(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039122
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ゴム補強用ポリエステル繊維コード
(51)【国際特許分類】
D06M 13/352 20060101AFI20240314BHJP
D06M 15/693 20060101ALI20240314BHJP
D06M 15/55 20060101ALI20240314BHJP
D06M 13/395 20060101ALI20240314BHJP
D06M 15/03 20060101ALI20240314BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20240314BHJP
D06M 101/32 20060101ALN20240314BHJP
【FI】
D06M13/352
D06M15/693
D06M15/55
D06M13/395
D06M15/03
B60C9/00 B
D06M101:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143434
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 泰崇
(72)【発明者】
【氏名】西畑 進市
【テーマコード(参考)】
3D131
4L033
【Fターム(参考)】
3D131AA32
3D131AA33
3D131BA18
3D131BA20
3D131BB01
3D131BC36
3D131DA01
4L033AA07
4L033AB01
4L033AC11
4L033BA08
4L033BA56
4L033BA69
4L033CA02
4L033CA12
4L033CA49
4L033CA70
(57)【要約】
【課題】レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂を含まず、環境負荷低減に有利な代替原料を使用した新規の接着処理剤からなるゴム補強用ポリエスエル繊維コードであって、従来RFL接着剤と同等以上の初期接着力を発現し、かつゴム加硫工程や製品使用時にゴム中で長時間高温に曝された時の耐熱接着力が著しく改善され、耐疲労性が向上し、タイヤの補強材として好適なゴム補強用ポリエステル繊維コードに関する。またディップ工程において樹脂カス蓄積を抑制でき生産性の良好なゴム補強用ポリエステル繊維コードを提供する。
【解決手段】ポリエステル繊維が、少なくとも(A)オキサゾリン基を含む化合物、(B)ブロックドイソシアネート化合物、(C)ゴムラテックス、(D)エポキシ化合物の四種を含む第1処理剤によって被覆され、さらにその外層として、少なくとも(a)リグニン誘導体、(b)ブロックドイソシアネート化合物、(c)ゴムラテックスの三種を含む第2処理剤によって被覆されてなるゴム補強用ポリエステル繊維コードであって、第1処理剤は、全固形分を100重量%として、(A)オキサゾリン基を含む化合物が10~50重量%、(B)ブロックドイソシアネート化合物が3~13重量%、(C)ゴムラテックスが20~60重量%、(D)エポキシ化合物が20~60重量%含有するものであり、かつ、第2処理剤に含まれる(a)リグニン誘導体の数平均分子量が10000~60000でありかつ重量平均分子量が80000~130000であり、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂を含まないことを特徴とするゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル繊維が、少なくとも(A)オキサゾリン基を含む化合物、(B)ブロックドイソシアネート化合物、(C)ゴムラテックス、(D)エポキシ化合物の四種を含む第1処理剤によって被覆され、さらにその外層として、少なくとも(a)リグニン誘導体、(b)ブロックドイソシアネート化合物、(c)ゴムラテックスの三種を含む第2処理剤によって被覆されてなるゴム補強用ポリエステル繊維コードであって、第1処理剤は、全固形分を100重量%として、(A)オキサゾリン基を含む化合物が10~50重量%、(B)ブロックドイソシアネート化合物が3~13重量%、(C)ゴムラテックスが20~60重量%、(D)エポキシ化合物が20~60重量%含有するものであり、かつ、第2処理剤に含まれる(a)リグニン誘導体の数平均分子量が10000~60000でありかつ重量平均分子量が80000~130000であり、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂を含まないことを特徴とするゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項2】
前記第1処理剤に含まれる(B)ブロックドイソシアネート化合物が、2官能型のMDI系ブロックドイソシアネートであることを特徴とする請求項1に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項3】
前記第2処理剤に含まれる(b)ブロックドイソシアネート化合物が、2官能型のMDI系ブロックドイソシアネートであることを特徴とする請求項1に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項4】
前記第1処理剤に含まれる(B)ブロックドイソシアネート化合物が、2官能型のMDI系ブロックドイソシアネートであり、かつ、前記第2処理剤に含まれる(b)ブロックドイソシアネート化合物が、2官能型のMDI系ブロックドイソシアネートであることを特徴とする請求項1に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項5】
前記第1処理剤に含まれる(C)ゴムラテックスが、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)20~100、かつTgが-70℃~-30℃のVPラテックスを含むものであることを特徴とする請求項1に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項6】
前記第2処理剤に含まれる(c)ゴムラテックスが、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)20~100、かつTgが-70℃~-30℃のVPラテックスを含むものであることを特徴とする請求項1に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項7】
前記第1処理剤に含まれる(B)ブロックドイソシアネート化合物が、2官能型のMDI系ブロックドイソシアネートであり、かつ、前記第2処理剤に含まれる(b)ブロックドイソシアネート化合物が、2官能型のMDI系ブロックドイソシアネートであり、さらに、
前記第1処理剤に含まれる(C)ゴムラテックスが、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)20~100、かつTgが-70℃~-30℃のVPラテックスを含むものであり、かつ、前記第2処理剤に含まれる(c)ゴムラテックスが、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)20~100、かつTgが-70℃~-30℃のVPラテックスを含むものであることを特徴とする請求項1に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項8】
前記第1処理剤に含まれる(A)オキサゾリン基含有化合物が、Tgが0~80℃、かつオキサゾリン基量が1.0~5.0mmol/g,solidであることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項9】
