(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000392
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】接合用ペースト及び接合体
(51)【国際特許分類】
B22F 9/00 20060101AFI20231225BHJP
B22F 7/08 20060101ALI20231225BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20231225BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20231225BHJP
C09J 201/06 20060101ALI20231225BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231225BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20231225BHJP
B22F 1/17 20220101ALN20231225BHJP
B22F 1/102 20220101ALN20231225BHJP
B22F 1/00 20220101ALN20231225BHJP
【FI】
B22F9/00 B
B22F7/08 C
B22F1/05
C09J9/02
C09J201/06
C09J11/06
H01L21/52 E
B22F1/17
B22F1/102
B22F1/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099147
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上杉 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 直宏
【テーマコード(参考)】
4J040
4K017
4K018
5F047
【Fターム(参考)】
4J040GA05
4J040GA07
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5F047AA02
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5F047BA52
(57)【要約】
【課題】
接合された箇所の接合強度が高く、冷熱サイクルに伴う接合強度の低下が抑制された接合用ペーストを提供すること。また、上記特性に加えて、高濃度に金属粒子を含有していても被接合体部への印刷適性に優れる接合用ペーストを提供すること。さらに、冷熱サイクルによって劣化しない接合体を提供すること。
【解決手段】
上記課題は、平均粒子径が100nm~500nmである金属粒子(A)と、水酸基、カルボキシ基及びアミノ基から選ばれるいずれか一種である官能基(b)を2つ以上有する炭素数20~80の化合物(B)と、沸点が200℃以上である分散媒(C)と、を含有してなる接合用ペースト、並びに、該接合用ペーストによって、第一の被接合部と第二の被接合部とが接合された接合体によって解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が100nm~500nmである金属粒子(A)と、水酸基、カルボキシ基及びアミノ基から選ばれるいずれか一種である官能基(b)を2つ以上有する炭素数20~80の化合物(B)と、沸点が200℃以上である分散媒(C)と、を含有してなる接合用ペースト。
【請求項2】
前記官能基の数が、2又は3であることを特徴とする請求項1記載の接合用ペースト。
【請求項3】
前記化合物(B)が、分岐及び/又は環状構造を有することを特徴とする請求項1記載の接合用ペースト。
【請求項4】
前記官能基の数をnとした際、前記化合物(B)が、n価の炭化水素基を有することを特徴とする請求項1記載の接合用ペースト。
【請求項5】
前記n価の炭化水素基の炭素数が、30~60であることを特徴とする請求項4記載の接合用ペースト。
【請求項6】
前記化合物(B)が、ダイマー酸、トリマー酸、ダイマージオール、トリマートリオール、ダイマージアミン及びトリマートリアミンからなる群より選ばれる一種以上を含むことを特徴とする請求項1記載の接合用ペースト。
【請求項7】
前記金属粒子(A)100質量部に対して、前記化合物(B)0.3質量部~2.7質量部を含有してなることを特徴とする請求項1記載の接合用ペースト。
【請求項8】
前記金属粒子(A)の平均粒子径が、150nm~500nmである請求項1記載の接合用ペースト。
【請求項9】
前記分散媒(C)が、グリコールエーテル系及びジオール系からなる群より選ばれる一種以上を含む請求項1記載の接合用ペースト。
【請求項10】
前記分散媒(C)は、沸点が250℃以上である請求項1記載の接合用ペースト。
【請求項11】
接合ペーストの質量に占める金属粒子(A)の質量の割合が、80質量%~95質量%である請求項1記載の接合用ペースト。
【請求項12】
