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  • 特開-二酸化炭素の再利用システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039188
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】二酸化炭素の再利用システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20240314BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240314BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20240314BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20240314BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20240314BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20240314BHJP
   F03B 17/06 20060101ALN20240314BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/96
B01D53/14 220
B01D53/18 150
H02J15/00 G
F03B17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143546
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松隈 正樹
(72)【発明者】
【氏名】笠井 一徳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大輔
【テーマコード(参考)】
3H074
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
3H074AA12
3H074BB10
3H074CC34
4D002AA09
4D002BA02
4D002DA01
4D002DA35
4D002EA07
4D002HA08
4D020AA03
4D020BA23
4D020BB03
4D020BC02
4D020CB25
4D020CC01
(57)【要約】
【課題】低コストで簡素な二酸化炭素の再利用システムを提供する。
【解決手段】二酸化炭素を含むガスが入れられた複数の加圧タンクCT1、CT2に加圧水を給水することにより、前記加圧タンクCT1、CT2内のガスに含まれる二酸化炭素を等温圧縮により加圧し、前記加圧水に溶解させて炭酸水を生成する炭酸水生成手段12と、生成した前記炭酸水を前記加圧水として複数の前記加圧タンクCT1、CT2間を循環させることによって、等温圧縮による加圧を繰り返し、前記加圧水に対する二酸化炭素の溶解度を増大させる溶解度増大手段14と、二酸化炭素の溶解度を増大させた前記炭酸水を減圧することにより、前記炭酸水に含まれる二酸化炭素を放出して利用する利用手段16とを備えるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含むガスが入れられた複数の加圧タンクに加圧水を給水することにより、前記加圧タンク内のガスに含まれる二酸化炭素を等温圧縮により加圧し、前記加圧水に溶解させて炭酸水を生成する炭酸水生成手段と、
生成した前記炭酸水を前記加圧水として複数の前記加圧タンク間を循環させることによって、等温圧縮による加圧を繰り返し、前記加圧水に対する二酸化炭素の溶解度を増大させる溶解度増大手段と、
二酸化炭素の溶解度を増大させた前記炭酸水を減圧することにより、前記炭酸水に含まれる二酸化炭素を放出して利用する利用手段とを備えることを特徴とする二酸化炭素の再利用システム。
【請求項2】
