IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ジフィー食品株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-凍結乾燥卵食品およびその製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039093
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】凍結乾燥卵食品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20240314BHJP
【FI】
A23L15/00
A23L15/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143379
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】390000664
【氏名又は名称】日本ジフィー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】永安 真莉野
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 文香
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC05
4B042AC10
4B042AD40
4B042AE03
4B042AE04
4B042AE05
4B042AH09
4B042AK05
4B042AK06
4B042AK08
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK11
4B042AK20
4B042AP02
4B042AP14
4B042AP17
4B042AP18
(57)【要約】
【課題】復元後の滑らかな食感と卵のボリューム感をより強く感じられる凍結乾燥卵食品を提供する。
【解決手段】水または湯を注ぐことにより復元して食される凍結乾燥卵食品であって、加熱された液体に液卵を投入して凝固させたかき卵、および固形卵を含み、ブロック形状を有する凍結乾燥卵食品。液卵を含む第1混合液を調製する工程と、加熱した第2混合液に前記第1混合液を投入することにより前記液卵を凝固させてかき卵液を作製する工程と、前記かき卵液に固形卵を投入して凍結前液を作製する工程と、前記凍結前液を適当な形状と大きさの容器に入れて凍結乾燥させる工程とを有する凍結乾燥卵食品の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水または湯を注ぐことにより復元して食される凍結乾燥卵食品であって、
加熱された液体に液卵を投入して凝固させたかき卵、および固形卵を含み、
ブロック形状を有する、
凍結乾燥卵食品。
【請求項2】
前記固形卵の含有量が、前記凍結乾燥卵食品から卵以外の副食材を除いたもの100重量部のうち、1重量部以上、98重量部以下である、
請求項1に記載の凍結乾燥卵食品。
【請求項3】
前記かき卵および前記固形卵を合わせた含有量が、前記凍結乾燥卵食品から卵以外の副食材を除いたもの100重量部のうち、10重量部以上、99重量部以下である、
請求項1に記載の凍結乾燥卵食品。
【請求項4】
前記固形卵がそぼろ状、フレーク状または短冊状の薄片状である、
請求項1に記載の凍結乾燥卵食品。
【請求項5】
液卵を含む第1混合液を調製する工程と、
加熱した第2混合液に前記第1混合液を投入することにより前記液卵を凝固させてかき卵液を作製する工程と、
前記かき卵液に固形卵を投入して凍結前液を作製する工程と、
前記凍結前液を適当な形状と大きさの容器に入れて凍結乾燥させる工程と、
を有する凍結乾燥卵食品の製造方法。
【請求項6】
前記かき卵液に投入される前記固形卵が、前記凍結前液から卵以外の副食材を除いたもの100重量部のうち、1重量部以上、80重量部以下である、
請求項5に記載の凍結乾燥卵食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水や湯を注ぐことにより復元して食されるブロック状の凍結乾燥卵食品に関する。
