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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039204
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】鋳物砂用耐火骨材
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/00 20060101AFI20240314BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240314BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240314BHJP
【FI】
B22C1/00 K
B22C1/00 B
B33Y70/00
B33Y80/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143576
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】591149344
【氏名又は名称】伊藤忠セラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】牧野 浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 駿一
(72)【発明者】
【氏名】堀 勝太
(72)【発明者】
【氏名】増田 圭汰
【テーマコード(参考)】
4E092
【Fターム(参考)】
4E092AA01
4E092AA04
4E092BA04
4E092CA01
4E092CA03
4E092CA10
(57)【要約】
【課題】焼結法により人工的に製造される球状の耐火性焼結粒子からなる鋳物砂用耐火骨材において、その鋳物砂における流動性を向上せしめると共に、優れた鋳型強度を実現することの出来る鋳物砂用耐火骨材を提供する。
【解決手段】焼結法により人工的に製造される球状の耐火性焼結粒子からなる鋳物砂用耐火骨材において、真円度が0.70以上であり、且つ0.01~1.00mmの平均粒子径を有すると共に、水銀圧入式ポロシメータにより求められる、細孔直径が2~10μmの細孔容積が、0.20~0.50mL/gの範囲内にあり、更に混在する微粉量が、比濁法にて測定される濁度において、3000NTU以下となるように構成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結法により人工的に製造される球状の耐火性焼結粒子からなる鋳物砂用耐火骨材であって、
真円度が0.70以上であり、且つ0.01~1.00mmの平均粒子径を有すると共に、水銀圧入式ポロシメータにより求められる、細孔直径が2~10μmの細孔容積が、0.20~0.50mL/gの範囲内にあり、更に混在する微粉量が、比濁法にて測定される濁度において、3000NTU以下となるように構成されていることを特徴とする鋳物砂用耐火骨材。
【請求項2】
前記耐火性焼結粒子が、40~90質量%のAl23と60~10質量%のSiO2 を含む化学組成を有していることを特徴とする請求項1に記載の鋳物砂用耐火骨材。
【請求項3】
前記耐火性焼結粒子が、60質量%以上のAl23と40質量%以下のSiO2 とを含み、更にFe23及びTiO2 の合計含有量が3質量%以下となる割合の化学組成を有していることを特徴とする請求項1に記載の鋳物砂用耐火骨材。
【請求項4】
前記耐火性焼結粒子が、ムライト質又はムライト・コランダム質の焼結粒子であることを特徴とする請求項1に記載の鋳物砂用耐火骨材。
【請求項5】
前記真円度が、0.75以上であることを特徴とする請求項1に記載の鋳物砂用耐火骨材。
【請求項6】
前記細孔直径が2~10μmの細孔容積が、0.25~0.45mL/gの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の鋳物砂用耐火骨材。
【請求項7】
前記混在する微粉量が、2000NTU以下の濁度となるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の鋳物砂用耐火骨材。
