値PEbに加算した値を発電量予測値PEcとして算出し、発電量予測値PEcを含む新たな発電量シナリオを作成する。発電量シナリオ作成部102は、指定された発電量シナリオ数の分だけ、ステップ1-5を繰り返し、発電量シナリオ数分の発電量シナリオを作成する。
【0040】
次に、範囲算出部104の処理の詳細を説明する。
【0041】
範囲算出部104は、発電量シナリオ作成部102によって作成された複数の発電量シナリオを、発電量予測値PEcの値の順に並べる。
【0042】
図5は、並べられた発電量予測値PEcの例を示す図である。なお
図5では、10個(発電量シナリオ数=10)の発電量シナリオS1~S10が作成され、発電量シナリオに含まれる10個の発電量予測値PEcを並べた例が示されている。また、値501は、発電量予測値PEbに相当する。
【0043】
発電量シナリオは、過去の発電量実績情報を元に生成された経験分布を用いて作成されるため、いずれの発電量シナリオの発電量予測値も実際の発電量として発生し得る。しかし、発電量の実績値には外れ値が含まれる得るため、発電量シナリオにも外れ値が含まれることがある。そこで、範囲算出部104は、下限パーセンタイル値βLと、上限パーセンタイル値βHと、を用いて、可能な限り外れ値を含まないような範囲を入札範囲として算出する。
【0044】
図5の例では、発電量シナリオの個数が10個であるので、β=0.1が発電量シナリオS1、・・・、β=0.5が発電量シナリオS5、・・・、β=1.0が発電量シナリオS10に対応する。下位パーセンタイル値β=0.5が中央値に対応する(予測誤差を考慮した最も確からしい発電量)。このため、β
L、β
Hを入力しない構成の場合、β
L=0.4、β
H=0.6のようにβ=0.5を含む範囲をデフォルト値として利用することが妥当である。
【0045】
β<0.5を指定することは、発電量が下振れすることを重視するように予測誤差を考慮した発電量となる。すなわち、一般的に主要取引市場での入札量が減り、他の電力取引市場での電力の買戻しリスクが減る。買戻しリスクは、主要取引市場以外の市場から電力を買い戻すリスクを表す。
【0046】
β>0.5を指定することは、発電量が上振れすることを重視するように予測誤差を考慮した発電量となる。すなわち、主要取引市場での入札量が増え、他の電力取引市場での電力の追加売りリスクが減る。追加売りリスクは、主要取引市場以外の市場に対して電力を追加売りするリスクを表す。
【0047】
そこで、追加売りリストと、買戻しリスクと、のいずれを重視するかを考慮して、下限パーセンタイル値βLと、上限パーセンタイル値βHと、を指定可能とすることが望ましい。
【0048】
図6は、追加売りリストおよび買戻しリスクの重視度(追加売りリスク・買戻しリスク重視度)と、下限パーセンタイル値β
Lおよび上限パーセンタイル値β
Hの設定値の組み合わせと、を対応づけた対応情報の例を示す図である。
【0049】
例えばユーザは、
図6のような対応情報の追加売りリスク・買戻しリスク重視度のうちいずれかを指定する。受付部101は、指定された追加売りリスク・買戻しリスク重視度の入力を受け付け、受け付けた追加売りリスク・買戻しリスク重視度に対応する設定値を下限パーセンタイル値β
Lおよび上限パーセンタイル値β
Hの値とする。
【0050】
なお、
図6のような対応情報を用いたパーセンタイル値の指定方法は一例であり、その他の指定方法が用いられてもよい。例えば、受付部101は、下限パーセンタイル値β
Lおよび上限パーセンタイル値β
Hの値の入力を個別に受け付けてもよい。
【0051】
なお、想定されるリスクは、買戻しリスクおよび追加売りリスクに限られない。例えば、JEPXでは非主要取引市場でも発電量予測値からの差分が処理(売買)できなかった場合、インバランス価格と呼ばれるペナルティ価格での売買が強制される。インバランス価格は、発電事業者にとっては不利な価格であり、リスク要因となりうる。このような買戻しリスクおよび追加売りリスク以外のリスクを考慮してパーセンタイル値が指定されてもよい。
【0052】
