(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039140
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ガスエンジン
(51)【国際特許分類】
F02M 21/04 20060101AFI20240314BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20240314BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20240314BHJP
F02D 19/02 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
F02M21/04 Q
F02M21/02 F
F02M35/10 301E
F02D19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143471
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003502
【氏名又は名称】弁理士法人芳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸 真治
【テーマコード(参考)】
3G092
【Fターム(参考)】
3G092AA05
3G092AB06
3G092FA19
(57)【要約】
【課題】吸気系に生ずる圧力損失を抑えつつ、バックファイヤが発生した場合に火炎が吸気系に逆流することを抑えることができるガスエンジンを提供すること。
【解決手段】ガスエンジンは、吸気系に設けられ開閉することにより吸気量を制御するスロットルバルブ91と、吸気系におけるスロットルバルブ91の下流に設けられ気体燃料と吸気とを含む混合気をシリンダブロックの気筒に向かって導く吸気マニホルド8と、吸気マニホルド8に組み付けられるとともに吸気ポートを有し吸気マニホルド8から供給された混合気を吸気ポートを通して気筒に導くシリンダヘッドと、吸気系におけるスロットルバルブ91の下流に設けられ吸気ポートに残留する気体燃料に引火して発生した火炎が吸気系の上流に向かって逆流することを抑える逆火防止装置83と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体燃料で作動するガスエンジンであって、
吸気系に設けられ開閉することにより吸気量を制御するスロットルバルブと、
前記吸気系における前記スロットルバルブの下流に設けられ前記気体燃料と吸気とを含む混合気をシリンダブロックの気筒に向かって導く吸気マニホルドと、
前記吸気マニホルドに組み付けられるとともに吸気ポートを有し前記吸気マニホルドから供給された前記混合気を前記吸気ポートを通して前記気筒に導くシリンダヘッドと、
前記吸気系における前記スロットルバルブの下流に設けられ前記吸気ポートに残留する前記気体燃料に引火して発生した火炎が前記吸気系の上流に向かって逆流することを抑える逆火防止装置と、
を備えたことを特徴とするガスエンジン。
【請求項2】
前記吸気マニホルドは、
前記スロットルバルブを通過した前記吸気を一時的に貯留する吸気本体と、
前記吸気本体に接続され前記吸気本体から導かれた前記吸気を複数の前記気筒に分配する複数の吸気管と、
を有し、
前記逆火防止装置は、前記スロットルバルブと前記吸気本体との間に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のガスエンジン。
【請求項3】
前記吸気マニホルドに装着され前記気体燃料を前記吸気系に噴射するインジェクタをさらに備え、
前記吸気マニホルドは、
前記スロットルバルブを通過した前記吸気を一時的に貯留する吸気本体と、
前記吸気本体に接続され前記吸気本体から導かれた前記吸気を複数の前記気筒に分配する複数の吸気管と、
を有し、
前記逆火防止装置は、前記吸気本体と前記インジェクタとの間に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のガスエンジン。
【請求項4】
前記吸気本体は、前記吸気管とは別体として設けられ前記吸気管から取り外し可能とされてなることを特徴とする請求項3に記載のガスエンジン。
【請求項5】
前記吸気マニホルドに装着され前記気体燃料を前記吸気系に噴射するインジェクタをさらに備え、
