(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039197
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143566
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 祥史
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB19
3D333CC14
3D333CD05
3D333CD09
3D333CD10
3D333CD14
3D333CD16
3D333CD17
3D333CD21
3D333CD23
3D333CD28
3D333CE04
3D333CE16
3D333CE17
(57)【要約】
【課題】より小型化され、且つ、ウォームホイールとウォームシャフトとの距離の変化がより抑制される、電動パワーステアリング装置を提供すること。
【解決手段】電動パワーステアリング装置は、ウォームホイール、ウォームシャフトおよびアシストピニオン軸を収容する第1ハウジングと、ウォームホイールおよびウォームシャフトを収容する第2ハウジングと、第1ハウジングと第2ハウジングとの間に配置されるシール部材と、を備える。第1ハウジングにおける第1方向の他方側には、第1方向の他方側に向けて突出する環状凸部が設けられる。第2ハウジングにおける第1方向の一方側には、環状凸部の外周面の外周側に嵌合する側面部が設けられる。環状凸部の外周面には、径方向内側に凹み且つシール部材が収容されるシール部材収容溝が設けられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延び、且つ、第1方向の一方側の外周にラック軸のラック歯と噛み合うピニオン歯が設けられるアシストピニオン軸と、
前記アシストピニオン軸における第1方向の他方側に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部が設けられるウォームホイールと、
前記ホイール歯部と噛み合うシャフト歯部を有し、前記ウォームホイールに対して第1方向に交差する第2方向の一方側に配置され、且つ、モータの駆動力によって回転するウォームシャフトと、
前記アシストピニオン軸を収容する第1ハウジングと、
当該第1ハウジングの第1方向の他方側に隣接して配置され且つ前記ウォームホイールおよび前記ウォームシャフトを収容する第2ハウジングと、
を備え、
前記第1ハウジングにおける第1方向の他方側には、前記アシストピニオン軸の中心軸の外周側に環状に配置され且つ第1方向の他方側に向けて突出する環状凸部が設けられ、
前記第2ハウジングにおける第1方向の一方側には、前記環状凸部の外周面の外周側に嵌合する側面部が設けられ
前記環状凸部と前記側面部との間にシール部材が設けられる、
電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記環状凸部の外周面または前記第2ハウジングの前記側面部の内側面のどちらか一方には、径方向内側に凹み且つ前記シール部材が収容されるシール部材収容溝が周方向に沿って設けられ、前記シール部材収容溝に前記シール部材が収容された状態で前記環状凸部と前記側面部との間を封止する、
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記環状凸部は、
前記アシストピニオン軸の前記中心軸に直交する平面に沿う第1天面部を有する第1部位と、
前記第1部位の径方向外側に隣接して配置され且つ径方向外側に行くに従って第1方向の一方側に向けて延びる第2天面部を有する第2部位と、を備え、
前記第2天面部は、前記ウォームシャフトと対向して配置される、
請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記環状凸部には、
前記第1部位および前記第2部位の少なくともいずれかに配置されて第1方向の一方側に凹む凹部が設けられる、
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記環状凸部は、
前記中心軸の軸回りの周方向に延びる第1環状部と、
当該第1環状部の外周側に配置される第2環状部と、
径方向に延びて前記第1環状部と前記第2環状部とを繋ぐ複数の支持脚と、を備え、
前記アシストピニオン軸の前記中心軸に直交する平面に沿う第1天面部を有する第1部位と、前記第1部位の径方向外側に隣接して配置され且つ径方向外側に行くに従って第1方向の一方側に向けて延びる第2天面部を有する第2部位との境界は、前記支持脚と重なり、