【請求項8】
自硬性鋳型を造型するための鋳物砂用の骨材として用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の鋳物砂用耐火骨材。
【請求項9】
三次元積層造型法における鋳物砂用の骨材として用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の鋳物砂用耐火骨材。
【請求項10】
請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の鋳物砂用耐火骨材を用いて造型して得られた鋳造用鋳型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳物砂用耐火骨材に係り、特に、焼結法により人工的に製造される球状の耐火性焼結粒子からなる耐火骨材であって、それを用いて得られる鋳物砂の流動性を改善すると共に、そのような鋳物砂から造型される鋳型の強度を、有利に向上せしめ得る技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、鋳鉄、鋳鋼、アルミニウムや銅またはそれらの合金等の金属溶湯の鋳造に用いられる鋳型の一つとして、耐火性の粒子(骨材)に所定のバインダや硬化剤(触媒)等を混合乃至は混練して得られる鋳物砂を用いて、目的とする形状に造型されてなるものが知られており、そこでは、耐火性骨材を結合するための粘結剤(バインダ)として、フェノール樹脂、フラン樹脂等の樹脂を主体とする有機バインダや、水ガラス、粘土等を主体とする無機バインダが、用いられている。また、そのような鋳物砂を用いた造型法としては、生型法、ガス型法、シェルモールド法、三次元積層造型法等の各種の方法が知られており、その何れかの造型法によって、目的とする鋳物形状の空隙部(鋳造キャビティ)を有する鋳造用鋳型、特に自硬性鋳型が、造型されている。
【0003】
ところで、かかる鋳型の造型に用いられる鋳物砂の主体となる耐火性の粒子(骨材)としては、珪砂、ジルコンサンド、オリビンサンド、クロマイトサンド等の天然砂が広く用いられて来ているが、天然に産するものは、物理化学的特性等の品質にバラツキが生じることに加えて、近年においては資源の減少に基づくところの枯渇化の問題をも内包しているところから、人工的に製造した耐火性粒子が提案され、実用化されている。例えば、特公平3-47943号公報や特公平4-40095号公報等においては、焼結法として、アルミナとシリカが所定の化学組成となるように配合されてなる原料組成物から、スプレードライヤーによる方法等によって、球状に造粒した後、その得られた造粒物をロータリーキルン等にて焼結することによって、球状の骨材を製造する方法が、明らかにされている。
【0004】
しかしながら、そのような焼結法によって製造される耐火性の焼結粒子からなる人工砂にあっては、その真球度は良好であるものの、焼成する際に、粒子表面に凹凸が発生したり、粒子表面がポーラスとなるために、そのような人工砂に、所定量のバインダ(樹脂)を添加してなる鋳物砂から造型された鋳型においては、その強度が充分でない等の問題があり、また、そのような表面状態の問題の回避のために、バインダの添加量を多くしたりすると、流動砂、換言すれば流動性の良好な鋳物砂とならない問題がある。特に、鋳型の造型に際しては、砂(骨材)のみの流動特性をもって、目的とする鋳型が実現され得るとは限らず、実際の鋳型への適用を考慮した場合において、砂(骨材)自体の流動特性だけでなく、樹脂や硬化剤等と混練した場合における流動特性が、重要となるのである。
【0005】
このように、人工砂である焼結砂には、鋳物砂とした場合における流動性の向上や造型される鋳型の強度の向上において解消されるべき問題が、内在しているのである。特に、手込めによる方法や射出成形、三次元砂型積層造型法等により、複雑形状の鋳型を作製する際には、バインダ等との混練により得られる鋳物砂が良好な流動性を維持しつつ、それから作製される鋳型が高強度となることが要請されている。
【0006】