前記逆火防止装置は、前記インジェクタと前記シリンダヘッドとの間に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のガスエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体燃料で作動するガスエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水素ガスを燃料とするエンジンが開示されている。水素ガスを燃料とするエンジンでは、水素ガスと空気の混合気体がエンジンの始動時や稼働中にエンジンの燃焼室の付近で異常な燃焼(バックファイヤ)を起こすことがある。バックファイヤが発生した場合、火炎が吸気系に逆流するおそれがある。そこで、特許文献1に記載されたエンジンは、逆火防止装置を備えている。特許文献1に記載された逆火防止装置は、キャブレタの空気取り込み口に接続され、キャブレタの本体に密着している。
【0003】
しかし、逆火防止装置がキャブレタの空気取り込み口に接続されていると、吸気系において圧力損失が生ずるおそれがある。そのため、吸気系に生ずる圧力損失を抑えつつ、バックファイヤが発生した場合に火炎が吸気系に逆流することを抑える点について、特許文献1に記載されたエンジンには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、吸気系に生ずる圧力損失を抑えつつ、バックファイヤが発生した場合に火炎が吸気系に逆流することを抑えることができるガスエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、気体燃料で作動するガスエンジンであって、吸気系に設けられ開閉することにより吸気量を制御するスロットルバルブと、前記吸気系における前記スロットルバルブの下流に設けられ前記気体燃料と吸気とを含む混合気をシリンダブロックの気筒に向かって導く吸気マニホルドと、前記吸気マニホルドに組み付けられるとともに吸気ポートを有し前記吸気マニホルドから供給された前記混合気を前記吸気ポートを通して前記気筒に導くシリンダヘッドと、前記吸気系における前記スロットルバルブの下流に設けられ前記吸気ポートに残留する前記気体燃料に引火して発生した火炎が前記吸気系の上流に向かって逆流することを抑える逆火防止装置と、を備えたことを特徴とするガスエンジンである。
【0007】
本発明の第1態様によれば、逆火防止装置が、吸気系におけるスロットルバルブの下流に設けられ、シリンダヘッドの吸気ポートに残留する気体燃料に引火して発生した火炎が吸気系の上流に向かって逆流することを抑える。本発明の第1態様では、吸気系のうちで流路面積が比較的広い箇所に逆火防止装置を設置することが可能であるため、吸気系に生ずる圧力損失を抑えつつ、バックファイヤが発生した場合に火炎が吸気系に逆流することを抑えることができる。
【0008】
本発明の第2態様は、本発明の第1態様において、前記吸気マニホルドは、前記スロットルバルブを通過した前記吸気を一時的に貯留する吸気本体と、前記吸気本体に接続され前記吸気本体から導かれた前記吸気を複数の前記気筒に分配する複数の吸気管と、を有し、前記逆火防止装置は、前記スロットルバルブと前記吸気本体との間に設けられたことを特徴とするガスエンジンである。
【0009】
本発明の第2態様によれば、逆火防止装置がスロットルバルブと吸気マニホルドの吸気本体との間に設けられるため、吸気系のうちで流路面積が比較的広い箇所に逆火防止装置を設置することが十分に可能である。そのため、吸気系に生ずる圧力損失を十分に抑えつつ、バックファイヤが発生した場合に火炎が吸気系に逆流することを抑えることができる。
【0010】
本発明の第3態様は、本発明の第1態様において、前記吸気マニホルドに装着され前記気体燃料を前記吸気系に噴射するインジェクタをさらに備え、前記吸気マニホルドは、前記スロットルバルブを通過した前記吸気を一時的に貯留する吸気本体と、前記吸気本体に接続され前記吸気本体から導かれた前記吸気を複数の前記気筒に分配する複数の吸気管と、を有し、前記逆火防止装置は、前記吸気本体と前記インジェクタとの間に設けられたことを特徴とするガスエンジンである。
【0011】
本発明の第3態様によれば、逆火防止装置が吸気マニホルドの吸気本体とインジェクタとの間に設けられるため、吸気系に生ずる圧力損失を抑えつつ、シリンダヘッドの吸気ポートに残留する気体燃料に引火して発生した火炎が吸気系の上流に向かって逆流することをより確実に抑えることができる。
【0012】
本発明の第4態様は、本発明の第3態様において、前記吸気本体は、前記吸気管とは別体として設けられ前記吸気管から取り外し可能とされてなることを特徴とするガスエンジンである。