前記第1環状部の内周側には、前記アシストピニオン軸を前記環状凸部に対して回転可能に支持する軸受が設けられる、
請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記環状凸部は、
前記中心軸の軸回りの周方向に延びる第1環状部と、
当該第1環状部の外周側に配置される第2環状部と、
径方向に延びて前記第1環状部と前記第2環状部とを繋ぐ複数の支持脚と、を備え、
前記第1部位と前記第2部位との境界は、前記支持脚と重なり、
前記第1環状部の内周側には、前記アシストピニオン軸を前記環状凸部に対して回転可能に支持する軸受が設けられる、
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
前記環状凸部の内周側には、前記アシストピニオン軸を前記環状凸部に対して回転可能に支持する軸受が設けられ、
前記アシストピニオン軸の径方向から見て、前記シール部材収容溝は、前記軸受と重なる、
請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の電動パワーステアリング装置は、ラック軸と、ピニオン軸と、ウォームホイールと、ウォームシャフトと、モータと、ハウジングと、を備える。具体的には、ピニオン軸の中心軸の軸方向の一端部にピニオン歯が設けられ、当該ピニオン歯がラック軸のラック歯に噛み合う。ピニオンシャフトの軸方向の他端部にウォームホイールが取り付けられ、ウォームホイールはウォームシャフトに噛み合う。ウォームシャフトは、モータの出力軸に回転可能に取り付けられる。
【0003】
ハウジングは、ラック軸およびピニオン軸を収容する第1ハウジングと、ウォームホイール、ウォームシャフトおよびモータを収容する第2ハウジングと、を備える。第1ハウジングのフランジと第2ハウジングのフランジとをボルトを介して締結することにより、第1ハウジングと第2ハウジングとを連結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ピニオン軸は、軸受を介して第1ハウジングに回転可能に支持され、モータは、第2ハウジングに取り付けられる。従って、第1ハウジングのフランジと第2ハウジングのフランジとをボルトを介して締結する構造では、ウォームホイールとウォームシャフトとの距離が変化しやすくなり、ウォームホイールとウォームシャフトとが噛み合う際に異音が発生したり、ウォームホイールのホイール歯やウォームシャフトのシャフト歯に摩耗が生じたりしやすくなる。
【0006】
また、水などがハウジング内部に浸入することを抑制するために、ハウジングにシール機構を設ける必要がある。特許文献1では、第2ハウジングの壁部の下端に切欠きがあるため、例えば、壁部の外側に環状のシール部材を設けてハウジング全体を封止する必要があり、電動パワーステアリング装置が大型化する可能性がある。
【0007】
本開示は、前述の課題に鑑みてなされたものであって、より小型化され、且つ、電動パワーステアリング装置の稼動時におけるウォームホイールとウォームシャフトとの距離の変化がより抑制される、電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、一態様に係る電動パワーステアリング装置は、第1方向に延び、且つ、第1方向の一方側の外周にラック軸のラック歯と噛み合うピニオン歯が設けられるアシストピニオン軸と、前記アシストピニオン軸における第1方向の他方側に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部が設けられるウォームホイールと、前記ホイール歯部と噛み合うシャフト歯部を有し、前記ウォームホイールに対して第1方向に交差する第2方向の一方側に配置され、且つ、モータの駆動力によって回転するウォームシャフトと、前記アシストピニオン軸を収容する第1ハウジングと、当該第1ハウジングの第1方向の他方側に隣接して配置され且つ前記ウォームホイールおよび前記ウォームシャフトを収容する第2ハウジングと、を備え、前記第1ハウジングにおける第1方向の他方側には、前記アシストピニオン軸の中心軸の外周側に環状に配置され且つ第1方向の他方側に向けて突出する環状凸部が設けられ、前記第2ハウジングにおける第1方向の一方側には、前記環状凸部の外周面の外周側に嵌合する側面部が設けられ、前記環状凸部と前記側面部との間にシール部材が設けられる。
【0009】
