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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039135
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】旋動式破砕機
(51)【国際特許分類】
   B02C 2/04 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
B02C2/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143465
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智
(72)【発明者】
【氏名】芦田 義和
(72)【発明者】
【氏名】末本 裕一
(72)【発明者】
【氏名】小玉 幸司
【テーマコード(参考)】
4D063
【Fターム(参考)】
4D063BB06
4D063BB17
4D063GA07
4D063GC05
4D063GC25
4D063GC27
4D063GC29
4D063GD02
4D063GD04
4D063GD12
4D063GD13
(57)【要約】
【課題】粒径と処理能力の両方を簡便にかつ正確に最適化することが可能な旋動式破砕機を提供する。
【解決手段】主軸26を傾斜した状態で回転させる回転軸13が、周方向位置において肉厚が異なるスリーブ筒部18を有する偏角スリーブ16と、周方向位置において肉厚が異なるブッシュ筒部20を有する偏角スリーブ16の内径側に挿入される偏角ブッシュ17と、を有し、偏角ブッシュ17を偏角スリーブ16に対して相対回転することで垂直軸に対する主軸26の傾斜角を変更することができるようになっており、偏角スリーブ16および偏角ブッシュ17に、偏角スリーブ16と偏角ブッシュ17の周方向位置を表示する位置表示部21、23が形成されている構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にバウルライナ(4)が形成された垂直方向に上下動可能なバウル(5)と、垂直軸周りに回転する回転軸(13)と、前記回転軸(13)に挿入された上で傾斜した状態で回転する主軸(26)と、前記主軸(26)によって揺動回転するように設けられ、前記バウルライナ(4)と対向する表面にマントル(7)が形成されたマントルコア(30)と、を有する旋動式破砕機において、
前記回転軸(13)が、周方向位置において肉厚が異なるスリーブ筒部(18)を有する偏角スリーブ(16)と、周方向位置において肉厚が異なるブッシュ筒部(20)を有する前記偏角スリーブ(16)の内径側に挿入される偏角ブッシュ(17)と、を有し、前記偏角ブッシュ(17)を前記偏角スリーブ(16)に対して相対回転することで垂直軸に対する前記主軸(26)の傾斜角を変更することができるようになっており、前記偏角スリーブ(16)および前記偏角ブッシュ(17)に、前記偏角スリーブ(16)と前記偏角ブッシュ(17)の周方向位置を表示する位置表示部(21、23)が形成されていることを特徴とする旋動式破砕機。
【請求項2】
前記位置表示部(21、23)が、凹状に形成された係合凹部(21、23)であって、前記偏角スリーブ(16)および前記偏角ブッシュ(17)にそれぞれ形成された前記係合凹部(21、23)を径方向に対向するように合わせた上で当該係合凹部(21、23)に共通のキー部材(24)を設けることにより、前記偏角スリーブ(16)と前記偏角ブッシュ(17)の周方向相対位置が固定される請求項1に記載の旋動式破砕機。
【請求項3】
前記偏角スリーブ(16)および前記偏角ブッシュ(17)の少なくとも一方に複数の前記位置表示部(21、23)が形成されており、前記偏角スリーブ(16)および前記偏角ブッシュ(17)にそれぞれ形成された前記位置表示部(21、23)の周方向位置の組み合わせを変えることによって、前記主軸(26)をその組み合わせに対応した傾斜角に設定できる請求項1または2に記載の旋動式破砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、旋動式破砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
ジョークラッシャなどの破砕機によって一次破砕された被砕物を所望の粒径とするためにさらに細かく破砕(二次、三次、四次破砕)する際に、旋動式破砕機(コーンクラッシャ)が用いられることがある。この旋動式破砕機は、例えば下記特許文献1に示すように、旋動するマントルコア8の表面に設けられたマントル9とバウル21の表面に設けられたバウルライナ10との間に一次破砕された被砕物を噛み込ませることによって、さらに細かく破砕する。