【0013】
本発明の第4態様によれば、吸気本体が吸気管とは別体として設けられ吸気管から取り外し可能とされているため、作業者等は、吸気本体を吸気管から取り外すことで、吸気マニホルドの吸気本体とインジェクタとの間に逆火防止装置を取り付ける作業、および吸気マニホルドの吸気本体とインジェクタとの間から逆火防止装置を取り外す作業を容易に行うことができる。
【0014】
本発明の第5態様は、本発明の第1態様において、前記吸気マニホルドに装着され前記気体燃料を前記吸気系に噴射するインジェクタをさらに備え、前記逆火防止装置は、前記インジェクタと前記シリンダヘッドとの間に設けられたことを特徴とするガスエンジンである。
【0015】
本発明の第5態様によれば、逆火防止装置がインジェクタとシリンダヘッドとの間に設けられるため、吸気系に生ずる圧力損失を抑えつつ、燃焼室の火炎がシリンダヘッドの吸気ポートに残留する気体燃料に引火することをより確実に抑え、火炎が吸気系の上流に向かって逆流することをより一層確実に抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吸気系に生ずる圧力損失を抑えつつ、バックファイヤが発生した場合に火炎が吸気系に逆流することを抑えることができるガスエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るガスエンジンを表す斜視図である。
【
図2】本実施形態の吸気マニホルドを吸気本体の側から眺めた斜視図である。
【
図3】本実施形態の吸気マニホルドを吸気管の側から眺めた斜視図である。
【
図4】本実施形態の逆火防止装置の第1具体例を表す分解斜視図である。
【
図5】本実施形態の逆火防止装置の第2具体例を表す分解斜視図である。
【
図6】本実施形態の逆火防止装置の第3具体例を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るガスエンジンを表す斜視図である。
図2は、本実施形態の吸気マニホルドを吸気本体の側から眺めた斜視図である。
図3は、本実施形態の吸気マニホルドを吸気管の側から眺めた斜視図である。
【0020】
本実施形態に係るガスエンジン2は、例えば、水素ガス、天然ガス、LPG、バイオガスなどの気体燃料で作動する内燃機関すなわちガスエンジンである。
図1に表したガスエンジン2は、4気筒エンジンであり、例えば建設機械や農業機械のような産業機械に搭載される。なお、以下の説明では、説明の便宜上、水素ガスで作動するガスエンジンを例に挙げる。但し、本実施形態に係るガスエンジンは、水素ガスで作動するガスエンジンに限定されるわけではない。
【0021】
図1に表したように、ガスエンジン2は、シリンダブロック3と、シリンダヘッド4と、ヘッドカバー5と、オイルパン6と、吸気マニホルド8と、を備える。シリンダブロック3は、下部に形成されたクランクケース31と、上部に形成されたシリンダ(すなわち気筒:図示せず)と、を有する。前述したように、
図1に表したガスエンジン2は、4つの気筒を有する。シリンダヘッド4は、シリンダブロック3の上部に組み付けられている。ヘッドカバー5は、シリンダヘッド4の上部に組み付けられている。オイルパン6は、シリンダブロック3の下部(具体的にはクランクケース31の下部)に組み付けられている。
【0022】
ガスエンジン2は、スロットルバルブ91(例えば電子制御スロットルバルブ)と、燃料レール92と、を備える。また、
図3に表したように、ガスエンジン2は、インジェクタ7をさらに備える。
図1~
図3に表した矢印A1のように、吸気系に設けられたエアクリーナ(図示せず)を通して吸入された空気(すなわち吸気)がスロットルバルブ91に供給される。スロットルバルブ91は、吸気系に設けられ開閉することにより、吸気マニホルド8に供給する吸気量を制御する。また、
図1~
図3に表した矢印A2のように、気体燃料としての水素ガスがレギュレータから燃料レール92に供給される。燃料レール92に供給された水素ガスは、インジェクタ7に供給される。インジェクタ7は、吸気管82に装着され気体燃料としての水素ガスを吸気系すなわち吸気管82に噴射する。
【0023】
吸気マニホルド8は、吸気系におけるスロットルバルブ91の下流に設けられ、シリンダヘッド4の側方部に組み付けられている。
図2および
図3に表したように、吸気マニホルド8は、吸気本体81と、複数の吸気管82と、を有する。吸気本体81は、接続部材93を介してスロットルバルブ91に接続されており、スロットルバルブ91を通過した吸気を一時的に貯留した後、複数の吸気管82に吸気を導く。
