(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039153
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】生分解性ポリオレフィンシート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240314BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20240314BHJP
B32B 19/02 20060101ALI20240314BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20240314BHJP
【FI】
B32B27/32
B32B27/12
B32B19/02
C09J7/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143488
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】722010895
【氏名又は名称】株式会社サナ流通
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆盛
(72)【発明者】
【氏名】梅村 俊和
(72)【発明者】
【氏名】圓井 良
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
4F100AB01
4F100AB01A
4F100AB01C
4F100AJ01
4F100AJ01B
4F100AJ04
4F100AJ04D
4F100AJ04E
4F100AJ07
4F100AJ07D
4F100AJ07E
4F100AK04
4F100AK04A
4F100AK04C
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100AK21
4F100AK21D
4F100AK21E
4F100AK41
4F100AK41D
4F100AK41E
4F100AK64
4F100AK64A
4F100AK64C
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100CB00
4F100CB00D
4F100CB00E
4F100DG01
4F100DG01B
4F100DG11
4F100DG11B
4F100EH17
4F100EJ17
4F100EJ19
4F100EJ42
4F100EJ86
4F100GB15
4F100JB09
4F100JB09D
4F100JB09E
4F100JC00
4F100JC00B
4F100JK02
4F100JK08
4F100JL11
4F100JL11D
4F100JL11E
4J004AA04
4J004AA08
4J004AA14
4J004AA15
4J004BA02
4J004FA06
(57)【要約】
【課題】精密機器・食品・医薬・化粧品などの輸送、長期保存用に青色に着色したポリエチレンのシート、所謂ブルーシートが広く用いられている。この包装材に生分解性を持たせ廃棄された場合にも自然分解する事により環境を保全する。建設用資材、輸送用梱包、土木、住宅などに多く用いられるブルーシートが使用後に廃棄されることで、自然環境に対して好ましくないという問題が提起されている。特にこのブルーシートが輸出梱包資材として海外に輸出された場合、使用後に野山に廃棄される事が多く環境破壊の原因となっている。
【解決手段】梱包に用いたブルーシートを土中に埋設することにより自然に分解する生分解性シートを作成する。この為には使用するポリエチレンに生分解性を持たせ強度を保つために天然繊維の布を挟みこんで一体化する。ポリエチレンフィルムと天然繊維の接着性を維持するため、生分解性または水溶性の接着層を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン、ポリプロピレンあるいはエチレン-プロピレン共重合体よりなるポリオレフィンの2枚のフィルムで天然繊維の布を挟んだ構造のシートであり、そのポリオレフィンのフィルムが遷移金属化合物及び/または希土類金属化合物を含有することを特徴とするシート。
【請求項2】
遷移金属化合物及び/または希土類金属化合物を含有するポリエチレン、ポリプロピレンあるいはエチレン-プロピレン共重合体よりなるポリオレフィンの2枚のフィルムで天然繊維の布を挟んだ構造のシートであり、そのポリオレフィンのフィルムと天然繊維の布の間に接着用フィルムが存在する構造である請求項1のシート。