前述したように、特許文献1では、第1ハウジングのフランジと第2ハウジングのフランジとをボルトを介して締結するため、ウォームホイールとウォームシャフトとの距離が変化しやすくなる。また、第2ハウジングの壁部の下端に切欠きがあるため、例えば、壁部の外側に環状のシール部材を設けてハウジング全体を封止する必要があり、電動パワーステアリング装置が大型化する可能性がある。
【0010】
これに対して、本開示では、第1ハウジングに環状凸部を設け、第2ハウジングに側面部を設け、側面部を環状凸部の外周側に嵌合する。即ち、側面部と環状凸部との、いわゆるインロー結合によって、第1ハウジングと第2ハウジングとの位置決めを行う。従って、ウォームホイールとウォームシャフトとの距離の変化がより抑制される。
【0011】
また、環状凸部と側面部との間にシール部材が設けることにより、第1ハウジングと第2ハウジングとの封止を行うため、特許文献1の電動パワーステアリング装置よりも小型化することが可能となる。以上より、本開示によれば、より小型化され、且つ、ウォームホイールとウォームシャフトとの距離の変化がより抑制される、電動パワーステアリング装置を提供することが可能となる。
【0012】
望ましい態様として、前記環状凸部の外周面または前記第2ハウジングの前記側面部の内側面のどちらか一方には、径方向内側に凹み且つ前記シール部材が収容されるシール部材収容溝が周方向に沿って設けられ、前記シール部材収容溝に前記シール部材が収容された状態で前記環状凸部と前記側面部との間を封止する。このように、シール部材収容溝にシール部材を収容し、環状凸部の外周側に第2ハウジングの側面部を嵌合することにより、第1ハウジングと第2ハウジングとの封止を行うため、特許文献1の電動パワーステアリング装置よりも小型化することが可能となる。
【0013】
望ましい態様として、前記環状凸部は、前記アシストピニオン軸の前記中心軸に直交する平面に沿う第1天面部を有する第1部位と、前記第1部位の径方向外側に隣接して配置され且つ径方向外側に行くに従って第1方向の一方側に向けて延びる第2天面部を有する第2部位と、を備え、前記第2天面部は、前記ウォームシャフトと対向して配置される。従って、第2部位の天面部が、アシストピニオン軸の中心軸に直交する平面に沿う場合に対して、環状凸部をウォームシャフトにより近づけることが可能となる。よって、本開示による電動パワーステアリング装置をより小型化することが可能となる。
【0014】
望ましい態様として、前記環状凸部には、前記第1部位および前記第2部位の少なくともいずれかに配置されて第1方向の一方側に凹む凹部が設けられる。従って、環状凸部に凹部を設けない場合に対して、電動パワーステアリング装置の重量をより軽減することが可能となる。
【0015】
望ましい態様として、前記環状凸部は、前記中心軸の軸回りの周方向に延びる第1環状部と、当該第1環状部の外周側に配置される第2環状部と、径方向に延びて前記第1環状部と前記第2環状部とを繋ぐ複数の支持脚と、を備え、前記第1部位と前記第2部位との境界は、前記支持脚と重なり、前記第1環状部の内周側には、前記アシストピニオン軸を前記環状凸部に対して回転可能に支持する軸受が設けられる。このように、支持脚が径方向に延びており、第1環状部の内周側に軸受が設けられるため、第1環状部に対する径方向の支持剛性がより高くなる。従って、回転時におけるアシストピニオン軸の径方向の変位がより小さくなり、アシストピニオン軸がより安定して回転する。
【0016】
望ましい態様として、前記環状凸部の内周側には、前記アシストピニオン軸を前記環状凸部に対して回転可能に支持する軸受が設けられ、前記アシストピニオン軸の径方向から見て、前記シール部材収容溝は、前記軸受と重なる。アシストピニオン軸の径方向から見て、例えば、シール部材収容溝が軸受よりも第1方向の一方側または他方側に位置する場合は、本開示よりも、第1ハウジングまたは第2ハウジングの第1方向の高さが大きくなる。従って、本開示に係る電動パワーステアリング装置がより小型化される。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、電動パワーステアリング装置がより小型化される。また、電動パワーステアリング装置の稼動時におけるウォームホイールとウォームシャフトとの距離の変化がより抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
【
図7】
図7は、
図6から第2ハウジングを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7のVIII-VIII線による断面を示す模式図である。
【
図9】
