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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039181
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】切断装置
(51)【国際特許分類】
   B23D 53/06 20060101AFI20240314BHJP
   B26D 1/46 20060101ALI20240314BHJP
   B26D 7/02 20060101ALI20240314BHJP
   B23D 55/00 20060101ALI20240314BHJP
   B23D 21/02 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
B23D53/06
B26D1/46 502C
B26D1/46 502E
B26D7/02 E
B23D55/00 Z
B23D21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143537
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】391019658
【氏名又は名称】株式会社中部プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 守孝
【テーマコード(参考)】
3C021
3C040
【Fターム(参考)】
3C021CC02
3C040AA16
3C040BB06
3C040DD19
3C040JJ03
(57)【要約】
【課題】配管を軸方向に沿って任意の数の個片に分割する
【解決手段】配管を軸周りに回転可能に支持する回転支持部と、配管の軸方向に沿って移動しながら配管を軸方向に切断する切断部と、制御部と、を備え、制御部は、切断部による配管の切断と、切断後、回転支持部による配管の所定角度の回転と、を交互に繰り返す制御をする、切断装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を軸方向に切断する切断装置であって、
前記配管を、軸周りに回転可能に支持する回転支持部と、
前記配管の軸方向に沿って移動しながら前記配管を軸方向に切断する切断部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記切断部による配管の切断と、切断後、前記回転支持部による前記配管の所定角度の回転と、を交互に繰り返す制御をする、切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の切断装置であって、
前記切断部は、
鋸刃と、
楔と、を有し、
前記楔は、前記鋸刃が前記配管を切断する切断線上であって、切断時における前記切断部の移動方向に対し、前記鋸刃よりも後方に設けられている、切断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の切断装置であって、
前記楔は、中心に近付くほど厚みが大きくなる円板状であり、
前記切断部の移動方向に対して垂直な方向を軸として回転する、切断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の切断装置であって、
前記鋸刃は、配管の対向する2箇所を切断するようにプーリ間に掛け回された帯鋸刃である、切断装置。
【請求項5】
請求項1に記載の切断装置であって、
前記回転支持部は、
配管が載置される回転テーブルと、
前記回転テーブルの回転中心の周りに設けられ、前記回転中心に対して均等に接近又は離隔する複数の配管固定治具と、を有し、
前記回転テーブルに載置された前記配管の側面に、複数の前記配管固定治具を押し付けることにより、前記配管の中心が前記回転中心と一致するように芯出しする、切断装置。
【請求項6】
請求項5に記載の切断装置であって、
前記配管固定治具は、
前記配管を把持するクランプ機構と、
前記クランプ機構を前記配管の径方向の外側に向かって付勢する弾性体と、を有し、