なお、特開2006-7319号公報においては、火炎溶融法にて製造される砂粒子について、その非晶化度や球形度を規定して、流動性に優れ、また高強度で、低熱膨張性の鋳造用鋳型を製造することが出来ることが明らかにされているが、砂表面の凹凸が少ない程、砂の流動性が良くなるとは考えにくく、逆に、砂表面の凹凸が少ないと、流動性に影響するバインダ(樹脂)層が厚く形成されるようになるために、鋳物砂の流動性は悪くなるのである。
【0007】
また、特開2003-311370号公報においては、砂等の骨材に、フラン樹脂、硬化剤を配合し、混練した後、造型して、鋳型を製造するに際して使用する骨材であって、予め微粉除去処理したり、或いは予め塩基性イオン除去処理してなるフランプロセス用骨材が提案され、そして、この骨材を用いることによって、高強度の鋳型が造型され得ることが明らかにされているのであるが、そこには、骨材表面に付着している微粉が、バインダ等を混合してなる鋳物砂の流動性に、どのような影響をもたらすかについて、何等明らかにされておらず、更には、骨材の表面をどのように調整すべきかについても、何等明らかにしてはいない。
【0008】
さらに、溶融法若しくは火炎溶融法で作製された、真球度が0.8以上の人工砂を用いた自硬性流動鋳型について、開示する特開2009-119469号公報において、その段落[0006]には、焼結法にて得られる人工砂は、良好な真球度を有しているものの、焼成する際に、砂表面に凹凸が発生したり、砂表面がポーラスになったりするため、樹脂(バインダ)添加量を増やさなければ、強度が出ない等の問題があり、また、この表面の問題のために、樹脂添加量を多くすれば、流動砂とならない問題が生じるとの指摘が、為されている。しかしながら、砂表面の凹凸量の増加のために、樹脂(バインダ)の添加量が増大して、流動性が悪くなるとは考え難く、同程度の鋳型強度になるような樹脂(バインダ)添加量であった場合は、砂表面の凹凸量に関係なく、流動性は同じになると考えられるのである。けだし、砂表面に存在するバインダ等の厚さが、流動性や鋳型強度に寄与していると推測され、この厚さが同程度であれば、流動性も、鋳型強度も同じになると推測されるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平3-47943号公報
【特許文献2】特公平4-40095号公報
【特許文献3】特開2006-7319号公報
【特許文献4】特開2003-311370号公報
【特許文献5】特開2009-119469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、優れた特性を発揮し得る球状の焼結粒子からなる鋳物砂用耐火骨材を提供することにあり、また、他の課題とするところは、焼結法により人工的に製造される球状の耐火性焼結粒子からなる鋳物砂用耐火骨材において、その鋳物砂における流動性を向上せしめると共に、優れた鋳型強度を実現することの出来る鋳物砂用耐火骨材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載から把握され得る発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0012】
そして、上述せる課題を解決するための本発明の第1の態様は、焼結法により人工的に製造される球状の耐火性焼結粒子からなる鋳物砂用耐火骨材であって、真円度が0.70以上であり、且つ0.01~1.00mmの平均粒子径を有すると共に、水銀圧入式ポロシメータにより求められる、細孔直径が2~10μmの細孔容積が、0.20~0.50mL/gの範囲内にあり、更に混在する微粉量が、比濁法にて測定される濁度において、3000NTU以下となるように構成されていることを特徴とする鋳物砂用耐火骨材を、その要旨とするものである。
【0013】
また、本発明に従う鋳物砂用耐火骨材の第2の態様は、前記耐火性焼結粒子が、40~90質量%のAl23と60~10質量%のSiO2 を含む化学組成を有していることを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の態様は、前記耐火性焼結粒子が、60質量%以上のAl23と40質量%以下のSiO2 とを含み、更にFe23及びTiO2 の合計含有量が3質量%以下となる割合の化学組成を有していることを特徴としている。
【0015】