コード表層のタキネスが2.0~10.0N/cm2であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項10】
前記第2処理剤処理剤の乾燥重量で全固形分を100重量%としたとき、(a)リグニン誘導体の含有量が5~50重量%であり、(a)リグニン誘導体と、(b)ブロックドイソシアネート化合物の固形分重量比が、(aの固形分):(bの固形分)=10:1~10:20であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項11】
第1処理剤による皮膜の樹脂付着量が1~4重量%であり、かつ第2処理剤による皮膜の樹脂付着量が1~4重量%であり、かつ第1処理剤による皮膜と第2処理剤による皮膜の合計の樹脂付着量が2~6重量%であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項12】
請求項1~7のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステル繊維コードを使用してなるタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境負荷低減に有利な新規の接着処理剤からなり、耐熱接着力が著しく改善されたゴム補強用ポリエステル繊維コードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ、ホース、ベルトなどのゴム製品には、補強材としてナイロン繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維等の合成繊維が広く使用されている。ゴム製品のこれら合成繊維とゴム組成物とを接着させる手段として、レゾルシン、ホルマリンからなるレゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂およびゴムラテックスを含むRFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス)接着剤が従来から広く使用されている。しかし、レゾルシンとホルマリンはいずれも劇物であり、環境負荷が高く、健康への有害性から、近年、使用時の大気中への放出の抑制や、使用量の削減が求められている。
【0003】
また、上述のようにゴム製品には合成繊維が補強材として広く使用されている中、特にポリエステル繊維は、優れた強度、弾性率および熱寸法安定性を有するため、特にタイヤ用途において好適に使用されている。ポリエステル繊維は補強材としてゴム製品中に埋め込まれて使用される時、その高温環境下では熱劣化する。その化学的熱劣化はゴム自身およびゴム中に配合されている種々の添加物の影響を受ける。アミン系老化防止剤が配合されたゴム中で高温処理を受けたポリエステル繊維は、主にこれらのアミン系化合物、ゴム自身の酸化劣化によって生じた低分子量化合物や水分子およびゴム中に含まれていた水分等によってアミン分解や加水分解される。かかるアミン分解や加水分解されたポリエステル繊維は接着性や強力等初期の特性を著しく低下させ使用に耐えられなくなるという問題があった。
【0004】
ポリエステル繊維がアミン分解や加水分解すると、分子鎖切断に伴う強力低下やゴムと繊維層との接着性の低下を生じる。しかしながら、ポリエステル繊維をゴム補強用繊維として用いた場合にはかかる欠点を有するものの、高強力、高弾性率、熱寸法安定性に優れ、かつ耐疲労性や接着性の改良も進み、またタイヤ製造技術の向上と相まって、近年は殆どの乗用車ラヂアルタイヤのカーカス材として用いられている。とはいっても、前記本質的な欠点を有しているため、タイヤ高速走行時に発熱した熱がこもりにくく化学劣化し難い、比較的小さなタイヤサイズの乗用車用カーカス材に限られて使用されているのが現状である。トラック、バス等の大型タイヤではごく一部に使用されているに過ぎない。一般には、トラック、バス用タイヤ、航空機用タイヤ、ランフラットタイヤ、ラジアルタイヤのキャッププライ材等にはポリエステル繊維コードは使用されていない。
【0005】
キャッププライ材やランフラットタイヤ補強材などはカーカス材に比べ一段と発熱し高温となるため、従来のポリエステル繊維コードでは使用に耐えず、耐熱接着力に優れるナイロン66やレーヨン繊維がそれぞれ、一般には使用されている。コスト、供給安定性、弾性率の点からタイヤ補強材の繊維素材としてはポリエステル繊維が好ましいが、これら用途への適用のためにはポリエステル繊維コードの耐熱接着力の大幅な改善が必要である。
【0006】
また、繊維にゴムとの接着性を保有させるため、上記RFLに代表される接着剤を繊維表面に処理することが必須であるが、接着剤処理プロセスにおいて、付与される接着剤組成に起因する樹脂カスがディッピングマシンのロール等、処理装置に付着し、清掃のため連続生産が困難になるという生産性の低下や、ロール上に蓄積した樹脂カスが、ディップコード表層に転写して品位異常に繋がるという問題があった。
【0007】
上記問題に対する技術として、例えば特許文献1~6の先行技術がある。
【0008】
特許文献1には、特定の官能基を有する熱硬化性樹脂と不飽和エラストマーラテックスを含む水性接着剤組成物でポリエステル繊維を処理する手法について開示されている。
【0009】
特許文献2には、ポリフェノール類、クロルフェノール樹脂及びリグニン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の成分、及び前記成分以外の水溶性ポリマー又は前記成分以外の水分散性ポリマーから選択される少なくとも1種の成分を含む有機繊維用接着剤でポリエステル繊維を処理する手法について開示されている。
【0010】
特許文献3には、3官能以上の特定のブロックドイソシアネートオリゴマー、ラテックス、ポリアクリレートまたはリグニン化合物、及び添加剤を含む水性接着剤組成物でポリエステル繊維を処理する手法について開示されている。
【0011】
特許文献4には、キャリアーとブロックドイソシアネート水溶液を含む処理液でポリエステル繊維を処理した後、エポキシ化合物を含むRFLにて処理する手法が開示されている。
【0012】
特許文献5には、熱可塑性重合体、熱反応型水性ウレタン、およびエポキシ化合物を含む処理液でポリエステル繊維を処理した後、RFLにて処理する手法が開示されている。
【0013】
特許文献6には、ポリエステル繊維を、オキサゾリン基を含む化合物、エポキシ化合物、ゴムラテックスの3種を含む処理剤で処理した後、RFLで処理する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特表2019-518087号公報
【特許文献2】WO2018/003572号
【特許文献3】米国公開2020/0024416号
【特許文献4】特開2006-2327号公報
【特許文献5】特開2001-19927号公報
【特許文献6】特開2013-10909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1~3は、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂を使用せず、従来のRFL接着剤並みの接着力を発現するものの、耐熱接着力のさらなる向上、ゴム中での耐疲労性の向上、タイヤ性能の向上への寄与は充分でないものであった。特許文献4~6は、耐熱接着力の向上は見られるものの、いずれも従来のRFL接着剤を使用するものであり、環境負荷が大きい問題を有していた。また特許文献1~6全てにおいて、ディップ工程において樹脂カスが蓄積する生産上の課題は残ったままであった。
【0016】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果なされたものである。
【0017】