【0003】
このタイプの旋動式破砕機においては、旋動するマントル9とバウルライナ10との間の出口間隔の大きさを円周上に沿って連続的に変化させることによって破砕を行っている。すなわち、出口間隔が最小(閉じ側出口間隔)となる部分で破砕を行い、周方向に対向する出口間隔が最大(開き側出口間隔)となる部分から被砕物Pが破砕された破砕物の排出が行われる。破砕物の粒径および処理能力(破砕物の排出され易さ)は、バウルライナ10を上下させてマントル9とバウルライナ10との間の出口間隔を変えることによって調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-159824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る旋動式破砕機においては、破砕物P’の粒径は閉じ側出口間隔の大きさによって、処理能力は開き側出口間隔と閉じ側出口間隔の大きさの差(スロー)によって決まる。そして、この両出口間隔は、バウルライナ10の垂直方向の上下動によって調節されるため、スローは、主軸7の偏心角によって一義的に決まる。このため、粒径と処理能力の一方を変更するためにバウルライナ10を上下動すると、粒径と処理能力の他方も変更されてしまい、粒径と処理能力の両方を個別に最適化するのが難しい。また、偏心角の異なる回転軸4に交換して主軸7の偏心角を変更することも考えられるが、交換用の多数の回転軸4を予め揃えておく必要があり、コスト面から現実的ではない。
【0006】
そこで、本発明は、粒径と処理能力の両方を簡便にかつ正確に最適化することが可能な旋動式破砕機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明においては、
表面にバウルライナが形成された垂直方向に上下動可能なバウルと、垂直軸周りに回転する回転軸と、前記回転軸に挿入された上で傾斜した状態で回転する主軸と、前記主軸によって揺動回転するように設けられ、前記バウルライナと対向する表面にマントルが形成されたマントルコアと、を有する旋動式破砕機において、
前記回転軸が、周方向位置において肉厚が異なるスリーブ筒部を有する偏角スリーブと、周方向位置において肉厚が異なるブッシュ筒部を有する前記偏角スリーブの内径側に挿入される偏角ブッシュと、を有し、前記偏角ブッシュを前記偏角スリーブに対して相対回転することで垂直軸に対する前記主軸の傾斜角を変更することができるようになっており、前記偏角スリーブおよび前記偏角ブッシュに、前記偏角スリーブと前記偏角ブッシュの周方向位置を表示する位置表示部が形成されていることを特徴とする旋動式破砕機を構成した。
【0008】
このようにすると、偏角スリーブと偏角ブッシュを相対回転して主軸の傾斜角を変更するとともにバウルライナを上下動させることにより、マントルとバウルライナの閉じ側出口間隔と開き側出口間隔を独立的に調整することができる。このため、粒径と処理能力の両方を最適化することができる。しかも、偏角スリーブおよび偏角ブッシュに位置表示部を形成したので、偏角スリーブと偏角ブッシュの周方向位置を容易に合わせることができ、主軸の傾斜角を簡便にかつ正確に変更することができる。
【0009】
上記の構成においては、
前記位置表示部が、凹状に形成された係合凹部であって、前記偏角スリーブおよび前記偏角ブッシュにそれぞれ形成された前記係合凹部を径方向に対向するように合わせた上で当該係合凹部に共通のキー部材を設けることにより、前記偏角スリーブと前記偏角ブッシュの周方向相対位置が固定される構成とするのが好ましい。
【0010】
このようにすると、偏角スリーブと偏角ブッシュの周方向位置を簡便に合わせることができる。しかも、旋動式破砕機の稼働中に偏角スリーブと偏角ブッシュの周方向の位置ずれが生じないため、稼働中における粒径と処理能力のばらつきを防止することができる。
【0011】
上記のすべての構成においては、
前記偏角スリーブおよび前記偏角ブッシュの少なくとも一方に複数の前記位置表示部が形成されており、前記偏角スリーブおよび前記偏角ブッシュにそれぞれ形成された前記位置表示部の周方向位置の組み合わせを変えることによって、前記主軸をその組み合わせに対応した傾斜角に設定できる構成とするのが好ましい。
【0012】
