(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039169
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】接触検出装置、接触検出方法及び回転機械の改修方法
(51)【国際特許分類】
F01D 25/00 20060101AFI20240314BHJP
G01B 21/16 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
F01D25/00 U
G01B21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143511
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 理
(72)【発明者】
【氏名】武田 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】池本 拓真
(72)【発明者】
【氏名】植田 元春
【テーマコード(参考)】
2F069
【Fターム(参考)】
2F069AA98
2F069BB40
2F069DD30
2F069GG04
2F069GG16
2F069HH30
2F069JJ17
2F069QQ05
2F069QQ08
(57)【要約】
【課題】回転体との接触を精度よく検出することが可能な接触検出装置、接触検出方法及び回転機械の改修方法を提供する。
【解決手段】接触検出装置は、静止体及び当該静止体に対して回転する回転体を有し静止体と回転体との間にガスパスが形成された回転機械について、静止体と回転体の接触を検出する接触検出装置であって、静止体に回転体と間隔を空けて設けられ、回転体と接触する場合の摩擦により変化する第1温度及びガスパスの第2温度の両方を一つの測定位置で測定可能な温度測定部と、測定又は推定により測定位置における第2温度を温度測定部とは別個に取得する取得部と、温度測定部の測定結果から取得部で取得された第2温度を差し引いた差分値を第1温度として抽出する処理部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止体及び当該静止体に対して回転する回転体を有し前記静止体と前記回転体との間にガスパスが形成された回転機械について、前記静止体と前記回転体の接触を検出する接触検出装置であって、
前記静止体に前記回転体と間隔を空けて設けられ、前記回転体と接触する場合の摩擦により変化する第1温度及び前記ガスパスの第2温度の両方を一つの測定位置で測定可能な温度測定部と、
測定又は推定により前記測定位置における前記第2温度を前記温度測定部とは別個に取得する取得部と、
前記温度測定部の測定結果から前記取得部で取得された前記第2温度を差し引いた差分値を前記第1温度として抽出する処理部と
を備える接触検出装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記測定位置における前記第2温度を前記温度測定部とは別個に測定することで前記第2温度を取得する
請求項1に記載の接触検出装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記温度測定部の測定結果を示す電気信号にフィルタを適用して前記第2温度を示す電気信号を推定することで前記第2温度を取得する
請求項1に記載の接触検出装置。
【請求項4】
前記処理部で抽出された前記差分値を出力する出力部を更に備える
請求項1に記載の接触検出装置。
【請求項5】
前記処理部は、抽出した前記差分値に基づいて前記回転体と前記温度測定部との接触の有無を判定する
請求項1に記載の接触検出装置。
【請求項6】
前記処理部における接触の有無の判定結果を報知する報知部を更に備える
請求項5に記載の接触検出装置。
【請求項7】
前記処理部は、抽出した前記差分値に基づいて前記回転体と前記温度測定部との接触の有無を判定し、判定結果を前記出力部に出力する
請求項4に記載の接触検出装置。
【請求項8】
前記処理部は、抽出した前記差分値の実効値又は歪度に基づいて前記回転体と前記温度測定部との接触の有無を判定する
請求項5に記載の接触検出装置。
【請求項9】
静止体及び当該静止体に対して回転する回転体を有し前記静止体と前記回転体との間にガスパスが形成された回転機械について、前記静止体と前記回転体の接触を検出する接触検出方法であって、
前記静止体に前記回転体と間隔を空けて設けられる温度測定部により、前記回転体と接触する場合の摩擦により変化する第1温度及び前記ガスパスの第2温度の両方を一つの測定位置で測定する測定ステップと、