前記弾性体は、前記配管が前記切断部により複数の個片に切断された場合、前記クランプ機構が把持する一の個片を、前記配管の径方向の外側に向かって変位させる、切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、原子力発電所の解体工事において、低レベル放射性物質で汚染されているおそれのある配管は、除染してから放射能管理区域外に搬出する必要がある。配管の除染は、配管を軸方向に切断してから行われる。特許文献1には、配管を軸方向に半分に切断する半割り切断機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-007483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の半割り切断機では、配管を半割り(2分割)することはできるが、さらに多数個の個片に分割することはできない。配管を半割りよりも小さな個片に分割することができれば、径の大きな配管であっても、分割後のハンドリングが容易になり、除染や放射能濃度測定および搬出を効率的に行うことができる。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、配管を、配管の軸方向に沿って切断し、任意の数の個片に分割可能な切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の切断装置は、配管を軸方向に切断する切断装置であって、前記配管を、軸周りに回転可能に支持する回転支持部と、前記配管の軸方向に沿って移動しながら前記配管を軸方向に切断する切断部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記切断部による配管の切断と、切断後、前記回転支持部による前記配管の所定角度の回転と、を交互に繰り返す制御を行う。
【0007】
配管の軸方向の切断と、配管の軸周りの回転を交互に繰り返し行うことにより、1つの配管について、軸方向に沿って複数回切断できる。これにより、配管を任意の数の個片に分割することができる。
【0008】
本発明の実施態様として、以下の構成が望ましい。
【0009】
前記切断部は、鋸刃と、楔と、を有し、前記楔は、前記鋸刃が前記配管を切断する切断線上であって、切断時における前記切断部の移動方向に対し、前記鋸刃よりも後方に設けられていてもよい。
【0010】
鋸刃によって配管に形成された切り溝に、切断線上、かつ、鋸刃より後方に位置する楔が進入することにより、切り溝が閉じなくなる。これにより、切断時に鋸刃が切り溝に挟み込まれることを防止することができる。また、鋸刃が切り溝を通って切断方向とは逆方向に戻る際は、楔は鋸刃より先に切り溝に進入して切り溝を広げ、鋸刃が切り溝に挟み込まれることを防止する。切断時と戻り時の両方で、鋸刃が切り溝に挟み込まれることを防止できる。
【0011】
前記楔は、中心に近付くほど厚みが大きくなる円板状であり、前記切断部の移動方向に対して垂直な方向を軸として回転してもよい。楔は切り溝に挟み込まれても、切り溝に侵入した状態で回転しながら移動できる。これにより、鋸刃が切り溝に挟み込まれることを防止できる。
【0012】
前記鋸刃は、配管の対向する2箇所を切断するようにプーリ間に掛け回された帯鋸刃であってもよい。配管の対向する2か所を同時に切断できるため、配管を短時間で個片に切断できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、配管を、軸方向に沿って切断し、任意の数の個片に分割することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】切断装置の斜視図
図2】切断部の拡大図
図3】帯鋸刃、プーリ、及び配管の位置関係を示す平面図
図4】鋸刃ガイドの拡大図
図5】円板楔の図
図6】回転支持部の動作の説明図
図7】配管固定治具の側面図
図8】配管固定治具の構造の説明図
図9】配管固定治具に配管を固定する手順の説明図
図10】配管固定治具の構造の説明図
図11】切断装置の電気的構成を示すブロック図
図12】切断処理のフローチャート
図13】配管の切断箇所と分割後の個片を示す図
図14】鋸刃下降時における円板楔の機能の説明図
図15】鋸刃上昇時における円板楔の機能の説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
1.切断装置の説明
1.1 全体構成
切断装置10は、図1に示すように、金属製の筐体11を備える。筐体11は略直方体の枠状であり、側面には制御盤82が取り付けられている。筐体11の下面にはキャスタ12Aとレベルアジャスタ12Bが設けられている。切断装置10を移動させる場合はキャスタ12Aを床面に接触させて移動できるようになっている。切断装置10を稼働させる場合は、レベルアジャスタ12Bを下方に伸ばして床面に接触させ、切断装置10を床面に対して固定できるようになっている。