【背景技術】
【0002】
スープやラーメン等の具材として、かき卵を凍結乾燥させた凍結乾燥かき卵が用いられている。例えば、特許文献1には、全卵液又は調整卵液を、デンプン又はデンプン分解物を含む調味スープの加熱溶液又は湯中に投入し、卵液を薄膜状に凝固させて、溶液全体を適当な形状と大きさの容器中に収容して凍結乾燥させる、ブロック状の即席かき卵の製造方法が記載されている。また、特許文献2には、卵液に乳化剤、加工澱粉および油脂を混合した混合液1を、馬鈴薯澱粉等を含む混合液2を加熱した中へ注いでかき卵を作製し、これを凍結乾燥することによって、より優れた食感が得られる凍結乾燥かき卵を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-009268号公報
【特許文献2】特開2017-201910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の凍結乾燥かき卵の製造方法では、加熱したスープや湯(ボイル液)に液卵を投入することによって、復元後の滑らかな食感を実現している。一方で、近年、卵の量をより多く感じられる、ボリューム感のある凍結乾燥卵食品に対する要望が高まっている。これに対して、即席スープ等の具材として使用する凍結乾燥かき卵のブロックを単純に大きくするのでは、凍結乾燥の生産性が下がり、製造コストが高くなってしまう。また、かき卵の製造時にボイル液に投入する液卵の割合を増やそうとしても、安定した薄片形状や復元後の滑らかな食感を維持するには、ボイル液の量に対して投入可能な液卵の量には限界があった。
【0005】
本発明は、上記を考慮してなされたものであり、安定した薄片形状と復元後の滑らかな食感を有し、かつ、卵のボリューム感をより強く感じられる凍結乾燥卵食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の凍結乾燥卵食品は、水または湯を注ぐことにより復元して食される凍結乾燥卵食品であって、加熱された液体に液卵を投入して凝固させたかき卵、および固形卵を含み、ブロック形状を有する。ここで、復元に用いる水または湯には、調味料等を含むものも該当する。
【0007】
本発明の凍結乾燥卵食品の製造方法は、液卵を含む第1混合液を調製する工程と、加熱した第2混合液に前記第1混合液を投入することにより前記液卵を凝固させてかき卵液を作製する工程と、前記かき卵液に固形卵を投入して凍結前液を作製する工程と、前記凍結前液を適当な形状と大きさの容器に入れて凍結乾燥させる工程とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の凍結乾燥卵食品によれば、加熱された液体に液卵を投入して凝固させたかき卵を含むことによって、従来の凍結乾燥かき卵と同様に、復元後に滑らかな食感が得られる。そして、固形卵をさらに含むことによって、食したときに卵のボリューム感がより強く感じられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の凍結乾燥卵食品の製造フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の凍結乾燥卵食品は、加熱された液体に液卵を投入して凝固させたかき卵と固形卵とを含み、ブロック状に形成されている。ブロックの形状は特に限定されず、直方体の他、円柱状などであってもよい。ブロックの大きさは用途に応じて決めることができ、ブロックが略直方体形状を有する場合は、縦×横×厚さが1~15cm×1~15cm×0.5~10cm程度に作製することが可能であり、通常は2~9cm×2~9cm×1~5cm程度であり、凍結乾燥卵食品として好ましくは、3~8cm×3~8cm×1~4cmである。ブロックが小さすぎると、そのことだけで、卵のボリューム感が得られないからである。
【0011】
