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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039108
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
B25B21/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143414
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】原田 哲祐
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲賛▼
(57)【要約】
【課題】筒部材の加工の困難性を低減した作業機を提供する。
【解決手段】作業機1のオイルパルス機構部40は、ライナ41、シャフト42、ブレード43、44、スプリング45、摺動部材46、ライナアッパープレート47、ライナキャップ48を有する。ライナ41はモータ30の回転力で駆動する。ライナ41は、ブレード43、44の前端側部分に対して摺動するブレード前部摺動面62を有する。摺動部材46は、ライナ41とは別の部材によって構成される。摺動部材46は、スプリング45によって付勢されたブレード43、44の後端側部分に対して摺動するブレード後部摺動面61を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの回転力で駆動する筒部材と、
前記筒部材に対して相対的に回転可能に支持され前記筒部材の軸方向に延びる軸部材であって、一端が前記筒部材の内側に収容され他端が前記筒部材の外側かつ前記軸方向に突出するよう構成された軸部材と、
前記軸部材に対して一体的に回転可能かつ第1位置と第2位置の間で往復動可能に支持される往復動部材であって、前記筒部材の内側に収容された往復動部材と、
前記軸部材に対して一体的に回転可能かつ伸縮可能に支持される付勢部材であって、前記往復動部材を前記第1位置から前記第2位置に向けて付勢する付勢部材と、
前記往復動部材と対向するように設けられ、前記付勢部材によって付勢された前記往復動部材に対して摺動するよう構成された摺動部材と、
を有する作業機であって、
前記摺動部材は、前記筒部材とは別の部材によって構成された、
ことを特徴とする作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機であって、
前記筒部材は開口部を有し、
前記開口部に接続された蓋部を有し、
前記摺動部材は前記蓋部と一体である、
ことを特徴とする作業機。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機であって、
前記筒部材は開口部を有し、
前記開口部に接続された蓋部を有し、
前記摺動部材は、前記軸方向において前記蓋部と前記筒部材とに挟持される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の作業機であって、
前記摺動部材は前記軸方向における前記往復動部材の一端側部分に対して摺動し、
前記筒部材は、前記軸方向における前記往復動部材の他端側部分に対して摺動する摺動部を有し、
前記往復動部材の前記一端側部分と前記他端側部分との間の中間部分に対向する前記筒部材の内周面が、作動油が充填されるオイル室の内周面を構成する、
ことを特徴とする作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルパルス工具等の作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1、2は、オイルパルスユニットを有するオイルパルス工具を開示する。オイルパルス工具は、モータと、モータの回転力で駆動する筒部材(ライナ)と、筒部材に対して相対的に回転可能に支持された軸部材(シャフト)と、軸部材に対して一体的に回転可能な往復動部材(ブレード)と、往復動部材を筒部材の内周面側に向けて付勢する付勢部材と、を有する。筒部材の内周部の前後には、往復動部材の前端部及び後端部と摺動する摺動部がそれぞれ設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-177806号公報
【特許文献2】特開2016-203322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、オイルパルス工具のような作業機において、筒部材の内周部の前後双方に摺動部を有する構成が筒部材の加工を難しくする要因であることを見出した。
【0005】
本発明の目的は、筒部材の加工の困難性を低減した作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、作業機である。この作業機は、
モータと、
前記モータの回転力で駆動する筒部材と、
前記筒部材に対して相対的に回転可能に支持され前記筒部材の軸方向に延びる軸部材であって、一端が前記筒部材の内側に収容され他端が前記筒部材の外側かつ前記軸方向に突出するよう構成された軸部材と、
前記軸部材に対して一体的に回転可能かつ第1位置と第2位置の間で往復動可能に支持される往復動部材であって、前記筒部材の内側に収容された往復動部材と、
前記軸部材に対して一体的に回転可能かつ伸縮可能に支持される付勢部材であって、前記往復動部材を前記第1位置から前記第2位置に向けて付勢する付勢部材と、
前記往復動部材と対向するように設けられ、前記付勢部材によって付勢された前記往復動部材に対して摺動するよう構成された摺動部材と、
を有する作業機であって、
前記摺動部材は、前記筒部材とは別の部材によって構成される。
【0007】