測定又は推定により前記測定位置における前記第2温度を前記温度測定部とは別個に取得する取得ステップと、
前記測定ステップの測定結果から前記取得ステップで取得された前記第2温度を差し引いた差分値を前記第1温度として抽出する抽出ステップと
を含む接触検出方法。
【請求項10】
静止体及び当該静止体に対して回転する回転体を有し前記静止体と前記回転体との間にガスパスが形成された回転機械の前記静止体に、所定の設置部を形成するステップと、
前記回転体と接触する場合の摩擦により変化する第1温度及び前記ガスパスの第2温度の両方を一つの測定位置で測定する温度測定部を前記設置部に前記回転体と間隔を空けて取り付けるステップと
を含む回転機械の改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接触検出装置、接触検出方法及び回転機械の改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状のケーシング内を回転する複数の動翼を備えたロータにより作動流体を圧縮する圧縮機などの回転機械が知られている。この種の回転機械では、動翼との間の接触の有無を検出する接触検出装置をケーシングに設けることで、動翼とケーシングとのクリアランスの値の変化を検出することが行われている。例えば、特許文献1には、蒸気タービンの車室の内周面に複数の温度センサを周方向に配置し、その中の1つの検出値が他の温度センサの検出値よりも高い場合に、摩擦により変化する温度上昇が発生したとして、温度センサが回転体に接触したと判定する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、車室と回転体との間を水蒸気等の流体が通過する際、温度センサで計測されるノイズが大きくなるため、接触に伴う温度変化を検出することが困難となる可能性がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、回転体との接触を精度よく検出することが可能な接触検出装置、接触検出方法及び回転機械の改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る接触検出装置は、静止体及び当該静止体に対して回転する回転体を有し前記静止体と前記回転体との間にガスパスが形成された回転機械について、前記静止体と前記回転体の接触を検出する接触検出装置であって、前記静止体に前記回転体と間隔を空けて設けられ、前記回転体と接触する場合の摩擦により変化する第1温度及び前記ガスパスの第2温度の両方を一つの測定位置で測定可能な温度測定部と、測定又は推定により前記測定位置における前記第2温度を前記温度測定部とは別個に取得する取得部と、前記温度測定部の測定結果から前記取得部で取得された前記第2温度を差し引いた差分値を前記第1温度として抽出する処理部とを備える。
【0007】
本開示に係る接触検出方法は、静止体及び当該静止体に対して回転する回転体を有し前記静止体と前記回転体との間にガスパスが形成された回転機械について、前記静止体と前記回転体の接触を検出する接触検出方法であって、前記静止体に前記回転体と間隔を空けて設けられる温度測定部により、前記回転体と接触する場合の摩擦により変化する第1温度及び前記ガスパスの第2温度の両方を一つの測定位置で測定する測定ステップと、測定又は推定により前記測定位置における前記第2温度を前記温度測定部とは別個に取得する取得ステップと、前記測定ステップの測定結果から前記取得ステップで取得された前記第2温度を差し引いた差分値を前記第1温度として抽出する抽出ステップとを含む。
【0008】
本開示に係る回転機械の改修方法は、静止体及び当該静止体に対して回転する回転体を有し前記静止体と前記回転体との間にガスパスが形成された回転機械の前記静止体に、所定の設置部を形成するステップと、前記回転体と接触する場合の摩擦により変化する第1温度及び前記ガスパスの第2温度の両方を一つの測定位置で測定する温度測定部を前記設置部に前記回転体と間隔を空けて取り付けるステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、回転体との接触を精度よく検出することが可能な接触検出装置、接触検出方法及び回転機械の改修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る接触検出装置100の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