範囲算出部104は、複数の発電量予測値PEcを含む範囲のうち、指定された下限パーセンタイル値を下限値とし、指定された上限パーセンタイル値を上限値とする範囲を、入札範囲として算出する。
図5の例では、下限パーセンタイル値β
L=0.5、上限パーセンタイル値β
H=0.8の場合、範囲算出部104は、840kWh~880kWhを入札範囲として算出する。
【0053】
次に、価格シナリオ作成部103の処理の詳細を説明する。
【0054】
価格シナリオ作成部103は、対象期間ごとに、実際に起こり得る主要取引市場価格と非主要取引市場価格との組の候補を示す価格シナリオを、指定されたシナリオ数分作成する。
【0055】
価格シナリオ作成部103は、以下のステップを実行する。
・ステップ2-1:価格シナリオ作成部103は、対象期間の識別情報をt、類似時間帯を設定するための期間数をΔtとする。価格シナリオ作成部103は、過去の価格実績情報において、上記の(1)式で表される範囲から、類似時間帯データを抽出する。
【0056】
・ステップ2-2:ステップ2-1で抽出されたデータ数をA個、近傍比率をX(%)とする。価格シナリオ作成部103は、対象期間における価格予測値PCb(主要取引市場の価格予測値、非主要取引市場の価格予測値)を中心とし、上記の(2)式で表されるm個の類似時間帯データが含まれる円の半径を算出し、当該円に含まれるm個の類似時間帯データを近傍データとして選択する。
【0057】
図7は、選択された近傍データの例を示す図である。データ701は、価格予測値PCbに相当する。データ701以外の丸で表される複数のデータ702は、抽出された類似時間帯データに相当する。範囲710は、算出された円に相当する。範囲710内の4つのデータd
1~d
4は、選択された近傍データに相当する。
【0058】
・ステップ2-3:価格シナリオ作成部103は、近傍データの誤差量を算出する。誤差量は、例えば、価格実績情報(類似時間帯データ)に含まれる価格予測値PCaと実績値との差分である。誤差量は、主要取引市場価格および非主要取引市場価格のそれぞれについて算出される。
【0059】
・ステップ2-4:価格シナリオ作成部103は、横軸を主要取引市場価格の誤差量、縦軸を非主要取引市場価格の誤差量とする座標系に近傍データをプロットする。さらに、価格シナリオ作成部103は、近傍データを母点とするボロノイ領域(境界)および凸包を算出する。
【0060】
図8は、ボロノイ境界および凸包の例を示す図である。破線802が、ボロノイ境界に相当する。実線801で囲まれる領域が凸包に相当する。
図8に示すような2次元のグラフを用いて以下のステップ2-5、ステップ2-6の操作を実行することが、2次元経験分布関数に従ったシナリオを作成する機能に相当すると解釈することができる。
【0061】
・ステップ2-5:価格シナリオ作成部103は、複数の近傍データのうち1つをランダムに選択する。
【0062】
・ステップ2-6:価格シナリオ作成部103は、ステップ2-5で選択された近傍データ点を母点とするボロノイ領域内かつ凸包内の点をランダムに選択する。価格シナリオ作成部103は、選択した点を市場価格の誤差量(主要取引市場価格の誤差量、非主要取引市場価格の誤差量)と考え、この誤差量を対象期間の価格予測値PCbに加算した値を価格予測値PCcとして算出し、価格予測値PCcを含む新たな価格シナリオを作成する。
【0063】
価格シナリオ作成部103は、指定された価格シナリオ数の分だけ、ステップ2-5およびステップS2-6を繰り返し、価格シナリオ数分の価格シナリオを作成する。
【0064】
次に、入札量算出部105の処理の詳細を説明する。
【0065】
入札量算出部105は、範囲算出部104が作成した入札範囲内で、価格シナリオ作成部103が作成した価格シナリオを用いて、安定高収入となる主要取引市場への入札量(wspot)を算出する。
【0066】
以後の説明においては、入札範囲をWmin~Wmax、発電量シナリオにおけるパーセンタイル値β=0.5における発電量をWmidとする。また、非主要取引市場への入札量をwintraday(=Wmid-wspot)と記述する。
【0067】