前記炭酸水生成手段により加圧されたガスの圧力エネルギーを利用して発電する発電手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素の再利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガス中の二酸化炭素の再利用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、化学吸収法、物理吸収法、膜分離法、深冷分離法、物理吸着法、酸素燃焼法、化学ループ燃焼法などにより、燃焼ガス中のCO2(二酸化炭素)を高効率で回収する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-136341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来の二酸化炭素の回収技術は、温度差、分圧差、濃度差、相変化を利用したCO2の分離回収技術であるが、これらは熱源が必要であったり、運転費用が高いものであったり、装置が複雑で大型化するといった問題がある。このため、熱源を必要とせず、低コストで簡素なシステムが求められていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低コストで簡素な二酸化炭素の再利用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る二酸化炭素の再利用システムは、二酸化炭素を含むガスが入れられた複数の加圧タンクに加圧水を給水することにより、前記加圧タンク内のガスに含まれる二酸化炭素を等温圧縮により加圧し、前記加圧水に溶解させて炭酸水を生成する炭酸水生成手段と、生成した前記炭酸水を前記加圧水として複数の前記加圧タンク間を循環させることによって、等温圧縮による加圧を繰り返し、前記加圧水に対する二酸化炭素の溶解度を増大させる溶解度増大手段と、二酸化炭素の溶解度を増大させた前記炭酸水を減圧することにより、前記炭酸水に含まれる二酸化炭素を放出して利用する利用手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る他の二酸化炭素の再利用システムは、上述した発明において、前記炭酸水生成手段により加圧されたガスの圧力エネルギーを利用して発電する発電手段をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る二酸化炭素の再利用システムによれば、二酸化炭素を含むガスが入れられた複数の加圧タンクに加圧水を給水することにより、前記加圧タンク内のガスに含まれる二酸化炭素を等温圧縮により加圧し、前記加圧水に溶解させて炭酸水を生成する炭酸水生成手段と、生成した前記炭酸水を前記加圧水として複数の前記加圧タンク間を循環させることによって、等温圧縮による加圧を繰り返し、前記加圧水に対する二酸化炭素の溶解度を増大させる溶解度増大手段と、二酸化炭素の溶解度を増大させた前記炭酸水を減圧することにより、前記炭酸水に含まれる二酸化炭素を放出して利用する利用手段とを備えるので、低コストで簡素な二酸化炭素の再利用システムを提供することができるという効果を奏する。
【0009】
また、本発明に係る他の二酸化炭素の再利用システムによれば、前記炭酸水生成手段により加圧されたガスの圧力エネルギーを利用して発電する発電手段をさらに備えるので、二酸化炭素の再利用とともに発電を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明に係る二酸化炭素の再利用システムの実施の形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、加圧水によるガスの等温圧縮を行い、加圧水にCO2(二酸化炭素)を溶解させ炭酸水として畜水し、必要時に減圧して回収したCO2ガスを植物栽培などの用途に再利用するというものである。また、水ポンプによる加圧とともにガスの等温圧縮も実施するため、加圧ガスにより加圧水を水車に給水することで水力発電が可能である。これにより、蓄電機能を付加することができる。
【0012】
以下に、本発明に係る二酸化炭素の再利用システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る二酸化炭素の再利用システム10は、炭酸水生成手段12と、溶解度増大手段14と、利用手段16と、発電手段18を備える。
【0014】
炭酸水生成手段12は、CO2を含むガスが入れられた複数の加圧タンクに加圧水を給水することにより、加圧タンク内のガスに含まれるCO2を等温圧縮により加圧し、加圧水に溶解させて炭酸水を生成するものである。
【0015】
この炭酸水生成手段12は、燃焼ガス排出源20(例えば貫流ボイラー)から排出された燃焼ガスを誘引する排ガスブロアー22と、加圧タンクCT1、CT2と、炭酸水タンクCWTと、水ポンプ24(例えば多段渦巻水ポンプ)と、水タンクWTとを備える。排ガスブロアー22と加圧タンクCT1はガス配管26、28で接続しており、加圧タンクCT1、CT2は給水管30、32、ガス配管34で接続している。加圧タンクCT1と炭酸水タンクCWTは給水管36で接続している。ガス配管26、28、給水管30には、三方弁38、40が設けられる。給水管32には切換え弁42が設けられる。水ポンプ24と水タンクWTは給水管44で接続している。水ポンプ24と加圧タンクCT1、CT2は給水管46および三方弁48、40を介して接続している。排ガスブロアー22の性能は、例えば0.1MPaG、360kg/hとし、CO2として0.36kg/m3を加圧タンクCT1に供給するように構成することができる。