本発明の目的は、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂を含まず、環境負荷低減に有利な代替原料を使用した新規の接着処理剤からなるゴム補強用ポリエスエル繊維コードであって、従来のRFL接着剤と同等以上の初期接着力を発現し、かつゴム加硫工程や製品使用時にゴム中で長時間高温に曝された時の耐熱接着力が著しく改善され、耐疲労性が向上し、タイヤの補強材として好適なゴム補強用ポリエステル繊維コードに関する。またディップ工程において樹脂カス蓄積を抑制でき、生産性の良好なゴム補強用ポリエステル繊維コードを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
【0019】
すなわち、
(1)ポリエステル繊維が、少なくとも(A)オキサゾリン基を含む化合物、(B)ブロックドイソシアネート化合物、(C)ゴムラテックス、(D)エポキシ化合物の四種を含む第1処理剤によって被覆され、さらにその外層として、少なくとも(a)リグニン誘導体、(b)ブロックドイソシアネート化合物、(c)ゴムラテックスの三種を含む第2処理剤によって被覆されてなるゴム補強用ポリエステル繊維コードであって、第1処理剤は、全固形分を100重量%として、(A)オキサゾリン基を含む化合物が10~50重量%、(B)ブロックドイソシアネート化合物が3~13重量%、(C)ゴムラテックスが20~60重量%、(D)エポキシ化合物が20~60重量%含有するものであり、かつ、第2処理剤に含まれる(a)リグニン誘導体の数平均分子量が10000~60000でありかつ重量平均分子量が80000~130000であり、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂を含まないことを特徴とするゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【0020】
(2)前記第1処理剤に含まれる(B)ブロックドイソシアネート化合物が、2官能型のMDI系ブロックドイソシアネートであることを特徴とする上記(1)に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【0021】
(3)前記第2処理剤に含まれる(b)ブロックドイソシアネート化合物が、2官能型のMDI系ブロックドイソシアネートであることを特徴とする上記(1)に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【0022】
(4)前記第1処理剤に含まれる(B)ブロックドイソシアネート化合物が、2官能型のMDI系ブロックドイソシアネートであり、かつ、前記第2処理剤に含まれる(b)ブロックドイソシアネート化合物が、2官能型のMDI系ブロックドイソシアネートであることを特徴とする上記(1)に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【0023】
(5)前記第1処理剤に含まれる(C)ゴムラテックスが、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)20~100、かつTgが-70℃~-30℃のVPラテックスを含むものであることを特徴とする上記(1)に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【0024】
(6)前記第2処理剤に含まれる(c)ゴムラテックスが、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)20~100、かつTgが-70℃~-30℃のVPラテックスを含むものであることを特徴とする上記(1)に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【0025】
(7)前記第1処理剤に含まれる(B)ブロックドイソシアネート化合物が、2官能型のMDI系ブロックドイソシアネートであり、かつ、前記第2処理剤に含まれる(b)ブロックドイソシアネート化合物が、2官能型のMDI系ブロックドイソシアネートであり、さらに、前記第1処理剤に含まれる(C)ゴムラテックスが、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)20~100、かつTgが-70℃~-30℃のVPラテックスを含むものであり、かつ、前記第2処理剤に含まれる(c)ゴムラテックスが、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)20~100、かつTgが-70℃~-30℃のVPラテックスを含むものであることを特徴とする上記(1)に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【0026】
(8)前記第1処理剤に含まれる(A)オキサゾリン基含有化合物が、Tgが0~80℃、かつオキサゾリン基量が1.0~5.0mmol/g,solidであることを特徴とする上記(1)~(7)のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【0027】
(9)コード表層のタキネスが2.0~10.0N/cm2であることを特徴とする上記(1)~(7)のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【0028】
(10)前記第2処理剤処理剤の乾燥重量で全固形分を100重量%としたとき、(a)リグニン誘導体の含有量が5~50重量%であり、(a)リグニン誘導体と、(b)ブロックドイソシアネート化合物の固形分重量比が、(aの固形分):(bの固形分)=10:1~10:20であることを特徴とする上記(1)~(7)のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【0029】
(11)第1処理剤による皮膜の樹脂付着量が1~4重量%であり、かつ第2処理剤による皮膜の樹脂付着量が1~4重量%であり、かつ第1処理剤による皮膜と第2処理剤による皮膜の合計の樹脂付着量が2~6重量%であることを特徴とする上記(1)~(7)のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【0030】
(12)上記(1)~(11)のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステル繊維コードを使用してなるタイヤ。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂を含まず、環境負荷低減に有利な代替原料を使用した新規の接着処理剤からなるゴム補強用ポリエスエル繊維コードであって、従来のRFL接着剤と同等以上の初期接着力を発現し、かつゴム加硫工程や製品使用時にゴム中で長時間高温に曝された時の耐熱接着力が著しく改善され、耐疲労性が向上し、タイヤの補強材として好適なゴム補強用ポリエステル繊維コードに関する。またディップ工程において樹脂カス蓄積を抑制でき生産性の良好なゴム補強用ポリエステル繊維コードを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明について詳述する。
【0033】
本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードは、ポリエステル繊維が、少なくとも(A)オキサゾリン基を含む化合物、(B)ブロックドイソシアネート化合物、(C)ゴムラテックス、(D)エポキシ化合物の四種を含む第1処理剤によって被覆され、さらにその外層として、少なくとも(a)リグニン誘導体、(b)ブロックドイソシアネート化合物、(c)ゴムラテックスの三種を含む第2処理剤によって被覆されてなるものである。
【0034】
本発明で用いるポリエステル繊維は、テレフタル酸を主たる二官能カルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルを溶融紡糸延伸してなる繊維であることが望ましいが、テレフタル酸を一部あるいは全部2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4-ジカルボキシフェノキシエタン、イソシアネート基などに置き換えたもの、またエチレングリコールを一部あるいは全部ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどに置き換えたポリエステルからなる繊維であっても使用することができる。