このようにすると、偏角スリーブと偏角ブッシュにそれぞれ形成された位置表示部の周方向位置を合わせることにより、主軸の傾斜角のパターンを増やすことができ、この旋動式破砕機の適用範囲を拡大することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、上記のように旋動式破砕機を構成したので、偏角スリーブと偏角ブッシュの周方向の相対位置の調整、および、バウルライナの上下動によって、粒径と処理能力の両方を最適化することができるとともに、偏角スリーブと偏角ブッシュに形成された位置表示部に基づいて、主軸の傾斜角を簡便にかつ正確に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る旋動式破砕機の一実施形態を示す断面図
図2図1に示す旋動式破砕機に用いる偏角スリーブの断面図
図3図1に示す旋動式破砕機に用いる偏角ブッシュの断面図
図4】偏角スリーブと偏角ブッシュ(偏角ブッシュA)の周方向位置の組み合わせを示す平面図であって、(a)は基準角度、(b)は相対角度θ1、(c)は相対角度θ2
図5】偏角スリーブと偏角ブッシュ(偏角ブッシュB)の周方向位置の組み合わせを示す平面図であって、(a)は相対角度θ3、(b)は相対角度θ4、(c)は相対角度θ5
図6図1に示す旋動式破砕機の変形例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る旋動式破砕機(コーンクラッシャ)の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示す旋動式破砕機は、上部フレーム2と下部フレーム3から構成される機体フレーム1を備えている。
【0016】
上部フレーム2の内側には、内側表面に破砕用のバウルライナ4が形成された、垂直方向に上下動可能な円筒状のバウル5が設けられている。上部フレーム2とバウル5の間には、その周方向の全周に亘る環状の油圧シリンダ6が設けられている。この油圧シリンダ6は、上部油圧室6aと下部油圧室6bを有する複動形である。両油圧室6a、6bに作動油を給排することによってバウル5を上下動させて、バウルライナ4と後述するマントル7との間の隙間の大きさを調節することができる。
【0017】
この隙間の大きさは周方向位置で異なり、周方向で最も狭い部分を閉じ側出口間隔といい、周方向で最も広い部分を開き側出口間隔という。閉じ側出口間隔と開き側出口間隔は、周方向180度の対向する位置にある。閉じ側出口間隔の大きさが大きいほど破砕物の粒径は大きくなり、その大きさが小さいほど破砕物の粒径は小さくなる。また、開き側出口間隔の大きさと閉じ側出口間隔の大きさの差(以下、スローという。)が大きいほど破砕物の排出量(処理能力)は多くなり、スローが小さいほど排出量は少なくなる。スローの大きさは、主軸の傾斜角が大きいほど大きくなる。
【0018】
上部フレーム2とバウル5との間には、パッキン8、9が設けられている。また、上部フレーム2の上端に固定され上部油圧室6aを密閉するパッキンリテーナ10とバウル5との間にも同様にパッキン11が設けられている。これらのパッキン8、9、11によって作動油の漏れを防止している。また、ダストシール12によって、油圧シリンダ6内への粉塵の侵入を防止している。
【0019】
下部フレーム3の中央には、垂直軸周りに回転する回転軸13を回転自在に保持する筒部14と、その筒部14から水平方向外向きに延設された保持部15が形成されている。
【0020】
回転軸13は、偏角スリーブ16と偏角ブッシュ17を備えている。偏角スリーブ16は、図2に示すように、周方向位置において肉厚が異なる(連続的に変化する)スリーブ筒部18を有している。スリーブ筒部18の外径は軸方向において一定で、内径は軸方向の下方に向かうほど小さくなっている。スリーブ筒部18の下端側には、中央に軸方向に延びる貫通孔が形成された基部19が一体に形成されており、偏角スリーブ16は全体として軸方向の途中に内径段差を有する筒状となっている。
【0021】
偏角ブッシュ17は、図3に示すように、周方向位置において肉厚が異なる(連続的に変化する)ブッシュ筒部20を有している。ブッシュ筒部20の外径および内径は、軸方向の下方に向かうほどいずれも小さくなっている。軸方向の各位置における偏角スリーブ16の内径の大きさは、偏角ブッシュ17の外径の大きさとほぼ同じであり、偏角スリーブ16の内径側に偏角ブッシュ17が着脱可能に嵌合するよう構成されている。この嵌合状態において、偏角スリーブ16の内底面と偏角ブッシュ17の底側端部との間には、軸方向の隙間が形成されている。
【0022】