請求項1~11いずれか1項記載の接合用ペーストによって、第一の被接合部と第二の被接合部とが接合された接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合用ペースト及び接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属部材同士、金属部材と半導体素子、金属部材と発光ダイオード(LED)素子等を接着するための接合材としては、はんだが使用されていた。近年、次世代パワーエレクトロニクスの技術分野では、高温動作可能なSiC等のデバイスが求められている。このようなデバイスを製造するための接合材としては、高温駆動信頼性の観点で、はんだの代替材料が求められており、例えば、特許文献1ないし3に示すように、焼結性を有する金属粒子を用いた接合用ペースト等の接合材が提案されている。
【0003】
特許文献1には、平均一次粒径0.5~3.0μmである金属サブミクロン粒子と、平均一次粒子径が1~200nmであって炭素数6~8の有機化合物で被覆された金属ナノ粒子とを含む接合材が開示されている。しかし、接合された箇所の接合強度に乏しく、冷熱サイクルに伴って接合強度が低下するという問題があった。
【0004】
特許文献2には、平均一次粒子径が1~200nmであって、炭素数8以下の有機物質で被覆されている銀ナノ粒子と、少なくともカルボキシル基を二つ有するフラックス成分を含む接合材が開示されている。また、特許文献3には、平均一次粒子径が17nm、85nm、0.6μmである銀微粒子と、銀微粒子同士の間隔を保持する架橋型粒子間距離保持剤とを含有する接合材が開示されている。
【0005】
しかし、これらの接合材であっても、特許文献1に開示されている技術と同様に、接合された箇所の強度に乏しく、冷熱サイクルに伴って接合強度が低下するという問題があった。さらに、緻密で強固な接合を実現するべく、銀ナノ粒子を高濃度に含有する接合用ペーストを作成した場合、流動性が著しく乏しくなる欠点をも有していた。その結果、被接合体部に接合ペーストを印刷する工程において、印刷部分にかすれが生じたり、非塗工部が形成される問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-80147号公報
【特許文献2】特開2011-240406号公報
【特許文献3】特開2018-109232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
金属粒子を用いた接合用ペーストに求められる特性としては、被接合体部への印刷適性、十分な接合強度に加えて、冷熱サイクル等の信頼性試験後に接合強度ができるだけ低下しない事が挙げられる。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、接合された箇所の接合強度が高く、冷熱サイクルに伴う接合強度の低下が抑制された接合用ペーストを提供することである。また、上記特性に加えて、高濃度に金属粒子を含有していても被接合体部への印刷適性に優れる接合用ペーストを提供することである。さらに、冷熱サイクルによって劣化しない接合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
本発明の一態様に係る接合用ペーストは、平均粒子径が100nm~500nmである金属粒子(A)と、水酸基、カルボキシ基及びアミノ基から選ばれるいずれか一種である官能基(b)を2つ以上有する炭素数20~80の化合物(B)と、沸点が200℃以上である分散媒(C)と、を含有してなることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る接合用ペーストは、前記官能基の数が、2又は3であることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る接合用ペーストは、前記化合物(B)が、分岐及び/又は環状構造を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る接合用ペーストは、前記官能基の数をnとした際、前記化合物(B)が、n価の炭化水素基を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る接合用ペーストは、前記n価の炭化水素基の炭素数が、30~60であることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る接合用ペーストは、前記化合物(B)が、ダイマー酸、トリマー酸、ダイマージオール、トリマートリオール、ダイマージアミン及びトリマートリアミンからなる群より選ばれる一種以上を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る接合用ペーストは、前記金属粒子(A)100質量部に対して、前記化合物(B)0.3質量部~2.7質量部を含有してなることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る接合用ペーストは、前記金属粒子(A)の平均粒子径が、150nm~500nmであることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る接合用ペーストは、前記分散媒(C)が、グリコールエーテル系及びジオール系からなる群より選ばれる一種以上を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る接合用ペーストは、前記分散媒(C)の沸点が250℃以上であることを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係る接合用ペーストは、接合ペーストの質量に占める金属粒子(A)の質量の割合が、80質量%~95質量%であることを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様に係る接合体は、前記接合用ペーストによって、第一の被接合部と第二の被接合部とが接合された接合体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、接合された箇所の接合強度が高く、冷熱サイクルに伴って接合強度が低下しない接合用ペーストを提供できる。