IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精工株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電動パワーステアリング装置 図1
  • 特開-電動パワーステアリング装置 図2
  • 特開-電動パワーステアリング装置 図3
  • 特開-電動パワーステアリング装置 図4
  • 特開-電動パワーステアリング装置 図5
  • 特開-電動パワーステアリング装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039194
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143560
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 祥史
(72)【発明者】
【氏名】今関 太一
(72)【発明者】
【氏名】キッティポン ルンワシラー
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB19
3D333CC14
3D333CD05
3D333CD09
3D333CD10
3D333CD14
3D333CD16
3D333CD17
3D333CD21
3D333CD23
3D333CD28
3D333CE04
3D333CE16
3D333CE17
(57)【要約】
【課題】より小型化された、電動パワーステアリング装置を提供すること。
【解決手段】電動パワーステアリング装置は、アシストピニオン軸と、ウォームホイールと、ウォームシャフトと、アシストピニオン軸を収容するアシストピニオン軸収容部を含む第1ハウジングと、ウォームホイールを収容するウォームホイール収容部とウォームシャフトを収容するウォームシャフト収容部とを含む第2ハウジングと、を備える。第1ハウジングにおける第1方向の他方側には第1取付部が設けられ、第2ハウジングにおける第1方向の一方側には第2取付部が設けられ、第2取付部は環状に延びるシール面を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延び、且つ、第1方向の一方側の外周にラック軸のラック歯と噛み合うピニオン歯が設けられるアシストピニオン軸と、
前記アシストピニオン軸における第1方向の他方側に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部が設けられるウォームホイールと、
前記ホイール歯部と噛み合うシャフト歯部を有し、前記ウォームホイールに対して第1方向に交差する第2方向の一方側に配置され、且つ、モータの駆動力によって回転するウォームシャフトと、
前記アシストピニオン軸を収容するアシストピニオン軸収容部を含む第1ハウジングと、
前記ウォームホイールを収容するウォームホイール収容部と、当該ウォームホイール収容部に対して第2方向の一方側に隣接して配置され前記ウォームシャフトを収容するウォームシャフト収容部と、を含み、且つ、前記第1ハウジングの第1方向の他方側に配置される第2ハウジングと、を備え、
前記ウォームホイール収容部と前記ウォームシャフト収容部との間には、第1方向に延び且つ貫通孔を有する壁部が配置され、当該貫通孔において前記ホイール歯部と前記シャフト歯部とが噛み合っており、
前記第1ハウジングにおける第1方向の他方側に位置する第1取付部と前記第2ハウジングにおける第1方向の一方側に位置し且つ前記第1取付部に取り付けられる第2取付部とが設けられ、
前記第2取付部における第1方向の一方側の端面は、前記第1取付部に当接するシール面を有し、
第1方向から見て、前記第2取付部の前記シール面は、前記ウォームシャフトおよび前記ウォームシャフト収容部と一部が重なり、前記アシストピニオン軸の外周側に周方向に沿って延びる環状の形状を有する、
電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記第2取付部の前記シール面は、
第1方向および第2方向に交差する第3方向から見て、第2方向の他方側に行くに従って第1方向の他方側に向かうように斜めに延びる、
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記第1取付部と前記第2取付部とは、前記アシストピニオン軸の外周側に周方向に沿って環状に延びるシール部材を介して封止される、
請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記シール部材は、第1方向から見て、楕円状または円状である、