本発明は「電動作業機」や「電動工具」、「電気機器」等と表現されてもよく、そのように表現されたものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、筒部材の加工の困難性を低減した作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係る作業機1の側断面図。
図2】作業機1のオイルパルス機構部40の側断面図。
図3図2のIII-III断面図。
図4】オイルパルス機構部40を後方側から見た分解斜視図。
図5】オイルパルス機構部40を前方側から見た分解斜視図。
図6】比較例の作業機におけるオイルパルス機構部を前方側から見た分解斜視図。
図7】本発明の実施の形態2に係る作業機におけるオイルパルス機構部を前方側から見た分解斜視図。
図8】実施の形態2のオイルパルス機構部の側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
図1図5は、本発明の実施の形態1に係る作業機1に関する。作業機1は、オイルパルス工具(オイルパルスドライバ)である。作業機1は、静音インパクトドライバやソフトインパクトドライバとも呼ばれる。図1及び図3により、作業機1における互いに直交する前後、上下、左右方向を定義する。前後方向は、モータ軸31と平行な方向である。
【0011】
作業機1は、ハウジング10を有する。ハウジング10は、例えば左右二分割構造の樹脂成形体である。ハウジング10は、モータ収容部11、ハンドル部12、及び電池パック装着部13を含む。
【0012】
モータ収容部11は、中心軸が前後方向と略平行な筒状部である。ハンドル部12は、上端がモータ収容部11の前後方向の中間部に接続されて前記中間部から下方に延びる。ハンドル部12の上端部に、ユーザがモータ30の駆動、停止を切り替えるためのトリガスイッチ14が設けられる。電池パック装着部13は、ハンドル部12の下端に設けられ、電池パック18を着脱可能に装着できる。作業機1は、電池パック18の電力で動作する。
【0013】
作業機1は、ハンマケース19を有する。ハンマケース19は、例えば金属製であり、モータ収容部11に保持されてモータ収容部11から前方に延びる。作業機1は、プロテクタ20を有する。プロテクタ20は、ハンマケース19の外面(表面)を覆うエラストマ等の保護部材である。
【0014】
作業機1は、モータ収容部11及びハンマケース19の内側に、モータ30、減速機構38、及びオイルパルス機構部40を有する。モータ30は、インナーロータ型のブラシレスモータであり、前後方向と平行なモータ軸31を有する。減速機構38は、モータ30の前方に設けられ、モータ30の回転を減速してオイルパルス機構部40に伝達する。オイルパルス機構部40は、モータ30により駆動される。オイルパルス機構部40は、ハンマケース19に収容される。
【0015】
図2図5に示すように、オイルパルス機構部40は、筒部材としてのライナ41、軸部材としてのシャフト42、往復動部材としてのブレード43、44、付勢部材としてのスプリング45、摺動部材46、蓋部としてのライナアッパープレート47、ライナキャップ48を有する。
【0016】
ライナ41は、モータ30の回転力で駆動する。具体的にはライナ41は、減速機構38を介してモータ30により、モータ軸31と同軸に回転駆動される。ライナ41は、例えば金属製であり、モータ30の軸方向に延びる筒状、具体的にはモータ軸31と同軸の円筒状に構成され、内部に作動油が充填される。ライナ41は、ブレード前部摺動面62を有する。ブレード前部摺動面62は、ブレード43、44の前端側部分に対して摺動する摺動部である。
【0017】
ライナ41は、ライナ側第1突起部52、53及びライナ側第2突起部54、55を有する。ライナ側第1突起部52、53及びライナ側第2突起部54、55はそれぞれ、ライナ41の内周面であってブレード前部摺動面62より後方かつ摺動部材46より前方の内周面66に設けられ、ライナ41の径方向(以下「径方向」)において内周面66から内側に突出する。内周面66は、作動油が充填されるオイル室66の内周面を構成する。
【0018】
シャフト42は、例えば金属製であり、ライナ41に対して相対的に回転可能に支持され軸方向に延びる。シャフト42は、後端から所定長の範囲がライナ41の内側に収容され、ライナ41の内側で回転される。シャフト42は、前端がライナ41の外側かつ前方に突出する。シャフト42は、モータ軸31と同軸であり、前端部に先端工具保持穴51を有する。先端工具保持穴51は、シャフト42の前端に開口し、図示しないビット等の先端工具を保持する。
【0019】
シャフト42は、シャフト側突起部56~59を有する。シャフト側突起部56~59は、それぞれシャフト42の外面から径方向外側に突出する。
【0020】
ブレード43、44は、シャフト42に対して一体的に回転可能かつ第1位置と第2位置の間で往復動可能に支持される。第1位置は径方向内側の位置であり、第2位置は径方向外側の位置である。ブレード43、44は、ライナ41の内側に収容される。
【0021】
スプリング45は、例えば圧縮コイルばねであり、シャフト42に対して一体的に回転可能かつ伸縮可能に支持される。スプリング45は、ブレード43、44を第1位置から第2位置に向けて、すなわち径方向外側に向けて付勢する。
【0022】
摺動部材46は、例えば金属製であり、ライナ41とは別の部材によって構成される。摺動部材46は、ブレード43、44の後端側部分と対向するように設けられる。摺動部材46は、ブレード後部摺動面61を有する。ブレード後部摺動面61は、略長円形の穴の内周面として形成され、スプリング45によって付勢されたブレード43、44の後端側部分に対して摺動する摺動部である。摺動部材46は、前後方向においてライナアッパープレート47とライナ41とに挟持される。