る接触検出装置100の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、差分値の実効値の時間変化の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、熱電対に対して動翼が接触する前後における差分値の頻度分布の例を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る接触検出方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る回転機械の回収方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る接触検出装置及び回転機械の改修方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
図1は、本実施形態に係る接触検出装置100の一例を示す模式図である。
図1に示す接触検出装置100は、回転機械の静止体に配置され、回転体との間の接触の有無を計測する。ここで、回転機械は、静止体及び当該静止体に対して回転する回転体を有し、静止体と回転体との間にガスパスが形成された構成である。本実施形態では、このような回転機械として、ガスタービンの軸流圧縮機50を例に挙げて説明する。軸流圧縮機50は、静止体としてケーシング51を有し、回転体としてロータ52R及び動翼52を有する。ロータ52Rは、回転軸AXを中心として回転する。動翼52は、ロータ52Rに装着される。動翼52は、ロータ52Rと一体で回転する。ケーシング51と動翼52との間には、ガスパス53が形成される。
【0013】
軸流圧縮機50において、動翼52及びケーシング51は、温度が上昇すると熱膨張が発生し、動翼52とケーシング51との間のクリアランスが変化する。ガスタービンの運転中には、クリアランスを適切な値に制御することが求められる。接触検出装置100は、動翼52との接触の有無を計測することにより、動翼52とケーシング51との間のクリアランスの変化を適切に検出できる。接触検出装置100は、例えば軸流圧縮機50のテスト運転時に使用することが可能である。
【0014】
接触検出装置100は、温度測定部10と、取得部20と、処理部30と、表示部(出力部、報知部)40とを備える。
【0015】
温度測定部10は、軸流圧縮機50のケーシング51の設置部55に設けられる。設置部55は、軸流圧縮機50の製造時に形成されてもよいし、既存の軸流圧縮機50のケーシング51に改修等の後工程で付設されてもよい。温度測定部10は、動翼52との間に所定の間隔を空けて設けられる。温度測定部10は、回転する動翼52と接触する場合の摩擦により変化する第1温度と、動翼52とケーシング51との間のガスパス53の温度である第2温度との両方を1つの測定位置54で測定する。動翼52とケーシング51との間の空間には、圧縮空気が流通する。温度測定部10では、圧縮空気の流通によるガスパス53の温度変化を第2温度として計測することができる。
【0016】
温度測定部10は、例えば1つ以上の熱電対11を有する。熱電対11は、測定用端部11aが動翼52側に位置するように配置される。2つ以上の熱電対11が設けられる場合、測定用端部11aの位置が動翼52から段階的に離れるように熱電対11を配置することができる。温度測定部10は、例えば熱電対11等による測定結果を電気信号に変換して処理部30に出力する。
【0017】
取得部20は、測定又は推定により第2温度を取得する。取得部20は、例えば、温度測定部10と同一の測定位置における第2温度を温度測定部10とは別個に測定することで、第2温度を取得することができる。この場合、取得部20は、例えば1つ以上の熱電対21を有する。熱電対21は、例えば温度測定部10と同一の測定位置で第2温度を取得可能となるように、熱電対11と近接して配置される。熱電対21は、測定結果を電気信号に変換して処理部30に出力する。なお、熱電対11及び熱電対21は、熱電対11の測定用端部11aの方が熱電対21の測定用端部21aよりも動翼52側に突出するように配置される。
【0018】
なお、取得部20は、例えば、温度測定部10の測定結果を示す電気信号にフィルタ22を適用して第2温度を推定することで、第2温度を取得してもよい。この場合、フィルタとしては、例えばメディアンフィルタ、平均化フィルタ、平滑化フィルタ等を適用することができる。取得部20は、これらのフィルタを適用することにより、温度測定部10の測定結果を示す電気信号から第1温度を示す電気信号を除去して、第2温度を示す電気信号を推定することができる。取得部20は、推定した第2温度の電気信号を処理部30に出力する。
