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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039173
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】節度感付加装置
(51)【国際特許分類】
   G05G 5/03 20080401AFI20240314BHJP
【FI】
G05G5/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143517
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 知良
【テーマコード(参考)】
3J070
【Fターム(参考)】
3J070AA14
3J070BA12
3J070BA51
3J070BA81
3J070CB01
3J070CC71
3J070CD33
3J070CD35
3J070DA02
(57)【要約】
【課題】組み付けが容易であるとともに、良好な節度感を付加できる節度感付加装置を提供する。
【解決手段】ベース部17は、所定方向の一方側と他方側とに動作可能である。接触部43は、スプリング42に取り付けられ、ベース部17と接触可能である。保持部48は、スプリング42を保持する。壁部47aは、接触部43に対し所定方向に対向し、ベース部17の動作による接触部43とベース部17との接触状態の変化に伴いスプリング42の付勢力によって移動した接触部43との衝突により節度感となる音を生じさせる。制限部は、接触部43の可動域を所定方向に沿う範囲に制限する。保持部48は、スプリング42の位置を少なくとも所定方向に規制する。接触部43と壁部47aとのクリアランスCLは、所定方向の一方側と他方側とで略等しい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向の一方側と他方側とに動作可能な動作部と、
スプリングと、
このスプリングに取り付けられ、前記動作部と接触可能な接触部と、
前記スプリングを保持する保持部と、
前記接触部に対し前記所定方向に対向し、前記動作部の動作による前記接触部と前記動作部との接触状態の変化に伴い前記スプリングの付勢力によって移動した前記接触部との衝突により節度感となる音を生じさせる壁部と、
前記接触部の可動域を前記所定方向に沿う範囲に制限する制限部と、を備え、
前記保持部は、前記スプリングの位置を少なくとも前記所定方向に規制し、
前記接触部と前記壁部とのクリアランスは、前記所定方向の一方側と他方側とで略等しい
ことを特徴とする節度感付加装置。
【請求項2】
壁部は、スプリング及び接触部が配置される穴部の側壁の一部であり、
保持部は、前記スプリングを前記穴部の略中央部に保持する
ことを特徴とする請求項1記載の節度感付加装置。
【請求項3】
保持部は、スプリングの端部が挿入される凹部である
ことを特徴とする請求項1または2記載の節度感付加装置。
【請求項4】
凹部は、開口側が壁部側に向かいテーパ状に拡開されている
ことを特徴とする請求項3記載の節度感付加装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、節度感を付加する節度感付加装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置の風向を調整する風向調整装置の動作を設定するための操作ダイヤルが設けられることがある。操作ダイヤルを風向調整装置の動作を指示する所定の箇所に操作したときに、節度感すなわちクリック感が付加することで、操作フィーリングを向上させることが可能である。
【0003】
このような操作ダイヤルに節度感を付加する節度感付加装置として、操作ダイヤルの回転の直径方向に配置されるスプリングとそのスプリングの先端に配置されるピンとを有するプランジャを備えたものが知られている。この装置では、操作ダイヤルを所定の箇所に操作したときに、操作ダイヤルを支持する支持部材に形成された溝部に対してピンが整合することで、ピンがスプリングの付勢力により支持部材を打撃して、打撃音、すなわち節度音(クリック音)を生じさせるように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-35306号公報 (第3-4頁、図1-5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の節度感付加装置では、操作ダイヤルを回動させたときにピンと支持部材との摺接によってスプリングが横ずれしないように支持するために、プランジャの保持穴とプランジャとのクリアランスを小さくしている。そのため、プランジャの保持穴径が小さく、プランジャを保持穴に差し込みにくいなど、組み付けが容易でない。