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記ウォームホイール収容部は、前記壁部を含み且つ前記ホイール歯部の外周側に配置される筒状の側面部と、当該側面部における第1方向の他方側の開口を封止する蓋部とを備え、前記側面部における第1方向の他方側の端面が前記シール面であり、
前記壁部の前記貫通孔の縁のうち、第1方向の他方側の第1縁は前記側面部と前記蓋部との境界に位置し、第1方向の一方側の第2縁は前記壁部の第1方向の一方側の端部から第1方向の他方側に離隔する、
請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記第1ハウジングは、
前記アシストピニオン軸収容部における第1方向の他方側から第2方向の他方側に向けて突出し且つ前記ラック軸および当該ラック軸をアシストピニオン軸に向けて押圧する押圧部材が収容される押圧部材収容部を含み、
第3方向から見て、当該押圧部材収容部と前記ウォームホイール収容部における第2方向の他方側の端部との間には第1方向に沿った間隙が設けられ、
当該間隙は、第2方向の他方側に行くに従って大きくなる、
請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の電動パワーステアリング装置は、ピニオン軸と、ウォームホイールと、ウォームシャフトと、ハウジングと、を備える。具体的には、ピニオンシャフトの軸方向の端部にウォームホイールが取り付けられ、ウォームホイールはウォームシャフトに噛み合う。ハウジングは、ウォームホイールを収容するウォームホイール収容部と、ウォームホイール収容部と一体に設けられ且つウォームシャフトを収容するウォームシャフト収容部とを備える。ウォームホイール収容部とウォームシャフト収容部との間には壁部が配置され、当該壁部の下端部には、ウォームシャフトとの干渉を避けるための切欠きが設けられる。即ち、当該切欠きは、上側に向けて凹んでおり、ウォームシャフトの上側に切欠きが近接して配置される。これにより、ハウジングの上下高さをより低く抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-271913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、水などがハウジング内部に浸入することを抑制するために、ハウジングにシール機構を設ける必要がある。特許文献1では、壁部の下端部に切欠きがあるため、例えば、壁部の外側に、当該壁部とは別の環状のシール壁を設け、当該シール壁のシール面を利用してハウジング全体を封止する必要があり、電動パワーステアリング装置が大型化する可能性がある。
【0005】
本開示は、前述の課題に鑑みてなされたものであって、より小型化された、電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、一態様に係る電動パワーステアリング装置は、第1方向に延び、且つ、第1方向の一方側の外周にラック軸のラック歯と噛み合うピニオン歯が設けられるアシストピニオン軸と、前記アシストピニオン軸における第1方向の他方側に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部が設けられるウォームホイールと、前記ホイール歯部と噛み合うシャフト歯部を有し、前記ウォームホイールに対して第1方向に交差する第2方向の一方側に配置され、且つ、モータの駆動力によって回転するウォームシャフトと、前記アシストピニオン軸を収容するアシストピニオン軸収容部を含む第1ハウジングと、前記ウォームホイールを収容するウォームホイール収容部と、当該ウォームホイール収容部に対して第2方向の一方側に隣接して配置され前記ウォームシャフトを収容するウォームシャフト収容部と、を含み、且つ、前記第1ハウジングの第1方向の他方側に配置される第2ハウジングと、を備え、前記ウォームホイール収容部と前記ウォームシャフト収容部との間には、第1方向に延び且つ貫通孔を有する壁部が配置され、当該貫通孔において前記ホイール歯部と前記シャフト歯部とが噛み合っており、前記第1ハウジングにおける第1方向の他方側に位置する第1取付部と前記第2ハウジングにおける第1方向の一方側に位置し且つ前記第1取付部に取り付けられる第2取付部とが設けられ、前記第2取付部における第1方向の一方側の端面は、前記第1取付部に当接するシール面を有し、第1方向から見て、前記第2取付部の前記シール面は、前記ウォームシャフトおよび前記ウォームシャフト収容部と一部が重なり、前記アシストピニオン軸の外周側に周方向に沿って延びる環状の形状を有する。