【0019】
処理部30は、温度測定部10の測定結果から取得部20で取得された第2温度を差し引いた差分値を第1温度として抽出する。処理部30は、温度測定部10の測定結果を示す電気信号から第2温度を示す電気信号を除去することで、第1温度を示す電気信号を抽出することができる。
【0020】
処理部30は、抽出した差分値(第1温度)の電気信号を表示部40に出力する。表示部40は、処理部30からの信号に基づいて、差分値を表示する。なお、処理部30が温度測定部10の測定結果及び取得部20で取得された第2温度を表示部40に出力することにより、表示部40では、これらの値を表示することができる。
【0021】
図2は、温度測定部10の測定結果、取得部20で取得された第2温度、処理部30で抽出された差分を表示部40に表示する場合の例を示す図である。
図2において、グラフG1は、軸流圧縮機50が過渡状態である場合における温度測定部10の測定結果L10及び取得部20で取得された取得結果L20を示している。グラフG2は、グラフG1における測定結果L10から取得部20の取得結果L20を差し引いた差分値L30を示している。
【0022】
グラフG1に示すように、温度測定部10で測定される測定結果L10は、動翼52に接触する際の第1温度とガスパス53の第2温度とが含まれた値である。過渡状態においては、軸流圧縮機50のガスパス53を流通する圧縮空気の温度に応じてガスパス53の第2温度が上昇する場合がある。第2温度の変化が大きいと、動翼52と接触する際の摩擦により変化する第1温度の変化量が相対的に小さくなる。このため、オペレータがグラフG1を目視しただけでは第1温度の変化に気づきにくく、グラフの一部を拡大表示する等の別途操作が必要になる可能性がある。
【0023】
これに対して、本実施形態では、グラフG2に示すように、処理部30が温度測定部10の測定結果L10から取得部20の取得結果L20を差し引いた差分値L30を抽出することにより、ガスパス53の温度変化の影響が低減されることになる。このため、オペレータがグラフG2を目視した場合、別途操作を行うことなく、差分値L30を見ることでオペレータが第1温度の変化を把握することが可能となる。グラフG2の場合、オペレータは、例えば動翼52との接触による第1温度の変化部分L31を目視により容易に把握することができる。なお、本実施形態においては、グラフG1については表示部40に表示させなくてもよい。
【0024】
処理部30は、抽出した差分値に基づいて動翼52と温度測定部10との接触の有無を判定する。処理部30は、例えば差分値の実効値又は歪度に基づいて、動翼52と温度測定部10との接触の有無を判定することができる。
【0025】
まず、差分値の実効値に基づいて判定を行う場合について説明する。差分値についての時間tの関数をx(t)とすると、ある期間Tにおける差分値の実効値RMSは、
【数1】
で示される。
【0026】
処理部30は、数1に基づいて差分値の実効値RMSを求める。処理部30は、実効値RMSが所定の閾値を超える場合に、動翼52と温度測定部10とが接触したと判定することができる。
図3は、差分値の実効値RMSの時間変化の一例を示す図である。
図3の横軸は時刻、縦軸はRMS値を示す。差分値の実効値に基づいて判定を行うことで、測定結果のバラつきの変化を実効値として定量化することができるため、動翼52との接触の有無を容易に判断することができる。
図3に示す場合、処理部30は、実効値RMSの閾値を超える部分L32を検出することで、動翼52と温度測定部10との接触があったと判定することができる。また、処理部30の上記処理により、オペレータによる判断を介さずに自動的に接触の有無を判断することができる。
【0027】
次に、差分値の歪度に基づいて判定を行う場合について説明する。ある期間における差分値のデータ点数をn、差分値の値をxi、差分値の平均値をxバー(xの上に「-」)、差分値の標準偏差をsとすると、当該期間における差分値の歪度SKWは、
【数2】
で示される。
【0028】
処理部30は、数2に基づいて差分値の歪度SKWを求める。処理部30は、歪度SKWが所定の閾値を超える場合に、動翼52と温度測定部10とが接触したと判定することができる。熱電対11、21が動翼52に接触すると、摩擦熱により測定温度が上昇する。
図4は、熱電対に対して動翼が接触する前後における差分値の頻度分布の例を示す図である。図中の横軸は温度差、縦軸は頻度を示す。本発明者は、