【0006】
また、組み付け性を考慮して保持穴の径寸法をプランジャ外形よりも大きめに設定すると、操作ダイヤルの操作時に意図しない方向(操作ダイヤルの摺動方向に対して交差する方向側の穴部の内壁面側)へとスプリングがよじれてしまい、付勢が不十分となって、想定する打撃音が得られないことがある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、組み付けが容易であるとともに、良好な節度感を付加できる節度感付加装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の節度感付加装置は、所定方向の一方側と他方側とに動作可能な動作部と、スプリングと、このスプリングに取り付けられ、前記動作部と接触可能な接触部と、前記スプリングを保持する保持部と、前記接触部に対し前記所定方向に対向し、前記動作部の動作による前記接触部と前記動作部との接触状態の変化に伴い前記スプリングの付勢力によって移動した前記接触部との衝突により節度感となる音を生じさせる壁部と、前記接触部の可動域を前記所定方向に沿う範囲に制限する制限部と、を備え、前記保持部は、前記スプリングの位置を少なくとも前記所定方向に規制し、前記接触部と前記壁部とのクリアランスは、前記所定方向の一方側と他方側とで略等しいものである。
【0009】
請求項2記載の節度感付加装置は、請求項1記載の節度感付加装置において、壁部は、スプリング及び接触部が配置される穴部の側壁の一部であり、保持部は、前記スプリングを前記穴部の略中央部に保持するものである。
【0010】
請求項3記載の節度感付加装置は、請求項1または2記載の節度感付加装置において、保持部は、スプリングの端部が挿入される凹部であるものである。
【0011】
請求項4記載の節度感付加装置は、請求項3記載の節度感付加装置において、凹部は、開口側が壁部側に向かいテーパ状に拡開されているものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の節度感付加装置によれば、スプリングの保持のために壁部をスプリング及び接触部に近接させる必要がなく、組み付けスペースを確保でき、組み付けが容易である。また、動作部が所定方向の一方側に動作したときと他方側に動作したときとで接触部の移動ストロークが略等しくなるとともに、制限部によって接触部の可動域を所定方向に沿う範囲に制限するため意図しない方向へのスプリングのよじれを抑制できるので、接触部が壁部に衝突する際に生じる節度感となる音を、動作部が所定方向の一方側に動作したときと他方側に動作したときとで略均一とすることができ、かつ、壁部を接触部に近接させる必要がないことから接触部を壁部に衝突させる際のストロークを所定方向に確保して大きな音を生じさせることができるため、良好な節度感を付加できる。
【0013】
請求項2記載の節度感付加装置によれば、請求項1記載の節度感付加装置の効果に加えて、接触部と壁部とのクリアランスを、動作部の動作方向である所定方向の一方側と他方側とで容易に略等しく設定できる。
【0014】
請求項3記載の節度感付加装置によれば、請求項1または2記載の節度感付加装置の効果に加えて、スプリングの端部を保持部に挿入するだけでスプリングを容易に組み付けできる。
【0015】
請求項4記載の節度感付加装置によれば、請求項3記載の節度感付加装置の効果に加えて、スプリングを凹部に保持するように取り付ける際に、凹部の開口側のテーパ形状がガイドとなり、スプリングをより容易に組み付けできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は本発明の第1の実施の形態の節度感付加装置を示す断面図、(b)は節度感付加装置の動作部が所定方向の一方側に動作した状態を示す断面図、(c)は節度感付加装置の動作部が所定方向の他方側に動作した状態を示す断面図である。