【0016】
以下、切断装置10の前後方向(短手方向)をX方向、左右方向(長手方向)をY方向、上下方向をZ方向として説明する。
【0017】
切断装置10は、筐体11と、切断部20と、回転支持部50と、制御盤82と、を備える。切断装置10は、回転支持部50の回転テーブル52で支持した配管Tを、切断部20の帯鋸刃(「鋸刃」の一例)33を下降させることにより、軸方向(Z方向)に沿って切断する装置である。
1.2 切断部
図2図5を参照して、切断部20について説明する。切断部20は、昇降装置21、バンドソー22などを有する。
【0018】
昇降装置21は、昇降テーブル23A、23B、昇降モータ24、送りねじ26、32などを有する。昇降テーブル23A、23Bは、筐体11の内部において、Y方向の両側に1つずつ設けられた矩形板状の部材である。
【0019】
筐体11には、送りねじ26のねじ軸26Aが、Z方向に沿って取り付けられている。ねじ軸26Aにはナット26Bが螺合している。ナット26Bは昇降テーブル23Aに対して固定されている。
【0020】
ねじ軸26Aの上端には、昇降プーリ27Aが取り付けられている。昇降モータ24を動作させると、ギヤ29を介して昇降プーリ27Aが回転する。昇降プーリ27Aの回転に伴ってねじ軸26Aが回転し、ナット26Bおよび昇降テーブル23Aが昇降する。
【0021】
昇降テーブル23Aは、四隅にガイドブッシュ30が取り付けられている。各ガイドブッシュ30には、Z方向に延びるガイドシャフト31が挿通されており、昇降テーブル23Aを摺動させている。
【0022】
昇降テーブル23Bも、昇降テーブル23Aと同様に、送りねじ32(ねじ軸32A、ナット32B)、ガイドブッシュ30、ガイドシャフト31が取り付けられている。昇降テーブル23Bは、昇降テーブル23Aと同じ高さに位置している。
【0023】
昇降プーリ27Aと昇降プーリ27Bとの間には、タイミングベルト28が掛け回されており、昇降モータ24の動力は、タイミングベルト28を介して昇降プーリ27Bに伝達される。昇降プーリ27Bと共にねじ軸32Bが回転することにより、昇降テーブル23Bは、昇降テーブル23Aと一体的に昇降する。以降の説明において、昇降テーブル23A、23Bを併せて昇降テーブル23と表記する。
【0024】
後述する制御部80は、昇降モータ24を制御して、昇降テーブル23を自在に昇降させることができる。
【0025】
図2図4を参照して、バンドソー22について説明する。バンドソー22は、帯鋸刃33と、昇降テーブル23A、23Bの下面にそれぞれ取り付けられた4つの鋸刃プーリ34A~34D(図3参照)と、昇降テーブル23Bの上面に取り付けられた鋸刃モータ35などを有する。バンドソー22は、昇降テーブル23と一体的に昇降する。図3は、帯鋸刃33が掛け回されている状態を説明するため、帯鋸刃33、鋸刃プーリ34A~34D、切断対象の配管T以外の構成要素を削除した平面図である。
【0026】
帯鋸刃33は、端部を有さず、環になった帯状の鋸刃であり、4つの鋸刃プーリ34A~34Dに掛け回されている。鋸刃モータ35の回転軸(図示せず)は、鋸刃プーリ34Bとギヤ等を介して結合している。鋸刃モータ35の駆動によって鋸刃プーリ34Bが回転すると、帯鋸刃33が鋸刃プーリ34A~34Dの周りを周回する。
【0027】
本実施形態では、帯鋸刃33の周回方向は、上方から見て反時計回り(図3の矢印F方向)である。帯鋸刃33の幅方向の下側には、刃が形成されている。帯鋸刃33を周回駆動させつつ、昇降テーブル23を下降させることにより、配管Tを上端から下端まで軸方向に切断することができる。切断後は昇降テーブル23を上昇させて、帯鋸刃33を元の位置に戻す。以降の説明において、帯鋸刃33の移動方向のうち、下方向を切断方向と表記することがある。
【0028】
後述する制御部80は、鋸刃モータ35を制御して、帯鋸刃33を任意の速度で周回駆動させたり、停止させたりすることができる。
【0029】
次に、鋸刃ガイド36、39について説明する。図2に示すように、昇降テーブル23Aには、スライド金具38が取り付けられている。スライド金具38はY方向に延びる筒状であり、筒の内部にはスライドバー37が挿通されている。スライドバー37の一端には鋸刃ガイド36が取り付けられている。スライドバー37は、スライド金具38に対してY方向に変位させることができ、レバー38Aを締めることで、スライドバー37および鋸刃ガイド36を、Y方向の任意の位置で固定できる。