偏角スリーブ16のスリーブ筒部18の上端面には、周方向の2か所にこのスリーブ筒部18の内径側から外径側に至る位置表示部21としての係合凹部(以下、位置表示部21と同じ符号を付する。)が形成されている。この係合凹部21には、ボルト穴22が形成されている。また、偏角ブッシュ17のブッシュ筒部20の上端面には、周方向の3か所にこのブッシュ筒部20の内径側から外径側に至る位置表示部23としての係合凹部(以下、位置表示部23と同じ符号を付する。)が形成されている。
【0023】
偏角スリーブ16および偏角ブッシュ17にそれぞれ形成された係合凹部21、23の周方向幅および軸方向深さは同じであって、両係合凹部21、23に後述するキー部材24がちょうど嵌まり込むように構成されている。この係合凹部21、23の形状は特に限定されず、半円、半楕円、多角形などとすることもできる。偏角ブッシュ17の内径面には、軸方向に延びる油溝25が2本形成されている。油溝25は、係合凹部23の周方向位置からずらして形成されている。油溝25から供給される潤滑油によって、回転軸13と後述する主軸26の間が潤滑される。
【0024】
偏角スリーブ16に形成された係合凹部21のいずれかと、偏角ブッシュ17に形成された係合凹部23のいずれかの周方向位置を合わせた上で、両係合凹部21、23に跨るように共通のキー部材24を設け、このキー部材24をボルト27で固定する。これにより偏角スリーブ16と偏角ブッシュ17の周方向位置が固定されて、回転軸13(偏角ブッシュ17)に挿入される主軸26が、両係合凹部21、23の組み合わせに対応した傾斜角に設定される。なお、偏角スリーブ16への偏角ブッシュ17の嵌合のみによってこれらの周方向位置が十分固定されるのであれば、キー部材24を省略できる可能性がある。回転軸13(偏角スリーブ16、偏角ブッシュ17)には、駆動源(図示せず)から、プーリ28、かさ歯車29を介して回転駆動力が伝達される。
【0025】
主軸26の上端部側には、この主軸26の回転に伴って揺動回転するマントルコア30が設けられている。マントルコア30のバウルライナ4と対向する表面には、破砕用のマントル7が形成されている。回転軸13が回転すると、主軸26がこの回転軸13に対し傾斜した状態で回転し、この主軸26に設けられたマントル7(マントルコア30)が旋動する。
【0026】
マントルコア30の下側の平坦面には、摺動部材31が設けられている。摺動部材31は、マントルコア30の下面にボルトで固定された固定部32と、固定部32に対して周方向に相対回転可能な摺動部33とを有している。固定部32は、上下面が平坦な鋼板からなる円環状の部材である。
【0027】
摺動部33は、樹脂材からなる円環状の部材であって、その上面は固定部32の下面に沿う平坦面となっている。摺動部33の底面には、下向きに突出した球面の一部からなる球面部34が形成されている。摺動部33は、固定部32および後述するスラスト部35のいずれにも固定されておらず、単に両者の間に挟まっているだけなので、マントルコア30の揺動に伴ってその円環の中心軸周りに自在に回転することができる。
【0028】
摺動部材31(摺動部33に形成された球面部34)は、機体フレーム1の筒部14の上部にボルト36で固定された鋳鋼製のスラスト部35によって回転自在に支持されている。スラスト部35の上面には、摺動部材31(摺動部33)に形成された球面部34を受ける球面凹部37が形成されている。マントル7(マントルコア30)の旋動時には、摺動部33に形成された球面部34とスラスト部35の球面凹部37との間で摺動が生じる。
【0029】
摺動部材31およびスラスト部35の外周側には、摺動部材31を潤滑する潤滑油が外側に漏れるのを防止するオイルフェンス38が設けられている。オイルフェンス38は、マントルコア30の下面から下向きに延設された周方向断面がL字形の部材であって、その上端がマントルコア30の下面に、ボルト39で着脱可能に固定されている。また、オイルフェンス38は、いずれの部材にも固定されていない摺動部33が旋動時に逸脱しそうになった場合に、その逸脱を防止する作用も有する。
【0030】
図1に示すように、バウル5の上端部には、防塵カバー40が設けられている。防塵カバー40の内側には、被破砕物Pを投入するためのホッパ41が設けられている。このホッパ41に被破砕物Pを投入して回転軸13を回転させると、主軸26を介してマントルコア30が旋動回転する。すると、マントル7とバウルライナ4との間の閉じ側出口間隔に岩石などの被破砕物Pが噛み込まれる。そして、所定の大きさに破砕された破砕物P’がマントル7とバウルライナ4との間の開き側出口間隔から排出される。
【0031】
破砕に伴ってマントル7とバウルライナ4が摩耗して閉じ側出口間隔および開き側出口間隔の大きさが変化するが、そのときは油圧シリンダ6を動作させることでマントル7に対してバウルライナ4を昇降させて、両出口間隔の大きさを所定値に保つ。