【0035】
また、上記ポリエステルは、少量であれば、トリメシン酸、トリメリット酸、ほう酸、りん酸、グリセリン、およびトリメチロールプロパンなどの三官能化合物を共重合したものであってもよい。
【0036】
本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードは、高強度、高タフネス、高弾性率、低収縮、高耐疲労性等の優れた機械的特性を有し、かつゴム中で高温に長時間曝されても接着劣化や強度劣化を抑制するため、本発明で用いるポリエステル繊維は、以下の特性を有することが好ましい。
(1)固有粘度(IV)=0.7~1.2、より好ましくは0.8~1.1
(2)カルボキシル末端基(COOH)=10~30eq/t、より好ましくは12~25eq/t
(3)ジエチレングリコール(DEG)の含有量=0.5~1.5重量%、より好ましくは0.5~1.2重量%
(4)強度(T)=6.0~10.0cN/dtex、より好ましくは7.0~9.0cN/dtex
(5)伸度(E)=8~20%、より好ましくは10~16%
(6)中間伸度(ME)=4.0~6.5%、より好ましくは4.5~6.0%
(7)乾熱収縮率(ΔS150℃)=2.0~12.0%、より好ましくは3.0~10.0%。
【0037】
本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードに用いるポリエステル繊維が特に化学的耐久性を有するためには、粘度が高く、カルボキシル末端基が少なく、ジエチレングリコールが少ないことが有利である。
【0038】
本発明で用いるポリエステル繊維は、カルボキシ末端基を少なくするため、例えばカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物およびオキサゾリン化合物などの末端カルボキシル基封鎖剤を用いて改質されていてもよい。
【0039】
また、本発明のポリエステル繊維はあらかじめ製糸工程においてポリエポキシド化合物が付与されたものであってもよい。本発明で使用することのできるポリエポキシド化合物は、一分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を、該化合物100gあたり0.1g当量以上含有する化合物を挙げることができる。具体的には、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトールなどの多価アルコール類とエピクロルヒドリンの如きハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、過酸化または過酸化水素などで不飽和化合物を酸化して得られるポリエポキシド化合物、すなわち、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキセンカルボキリレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチル-シクロヘキシルメチル)アジペート、フェノールノボラック型、ハイドロキノン型、ビフェニル型、ビスフェノールS型、臭素化ノボラック型、キシレン変性ノボラック型、フェノールグリオキザール型、トリスオキシフェニルメタン型、トリスフェノールPA型、ビスフェノール型のポリエポキシド等の芳香族ポリエポキシド等が挙げられる。特に好ましいのは、ソルビトールグリシジルエーテル型やクレゾールノボラック型のポリエポキシドである。
【0040】
これらの化合物は、通常は乳化液として使用されるが、乳化液、又は溶液にするには、該化合物をそのままか、もしくは必要に応じて少量の溶媒に溶解したものを公知の乳化剤、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物等を用いて乳化、又は溶解して用いる。
【0041】
該ポリエポキシド化合物は、ポリエステル繊維の製糸工程において紡糸油剤と共に付与される。この際の該ポリエポキシド化合物の付着量は、0.1~5重量%の範囲である。該ポリエポキシド化合物の付着量が0.1重量%未満では、ポリエポキシド化合物の効果が十分に発揮されず、ポリエステル繊維とゴムとの間で満足できる接着性が得られないおそれがある。一方、該ポリエポキシド化合物の付着量が5重量%を超えると繊維が非常に硬くなり、製糸工程において付与することが困難であるだけでなく、次工程以降で処理する処理剤の浸透性が低下する結果、接着性能が低下するので好ましくない。
【0042】
本発明で用いるポリエステル繊維は、繊度、フィラメント数、断面形状等の制約を受けないが、通常、総繊度200~5000dtex、30~1000フィラメント、円断面糸が用いられ、総繊度250~3000dtex、50~500フィラメント、円断面糸がより好ましい。総繊度200dtex未満であるとコードの強度が不足する恐れがあり、5000dtexを超えるとコードが太くなり、取り扱い性が低下することがある。また、30フィラメント未満であるとコードが硬くなり、取り扱い性が悪化することがあり、500フィラメントを超えると毛羽が多くなり品質が低下することがある。
【0043】
本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードは、上記ポリエステル繊維を撚糸して撚糸コードとし、撚糸コードそのまま、または生簾反に製織した後接着剤処理して得られる。通常のカーカス用タイヤコードに用いる生コードは、SまたはZ方向に下撚りした後、2本または3本の下撚りコードを合わせて下撚りと反対方向に通常同数の上撚りをかけ諸撚りコードとしたものである。この撚りコードを接着剤処理してディップコードが得られる。他方、撚糸コードを経糸とし、緯糸に綿糸、または合成繊維に綿糸をカバリングして緯糸とし、生簾反に製織した後、該生簾反を接着剤処理してディップ反が得られる。
【0044】
本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードとは、上記ディップコードおよびディップ反の両者を指す。
【0045】
本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードは、ポリエステル繊維が、少なくとも(A)オキサゾリン基を含む化合物、(B)ブロックドイソシアネート化合物、(C)ゴムラテックス、(D)エポキシ化合物の四種を含む第1処理剤によって被覆され、さらにその外層として、少なくとも(a)リグニン誘導体、(b)ブロックドイソシアネート化合物、(c)ゴムラテックスの三種を含む第2処理剤によって被覆されてなるものである。
【0046】
本発明の第1処理剤に使用する(A)オキサゾリン基を含む化合物とは、一般の有機化合物または有機ポリマー、オリゴマーを主骨格とした物質の末端または側鎖にオキサゾリン基(好ましくは2-オキサゾリン基)を含む化合物をいう。オキサゾリン基は、その骨格に1つまたは2つ以上持つことができるが、接着性能の向上のためには反応性官能基であるオキサゾリン基を多く持つ方がより好ましい。オキサゾリン基含有化合物の主鎖の骨格としては、炭化水素鎖、エチレングリコール鎖、ビスフェノールA等のビスフェノール類やフェノール樹脂、ノボラック樹脂、レゾール樹脂などの初期重合物が用いられ、それらの分子骨格中には芳香環や複素環を含む物質も使用される。さらに主成分モノマー及び/またはそれからなるポリマーやオリゴマーの末端や側鎖にオキサゾリン基を含有する物質も有用である。これらのモノマーとしては、スチレン、スチレン誘導体、アクリロニトリル、メタクリル酸エステル、メタクリル酸、エチレン、ブタジエン、アクリルアミドなどが用いられ、これらは単独のポリマー及び/またはオリゴマーとして、さらに共重合物質としても使用される。また、これらの混合物としても使用できる。
【0047】