【0030】
昇降テーブル23Bには、筒状のスライド金具41が取り付けられている。スライド金具41に挿通されたスライドバー40をY方向に変位させることができ、鋸刃ガイド39をY方向の任意の位置で固定できる。
【0031】
鋸刃ガイド36、39は、図2に示すように、切断対象となる配管Tの外側において、配管Tと所定距離離れた位置で固定される。鋸刃ガイド36、39は、昇降テーブル23や、バンドソー22と一体的に昇降する。
【0032】
鋸刃ガイド36、39の下面には、Y方向に延びる溝が形成されており、溝の内側には帯鋸刃33が挿通されている。鋸刃ガイド36、39は、帯鋸刃33のX方向とZ方向の変位を規制して、配管Tの切断時における帯鋸刃33の振れを抑制する。
【0033】
2つの鋸刃ガイド36、39のうち、帯鋸刃33の周回方向に対して上流(図2図4の左奥側)に位置する鋸刃ガイド36には、図4に示すように、円板楔(「楔」の一例)42が取り付けられている。円板楔42の形状は、図5(A)、図5(B)に示すように、中心に近付くにつれて厚みが大きくなる円板状である。円板楔42の中心には、X方向に延びる軸が挿通されている。軸は鋸刃ガイド36に固定されており、鋸刃ガイド36は、円板楔42を軸周りに回転可能に保持している。
【0034】
図4に示すように、円板楔42の円周の一部は、鋸刃ガイド36の、配管Tと対向する面よりも、さらに配管Tの方向に突出している。また、円板楔42は、帯鋸刃33の切断線上であって、帯鋸刃33よりも、切断方向の後方側に位置している。本実施形態の構成では、切断方向は下方向であり、切断方向の後方側とは、上方である。
【0035】
1.3 回転支持部
回転支持部50は、切断対象の配管Tを、切断時に位置ずれしないように支持する機能を有している。また、支持している配管Tを、配管Tの軸周りに任意の角度回転させることができる。配管Tを回転させると、帯鋸刃33が配管Tに当接する位置が変わるため、配管Tを任意の大きさに切断することができる。
【0036】
図1に示すように、回転支持部50は、X方向を長手方向とする略直方体状のフレーム51と、フレーム51の上方に位置する回転テーブル52と、回転テーブル52の上面に立設された配管固定治具53と、を有する。
【0037】
フレーム51は、X方向に延びる一対の平行なリニアガイド54と、テーブル移動モータ55と、を有している。リニアガイド54には、回転テーブル52が、X方向に変位可能に取り付けられている。テーブル移動モータ55は、X方向に延びる送りねじ(図示せず)のねじ軸と結合している。送りねじのナットは回転テーブル52を積載しているスライドテーブルに固定されている。スライドテーブル移動モータ55を動作させることにより、回転テーブル52をリニアガイド54に沿ってX方向に移動させることができる。
【0038】
図6は、配管Tを支持した回転テーブル52を、-X方向に移動させた状態を示している。このときの回転テーブル52および配管Tの位置を切断位置とする。平面視では、切断位置にある配管Tの中心C1は、帯鋸刃33の真下に位置する(図3参照)。この状態で周回駆動する帯鋸刃33を下降させると、帯鋸刃33は、配管Tの円周上において180°離れた対向する2箇所に当接して、それぞれの当接箇所にて配管Tを同時に切断する。
【0039】
回転テーブル52の上面に切断前の配管Tを固定したり、切断後の配管Tを回転テーブル52から取り除いたりするときは、回転テーブル52を+X方向(図6の紙面中の下方向)に移動させる。このときの回転テーブル52および配管Tの位置を、搬出入位置とする。配管Tを回転テーブル52上に載置したり、切断した配管Tの個片を搬出したりする場合は、あらかじめ回転テーブル52を搬出入位置に移動させる。
【0040】
回転テーブル52は、板面が水平な円板状である。回転テーブル52とフレーム51との間には、割り出しモータ56(図11参照)が設けられている。回転テーブル52の中心C2は、「回転中心」の一例である。割り出しモータ56を動作させることにより、回転テーブル52を、Z方向を軸として軸周りに回転させたり、停止させたりすることができる。
【0041】
本実施形態の回転テーブル52の回転方向は、図6に示すように、平面視にて時計回りである。回転テーブル52の上面には、配管固定治具53が円周に沿って22.5°ごとに、合計16個が等間隔に立設されている。16個の配管固定治具53は全て同一の構造である。
【0042】