安定高収入となる主要取引市場への入札量とは、価格シナリオを収益の低い順に並べたときの下位αパーセンタイル以下のシナリオの収益の期待値を最大にするwspotを指す(0≦α≦1.0)。wspotを求める問題は、CVaRの考え方に基づくシナリオ最適化に相当する。なお、αは、ユーザによって与えられる値としてもよいし、固定のデフォルト値(α=0.8等)として与えられてもよい。
【0068】
入札量算出部105は、wspotを求める問題を線形計画問題に定式化し、線形計画問題を解く。以下、線形計画問題への定式化の方法について説明する。以後の説明では、発電量シナリオの集合をZ、価格シナリオの集合をYとする。価格シナリオyi∈Y(iは、1以上、価格シナリオ数以下の整数)には、主要取引市場価格と非主要取引市場価格が含まれる。発電量シナリオzj∈Z(jは、1以上、発電量シナリオ数以下の整数)には、発電量が含まれる。
【0069】
線形計画問題に定式化する際に利用する定数および変数の定義を
図9および
図10にそれぞれ示す。
図9に示す各定数の値は、入力されたデータ、および、上記各部(発電量シナリオ作成部102、価格シナリオ作成部103、範囲算出部104)による処理結果から得ることができる。
【0070】
次に、線形計画問題の制約式について説明する。非主要取引市場への入札量wintradayは補助変数に相当し、wintraday=Wmid-wspotで表される。主要取引市場への入札量を入札範囲内に制限する制約式は、Wmin≦wspot≦Wmaxで表される。
【0071】
利益を表す補助変数の定義は以下の(3)式で表される。ただし、R
Y[・]は、市場価格のシナリオ集合Yのうち、利益が少ないT個分のシナリオに対する売り上げの期待値を表す。Tの値は、αの値と作成する価格シナリオ数から算出できる。例えば、Tの値は、価格シナリオ×αの整数部分の値として算出される。
【数3】
【0072】
(3)式を線形式へ展開する方法は以下のとおりである。R
Y[・]の展開には、CVaRモデルの定式化(例えば非特許文献1)を応用する。具体的には以下の(4)式で表される制約式を追加することで、(3)式を線形制約式へ展開できる。p
yiは範囲制限のない補助変数である。
【数4】
【0073】
以下の(5)式で表される制約式を追加する。ここで、γ、u
yiは新たに導入する補助変数である。γは範囲制限のない値であり、u
yi≧0である。
【数5】
【0074】
これらの制約式を用いると、以下の(6)式は、以下の(7)式で置き換えられる。
【数6】
【数7】
【0075】
次に、線形計画問題の目的関数について説明する。利益の期待値の最大化をするための目的関数は、max.profで表される。
【0076】
入札量算出部105は、このように定式化した線形計画問題を解くことにより、(CVaRに基づく考え方による)安定高収入となる主要取引市場への入札量を算出する。線形計画問題の解法は、従来から用いられているどのような方法を適用してもよい。
【0077】
これまでは、CVaRに基づいたシナリオ最適化の例を示したが、これに限られるものではない。入札量算出部105は、VaRに基づいて利益の期待値を最大化する手法、および、より単純に利益の期待値を最大化する手法を用いてもよい。単純に利益の期待値を最大化する手法は、例えば、α=1とし、下位αパーセンタイル以下のシナリオの収益の期待値を最大化するのと同意である。
【0078】
次に、第1の実施形態にかかる情報処理装置100による入札量算出処理について説明する。
図11は、第1の実施形態における入札量算出処理の一例を示すフローチャートである。
【0079】
受付部101は、シナリオ(発電量シナリオ、価格シナリオ)の作成に用いるデータの入力を受け付ける(ステップS101)。発電量シナリオ作成部102は、経験分布に従う複数の発電量シナリオを作成する(ステップS102)。範囲算出部104は、作成された複数の発電量シナリオから発電量の入札範囲を算出する(ステップS103)。価格シナリオ作成部103は、経験分布に従う複数の価格シナリオを作成する(ステップS104)。入札量算出部105は、入札範囲、発電量シナリオ、および、価格シナリオに基づく最適化問題を解き、最適な入札量を算出する(ステップS105)。出力制御部106は、算出された入札量を出力し(ステップS106)、入札量算出処理を終了する。