【0007】
前述したように、水などがハウジング内部に浸入することを抑制するために、ハウジングにシール機構を設ける必要がある。特許文献1では、壁部の下端部に切欠きがあるため、例えば、壁部の外側に環状のシール面を設けてハウジング全体を封止する必要があり、電動パワーステアリング装置が大型化する可能性がある。
【0008】
これに対して、本開示では、ウォームホイール収容部とウォームシャフト収容部との間には、貫通孔を有する壁部が配置され、環状の第2取付部には、シール面が設けられ、当該シール面は第1取付部に当接する。これにより、本開示によれば、特許文献1よりもシール面の周長を小さくすることができ、ひいては、ハウジングおよび電動パワーステアリング装置をより小型化することができる。
【0009】
望ましい態様として、前記第2取付部の前記シール面は、第1方向および第2方向に交差する第3方向から見て、第2方向の他方側に行くに従って第1方向の他方側に向かうように斜めに延びる。これにより、貫通孔の位置を壁部においてより第1方向の他方側に設定することができるため、ハウジングの高さをより低くして、ハウジングおよび電動パワーステアリング装置をより小型化することができる。
【0010】
望ましい態様として、前記第1取付部と前記第2取付部とは、前記アシストピニオン軸の外周側に周方向に沿って環状に延びるシール部材を介して封止される。本開示によれば、特許文献1よりもシール部材の周長を小さくすることができ、ひいては、ハウジングおよび電動パワーステアリング装置をより小型化することができる。
【0011】
望ましい態様として、前記シール部材は、第1方向から見て、楕円状または円状である。従って、例えば、矩形状のシール部材と比較すると、本開示に係るシール部材は、周長がより小さくなり、ひいては電動パワーステアリング装置をより小型化することができる。
【0012】
望ましい態様として、前記ウォームホイール収容部は、前記壁部を含み且つ前記ホイール歯部の外周側に配置される筒状の側面部と、当該側面部における第1方向の他方側の開口を封止する蓋部とを備え、前記側面部における第1方向の他方側の端面が前記シール面であり、前記壁部の前記貫通孔の縁のうち、第1方向の他方側の第1縁は前記側面部と前記蓋部との境界に位置し、第1方向の一方側の第2縁は前記壁部の第1方向の一方側の端部から第1方向の他方側に離隔する。これにより、貫通孔の位置を壁部においてより第1方向の他方側に設定することができるため、ハウジングの高さをより低くして、ハウジングおよび電動パワーステアリング装置をより小型化することができる。
【0013】
望ましい態様として、前記第1ハウジングは、前記アシストピニオン軸収容部における第1方向の他方側から第2方向の他方側に向けて突出し且つ前記ラック軸および当該ラック軸をアシストピニオン軸に向けて押圧する押圧部材が収容される押圧部材収容部を含み、第3方向から見て、当該押圧部材収容部と前記ウォームホイール収容部における第2方向の他方側の端部との間には第1方向に沿った間隙が設けられ、当該間隙は、第2方向の他方側に行くに従って大きくなる。
【0014】
ウォームホイール収容部には、ホイール歯部とシャフト歯部とが噛み合う際の干渉音やモータの振動音などの異音が伝わる。ここで、ウォームホイール収容部と押圧部材収容部との間に間隙がなく、ウォームホイール収容部と押圧部材収容部とが一体となる場合、異音が増大する可能性がある。
【0015】
しかし、ウォームホイール収容部と押圧部材収容部との間に間隙を設け、間隙が第2方向の他方側に行くに従って大きくなる場合は、異音の押圧部材収容部への伝達が遮断されるため、異音をより軽減することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、より小型化された、電動パワーステアリング装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
図2図2は、図1の一部を示す斜視図である。
図3図3は、図2をX1側から見た模式図である。
図4図4は、図1のIV-IV線による断面図である。
図5図5は、図2の一部を拡大した模式図である。
図6図6は、図5をアシストピニオン軸の軸方向から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、同一構造の部位には同一符号を付けて、説明を省略する。
【0019】
なお、本実施形態において、Z方向を第1方向とし、Y方向を第2方向とし、X方向を第3方向とする。Z方向は、Y方向と交差する。X方向は、Y方向およびZ方向と交差する。
