(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039203
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/291 20210101AFI20240314BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240314BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/209
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143575
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 聖
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA00
5H040AS07
5H040AT02
5H040DD01
5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】電池抵抗上昇の抑制と金属析出の抑制とを両立し得る電池モジュールを提供する。
【解決手段】電池モジュールは、第1の方向に並ぶように配列された複数の電池セルと、複数の電池セルの間に設けられたセパレータ部材とを備える。電池セルは、電極体と、電極体を収納する筐体と、第1の方向に直交する第2の方向に並ぶように筐体上に設けられた2つの電極端子とを含む。セパレータ部材は、本体と、本体から第1の方向に沿って突出する凸部とを含む。凸部の本体からの突出高さは、0.05mm以上0.10mm以下であり、第1の方向および第2の方向に直交する第3の方向において、凸部の先端の寸法は、筐体の寸法の7.7パーセント以上30.8パーセント以下である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に並ぶように配列された複数の電池セルと、
前記複数の電池セルの間に設けられたセパレータ部材とを備え、
前記電池セルは、電極体と、前記電極体を収納する筐体と、前記第1の方向に直交する第2の方向に並ぶように前記筐体上に設けられた2つの電極端子とを含み、
前記セパレータ部材は、本体と、前記本体から前記第1の方向に沿って突出する凸部とを含み、
前記凸部の前記本体からの突出高さは、0.05mm以上0.10mm以下であり、
前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向において、前記凸部の先端の寸法は、前記筐体の寸法の7.7パーセント以上30.8パーセント以下である、電池モジュール。
【請求項2】
前記第3の方向において、前記凸部の先端の寸法は、前記筐体の寸法の7.7パーセント以上15.4パーセント以下である、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記凸部は、前記第3の方向における前記筐体の中心を含む領域に形成される、請求項1または請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記凸部は、前記第2の方向に延びるように帯状に形成される、請求項1または請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記電極体は前記第2の方向および前記第3の方向のいずれから見ても平坦な外面を有する平坦部を有し、
前記凸部は、前記第1の方向から見て、少なくとも前記平坦部と重なる位置に設けられる、請求項1または請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記凸部は、前記第2の方向において少なくとも前記平坦部の全体にわたって形成されている、請求項5に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記凸部は、前記本体側から先端に向かって前記第3の方向の寸法がテーパ状に減少する形状を有する、請求項1または請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項8】
前記第1の方向における前記本体の厚み寸法は、前記凸部の突出高さよりも大きい、請求項1または請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項9】
前記厚み寸法は0.25mm以上0.3mm以下である、請求項8に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-060755号公報(特許文献1)には、電極端子を上方に向けて電池セルを配置したときに、電池の側壁の下側の領域に掛かる面圧が、上側の領域に掛かる面圧よりも小さくなるように、スペーサ(セパレータ)に設けられると通部の高さを調整することにより、電池抵抗の上昇を抑制することが開示されている。
【0003】
特開2017-098107号公報(特許文献2)には、電極巻回体の上下両端部を押圧するセパレータのリブ(凸部)のばね定数を低く、電極巻回体の中央部を押圧するリブ(凸部)のばね定数を高く設定することにより、電極巻回体における金属析出を抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-060755号公報
【特許文献2】特開2017-098107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2においては、電池抵抗の上昇の抑制、および金属析出の抑制という別個の課題を個別に解決するための凸部の形状ないしばね定数の調整についての開示がなされている。しかし、これらの技術を単純に組み合わせても、2つの課題を同時に解決することはできない。
【0006】