また、これらの効果に加えて印刷適性にも優れる接合用ペーストを提供できる。更に、冷熱サイクルによって劣化しない接合体を提供でき、接合強度が発現し難い、メッキ処理を行っていない銅基材を被接合部として用いた場合であっても、良好な冷熱サイクル特性を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書では、「平均粒子径が100nm~500nmである金属粒子(A)」を「金属粒子(A)」、「水酸基、カルボキシ基及びアミノ基から選ばれるいずれか一種である官能基(b)を2つ以上有する炭素数20~80の化合物(B)」を「化合物(B)」、「沸点が200℃以上である分散媒(C)」を「分散媒(C)」と略記することがある。
【0023】
本発明の接合用ペーストは、所定範囲の平均粒子径を有する金属粒子(A)、特定の官能基を2つ以上有し、且つ所定範囲の炭素数を有する化合物(B)、及び、所定範囲の沸点を有する分散媒(C)を含有することを特徴とする。
上記を組み合わせることで、塗膜中の空隙の生成が抑制されるため緻密な塗膜となり、優れた接合強度や冷熱サイクル後の接合強度を発揮することができる。詳細には、100nm~500nm程度の粒子サイズの焼結温度帯は化合物(B)が十分に液状で存在し、分散媒(C)も十分量残存しており、塗膜の流動性を高め、さらに焼結段階で基材への濡れ性を向上させ密着性を良好とする。
【0024】
<金属粒子(A)>
金属粒子(A)中の金属としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、ケイ素、アルミニウム、タングステン、モリブデン、白金及びこれらの合金が挙げられる。また、核体と、上記核体物質とは異なる物質で被覆した微粒子、具体的には、例えば、銅を核体とし、その表面を銀で被覆した銀コート銅粉等が挙げられる。また、酸化銀、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、ITO(スズドープ酸化インジウム)、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、及びGZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)等の金属酸化物の粉末、並びにこれらの金属酸化物で表面被覆した粉末等も挙げられる。使用する金属の種類は1種でもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
特に優れた強度を有する接合体が得られる点で、金属粒子(A)は銅又は銀から選ばれることが好ましい。さらに、幅広い焼成温度に対応することができ、大気圧下、窒素雰囲気、真空中、又は還元雰囲気等の様々な焼成環境にも対応できる点で、金属粒子(A)は銀であることがより好ましい。
【0026】
金属粒子(A)は、特定の平均粒子径の範囲にあることで、接合ペーストが加熱及び焼結される200℃から350℃の温度範囲で粒子同士が溶融又は結着(以下、焼結ともいう)する機能を有し、バルクの金属に変化することが可能となっている。その結果、被接合体を接合するに至る。以下、被接合体の間に存在する金属粒子(A)が焼結することで形成される部位を接合層と呼ぶ。
【0027】
本発明では、特定の平均粒子径を有する金属粒子(A)を用いることが重要である。本明細書でいう「平均粒子径」とは、実施例に記載した測定方法よって求められた体積基準の50%積算粒子径分布粒子径(d50)を意味する。金属粒子(A)のd50は100~500nmであり、好ましくは150nm以上、より好ましくは180nm以上、さらに好ましくは、200nm以上である。また、金属粒子(A)のd50は、好ましくは450nm以下、より好ましくは350nm以下である。
【0028】
金属粒子(A)は表面を有機成分(a)で被覆されていることが好ましい。有機成分(a)で被覆されていると金属粒子含有組成物や接合用ペーストの保存安定性が増すことが期待できる。有機成分(a)としては、脂肪酸、脂肪族アミン、脂肪族アルコール等が挙げられるが、飽和又は不飽和の脂肪酸であることが好ましく、炭素数が3~18の飽和又は不飽和の脂肪酸であることがより好ましく、炭素数が6~18の飽和又は不飽和の脂肪酸であることがさらに好ましい。有機成分(a)は1種又は2種以上含んでいても良い。
【0029】
金属粒子(A)は、単独で使用してもよいし、複数組み合わせて使用してもよい。また、必要に応じて、金属粒子(A)以外の金属粒子を併用してもよい。金属粒子(A)以外の金属粒子を併用する場合は、平均粒子径500nmを超える粒子径の金属粒子を組み合わせて使用することが好ましい。
【0030】
<化合物(B)>