オキサゾリン基含有化合物の形態としては、液状、溶融状、固体またはこれらを溶解しうる水や有機溶媒中での溶液状、さらに水などに分散した懸濁液状(エマルジョン粒子、ラテックス粒子状など)で使用される。例えばかかる化合物をそのままあるいは必要に応じて少量の溶媒に溶解したものを、公知の乳化剤、例えばアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物等を用いて乳化又は溶解する方法を用いてもよい。
【0048】
オキサゾリン基含有化合物は、Tg(ガラス転移温度)が0~80℃、かつオキサゾリン基量が1.0~5.0mmol/g,solidであるのが好ましく、より好ましくは、Tg(ガラス転移温度)が10~70℃、かつオキサゾリン基量が1.2~3.0mmol/g,solidであるのがよい。この範囲を外れると、耐熱接着力が低下することがある。
【0049】
本発明で第1処理剤で使用する(B)ブロックドイソシアネート化合物とは、加熱によりブロック剤が遊離して活性なイソシアネート化合物を生成できる化合物である。ブロックドイソシアネート化合物とは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリフェニールメタントリイソシアネートなどの骨格を有するポリイソシアネート化合物と、フェノール、クレゾール、レゾルシンなどのフェノール類、ε-カプロラクタム、バレロラクタムなどのラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム類などのブロック化剤との反応生成物が挙げられる。
【0050】
これらのブロックドイソシアネート化合物の中では、特に、ジフェニルメタンジイソシアネートがブロック化剤でブロックされた2官能型のMDI系ブロックドイソシアネートが、良好な接着力および耐疲労性を得るにおいて好ましい。さらに好ましくは、オキシム類でブロックされた2官能型MDI系ブロックドイソシアネートがよい。なお、イソシアネート基を三官能以上有するポリメリックMDIは、耐疲労性が低下することがあり、好ましくない。
【0051】
本発明の第1処理剤に使用できる(C)ゴムラテックスは、例えば、天然ゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、スチレン・ブタジエン・ゴムラテックス、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス、ニトリルゴムラテックス、水素化ニトリルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、クロロスルホン化ゴムラテックス、エチレン・プロピレン・ジエンゴムラテックス等が挙げられ、これらを単独、又は併用して使用することが出来る。中でも、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)が20~100、かつTgが-70℃~-30℃のVPラテックス、より好ましくは、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)が30~80、かつTgが-60℃~-40℃のVPラテックスを含むものであることが、接着力および耐疲労性の観点から好ましい。
【0052】
本発明の第1処理剤に使用できる(D)エポキシ化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものである。
【0053】
分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物は、例えば、分子内に水酸基を有する化合物から得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、分子内にアミノ基を有する化合物から得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、分子内にカルボキシル基を有する化合物から得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、分子内に不飽和結合を有する化合物から得られる環式脂肪族エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネートなどの複素環式エポキシ樹脂、あるいはこれらから選ばれる2種類以上のタイプが分子内に混在するエポキシ樹脂などである。
【0054】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンのようなハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFと前記ハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニルと前記ハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるビフェニル型エポキシ樹脂、レゾルシノールと前記ハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるレゾルシノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールSと前記ハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるビスフェノールS型エポキシ樹脂、多価アルコール類と前記ハロゲン含有エポキシド類との反応生成物であるポリエチレングリコール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ビス-(3,4-エポキシ-6-メチル-ジシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシシクロヘキセンエポキシドなどの不飽和結合部分を酸化して得られるエポキシ樹脂、その他ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、およびこれらのハロゲンあるいはアルキル置換体などを使用することができる。
【0055】
本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードは、(A)オキサゾリン基を含む化合物、(B)ブロックドイソシアネート化合物、(C)ゴムラテックス、(D)エポキシ化合物を含む第1処理剤によって被覆されてなるが、第1処理剤の全固形分(乾燥重量)に対して、(A)オキサゾリン基を含む化合物が10~50重量%、(B)ブロックドイソシアネート化合物が3~13重量%、(C)ゴムラテックスが20~60重量%、(D)エポキシ化合物が20~60重量%含有することが必要であり、好ましくは、第1処理剤の全固形分に対して、(A)オキサゾリン基を含む化合物が12~45重量%、(B)ブロックドイソシアネート化合物が4~12重量%、(C)ゴムラテックスが25~55重量%、(D)エポキシ化合物が25~55重量%含有すること、より好ましくは、第1処理剤の全固形分に対して、(A)オキサゾリン基を含む化合物が15~40重量%、(B)ブロックドイソシアネート化合物が5~11重量%、(C)ゴムラテックスが30~50重量%、(D)エポキシ化合物が30~50重量%含有することがよい。(A)オキサゾリン基を含む化合物の割合がこの範囲を外れると、耐熱接着力の低下や、耐疲労性が悪化することがある。(B)ブロックドイソシアネート化合物の割合がこの範囲から外れると、初期接着力が低下することがある。(C)ゴムラテックスの割合がこの範囲を外れると、初期接着力の低下や、耐疲労性が悪化することがある。(D)エポキシ化合物の割合がこの範囲を外れると、初期接着力の低下や、耐疲労性が悪化することがある。
【0056】
また、本発明に使用する第1処理剤には、上記(A)、(B)、(C)および(D)以外に、本発明の目的、効果を妨げない範囲内において、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、加硫調整剤、酸化防止剤、pH調整剤を添加しても良い。