【請求項3】
接着用フィルムが澱粉系、酢酸セルロース系、ポリカプロラクトン系、澱粉/脂肪族ポリエステル系、乳酸骨格・カプロラクトン骨格を有するポリオールとポリウレタン結合体、セルロース/キトサン/澱粉混合体の生分解性接着剤の1種あるいは複数の接着剤からなる請求項1のシート。
【請求項4】
接着用フィルムが水溶性のポリビニルアルコールフィルムからなる請求項1のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密機器・食品・医薬・化粧品などの輸送、長期保存用包装材料に適し、かつ使用後に廃棄された場合に生分解性を有する包装材料を提供する事にある。
【背景技術】
【0002】
一般的にブルーシートと呼ばれているシートはポリエチレン樹脂フィルムの積層体、またはポリエチレン製のヤーン(紐)をポリエチレンフィルムで挟み積層した構造をしている。厚みは用途によって別れるが0.1mmから0.3mm程度で幅と長さは用途によって多くの種類があり、枚葉またはロール状で販売されている。また用途により、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体のフィルムなど、所謂ポリオレフィンフィルムが使用されている。
【0003】
その用途は建設用資材、輸送用梱包、土木、住宅などに多く使われ、ブルーシートの名称で広く一般的に用いられる素材である。
【0004】
ところが、このブルーシートが廃棄されることで、自然環境に対して好ましくないという問題が提起されている。特にこのブルーシートが輸出梱包資材として海外に輸出された場合、使用後に野山に廃棄される事が多く環境破壊の原因となっている。
【0005】
この問題を解決する為に、梱包に用いたブルーシートを土中に埋設することにより自然に分解する生分解性シートを作成することが本発明の目的である。但し、汎用的に使われる製品であることから、その価格、強度、耐久性は従来品とほぼ等しく、土中埋設時に始めて生分解が始まる性質が求められている。
【0006】
生分解性樹脂のシート、フィルムについては従来から生分解性樹脂を用いる方法について数点の特許が見られる。特開平6-65835にはポリ乳酸または乳酸とヒドロキシカルボン酸のコポリマーを主成分とする熱可塑性ポリマー組成物から製造する産業用資材、及びそれより加工されたフレキシブルコンテナ、遮水シートが提案されている。しかし、ここに開示されている素材は従来使われているポリエチレン系素材に比べ価格が5から10倍となるために汎用的な用途では採用されない。また生分解性シートの強度、特に突出物に対する強度が極めて低く、輸出梱包では信頼性の低さから実用化された例はない。
【0007】
特開平15-205950には生分解性プラスチックに無洗米製造工程で得られる糠もしくは肌糠を特定の割合で含有させたプラスチック製包装袋が提案されている。これは一般的に高価な生分解性プラスチックを廃棄物である糠で希釈するという提案であるが、包装材料としての強度に問題があり実用化が困難である。
【0008】
特開平17年-232645にはポリ乳酸繊維およびその製造方法、並びにポリ乳酸繊維からなる産業資材用繊維構造体が提案されている。この特許では生分解性と共に軽量性や保温性、更には耐久性や強度、耐摩耗性等を著しく改善した繊維を与えるとしているが、中空率を11~70%とする為に溶融紡糸で特殊な加熱筒を用いる必要があり、あまつさえ高価な生分解性樹脂を用いる必要があることから実用化は困難である。
【0009】
特表平25年-542292にはA)生分解性の脂肪族-芳香族ポリエステル30~50質量%、B)ポリ乳酸50~70質量%、C)相溶化剤0~2質量%含有するスリットフィルムを製造する為のポリマー混合物が提案されている。
これらは結束紐、筒織の袋、平織物、フレキシブルコンテナなどに使用されるとされている。この提案によるA)B)C)のポリマー混合物は従来から知られている化合物であり新規性はなく、また強度や経済性において劣っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6-65835号公報
【特許文献2】特開平15-205950号公報
【特許文献3】特開平17-232645号公報
【特許文献4】特表平25-542292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、精密機器・食品・医薬・化粧品などの輸送、長期保存用包装材料に適し、かつ使用後に廃棄された場合に生分解性を有するか、あるいは生分解性は持たないが水溶性の接着剤を用いることによって残存固形物がない包装材料を提供する事にあって、かつ従来用いられている汎用樹脂包装材料に近いコストと強度などの信頼性を達成するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の上記目的は下記の発明によって達成される。