本明細書において、かき卵とは、液卵を加熱したスープや湯に投入することによって凝固させたものをいう。この方法により、凍結乾燥卵食品を復元したときに、滑らかな食感が得られる。なお、製造方法の説明で後述するように、液卵を含む溶液(第1混合液)をボイル液(第2混合液)に投入してかき卵を作製すると、第1混合液に含まれる加工澱粉その他の添加剤はかき卵に取り込まれる。したがって、凍結乾燥卵食品に含まれるかき卵とは、第1混合液が凝固して、凍結乾燥によって液卵中の水分を失ったものである。以下において、凍結乾燥卵食品についてかき卵というときは、凍結乾燥卵食品に含まれるかき卵のことを意味し、その重量は、第1混合液の凍結乾燥後の重量に等しい。
【0012】
液卵は、卵黄のみからなる卵黄液であっても良く、卵白と卵黄を混合した全卵液であっても良い。卵としては、例えば、鶏、うずら、アヒル等の鳥類の卵を用いることができ、コストの点から、鶏卵を用いることが好ましい。
【0013】
固形卵は、卵を冷凍、加熱、乾燥等により固体状にしたものをいう。固形卵を含むことにより、凍結乾燥卵食品中のかき卵感が増し、ボリューム感が増える。
【0014】
固形卵としては、例えば、鶏、うずら、アヒル等の鳥類の卵を用いることができ、コストの点から、鶏卵を用いることが好ましい。固形卵の製造方法は特に限定されないが、ボリューム感を出す上で、好ましくは乾燥卵であり、マイクロ波乾燥卵、熱風乾燥卵または凍結乾燥卵であることがさらに好ましく、特に好ましくはマイクロ波乾燥卵である。乾燥品は、水分量が少なく体積が小さいので単位容積当たりにより多くの卵を投入することができ、マイクロ波乾燥卵は、マイクロ波による加工でスポンジ状に膨らむので湯戻し性が良く、卵のボリューム感をより強く感じることができる。また、固形卵の形状は、そぼろ状、フレーク状または短冊状等であり、好ましくはフレーク状または短冊状等の薄片状である。これにより、かき卵と違和感なく一体化しやすい。薄片状の厚さは、好ましくは0.1~2mmである。
【0015】
凍結乾燥卵食品に含まれるかき卵と固形卵の割合は、両者がともに含まれていれば特に限定されない。かき卵と固形卵の質量比は、通常は1:99~99:1であり、生産性を考慮すると好ましくは50:50~90:10である。また、凍結乾燥卵食品に含まれる固形卵は、凍結乾燥卵食品から後述する卵以外の副食材を除いたもの100重量部のうち、1~98重量部、好ましくは5~90重量部、より好ましくは25~80重量部である。
【0016】
凍結乾燥卵食品中のかき卵および固形卵を合わせた卵成分の含有量は、凍結乾燥卵食品から卵以外の副食材を除いたもの100重量部に対して、10重量部以上、好ましくは30重量部以上、より好ましくは50重量部以上である。卵成分が多いほど、卵のボリューム感が増す。ただし、より滑らかな食感を得るためには、後述するように加工澱粉等を適量配合することが好ましいので、卵成分の含有量は、凍結乾燥卵食品から卵以外の副食材を除いたもの100重量部に対して、99重量部以下、好ましくは97重量部以下、より好ましくは96重量部以下である。
【0017】
凍結乾燥卵食品は、加工澱粉を含んでも良い。加工澱粉を含むことにより、保湿性が高まり、分散性、つまり復元後の広がりやすさが良好になる。加工澱粉としては、特に限定されないが、例えば、各種架橋澱粉、酢酸澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、リン酸化澱粉等を用いることができる。なお、加工澱粉の原料となる澱粉の由来は、特に制限されず、例えば、とうもろこし(コーン)、馬鈴薯、タピオカ、甘藷、およびサゴヤシ等が挙げられる。加工澱粉は、一種単独で用いても良く、二種以上を組合わせて用いても良い。
【0018】
復元後の食感を滑らかにし、分散性を高める観点から、凍結乾燥卵食品は、かき卵100重量部に対し、加工澱粉を0.2重量部以上含むことが好ましく、0.3重量部以上含むことがより好ましく、0.4重量部以上含むことがさらに好ましい。また、復元後にかき卵をふんわりさせる観点から、かき卵100重量部に対し、加工澱粉を10.5重量部以下含むことが好ましく、10.1重量部以下含むことがより好ましく、9.7重量部以下含むことがさらに好ましい。凍結乾燥卵食品が塩分を含むスープにて復元される場合にも、加工澱粉を配合することでかき卵の脱水(食感の締り)を抑制する。
【0019】