【0023】
ライナアッパープレート47は、ライナ41の後端開口部に接続されて後端開口部を閉じる。ライナキャップ48は、ライナ41の後端開口部に螺着され、ライナアッパープレート47の後方への抜けを防止する。なお、ライナキャップ48の外周面のねじ部とそれに螺合するライナ41の内周面のねじ部の図示は省略している。
【0024】
図4及び図5に示すように、ピン60は、ライナアッパープレート47の穴部63、摺動部材46の貫通孔64、ライナ41の穴部65に挿通される。ピン60は、ライナアッパープレート47、摺動部材46、ライナ41が一体に回転させるための部材である。ピン60が挿通された状態で、摺動部材46のブレード後部摺動面61と、ライナ41のブレード前部摺動面62とは、回転位置が互いに合わせられ、一方を延長すると他方と重なる回転位置関係となる。
【0025】
Oリング49は、ライナアッパープレート47の外周面とそれに対向するライナ41の内周面との間に設けられてオイル漏れを防止する。Oリング50は、ライナ41の前部内周面とそれに対向するシャフト42の外周面との間に設けられてオイル漏れを防止する。
【0026】
オイルパルス機構部40は、ライナ41とシャフト42とにより作動油を間欠的に高圧状態として打撃力(回転打撃力)を発生させる。油圧を利用して打撃力を発生する構成は周知であり、様々な構成を採用できるが、ここでは上記特許文献2と同様の構成としている。詳細な説明は省略するが、ブレード43、44とライナ側第1突起部52、53との当接、及び、シャフト側突起部56~59とライナ側第2突起部54、55との係合の相互作用で、油圧による打撃力が発生する。ブレード43、44とライナ側第1突起部52、53との当接力は、スプリング45によって付与される。
【0027】
本実施の形態は、下記の作用効果を奏する。
【0028】
ブレード後部摺動面61を有する摺動部材46は、ライナ41とは別部材である。よって、ライナ41は、オイル室の内周面66より後方に、内周面66より径方向内側に突出する部分を有さない。このため、内周面66の加工には例えばエンドミルを利用でき、Tスロット等を利用した中ぐり加工が不要となる。これにより、加工時間が短くて済むとともに加工精度が高められる。また、中ぐり加工と比較してオイル室を大きく確保でき、作動油の量を増やせると共にライナ41の重量を抑制できる。他方、内周面66を含むライナ41全体をロストワックス製法で製作する場合と比較して、巣(空洞)による不良発生リスクを低減できる。
【0029】
(比較例)
図6は、比較例の作業機におけるオイルパルス機構部を前方側から見た分解斜視図である。図5図6の対比から明らかなように、比較例のオイルパルス機構部は、図5に示す摺動部材46が無く、ライナ141がブレード後部摺動面161を有する。ブレード後部摺動面161は、オイル室の内周面66より後方において内周面66より径方向内側に位置する。このため、内周面66の加工にはTスロット等を利用した中ぐり加工が必要となり、あるいは内周面66を含むライナ141全体をロストワックス製法で製作する必要がある。Tスロット等を利用した中ぐり加工では、加工時間が長く加工精度も低い。また、加工方法の制約上、オイル室を大きく形成できないため、作動油の量が少ないと共にライナ141の重量が大きい。ロストワックス製法では、巣(空洞)による不良発生リスクが高い。上述の実施の形態1は、このような本比較例の課題を好適に解決するものである。
【0030】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2に係る作業機におけるオイルパルス機構部を前方側から見た分解斜視図である。図8は、実施の形態2のオイルパルス機構部の側断面図である。
【0031】
ライナアッパープレート247は、図5等に示すライナアッパープレート47と摺動部材46を一体化したものに対応する。ブレード後部摺動面261は、ライナアッパープレート247の前部内周面である。本実施の形態のその他の点は、実施の形態1と同様である。本実施の形態も、実施の形態1と同様の作用効果を奏する。本実施の形態によれば、実施の形態1と比較して部品点数が少なくなり、組立工数を減らすことができる。
【0032】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、本発明は実施の形態に限定されない。実施の形態で具体的に説明した各事項には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能である。例えば、モータ30はブラシ付きモータであってもよい。また、作業機の電源は、商用電源等の外部交流電源であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…作業機、10…ハウジング、11…モータ収容部、12…ハンドル部、13…電池パック装着部、14…トリガスイッチ、18…電池パック、19…ハンマケース、20…プロテクタ(保護部材)、30…モータ、31…モータ軸、38…減速機構、40…オイルパルス機構部、41…ライナ(筒部材)、42…シャフト(軸部材)、43、44…ブレード(往復動部材)、45…スプリング(付勢部材)、46…摺動部材、47…ライナアッパープレート(蓋部)、48…ライナキャップ、49、50…Oリング、51…先端工具保持穴、52、53…ライナ側第1突起部、54、55…ライナ側第2突起部、56~59…シャフト側突起部、60…ピン、61…ブレード後部摺動面、62…ブレード前部摺動面、63…穴部、64…貫通孔、65…穴部、66…内周面、141…ライナ、161…ブレード後部摺動面、247…ライナアッパープレート、261…ブレード後部摺動面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8