図4に示すように、接触前の頻度分布L33に比べて、接触後の頻度分布L34は、摩擦熱による温度上昇により右側の裾野部が広くなることを見出した。したがって、この裾野部の変化を歪度によって捉えることで、動翼52との接触の有無を精度よく判定することができる。
【0029】
上記の実効値RMS及び歪度SKWを用いる場合において、所定の閾値は、過去の測定データ等を用いて設定することができる。例えば、過去の測定データの中から動翼52と温度測定部10との接触が生じていない期間を抽出し、正規分布にフィッティングして、累積確率が一定値以上(例えば、99.9%以上)となる値を閾値として定めることができる。もしくは、処理部30は、例えばマハラノビス距離及びホテリング理論に基づく公知の異常検知手法により接触を自動判定してもよい。
【0030】
処理部30は、実効値RMS及び歪度SKWにより判定を行った場合、判定結果を表示部40に出力する。処理部30は、動翼52と温度測定部10とが接触したと判定した場合にのみ、判定結果を表示部40に出力してもよい。
【0031】
表示部40は、上記したように、処理部30で抽出された差分値を第1温度として表示する。表示部40は、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置が用いられる。この場合、表示部40は、差分値である第1温度をグラフ等により示すことができる。
【0032】
また、表示部40は、処理部30で判定された判定結果を出力する。表示部40は、例えば表示装置に判定結果を出力する場合、文字、画像等により判定結果を出力することができる(
図1等参照)。なお、処理部30で判定された判定結果を報知する報知部としては、表示部40に代えて、ランプ等の発光装置、アラーム等の音声出力装置等、他の装置であってもよい。この構成におて、報知部は、処理部30において動翼52と温度測定部10とが接触したと判定された場合、判定結果をランプの点滅、アラームの鳴動等により、オペレータ等に報知することができる。
【0033】
図5は、本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す機能ブロック図である。上記の処理部30は、情報処理装置1を含む。情報処理装置1は、プロセッサ2と、メモリ3と、ストレージ4と、インタフェース5とを有する。プロセッサ2、メモリ3、ストレージ4及びインタフェース5は、バス等で相互に接続される。
【0034】
プロセッサ2は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算装置を含む。メモリ3は、例えばROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリ、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを含む。ストレージ4は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置を含む。ストレージ4は、上記の処理部30の各機能を実現するためのプログラムを記憶する。インタフェース5は、ネットワークインタフェースカード等の入出力回路を含む。インタフェース5は、外部装置との間で通信を行う。
【0035】
プロセッサ2は、ストレージ4に記憶された各プログラムを読み出してメモリ3に展開することにより、上記各機能に応じた処理を実行する。情報処理装置1は、このようにプログラムを読み出して実行することで、各種の情報処理を実行するコンピュータとして動作する。
【0036】
なお、上記プログラムは、ストレージ4に記憶される場合に限定されない。例えば、上記プログラムは、ネットワークを介して情報処理装置1に配信されてもよい。また、外部の記録媒体に記録された上記プログラムが読み出されて情報処理装置1に配信されてもよい。また、上記プログラムは、情報処理装置1によって実行される場合に限定されない。例えば、情報処理装置1とは異なる他の情報処理装置が上記プログラムを実行してもよいし、情報処理装置1と他の情報処理装置とが協働して上記プログラムを実行してもよい。
【0037】
次に、本実施形態に係る接触検出方法について説明する。本実施形態に係る接触検出方法では、上記のように構成された接触検出装置100を用いることができる。
図6は、本実施形態に係る接触検出方法の一例を示すフローチャートである。
図6に示すように、本実施形態に係る接触検出方法は、測定ステップS10と、取得ステップS20と、抽出ステップS30と、出力ステップS40と、判定ステップS50と、報知ステップS60とを含む。