さらに、本発明に従う鋳物砂用耐火骨材の第4の態様は、前記耐火性焼結粒子が、ムライト質又はムライト・コランダム質の焼結粒子であることを特徴としている。
【0016】
加えて、本発明の第5の態様は、前記真円度が、0.75以上であることを特徴とする鋳物砂用耐火骨材にある。
【0017】
更にまた、本発明の第6の態様は、前記細孔直径が2~10μmの細孔容積が、0.25~0.45mL/gの範囲内であることを特徴としている。
【0018】
そして、本発明に従う鋳物砂用耐火骨材の第7の態様は、前記混在する微粉量が、2000NTU以下の濁度となるように構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明に従う鋳物砂用耐火骨材の第8の態様は、自硬性鋳型を造型するための鋳物砂用の骨材として用いられることを特徴としている。
【0020】
さらに、本発明に従う鋳物砂用耐火骨材の第9の態様は、三次元積層造型法における鋳物砂用の骨材として用いられることを特徴とするものである。
【0021】
加えて、本発明の第10の態様は、上述の如き鋳物砂用耐火骨材を用いて造型して得られた鋳造用鋳型を、その対象とするものである。
【発明の効果】
【0022】
このような本発明に従う鋳物砂用耐火骨材を用いることにより、それにバインダや硬化剤等を混合乃至は混練して得られる鋳物砂の流動性が、効果的に高められ得、更に、そのような鋳物砂を用いて造型される鋳型の強度も、より一層有利に向上せしめられ得ることとなるのである。
【0023】
そして、かかる本発明に従う鋳物砂用耐火骨材は、自硬性鋳型を造型するための鋳物砂用の骨材として、また三次元積層造型法における鋳物砂用の骨材として、特に有利に用いられ得るのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1において得られた、各種人工砂の真円度と流動性又は鋳型強度との関係を示すグラフである。
図2】実施例1において得られた、各種人工砂における直径2~10μmの細孔容積と流動性又は鋳型強度との関係を示すグラフである。
図3】実施例1において得られた、各種人工砂における濁度(NTU)と流動性又は鋳型強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ところで、本発明に従う鋳物砂用耐火骨材は、焼結法により人工的に製造される球状の耐火性焼結粒子からなるものであって、球状の耐火性のものであれば、公知の如何なる人工の焼結粒子をも、人工砂として、その対象とすることが出来る。具体的には、スプレードライ手法によって造粒された後に、ロータリーキルンで焼成して得られる焼結砂や、転動造粒法により造粒された後、ロータリーキルンで焼成して得られる焼結砂等があり、また材質的には、焼結ムライトや焼結アルミナ等の材質のものを用いることが可能である。なお、そのような焼結法によって得られる球状の耐火性粒子は、粒子表面に微細な凹凸が存在しており、そこに、バインダ成分等が入り込むようになるところから、鋳物砂の流動性の向上や鋳型強度の向上を図るために、本発明にあっては、その表面性状の調整が一つの手段として採用されているのである。
【0026】
また、そのような本発明にて対象とする球状の耐火性焼結粒子(骨材)は、有利には、40質量%以上のAl23(アルミナ)と60質量%以下のSiO2 (シリカ)とからなる化学組成を有していることが望ましく、中でも、40~90質量%のAl23と60~10質量%のSiO2 を含む化学組成を有する構成が、有利に採用されることとなる。ここで、かかるAl23の含有量が少なくなり過ぎると、換言すれば、SiO2 の含有量が過大となると、焼結粒子の熱膨張が大きくなって、本発明に従う耐火性焼結粒子として、有利に用いられ難くなる。特に、本発明にあっては、かかる耐火性焼結粒子として、60質量%以上のAl23と40質量%以下のSiO2 とを含み、更にFe23及びTiO2 の合計含有量が3質量%以下となる割合の化学組成を有している構成のものが、有利に採用されることとなる。このように、不純物となるFe23とTiO2 の含有量を規制することにより、耐熱性の高い焼結粒子を得ることが出来るのである。また、本発明にあっては、上記のような化学組成において、ムライト質又はムライト・コランダム質の材質からなる耐火性焼結粒子(骨材)が、好適に用いられるのである。なお、ここで、ムライト・コランダム質とは、粒子中にムライトの結晶構造とコランダムの結晶構造とが共存乃至は分散した状態のことを意味するものとして、用いられている。