【0080】
JEPXの市場においては最低取引単位が50kWhと決められている。そこで、出力制御部106は、算出された入札量wspotの値が50kWhの倍数になっていない場合は、50kWhの倍数になるように値の切り上げ、または、切り捨てを行い、その結果を出力してもよい。
【0081】
このように、第1の実施形態では、上記の(F1)、(F2)の機能により、主要取引市場への適切な入札量をより高精度に求めることができる。
【0082】
なお、例えば、複数の市場(主要取引市場、非主要取引市場など)に入札する発電量の比率を、利益を最大化するように求める技術では、電力をできるだけ主要取引市場(スポット市場)で約定するというような規定が守られない場合が生じうる。これに対して本実施形態では、主要取引市場への最適な入札量が算出される。すなわち、上記のような規定を守りつつ、高精度に入札量を求めることが可能となる。
【0083】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、価格シナリオを用いずに最適な入札量を算出する。
【0084】
図12は、第2の実施形態にかかる情報処理装置100-2の構成の一例を示すブロック図である。
図12に示すように、情報処理装置100-2は、記憶部121と、受付部101-2と、発電量シナリオ作成部102と、入札量算出部105-2と、出力制御部106と、を備えている。
【0085】
第2の実施形態では、価格シナリオ作成部103および範囲算出部104が削除されたこと、並びに、受付部101-2および入札量算出部105-2の機能が、第1の実施形態と異なっている。その他の構成および機能は、第1の実施形態にかかる情報処理装置100のブロック図である
図1と同様であるので、同一符号を付し、ここでの説明は省略する。
【0086】
受付部101-2は、価格シナリオの作成に関するデータを受け付ける必要がない点が、第1の実施形態の受付部101と異なる。価格シナリオの作成に関するデータは、例えば、価格実績情報、価格予測値PCb、および、価格シナリオ数である。
【0087】
入札量算出部105-2は、リスク情報と、複数の発電量シナリオと、に基づいて、入札量を算出する。リスク情報は、買戻しリスクおよび追加売りリスクそれぞれの重要度を表す情報である。例えば、リスク情報は、買戻しリスクと追加売りリスクとをどの程度の重みで考慮するかを指定するリスク比(p:q)である。リスク情報は、受付部101-2により入力を受け付けるように構成されてもよい。
【0088】
入札量算出部105-2は、例えば、リスク比p:qを用いて、パーセンタイル値β=p/(p+q)を算出する。入札量算出部105-2は、算出したパーセンタイル値βに対応する発電量シナリオの発電量を、予測誤差を考慮した発電量(入札量)として算出する。
【0089】
次に、第2の実施形態にかかる情報処理装置100-2による入札量算出処理について
図13を用いて説明する。
図13は、第2の実施形態における入札量算出処理の一例を示すフローチャートである。
【0090】
受付部101-2は、シナリオ(発電量シナリオ)の作成に用いるデータの入力を受け付ける(ステップS201)。発電量シナリオ作成部102は、経験分布に従う複数の発電量シナリオを作成する(ステップS202)。入札量算出部105-2は、リスク情報(リスク比)および発電量シナリオから、最適な入札量を算出する(ステップS203)。出力制御部106は、算出された入札量を出力し(ステップS204)、入札量算出処理を終了する。
【0091】
このように、第2の実施形態にかかる情報処理装置では、価格シナリオを用いず、リスク情報(リスク比)および発電量シナリオを用いて、最適な入札量を算出することができる。
【0092】
以上説明したとおり、第1から第2の実施形態によれば、電力の最適な入札量をより高精度に求めることできる。
【0093】
次に、第1または第2の実施形態にかかる情報処理装置のハードウェア構成について