【0038】
測定ステップS10では、軸流圧縮機50のケーシング51に動翼52と間隔を空けて設けられる温度測定部10により、動翼52と接触する場合の摩擦により変化する第1温度及びガスパス53の第2温度の両方を一つの測定位置で測定する。
【0039】
取得ステップS20では、取得部20が、測定又は推定により測定位置54における第2温度を温度測定部10とは別個に取得する。
【0040】
抽出ステップS30では、処理部30が、温度測定部10の測定結果から、取得部20で取得された第2温度を差し引いた差分値を第1温度として抽出する。
【0041】
出力ステップS40では、処理部30が、抽出した差分値を表示部40に出力する。表示部40には、差分値が第1温度として表示される。オペレータは、表示部40に表示される差分値を見ることにより、別途操作を要することなく、第1温度の変化を把握することができる。
【0042】
判定ステップS50では、処理部30が、抽出した差分値に基づいて動翼52と温度測定部10との接触の有無を判定する。
【0043】
報知ステップS60では、処理部30が、動翼52との接触の有無を判定した判定結果を表示部40に出力させることで報知する。処理部30は、動翼52と温度測定部10との接触があった場合にのみ報知を行うようにしてもよい。表示部40には、判定結果が表示される。オペレータは、表示部40に表示される判定結果を見ることにより、別途操作を要することなく、動翼52と温度測定部10との接触の有無を把握することができる。
【0044】
上記の接触検出装置100は、既存の軸流圧縮機50等の回転機械に対して、後工程で付設することができる。
図7は、本実施形態に係る回転機械の改修方法の一例を示すフローチャートである。
図7に示すように、回転機械の改修方法は、設置部形成ステップS70と、取付ステップS80とを含む。
【0045】
設置部形成ステップS70では、ケーシング51及び当該ケーシング51に対して回転する動翼52を有しケーシング51と動翼52との間にガスパス53が形成された軸流圧縮機50のケーシング51に、所定の設置部55を形成する。
【0046】
取付ステップS80では、動翼52と接触する場合の摩擦により変化する第1温度及びガスパス53の第2温度の両方を一つの測定位置で測定する温度測定部10を設置部55に動翼52と間隔を空けて取り付ける。
【0047】
これにより、既存の軸流圧縮機50に対して温度測定部10を容易に取り付けることができる。なお、取得部20が熱電対21により測定位置54においてガスパス53の第2温度を測定する構成の場合、取得部20の熱電対21を設置するための設置部を併せて形成する。
【0048】
以上のように、本開示の第1態様に係る接触検出装置は、ケーシング51及び当該ケーシング51に対して回転する動翼52を有しケーシング51と動翼52との間にガスパス53が形成された軸流圧縮機50について、ケーシング51と動翼52の接触を検出する接触検出装置100であって、ケーシング51に動翼52と間隔を空けて設けられ、動翼52と接触する場合の摩擦により変化する第1温度及びガスパス53の第2温度の両方を一つの測定位置で測定可能な温度測定部10と、測定又は推定により測定位置における第2温度を温度測定部10とは別個に取得する取得部20と、温度測定部10の測定結果から取得部20で取得された第2温度を差し引いた差分値を第1温度として抽出する処理部30とを備える接触検出装置100である。
【0049】
この構成によれば、温度測定部10での測定結果から、ガスパス53の第2温度による影響を差し引いた差分値を第1温度として抽出するため、ガスパス53に流通するガスの影響を低減することができる。これにより、動翼52との接触を精度よく検出することができる。
【0050】
本開示の第2態様に係る接触検出装置は、第1態様に係る接触検出装置100において、取得部20が、測定位置における第2温度を温度測定部10とは別個に測定することで第2温度を取得する。したがって、精度の高い第2温度を取得することができる。
【0051】
本開示の第3態様に係る接触検出装置は、第1態様又は第2態様に係る接触検出装置100において、取得部20が、温度測定部10の測定結果を示す電気信号にフィルタを適用して第2温度を示す電気信号を推定することで第2温度を取得する。したがって、温度測定部10の測定結果を用いることで、別途熱電対等を用いることなく第2温度を高精度に取得できる。
【0052】