次に、化合物(B)について説明する。一般に、金属粒子は粉体であるから、化合物(B)を含まない場合、接合用ペースト中から分散媒が揮発するに伴い、被接合部との界面形成をしにくくなるが、本発明の化合物(B)が共存することで、分散媒(C)の一部又は全部が揮発した後も、液状の金属粒子含有組成物として振る舞うことができるため、被接合部と一体となった良好な接合界面を形成しやすくなっている。
【0031】
化合物(B)は、分子内に水酸基、カルボキシ基又はアミノ基から選ばれるいずれか一種の官能基(以下、この官能基を「官能基(b)」と称することとする)を2つ以上有し、炭素数20~80からなる構造を有している。
【0032】
化合物(B)の炭素数は、官能基(b)中の炭素も含んだ数値を表す。したがって、化合物(B)中の官能基(b)が、カルボキシ基の場合、このカルボキシ基中の炭素も含めた炭素数を化合物(B)の炭素数とみなす。
【0033】
化合物(B)において、官能基(b)を除いた骨格(部分構造)は、有機残基であるが、炭化水素基又は複数の炭化水素基がヘテロ原子を含む連結基で結合された基であることが好ましい。このようなヘテロ原子を含む連結基としては、-O-基(エーテル基)、-C(=O)-基(カルボニル基)、-C(=O)-O-基(エステル基、オキシカルボニル基ともいう)、-C(=O)-NH-基(アミド基、イミノカルボニル基ともいう)が挙げられる。化合物(B)は、官能基(b)以外の官能基を有さないことが好ましい。
【0034】
化合物(B)の性状は、特に限定されないが、本発明の接合用ペーストが焼成される温度領域である200℃~350℃において液状であることが好ましい。化合物(B)は、常温(25℃)で固体でも液状でもよいが、接合用ペースト中に均一に分散して、効果的に作用しうる点で、常温で液状であることがより好ましい。
【0035】
化合物(B)が上記温度領域で液状である性質を有する場合、被接合部との接合界面における濡れ性が増し、接触面積が増大することが期待できる。その結果、強固な接合界面を有する接合体を製造することが可能となる。また、焼結時の接合層中に空隙が形成された場合であっても、空隙等の欠陥部に液状の化合物(B)が流入し、欠陥の少ない接合層及び接合体を得ることが可能であると考えられる。
【0036】
化合物(B)中の官能基(b)の数は、2又は3であることが好ましい。
【0037】
化合物(B)は、直鎖構造でもよいし、分岐及び/又は環状構造を有していてもよいが、分岐及び/又は環状構造を有することが好ましい。分岐及び/又は環状構造を有する場合、結晶性が低く、良好な流動性を有する液状となりやすい点で、好ましい。
【0038】
化合物(B)の官能基(b)の数をnとした場合、化合物(B)はn価の炭化水素基を有することが好ましい。化合物(B)において、官能基(b)を除いた骨格は、強固な接合体が得られる点で、n価の炭化水素基のみからなることがより好ましい。
【0039】
上記の理由から、化合物(B)は、焼結を開始した時点では直ちに蒸発しないことが好ましいが、焼結が終了した時点では、形成された接合層中に必ずしも残存していなくてよい。n価の炭化水素基の炭素数が30~60である場合、焼結後の接合層中に残存する化合物(B)の量がより低減でき、より緻密な接合層が得られ易くなるため好ましい。その結果、初期の接合強度に優れ、冷熱サイクルに伴う接合強度の低下抑制が一層期待できる。
【0040】
直鎖構造である化合物(B)の具体例としては、エイコサン二酸、ヘネイコサン二酸、ドコサン二酸、テトラコサン二酸、トリアコンタン二酸、ドトリアコンタン二酸、テトラコンタン二酸、ペンタコンタン二酸、ヘキサコンタン二酸、バチルアルコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
また、分岐及び/又は環状構造である化合物(B)の具体例としては、ダイマー酸、トリマー酸、テトラマー酸、ダイマージオール、トリマートリオール、テトラマーテトラオール、ダイマージアミン、トリマートリアミン、テトラマーテトラミン、フィタントリオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
これらの具体例の中で、化合物(B)としては、先に述べた理由から、ダイマー酸、トリマー酸、ダイマージオール、トリマートリオール、ダイマージアミン、トリマートリアミンから選ばれることが、より好ましく、さらに好ましくは、ダイマー酸又はトリマー酸である。
【0043】
ダイマー酸、トリマー酸及びテトラマー酸は、不飽和脂肪酸の多量化反応で製造することができる。例えば、オレイン酸(炭素数18)とリノール酸(炭素数18)とのDiels-Alder反応や、ラジカル反応によって製造することができる。ダイマー酸、トリマー酸及びテトラマー酸は、炭素数がそれぞれ、36若しくは44、54及び72であることが好ましい。また、原料となる不飽和脂肪酸の炭素数を適宜変更することで、上記以外の炭素数を有する化合物(B)を製造することが可能である。尚、本明細書では、炭素数12以上の不飽和脂肪酸の二量体、三量体及び四量体を、それぞれダイマー酸、トリマー酸及びテトラマー酸と呼称するものとする。
【0044】
ダイマージオールはダイマー酸のカルボキシ基を、トリマートリオールはトリマー酸のカルボキシ基を、テトラマーテトラオールはテトラマー酸のカルボキシ基を、それぞれ、水酸基に還元した構造を有している。ダイマージオール、トリマートリオール及びテトラマーテトラオールは、炭素数がそれぞれ、36、54及び72であることが好ましい。
【0045】