凍結乾燥卵食品は、乳化剤を含んでも良い。乳化剤を含むことにより、浮遊性、つまりスープ中での沈降のしにくさ、および分散性が良好になる。乳化剤は、食用乳化剤であれば特に限定されない。例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等を用いることができる。これらの乳化剤は、一種単独で用いても良く、二種以上を組合わせて用いても良い。また、乳化剤としては、上記の乳化剤を一種または二種以上を含む乳化剤製剤や乳化油脂を用いても良い。
【0020】
復元後の食感を柔らかくし、浮遊性及び分散性を高める観点から、凍結乾燥卵食品は、かき卵100重量部に対し、乳化剤を1.1重量部以上含むことが好ましく、1.3重量部以上含むことがより好ましく、1.5重量部以上含むことがさらに好ましい。また、復元後にかき卵をふんわりさせる観点から、かき卵100重量部に対し、乳化剤を5.2重量部以下含むことが好ましく、5.0重量部以下含むことがより好ましく、4.8重量部以下含むことがさらに好ましい。
【0021】
凍結乾燥卵食品は、油脂を含んでも良い。油脂を含むことにより、食感が滑らかになりやすい。油脂は、食用油脂であれば良く特に限定されず、例えば、動物油や植物油を用いることができる。植物油としては、例えば、コーン油、ごま油、菜種油、綿実油等が挙げられ、動物油としては、例えば、ラード、ヘット、バター等が挙げられる。油脂は、一種単独で用いても良く、二種以上を組合わせて用いても良い。卵液との混合性に優れる観点から、油脂は、乳化剤で乳化させた乳化油脂であることが好ましい。
【0022】
復元後の食感を滑らかにし、復元性を高める観点から、前記凍結乾燥卵食品は、かき卵100重量部に対し、油脂を6.3~21重量部含むことが好ましく、7.4~20重量部含むことがより好ましく、8.4~19重量部含むことがさらに好ましい。
【0023】
凍結乾燥卵食品は、糖類を含んでも良い。糖類を含むことにより、凍結時の変性が抑制され、食感が良好になる。前記糖類としては、ブドウ糖、タガトース、アラビノース等の単糖類、砂糖、果糖等の少糖類、トレハロース等の非還元性糖類、ソルビトール等の糖アルコール、還元水あめ、オリゴ糖等が挙げられる。糖類は、一種単独で用いても良く、二種以上を組合わせて用いても良い。
【0024】
復元後の食感を良好にし、復元性を高める観点から、前記凍結乾燥卵食品は、かき卵100重量部に対し、糖類を8.4~42重量部含むことが好ましく、10.5~40重量部含むことがより好ましく、12.6~38重量部含むことがさらに好ましい。
【0025】
凍結乾燥卵食品は、増粘剤を含んでも良い。増粘剤を含むことにより、凍結乾燥卵食品の大きさを適切な範囲に調整することができる。大きさを適切な範囲に調整しつつ、食感を向上させる観点から、かき卵100重量部に対し、増粘剤を0.11~1.3重量部含むことが好ましく、0.17~1.2重量部含むことがより好ましい。増粘剤としては、特に限定されないが、例えば、カラギーナン、タマリンドガム、アラビアガム、キサンタンガム、グアガム、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガム、アルギン酸等が挙げられる。増粘剤は、一種単独で用いても良く、二種以上を組合わせて用いても良い。
【0026】
凍結乾燥卵食品は、さらに、デキストリン、澱粉及びゼラチン等の結着剤、パプリカ色素等の色素、各種調味料、ビタミンE等の酸化防止剤を含んでも良い。
【0027】
凍結乾燥卵食品は、卵以外の副食材を含んでいてもよい。卵以外の副食材としては、卵とともに主菜となる牛、豚、鶏、魚、エビ、カニ等の各種動物肉、豆腐、植物性蛋白食品などや、副菜となるネギ、トマト、玉ねぎ、ゴーヤ等の野菜、各種キノコ、各種豆類などが挙げられる。凍結乾燥卵食品に含まれる卵以外の副食材の割合は特に限定されない。本実施形態の凍結乾燥卵食品は、卵のボリューム感の向上を課題とするものであるから、全体として卵が主役となることが好ましい。この点から、凍結乾燥卵食品が卵以外の副食材を含む場合でも、かき卵と固形卵を合計した卵成分100重量部に対して、卵以外の副食材は1重量部~100重量部程度であることが好ましい。
【0028】
次に、本実施形態の凍結乾燥卵食品の製造方法を図1のフローに沿って説明する。
【0029】