本開示の第4態様に係る接触検出装置は、第1態様から第3態様のいずれかに係る接触検出装置100において、処理部30で抽出された差分値を出力する表示部40を更に備える。したがって、オペレータは、表示部40を見ることにより、手作業でグラフを拡大する等の別途操作を行うことなく、容易に差分値である第1温度の変化を把握することができる。
【0053】
本開示の第5態様に係る接触検出装置は、第1態様から第3態様のいずれかに係る接触検出装置100において、処理部30が、抽出した差分値に基づいて動翼52と温度測定部10との接触の有無を判定する。したがって、動翼52と温度測定部10との接触の有無を自動的に判定することができる。
【0054】
本開示の第6態様に係る接触検出装置は、第5態様に係る接触検出装置100において、処理部30における接触の有無の判定結果を報知する表示部40を更に備える。したがって、オペレータは、表示部40を見ることにより、手作業でグラフを拡大する等の別途操作を行うことなく、容易に接触の有無の判定結果を把握することができる。
【0055】
本開示の第7態様に係る接触検出装置は、第5態様又は第6態様に係る接触検出装置100において、処理部30が、抽出した差分値の実効値又は歪度に基づいて動翼52と温度測定部10との接触の有無を判定する。したがって、動翼52と温度測定部10との接触の有無を精度よく判定することができる。
【0056】
本開示の第8態様に係る接触検出方法は、ケーシング51及び当該ケーシング51に対して回転する動翼52を有しケーシング51と動翼52との間にガスパス53が形成された軸流圧縮機50について、ケーシング51と動翼52の接触を検出する接触検出方法であって、ケーシング51に動翼52と間隔を空けて設けられる温度測定部10により、動翼52と接触する場合の摩擦により変化する第1温度及びガスパス53の第2温度の両方を一つの測定位置で測定ステップと、測定又は推定により測定位置における第2温度を温度測定部10とは別個に取得する取得ステップと、測定ステップの測定結果から取得ステップで取得された第2温度を差し引いた差分値を第1温度として抽出する抽出ステップとを含む。
【0057】
この構成によれば、温度測定部10での測定結果から、ガスパス53の第2温度による影響を差し引いた差分値を第1温度として抽出するため、ガスパス53に流通するガスの影響を低減することができる。これにより、動翼52との接触を精度よく検出することができる。
【0058】
本開示の第8態様に係る回転機械の改修方法は、ケーシング51及び当該ケーシング51に対して回転する動翼52を有しケーシング51と動翼52との間にガスパス53が形成された軸流圧縮機50のケーシング51に、所定の設置部を形成するステップと、動翼52と接触する場合の摩擦により変化する第1温度及びガスパス53の第2温度の両方を一つの測定位置で測定する温度測定部10を設置部に動翼52と間隔を空けて取り付けるステップとを含む。
【0059】
したがって、既存の軸流圧縮機50に対して温度測定部10を容易に取り付けることができる。
【0060】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、回転機械としてガスタービンの軸流圧縮機50を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0061】
回転機械としては、例えばガスタービンのタービンであってもよい。この場合、タービンのケーシング(車室、翼環等)が静止体であり、タービンの動翼が回転体である。タービンにおいては、ケーシングと動翼との間のガスパスには燃焼ガスが流通する。したがって、温度測定部10は、動翼と接触した場合の摩擦により変化する第1温度と、ガスパスを流通する燃焼ガスの第2温度とを測定する。
【0062】
また、回転機械としては、例えば蒸気タービンであってもよい。この場合、蒸気タービンのケーシング(車室、翼環等)が静止体であり、蒸気タービンの動翼が回転体である。蒸気タービンにおいては、ケーシングと動翼との間のガスパスには水蒸気が流通する。したがって、温度測定部10は、動翼と接触した場合の摩擦により変化する第1温度と、ガスパスを流通する水蒸気の第2温度とを測定する。
【符号の説明】
【0063】
1 情報処理装置
2 プロセッサ
3 メモリ
4 ストレージ
5 インタフェース
10 温度測定部
11,21 熱電対
11a 測定用端部
20 取得部
22 フィルタ
30 処理部
40 表示部
50 軸流圧縮機
51 ケーシング
52 動翼
53 ガスパス
54 測定位置
55 設置部
100 接触検出装置
L1,L2 頻度分布