(1)ポリエチレン、ポリプロピレンあるいはエチレン-プロピレン共重合体であるポリオレフィンの2枚のフィルムで天然繊維の織布、または不織布を挟んだ構造のシートであり、そのポリオレフィンフィルムが遷移金属化合物及び/または希土類金属化合物を含有することを特徴とするシート。
(2)遷移金属化合物及び/または希土類金属化合物を含有するポリエチレン、ポリプロピレンあるいはエチレン-プロピレン共重合体よりなるポリオレフィンの2枚のフィルムで天然繊維の布を挟んだ構造のシートであり、そのポリオレフィンのフィルムと天然繊維の布の間に接着用フィルムが存在する構造のシート。
(3)接着用フィルムが澱粉系、酢酸セルロース系、ポリカプロラクトン系、澱粉/脂肪族ポリエステル系、乳酸骨格・カプロラクトン骨格を有するポリオールとポリウレタン結合体、セルロース/キトサン/澱粉混合体の生分解性接着剤の1種あるいは複数の接着剤からなるシート。
(4)接着用フィルムが水溶性のポリビニルアルコールフィルムからなるシート。
【0013】
本発明により、生分解性があり強度は従来用いられているブルーシートと同様のポリオレフィン積層シートを提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のポリオレフィン積層体は、少なくとも2枚のポリオレフィンフィルムで天然繊維布を挟んだ構造を持ち、そのポリオレフィンフィルムは生分解性を促進させる遷移金属化合物および/または希土類金属化合物を含有する。
【0015】
この生分解性を有するポリオレフィンフィルム2層の間には少なくとも1層の天然繊維の布を挟み、これを熱圧縮して接着した3層の構造を基本とする。
天然繊維の布とポリオレフィンフィルムを強固に接着させるためには、ポリオレフィンフィルムと天然繊維の布を接着させる為の接着剤を使用することが望ましいが、この接着剤も生分解性であるか水溶性であることが必要である。
【0016】
この生分解性接着剤としては澱粉系、酢酸セルロース系、ポリカプロラクトン系、澱粉/脂肪族ポリエステル系、乳酸骨格・カプロラクトン骨格を有するポリオールとポリウレタン結合体、セルロース/キトサン/澱粉混合体が用いられる。これらの生分解性接着剤をフィルム状にしてポリオレフィンフィルムと天然繊維の布に挟んで熱と圧力をかけてポリオレフィンフィルムと天然繊維を接合する事が出来る。あるいは前もって、ポリオレフィンフィルムの片面に接着剤フィルムを熱融着させておき、この接着層を有する2枚のポリオレフィンフィルムで天然繊維布を挟み、熱と圧力をかけて一体化してシートを作る事が出来る。
【0017】
あるいはマイクロプラスチックを発生させない接着層として水溶性を有するポリビニルアルコールを用いることが出来る。このものには生分解性はないが、使用後に淡水、海水、地下水に溶解してマイクロプラスチックを発生させる事がない。具体的な使用法としては遷移金属化合物及び/または希土類金属化合物を含有するポリオレフィンフィルムと天然繊維の織布、または不織布の間にポリビニルアルコールフィルムを挟み、全体を熱圧縮して溶着させて包装材料を形成する。ポリビニルアルコールの極めて高い酸素バリヤー性は食品、医薬品、精密機械など酸素の影響を嫌う製品の包装に用いることが好ましい。
【0018】
本発明には各種の天然繊維および布を用いることが出来る。それに用いる繊維の種類、繊度は目的によって選ぶことが出来るが、一般的には、ジュート、麻、リネン、木綿、絹の繊維が用いられ、繊度は10 DTexから1500 DTexが用いられる。繊維は染料や紡糸用のオイルが塗布されているものも使用可能であるが、本発明の主旨から、水に不溶な化合物の使用は避けるべきである。
【0019】
本発明のポリオレフィンフィルムが含有する遷移金属化合物および/または希土類金属化合物としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブテン、テクネチウム、ルテニウム、パラジウム、銀、カドミウム等が挙げられ、希土類金属としては例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、テルビウ、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等が挙げられる。中でも遷移金属としてマンガン、希土類金属としてセリウムを併用することで、良好な分解性を得ることができ、好ましい。