【0016】
<等温圧縮化>
この炭酸水生成手段12では、従来のガス圧縮方法を等温圧縮化して、圧縮による吐出ガス温度上昇を抑制することで、加圧水への溶解度が低減することを防止することができる。
【0017】
水に溶解するCO2の溶解度が加圧により大きく上昇する性質、また燃焼排ガス中のN2ガス、O2ガス、水蒸気などに比べCO2ガスの溶解量が大きい点を活用し、燃焼ガス中のCO2を加圧水に溶解させて回収する。加圧によりCO2ガス温度が上昇して溶解度が低下しないようにCO2ガスの圧縮を加圧水による等温圧縮方式とする。
【0018】
温度上昇させないため、CO2ガス発生圧縮熱をQc(kcal/h)、総括熱伝達係数をκ(kcal/m2h)、冷却面積をA(m2)、空気と冷却熱媒との温度差をΔTlnとすると、
Qc=κ×A×ΔTln
となる。等温化してCO2と加圧水の温度差ΔTlnを抑制しポリトロープ圧縮行程でポリトロープ指数nを1.0に近づけるためにはAを大きくとる。
【0019】
従来の機械式圧縮方法では、圧縮行程時間が1mm秒~最長でも100mm秒程度と短いため物理的に伝熱面積Aが小さくなってしまい、必要な熱交換量を得るために温度差が大きくなり、断熱圧縮とならざるを得なかった。これに対し、本実施の形態では、加圧タンクCT1、CT2を横型タンクとし、これに水ポンプ24による加圧水を給水し、水面上昇により横型タンク内のガスを圧縮する。こうすると、横型タンク内の水面が伝熱面積となり、圧縮時間を長くとることで温度上昇を抑制しつつ、CO2ガスを水面から加圧水に効率よく溶解させることができる。例えば、加圧水でガスを2MPaGまで昇圧し、CO2分圧0.3MPaGで溶解させてもよい。
【0020】
<繰り返し再圧縮による炭酸水溶解度の増大>
溶解度増大手段14は、生成した炭酸水を加圧水として複数の加圧タンクCT1、CT2間を循環させることによって、等温圧縮による加圧を繰り返し、加圧水に対するCO2の溶解度を増大させるものである。
【0021】
1回の加圧水による燃焼ガスの等温圧縮では、燃焼ガス中のCO2量(例えば15%)によっては加圧水へのCO2溶解量は飽和に達しないため、加圧タンクを複数設ける。本実施の形態では、2本の加圧タンクCT1、CT2を設け、加圧タンクCT1内の燃焼排ガスを加圧圧縮吐出終了のタイミングで水ポンプ24からの給水を継続し、CO2を吸収して一定溶解度になった炭酸水を燃焼排ガスが充填された加圧タンクCT2に供給し、加圧タンクCT2内の燃焼排ガスを圧縮する。加圧タンクCT1、CT2間で交互に切り替えて炭酸水を循環させ、加圧水による燃焼排ガスの圧縮を繰り返し、加圧タンクCT1、CT2内の加圧水へのCO2溶解度が飽和近くになった段階で、吐出部に設けた切換え弁42で別置の炭酸水タンクCWTに吐出する。
【0022】
炭酸水タンクCWTへの吐出タイミングの制御は、加圧タンクCT1、CT2に設けた炭酸ガス溶解度センサーの検出値に基づいて行ってもよく、また加圧タンクCT1とCT2での圧縮繰返し回数、圧力、温度のパラメータによる理論溶解度値によって行ってもよい。
【0023】
<炭酸水の貯水と利用>
利用手段16は、CO2の溶解度を増大させた炭酸水を減圧することにより、炭酸水に含まれるCO2を放出して利用するものである。
【0024】
この利用手段16は、炭酸水タンクCWTから炭酸水を必要とする設備50(例えば、ハウス栽培農園)に炭酸水を供給するための炭酸水配管52と、燃焼ガス用のエアタンクATとを備えている。エアタンクATは、炭酸水タンクCWTとガス配管54およびリリーフ弁56を介して接続している。エアタンクATは、加圧タンクCT1、CT2とガス配管58、60および三方弁62を介して接続している。
【0025】
炭酸水タンクCWT内は、炭酸水流入前に加圧タンクCT1、CT2から圧縮され吐出した高圧燃焼排ガスで充填しておく。一方、エアタンクAT内も高圧燃焼排ガスで充填しておく。飽和した加圧炭酸水が炭酸水タンクCWTに貯留した体積分だけ、炭酸水タンクCWT内の燃焼ガスがエアタンクATにリリーフ弁56を介して流入するように設定する。リリーフ弁56は、例えば2MPaG以上で開放状態になるように設定してもよい。炭酸水タンクCWTから炭酸水を必要とする設備50まで配管した炭酸水配管52の末端に設けた制御弁64を開いて大気圧に開放することにより、減圧による発泡CO2ガスの供給と給水が可能となる。これにより、例えばハウス栽培のトマト、キュウリなどの栽培用に大気圧飽和炭酸水とCO2ガスの供給が可能となる。