本技術の目的は、電池容量ないし抵抗に関する性能向上と金属析出の抑制とを両立し得る電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術は、以下の電池モジュールを提供する。
【0008】
[1]第1の方向に並ぶように配列された複数の電池セルと、複数の電池セルの間に設けられたセパレータ部材とを備え、電池セルは、電極体と、電極体を収納する筐体と、第1の方向に直交する第2の方向に並ぶように筐体上に設けられた2つの電極端子とを含み、セパレータ部材は、本体と、本体から第1の方向に沿って突出する凸部とを含み、凸部の本体からの突出高さは、0.05mm以上0.10mm以下であり、第1の方向および第2の方向に直交する第3の方向において、凸部の先端の寸法は、筐体の寸法の7.7パーセント以上30.8パーセント以下である、電池モジュール。
【0009】
[2]第3の方向において、凸部の先端の寸法は、筐体の寸法の7.7パーセント以上15.4パーセント以下である、[1]に記載の電池モジュール。
【0010】
[3]凸部は、第3の方向における筐体の中心を含む領域に形成される、[1]または[2]に記載の電池モジュール。
【0011】
[4]凸部は、第2の方向に延びるように帯状に形成される、[1]から[3]のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【0012】
[5]電極体は第2の方向および第3の方向のいずれから見ても平坦な外面を有する平坦部を有し、凸部は、第1の方向から見て、少なくとも平坦部と重なる位置に設けられる、[1]から[4]のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【0013】
[6]凸部は、第2の方向において少なくとも平坦部の全体にわたって形成されている、[5]に記載の電池モジュール。
【0014】
[7]凸部は、本体側から先端に向かって第3の方向の寸法がテーパ状に減少する形状を有する、[1]から[6]のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【0015】
[8]第1の方向における本体の厚み寸法は、凸部の突出高さよりも大きい、[1]から[7]のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【0016】
[9]厚み寸法は0.25mm以上0.3mm以下である、[8]に記載の電池モジュール。
【発明の効果】
【0017】
本技術によれば、セパレータの本体から突出する凸部の突出高さおよび先端の寸法(幅)を所定の範囲内とすることにより、電極体において電解液をバランスよく保持するとともに、金属析出を効果的に抑制することができる。この結果、電池容量ないし抵抗に関する性能向上と金属析出の抑制とがを両立し得る電池モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】電池モジュールの基本的構成を示す図である。
【
図3】電池セルおよびセパレータをY軸方向から見た状態を示す図である。
【
図4】電池セルおよびセパレータをX軸方向から見た状態を示す図である。
【
図5】本実施の形態に係るセパレータを用いた拘束実験の様子をX軸方向から見た状態を示す図である。
【
図6】比較例に係るセパレータを用いた拘束実験の様子をX軸方向から見た状態を示す図である。
【
図7】拘束部材による拘束寸法の算出について説明するためのグラフである。
【
図10】性能評価を行うためのハイレートサイクルの条件を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0020】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0021】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0022】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0023】
本明細書において、「電池」は、典型的にはリチウムイオン電池であるが、本技術の思想は、ニッケル水素電池およびナトリウムイオン電池などの他の電池にも適用し得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。また、「電極板」は正極板および負極板を総称し得る。
【0024】
本明細書において、「電池セル」は、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、および電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)などに搭載可能である。ただし、「電池セル」の用途は、車載用に限定されるものではない。
【0025】
図1は、電池モジュール1の基本的構成を示す図である。
図1に示すように、電池モジュール1は、電池セル100と、エンドプレート200と、拘束部材300とを備える。
【0026】
複数の電池セル100は、Y軸方向(第1の方向)に並ぶように設けられる。これにより、電池セル100の積層体が形成される。電池セル100は、電極端子110を含む。複数の電池セル100の間には、図示しないセパレータが介装されている。2つのエンドプレート200に挟持された複数の電池セル100は、エンドプレート200によって押圧され、2つのエンドプレート200の間で拘束されている。
【0027】
エンドプレート200は、Y軸方向において電池モジュール1の両端に配置されている。エンドプレート200は、電池モジュール1を収納するケースなどの基台に固定される。拘束部材300は、2つのエンドプレート200を互いに接続する。
【0028】