図2】同上節度感付加装置の一部を所定方向と交差する方向から示す平面図である。
図3】同上節度感付加装置の一部を示す斜視図である。
図4】同上節度感付加装置を備える操作装置の分解斜視図である。
図5】同上操作装置の一例を示す斜視図である。
図6】本発明の第2の実施の形態の節度感付加装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図5において、1は被操作装置としての風向調整装置である。風向調整装置1は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、自動車などの車両に用いられる空調装置において、吹き出す風向を調整するものである。風向調整装置1は、例えばインストルメントパネル部やセンタコンソール部などの車両の各部に設置される。本実施の形態では、風向調整装置1は、車室内において乗員の前方に配置されているものを例挙げ、車室内から見た方向を基準として、矢印FR(図1(a)など)側を前側、矢印RR(図1(a)など)側を後側、矢印L側を左側、矢印R側を右側、矢印U側を上側、矢印D側を下側として説明する。これらの方向は、あくまで一例として図示されるものであって、風向調整装置1の設置位置や設置向きによって適宜変更されるものとする。
【0019】
風向調整装置1は、空調風が吹き出す吹出口2を有する本体部3を備える。本実施の形態において、吹出口2は横長に形成され、左右方向よりも上下方向が狭くなっている。本体部3には、吹出口2に臨んで、風向調整体であるフィン4が回動可能に支持される。本実施の形態において、フィン4は、例えば上下方向に軸方向を有して本体部3に回動可能に支持される縦フィン、及び、左右方向に軸方向を有して本体部3に回動可能に支持される横フィンが設定される。フィン4の枚数や配置は任意に設定してよい。その他、風向調整装置1は、シャットバルブなどの稼働部を備えている。
【0020】
風向調整装置1は、乗員などの操作者により操作される操作装置5によって稼働部の動作が設定される。例えば、風向調整装置1は、操作装置5によって配風性能が設定される。操作装置5は、風向調整装置1に隣接して配置されている。本実施の形態では、操作装置5は風向調整装置1の右側に配置されている。
【0021】
図4に示すように、操作装置5は、使用者によって操作される被操作部6を有する。被操作部6は、使用者の操作に応じて動作する部分である。本実施の形態において、被操作部6は、ダイヤルである。つまり、本実施の形態の被操作部6は、使用者により回動操作されるものである。また、図示される被操作部6は、使用者の操作に応じて回動する動作部である。すなわち、被操作部6は、その操作によって所定方向である周方向の一方側と他方側とに回動可能である。本実施の形態において、被操作部6は、前後方向に沿って回動軸を有し、この回動軸の周りに一方側である時計回り方向及び他方側である反時計回り方向に回動可能となっている。
【0022】
被操作部6は、使用者が摘むまたは掴むノブ部10を有する。好ましくは、ノブ部10には、被操作部6の操作位置または指示位置を示す目印部11が形成されている。図示される例では、ノブ部10は、正面から見て円形状に形成され、その径方向に沿って目印部11が配置されている。
【0023】
本実施の形態において、ノブ部10は、一のノブ部材12と、他のノブ部材13と、により構成されている。
【0024】
一のノブ部材12は、ノブ部10の意匠部分を構成している。一のノブ部材12は、有蓋円筒状に形成され、蓋部分を後端部に位置させて配置されている。
【0025】
また、他のノブ部材13は、一のノブ部材12の外殻部分または外周部分を構成している。他のノブ部材13は、円筒状に形成され、一のノブ部材12が後方から内部に挿入されて取り付けられる。本実施の形態では、一のノブ部材12の前部に爪部14が突設され、この爪部14が、他のノブ部材13に形成された挿入穴部15に挿入されて引っ掛けられることで、一のノブ部材12と他のノブ部材13とが一体的に接続される。また、本実施の形態では、他のノブ部材13の内周部分に目印部11が径方向及び軸方向に沿うリブとして形成され、この目印部11が一のノブ部材12の蓋部分に形成された溝部16に嵌合されることで、一のノブ部材12と他のノブ部材13とが位置合わせされ、かつ、一のノブ部材12が他のノブ部材13に対して回り止めされている。
【0026】