ダイマージアミンはダイマー酸のカルボキシ基を、トリマートリアミンはトリマー酸のカルボキシ基を、テトラマーテトラミンはテトラマー酸のカルボキシ基を、それぞれ、アミノ基に官能基変換した構造を有している。ダイマージアミン、トリマートリアミン及びテトラマーテトラミンは、炭素数がそれぞれ、36、54及び72であることが好ましい。
【0046】
化合物(B)は、製法上、多量化度が異なる化合物の混合物である場合があるが、異なる多量体の混合物として使用してもよいし、特定の単一化合物を使用してもよい。
【0047】
本発明の接合用ペーストにおいて、化合物(B)は、金属粒子(A)100質量部に対して、0.1質量部~3質量部含有することが好ましく、0.3質量部~2.7質量部含有することがより好ましい。この範囲であれば、初期の接合強度に特に優れ、冷熱サイクルに伴う接合強度の低下を抑制された接合体を得ることが可能である。
【0048】
<分散媒(C)>
本発明の接合用ペーストは、沸点が200℃以上である分散媒(C)(ただし化合物(B)を除く)を含む。分散媒(C)は、沸点が200℃以上であることが重要であり、金属粒子(A)と化合物(B)を分散する役割だけでなく、銀の焼結工程において塗膜に流動性を付与する役割を担う。
沸点が200℃以上である分散媒(C)を含むと、銀の焼結工程において、塗膜内の分散媒は比較的緩やかに乾燥減少するため、塗膜は高い流動性を維持したまま焼結することができる。これにより、被接合部との密着性の向上や、より欠陥の少ない強固な接合体を得ることが可能となる。本発明の接合用ペーストは、本発明の効果を損なわない範囲で、沸点が200℃以上である分散媒(C)以外の分散媒を含有してもよいが、200℃以上である分散媒(C)の割合が70質量%以上であることが好ましい。分散媒(C)の炭素数は、好ましくは20未満である。
【0049】
分散媒(C)の沸点は、好ましくは240℃以上、より好ましくは250℃以上である。250℃以上であると、塗膜はより長い時間、高い流動性を維持したまま焼結することができる。そのため、より欠陥の少ない強固な接合体を形成し、冷熱サイクル性に優れるため好ましい。また沸点は、分散媒の残留を抑制する観点から、好ましくは350℃以下である。200℃以上である分散媒(C)が混合物である場合、分散媒(C)の沸点は、各々の沸点とその質量比率から算出することができる。
【0050】
分散媒(C)としては、例えば、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート、テルソルブMTPH(日本テルペン株式会社製)、テキサノール(2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールモノイソブチラート)、イソホロン、γ-ブチルラクトン、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-エチル-1,3ヘキサンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、沸点200℃以上の炭化水素系溶剤が挙げられるが、これらに限定されない。これら分散媒(C)は、単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0051】
これら分散媒(C)の中で、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール等のジオール系;ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系;が好ましく用いられる。
より好ましくは、グリコールエーテル系であり、沸点が250℃以上である、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテルが特に好ましく用いられる。
【0052】
接合用ペーストの焼結に際し、分散媒(C)の沸点が、化合物(B)の沸点より低い場合、分散媒(C)の量を低減することができ、金属粒子(A)の含有率を高めることができるため好ましい。
【0053】
<接合用ペーストの製造>
本発明の接合用ペーストは、金属粒子(A)と化合物(B)とを組み合わせて用いることにより、金属粒子(A)を高濃度に含有しても、すなわち分散媒(C)の含有比率が少ない場合であっても、優れた流動性を発現するため、被接合体部への印刷適性に優れている。その結果、より欠陥の少ない強固な接合体を得ることが可能となっている。
【0054】
接合用ペーストは、金属粒子(A)と化合物(B)と分散媒(C)との質量の和に占める金属粒子(A)の質量の割合が、80質量%~95質量%であることが好ましく、85質量%~94質量%であることがより好ましい。また、接合用ペーストの質量に占める、金属粒子(A)の質量の割合が、80質量%~95質量%であることが好ましく、85質量%~94質量%であることがより好ましい。
金属粒子(A)を上記範囲で含むことにより、接合用ペーストとして良好な印刷適性を確保できるとともに、接合体中での分散媒(C)の残留を抑制し、分散媒(C)由来の空隙(ボイド)の発生を抑制し、良好な接合強度を発現できる。
【0055】
本発明の接合用ペーストは、添加剤を含むことができ、焼結促進剤やバインダー樹脂、又は樹脂型分散剤等を添加することができる。
【0056】
金属粒子(A)、化合物(B)及び分散媒(C)とから接合用ペーストを調製する装置としては、ディスパー、3本ロール、ビーズミル、超音波分散機、自公転式撹拌機等が挙げられる。
【0057】