【0057】
本発明の第2処理剤で使用する(a)リグニン誘導体とは、バイオマスである樹木中に存在するリグニンが化学的に処理された状態のものである。そのようなものには、例えば、木材を原料とする製紙産業工程において、例えばクラフトパルプ廃液から得られるクラフトリグニン、亜硫酸パルプ廃液から得られるリグニンスルホン酸などが挙げられる。リグニンスルホン酸は、リグニンのフェニルプロパン構造の側鎖にスルホン基が導入されたもので、リグニンスルホン酸塩として、例えばリグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸マグネシウム、リグニンスルホン酸カルシウムなどが挙げられる。本発明では、これらを単独、又は併用して使用することが出来るが、中でも接着力の観点からリグニンスルホン酸ナトリウムが最も好ましく使用できる。
【0058】
本発明で使用する(a)リグニン誘導体は、数平均分子量が10000~60000でありかつ重量平均分子量が80000~130000であることが必要であり、好ましくは、数平均分子量が20000~50000かつ重量平均分子量が90000~120000であるのが良い。数平均分子量および重量平均分子量がこの範囲の上限を超えると、耐疲労性が不足したり、接着処理剤の保存安定性が悪化したり、ディップ工程において樹脂カスが蓄積し、連続的な生産が困難になることがある。数平均分子量および重量平均分子量がこの範囲の下限未満であると、ゴムとの初期接着力や耐疲労性が低下して好ましくない。また、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は、2.5~5.0であることが好ましく、より好ましくは2.8~4.7であるのがよい。この範囲を外れると、接着力や耐疲労性が不足することがある。なお、本発明における数平均分子量及び重量平均分子量は、実施例の欄に記載した方法で測定した値をいう。
【0059】
本発明で第2処理剤で使用する(b)ブロックドイソシアネート化合物は、第1処理剤で使用する(B)ブロックドイソシアネート化合物と同じであり、好ましく用いられるブロックドイソシアネート化合物も同様である。
【0060】
本発明の第2処理剤に使用できる(c)ゴムラテックスは、第1処理剤で使用する(C)ゴムラテックスと同じであり、好ましいムーニー粘度も同様である。例えば、天然ゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、スチレン・ブタジエン・ゴムラテックス、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス、ニトリルゴムラテックス、水素化ニトリルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、クロロスルホン化ゴムラテックス、エチレン・プロピレン・ジエンゴムラテックス等が挙げられ、これらを単独、又は併用して使用することが出来る。中でも、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)が20~100、かつTgが-70℃~-30℃のVPラテックス、より好ましくは、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)が30~80、かつTgが-60℃~-40℃のVPラテックスを含むものであることが、接着力および耐疲労性の観点から好ましい。
【0061】
本発明の第2処理剤において、接着処理剤に含まれる全固形分を100重量%としたとき、(a)リグニン誘導体の含有量は、5~50重量%であることが好ましく、より好ましくは7~45重量%、さらに好ましくは10~40重量%である。5重量%未満もしくは50重量%を超えると、接着力や耐疲労性が不足することがある。
【0062】
また、(a)リグニン誘導体と、(b)ブロックドイソシアネート化合物の固形分重量比は、(aの固形分):(bの固形分)=10:1~10:20であることが好ましく、より好ましくは10:5~10:20である。この重量比を超える範囲で(b)の量が少ないと、接着力が不足することがあり、この重量比を超える範囲で(b)の量が多いと、コードが硬くなり、ゴム中での耐疲労性が悪化することがあり、タイヤ、ベルト、ホースなどのゴム製品の補強用途としてコードを使用すると、製品の耐久性が悪化することがあり、好ましくない。
【0063】
また、(a)リグニン誘導体と、(B)ブロックドイソシアネート化合物と(c)ゴムラテックスの固形分重量比は、((aの固形分)+(bの固形分)):(cの固形分)=10:90~60:40であるのが好ましく、より好ましくは20:80~50:50である。この範囲を外れると接着力が不足したり、耐疲労性が悪化することがある。
【0064】
また、本発明に使用する第2処理剤には、上記(a)、(b)、および(c)以外に、本発明の目的、効果を妨げない範囲内において、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、加硫調整剤、酸化防止剤、pH調整剤、カーボンブラック、着色剤等を添加しても良い。
【0065】
本発明の第1処理剤は、固形分が水に溶解または分散されたものであって、総固形分濃度が、好ましくは1~15重量%、より好ましくは2~13重量%、さらに好ましくは3~10重量%とするのが良い。この範囲を外れると、初期接着力や耐熱接着力の低下を招くことがある。
【0066】
本発明の第2処理剤は、固形分が水に溶解または分散されたものであって、総固形分濃度が、好ましくは5~25重量%、より好ましくは10~20重量%、さらに好ましくは12~18重量%とするのが良い。この範囲を外れると、初期接着力の低下を招くことがある。
【0067】
本発明の第1処理剤による皮膜の樹脂付着量は、ポリエステル繊維100重量%に対して1~4重量%であり、かつ第2処理剤による皮膜の樹脂付着量はポリエステル繊維100重量%に対して1~4重量%であり、かつ第1処理剤による皮膜と第2処理剤による皮膜の合計の樹脂付着量がポリエステル繊維100重量%に対して2~6重量%であるが、好ましくは、1処理剤による皮膜の樹脂付着量は、ポリエステル繊維100重量%に対して1.5~3.0重量%であり、かつ第2処理剤による皮膜の樹脂付着量はポリエステル繊維100重量%に対して1.5~3.0重量%であり、かつ第1処理剤による皮膜と第2処理剤による皮膜の合計の樹脂付着量がポリエステル繊維100重量%に対して2~5重量%であるのがよい。この範囲を外れると、接着力の低下を招くことがある。
【0068】
また本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードの表層のタキネスは、2.0~10.0N/cm2であることが好ましく、より好ましくは、3.0~9.0N/cm2であるのがよい。コード表層のタキネスの測定方法は後述する方法によって測定できる。コード表層のタキネスが2.0未満であると、ゴムとの接着力が低下することがあり、10.0を超えると、ディップ工程中に樹脂カスが蓄積して、コードの工程通過性が悪化することがある。コードのタキネスは、特に2浴目処理剤のラテックスの種類の選定や含有量、他の配合薬剤との配合比率を適正化することによって、好ましい範囲に調整することができる。
【0069】
次に、本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードの製造方法について述べる。
【0070】
本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードの製造方法の例としては、ポリエステル繊維を、少なくとも(A)オキサゾリン基を含む化合物、(B)ブロックドイソシアネート化合物、(C)ゴムラテックス、(D)エポキシ化合物の四種を含む第1処理剤に付着させ、熱処理を施し、得られたコードを続いて、少なくとも(a)リグニン誘導体、(b)ブロックドイソシアネート化合物、(c)ゴムラテックスの三種を含む第2処理剤に付着させ、熱処理する方法である。ポリエステル繊維は、撚糸コードあるいは生簾反の形態のいずれでもよい。第1処理剤および第2処理剤付着後の熱処理は、それぞれ、100~150℃の温度で水分を乾燥し、続いて200~255℃の熱処理を施す方法が好ましい。