図9は、第2ハウジングを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、同一構造の部位には同一符号を付けて、説明を省略する。なお、本実施形態において、Z方向を第1方向とし、Y方向を第2方向とする。Z方向は、Y方向と交差する。X方向は、Y方向およびZ方向と交差する。Z2側は第1方向の一方側、Z1側は第1方向の他方側である。Y1側は第2方向の一方側、Y2側は第2方向の他方側である。
【0020】
実施形態に係る電動パワーステアリング装置について説明する。
図1は、実施形態に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
図2は、
図1の一部を示す斜視図である。
図3は、
図2の一部を拡大した斜視図である。
図4は、
図1のIV-IV線による断面図である。
図5は、
図4の一部を拡大した模式図である。
【0021】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置100は、ステアリングホイール10と、第1ステアリングシャフト11と、第2ステアリングシャフト12と、操舵ピニオン軸13と、ラック軸15と、タイロッド16と、アシストピニオン軸21と、ウォームホイール23と、ウォームシャフト27と、モータ70と、ハウジング300と、を備える。ハウジング300は、操舵側ハウジング3と、アシスト側ハウジング40と、を含む。操舵側ハウジング3とアシスト側ハウジング40とは、繋がって一体構造になっている。電動パワーステアリング装置100は、例えばいわゆるデュアルピニオンタイプのステアリング装置である。ただし、本発明に係る電動パワーステアリング装置は、デュアルピニオンタイプに限定されず、シングルピニオンタイプも適用することが可能である。
【0022】
図1に示すように、ステアリングホイール10は、第1ステアリングシャフト11に連結され、第1ステアリングシャフト11は、ユニバーサルジョイント111を介して第2ステアリングシャフト12に連結される。第2ステアリングシャフト12は、ユニバーサルジョイント121を介して操舵ピニオン軸13に連結される。操舵ピニオン軸13の下端部の外周には、ピニオン歯14が設けられる。
【0023】
図1に示すように、ラック軸15は、X方向に延びる。ここで、ラック軸15の中心軸を中心軸AX2(
図2および
図3参照)とすると、中心軸AX2の軸方向は、X方向に沿っている。即ち、ラック軸15は、中心軸AX2の軸方向に延びる。X方向は、例えば車両の車幅方向である。
図1に示すように、ラック軸15の部位のうちX2側の外周には、ラック歯151が設けられる。ラック歯151は、操舵ピニオン軸13のピニオン歯14と噛み合う。ラック軸15の部位のうちX1側の外周には、ラック歯152が設けられる。ラック歯152は、アシストピニオン軸21のピニオン歯22と噛み合う。ラック軸15のX1側およびX2側の両端部は、タイロッド16を介して車輪17に連結される。
【0024】
以上説明したように、ステアリングホイール10は、第1ステアリングシャフト11、第2ステアリングシャフト12を介して操舵ピニオン軸13に連結される。従って、運転者がステアリングホイール10に対して、左または右方向に操舵トルクを付与することにより、第1ステアリングシャフト11と第2ステアリングシャフト12とを介して操舵ピニオン軸13に操舵トルクが伝達される。そして、操舵ピニオン軸13のピニオン歯14は、ラック歯151と噛み合うため、操舵トルクは、ラック軸15がX方向に移動する力に変換される。
【0025】
また、図示しない操舵トルクセンサにより、ステアリングホイール10に付与された操舵トルクを検出し、検出した操舵トルクに応じて、図示しないコントローラがモータ70に電流を供給する。モータ70に電流が供給されると、モータ70にウォームホイール23とウォームシャフト27とを介して接続されたアシストピニオン軸21に、モータ70が発生させたアシストトルクが伝達され、アシストピニオン軸21に接続されたラック軸15がX方向に移動するアシスト力が発生する。
【0026】
すなわち、ステアリングホイール10を操舵することにより生じる操舵トルクに応じてモータ70を駆動することにより、ラック軸15がX方向に移動することを補助することができる。
【0027】
次に、ハウジング300について説明する。
図1および
図2に示すように、ハウジング300は、X2側の操舵側ハウジング3とX1側のアシスト側ハウジング40とを含む。