図7は、16個の配管固定治具53のうち、回転テーブル52の円周上において対向する位置にある一対の配管固定治具53と、回転テーブル52のみを記載した側面図である。他の14個の配管固定治具53は図示省略している。配管固定治具53は、スライドベース58と、支柱59と、クランプ棒60と、クランプボルト61と、送りねじ66(図8参照)などを有する。
【0043】
スライドベース58は、矩形板状の部材であり、回転テーブル52の径方向(以下、単に「径方向」と表記する)を長手方向として回転テーブル52の上面に固定されている。スライドベース58の上面には、支柱59が径方向に変位可能に取り付けられている。
【0044】
支柱59は、Z方向に延びるH断面形状の柱である。支柱59は、回転テーブル52の内部に位置する送りねじ66のナット66Bとは、上部接続金具68、および下部接続金具67を介して結合している(図10参照)。ねじ軸66Aの径方向外側の端部には、取り外し可能なハンドル62が嵌め込まれている。ハンドル62を回すと、ねじ軸66Aが回転し、ナット66Bと支柱59が一体的に、回転テーブル52の径方向に変位する。
【0045】
本実施形態の配管固定治具53では、上部接続金具68は、下部接続金具67に対して固定されておらず、径方向にわずかにずれることができる。具体的には、図10に示すように、上部接続金具68の下面に形成された凹部68Aに、下部接続金具67の上面に形成された凸部67Aが嵌入し、径方向の変位に対して引っ掛かるようになっており、ナット66Bの径方向の変位が支柱59に伝達される。
【0046】
凹部68Aの径方向の長さは、凸部67Aの径方向の長さよりも大きく、凹部68Aの内側にはギャップGができる。下部接続金具67が変位しない場合でも、上部接続金具68はギャップGの分だけ径方向に変位することができる。したがって、ねじ軸66Aを回転させず、ナット66Bの位置が変わらなくても、支柱59に外力が加わると、支柱59は径方向に変位する。
【0047】
上部接続金具68の径方向外側には、ばね取付金具69が取り付けられている。ばね取付金具69の下寄りの位置には、径方向内側に向かってばね(「弾性体」の一例)70が取り付けられている。ばね70は下部接続金具67の側面に当接している。ばね70の弾性力により、ばね取付金具69は径方向外側に付勢されている。
【0048】
図8に示すように、ねじ軸66Aの、径方向内側の端部には、ねじ軸66Aと同軸で回転する小傘歯車64Aが取り付けられている。また、小傘歯車64Aは、小傘歯車64Aの下方に位置する大傘歯車64Bと噛み合っている。大傘歯車64Bは、回転テーブル52の中心C2を回転中心とする略円板状の傘歯車である。16個の小傘歯車64Aは、大傘歯車64Bを介して相互に結合している。いずれか一本のねじ軸66Aを回転させると、すべてのねじ軸66Aが同期して回転するようになっている。ねじ軸66Aの回転に伴って、16本の支柱59が連動して径方向に変位し、中心C2に対して均等に接近したり、離隔したりする。
【0049】
図7に示すように、支柱59の下寄りの位置には、径方向に沿った貫通孔が設けられており、貫通孔にはクランプベース65が挿通している。クランプベース65の径方向内側の端部には、Z方向に延びるクランプ棒60が立設されている。クランプベース65およびクランプ棒60は、支柱59に対して径方向に変位可能である。クランプベース65の径方向外側には径方向に沿ったねじ穴が形成されており、ねじ穴にはクランプボルト61が螺合している。
【0050】
クランプボルト61を緩めると、支柱59とクランプ棒60との間隔が広がり、クランプボルト61を締めると、支柱59とクランプ棒60との間隔が狭くなる。支柱59とクランプ棒60との間に配管Tを挟み込むことで、支柱59に対して配管Tを固定できる。クランプボルト61、支柱59、クランプ棒60は、併せて「クランプ機構」の一例である。
【0051】
次に、図9を参照して、配管固定治具53を用いた、配管Tの固定手順について説明する。回転テーブル52を搬出入位置に移動させ、対向する一対の支柱59の距離が、切断対象である配管Tの直径(外径)よりも大きくなるように、ハンドル62を回転させて支柱59の位置を調整する。また、支柱59とクランプ棒60の距離が、配管Tの肉厚以上になるように、クランプボルト61を緩めておく。
【0052】
図9(A)に示すように、クレーン等(図示しない)で吊り上げた配管Tを、回転テーブル52に上方から近付ける。配管Tが、支柱59とクランプ棒60の間に入るように、配管Tを下降させる。
【0053】