【0020】
実施形態に係る電動パワーステアリング装置について説明する。図1は、実施形態に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。図2は、図1の一部を示す斜視図である。
【0021】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置100は、ステアリングホイール10と、第1ステアリングシャフト11と、第2ステアリングシャフト12と、操舵ピニオン軸13と、ラック軸15と、タイロッド16と、アシストピニオン軸21と、ウォームホイール23と、ウォームシャフト27と、モータ70と、ハウジング300と、を備える。ハウジング300は、操舵側ハウジング3と、アシスト側ハウジング40と、を含む。本実施形態に係る電動パワーステアリング装置100は、例えばいわゆるデュアルピニオンタイプのステアリング装置である。ただし、本発明に係る電動パワーステアリング装置は、デュアルピニオンタイプに限定されず、シングルピニオンタイプも適用することが可能である。
【0022】
図1に示すように、ステアリングホイール10は、第1ステアリングシャフト11に連結され、第1ステアリングシャフト11は、ユニバーサルジョイント111を介して第2ステアリングシャフト12に連結される。第2ステアリングシャフト12は、ユニバーサルジョイント121を介して操舵ピニオン軸13に連結される。操舵ピニオン軸13の下端部の外周には、ピニオン歯14が設けられる。
【0023】
図1に示すように、ラック軸15は、X方向に延びる。ここで、ラック軸15の中心軸を中心軸AX2(図2および図3参照)とすると、中心軸AX2の軸方向は、X方向に沿っている。即ち、ラック軸15は、中心軸AX2の軸方向に延びる。X方向は、例えば車両の車幅方向である。図1に示すように、ラック軸15の部位のうちX2側の外周には、ラック歯151が設けられる。ラック歯151は、操舵ピニオン軸13のピニオン歯14と噛み合う。ラック軸15の部位のうちX1側の外周には、ラック歯152が設けられる。ラック歯152は、アシストピニオン軸21のピニオン歯22と噛み合う。ラック軸15のX1側およびX2側の両端部は、タイロッド16を介して車輪17に連結される。
【0024】
以上説明したように、ステアリングホイール10は、第1ステアリングシャフト11、第2ステアリングシャフト12を介して操舵ピニオン軸13に連結される。従って、運転者がステアリングホイール10に対して、左または右方向に操舵トルクを付与することにより、第1ステアリングシャフト11と第2ステアリングシャフト12とを介して操舵ピニオン軸13に操舵トルクが伝達される。そして、操舵ピニオン軸13のピニオン歯14は、ラック歯151と噛み合うため、操舵トルクは、ラック軸15がX方向に移動する力に変換される。
【0025】
また、図示しない操舵トルクセンサにより、ステアリングホイール10に付与された操舵トルクを検出し、検出した操舵トルクに応じて、図示しないコントローラがモータ70に電流を供給する。モータ70に電流が供給されると、モータ70にウォームホイール23とウォームシャフト27とを介して接続されたアシストピニオン軸21に、モータ70が発生させたアシストトルクが伝達され、アシストピニオン軸21に接続されたラック軸15がX方向に移動するアシスト力が発生する。
【0026】
すなわち、ステアリングホイール10を操舵することにより生じる操舵トルクに応じてモータ70を駆動することにより、ラック軸15がX方向に移動することを補助することができる。
【0027】
次に、ハウジング300について説明する。図1および図2に示すように、ハウジング300は、操舵側ハウジング3と、アシスト側ハウジング40とを備える。操舵側ハウジング3は、X2側に配置され、アシスト側ハウジング40は、X1側に配置される。操舵側ハウジング3のX1側の端部には、フランジ30が設けられ、アシスト側ハウジング40のX2側の端部には、フランジ43が設けられる。フランジ30とフランジ43とがボルトBLを介して締結されることにより、操舵側ハウジング3とアシスト側ハウジング40とが連結される。
【0028】
また、図2に示すように、操舵側ハウジング3のX2側の端部およびアシスト側ハウジング40のX1側の端部には、それぞれ車体取付部31、413が取り付けられる。車体取付部31には、貫通孔32が設けられ、貫通孔32に締結部材(例えばボルト)が挿入される。車体取付部413には、貫通孔414が設けられ、貫通孔414に締結部材(例えばボルト)が挿入される。即ち、締結部材を貫通孔32、414に貫通させたのち車体に締結することにより、操舵側ハウジング3およびアシスト側ハウジング40が車体に取り付けられる。