図2に示すように、操舵側ハウジング3のX2側の端部およびアシスト側ハウジング40のX1側の端部には、それぞれ車体取付部31、413が取り付けられる。車体取付部31には、貫通孔32が設けられ、貫通孔32に締結部材(例えばボルト)が挿入される。車体取付部413には、貫通孔414が設けられ、貫通孔414に締結部材(例えばボルト)が挿入される。即ち、締結部材を貫通孔32、414に貫通させたのち車体に締結することにより、操舵側ハウジング3およびアシスト側ハウジング40が車体に取り付けられる。
【0028】
操舵側ハウジング3には、操舵ピニオン軸13およびラック軸15におけるX2側の部位が収容される。具体的には、操舵ピニオン軸13の先端部は、操舵ピニオン軸収容部33の内部に収容される。アシスト側ハウジング40には、アシストピニオン軸21、ウォームホイール23、ウォームシャフト27およびラック軸15におけるX2側の部位が収容される。
【0029】
図2から
図4に示すように、アシスト側ハウジング40は、ラック軸収容部411と、第1ハウジング4と、第2ハウジング400と、押圧部材収容部412と、を備える。ラック軸収容部411は、ラック軸15のX1側の部位を収容する。押圧部材収容部412は、ラック軸15の一部と、押圧部材153と、スプリング154と、を収容する。
【0030】
図4に示すように、ラック軸15は、Y1側の側面にラック歯152を有する。ラック軸15におけるY2側の側面は、湾曲面である。ラック軸15のY2側には、押圧部材153と、スプリング154と、封止部材155と、が設けられる。具体的には、第1ハウジング4の本体部41から、筒状の押圧部材収容部がY2側に向けて突出し、押圧部材収容部412の内側に、ラック軸15と、押圧部材153と、スプリング154と、が収容される。押圧部材収容部412のY2側の端部には、封止部材155が嵌められる。スプリング154が縮んだ状態で収容されるため、スプリング154が押圧部材153をY1側に押すと、押圧部材153がアシストピニオン軸21に押し付けられる。これにより、ラック軸15のラック歯152とアシストピニオン軸21のピニオン歯22との噛み合いが保持される。
【0031】
図4に示すように、ウォームホイール23は、アシストピニオン軸21のZ1側の端部に嵌合される。アシストピニオン軸21におけるZ1側の部位は、軸受241を介して第1ハウジング4の本体部41に回転可能に支持される。アシストピニオン軸21におけるZ2側の部位は、軸受242を介して第1ハウジング4のフランジ42に回転可能に支持される。ウォームホイール23は、芯金部231と、ホイール歯部232とを備える。ホイール歯部232は、ウォームシャフト27のシャフト歯部271に噛み合う。ウォームシャフト27は、中心軸AX1を有する。ウォームシャフト27は、モータ70(
図2参照)の出力軸に回転可能に取り付けられる。
【0032】
図4に示すように、第1ハウジング4は、本体部41と、フランジ42と、を備える。本体部41は、Z方向に延びる筒状の部材である。フランジ42は、本体部41におけるZ1側の端部に設けられて本体部41の径方向外側に向けて広がる。本体部41におけるZ2側の端部は開口され、当該開口はキャップ26で封止される。また、本体部41におけるキャップ26のZ1側には、軸受241が設けられる。フランジ42の径方向内側には、軸受242が設けられる。
【0033】
図4に示すように、フランジ42は、径方向外側部421と、環状凸部401と、を有する。環状凸部401は、径方向外側部421に対して径方向内側に隣接して設けられる。環状凸部401は、アシストピニオン軸21の中心軸AX3の外周側に環状に配置され且つZ1側に向けて突出する。環状凸部401は、径方向外側部421よりもZ方向の高さが高い。環状凸部401の下面と、径方向外側部421の下面とは、同一高さである。従って、環状凸部401の外周面401aと径方向外側部421の上面421aとで段差が形成される。
【0034】
図4および
図5に示すように、環状凸部401は、第1部位422と、第2部位423と、を備える。第1部位422は、アシストピニオン軸21の中心軸AX3に直交する平面に沿う第1天面部422aを有する。第2部位423は、第1部位422の径方向外側に隣接して配置される。第1部位422と第2部位423との境界は、境界230である。第2部位423は、第2天面部423aを有する。第2天面部423aは、径方向外側に行くに従ってZ2側に向けて延びる傾斜面である。第2天面部423aは、ウォームシャフト27に対向して配置される。実施形態では、第2天面部423aは、断面形状が直線状であるが、例えば、第2天面部423aは、ウォームシャフト27から遠ざかる向きに凹む湾曲形状であってもよい。第2部位423の外周面423bは、環状凸部401の外周面401aと一致する。また、
図4および