図14を用いて説明する。
図14は、第1または第2の実施形態にかかる情報処理装置のハードウェア構成例を示す説明図である。
【0094】
第1または第2の実施形態にかかる情報処理装置は、CPU51などの制御装置と、ROM(Read Only Memory)52やRAM53などの記憶装置と、ネットワークに接続して通信を行う通信I/F54と、各部を接続するバス61を備えている。
【0095】
第1または第2の実施形態にかかる情報処理装置で実行されるプログラムは、ROM52等に予め組み込まれて提供される。
【0096】
第1または第2の実施形態にかかる情報処理装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Compact Disk Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録してコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるように構成してもよい。
【0097】
さらに、第1または第2の実施形態にかかる情報処理装置で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、第1または第2の実施形態にかかる情報処理装置で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0098】
第1または第2の実施形態にかかる情報処理装置で実行されるプログラムは、コンピュータを上述した情報処理装置の各部として機能させうる。このコンピュータは、CPU51がコンピュータ読取可能な記憶媒体からプログラムを主記憶装置上に読み出して実行することができる。
【0099】
実施形態の構成例について以下に記載する。
(構成例1)
第1市場を含む複数の市場で取り引きされる取引対象の第1取引量予測値および前記第1取引量予測値に対応する取引量の実績値をそれぞれ含む複数の取引量実績情報と、前記取引対象の第2取引量予測値と、に基づいて、複数の第3取引量予測値を含む複数の取引量シナリオを作成し、
複数の前記取引量シナリオに基づいて、前記第1市場に対して入札する取引量の範囲を示す入札範囲を算出し、
複数の前記市場における前記取引対象の価格の予測値である第1価格予測値および前記第1価格予測値に対応する価格の実績値をそれぞれ含む複数の価格実績情報と、前記価格の第2価格予測値と、に基づいて、前記価格の複数の第3価格予測値を含む複数の価格シナリオを作成し、
前記入札範囲と、複数の前記価格シナリオと、に基づいて、前記第1市場に対して入札する取引量を表す入札量を算出する、
処理部
を備える情報処理装置。
(構成例2)
前記処理部は、複数の前記取引量シナリオに含まれる複数の前記第3取引量予測値を含む範囲のうち、前記入札範囲の下限のパーセンタイルを示す下限パーセンタイル値を下限値とし、前記入札範囲の上限のパーセンタイルを示す上限パーセンタイル値を上限値とする前記入札範囲を算出する、
構成例1に記載の情報処理装置。
(構成例3)
前記処理部は、指定された取引量シナリオ数分の前記取引量シナリオを作成し、指定された価格シナリオ数分の前記価格シナリオを作成する、
構成例1または2に記載の情報処理装置。
(構成例4)
前記処理部は、前記第1取引量予測値と前記取引量の実績値との誤差についての経験分布を求め、前記経験分布を用いて選択した複数の誤差量を前記第2取引量予測値に加算した複数の第3取引量予測値を含む複数の前記取引量シナリオを作成する、
構成例1から3のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(構成例5)
前記処理部は、前記第1価格予測値と前記価格の実績値との誤差についての経験分布を求め、前記経験分布を用いて選択した複数の誤差量を前記第2価格予測値に加算した複数の第3価格予測値を含む複数の前記価格シナリオを作成する、
構成例1から4のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(構成例6)