ノブ部10には、動作部であるベース部17が接続されている。ノブ部10には、他のノブ部材13の前部に接続部18が突設されており、この接続部18がベース部17に形成された受け部19に挿入されて引っ掛けられることで、ノブ部10とベース部17とが一体的に接続される。なお、ベース部17には、緩衝部材20が取り付けられていてもよい。緩衝部材20は、弾性を有し、被操作部6の回動時のがたつきを吸収して操作フィーリングを向上するものである。緩衝部材20としては、例えばOリングが用いられる。
【0027】
ベース部17は、被操作部6の操作により動作すなわち移動または回動される部分である。本実施の形態において、ベース部17は、被操作部6の操作に伴い、所定方向である周方向(回動方向)の一方側と他方側と、すなわち時計回り方向と反時計回り方向とに動作可能となっている。図3及び図4に示すように、ベース部17は、ベース部本体部24と、ベース部本体部24に形成された突出部25と、を有する。
【0028】
本実施の形態において、ベース部本体部24は、円筒状に形成されている。突出部25は、ベース部本体部24の前部側に同軸状に配置され、ベース部本体部24から前方に突出している。ベース部本体部24と突出部25とに亘り、受け部19が形成されている。ベース部17の外周部をなすベース部本体部24の外周部に、緩衝部材20を受ける取付溝部26が形成されている。そして、突出部25の側部に切欠穴部27が形成され、この切欠穴部27に位置して、ノブ部10の接続部18が引っ掛けられる引っ掛け受け部28が形成されている。
【0029】
また、本実施の形態において、ベース部17は、連結部30をさらに有する。連結部30は、被操作部6の操作を風向調整装置1のシャットバルブなどの稼働部に伝達するための変換部31と連結される。連結部30は、突出部25の前部から前方に突出して形成されている。図示される例では、連結部30は、二枚の互いに平行な板状に形成され、先端部に連結爪部30aが形成されている。
【0030】
変換部31は、被操作部6の動作を風向調整装置1の稼働部を動作させる動力に変換する部分である。変換部31は、例えば風向調整装置1の稼働部を動作させるための機構に対して歯合されるギヤである。本実施の形態では、変換部31は、ベベルギヤである。変換部31の中央部には、連結部30が挿入されて連結爪部30aが引っ掛けられる連結受け部33が形成されている。
【0031】
変換部31と被操作部6とは、支持部35に可動的に支持される。支持部35は、車室側すなわち意匠側である後側に被操作部6を支持し、その反対側である前側に変換部31を支持する。図5に示すように、支持部35は、車体側に固定される意匠パネルであって、風向調整装置1に隣接する意匠面を構成する。また、図4に示すように、支持部35には、前後方向に貫通して開口部37が形成されている。開口部37に被操作部6が後方から挿入され、支持部35の背面側である前側において被操作部6が変換部31と連結されている。本実施の形態において、被操作部6のベース部17が開口部37に挿入されており、ノブ部10が支持部35に対して後方に露出及び突出するように構成されている。また、本実施の形態において、開口部37には、被操作部6の操作に伴い緩衝部材20が摺接する。
【0032】
なお、支持部35には、露出する被操作部6のノブ部10に位置する目印部11によって指示される位置に、稼働部の動作を示す目印が印刷または打刻されていてもよい。目印は、支持部35の意匠面、すなわち開口部37の外方に配置される。目印としては、例えば目盛り、数値、あるいはピクトグラムなどが挙げられる。
【0033】
そして、本実施の形態において、支持部35と被操作部6との間には、節度感(クリック感)を生じさせる節度感付加装置40が取り付けられている。図示される節度感付加装置40は、被操作部6の操作時のノブ部10あるいは目印部11の位置に応じて節度感を生じさせる。例えば、節度感付加装置40は、被操作部6の操作時のノブ部10あるいは目印部11を所定の指示位置に移動させたときに節度感を生じさせる。節度感付加装置40は、スプリング42と、このスプリング42に取り付けられた接触部43と、を備えるプランジャ44を有する。
【0034】
スプリング42は、線材をコイル状に巻回したコイルスプリングである。接触部43は、スプリング42の一端部側に位置し、スプリング42により付勢される。接触部43は、金属、あるいは合成樹脂などの、所定の剛性を有する部材により形成されている。そして、プランジャ44は、支持部35に形成された穴部45に配置されて、被操作部6の前部に対向して位置する。