図3に表したように、複数の吸気管82は、第1吸気管821と、第2吸気管822と、第3吸気管823と、第4吸気管824と、を含む。すなわち、本実施形態に係る吸気マニホルド8は、複数の吸気管82として、第1吸気管821と、第2吸気管822と、第3吸気管823と、第4吸気管824と、を有する。
【0024】
第1吸気管821は、シリンダヘッド4に形成された吸気ポート(図示せず)を介して、シリンダブロック3に形成された第1気筒(図示せず)に接続されている。
図3に表したように、本実施形態の第1吸気管821は、吸気マニホルド8とシリンダヘッド4との接続部の近傍において分岐している。そのため、
図3に表した矢印A11および矢印A12のように、吸気本体81から第1吸気管821に供給された吸気と、インジェクタ7により噴射された水素ガスと、が互いに混合した混合気は、2つの吸気ポートに導かれて第1気筒に供給される。つまり、
図1~
図3に表したガスエンジン2では、1つの気筒あたり2つの吸気バルブが設けられている。但し、本実施形態に係るガスエンジン2において、1つの気筒あたりの吸気バルブの設置数は、2つに限定されるわけではない。
【0025】
第2吸気管822は、シリンダヘッド4に形成された吸気ポート(図示せず)を介して、シリンダブロック3に形成された第2気筒(図示せず)に接続されている。
図3に表したように、本実施形態の第2吸気管822は、吸気マニホルド8とシリンダヘッド4との接続部の近傍において分岐している。そのため、
図3に表した矢印A13および矢印A14のように、吸気本体81から第2吸気管822に供給された吸気と、インジェクタ7により噴射された水素ガスと、が互いに混合した混合気は、2つの吸気ポートに導かれて第2気筒に供給される。
【0026】
第3吸気管823は、シリンダヘッド4に形成された吸気ポート(図示せず)を介して、シリンダブロック3に形成された第3気筒(図示せず)に接続されている。
図3に表したように、本実施形態の第3吸気管823は、吸気マニホルド8とシリンダヘッド4との接続部の近傍において分岐している。そのため、
図3に表した矢印A15および矢印A16のように、吸気本体81から第3吸気管823に供給された吸気と、インジェクタ7により噴射された水素ガスと、が互いに混合した混合気は、2つの吸気ポートに導かれて第3気筒に供給される。
【0027】
第4吸気管824は、シリンダヘッド4に形成された吸気ポート(図示せず)を介して、シリンダブロック3に形成された第4気筒(図示せず)に接続されている。
図3に表したように、本実施形態の第4吸気管824は、吸気マニホルド8とシリンダヘッド4との接続部の近傍において分岐している。そのため、
図3に表した矢印A17および矢印A18のように、吸気本体81から第4吸気管824に供給された吸気と、インジェクタ7により噴射された水素ガスと、が互いに混合した混合気は、2つの吸気ポートに導かれて第4気筒に供給される。
【0028】
このように、吸気マニホルド8は、気体燃料としての水素ガスと吸気とを含む混合気をシリンダブロック3の気筒に向かって導く。具体的には、吸気マニホルド8は、水素ガスと吸気とを含む混合気をシリンダヘッド4の吸気ポートに導く。そして、シリンダヘッド4は、吸気マニホルド8から供給された混合気を吸気ポートを通してシリンダブロック3の気筒に導く。
【0029】
ここで、気体燃料(特に水素ガス)で作動するエンジンでは、気体燃料と吸気との混合気がガスエンジンの始動時や稼働中にガスエンジンの燃焼室の付近で異常な燃焼(バックファイヤ)を起こすことがある。バックファイヤが発生した場合、火炎が吸気系に逆流するおそれがある。例えば、シリンダヘッドの吸気ポートに残留する気体燃料に引火して発生した火炎が、吸気系の上流に向かって逆流するおそれがある。そこで、火炎の逆流を抑える逆火防止装置を設置することが一策として挙げられる。しかし、逆火防止装置の設置位置によっては、ガスエンジンの吸気系において圧力損失が生ずるおそれがある。
【0030】
これに対して、本実施形態の逆火防止装置は、吸気系におけるスロットルバルブ91の下流に設けられ、シリンダヘッド4の吸気ポートに残留する水素ガスに引火して発生した火炎が吸気系の上流に向かって逆流することを抑える。以下、本実施形態の逆火防止装置の詳細を、図面を参照して説明する。
【0031】
図4は、本実施形態の逆火防止装置の第1具体例を表す分解斜視図である。
なお、説明の便宜上、
図4では、接続部材93を吸気マニホルド8から分解して表している。
【0032】