図5に示すように、第2部位423の外周面423b(環状凸部401の外周面401a)には、シール部材収容溝514が周方向に沿って設けられる。シール部材収容溝514は、径方向内側に凹む。シール部材収容溝514には、シール部材Sが収容される。
【0035】
次に、第2ハウジング400を説明する。
図4および
図5に示すように、第2ハウジング400は、ウォームホイール収容部5と、ウォームシャフト収容部6とを含む。ウォームホイール収容部5は、ウォームホイール23を収容する。ウォームシャフト収容部6は、ウォームシャフト27を収容する。なお、モータ70の出力軸にウォームシャフト27が取り付けられ、
図2に示すように、モータ70はモータ取付板7に取り付けられる。第2ハウジング400は、ウォームホイール23と、ウォームシャフト27と、を収容する。ウォームホイール収容部5とウォームシャフト収容部6とは一体である。ウォームホイール収容部5は、側面部51および天面部52を有する。ウォームシャフト収容部6は、側面部61および天面部62を有する。
【0036】
ここで、
図4および
図5に示すように、第2ハウジング400は、側面部402と、天面部403と、を有する。第2ハウジング400の側面部402は、ウォームホイール収容部5の側面部51と、ウォームシャフト収容部6の側面部61を含む。第2ハウジング400の天面部403は、ウォームホイール収容部5の天面部52と、ウォームシャフト収容部6の天面部62を含む。
図4に示すように、第2ハウジング400のY2側において、環状凸部401の外周面401aには、第2ハウジング400の側面部402の内側面402a(ウォームホイール収容部5の側面部51の内側面)が当接する。ここで、内側面402aは、中心軸AX3の軸回りの周方向に沿って環状に連続して延びているが、これについては、詳細に後述する。また、
図4および
図5に示すように、第2ハウジング400のY1側において、環状凸部401の外周面401aには、第2ハウジング400の側面部402の内側面402a(ウォームシャフト収容部6の側面部61の内側面)が当接する。このように、シール部材収容溝514にシール部材Sが収容された状態で環状凸部401と側面部402との間が封止される。
【0037】
図6は、
図3を別の方向から見た斜視図である。
図7は、
図6から第2ハウジングを取り外した状態を示す斜視図である。
図8は、
図7のVIII-VIII線による断面を示す模式図である。
図9は、第2ハウジングを示す斜視図である。
【0038】
図6に示すように、第2ハウジング400におけるウォームホイール収容部5は、側面部51と天面部52とを有する。側面部51は、Y2側に突出する2つの突起部516を有する。突起部516には、雌ねじ517が設けられる。天面部52の中央部には、円形の突設部521が設けられる。
【0039】
図6および
図7に示すように、第1ハウジング4のフランジ42には、突起部424、425が設けられる。突起部424は、2つ設けられ、Y2側に向けて突出する。突起部424には、貫通孔424aが貫通する。突起部424は、ウォームホイール収容部5の突起部516と重なる。突起部424の下側(Z2側)から上側(Z1側)に向けて、貫通孔424aにボルトBLが挿入され、ボルトBLの先端部の雄ねじが突起部516の雌ねじ517に締結される。
【0040】
また、突起部425は、1つ設けられ、Y1側に向けて突出する。突起部425には、貫通孔425aが貫通する。突起部425の下側(Z2側)から上側(Z1側)に向けて、貫通孔425aにボルトBLが挿入され、ボルトBLの先端部の雄ねじがウォームシャフト収容部6の突起部の雌ねじに締結される。
【0041】
図7に示すように、環状凸部401は、径方向外側部421の内周側に配置される。環状凸部401には、凹部43が設けられる。凹部43は、第1部位422および第2部位423に配置されてZ2側に凹む。凹部43は、底面43aおよび側面43bに面する。凹部43は、環状凸部401の周方向に沿って複数(本実施形態では、8つ)設けられる。
【0042】
また、
図7に示すように、環状凸部401は、第1環状部426と、第2環状部427と、複数(本実施形態では、8つ)の支持脚428と、を備える。
【0043】
第1環状部426および第2環状部427は、中心軸AX3の軸回りの周方向に延びる。第2環状部427は、第1環状部426の外周側に配置される。支持脚428は、径方向に延びて第1環状部426と第2環状部427とを繋ぐ。支持脚428における第1環状部426との接続部分の周方向幅は、支持脚428における径方向中央部の周方向幅よりも大きい。支持脚428における第2環状部427との接続部分の周方向幅は、支持脚428における径方向中央部の周方向幅よりも大きい。