<接合体>
本発明の接合用ペーストによって、第一の被接合部と第二の被接合部とを接合し、接合体を得ることができる。
【0058】
接合用ペーストを被接合体に塗布する方法としては、部材上に均一に塗布できる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、メタルマスク印刷、グラビアオフセット印刷等の各種印刷法、ディスペンサーを使用した吐出法等が挙げられ、本発明の接合用ペーストは、高濃度で金属粒子を含有していても流動性に優れているため、特にメタルマスク印刷と組み合わせて用いることが好ましい。
【0059】
本発明の接合用ペーストを塗布した第一の被接合部に第二の被接合部を載置させる際に、圧力をかけながら載置させる事もできる。圧力としては、接合用ペーストの粘度やペーストの乾燥状態により適宜設定されるが、好ましくは0.1~40MPa、更に好ましくは0.3~30MPaである。
【0060】
第一の被接合部に第二の被接合部を載置した積層体を接合するための焼結の条件は、適宜変更されるが、例えば、大気圧下、窒素雰囲気、真空中、又は還元雰囲気で200~350℃等の条件を挙げることができる。焼成装置としては、熱風オーブン、焼成炉、電気炉、赤外線オーブン、リフローオーブン、マイクロウエーブオーブン、ホットプレート、光焼成装置等が挙げられる。これら装置を適宜、単独で又は複数用いることができる。また、焼結を行いながら圧力を加えてもよい。圧力としては、接合用ペーストの粘度やペーストの乾燥状態により適宜設定されるが、好ましくは0.1~40MPa、更に好ましくは0.3~30MPaである。
【0061】
焼成工程の前に、接合塗膜中の有機成分を取り除く目的で、適宜予備乾燥工程を入れることもできる。例えば、焼成装置と同様な装置を用いて60~220℃の範囲での条件が挙げられる。
【0062】
2つの被接合部を接合する好ましい方法としては、本発明の接合用ペーストを、第一の被接合部に塗布した後、第二の被接合部を載置し、300℃程度まで、2~10℃/分程度の昇温速度で昇温し焼結を行う方法が挙げられる。昇温終了後、昇温終了時の温度よりも高い温度で10分間~2時間程度維持することが好ましい。
【0063】
被接合部の種類は特に限定されず、金属材料、半導体材料、プラスチック材料、セラミック材料等を挙げることができる。また、電子素子を挙げることができる。
【0064】
金属としては、例えば、銅、金、アルミニウム等を挙げることができる。
半導体材料としては、シリコン(ケイ素)、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化ガリウム、硫化カドミウム、窒化珪素、黒鉛、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ガリウム等を挙げることができる。
プラスチック材料としては、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート等を挙げることができる。
セラミック材料としては、例えば、ガラス、シリコン等を挙げることができる。
【0065】
また、電子素子としては、半導体素子、LED素子、パワーデバイス素子等を挙げることができる。
【0066】
第一の被接合部及び第二の被接合部は、同じ種類だけではなく、異なる種類の部材であってもよい。被接合部は、接合された箇所の接合強度を大きくするため、被接合部の表面をコロナ処理、メッキ処理等で施されていてもよい。
【0067】
本発明の接合用ペーストで被接合部を接合した際に形成される接合層の膜厚に制限はないが、3μm~500μmが好ましく、10μm~200μmがより好ましく、20μm~100μmがさらに好ましい。
【実施例0068】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。尚、例中、特に断りがない限り「部」とは「質量部」を、「%」とは「質量%」をそれぞれ表し、表中の数値は、特に断りがない限り「部」を表す。
【0069】
<金属粒子(A)の製造>
(製造例1)金属粒子A1
窒素雰囲気下、25℃で攪拌しながらトルエン200部及びヘキサン酸銀22.3部を混合し、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール1.6部、オレイン酸0.28部を添加し溶解させた。その後、還元剤として濃度20%のコハク酸ジヒドラジド(以下、SUDH)水溶液73.1部を滴下すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。さらに反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。静置、分離した後、水相を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去し、さらにトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄、分離を繰り返した後、トルエンを加え遠心分離後に上澄み液を除去する工程を2回繰り返した。沈殿物を乾燥させて、銀粒子がヘキサン酸及びオレイン酸で被覆された金属粒子A1を得た。金属粒子A1の粒子径を後述する方法で求めたところ、d50は210nmであった。
【0070】
(製造例2)金属粒子A2
ジエチルアミノエタノール2.4部、オレイン酸の量を0.42部とした以外は、製造例1と同様にして、金属粒子A2を得た。d50は120nmであった。