次に、図9(B)に示すように、ハンドル62をねじ軸66Aに取り付けて回転させ、支柱59を、中心C2に接近する方向に変位させる。上述したように、ハンドル62の回転に伴い、すべての支柱59が、中心C2に対して均等に変位する。複数の支柱59が、外側から配管Tの側面に均等に押し付けられ、配管Tを仮固定する。仮固定では、配管Tの中心C1と回転テーブル52の中心C2とが一致するように位置合わせ(芯出し)される。
【0054】
この構成では、ハンドル62を回転させると、全ての支柱59を、中心C2に対して均等に接近させることができる。芯出しのために支柱59の位置を個別に調整する必要がないため、短時間で配管Tの芯出しをすることができる。
【0055】
次に、クランプ機構による配管Tの把持を行う。図9(C)に示すように、クランプボルト61を締め、クランプ棒60を支柱59に接近させる。クランプ棒60が配管Tの内側に当接すると、配管Tは、支柱59とクランプ棒60とによって把持される。全てのクランプボルト61を締めると、配管Tの本固定が完了する。この後配管Tが切断されて個片T2(図13参照)に分割されても、各個片T2は内側と外側の両方から挟み込まれているため、倒れることはない。
【0056】
本固定が完了したときの、配管固定治具53の周辺における各部材の状態を、図10に示す。本固定の完了後、ハンドル62を回してナット66Bを径方向外側に変位させ、ばね70に弾性力を蓄積させる。配管Tを切断する前は、配管固定治具53で固定している配管Tの一部は、配管Tの他の部分と繋がっており、相互に拘束されているが、配管Tが切断されて個片T2に分割されると(図13参照)、拘束がなくなる。すると、ばね70の弾性力によって、ばね取付金具69、上部接続金具68、支柱59、およびクランプ棒60と共に、把持されている個片T2が、径方向外側に変位する。これにより、2分割以降の切断(後述する、切断箇所B以降の切断)において、配管Tが個片T2に切断された時に、切り溝T1(隣接する個片T2の間の隙間)が帯鋸刃33の幅より大きく広がるため、帯鋸刃33が切り溝T1に挟み込まれることを抑制できる。その結果、切断後の上昇時において、帯鋸刃33の上昇速度を上げて、帯鋸刃33を短時間で元の位置に戻すことができ、作業を効率化できる。
【0057】
1.4 制御盤
次に、制御盤82について説明する。制御盤82は、図11に示すように、制御部80と、操作部81と、を有している。制御部80は、シーケンサやCPU等により構成されている。制御部80は、切断装置10が備えるモータ(鋸刃モータ35、昇降モータ24、割り出しモータ56、テーブル移動モータ55)の回転数や回転方向、ON/OFFのタイミングなどを、所定の動作プログラムに従って制御する。
【0058】
操作部81は、切断装置10を稼働させるための各種ボタンや、設定を変更するためのスイッチ、切断装置10の状態を示すランプ等が設けられている。作業者は、操作部81を操作して、切断装置10による配管Tの切断の開始、終了や、設定の変更を行う。
【0059】
2.工程説明
次に、図12に示す切断処理のフローチャートを参照して、配管Tを軸方向に切断する工程について説明する。なお、作業開始時点において、上述した回転テーブル52に対する配管Tの仮固定及び本固定は完了しており、回転テーブル52は、搬出入位置にある。
【0060】
作業者は、操作部81のスイッチを操作して、配管固定治具53に対する帯鋸刃33の位置が、図13(A)の一点鎖線Aと平面視にて重なる(回転停止位置)ように、回転テーブル52を回転させる(S10)。一点鎖線Aは平面視にて配管固定治具53と重なっていないため、一点鎖線Aの位置で帯鋸刃33を下降させると、配管固定治具53に干渉せず、配管Tのみを切断できる。
【0061】
配管Tを本固定した後、作業者は操作部81のスイッチを操作して、配管Tの分割数を、2分割、4分割、8分割、16分割のうちの任意の数値に切り替える(S20)。本実施形態では、配管Tを16分割(16等分)する場合について説明するが、等分ではなく異なるサイズに分割することもできる。
【0062】
スイッチを操作して分割数を「16」とし、操作部81の運転スイッチをONにすると、制御部80による自動運転が開始される。
【0063】
制御部80は、配管Tを固定した回転テーブル52を、切断位置(回転テーブル52の中心C2が帯鋸刃33の真下となる位置)まで水平移動させる。
【0064】
制御部80は、鋸刃モータ35を動作させて帯鋸刃33を周回駆動させる。次いで、昇降モータ24を動作させて、昇降テーブル23を下降させる。昇降テーブル23の下降に伴って、帯鋸刃33も下降する(S30)。