【0044】
図4および
図7に示すように、第1環状部426の内周面は、フランジ42の内周面42aと一致する。フランジ42の内周面42aの内周側には、底面42bが隣接して設けられる。フランジ42の内周面42aの内周側には、軸受242が設けられる。軸受242は、内周面42aおよび底面42bと当接する。このように、第1環状部426の内周側には、軸受242が設けられる。軸受242は、アシストピニオン軸21を環状凸部401に対して回転可能に支持する。
【0045】
図8に示すように、第1部位422と第2部位423との境界430は、支持脚428と重なる。即ち、支持脚428は、第1部位422と第2部位423とに跨って配置される。具体的には、第1部位422は、第1環状部426と、支持脚428の径方向内側部分とを含む。第2部位423は、第2環状部427と、支持脚428の径方向外側部分とを含む。
【0046】
また、アシストピニオン軸21の径方向から見て、シール部材収容溝514は、軸受242と重なる。具体的には、シール部材収容溝514のZ方向位置は、軸受242の上端と下端との間にある。従って、シール部材Sも、アシストピニオン軸21の径方向から見て、軸受242と重なる。
【0047】
そして、
図9に示すように、ウォームホイール収容部5とウォームシャフト収容部6との間には、Z方向に延び且つ貫通孔512を有する壁部513が配置される。貫通孔512においてホイール歯部232とシャフト歯部271とが噛み合っている。貫通孔512の縁のうち、Z2側には第2縁512bが位置し、Z1側には第1縁512aが位置する。第2縁512bは壁部513のZ2側の端部からZ1側に離隔する。このように、第2ハウジング400の側面部402の内側面402a(ウォームホイール収容部5の側面部51の内側面)は、中心軸AX3の軸回りの周方向に沿って環状に連続して延びている。具体的には、中心軸AX3の軸方向から見て、内側面402aは、円環状である。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置100は、Z2側の外周にラック軸15のラック歯152と噛み合うピニオン歯22が設けられるアシストピニオン軸21と、アシストピニオン軸21におけるZ1側に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部232が設けられるウォームホイール23と、ホイール歯部232と噛み合うシャフト歯部271を有し、ウォームホイール23に対してY1側に配置され、且つ、モータ70の駆動力によって回転するウォームシャフト27と、アシストピニオン軸21を収容する第1ハウジング4と、第1ハウジング4のZ1側に隣接して配置され且つウォームホイール23およびウォームシャフト27を収容する第2ハウジング400と、第1ハウジング4と第2ハウジング400との間に配置されるシール部材Sと、を備える。
【0049】
第1ハウジング4におけるZ1側には、アシストピニオン軸21の中心軸AX3の外周側に環状に配置され且つZ1側に向けて突出する環状凸部401が設けられ、第2ハウジング400におけるZ2側には、環状凸部401の外周面401aの外周側に嵌合する側面部51が設けられる。環状凸部401の外周面401aには、シール部材収容溝514が周方向に沿って設けられる。シール部材収容溝514は、径方向内側に凹み且つシール部材Sが収容される。シール部材収容溝514にシール部材Sが収容された状態で環状凸部401と側面部51との間を封止する。
【0050】
前述したように、特許文献1では、第1ハウジングのフランジと第2ハウジングのフランジとをボルトを介して締結するため、電動パワーステアリング装置の稼動時に、ウォームホイールとウォームシャフトとの距離が変化しやすくなる。また、第2ハウジングの壁部の下端に切欠きがあるため、例えば、壁部の外側に環状のシール部材を設けてハウジング全体を封止する必要があり、電動パワーステアリング装置が大型化する可能性がある。
【0051】
これに対して、本実施形態では、第1ハウジング4に環状凸部401を設け、第2ハウジング400に側面部51を設け、側面部51を環状凸部401の外周側に嵌合する。即ち、側面部51と環状凸部401との、いわゆるインロー結合によって、第1ハウジング4と第2ハウジング400との位置決めを行う。従って、ウォームホイールとウォームシャフトとの距離の変化がより抑制される。
【0052】