前記処理部は、複数の前記価格シナリオのうち、前記入札量が前記入札範囲に含まれ、かつ、利益を最大とする前記価格シナリオを求める最適化問題を解くことにより、前記入札量を算出する、
構成例1から5のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(構成例7)
前記最適化問題は、CVaR(Conditional Value at Risk)、または、VaR(Value at Risk)により定式化される、
構成例6に記載の情報処理装置。
(構成例8)
前記処理部は、
前記取引量シナリオを作成する取引量シナリオ作成部と、
前記入札範囲を算出する範囲算出部と、
前記価格シナリオを作成する価格シナリオ作成部と、
前記入札量を算出する入札量算出部と、
を備える、
構成例1から7のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(構成例9)
前記取引対象は、電力であり、
前記取引量は、発電量である、
構成例1から8のいずれか1つに記載の情報処理装置。
(構成例10)
情報処理装置で実行される情報処理方法であって、
第1市場を含む複数の市場で取り引きされる取引対象の第1取引量予測値および前記第1取引量予測値に対応する取引量の実績値をそれぞれ含む複数の取引量実績情報と、前記取引対象の第2取引量予測値と、に基づいて、複数の第3取引量予測値を含む複数の取引量シナリオを作成するステップと、
複数の前記取引量シナリオに基づいて、前記第1市場に対して入札する取引量の範囲を示す入札範囲を算出するステップと、
複数の前記市場における前記取引対象の価格の予測値である第1価格予測値および前記第1価格予測値に対応する価格の実績値をそれぞれ含む複数の価格実績情報と、前記価格の第2価格予測値と、に基づいて、前記価格の複数の第3価格予測値を含む複数の価格シナリオを作成するステップと、
前記入札範囲と、複数の前記価格シナリオと、に基づいて、前記第1市場に対して入札する取引量を表す入札量を算出するステップと、
を含む情報処理方法。
(構成例11)
コンピュータに、
第1市場を含む複数の市場で取り引きされる取引対象の第1取引量予測値および前記第1取引量予測値に対応する取引量の実績値をそれぞれ含む複数の取引量実績情報と、前記取引対象の第2取引量予測値と、に基づいて、複数の第3取引量予測値を含む複数の取引量シナリオを作成するステップと、
複数の前記取引量シナリオに基づいて、前記第1市場に対して入札する取引量の範囲を示す入札範囲を算出するステップと、
複数の前記市場における前記取引対象の価格の予測値である第1価格予測値および前記第1価格予測値に対応する価格の実績値をそれぞれ含む複数の価格実績情報と、前記価格の第2価格予測値と、に基づいて、前記価格の複数の第3価格予測値を含む複数の価格シナリオを作成するステップと、
前記入札範囲と、複数の前記価格シナリオと、に基づいて、前記第1市場に対して入札する取引量を表す入札量を算出するステップと、
を実行させるためのプログラム。
(構成例12)
第1市場を含む複数の市場で取り引きされる取引対象の第1発電量予測値および前記第1発電量予測値に対応する発電量の実績値をそれぞれ含む複数の発電量実績情報と、前記取引対象の第2発電量予測値と、の入力を受け付け、
複数の前記発電量実績情報と、前記第2発電量予測値と、に基づいて、複数の第3発電量予測値を含む複数の発電量シナリオを作成し、
前記第1市場以外の市場から取引対象を買い戻す買戻しリスク、および、前記第1市場以外の市場に対して取引対象を追加売りする追加売りリスクそれぞれの重要度を示すリスク情報と、複数の前記発電量シナリオと、に基づいて、前記第1市場に対して入札する発電量を表す入札量を算出する、
処理部
を備える情報処理装置。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
100、100-2 情報処理装置
101、101-2 受付部
102 発電量シナリオ作成部
103 価格シナリオ作成部
104 範囲算出部
105、105-2 入札量算出部
106 出力制御部
121 記憶部