【0065】
下降中の帯鋸刃33周辺の状態を図14に示す。昇降テーブル23を下降させると、まず帯鋸刃33が配管Tに当接して切り溝T1が形成され、その後、切り溝T1に円板楔42が進入する。切り溝T1に円板楔42が進入することにより、切り溝T1が押し広げられる。これにより、帯鋸刃33による切断中(下降中)において、切断された配管Tが反ったり傾いたりして、切り溝T1が閉じて帯鋸刃33が挟まれてしまうことが抑制され、配管Tの切断を継続することができる。
【0066】
制御部80は、昇降テーブル23の下降を継続し、帯鋸刃33は配管Tの下端まで到達する。このとき、図13(A)に示す一点鎖線Aの位置における切断が完了し、配管Tは2つに分割される。また、制御部80は、切断回数をカウントアップする。
【0067】
次に、制御部80は、昇降モータ24の回転方向を逆転させて、昇降テーブル23を上昇させる(S40)。上昇中の帯鋸刃33周辺の状態を図15に示す。昇降テーブル23を上昇させると、円板楔42が切り溝T1に進入し、その後円板楔42により押し広げられた切り溝T1に、帯鋸刃33が進入する。これにより、帯鋸刃33が切り溝T1に挟み込まれることが抑制され、帯鋸刃33を元の位置まで上昇させることができる。
【0068】
なお、鋸刃ガイド36は、円板楔42を回転可能に保持している。これにより、円板楔42が切り溝T1に進入して両側から挟み込まれても、軸周りに回転することにより、進入したまま上下方向に移動できる。円板楔42の下降時(切断)および上昇時(戻り)の両方において、円板楔42が切り溝T1に挟み込まれて移動できなくなることを抑制できる。
【0069】
昇降テーブル23が元の位置まで上昇すると、制御部80は、配管TがS10で設定した分割数に分割されたか否かを判断する(S50)。切断回数がカウントアップされる度に分割数は2ずつ増加する。上述したように、本実施形態で設定した分割数は16である。図13(A)に示す一点鎖線A(以下、切断箇所Aともいう)で1回だけ切断が完了しているので、分割数は2であり、未達成と判断する。
【0070】
設定した分割数に達していないため、制御部80は、回転テーブル52を回転させる(S60)。本実施形態では、配管Tを16分割するため、切断ごとの回転角度は、360°/16=22.5°である。
【0071】
制御部80は、帯鋸刃33による切断(2回目)を開始する(S30)。2回目の切断箇所は、前回の切断箇所Aから22.5°ずれた切断箇所Bである。
【0072】
帯鋸刃33が配管Tの下端まで到達して切断箇所Bにおける切断が完了したとき、切断箇所Aと切断箇所Bの2箇所で切断された配管Tは4つの個片T2に分割されており、分割数は4になる。制御部80は、昇降テーブル23を上昇させ(S40)、設定した分割数に達したか否かを判断する(S50)。
【0073】
以上説明したように、S50でYESと判断されるまで、S30~S60のループにおいて、配管Tの切断と、回転テーブル52の22.5°の回転が、交互に繰り返され、図13(A)に示す切断箇所AからHまで順次切断されていく。8回目のループにおいて、配管Tは切断箇所Hで切断される。このとき、図13(B)に示すように、配管Tは22.5°刻みで16個の個片T2に分割されており、設定した分割数に達成しているため(S50:YES)、切断処理は終了する。
【0074】
切断処理を終えると、制御部80は、自動で回転テーブル52を切断位置から搬出入位置に移動させ、その後作業者がクランプボルト61を緩めて切断後の個片T2を取り出す。
【0075】
3.効果説明
(1)本実施形態に係る切断装置10は、図12に示すように、切断部20(帯鋸刃33)による配管Tの切断と、回転支持部50(回転テーブル52)による配管Tの軸周りの回転を、個片T2が所定の分割数に達するまで交互に繰り返し行い、配管Tを分割する。
【0076】
これにより、配管Tを、軸方向に沿って複数回切断し、個片T2に分割することができる。
多数の個片T2に分割する程、個々の個片T2の重量やサイズが小さくなるため、作業者によるハンドリングが容易になり、切断後の作業(例えば、除染や搬出)の効率が向上する。
【0077】
また、切断装置10が、配管Tの切断と、軸周りの回転の両方を実行するため、所定の分割数に切断するまで作業者による操作や段取り替え作業が不要であり、作業者の負担が軽減される。
【0078】