またこれらの金属の化合物としては脂肪酸金属塩や金属錯体の形で用いることができ、特に脂肪酸金属塩の形で用いることが樹脂と均一に混合できる点でより好ましい。脂肪酸金属塩の脂肪酸としては、例えば炭素数が12個以上の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸である、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸等が挙げられる。これら遷移金属化合物および/または希土類金属化合物の含有量は樹脂層全体の固形分量に対して0.01~3質量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.05~1質量%である。遷移金属化合物および/または希土類金属化合物の含有量が0.01質量%未満の場合、分解性が低下する場合があり、3質量%を超える場合、樹脂層から析出する場合がある。
【0020】
遷移金属化合物および希土類金属化合物の市販品としては、ノボン・ジャパン(株)製デグラノボン(登録商標)やピーライフ・ジャパン・インク(株)製のP-Life(登録商標)、(株)ウエストワンのサイクルプラス(登録商標)バイオスヘア・プラスチック(株)製プラバイオ(登録商標)などが挙げられる。
【0021】
一般的に丈夫なブルーシートはインフレーションブロー法あるいは押出法でポリオレフィンフィルムを製造し、このフィルムを細かく切ってフラットヤーンを作り、このヤーンを延伸することによって強度を出し、これを織物にして1枚のシートを製造する。生分解促進剤は、原料のポリオレフィンに所定量を混合しておくことが好ましい。また原料ポリオレフィンに着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、撥水剤、抗菌剤などを添加しておく事も出来る。このような添加剤についてもマイクロプラスチックとならない物質を選定することが必要とされる。
【0022】
特に着色顔料については、天然鉱物系の無機顔料が好ましい。また日光の暴露からシートの耐光性を向上させるために酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、マイカ、カーボンブラック、弁柄、ラピスラズリなどを用いることも有効である。
【0023】
ポリオレフィンフィルムと天然繊維布を強固に接着する為に用いる接着剤のフィルムは澱粉系、酢酸セルロース系、ポリカプロラクトン系、澱粉/脂肪族ポリエステル系、乳酸骨格・カプロラクトン骨格を有するポリオールとポリウレタン結合体、セルロース/キトサン/澱粉混合体を溶融押出しによりフィルム状にしておく、あるいは水、有機溶媒に溶解させて金属板に塗布し、水あるいは有機溶媒を蒸発させてフィルムを作る事ができる。市販されている生分解性の接着剤としては、例えば三井化学(株)アドマーEF BE518、トーヨーケム(株)生分解性乳酸骨格・カプロラクトン骨格を有するポリオール EXK20-143、トーヨーモートン(株)ポリ乳酸系接着剤 EA-2800を用いる事が出来る。
【0024】
ポリビニルアルコールフィルムは生分解性ではないが、水溶性でマイクロプラスチックを発生させることはない。ポリビニルアルコールを溶融してフィルムを作成するか、ないしは生分解性を有するポリオレフィンフィルムに溶融押出しによって融着させておいて、このフィルム2枚で天然繊維の布を貼り合わせてマイクロプラスチックを発生させない生分解性ブルーシートを製造する事が出来る。
【実施例0025】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、無論この記述により本発明が限定されるものではない。
【0026】
<生分解性ポリエチレンフィルム(1)>
日本ポリエチレン製ノバテックLD LF405 95Kgにピーライフ・ジャパン・インク(株)製生分解マスターバッチP-Lifeグリーン20を5Kg加え、これをタンブラーでブレンドして、軸径30mmの単軸押出機に投入し樹脂温度200℃で溶融し、ダイ幅40cm、リップ間隔0.15mmのTダイを持つフィルム成形機にて押し出し、厚み100μmのフィルムを成形した。このフィルムを切断して40cm角のフィルムとした。生分解促進剤の濃度は1%であった。
【0027】
<生分解性ポリエチレン-プロピレンフィルム(2)>
司化成工業製ダイヤフラット(ホワイト)98Kgにバイオスヘア・プラスチック(株)製プラバイオNo.201を2Kg加え、これをタンブラーでブレンドして、軸径30mmの単軸押出機に投入し樹脂温度220℃で溶融し、ダイ幅40cm、リップ間隔0.15mmのTダイを持つフィルム成形機にて押し出し、厚み100μmのフィルムを成形した。このフィルムを切断して40cm角のフィルムとした。生分解促進剤の濃度は2%であった。