【0027】
そして、本発明にあっては、かかる球状の耐火性焼結粒子として、実質的に球状と認識され得る球体形状を呈するものであって、一般に、その真円度としては、0.70以上、好ましくは0.75以上、より好ましくは0.80以上の真円度を有する耐火性焼結粒子が、有利に用いられることとなる。このような真円度を有する球状の耐火性焼結粒子を用いることにより、本発明の特徴が、より一層有利に発揮され得るのである。
【0028】
ここで、耐火性焼結粒子の真円度は、公知の手法によって測定することが可能であり、例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製の粒子形状測定装置:PartAn SIによって、測定することが出来る。かかる装置は、サンプルセル、ストロボLED及び高感度CCDカメラから構成されており、その測定原理は、水をポンプにより循環させる一方、試料(耐火性焼結粒子)を投入することで、ストロボLED光源とCCDカメラとの間に配置されたサンプルセルを、試料粒子の混在する水が通過し、その際に得られる投影像を画像解析することにより、粒子毎の投影面積と最大フェレー径を求めることからなるものである。そして、その得られた最大フェレー径と投影面積の値から、下式:
真円度=[4×投影面積(mm2)]/[π×{最大フェレー径(mm)}2
により、粒子毎の真円度が算出される。具体的には、試料粒子を5000個以上投入し、粒子毎の真円度を算出した後、それぞれ得られた真円度の合計値を測定粒子個数で平均することにより、真円度(平均値)が、それぞれ求められることとなる。
【0029】
また、かかる本発明に従う耐火性焼結粒子(耐火骨材)は、0.01~1.00mmの平均粒子径を有するものであって、好ましくは0.05~0.50mm程度、より好ましくは0.07~0.40mm程度となる平均粒子径を有するものである。この耐火性焼結粒子の平均粒子径が小さくなり過ぎると、その取り扱いが困難となり、鋳型の造型に困難を来すようになる等の問題があり、また粒子径が大きくなり過ぎると、本発明の特徴を充分に発揮し難くなることに加えて、鋳造製品の品質低下の問題をも惹起するようになる。ここで、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって求められた粒度分布における積算値50%での粒径(D50)を意味するものである。
【0030】
ところで、焼結法により人工的に製造される耐火性の焼結粒子において、その粒子表面には、細孔径が0.1nmから、1000μmに至る、ミクロ孔、メソ孔、マクロ孔と称される多数の小さな穴が開いており、それによって、凹凸の表面形状が形成されているのである。そして、焼結粒子の物性的性質は、そのような細孔の性状に深く関わっているのである。このため、従来では、かかる粒子表面の凹凸の評価に、表面粗さ(Ra)を用いて、大きな凹凸から小さな凹凸、更には微細な凹凸までを評価したり、また気孔率(吸水率)を用いて、中程度の凹凸から小さな凹凸、そして微細な凹凸までを評価したりしているが、それらの評価方法では、焼結粒子の物性的性質、特に、バインダ等と混合(混練)して得られる鋳物砂の流動性や、そのような鋳物砂から造型される鋳型の強度を充分に把握し難いものであったのである。
【0031】
そこで、本発明者等は、焼結粒子表面の凹凸の評価を、水銀圧入法に基づくところの水銀ポロシメータ乃至は水銀圧入式ポロシメータによって求められる細孔容積について、任意の細孔径にて、凹凸評価を行った結果、鋳物砂の流動性に影響するバインダの吸収や、その被覆厚さに関して、大きな凹凸や微細な凹凸の存在は殆ど関係なく、主として中程度の凹凸や小さな凹凸に係わる、細孔直径が2~10μmの範囲内のものの影響が大きく、しかも、そのような細孔直径が2~10μmのものについて、上述の如き水銀圧入法にて測定された細孔容積が0.20~0.50mL/gの範囲内である必要があることが、明らかとなったのである。