【0071】
ポリエステル繊維に第1処理剤または第2処理剤を付着させる方法は、例えばディップ処理が挙げられ、ディップ処理とは、内部にローラーが設置されかつ接着処理剤が満たされたディップ槽内に撚糸コードまたは生簾反を走行させることで、撚糸コードまたは生簾反に処理剤を付与することを指す。熱処理とは、ローラーが設置されかつ所定の温度に設定できるオーブン内に撚糸コードまたは生簾反を走行させて撚糸コードまたは生簾反を加熱することを指す。このようなディップおよび熱処理を施すディップ処理機としては、例えばリッツラー社から市販されている。なお、処理剤をポリエステル繊維に付着させる他の方法としては、ディップ処理の他、例えばノズルからの接着処理剤噴霧による塗布など、任意の方法を採用することができる。
【0072】
また、ポリエステル繊維に対する接着処理剤の固形分付着量を制御するために、圧接ローラーによる絞り、スクレーパーによるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばしおよび吸引などの手段を用いてもよい。
【0073】
さらには、上記の乾燥、熱処理後の、機械的ソフニング処理工程時に、ポリエステル繊維コードをエッジに摺接させることにより任意のコード剛さを得るための柔軟化処理を施すこともできる。
【0074】
このようにして得られる本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードは、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂を含まず、環境負荷低減に有利な代替原料を使用した新規の接着処理剤からなるゴム補強用ポリエスエル繊維コードであって、従来RFL同等以上の初期接着力を発現し、かつゴム加硫工程や製品使用時にゴム中で長時間高温に曝された時の耐熱接着力が著しく改善され、耐疲労性が向上し、タイヤの補強材として好適なゴム補強用ポリエステル繊維コードに関する。またディップ工程において樹脂カス蓄積を抑制でき生産性の良好なゴム補強用ポリエステル繊維コードを提供することができる。
【実施例0075】
以下、実施例により本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下に具体的に記載する実施例等において、各測定値は次の方法により求めたものである。
【0076】
(1)接着剤処理剤の付着量
JIS L1017(2002)のディップピックアップの質量法に準じ、接着剤の付着量を求めた。
【0077】
(2)初期接着力および耐熱接着力
ポリエステル繊維コードとゴムとの接着力を示すものである。初期接着力の測定は、JIS L1017(2002)附属書1の3.1Tテスト(A法)に準拠して、ポリエステル繊維コードを未加硫ゴムに埋め込み、150℃、30分間、50kg/cm2プレス加硫を行ってのちに放冷し、ポリエステル繊維コードをゴムブロックから300mm/minの速度で引き抜き、その引き抜きに要した加重を各試料について求め、試料数10個の算術平均値をもって初期接着力とした。また、耐熱接着力の測定は、JIS L1017(2002)附属書1の3.1Tテスト(A法)に準拠して、ポリエステル繊維コードを未加硫ゴムに埋め込み、150℃、180分間、50kg/cm2プレス加硫を行ってのちに放冷し、合成繊維コードをゴムブロックから300mm/minの速度で引き抜き、その引き抜きに要した加重を各試料について求め、試料数10個の算術平均値をもって耐熱接着力とした。
【0078】
(3)ゴム中耐疲労性(保持率)
JIS L1017(2002)附属書1の2.2.2ディスク疲労強さ(グッドリッチ法)に準拠して評価した。ポリエステル繊維コード2本を未加硫ゴムに埋め込み、150℃、30分間、50kg/cm2の条件でプレス加硫して、ゴムコンポジットを作成する。この試験片を圧縮6.3%、伸張12.6%を1サイクルとする変形を2600サイクル/分で、100℃雰囲気下12時間与えた後、ゴムからポリエステル繊維コードを取り出して疲労後の破断強力を測定し、該疲労試験前後の破断強力の保持率を各試料について求め、試料8個の算術平均値をもってゴム中耐疲労性(保持率)とした。
【0079】
なお、初期接着力、耐熱接着力、ゴム中耐疲労性の測定に使用した未加硫ゴムコンパウンドの組成は下記のとおりである。
天然ゴム (RSS#1):70(重量部)
SBR (#1502、JSR株式会社製):30(重量部)
HAFカーボンブラック:40(重量部)
ステアリン酸:2(重量部)
硫黄:2(重量部)
亜鉛華:5(重量部)
2,2’-ジチオベンゾチアゾール:3(重量部)
ナフテン酸プロセスオイル:3(重量部)。
【0080】
(4)ディップ工程通過性
1670dtexのポリエステルマルチフィラメント糸(東レ株式会社製、“テトロン”1670T-360-705M)2本を、下撚り40回/10cm、上撚り40回/10cmの撚り数で撚糸し、撚糸コードを得る。該撚糸コードをコンピュートリーター処理機(リッツラー株式会社製)を用いて、第1処理剤に浸漬した後、120℃で2分間乾燥し、続いて245℃で1分間の熱処理を行う。続いて、第2処理剤に浸漬した後、120℃で2分間乾燥し、続いて240℃で1分間熱処理を行いポリエステル繊維コードを得る。第2処理剤による熱処理加工が3000m分走行した後の、コンピュートリーターの熱処理炉ターンロール(コードが接触するロール)に蓄積した樹脂カスの量を確認し、(樹脂カス:多=B>A>S=皆無)と判定した。本発明ではSとAを実用に耐えうる工程通過性の合格点としたが、Sの方が実用上優れるものである。
【0081】
(5)リグニン誘導体の数平均分子量、重量平均分子量測定
リグニン誘導体の数平均分子量、重量平均分子量はGPC法(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定した。リグニン誘導体試料に溶媒(アンモニア緩衝液/メタノール)を加え、室温で攪拌して溶解させ、0.5μmのフィルターで濾過を行った。その後、GPCにて測定し、UV検出器にてピークを検出、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール基準の相対値で分子量を測定した。測定結果は後述する実施例内に記載した。測定条件詳細を以下に記載する。
測定装置:島津製作所製
使用カラム:TSKgel GMPWXL 1本、G3000PWXL 1本(φ7.8mm×30cm、東ソー製)
溶媒:0.1Mアンモニア緩衝液(pH11)/メタノール(4/1、v/v)
標準物質:東ソーおよびAgilent製単分散ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール
検出器:UV検出器(島津製作所 SPD-M20A)。
【0082】
(6)コード表層のタキネス
株式会社東洋精機製“タッキネスチェッカ”HTC-1の接触子部分(1x1.5cm)に、未加硫ゴム(厚み0.4mm)を両面テープで貼り付けた。一方、ポリエステル繊維コードを、平らなアルミ板上に隙間が無いように巻き付けた。“タッキネスチェッカ”を用いて、圧着力10N、圧着時間6秒の測定条件にて、アルミ板上のポリエステル繊維コードのタキネスを測定した(単位N/1.5cm2)。測定回数6回の算術平均値を算出し、単位N/cm2に換算した数値をコード表層のタキネスとした。なお、未加硫ゴムコンパウンドの組成は上記(3)と同じものを使用した。
【0083】
(7)タイヤ高速耐久性