【0032】
偏角スリーブ16と偏角ブッシュ17の周方向位置の組み合わせを図4および図5に示す。図4に示す組み合わせで用いた偏角ブッシュ17(以下、偏角ブッシュAという。)と、図5に示す組み合わせで用いた偏角ブッシュ17(以下、偏角ブッシュBという。)は、係合凹部23の周方向位置が異なっているが、その点以外は共通である。
【0033】
この実施形態に係る偏角スリーブ16と偏角ブッシュ17は、それぞれの肉厚が最大となる箇所の周方向位置を合わせた状態を基準とし(図4(a)を参照)、所望するマントル7の傾斜角度に応じて偏角スリーブ16と偏角ブッシュ17の周方向の相対角度を決定する(図4(b)、(c)、図5(a)~(c)中の相対角度θ1~θ5を参照)。
【0034】
上記の旋動式破砕機は、偏角スリーブ16と偏角ブッシュ17の周方向の相対位置の調整、および、バウルライナ4の上下動によって、粒径と処理能力の両方を最適化することができるとともに、偏角スリーブ16と偏角ブッシュ17に形成された位置表示部21、23としての係合凹部21、23に基づいて、主軸26(マントル7)の傾斜角を簡便かつ正確に変更することができる。これにより、破砕物P’の粒径と処理能力の両方を最適化することが可能となる。
【0035】
上記の旋動式破砕機は、マントルコア30とは別部材である摺動部材31(摺動部33)の底面に球面部34を形成したので、この球面部34に摩耗が生じたときに大型のマントルコア30の代わりに相対的に小型の摺動部材31のみ交換や補修をすればよい。このため、その作業を簡便にかつ低コストで行うことができる。
【0036】
上記の旋動式破砕機の変形例を図6に示す。この変形例に係る旋動式破砕機は、基本的な構成は図1に示したものと共通するが、マントルコア30の下面に球面部34を直接形成した点で相違する。このようにすると、部品点数が減少するため部品コストや組立てコストを削減できる可能性がある。
【0037】
上記の旋動式破砕機においては、偏角スリーブ16に2か所、偏角ブッシュ17に3か所の係合凹部21、23をそれぞれ形成したが、その形成位置や数は例示であって適宜変更することができる。
【0038】
また、上記の実施形態においては、偏角スリーブ16と偏角ブッシュ17の上端面に係合凹部21、23を形成したが、例えば、偏角スリーブ16の内径面と偏角ブッシュ17の外径面に軸方向に延びるスリットをそれぞれ形成し、このスリットに軸方向からキー部材24を挿入することで偏角スリーブ16と偏角ブッシュ17の周方向位置を固定することもできる。
【0039】
また、上記の実施形態においては、偏角スリーブ16と偏角ブッシュ17のそれぞれに係合凹部21、23を形成したが、偏角スリーブ16または偏角ブッシュ17の一方に係合凹部21、23を形成し、この係合凹部21、23にキー部材24を強く嵌合することによって偏角スリーブ16と偏角ブッシュ17の周方向位置を固定するようにすることもできる。
【0040】
また、上記の実施形態においては、偏角スリーブ16と偏角ブッシュ17にそれぞれ形成される位置表示部21、23を凹状に形成された係合凹部21、23としたが、キー部材24を設けないのであれば、この位置表示部21、23を偏角スリーブ16と偏角ブッシュ17のそれぞれに描いた単なる目印とすることもできる。
【0041】
また、偏角ブッシュ17の係合凹部23にボルト穴22を設けて、キー部材24をボルト27で固定することもできる。
【0042】
このように、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味およびすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0043】
1 機体フレーム
2 上部フレーム
3 下部フレーム
4 バウルライナ
5 バウル
6 油圧シリンダ
6a 上部油圧室
6b 下部油圧室
7 マントル
8、9、11 パッキン
10 パッキンリテーナ
12 ダストシール
13 回転軸
14 筒部
15 保持部
16 偏角スリーブ
17 偏角ブッシュ
18 スリーブ筒部
19 基部
20 ブッシュ筒部
21、23 位置表示部(係合凹部)
22 ボルト穴
24 キー部材
25 油溝
26 主軸
27、36、39 ボルト
28 プーリ
29 かさ歯車
30 マントルコア
31 摺動部材
32 固定部
33 摺動部
34 球面部
35 スラスト部
37 球面凹部
38 オイルフェンス
40 防塵カバー
41 ホッパ
P 被破砕物
P’ 破砕物
図1
図2
図3
図4
図5
図6