【0032】
ここで、水銀圧入法(水銀圧入式ポロシメータ)は、水銀に圧力を加えて、粒子表面の細孔若しくは隙間の中に圧入し、その時に加えた圧力から、細孔の直径を計算するものであって、そこで、水銀圧入量は、細孔の体積であることから、圧力を変化させることで、各細孔直径における細孔体積が算出され得ることから、細孔直径が2~10μmにおける細孔体積を積算したものを、細孔直径が2~10μmの細孔容積とするものである。なお、この細孔直径:2~10μmの細孔容積が、0.20mL/gよりも低く(小さく)なったり、0.50mL/gよりも高く(大きく)なったりすると、後で検討せるように、鋳物砂としたときの流動性や造型される鋳型の強度に悪影響をもたらすこととなる。特に、本発明にあっては、かかる細孔直径:2~10μmのものの細孔容積が0.25~0.45mL/gの範囲内の焼結粒子が、有利に用いられることとなる。
【0033】
また、鋳物砂用耐火骨材を構成する焼結法により人工的に製造される球状の耐火性焼結粒子には、必然的に微粉が混在しており、鋳物砂を得るべく、バインダ等が混合(混練)せしめられると、それが微粉に付着して、得られる鋳型強度に悪影響をもたらすこととなるところから、本発明にあっては、耐火性焼結粒子(耐火骨材)に混在する微粉量が、公知の比濁法にて測定される濁度において、3000NTU以下、好ましくは2000NTU以下、より好ましくは1000NTU以下となるように、調整されることとなる。この濁度が3000NTUを越えるような微粉量が混在する耐火性焼結粒子を用いると、高い鋳型強度を実現すること等が困難となる問題を生じることとなる。
【0034】
なお、ここで、比濁法にて測定される濁度とは、試料(耐火性焼結粒子)を水に均一に混合して、静置することにより、その上澄み液を採取して、散乱光強度と透過光強度とを比較演算することにより、NTU(比濁計濁度単位)値として算出されたものであって、例えば、米国:HACH社製ポータブル濁度計2100Q(東亜ディーケーケー株式会社販売)を用いて、測定することが可能である。また、その求められた濁度は、ホルマジン標準液を使用して校正するすることにより、NTU=FTU[℃(ホルマジン)]とすることも可能である。
【0035】
そして、上述の如き特性を有する、本発明に従う球状の耐火性焼結粒子(鋳物砂用耐火骨材)を製造するに際しては、Al23原料とSiO2 原料とを、先の化学組成を与えるように配合せしめてなる原料組成物を用いて、従来から公知の焼結法に従って、目的とする真円度及び平均粒子径の焼結粒子を人工的に製造する手法が採用されることとなるのであるが、その際、本発明に従う細孔直径が2~10μmの細孔容積を、所定の範囲内となるようにするには、粒子表面の凹凸を制御する必要がある。
【0036】
因みに、焼結粒子における表面凹凸は結晶化に由来するものであって、例えば、ムライト(3Al23・2SiO2 )を主成分とする耐火粒子は、粒子表面に針状の結晶が生成し、これがランダムに配向するために、凸部が出来るところから、その針状結晶を成長させないように、製造条件を選定することが、凸部の抑制につながることとなるのである。従って、上記したムライト系の耐火焼結粒子を製造する場合には、例えば、原料組成物の球状造粒物を、ロータリーキルンにて焼成する際に、その焼成温度を低くして、ムライト結晶の析出を抑制乃至は阻止する手法が、有利に採用される他、焼成工程又は整粒工程の後に、表面研磨(機械研磨)を実施したり、凹部を埋めるべく、表面コーティングを水ガラス等の無機物を用いて実施したりすることにより、目的とする細孔直径を与える細孔の細孔容積が、調整されることとなる。
【0037】
また、かかる鋳物砂用耐火骨材(耐火性焼結粒子)に混在する微粉量にあっても、造粒物の焼成後に実施される整粒工程において、集塵操作を実施し、その集塵力を変化させることによって、焼結粒子中に混在する微粉の除去量を制御して、本発明にて規定する濁度を満足する焼結粒子を調製することが可能である。
【0038】
かくして、本発明に従う鋳物砂用耐火骨材が、新砂の形態において、有利に形成されることとなるのであるが、本発明にて規定される、真円度、平均粒子径、細孔直径が2~10μmの細孔容積、及び濁度を満足する限りにおいて、鋳型の造型工程や鋳造工程等から回収される回収砂に対して、所定の再生処理を施して得られる再生砂をも、その対象とすることが可能であって、本発明の特徴を発揮し得ることが、理解されるべきである。