【0026】
なお、大気圧飽和炭酸水は、CO2と加圧水とを等温下で接触させて大気圧における飽和溶解度以上にCO2を溶解させた炭酸水タンクCWT内の過飽和炭酸水を、大気圧状態にまで減圧して、過度に溶解されているCO2ガスを放出させることによって生成される。したがって、過飽和炭酸水と大気圧飽和炭酸水の差分がCO2ガスとして放出される。
【0027】
従来、ボイラーの燃焼排ガス中のCO2ガスをハウス栽培などに利用することは行われているが、ボイラー燃焼の時期、時間帯とCO2ガス供給必要時間帯が一致しない場合には無駄な燃料消費が生じていた。燃焼ガス中のCO2ガスを炭酸水の形で貯留しておくと、こうした欠点が解消される。また、従来のハウス栽培での給水とCO2ガス供給を加圧炭酸水に代替し、合理化できる。
【0028】
<蓄電池機能>
上記の飽和炭酸水の生成過程で燃焼ガスも高圧に等温圧縮され、エアタンクATに蓄圧される。
【0029】
蓄電機能としての充電は、加圧用の水ポンプ24の図示しないモータへの入力電力がエアタンクAT内のガス圧力エクセルギー上昇の形で蓄電される。発電手段18は、このガスの圧力エネルギーを利用して発電する発電機により構成される。
【0030】
電力必要時の放電は、加圧タンクCT1、CT2と同じ形式の加圧タンクCT3(または膨張タンク)に給水管66を通じて水ポンプ24から水を充填しておき、エアタンクATからの高圧ガスをガス配管68を通じて加圧タンクCT3に給気し、水を加圧する。加圧水は給水管70を介して水車72(例えばフランシス水車)に給水され、水車72によって駆動される発電手段18の発電機により発電する。なお、水車72は水タンクWTとも給水管74で接続している。
【0031】
充電、放電時間帯をずらすことにより、ピークカット電力など余剰電力を有効に利用することができる。
【0032】
本実施の形態によれば、燃焼ガス中のCO2ガスを加圧水に溶解させ、炭酸水タンクCWTに蓄え、必要とする設備、場所に必要な時間に炭酸ガスを減圧して放出することで利用が可能となる。
【0033】
また、ガスの等温圧縮を可能として従来の圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES:Compressed Air Energy Storage)システムより充放電効率を大幅に向上させるとともに、耐久寿命に優れ、空気、水しか使用しない管理の容易な蓄電池が得られる。
【0034】
また、二酸化炭素を回収・再利用するために、特別な熱源を必要とせず、簡単な装置構成、効率的な電力消費となるため運転費用を抑制することができる。したがって、低コストで簡素な二酸化炭素の再利用システムを提供することができる。
【0035】
以上説明したように、本発明に係る二酸化炭素の再利用システムによれば、二酸化炭素を含むガスが入れられた複数の加圧タンクに加圧水を給水することにより、前記加圧タンク内のガスに含まれる二酸化炭素を等温圧縮により加圧し、前記加圧水に溶解させて炭酸水を生成する炭酸水生成手段と、生成した前記炭酸水を前記加圧水として複数の前記加圧タンク間を循環させることによって、等温圧縮による加圧を繰り返し、前記加圧水に対する二酸化炭素の溶解度を増大させる溶解度増大手段と、二酸化炭素の溶解度を増大させた前記炭酸水を減圧することにより、前記炭酸水に含まれる二酸化炭素を放出して利用する利用手段とを備えるので、低コストで簡素な二酸化炭素の再利用システムを提供することができる。
【0036】
また、本発明に係る他の二酸化炭素の再利用システムによれば、前記炭酸水生成手段により加圧されたガスの圧力エネルギーを利用して発電する発電手段をさらに備えるので、二酸化炭素の再利用とともに発電を行うことができる。
【0037】
なお、2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施の形態に係る二酸化炭素の再利用システムは、このSDGsの17の目標のうち、例えば「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」の目標などの達成に貢献し得る。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明に係る二酸化炭素の再利用システムは、ボイラーなどから排出される燃焼ガスなどに含まれる二酸化炭素の再利用・回収に有用であり、特に、システムを低コスト化、簡素化するのに適している。
【符号の説明】
【0039】
10 二酸化炭素の再利用システム
12 炭酸水生成手段
14 溶解度増大手段
16 利用手段
18 発電手段
AT エアタンク
CT1,CT2,CT3 加圧タンク
CWT 炭酸水タンク
WT 水タンク
図1