(製造例3)金属粒子A3
ジエチルアミノエタノール2.0部、オレイン酸の量を0.34部とした以外は、製造例1と同様にして、金属粒子A3を得た。d50は155nmであった。
(製造例4)金属粒子A4
ジエチルアミノエタノール1.8部、オレイン酸の量を0.31部とした以外は、製造例1と同様にして、金属粒子A4を得た。d50は185nmであった。
(製造例5)金属粒子A5
ジエチルアミノエタノール1.2部、オレイン酸の量を0.18部とした以外は、製造例1と同様にして、金属粒子A5を得た。d50は290nmであった。
(製造例6)金属粒子A6
ジエチルアミノエタノール1.0部、オレイン酸の量を0.14部とした以外は、製造例1と同様にして、金属粒子A6を得た。d50は390nmであった。
【0071】
(製造例7)金属粒子A7
ジエチルアミノエタノール1.4部、オレイン酸の量を0.09部とした以外は、製造例1と同様にして、金属粒子A7を得た。d50は600nmであった。
(製造例8)金属粒子A8
ジエチルアミノエタノール0.6部、オレイン酸の量を0.070部とした以外は、製造例1と同様にして、金属粒子A8を得た。d50は1100nmであった。
(製造例9)金属粒子A9
ジエチルアミノエタノール2.3部、オレイン酸の量を2.8部とした以外は、製造例1と同様にして、金属粒子A9を得た。d50は20nmであった。
(製造例10)金属粒子A10
ジエチルアミノエタノール2.1部、オレイン酸の量を0.71部とした以外は、製造例1と同様にして、金属粒子A10を得た。d50は85nmであった。
【0072】
[粒子径の測定]
各金属粒子(A)にイソプロピルアルコールを加え超音波分散機にて分散し、0.5質量%の分散液を得た。得られた分散液をナノトラックUPA-EX150(日機装社製)を用いて、分散液中の金属粒子(A)の粒子径を測定し、平均粒子径(d50)を求めた。
上記の方法で製造された金属粒子の内、金属粒子A1~A6が金属粒子(A)に該当し、金属粒子A7~A10が金属粒子(A)ではない金属粒子に該当する。
【0073】
<化合物(B)の製造>
(製造例11)トリマートリオール(化合物B5)
特開平10-67835号公報に記載の方法を参考に、以下のようにトリマートリオールを合成した。窒素雰囲気下、オレイン酸メチル75%、リノール酸メチル15%及びステアリン酸メチル9%を含有してなる不飽和脂肪酸エステル混合物1000gと、活性白土70gとを、230℃で5時間、オートクレーブで反応した。この反応液から触媒を濾別し、減圧蒸留を行うことで、トリマー酸トリメチルエステル115gを得た。
滴下ロート、冷却管、温度計と撹拌機とを備えたフラスコにて、窒素雰囲気下、水素化リチウムアルミニウム6.4gとジエチルエーテル240mlとを注意深く混合し、水素化リチウムアルミニウムの分散液を調製した。
窒素雰囲気下、上記分散液を撹拌しながら、トリマー酸トリメチルエステル50gを70mlのジエチルエーテルで希釈した溶液を120分かけて滴下し、温度を約30℃以下に保持しながら反応させた。滴下後、約40分間撹拌し、ついで、イオン交換水13gを冷却しながら注意深く滴下して、余剰の還元剤を不活性化した。この反応液を、70gの氷水が入ったにフラスコに慎重に移し、10%の硫酸水溶液50gを加えた。しばらく静置後、このフラスコにジエチルエーテルを適量加えて生成物を抽出した。エーテル層が中性になるまで水洗浄を繰り返し、ジエチルエーテルを留去することにより、3つの水酸基と、分岐及び環状構造を有する三価の炭化水素基とからなる炭素数54のトリマートリオール31gを得た。得られたトリマートリオールは、25℃で粘稠な液状であった。
【0074】
[化合物(B)]
上記化合物B5以外の化合物(B)は下記の材料を使用した。ただし、化合物B9及び化合物B10は、本願の化合物(B)ではない化合物である。括弧内に、炭素数、材料名、25℃での性状を記載した。
【0075】
化合物B1:プリポール1009(クローダジャパン株式会社製、炭素数36の水添ダイマー酸。2つのカルボキシ基と、分岐及び環状構造を有する二価の炭化水素基とからなる。液状)
化合物B2:プリポール1004(クローダジャパン株式会社製、炭素数44の水添ダイマー酸。2つのカルボキシ基と、分岐及び環状構造を有する二価の炭化水素基とからなる。液状)
化合物B3:プリポール1040(クローダジャパン株式会社製、炭素数54のトリマー酸。3つのカルボキシ基と、分岐及び環状構造を有する三価の炭化水素基とからなる。液状)
化合物B4:プリポール2033(クローダジャパン株式会社製、炭素数36のダイマージオール。2つの水酸基と、分岐及び環状構造を有する二価の炭化水素基とからなる。液状)
化合物B5:製造例11で得られたトリマートリオール(炭素数54。液状)
化合物B6:プリアミン1071[クローダジャパン株式会社製、炭素数36のダイマージアミン(2つのアミノ基と分岐及び環状構造を有する二価の炭化水素基とからなる、液状)と炭素数54のトリマートリアミン(3つのアミノ基と分岐及び環状構造を有する三価の炭化水素基とからなる、液状)との混合物]
化合物B7:プリアミン1075(クローダジャパン株式会社製、炭素数36のダイマージアミン。2つのアミノ基と、分岐及び環状構造を有する二価の炭化水素基とからなる。液状)
化合物B8:ドコサン二酸(炭素数22の直鎖二塩基酸。固体状)