【0029】
操舵側ハウジング3には、操舵ピニオン軸13およびラック軸15におけるX2側の部位が収容される。具体的には、操舵ピニオン軸13の先端部は、操舵ピニオン軸収容部33の内部に収容される。アシスト側ハウジング40には、アシストピニオン軸21、ウォームホイール23、ウォームシャフト27およびラック軸15におけるX2側の部位が収容される。アシスト側ハウジング40については、詳細に後述する。
【0030】
図3は、図2をX1側から見た模式図である。図4は、図1のIV-IV線による断面図である。図5は、図2の一部を拡大した模式図である。図6は、図5をアシストピニオン軸の軸方向から見た模式図である。
【0031】
図2および図4に示すように、アシスト側ハウジング40は、ラック軸収容部411と、第1ハウジング1と、第2ハウジング2と、を備える。第1ハウジング1は、アシストピニオン軸収容部4と、押圧部材収容部412と、を含む。第2ハウジング2は、ウォームホイール収容部5と、ウォームシャフト収容部6と、を含む。ラック軸収容部411は、ラック軸15のX1側の部位を収容する。アシストピニオン軸収容部4は、アシストピニオン軸21を収容する。ウォームホイール収容部5は、ウォームホイール23を収容する。ウォームシャフト収容部6は、ウォームシャフト27を収容する。押圧部材収容部412は、押圧部材153と、スプリング154と、を収容する。
【0032】
アシストピニオン軸収容部4は、本体部41と、フランジ(第1取付部)42と、を備える。本体部41は、Z方向に延びる筒状の部材である。フランジ42は、本体部41におけるZ1側の端部に設けられて本体部41の径方向外側に向けて広がる。本体部41におけるZ2側の端部は開口され、当該開口はキャップ26で封止される。また、本体部41におけるキャップ26のZ1側には、軸受241が設けられる。フランジ42の径方向内側には、軸受242が設けられる。
【0033】
フランジ(第1取付部)42は、径方向外側部421と、径方向内側部(凸部)422と、を有する。径方向内側部(凸部)422は、径方向外側部421よりもZ方向の高さが高い。つまり、径方向内側部422の下面422bは、径方向外側部421の下面421bと、同一高さであり、径方向内側部422の上面422aは、径方向外側部421の上面421aよりもZ1側に位置する。従って、径方向内側部422の側面422cと径方向外側部421の上面421aとで段差が形成される。
【0034】
ラック軸15は、Y1側の側面にラック歯152を有する。ラック軸15におけるY2側の側面は、湾曲面である。ラック軸15のY2側には、押圧部材153と、スプリング154と、封止部材155と、が設けられる。具体的には、アシストピニオン軸収容部4の本体部41から、筒状の押圧部材収容部412がY2側に向けて突出し、押圧部材収容部412の内側に、押圧部材153と、スプリング154と、が収容される。押圧部材収容部412のY2側の端部には、封止部材155が嵌められる。スプリング154が縮んだ状態で収容されるため、スプリング154が押圧部材153をY1側に押すと、押圧部材153がアシストピニオン軸21に押し付けられる。これにより、ラック軸15のラック歯152とアシストピニオン軸21のピニオン歯22との噛み合いが保持される。
【0035】
アシストピニオン軸21は、アシストピニオン軸収容部4の内側に収容される。アシストピニオン軸21の中心軸は、中心軸AX3である。中心軸AX3は、Z方向に延びる。アシストピニオン軸21のZ2側の端部には、ナット25が締結される。ナット25のZ1側には、軸受241が配置される。軸受241により、アシストピニオン軸21におけるZ2側の端部が本体部41に回転可能に支持される。アシストピニオン軸21におけるピニオン歯22のZ1側の部位は、軸受242により、フランジ42に回転可能に支持される。
【0036】
アシストピニオン軸21におけるZ1側の端部には、ウォームホイール23が取り付けられる。ウォームホイール23は、ウォームホイール収容部5に収容される。ウォームホイール23は、径方向内側の芯金部231と、芯金部231の径方向外側のホイール歯部232と、を備える。芯金部231は、アシストピニオン軸21に嵌合される。
【0037】