【0028】
<天然繊維織布の作成>
市販の麻、木綿の繊維を簡易織機SAORICH60(堺精機産業株式会社製)により、たて糸240本、よこ糸160本を用いて40Cm各の布地を作成した。同じくジュートの繊維はたて糸160本、よこ糸140本を用いて40cm角の布地を作成した。
【0029】
<接着性フィルム1の作成>
クラレ株式会社製ポバールクラリアの粉末を軸径30mmの単軸押出機に投入し樹脂温度180℃で溶融し、直径13cmのリング状の円形ダイスより押出し、円筒内部に圧縮空気を送り、フィルム厚み30μmの円筒を製作した。
これを切り開いて幅約40cmのフィルムとした。
【0030】
<接着性フィルム2の作成>
三井化学製アドマーEF BE518を軸径30mmの単軸押出機に投入し樹脂温度190℃で溶融し、直径13cmのリング状の円形ダイスより押し出しながら円筒内部に圧縮空気を送り、厚み30μmの円筒を製作した。これを切り開いて幅約40cmのフィルムとした。
【0031】
<接着性フィルム3の作成>
生分解促進剤を添加したポリオレフィンフィルムにトーヨーケム製生分解性ウレタン接着剤 EKK20-143を酢酸エチルに溶解して50%の溶液とし、Tダイより押し出してポリオレフィンフィルムに塗布し、50℃10分間乾燥して厚み20μmの塗膜となるように調整した。
【0032】
<接着性フィルム4の作成>
生分解促進剤を添加したポリオレフィンフィルムに三菱ケミカル製ゴーセーノールN-300を50℃の温水に溶解して50%の溶液とし、Tダイより押し出してポリオレフィンフィルムに塗布し、50℃10分間乾燥後して厚み20μmの塗膜となるように調整した。
【0033】
<接着性フィルム5の作成>
生分解促進剤を添加したポリオレフィンフィルムにトーヨーモートン製ポリ乳酸系生分解性接着剤EA-H4770を50℃の温水に溶解して50%の溶液とし、Tダイより押し出してポリオレフィンフィルムに塗布し、50℃10分間乾燥後して厚み20μmの塗膜となるように調整した。
【0034】
<天然繊維布と生分解性フィルムの積層シートの作成1>
大きさが縦横40cmの天然繊維の布を、同じ大きさの厚さ100μmの2枚の生分解性ポリエチレンフィルム、または生分解性ポリエチレン-プロピレンフィルムと重ね、この時、天然繊維と生分解性ポリエチレンフィルム、または生分解性ポリエチレン-プロピレンフィルムの間に、接着性フィルム1あるいは、接着性フィルム2を挿入して全体を卓上型ラミネーターで熱融着した。
この時のラミネーターの4本の加圧ロールのプリヒートロールは140℃に、ラミネートロールは120℃に加熱した。
【0035】
<天然繊維布と生分解性フィルムの積層シートの作成2>
大きさが縦横40cmの天然繊維の布を、同じ大きさの厚さ40μmの2枚の接着性フィルム3、あるいは接着性フィルム4、あるいは接着性フィルム5のフィルムで挟み、卓上型ラミネーターで熱融着した。この時のラミネーターの4本の加圧ロールのプリヒートロールは140℃に、ラミネートロールは120℃に加熱した。
【0036】
<積層フィルムの引張強度の測定>
JISZ1707によりフィルムの引張強度と伸度を測定した。引張強度の単位はN/15mm幅、伸度は%である。
【0037】
<コンポスト試験>
825μm(30メッシュ)の篩を通過し、かつ425μm(20メッシュ)の篩を通過しなかった海砂を105℃で3時間乾燥させた。得られた海砂320g、105℃で3時間乾燥させた牛糞堆肥60g、および純水166gを混合し、コンポストを作製した。得られたコンポストに幅15mm、長さ10cmの積層フィルム1または2を埋設し、58℃100%RHの雰囲気下で保管した。20週間後、40週間後に取り出して穴が開くなどの分解の進行を調べた。フィルム形状が無くなり分解が大きく進行している場合を○、黄変あるいは褐色になり、一部の分解の進行は認められるものの全体の形状を保っている場合を△、穴が開くなどの分解の進行も黄変も観察されない場合を×とした。
【0038】
【表1】
表―1に本発明の実施例を示した。実施例によれば生分解促進剤を添加したポリオレフィンのフィルムで天然繊維の布を挟み、その間に生分解性接着フィルムを挟んで熱融着させて製造したシートは包装材料としての強度と生分解性を有する事が分かる。
【0039】
【表2】
表―2の比較例によれば、生分解剤を添加しないポリオレフィンフィルムを用いた場合はコンポスト試験で生分解性を示さない。また生分解剤を添加したポリオレフィンフィルムを用いても間に天然繊維を用いていないブルーシートの場合は強度が不足して実用性に問題がある。