液卵と各種添加剤を混合して第1混合液を作製する。各種添加剤は、予め水に溶いてから液卵と混合してもよい。水と各種添加剤を混合して第2混合液を作製する。ここで、各種添加剤とは、上述の加工澱粉、乳化剤、油脂、糖類、増粘剤、結着剤、着色料、調味料、酸化防止剤等である。各種添加剤は、第1混合液または第2混合液のいずれかまたは必要に応じて両方に配合する。第1混合液および/または第2混合液に配合する添加剤の量の好ましい範囲は次のとおりである。
【0030】
加工澱粉の配合量は、第1混合液100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.15重量部以上、さらに好ましくは0.2重量部以上であり、また、好ましくは5重量部以下、より好ましくは4.8重量部以下、さらに好ましくは4.6重量部以下である。
【0031】
乳化剤の配合量は、第1混合液100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは0.6重量部以上、さらに好ましくは0.7重量部以上であり、また、好ましくは2.5重量部以下、より好ましくは2.4重量部以下、さらに好ましくは2.3重量部以下である。
【0032】
油脂の配合量は、第1混合液100重量部に対して、好ましくは3~10重量部、より好ましくは3.5~9.5重量部、さらに好ましくは4~9重量部である。
【0033】
糖類の配合量は、第1混合液100重量部に対して、好ましくは4~20重量部、より好ましくは5~19重量部、さらに好ましくは6~18重量部である。
【0034】
増粘剤の配合量は、第1混合液100重量部に対して、好ましくは0.05~0.6重量部、より好ましくは0.08~0.55重量部である。
【0035】
第2混合液を高温、好ましくは95℃以上に加熱して、その中に、第1混合液を撹拌しながら注ぐことにより液卵を凝固させて、かき卵液を作製する。このとき、第1混合液に含まれていた各種添加剤はかき卵に取り込まれ、かき卵の成分となる。卵以外の副食材を用いる場合は、冷却したかき卵液に卵以外の副食材を投入する。
【0036】
かき卵液にさらに固形卵を投入して、凍結前液を作製する。固形卵は前述のとおり、好ましくはマイクロ波乾燥卵を用いるが、その製造方法は特に限定されない。さらにいえば、別途第1混合液と第2混合液から作製したかき卵液から、液状部分を分離してかき卵部分のみを取り出し、当該分離したかき卵を固形卵としてかき卵液に投入することも可能である。ただし工程が増えることは言うまでもない。
【0037】
固形卵の投入量は、凍結前液全体から卵以外の副食材を除いたもの100重量部のうち、1~80重量部、好ましくは2~60重量部、特に好ましくは5~40重量部である。また、第1混合液および固形卵を合わせて、凍結前液全体から卵以外の副食材を除いたもの100重量部のうち、30~60重量部を占めることが好ましい。
【0038】
凍結前液を容器に収容し、-15~-30℃で予備凍結した後、真空凍結乾燥機で凍結乾燥して、凍結前液中の水分、アルコール分および揮発成分を除去する。かき卵からは液卵の重量の約3/4を占める水分が除去される。固形卵については、使用した固形卵が冷凍や加熱によって固体状にされたものである場合は、凍結乾燥によってそれに含まれる水分が除去され、固形卵が乾燥卵である場合は、使用されたものが凍結乾燥後もそのまま残る。以上により、本実施形態の凍結乾燥卵食品が完成する。
【0039】
本実施形態の凍結乾燥卵食品は、水または湯を注ぐことにより復元して食すことができる。ここで、水または湯には、調味料等が混合されたものを含む。これにより、本実施形態の凍結乾燥卵食品は、即席スープ、即席麺等、特に湯戻しにより食する即席食品の具材として用いることができる。
【実施例0040】
以下に、実施例によって、本実施形態の凍結乾燥卵食品をさらに詳細に説明する。
【0041】
実施例および比較例で使用した材料は次のとおりである。
・卵液:鶏卵の全卵液
・マイクロ波乾燥卵:キューピータマゴ社製「うきたまごNo.1」
・加工澱粉:松谷化学工業社製「松谷さくら2」(酢酸澱粉)
・乳化剤製剤:第一工業製薬社製「モノエースSP-GA」(ショ糖脂肪酸エステル8質量%、ソルビタン脂肪酸エステル3質量%、グリセリン脂肪酸エステル11質量%、D-ソルビトール21質量%、エタノール6質量%、水51質量%)