ウォームシャフト27は、ウォームシャフト収容部6に収容される。ウォームシャフト27は、中心軸AX1を中心とする軸回りの周方向に回転する。中心軸AX1は、X方向に延びる。ウォームシャフト27は、外周にシャフト歯部271を有する。シャフト歯部271は、ホイール歯部232と噛み合う。なお、図2に示すように、ウォームシャフト収容部6は筒状であり、X1側の端部は開口され、当該開口は、円盤状のキャップ26で封止される。ウォームシャフト収容部6におけるX2側の端部には、モータ取付部7が設けられる。モータ取付部7は、突起部72を有し、モータ70が突起部72にボルトBLを介して締結される。
【0038】
以上説明したように、ステアリングホイール10は、第1ステアリングシャフト11、第2ステアリングシャフト12を介して操舵ピニオン軸13に連結される。従って、運転者がステアリングホイール10に対して、左または右方向に操舵トルクを付与することにより、第1ステアリングシャフト11と第2ステアリングシャフト12とを介して操舵ピニオン軸13に操舵トルクが伝達される。そして、操舵ピニオン軸13のピニオン歯14は、ラック歯151と噛み合うため、操舵トルクは、ラック軸15がX方向に移動する力に変換される。
【0039】
また、図示しない操舵トルクセンサにより、ステアリングホイール10に付与された操舵トルクを検出し、検出した操舵トルクに応じて、図示しないコントローラがモータ70に電流を供給する。モータ70に電流が供給されると、ウォームホイール23とウォームシャフト27とを介して接続されたアシストピニオン軸21に、モータ70が発生させたアシストトルクが伝達される。これにより、アシストピニオン軸21に接続されたラック軸15がX方向に移動するアシスト力が発生する。
【0040】
図5に示すように、第2ハウジング2に含まれるウォームホイール収容部5とウォームシャフト収容部6とは一体に形成される。ウォームホイール収容部5は、側面部51と、蓋部52と、フランジ(第2取付部)515と、を備える。フランジ515は、第2取付部とも称し、図4で示したフランジ(第1取付部)42に取り付けられる。側面部51の内周面511の下端部には、周方向に沿って環状に延びるシール材収容溝514が設けられる。図4に示すように、フランジ(第1取付部)42の径方向内側部(凸部)422は、側面部51の下部の内周側に嵌合される。シール材収容溝514は、断面L字状であり、シール材収容溝514にはシール部材Sが収容される。即ち、シール材収容溝514と径方向内側部422の側面422cと径方向外側部421の上面421aとで断面が矩形状の間隙が形成される。当該間隙にシール部材Sが収容される。これにより、フランジ(第1取付部)42の径方向内側部(凸部)422と、側面部51の内周面511の下部とは、シール部材Sを介して封止される。
【0041】
図5に示すように、側面部51の内周面511は、中心軸AX3の軸回りの周方向に沿って延びる円筒面である。蓋部52は、円板形状を有する。蓋部52の径方向中央には、Z1側に突出する凸部521が設けられる。蓋部52は、側面部51のZ1側の開口を封止する。フランジ515は、側面部51から径方向外側に突出する。フランジ515には、周方向に間隔をおいて3つの突起部516が設けられる。突起部516には、貫通孔517が貫通する。フランジ515のZ2側の端面は、シール面518である。換言すると、フランジ(第2取付部)515におけるZ2側の端面は、フランジ(第1取付部)42に当接するシール面518を有する。図4に示すように、Z方向から見て、シール面518は、ウォームシャフト27およびウォームシャフト収容部6と一部が重なる。シール面518は、アシストピニオン軸21の外周側に周方向に沿って延びる環状の形状を有する。
【0042】
ウォームシャフト収容部6は、中心軸AX1に延びる円筒状の形状を有する。ウォームシャフト収容部6の内側には、内周面61が設けられる。内周面61は、中心軸AX1の軸回りの周方向に沿って延びる円筒面である。また、ウォームシャフト収容部6は、モータ取付部7を有する。モータ取付部7には、モータ70(図2参照)が取り付けられる。モータ取付部7は、中心軸AX1の軸回りの周方向に沿って延びる。モータ取付部7は、円環状のフランジ71を有する。フランジ71には、周方向に間隔をおいて3つの突起部72が設けられる。突起部72には、貫通孔73が貫通する。
【0043】
ここで、図5に示すように、ウォームホイール収容部5とウォームシャフト収容部6との間には、Z方向に延び且つ貫通孔512を有する壁部513が配置される。貫通孔512においてホイール歯部232とシャフト歯部271とが噛み合っている。貫通孔512は、Y方向から見て、X方向に長い略楕円形である。貫通孔512の縁のうち、Z2側には第2縁512bが位置し、Z1側には第1縁512aが位置する。第2縁512bは、Z2側に凸の湾曲形状を有する。第2縁512bは壁部513のZ2側の端部(シール材収容溝514)からZ1側に離隔する。第1縁512aは、蓋部52と側面部51との境界線である。第1縁512aは、中心軸AX1に沿って延びる直線状である。即ち、貫通孔512は、壁部513において最もZ1側に位置する。