【0035】
穴部45は、支持部35の開口部37の内部に突出する支持壁部46に形成されている。穴部45は、前後方向に形成され、後部が開口されて前部が閉塞されている。図1(a)ないし図1(c)及び図2に示すように、穴部45の側壁47は、前後方向に延びて形成されている。したがって、スプリング42及び接触部43、すなわちプランジャ44は、ベース部17の動作方向と交差する前後方向に延びて配置され、ベース部17の回動軸と平行または略平行となっている。本実施の形態において、穴部45は、正面視で円形状に形成されている。そのため、側壁47は、円筒状となっている。側壁47は、支持壁部46の一部をなす部分である。
【0036】
側壁47は、図中の左右方向、すなわちベース部17の動作方向である所定方向の一方側と他方側とに位置する壁部47aと、所定方向に対し交差または直交する他の方向の一方側と他方側とに位置する制限部47bと、を一体的に有する。
【0037】
壁部47aは、接触部43との衝突により打撃音を生じさせる部分である。壁部47aは、接触部43の外形に沿って湾曲する面状となっている。本実施の形態では、壁部47aは半円筒面状に湾曲されている。壁部47aは、穴部45の内部に位置する接触部43に対して、左右方向に位置する。壁部47a,47aは、前後方向に見て、同一円周上に位置する。すなわち、壁部47a,47aは、同一の軸を有する半円筒面状である。
【0038】
制限部47bは、接触部43の可動域を所定方向に沿う範囲に制限する部分である。本実施の形態において、制限部47bは、接触部43が移動可能な範囲を所定方向に対して交差または直交する方向、つまり図2中の上下方向に狭める部分である。制限部47bは、壁部47a,47a間に左右方向に連なる面状となっている。制限部47bは、壁部47aの仮想延長面に対して内側に位置する。本実施の形態では、制限部47bは、平面状に形成されている。制限部47b,47bは、互いに平行または略平行に配置されている。そのため、穴部45は、左右方向に長く、上下方向に短い形状となっている。
【0039】
また、穴部45の内部には、スプリング42の他端部側、すなわち接触部43と反対側を保持する保持部48が形成されている。保持部48は、穴部45の底部となる支持壁部46に形成され、穴部45の略中央部に位置する。保持部48は、スプリング42の位置をスプリング42の径方向に規制している。つまり、保持部48により保持されたスプリング42は、その保持された基端部側の位置を略変えることなく位置する。そのため、スプリング42は、他端部側が穴部45の略中央部に保持されるように保持部48に保持される。したがって、図1(a)ないし図1(c)における少なくとも左右方向、すなわちベース部17の動作方向である所定方向の一方側と他方側とにスプリング42の他端部側の位置が移動しないように保持されている。
【0040】
本実施の形態において、保持部48は凹部である。保持部48は、穴部45の内径寸法より小さくスプリング42の外径寸法より僅かに大きい内径寸法を有する、正面視で円形状の凹部である。保持部48は、穴部45と同軸状に配置されている。保持部48は、スプリング42の他端部の外周側を保持する。保持部48は、開口側である後部側が壁部47a側に向かいテーパ状に拡開されている。つまり、保持部48の開口側には、後部側に向かって徐々に径寸法が大きくなる截頭円錐面状のテーパ面48aが形成されている。テーパ面48aは、側壁47と連なっている。
【0041】
スプリング42は、保持部48に他端部側が保持された位置で、一端部側が穴部45の内部に延びている。すなわち、スプリング42の少なくとも一端部側は穴部45内で径方向に弾性的に湾曲可能となっている。また、スプリング42の一端部側に取り付けられた接触部43は、スプリング42の他端部側が保持部48に保持された位置で、穴部45の内方に位置する。すなわち、接触部43の側部は、側壁47と径方向に対向する。図1(a)に示すように、側壁47の壁部47aは、スプリング42が湾曲していない状態で接触部43に対し所定のクリアランスCLを有する。つまり、図1(a)における左右方向、すなわちベース部17の動作方向である所定方向の一方側と他方側とで、クリアランスCLは互いに略等しくなっている。また、側壁47の制限部47bは、スプリング42が湾曲していない状態で接触部43に対し壁部47aよりも近接して位置する。制限部47bは、接触部43に対して接触していてもよいが、好ましくは接触部43に対して僅かに離れて位置する。より好ましくは、一方の制限部47bに対して接触部43が接触する位置で他方の制限部47bが接触部43に接触しないように設定されている。