(2)この構成では、円板楔42は、帯鋸刃33が配管Tを切断する際の切断線上にあって、切断時における帯鋸刃33の移動方向(下方向)に対し、帯鋸刃33よりも後方(上方)に設けられている。
【0079】
これにより、帯鋸刃33による切断でできた配管Tの切り溝T1に、円板楔42が進入して切り溝T1が閉じるのを妨げる。円板楔42により切り溝T1が押し広げられるため、切断時に帯鋸刃33が切り溝T1に挟み込まれず、配管Tの切断が中断されない。
【0080】
また、帯鋸刃33が切り溝T1を通って切断方向とは逆方向(上方向)に戻る際は、円板楔42は帯鋸刃33よりも先に切り溝T1に進入して切り溝T1を広げるため、帯鋸刃33が切り溝T1に挟み込まれない。帯鋸刃33による配管Tの切断時と、切断後に帯鋸刃33が戻る時の両方において、帯鋸刃33の挟み込みを防止できる。
【0081】
(3)この構成では、円板楔42は、中心に近付くほど厚みが大きくなる円板状であり、帯鋸刃33の移動方向(Z方向、上下方向)に垂直な方向(X方向)を軸として回転するようになっている。このようにすると、円板楔42が切り溝T1に進入し、挟み込まれても、円板楔42が回転することにより、切り溝T1に進入した状態で帯鋸刃33と共に上下に移動可能である。
【0082】
(4)この構成では、帯鋸刃33は、配管Tの対向する2箇所で配管Tに当接し、その2箇所を同時に切断できる。これにより、配管Tを短時間で複数の個片T2に分割することができる。
【0083】
(5)この構成では、配管Tの2分割以降の切断において、配管Tが個片T2に切断されたときに、クランプ機構は、把持する一の個片を、配管Tの径方向の外側に向かって変位させる。これにより、切溝T1の隙間を鋸刃厚さより広くして、鋸刃の上昇速度を上げることができ、作業効率を上げることができる。
【0084】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、配管Tの切断と、切断後の回転を、切断箇所AからHまで8回繰り返したが、繰り返し回数は8回に限られない。配管Tを少なくとも2個以上の個片T2に分割できれば、繰り返し回数は何度でもよい。
【0085】
(2)上記実施形態では、切断部20は、切り溝T1に進入する円板楔42を有していたが、切断部20は円板楔42を有していなくてもよい。
【0086】
(3)上記実施形態では、楔(円板楔42)は中心に近付くほど厚みが大きくなる円板状であり、X方向を軸として回転可能である場合を例示した。楔の形状は円板状に限らず、矩形板状や棒状であってもよい。また、回転しない楔であってもよい。
【0087】
(4)上記実施形態では、切断部20の鋸刃が帯鋸刃33である場合を例示して説明したが、帯鋸刃でなくてもよい。レシプロソーや、ワイヤソーなど、他の形式の鋸刃であってもよい。また、配管の2箇所を同時に切断しなくてもよく、レシプロソーやワイヤソーで1箇所ずつ切断してもよい。
【0088】
(5)上記実施形態では、円板楔42を、帯鋸刃33の周回方向の上流側にのみ設けたが、下流側にあってもよい。上流側と下流側の両方にあってもよい。
【0089】
(6)上記実施形態では、円板楔42を、配管Tの外側に設けたが、配管Tの内側にあってもよい。
【0090】
(7)上記実施形態では、鋸刃ガイド36に円板楔42が取り付けられている構成を例示したが、円板楔42は鋸刃ガイド36とは別の部材に取り付けられていてもよい。
【0091】
(8)上記実施形態では、配管Tの中心C1が、帯鋸刃33の直下に位置している状態で配管Tを切断する場合を例示した。配管Tの中心C1が帯鋸刃33の直下にない状態で、配管Tを切断してもよい。
【0092】
(9)上記実施形態では、16個の配管固定治具53を有する回転テーブルを用いて、配管Tを16個の個片に分割する場合を例示した。配管固定治具の数は16個に限定されない。分割数は16に限られず、配管固定治具53の数を超えない任意の数に設定できる。また、配管の分割数に応じて、回転テーブル上の配管固定治具53の数を変更してもよい。例えば、分割数が8の場合は、8個の配管固定治具53を有する回転テーブルを用いて、配管Tを分割することができる。
【符号の説明】
【0093】
10 切断装置
20 切断部
21 昇降装置
22 バンドソー
33 帯鋸刃
36、39 鋸刃ガイド
42 円板楔(「楔」の一例)
50 回転支持部
52 回転テーブル
53 配管固定治具
80 制御部
81 操作部
82 制御盤
T 配管
T1 切り溝
T2 個片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15