【0044】
さらに、図3および図4に示すように、径方向外側部421の上面421aは、シール面417であり、フランジ515のシール面518と当接する。図3に示すように、X方向から見て、シール面417、518は、Y2側に行くに従ってZ1側に向かうように傾斜する。つまり、シール面417、518は、中心軸AX3に直交する直線L(一点鎖線)に対して傾斜角度θで斜めに配置される。
【0045】
よって、図4に示すように、押圧部材収容部412とウォームホイール収容部5との間にはZ方向に沿った間隙Gが設けられ、間隙Gは、Y2側に行くに従って大きくなる。また、図6に示すように、シール材収容溝514を中心軸AX3の軸方向から見ると、X方向に長い楕円形となる。ただし、シール材収容溝514を含む平面の法線方向から見ると、シール材収容溝514は円環状である。なお、本発明においては、シール材収容溝514の形状は楕円または円状のいずれでもよい。即ち、シール材収容溝514は、中心軸AX3の軸方向から見て円環状としてもよく、この場合は、シール材収容溝514を含む平面の法線方向から見てシール材収容溝514は楕円状となる。
【0046】
また、シール材収容溝514に嵌合するシール部材Sは、中心軸AX3の軸方向から見て楕円状であるが、中心軸AX3の軸方向から見て円環状(シール材収容溝514を含む平面の法線方向から見て楕円状)としてもよい。
【0047】
以上説明したように、電動パワーステアリング装置100は、Z方向(第1方向)に延び、且つ、Z2側の外周にラック軸15のラック歯152と噛み合うピニオン歯22が設けられるアシストピニオン軸21と、アシストピニオン軸21におけるZ1側に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部232が設けられるウォームホイール23と、ホイール歯部232と噛み合うシャフト歯部271を有し、ウォームホイール23に対してY1側に配置され、且つ、モータ70の駆動力によって回転するウォームシャフト27と、ハウジング300におけるアシスト側ハウジング40と、を備える。アシスト側ハウジング40は、第1ハウジング1と、第2ハウジング2とを備える。第1ハウジング1は、アシストピニオン軸21を収容するアシストピニオン軸収容部4を含む。第2ハウジング2は、ウォームホイール23を収容するウォームホイール収容部5と、ウォームホイール収容部5のY1側に隣接して配置され且つウォームシャフト27を収容するウォームシャフト収容部6と、を含む。
【0048】
ウォームホイール収容部5とウォームシャフト収容部6との間には、Z方向に延び且つ貫通孔512を有する壁部513が配置され、貫通孔512においてホイール歯部232とシャフト歯部271とが噛み合っている。アシストピニオン軸収容部4におけるZ1側に位置するフランジ(第1取付部)42は、ウォームホイール収容部5におけるZ2側に位置するフランジ(第2取付部)515に取り付けられる。フランジ(第2取付部)515の端面は、フランジ(第1取付部)42に当接するシール面518を有する。また、Z方向から見て、シール面518は、ウォームシャフト27およびウォームシャフト収容部6と一部が重なる。シール面518は、アシストピニオン軸21の外周側に周方向に沿って延びる環状の形状を有する。
【0049】
前述したように、水などがハウジング内部に浸入することを抑制するために、ハウジングにシール機構を設ける必要がある。特許文献1では、壁部の下端部に切欠きがあるため、例えば、壁部の外側に環状のシール面を設けてハウジング全体を封止する必要があり、電動パワーステアリング装置が大型化する可能性がある。
【0050】
これに対して、本実施形態では、フランジ(第2取付部)515には、シール面518が設けられ、シール面518はフランジ(第1取付部)42に当接する。これにより、本実施形態によれば、特許文献1よりもシール面518の周長を小さくすることができ、ひいては、ハウジング300および電動パワーステアリング装置100をより小型化することができる。
【0051】
また、本実施形態では、ウォームホイール収容部5とウォームシャフト収容部6との間には、貫通孔512を有する壁部513が配置される。フランジ(第2取付部)515とフランジ(第1取付部)42とが環状のシール部材Sを介して封止される。従って、本実施形態によれば、ハウジング300および電動パワーステアリング装置100をより小型化することができる。
【0052】