【0042】
また、接触部43の先端部すなわちスプリング42とは反対側の端部は、穴部45から後方に突出して被操作部6と対向する。本実施の形態では、接触部43の先端部は、穴部45から後方に突出して被操作部6のベース部17のベース部本体部24の前部に対向する。図1(a)及び図3に示すように、ベース部本体部24の前部は、一般面部である平面状の対向面部52となっており、この対向面部52に凹溝部53が形成されている。スプリング42の付勢により接触部43がベース部17の対向面部52に弾性的に押圧されている。
【0043】
対向面部52は、被操作部6のベース部17が支持部35の開口部37に挿入された状態で支持壁部46と前後に対向する。対向面部52は、被操作部6の操作に伴うベース部17の動作方向である所定方向つまり周方向に延びる面である。また、対向面部52は、被操作部6の操作によるベース部17の動作時に接触部43と摺接する摺接部である。そのため、対向面部52は、接触部43との摺接によってスプリング42に付勢力を蓄えるための付勢力蓄積部となっている。
【0044】
凹溝部53は、被操作部6の操作によるベース部17の動作により対向面部52と接触部43との摺接でスプリング42に蓄えられた付勢力の少なくとも一部を開放する付勢力開放部である。凹溝部53は、対向面部52の一部を後方にオフセットさせて形成されている。凹溝部53は、被操作部6のノブ部10に位置する目印部11によって指示される位置に応じて設定される。本実施の形態では、凹溝部53は、複数、例えば3つ形成されている。また、図3に示す例では、凹溝部53は、ベース部17(図4)の動作方向である周方向に等間隔または等角度に配置されている。
【0045】
次に、第1の実施の形態の動作を説明する。
【0046】
節度感付加装置40を組み立てる際には、スプリング42の端部に接触部43を取り付けたプランジャ44を、支持部35の開口部37内に位置する支持壁部46の穴部45に挿入し、スプリング42の接触部43とは反対側の端部を保持部48に保持する。この状態で、図1(a)に示すように、スプリング42が直立した状態で接触部43が穴部45の略中央部に位置し、接触部43に対して壁部47aとの間に略一定のクリアランスCLが形成される。
【0047】
次いで、プランジャ44を穴部45に取り付けた支持部35に対し、図4に示す一のノブ部材12、他のノブ部材13、緩衝部材20、及びベース部17を予め組み付けて構成した被操作部6を後方から開口部37に組み付けるとともに、支持部35を挟んで前方から、被操作部6の連結部30に変換部31を連結する。
【0048】
この状態で、図1(a)に示すように、被操作部6のベース部17が接触部43と前後に対向し、対向面部52または凹溝部53でベース部17と接触部43とが互いに接触し、節度感付加装置40が構成されるとともに、図5に示す操作装置5が組み立てられる。
【0049】
風向調整装置1の動作を設定する際には、使用者が操作装置5の被操作部6のノブ部10を回動操作すると、被操作部6全体が回動し、被操作部6と連結された変換部31(図4)が連動して回動することで、被操作部6の動作が変換部31(図4)によって風向調整装置1の稼働部を動作させる動力に変換され、風向調整装置1が設定された動作で駆動される。
【0050】
被操作部6が回動しているとき、図1(a)に示す節度感付加装置40は、接触部43が対向面部52と摺接する。例えば、図1(b)の矢印Aに示す方向、つまり被操作部6の回動によりベース部17が一方側すなわち図中の左方向に移動しているとき、接触部43と対向面部52との摺接により接触部43の先端部が矢印A側に押圧されるとともに、スプリング42の他端部側が保持部48によって矢印A側の位置が規制されて殆ど移動しないことにより、スプリング42の一端部側が穴部45の壁部47aとのクリアランスCL内で矢印A方向に屈曲され、スプリング42に付勢力が蓄積される。