・乳化油脂:理研ビタミン社製「エマテックS-500」(菜種油89.79質量%、グリセリン脂肪酸エステル10.00質量%、レシチン0.18質量%、ビタミンE0.03質量%)
・還元水あめ:三菱商事ライフサイエンス社製「アマミール」
・トレハロース:林原社製
・増粘剤:CPケルコ社製「エコーガムT」(キサンタンガム)
・デキストリン:松谷化学工業社製「パインデックス#2」
・ゼラチン:新田ゼラチン社製「ゼラチンG」
・パプリカ色素:三栄源FFI社製「パプリカベース70N」
・ビタミンE:エーザイ社製「イーミックスP-20」
・副食材:ネギ
【0042】
(実施例1)
液卵に、増粘剤、乳化剤製剤、ビタミンEおよびパプリカ色素を分散させた乳化油脂を混合し、そこへ還元水あめとトレハロースを添加して混合し、その後、水溶きした加工澱粉を混合し、第1混合液を作製した。次に、水にデキストリン、ゼラチンおよび馬鈴薯澱粉を混合し、第2混合液を作製した。第2混合液を95℃以上に加熱し、加熱した第2混合液へ第1混合液を撹拌しながら注ぎ、かき卵液を作製した。かき卵液を70℃以下まで冷却し、さらに副食材とマイクロ波乾燥卵(固形卵)を投入して、軽く撹拌して混合して凍結前液を作製した。凍結前液を-25℃以下の冷凍庫で予備凍結した後、真空凍結乾燥機で真空度133Pa以下で24時間凍結乾燥して、実施例1の凍結乾燥卵食品を作製した。各材料の配合割合は、表1に示したとおりであった。凍結前液の質量は約100g、容積は約100mLで、凍結乾燥後も容積はほとんど変化しなかった。
【0043】
(実施例2~4)
各材料の配合割合を、それぞれ、表1に示したとおりにした以外は、実施例1と同様にして凍結乾燥卵食品を作製した。なお、実施例2~4についても、実施例1と同じく、凍結前液の質量は約100g、容積は約100mLで、凍結乾燥後も容積はほとんど変化しなかった。
【0044】
(比較例1~3)
固形卵を使用せず、各材料の配合割合を、それぞれ、表1に示したとおりにした以外は、実施例1と同様にして凍結乾燥卵食品を作製した。
【0045】
実施例1~4および比較例1~3の凍結乾燥卵食品約25gを、直径15センチの器上に95℃のお湯500mLで5分間かき混ぜて復元した。復元後、卵片を長辺が1cm未満のもの、1cm以上4cm未満のもの、4cm以上のものにサイズをそれぞれに分けた。各サイズごとに、キッチンタオルの上に重ならないように広げ、その上からさらにキッチンタオルをのせ、30秒間手で押さえて、水分を十分に取り除いた。水分を取り除いたあと、各サイズの重量を測定した。復元性、ボリューム、湯戻し後の形状を下記のように評価し、その結果を下記表1に示した。卵のボリューム感に関しては、凍結乾燥卵食品1個当たりのかき卵および固形卵の含有量が重要となる。
【0046】
(復元性)
4:瞬時に戻る。
3:15秒以上30秒未満で戻る。
2:30秒以上60秒未満で戻る。
1:60秒以上~180秒未満で戻る。
【0047】
(ボリューム感)
4:凍結乾燥卵食品1ブロック中のかき卵+固形卵が20g以上である。
3:凍結乾燥卵食品1ブロック中のかき卵+固形卵が15g以上20g未満である。
2:凍結乾燥卵食品1ブロック中のかき卵+固形卵が12g以上15g未満である。
1:凍結乾燥卵食品1ブロック中のかき卵+固形卵が12g未満である。
【0048】
(復元後の形状)
4:卵片長辺の長さが1~4cm未満が90%以上である。
3:卵片長辺の長さが1~4cm未満が70%以上90%未満である。
2:卵片長辺の長さが1~4cm未満が50%以上70%未満である。
1:卵片長辺の長さが1~4cm未満が50%未満である。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例1~4では、いずれも復元後に適切な大きさの卵片の割合が多く、また、固形卵の配合量を増やすことによって、凍結乾燥卵食品1ブロックあたりの卵成分の量を増やすことができた。
【0051】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の技術的思想の範囲内で、その他種々の態様で実施可能である。
図1