複数の電池セル100およびエンドプレート200の積層体に対してY軸方向の圧縮力を作用させた状態で拘束部材300をエンドプレート200に固定し、その後に圧縮力を解放することにより、2つのエンドプレート200を接続する拘束部材300に引張力が働く。その反作用として、拘束部材300は、2つのエンドプレート200を互いに近づける方向に押圧する。
【0029】
図2は、電池セル100を示す斜視図である。
図2に示すように、電池セル100は、角型形状を有する。電池セル100は、電極端子110と、筐体120(外装缶)とを有する。すなわち、電池セル100は角型二次電池セルである。
【0030】
電極端子110は、筐体120上に形成されている。電極端子110は、Y軸方向(第1の方向)に直交するX軸方向(第2の方向)に沿って並ぶ正極端子111および負極端子112を有する。正極端子111および負極端子112は、X軸方向において、互いに離れて設けられている。
【0031】
筐体120は、直方体形状を有し、電池セル100の外観をなす。筐体120は、図示しない電極体および電解液を収容するケース本体120Aと、ケース本体120Aの開口を封止する封口板120Bとを含む。封口板120Bは、溶接によりケース本体120Aに接合される。
【0032】
筐体120は、上面121と、下面122と、第1側面123と、第2側面124と、2つの第3側面125とを有する。筐体120には、ガス排出弁126が設けられている。
【0033】
上面121は、Y軸方向およびX軸方向に直交するZ軸方向(第3の方向)に直交する平面である。上面121には、電極端子110が配置されている。下面122は、Z軸方向に沿って上面121に対向している。
【0034】
第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に直交する平面からなる。第1側面123および第2側面124の各側面は、筐体120が有する複数の側面のうちで最も大きい面積を有する。第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に見て、矩形形状を有する。第1側面123および第2側面124の各側面は、Y軸方向に見て、X軸方向が長手方向となり、Z軸方向が短手方向となる矩形形状を有する。
【0035】
複数の電池セル100は、Y軸方向に隣り合う電池セル100,100の間において、第1側面123どうし、第2側面124どうしが向かい合わせとなるように積層されている。これにより、複数の電池セル100が積層されるY軸方向において、正極端子111と負極端子112とが、交互に並んでいる。
【0036】
ガス排出弁126は、上面121に設けられている。ガス排出弁126は、電池セル100の温度が上昇し(熱暴走)、筐体120の内部で発生したガスにより筐体120の内圧が所定値以上となった場合に、そのガスを筐体120の外部に排出する。
【0037】
図3,
図4は、各々、電池セル100およびセパレータ400(セパレータ部材)をY軸方向、X軸方向から見た状態を示す図である。
【0038】
図3,
図4に示すように、セパレータ400は、本体410と、本体からY軸方向に沿って突出する凸部420部とを含む。
【0039】
凸部420の本体からの突出高さ(T)は、0.05mm以上0.10mm以下程度である。凸部420の先端の幅(W)は、ケース本体120Aの高さ(H)の7.7パーセント以上30.8パーセント以下程度(より好ましくは、7.7パーセント以上15.4パーセント以下程度)である。
【0040】
図3,
図4の例では、凸部420は、Z軸方向におけるケース本体120Aの中心付近に形成されているが、凸部420の設置高さは、
図3,
図4に示す位置に限定されない。
【0041】
図3,
図4の例では、凸部420は、X軸方向に延びるように帯状に形成されているが、凸部の形状は、
図3,
図4に示す位置に限定されない。
【0042】
帯状の凸部420のX軸方向の長さ(L)は適宜変更可能である。
図3,
図4の例では、凸部420は、Y軸方向から見て、後述の電極体130の平坦部130Aと重なる位置に設けられている。また、凸部420は、X軸方向において平坦部130Aの略全体にわたって形成されていることが好ましい。
【0043】
凸部420の断面形状は、適宜変更可能である。
図3,
図4の例では、凸部420の根元(本体410側)から先端に向かって凸部420の幅(W)が一定であるが、たとえば、本体410側から先端に向かって凸部420の幅(W)がテーパ状に減少する形状であってもよい。
【0044】
凸部420は本体410と一体に形成されてもよいし、別部材により形成されてもよい。たとえば、樹脂板からなる本体410に樹脂テープを貼り付けることにより凸部420を形成してもよい。このとき、本体410を構成する樹脂板の厚みは凸部420の突出高さより大きくてもよいし、小さくてもよいし、略同じであってもよい。典型的な一例において、本体410の厚みは凸部420の突出高さ(T)よりも大きい。
【0045】
図5,
図6は、各々、本実施の形態に係るセパレータ400、セパレータ400Aを用いた拘束実験の様子をX軸方向から見た状態を示す図である。
【0046】
図5の例では、一対の拘束板500に本体410と凸部420とを含むセパレータ400を各々設置し、凸部420を電池セル100のケース本体120Aに当接させ、ケース本体120Aを押圧する。
【0047】
本体410としては、たとえば0.25mm以上0.3mm以下程度の厚み寸法を有する樹脂板を使用可能である。凸部420としては、たとえばPP基材を含む両面テープを使用可能である。
【0048】
図6の例では、一対の拘束板500に凸部のないセパレータ400Aを各々設置し、接着層400Bを介して電池セル100のケース本体120Aを押圧する。
【0049】
図7は、電池セル100の拘束寸法の算出について説明するためのグラフである。
図5,