【0039】
そして、かくして得られた本発明に従う鋳物砂用耐火骨材は、従来と同様にして、無機バインダや有機バインダの如き公知の適当なバインダや硬化剤(触媒)等を用いて、混合乃至は混練され、鋳物砂として調製された後、通常の造型法、例えば生型法、ガス型法、シェルモールド法等に従って、目的とする鋳造用の鋳型、特に無機乃至は有機の自硬性鋳型が形成されることとなるのであって、そこにおいて、本発明の特徴が有利に発揮され得るのである。加えて、本発明の特徴は、三次元積層造型法における鋳物砂用耐火骨材としての使用においても、より一層有利に発揮され得ることとなる。
【実施例0040】
以下に、本発明に従う実施例を比較例と共に示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明は、以下の実施例の他にも、更には、上記した具体的記述以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加えられ得るものであることが、理解されるべきである。
【0041】
[実施例1]
先ず、鋳物砂用耐火骨材として、下記表1に示される化学組成と平均粒子径を有する、天然砂、溶融砂及び焼結砂A~Hを、それぞれ準備した。そこにおいて、天然砂としては、ウエドロン・シリカサンド(アメリカ産)を、株式会社瓢屋より入手し、また、溶融砂としては、GREEN BEADS(グリーン・ビーズ:キンセイマテック株式会社製)を入手した。更に、焼結砂A~Hについては、公知の焼結法に従って、下記表1に示される化学組成を与える原料組成物を用いて、スプレードライヤーにより球状の造粒物を形成し、次いでロータリーキルンにて焼結した後、整粒することによって、それぞれの焼結砂を得た。なお、それら焼結砂A~Hの製造に際しては、焼成温度を表1の如く設定すると共に、整粒工程では集塵の有無を選択し、更に、その集塵力を各焼結砂毎に変化させて、各焼結砂における微粉の除去量に差を付けた。
【0042】
【表1】
【0043】
次いで、それら各種の耐火骨材について、それぞれ、以下の手法に従って、真円度、細孔容積、鋳型強度及び流動性を測定した。そして、それら得られた真円度、細孔容積、鋳型強度及び流動性の結果を、下記表2に示す。
【0044】
-真円度の測定-
マイクロトラック・ベル社製の粒子形状測定装置:PartAn SIを用いて、各耐火骨材(粒子)について、粒子毎の投影面積と最大フェレー径を求め、そして、その得られた最大フェレー径と投影面積の値から、本文中の真円度の計算式に基づいて、粒子毎の真円度を算出する。そして、5000個以上の粒子毎の真円度を算出した後、それら得られた真円度の合計値を、測定粒子個数で平均することにより、真円度(平均値)をそれぞれ求めて、それを、各耐火骨材の真円度とした。
【0045】
-細孔容積の測定-
測定装置:オートポア IV9520(株式会社島津製作所製)
測定圧力範囲:大気圧~50,000psia(345MPa)
(低圧ポート:~30psia、高圧ポート:30~50,000psia)
試料重量:約1.5g
試料の約1.5gを所定の容器に充填した後、容器内へ水銀を圧入する。大気圧から徐々に水銀の圧力を増大させ、その増大させた時の圧力と水銀圧入量を測定する。そして、その水銀の圧力から、以下の式を用いて、試料粒子の気孔の直径を計算する。
d = -4σ(cosθ)/P
[但し、気孔の形状を、直径:d(m)の円筒状と仮定して、
水銀の表面張力をσ(N/m)、水銀と試料粒子との接触角をθ(°)、
水銀にかかる圧力をP(Pa)とする]
また、水銀の圧入量は、気孔の体積であることから、圧力を変化させることで、各気孔直径における気孔体積が算出される。そして、気孔直径:2~10μmにおける気孔体積を積算したものを、直径2~10μmの細孔容積とする一方、気孔直径10μm超における気孔体積を積算したものを、直径:10μm超の細孔容積とする。
【0046】
-鋳型強度の測定-