シール部材Sは、Z方向(第1方向)から見て、楕円状または円状である。従って、例えば、矩形状のシール部材と比較すると、本実施形態に係るシール部材Sの周長をより小さくし、ひいてはハウジング300および電動パワーステアリング装置100をより小型化することができる。
【0053】
X方向(第3方向)から見て、フランジ(第1取付部)42およびフランジ(第2取付部)515は、Y2側に行くに従ってZ1側に向かうように斜めに延びる。これにより、貫通孔512の位置を壁部513においてよりZ1側に設定することができるため、ハウジング300の高さをより低くして、ハウジング300および電動パワーステアリング装置100をより小型化することができる。
【0054】
径方向内側部(凸部)422と側面部51との間にシール部材Sが挟まる。即ち、第1取付部と第2取付部とは、いわゆるインロー結合されるため、アシストピニオン軸収容部4に対するウォームホイール収容部5の位置決めを容易に行うことができる。
【0055】
ウォームホイール収容部5は、壁部513を含み且つホイール歯部232の外周側に配置される筒状の側面部51と、側面部51におけるZ1側の開口を封止する蓋部52とを備える。壁部513の貫通孔512の縁のうち、Z1側の第1縁512aは側面部51と蓋部52との境界に位置し、Z2側の第2縁512bは壁部513のZ2側の端部からZ1側に離隔する。これにより、貫通孔512の位置を壁部513においてよりZ1側に設定することができるため、ハウジング300の高さをより低くして、ハウジング300および電動パワーステアリング装置100をより小型化することができる。
【0056】
アシストピニオン軸収容部4におけるZ1側に、Y2側に向けて延び且つラック軸15およびラック軸15をアシストピニオン軸21に向けて押圧する押圧部材153が収容される押圧部材収容部412が設けられる。X方向(第3方向)から見て、押圧部材収容部412とウォームホイール収容部5におけるY2側の端部との間にはZ方向に沿った間隙Gが設けられ、間隙Gは、Y2側に行くに従って大きくなる。
【0057】
ウォームホイール収容部5には、ホイール歯部232とシャフト歯部271とが噛み合う際の干渉音やモータの振動音などの異音が伝わる。ここで、ウォームホイール収容部5と押圧部材収容部412との間に間隙Gがなく、ウォームホイール収容部5と押圧部材収容部412とが一体となる場合、異音が増大する可能性がある。
【0058】
しかし、ウォームホイール収容部5と押圧部材収容部412との間に間隙Gを設け、間隙GがY2側に行くに従って大きくなる場合は、異音の押圧部材収容部412への伝達が遮断されるため、異音をより軽減することが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1 第1ハウジング
2 第2ハウジング
3 操舵側ハウジング
4 アシストピニオン軸収容部(第1ハウジング)
5 ウォームホイール収容部(第2ハウジング)
6 ウォームシャフト収容部(第2ハウジング)
7 モータ取付部
10 ステアリングホイール
11 第1ステアリングシャフト
12 第2ステアリングシャフト
13 操舵ピニオン軸
14 ピニオン歯
15 ラック軸
16 タイロッド
17 車輪
21 アシストピニオン軸
22 ピニオン歯
23 ウォームホイール
25 ナット
26 キャップ
27 ウォームシャフト
30 フランジ
31 車体取付部
32 貫通孔
33 操舵ピニオン軸収容部
40 アシスト側ハウジング
41 本体部
42 フランジ(第1取付部)
43 フランジ
51 側面部
52 蓋部
61 内周面
70 モータ
71 フランジ
72 突起部
73 貫通孔
100 電動パワーステアリング装置
111 ユニバーサルジョイント
121 ユニバーサルジョイント
151、152 ラック歯
153 押圧部材
154 スプリング
155 封止部材
231 芯金部
232 ホイール歯部
241 軸受
242 軸受
271 シャフト歯部
300 ハウジング
412 押圧部材収容部(第1ハウジング)
413 車体取付部
414 貫通孔
417 シール面
411 ラック軸収容部
421 径方向外側部
422 径方向内側部(凸部)
511 内周面
512 貫通孔
512a 第1縁
512b 第2縁
513 壁部
514 シール材収容溝
515 フランジ(第2取付部)
516 突起部
517 貫通孔
518 シール面
521 凸部
AX1、AX2、AX3 中心軸
BL ボルト
G 間隙
L 直線
S シール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6