また、環状凸部401の外周面401aにシール部材収容溝514を設け、シール部材収容溝514にシール部材Sを収容し、側面部51を環状凸部401の外周側に嵌合する。これにより、第1ハウジング4と第2ハウジング400との封止を行うため、特許文献1の電動パワーステアリング装置よりも小型化することが可能となる。
【0053】
以上より、本実施形態によれば、より小型化され、且つ、ウォームホイールとウォームシャフトとの距離の変化がより抑制される、電動パワーステアリング装置100を提供することが可能となる。
【0054】
環状凸部401は、アシストピニオン軸21の中心軸AX3に直交する平面に沿う第1天面部422aを有する第1部位422と、第1部位422の径方向外側に隣接して配置され且つ径方向外側に行くに従ってZ2側に向けて延びる第2天面部423aを有する第2部位423と、を備える。第2天面部423aは、ウォームシャフト27と対向して配置される。
【0055】
従って、第2部位423の天面部が、アシストピニオン軸21の中心軸AX3に直交する平面に沿う場合に対して、環状凸部401をウォームシャフト27により近づけることが可能となる。よって、電動パワーステアリング装置100をより小型化することが可能となる。
【0056】
環状凸部401には、第1部位422および第2部位423に配置されてZ2側に凹む凹部43が設けられる。従って、環状凸部401に凹部43を設けない場合に対して、電動パワーステアリング装置100の重量をより軽減することが可能となる。
【0057】
環状凸部401は、中心軸AX3の軸回りの周方向に延びる第1環状部426と、第1環状部426の外周側に配置される第2環状部427と、径方向に延びて第1環状部426と第2環状部427とを繋ぐ複数の支持脚428と、を備える。第1部位422と第2部位423との境界430は、支持脚428と重なり、第1環状部426の内周側には、アシストピニオン軸21を環状凸部401に対して回転可能に支持する軸受242が設けられる。
【0058】
このように、支持脚428が径方向に延びており、第1環状部426の内周側に軸受242が設けられるため、第1環状部426に対する径方向の支持剛性がより高くなる。従って、アシストピニオン軸21が第1環状部426に対して軸受242を介して回転する際の径方向の変位がより小さくなり、アシストピニオン軸21がより安定して回転する。
【0059】
環状凸部401の内周側には、アシストピニオン軸21を環状凸部401に対して回転可能に支持する軸受242が設けられ、アシストピニオン軸21の径方向から見て、シール部材収容溝514は、軸受242と重なる。
【0060】
アシストピニオン軸21の径方向から見て、例えば、シール部材収容溝514が軸受242よりもZ1側またはZ2側に位置する場合は、本実施形態よりも、第1ハウジング4または第2ハウジング400のZ方向高さが大きくなる。従って、本実施形態では、より小型化される電動パワーステアリング装置100が提供される。
【符号の説明】
【0061】
3 操舵側ハウジング
4 第1ハウジング
5 ウォームホイール収容部
6 ウォームシャフト収容部
7 モータ取付板
10 ステアリングホイール
11 第1ステアリングシャフト
12 第2ステアリングシャフト
13 操舵ピニオン軸
14 ピニオン歯
15 ラック軸
16 タイロッド
17 車輪
21 アシストピニオン軸
22 ピニオン歯
23 ウォームホイール
26 キャップ
27 ウォームシャフト
31 車体取付部
32 貫通孔
33 操舵ピニオン軸収容部
40 アシスト側ハウジング
41 本体部
42 フランジ
42a 内周面
42b 底面
43 凹部
43a 底面
43b 側面
51 側面部
52 天面部
61 側面部
62 天面部
70 モータ
100 電動パワーステアリング装置
111 ユニバーサルジョイント
121 ユニバーサルジョイント
151、152 ラック歯
153 押圧部材
154 スプリング
155 封止部材
231 芯金部
232 ホイール歯部
241 軸受
242 軸受
271 シャフト歯部
300 ハウジング
400 第2ハウジング
401 環状凸部
401a 外周面
402 側面部
402a 内側面
403 天面部
411 ラック軸収容部
412 押圧部材収容部
413 車体取付部
414 貫通孔
421 径方向外側部
421a 上面
422 第1部位
422a 第1天面部
423 第2部位
423a 第2天面部
423b 外周面
424、425 突起部
424a、425a 貫通孔
426 第1環状部
427 第2環状部
428 支持脚
430 境界
514 シール部材収容溝
516 突起部
517 雌ねじ
521 突設部
AX1、AX2、AX3 中心軸
BL ボルト
S シール部材