このとき、接触部43の位置は、制限部47b(図2)によって所定方向に沿って制限されることで、スプリング42がよじれることなく、接触部43が矢印A側に移動する。そして、例えば被操作部6が風向調整装置1の稼働部の動作を目印部11が指示する位置など、予め決められた所定の位置となったとき、それに応じて設定されているベース部17の凹溝部53の位置に接触部43が到達することで、スプリング42に蓄えられた付勢力の少なくとも一部が開放され、接触部43がいずれか一方の制限部47b(図2)との摺接によりガイドされつつ矢印Aとは反対方向に首振り運動する。その結果、接触部43が穴部45の矢印A側とは反対側の壁部47aに向かって移動して壁部47aに衝突し、打撃音、すなわち節度音(クリック音)を生じさせる。また、接触部43の先端部側が凹溝部53に入り込むことで、被操作部6の位置が所定の位置に仮固定される。
【0051】
同様に、図1(c)の矢印Bに示す方向、つまり被操作部6の回動によりベース部17が他方側すなわち図中の右方向に移動しているとき、接触部43と対向面部52との摺接により接触部43の先端部が矢印B側に押圧されるとともに、スプリング42の他端部側が保持部48によって矢印B側の位置が規制されて移動しないことにより、スプリング42の一端部側が穴部45の壁部47aとのクリアランスCL内で矢印B方向に屈曲され、スプリング42に付勢力が蓄積される。このとき、接触部43の位置は、制限部47b(図2)によって所定方向に沿って制限されることで、スプリング42がよじれることなく、接触部43が矢印B側に移動する。そして、例えば被操作部6が風向調整装置1の稼働部の動作を目印部11が指示する位置など、予め決められた所定の位置となったとき、それに応じて設定されているベース部17の凹溝部53の位置に接触部43が到達することで、スプリング42に蓄えられた付勢力の少なくとも一部が開放され、接触部43がいずれか一方の制限部47b(図2)との摺接によりガイドされつつ矢印Bとは反対方向に首振り運動する。その結果、接触部43が穴部45の矢印B側とは反対側の壁部47aに向かって移動して壁部47aに衝突し、打撃音、すなわち節度音(クリック音)を生じさせる。また、接触部43の先端部側が凹溝部53に入り込むことで、被操作部6の位置が所定の位置に仮固定される。
【0052】
このように、第1の実施の形態によれば、節度感付加装置40は、少なくともベース部17の動作方向である所定方向(回動方向)の一方側と他方側とのスプリング42の位置を保持部48によって規制するため、スプリング42の保持のために壁部47aをスプリング42及び接触部43に近接させる必要がなく、つまりスプリング42及び接触部43(プランジャ44)を挿入する穴部45を狭くする必要がなく、組み付けスペースを確保でき、組み付けが容易である。また、制限部47bを接触部43に対して僅かにクリアランスを有するように設定することで、スプリング42及び接触部43(プランジャ44)を穴部45に挿入しやすい。
【0053】
また、接触部43と壁部47aとのクリアランスCLをベース部17の動作方向である所定方向(回動方向)の一方側と他方側とで略等しく設定しているため、ベース部17が所定方向の一方側に動作したときと他方側に動作したときとで接触部43の移動ストロークが略等しくなるとともに、それらいずれの動作時にも制限部47bによって打撃音の不均一化に繋がる意図しない方向へのスプリング42のよじれを抑制できる。そのため、接触部43が対向面部52から凹溝部53に相対的に移動するなど、接触部43とベース部17との接触状態が変化したときのスプリング42の付勢力の開放によって接触部43が壁部47aに衝突する際に生じる節度感となる打撃音を、ベース部17が所定方向の一方側に動作したときと他方側に動作したときとで略均一とすることができ、かつ、壁部47aを接触部43に近接させる必要がないことから、接触部43を壁部47aに衝突させる際のストロークを確保して大きな打撃音を生じさせることができるため、良好な節度感を付加できる。
【0054】
壁部47aを、接触部43を収容する穴部45の側壁47の一部とし、保持部48によってスプリング42を穴部45の略中央部に保持することで、接触部43と壁部47aとのクリアランスCLを、ベース部17の動作方向である所定方向、本実施の形態では回動方向の一方側と他方側とで容易に略等しく設定できる。
【0055】