化合物B9:オレイン酸(炭素数18の一価の直鎖脂肪酸。液状)
化合物B10:マロン酸(炭素数3の二価の直鎖脂肪酸。固体状)
【0076】
<分散媒(C)>
分散媒(C)としては、下記の材料を使用した。括弧内に補足情報と沸点を記載した。ただし、分散媒C5及びC6は、本願の分散媒(C)に該当しない分散媒である。
分散媒C1:トリエチレングリコールモノブチルエーテル(グリコールエーテル系、沸点278℃)
分散媒C2:トリエチレングリコールモノメチルエーテル(グリコールエーテル系、沸点248℃)
分散媒C3:2-エチル-1,3ヘキサンジオール(ジオール系、沸点244℃)
分散媒C4:1-デカノール(沸点233℃)
分散媒C5:ジエチレングリコールモノメチルエーテル(グリコールエーテル系、沸点193℃)
分散媒C6:1-オクタノール(沸点194℃)
【0077】
<接合用ペーストの製造>
[実施例1]
金属粒子A1(90部)とトリエチレングリコールモノブチルエーテル(10部)と化合物B1(1部)とを自公転式攪拌機を用いて混合し、接合用ペーストを調製した。
【0078】
[実施例2~37]、[比較例1~9]
表1~表3に記載の組成に従い、材料の種類と配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして接合用ペーストを得た。
【0079】
<接合用ペーストの評価>
実施例1~36及び比較例1~9で得られた接合用ペーストを用いて、後述する方法で接合体1を作製した。また、実施例37(実施例20と同等)で得られた接合用ペーストを用いて、後述する方法で接合体2を作製した。得られた接合体1及び接合体2(以下、接合体と略記する)について、以下の評価を行った。結果を表1~表3に示した。表中、特に断りのない限り、数値は部を表し、空欄は配合していないことを表す。
【0080】
[接合体1の作製]
下記の被接合部1の一方の面に、実施例1~36及び比較例1~9で得られた接合用ペーストをそれぞれ、下記の印刷条件にて1回印刷した後、下記被接合部2(チップ)のメッキ処理面を接合ペースト面に向けて載置し、下記焼結条件にて加熱し、接合体をそれぞれ得た。
〔被接合部1〕
・銅基材(無酸素銅(C1020)):20mm×20mm×1mm
〔被接合部2〕
・金メッキ処理SiCチップ:5mm×5mm×0.3mm
〔印刷条件(メタルマスク印刷)〕
・メタルマスク:開口部4mm角、板厚50μm(セリアコーポレーション社製)
・メタルスキージ:40mm×250mm、厚み1mm(セリアコーポレーション社製)〔焼結条件〕
焼成炉に焼結前の接合体を入れ、窒素雰囲気下、25℃から300℃まで2℃/分の条件にて昇温し、300℃に達した後、300℃で2時間保持した。
【0081】
[接合体2の作製]
接合体1と同様にして、被接合部1の一方の面に、実施例37で得られた接合用ペーストを1回印刷した後、熱風オーブンに入れ、170℃10分間乾燥した。次いで、被接合部2(チップ)のメッキ処理面を、乾燥後の接合ペースト面に向けて載置し、被接合部2の上から20MPaの圧力で加圧を行いながら、室温から300℃まで20℃/分の条件にて昇温し、300℃に達した後、同温度で10分間維持し、接合体を得た。
【0082】
〔評価基準(印刷適性)〕
○:被接合部1に印刷することができた。
×:被接合部1に印刷することができなかった。
【0083】
<接合強度(初期、冷熱サイクル試験後)>
得られた接合体について、下記測定装置、試験条件にて接合強度(ダイシェア強度)を測定した。なお、表3中の※(米印)は、印刷することができなかったため、本評価を実施していないことを示す。
【0084】
測定装置:万能型ボンドテスタ(デイジ・ジャパン株式会社製、4000シリーズ)
〔試験条件〕
・測定高さ:100μm
・測定スピード:500μm/s
具体的には、接合体を被接合部1の部位で固定し、被接合部1と接合層との界面を起点として被接合部2に向かって高さ100μmの位置を、500μm/sの速度で押し、接合が破壊される接合強度を求めた。接合体を作製した直後の接合強度(初期の接合強度)と下記サイクル試験後の接合強度(500サイクル後の接合強度)について測定し、下記評価基準に基づいて評価した。接着強度の数値が大きいものほど良好であり、15MPa以上が実用範囲内である。評価基準の数値の大きいものほど良好であり、評価基準の数値が2以下のものは不良であることを示す。
【0085】
〔評価基準〕
5:30MPa以上
4:20MPa以上30MPa未満
3:15MPa以上20MPa未満
2:5MPa以上15MPa未満
1:5MPa未満
【0086】
<冷熱サイクル試験>
接合体を-40℃で30分間保持した後、25℃で15分間保持し、150℃で30分間保持する工程を1サイクルとし、500サイクルの保管を実施した。その後、前述の接合強度評価法と同一の手順及び基準にて評価をした。
【0087】
比較例の接合用ペーストを用いた場合では、接合強度が著しく低く、ダイシェア試験後に破壊されたサンプルを観察すると、銅基材と接合層との界面で破壊されていた。一方、実施例の接合用ペーストを用いた場合では、接合強度が非常に高かった。実施例の接合用ペーストを用いると、印刷適性に優れ、さらに、メッキ処理を行っておらず、冷熱サイクルが悪化しやすい銅基材を被接合部として用いた場合であっても、接合強度が非常に高く、冷熱サイクル試験を実施した後も、接合強度の低下が抑止されていることが確認された。
【0088】
【0089】
【0090】