図6による拘束実験により、複数の異なる拘束寸法で拘束したときの反力を測定し(
図7中の「実測値」)、近似直線に基づいて、所定の反力F1(たとえば300N)となる狙い拘束寸法D1を算出する。この狙い拘束寸法D1に基づいて、後述のハイレートサイクル試験およびリチウム析出評価試験が行われる。
【0050】
図8は、電極体130を示す断面図である。
図8に示すように、電極体130は、正極板131Aと、負極板131Bと、セパレータ133(133A,1333B)とを重ねたものをX軸まわりに巻回して形成される。電極体130の内部には、電界液が浸透している。電極体130は、X軸方向から見て平坦な外面を有する平坦部130Aと、R形状の外面を有する湾曲部130Bとを有する。平坦部130Aは、Z軸方向の中央部に位置し、湾曲部130Bは、Z軸方向の両端部に位置している。
【0051】
図9は、電池セル100の分解斜視図である。
図9に示すように、電池セル100の筐体120は、角形のケース本体120Aと、封口板120Bとを有する。
【0052】
ケース本体120Aの内部には、電極体130とともに図示しない電解液が収容される。電極体130は、X軸方向に並ぶように正極131および負極132を有する。電極体130のX軸方向の両端部に位置する正極131および負極132においては、電極板がY軸方向の中心に集まるように集箔されている。正極131および負極132の間に位置する平坦部130Aは、Z軸方向から見ても平坦な外面を有している。
【0053】
封口板120Bは、ケース本体120Aの開口部を封口する。封口板120Bの上面には、電極端子110(正極端子111および負極端子112)がX軸方向に間隔をあけて設けられている。封口板120Bの下面には、集電体140が設けられる。集電体140は、正極側の集電体141および負極側の集電体142を含む。正極側の集電体141は、正極端子111に電気的に接続される。負極側の集電体142は、負極端子112に電気的に接続される。
【0054】
さらに、正極側の集電体141は、電極体130の正極131に接続され、負極側の集電体142は、電極体130の負極132に接続される。これにより、電極体130の正極131および負極132と、正極端子111および負極端子112とが電気的に接続される。
【0055】
図10は、性能評価を行うためのハイレートサイクルを示すチャートである。このハイレートサイクルの条件を表1に示す。
【0056】
【0057】
図10に示されるハイレートサイクルを表1に示す条件の下で実施し、電池セル100の容量維持率と抵抗上昇率を測定した。ハイレートサイクル試験については、凸部の寸法を変えながら、各寸法ごとにn=2ずつ試験を実施した。電池セル100の容量および抵抗については、以下の条件で取得した。
【0058】
[容量(CCCV放電容量充放電条件)
25℃恒温槽内で測定(電池ケース底面温度は25±2℃以内)
(1)CC-CV充電(4A/4.1V)×2h
(2)休止×30min
(3)CC-CV放電(2A/3V)×3h
【0059】
[出力抵抗]
25℃恒温槽内で測定(電池ケース底面温度は25±2℃以内)
3.706Vに調整後、130Aで10sec放電した時の抵抗を算出
【0060】
[取得のタイミング]
(1)初期
(2)9000サイクル直後
(3)サイクル後5日放置後
【0061】
また、リチウム析出評価試験については、ハイレートサイクル試験と同様に凸部の寸法を変えながら、各寸法ごとにn=1ずつ試験を実施した。
【0062】
上述のハイレートサイクル試験およびリチウム析出評価試験により取得された性能評価結果を表2に示す。ここで、電池セル100のケース本体120Aの高さ(H)は65.0mmである。したがって、W=5mmのときW/H≒0.077であり、W=10mmのときW/H≒0.154であり、W=20mmのときW/H≒0.307である。
【0063】
【0064】
表2に示す結果によれば、実施例1ないし実施例3において、析出限界電流を維持しながら、高い容量維持率ないし低い抵抗上昇率が実現されている。
【0065】
特に、実施例2(W=5mm,T=0.10mm)においては、「凸部なし」の比較例2と同等の析出限界電流(120A)を維持しながら、最も高い容量維持率ないし低い抵抗上昇率を実現しており、電解液を巻回体である電極体130内に留める空間を適度に設けることにより、充放電サイクル中における電解液の電極体130からの出入りを抑制し、電極体130における塩濃度分布が均一化され、充放電サイクル後の抵抗上昇率が特に低い値に抑制されていると理解される。
【0066】
このように、本実施の形態に係るセパレータ400によれば、本体410から突出する凸部420の突出高さ(T)および先端の幅(W)を所定の範囲(0.05mm≦T≦0.10mm,0.077H≦W≦0.308H)とすることにより、電極体130において電解液をバランスよく保持するとともに、リチウムなどの金属析出を効果的に抑制することができる。この結果、電池容量ないし抵抗に関するハイレート性能向上と金属析出の抑制とを両立した電池モジュール1を提供することが可能となる。
【0067】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1 電池モジュール、100 電池セル、110 電極端子、111 正極端子、112 負極端子、120 筐体、120A ケース本体、120B 封口板、121 上面、122 下面、123 第1側面、124 第2側面、125 第3側面、126 ガス排出弁、130 電極体、130A 平坦部、130B 湾曲部、131 正極、131A 正極板、132 負極、132A 負極板、133,133A,133B セパレータ、140,141,142 集電体、200 エンドプレート、300 拘束部材、400,400A セパレータ、400B 接着層、410 本体、420 凸部、500 拘束板。