図4に表したように、本具体例において、ガスエンジン2は、逆火防止装置83を備える。本具体例の逆火防止装置83は、例えば波板型(クリンプリボン式)のフレームアレスタであり、スロットルバルブ91と吸気本体81との間に設けられている。具体的には、
図4に表したように、1つの逆火防止装置83が、吸気本体81の上流部(すなわち入口部)に設置され、吸気本体81の上流部と接続部材93とに挟まれた状態で固定されている。
【0033】
本具体例の場合には、吸気系のうちで流路面積が比較的広い箇所に、比較的大きいサイズの1つの逆火防止装置83を設置することが可能である。そのため、吸気系に生ずる圧力損失を十分に抑えつつ、バックファイヤが発生した場合に火炎が吸気系に逆流することを抑えることができる。また、後述する第2具体例および第3具体例の場合と比較して、逆火防止装置83による圧力損失が小さい。さらに、逆火防止装置83の設置数は1つで済むため、後述する第2具体例および第3具体例の場合と比較して、逆火防止装置83の近傍の構造を簡易化することができる。
【0034】
図5は、本実施形態の逆火防止装置の第2具体例を表す分解斜視図である。
なお、説明の便宜上、
図5では、吸気本体81を複数の吸気管82から分解して表している。
【0035】
図5に表したように、本具体例において、ガスエンジン2は、逆火防止装置83Aを備える。本具体例の逆火防止装置83Aは、例えば波板型(クリンプリボン式)のフレームアレスタであり、吸気本体81とインジェクタ7(
図3参照)との間に設けられている。具体的には、
図5に表したように、4つの逆火防止装置83Aが、複数の吸気管82の上流部(すなわち入口部)に設置され、吸気本体81の下流部と複数の吸気管82の上流部とに挟まれた状態で固定されている。
【0036】
本具体例の場合には、逆火防止装置83Aが吸気本体81とインジェクタ7との間(具体的には複数の吸気管82の上流部)に設けられるため、吸気系に生ずる圧力損失を抑えつつ、シリンダヘッド4の吸気ポートに残留する水素ガスに引火して発生した火炎が吸気系の上流に向かって逆流することをより確実に抑えることができる。また、前述した第1具体例の場合と比較して、火炎の逆流範囲を狭めることができ、より高い安全性を確保することができる。
【0037】
また、
図5に表したように、吸気本体81は、複数の吸気管82とは別体として設けられ、ボルトなどの締結部材85により複数の吸気管82と締結されている。吸気本体81は、締結部材85を外すことにより、複数の吸気管82から取り外し可能とされている。そのため、作業者等は、吸気本体81を複数の吸気管82から取り外すことで、吸気本体81とインジェクタ7との間に逆火防止装置83Aを取り付ける作業、および吸気本体81とインジェクタ7との間から逆火防止装置83Aを取り外す作業を容易に行うことができる。
【0038】
図6は、本実施形態の逆火防止装置の第3具体例を表す斜視図である。
図6に表したように、本具体例において、ガスエンジン2は、逆火防止装置83Bを備える。本具体例の逆火防止装置83Bは、例えば波板型(クリンプリボン式)のフレームアレスタであり、逆火防止装置83Bは、インジェクタ7とシリンダヘッド4との間に設けられている。具体的には、
図6に表したように、8つの逆火防止装置83Bが、複数の吸気管82の下流部(すなわち出口部)に設置されている。逆火防止装置83Bは、複数の吸気管82の下流部とシリンダヘッド4とに挟まれた状態で固定されていてもよい。
【0039】
本具体例の場合、逆火防止装置83Bがインジェクタ7とシリンダヘッド4との間(具体的には複数の吸気管82の下流部)に設けられるため、吸気系に生ずる圧力損失を抑えつつ、燃焼室の火炎がシリンダヘッド4の吸気ポートに残留する水素ガスに引火することをより確実に抑え、火炎が吸気系の上流に向かって逆流することをより一層確実に抑えることができる。また、前述した第1具体例および第2具体例の場合と比較して、より高い安全性を確保することができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0041】
2:ガスエンジン、 3:シリンダブロック、 4:シリンダヘッド、 5:ヘッドカバー、 6:オイルパン、 7:インジェクタ、 8:吸気マニホルド、 31:クランクケース、 81:吸気本体、 82:吸気管、 83:逆火防止装置、 83A:逆火防止装置、 83B:逆火防止装置、 85:締結部材、 91:スロットルバルブ、 92:燃料レール、 93:接続部材、 821:第1吸気管、 822:第2吸気管、 823:第3吸気管、 824:第4吸気管