制限部47bを、接触部43を収容する穴部45の側壁47の他の一部とすることで、接触部43の可動域を所定方向に沿う範囲に容易に制限できる。
【0056】
保持部48を、スプリング42の端部が挿入される凹部とすることで、スプリング42の端部を保持部48に挿入するだけでスプリング42を容易に組み付けできる。
【0057】
凹部である保持部48の開口側が壁部47a側に向かいテーパ状に拡開されているため、スプリング42(プランジャ44)を保持部48に保持するように取り付ける際に、保持部48の開口側のテーパ形状(テーパ面48a)がガイドとなり、スプリング42(プランジャ44)をより容易に組み付けできる。
【0058】
また、節度感付加装置40によって被操作部6を操作したときに所定の位置で節度感が生じることにより、使用者は被操作部6を直接目視することなく節度感によって被操作部6の位置を知ることができる。そのため、例えば運転者が視線を移動させることなく被操作部6を操作することが可能になる。
【0059】
次に、第2の実施の形態について、図6を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0060】
本実施の形態の節度感付加装置40は、スプリング42を保持する保持部48が凸部となっている。保持部48は、穴部45の底部をなす支持壁部46にて、穴部45の略中央部から後方に向かって突出する凸部である。保持部48は、スプリング42の他端部に挿入または圧入されてスプリング42を保持する。
【0061】
このように、第2の実施の形態においても、保持部48によりスプリング42の位置を少なくともベース部17の動作方向である所定方向に規制し、接触部43と壁部47aとのクリアランスCLを所定方向の一方側と他方側とで略等しくするなど、第1の実施の形態と同様の構成を有することにより、節度感付加装置40の組み付けが容易であるとともに、良好な節度感を付加できるなど、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0062】
また、保持部48を凸部とすることで、保持部48の周辺、特に穴部45全体を広く形成してもスプリング42の位置を規制できるので、スプリング42及び接触部43を、より容易に組み付けできる。
【0063】
なお、上記の各実施の形態において、両方の制限部47b,47bが接触部43に対し常に接触するように制限部47bが設定されていてもよい。
【0064】
制限部47bは、平面状に限らず、接触部43の可動域を制限できる形状であれば、凹凸を有していてもよい。
【0065】
また、動作部となるベース部17は、被操作部6と一体的に構成したが、これに限らず、被操作部6の操作に連動して所定方向の一方側と他方側とに動作するものであればよい。
【0066】
さらに、動作部は、左右方向や上下方向に回動軸を有するものでもよい。この場合、スプリング42及び接触部43、すなわちプランジャ44は、回動軸と平行な方向に配置されるようにすることで、上記の各実施の形態と同様に作用させることができる。
【0067】
また、動作部は、所定方向の一方側と他方側とに動作可能なものであれば、回動するものに限らず、往復移動可能なものなどでもよい。
【0068】
操作装置5は、風向調整装置1のフィン4の動作を設定するものとしたが、これに限らず、他の任意の装置の動作を設定するものでもよい。
【0069】
操作装置5は、使用者によって被操作部6が操作されるものであれば、他の装置を操作するものに限らない。
【0070】
また、動作部は、被操作部6の操作に連動するものとしたが、これに限らず、所定方向の一方側と他方側とに動作する任意の動作部に適用してよい。
【0071】
すなわち、節度感付加装置40は、スプリング42及び接触部43(プランジャ44)、ベース部17(動作部)、壁部47a、制限部47b及び保持部48を備える任意の装置に適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、例えば自動車の空調用の風向調整装置を操作するための被操作部に節度感を付加するものとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0073】
17 動作部であるベース部
40 節度感付加装置
42 スプリング
43 接触部
45 穴部
47a 壁部
47b 制限部
48 保持部
CL クリアランス
図1
図2
図3
図4
図5
図6