上述したポリエステル繊維コードをカーカスプライとして用い、通常のタイヤの製造工程と同様にして、タイヤサイズ:165-SR13のラジアルタイヤを作成した。ドラム試験機により、JIS D4230に規定される高速耐久試験を終了した後、さらに30分毎に速度を10km/h単位で増加させてタイヤが破壊するまでの走行距離を測定した。評価は後述する(従来例)のRFL接着剤を使用したポリエステル繊維コードをカーカスプライに使用したタイヤの評価結果を100とする指標で示した。指標が大きいほど高速耐久性に優れていることを意味する。
【0084】
(実施例1~12、比較例1~7)
(A)オキサゾリン基を含む化合物、(B)ブロックドイソシアネート化合物、(C)ゴムラテックス、(D)エポキシ化合物の固形分比が表1に示す割合になるように混合し、水で希釈して総固形分濃度6重量%の第1処理剤を得た。なお、実施例2のみ総固形分濃度は2重量%とした。
【0085】
また、(a)リグニン誘導体、(b)ブロックドイソシアネート化合物、(c)ゴムラテックスの固形分比が表1に示す割合になるように混合して、水で希釈して総固形分濃度15重量%の第2処理剤を得た。なお、実施例2のみ総固形分濃度は20重量%とした。
【0086】
1670dtexのポリエステルマルチフィラメント糸(東レ株式会社製、“テトロン”1670T-360-705M)2本を、下撚り40回/10cm、上撚り40回/10cmの撚り数で撚糸し、撚糸コードを得た。
【0087】
該撚糸コードをコンピュートリーター処理機(リッツラー株式会社製)を用いて、第1処理剤に浸漬した後、120℃で2分間乾燥し、続いて245℃で1分間の熱処理を行った。続いて、第2処理剤に浸漬した後、120℃で2分間乾燥し、続いて240℃で1分間熱処理を行い、ポリエステル繊維コードを得た。
【0088】
得られたポリエステル繊維コードの、第1処理剤による皮膜の樹脂付着量および第2処理剤による皮膜の樹脂付着量はそれぞれ表1の通りである。
【0089】
表1中に示した、1浴目処理剤の各成分は以下の通りである。
(A)-1:オキサゾリン基を含む化合物(株式会社日本触媒製“エポクロス”K-2035E、オキサゾリン基含有アクリル・スチレン系共重合体、Tg50℃、オキサゾリン基量1.8mmol/g,solid)
(A)-2:オキサゾリン基を含む化合物(株式会社日本触媒製“エポクロス”WS-700、オキサゾリン基含有アクリル共重合体、Tg50℃、オキサゾリン基量4.5mmol/g,solid)
(A)-3:オキサゾリン基を含む化合物(株式会社日本触媒製“エポクロス”K-2010E、オキサゾリン基含有アクリル・スチレン系共重合体、Tg-50℃、オキサゾリン基量1.8mmol/g,solid)
(A)-4:オキサゾリン基を含む化合物(株式会社日本触媒製“エポクロス”WS-300、オキサゾリン基含有アクリル・スチレン系共重合体、Tg90℃、オキサゾリン基量7.7mmol/g,solid)
(B)-1:ブロックドイソシアネート(明成化学製DM-6400、オキシムブロックMDI、官能基数2)
(B)-2:ブロックドイソシアネート(明成化学製DM-3031CONC、ラクタムブロックMDI、官能基数2)
(B)-3:ブロックドイソシアネート(第一工業製薬製“エラストロン”BN-27、ラクタムブロックポリメリックMDI、官能基数5)
(B)-4:ブロックドイソシアネート(明成化学製“メイカネート”TP-10、オキシムブロックTDI、官能基数6)
(C)-1:ゴムラテックス(日本エイアンドエル株式会社製“PYRATEX”、VPラテックス、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)35、Tg-55℃)。
(C)-2:ゴムラテックス(日本エイアンドエル株式会社製“PYRATEX-HM”、VPラテックス、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)90、Tg-55℃)。
(C)-3:ゴムラテックス(日本エイアンドエル株式会社製“PYRATEX-LB”、VPラテックス、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)120、Tg-25℃)。
(D)-1:エポキシ化合物(ナガセケムテックス株式会社製、“デナコール”EX614B)。
【0090】
表1中に示した、2浴目処理剤の各成分は以下の通りである。
(a)-1:リグニン誘導体(日本製紙株式会社製“バニレックス”N、リグニンスルホン酸ナトリウム、数平均分子量29000、重量平均分子量105000)
(a)-2:リグナン誘導体(日本製紙株式会社製“バニレックス”RN、リグニンスルホン酸ナトリウム、数平均分子量34000、重量平均分子量112000)
(a)-3:リグニン誘導体(日本製紙株式会社製パールレックス”NP、リグニンスルホン酸ナトリウム、数平均分子量97000、重量平均分子量146000)
(a)-4:リグニン誘導体(日本製紙株式会社製“サンエキス”P252、リグニンスルホン酸ナトリウム、数平均分子量66000、重量平均分子量135000)
(b)-1:ブロックドイソシアネート(明成化学製DM-6400、オキシムブロックMDI、官能基数2)
(b)-2:ブロックドイソシアネート(明成化学製DM-3031CONC、ラクタムブロックMDI、官能基数2)
(b)-3:ブロックドイソシアネート(第一工業製薬製“エラストロン”BN-27、ラクタムブロックポリメリックMDI、官能基数5)
(c)-1:ゴムラテックス(日本エイアンドエル株式会社製“PYRATEX”、VPラテックス、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)35、Tg-55℃)。
(c)-2:ゴムラテックス(日本エイアンドエル株式会社製“PYRATEX-HM”、VPラテックス、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)90、Tg-55℃)。
(c)-3:ゴムラテックス(日本エイアンドエル株式会社製“PYRATEX-LB”、VPラテックス、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)120、Tg-25℃)。
【0091】
(比較例8)
実施例1での第1処理剤による浸漬、熱処理を行わないこと以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0092】
(従来例)
第1処理剤に表1の組成の処理剤を用い、第2処理剤として従来のRFL接着剤を使用して実施例1と同様の浸漬・熱処理を行った。RFLは、レゾルシン/ホルマリンのモル比を1/1.5の割合で、苛性ソーダの存在下混合し、固形分濃度が10%となるように調整し、2時間熟成することで、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物(RF(レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂))を得た。次にこの初期縮合物(RF)と、ゴムラテックス(ピラテックス、日本エイアンドエル株式会社製)を、RF/L=1/5(固形分重量比)の割合で混合し、24時間熟成した。この混合物を水で希釈し、固形分重量15%としたものを使用した。
【0093】
以上のようにして得られたポリエステル繊維コードを未加硫ゴムに埋め込み加硫を行った後、初期接着力、耐熱接着力、ゴム中耐疲労性をそれぞれ測定した。さらにこのポリエステル繊維タイヤコードをカーカスプライとしてラジアルタイヤを作成し、高速耐久性試験を実施した。結果を表1および表2に示す。
【0094】
表1および表2の結果のように、本発明による実施例の場合、接着処理剤にレゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂が含まれず、従来例のRFL接着剤対比環境負荷低減に有利であり、かつ、ゴムとの接着性がRFL接着剤同等に良好で、さらに耐熱接着力が著しく良好で、耐疲労性が向上することがわかる。また、ディップ工程における樹脂カス蓄積が抑制され、生産性が良好であることがわかる。また従来のRFL接着剤によるタイヤコード以上の高速耐久性能を有するタイヤ性能が得られることがわかる。
【0095】
【0096】