先ず、耐火骨材の100質量部に対して、コールドボックス樹脂であるフェノール・ホルムアルデヒド樹脂からなる第1成分(ASK CHEMICALS社製、ISOCURE Part I 330T)及びポリイソシアネートである第2成分(ASK CHEMICALS社製、ISOCURE Part II 630T)を、それぞれ、0.6質量部の割合において配合して、混練して得られる混練砂(鋳物砂)を用い、それを、30mm×10mm×85mmの金型に、エアーブローにて充填せしめた後、第3級アミン触媒であるトリエチルアミンを金型内に吹き込むことにより、充填された鋳物砂を硬化させて、目的とする鋳型(試験片)を作製する。
【0047】
次いで、その作製した鋳型(試験片)を用いて、それを、温度:25℃、湿度:55%RHの環境下で、24時間保持した後、オートグラフ(株式会社島津製作所製、AUTOGRAPH AG-X plus 20kN)を用いて、スパン:50mm、降下速度:5mm/minの条件下にて、抗折強度(kg/cm2 )を測定する。
【0048】
-流動性の評価-
各耐火骨材に対して0.1質量%の割合の水を添加して混練することにより調製された混練砂を用いて、流動性(タップフロー)評価試験を、JIS-R-2521(1995)に準拠して実施する。具体的には、上部直径:37mm、下部直径:88mm、高さ:74mmの円筒状フローコーンに、測定対象となる混練砂を詰めた後、かかるフローコーンを引き抜き、そして、フローテーブルを用いて12mmの高さからの落下運動を5回与えた後、崩れた混練砂の最大直径とそれに直角な方向の直径を計測して、その平均値をフロー値として、それを、かかる混練砂の流動性の指標とする。このフロー値が大きくなる程、流動性が良好となることを示している。
【0049】
【表2】
【0050】
そして、かかる表2の結果において、各耐火骨材の真円度と流動性及び鋳型強度との関係をプロットすると、図1に示される如くなるのであるが、そこでは、真円度の値が小さくなる(非円形化する)程、換言すれば、非球形の粒子となる程、流動性は良好となる傾向が認められるのである(図において、実線の長楕円にて囲まれる領域参照)。これは、真円度が小さくなる程、流動に影響する水量(砂表面の水厚さ)が減少しているからと考えられる。焼結砂A~Hは、溶融砂と比べ、真円度が小さく、良好な流動性を示している。一方、天然砂は、流動性が低いことが認められる。これは、天然砂が角張った形状であり、真円度が小さいことが原因であると考えられる。
【0051】
また、鋳型強度に関しては、耐火骨材の真円度が小さくなる程、低下する傾向があることが認められる(図1において、破線の長楕円で囲まれる領域参照)。上記した流動性への影響と同様に、耐火骨材の真円度が小さくなる、換言すれば非円形化すると、耐火骨材の表面積が増大し、鋳型強度の発現に有効なバインダの量が、減少することとなるためである、と考えられるのである。
【0052】
そして、以上の結果から、良好な流動性、且つ高い鋳型強度を得るためには、真円度が0.70以上となる耐火骨材を用いる必要があることが、認められるのである。
【0053】
また、前記表1における、各耐火骨材の直径:2~10μmの細孔容積と、流動性及び鋳型強度との関係をプロットしたのが、図2であるが、そこにおいて、直径:2~10μmの細孔の細孔容積が多く(大きく)なるほど、良好な流動性を示すことが認められる(図において、実線参照)。これは、そのような細孔容積が多くなると、細孔内に入り込む水の量が多くなるために、流動に影響する水の量(砂表面の水厚さ)が減少するようになるからであると考えられる。耐火骨材として用いた焼結砂A~Hは、その何れもが良好な流動性を示している一方、溶融砂は流動性が低い値を与えているが、これは、溶融砂の細孔容積が非常に少ないために、砂表面の水厚さが厚くなっているものと考えられる。
【0054】
従って、鋳物砂における良好な流動性を得るには、耐火骨材における、直径が2~10μmの細孔の全容積(細孔容積)が、0.20mL/g以上であることが必要である、と考えられるのである。
【0055】
また、図2に示される鋳型強度との関係に関して、直径:2~10μmの細孔容積が多くなる程、破線で示される如く、鋳型強度は低くなる傾向が認められるのである。特に、焼結砂Aを用いて得られた鋳型の強度が低いことが、認められる。この鋳型強度が低くなる原因としては、細孔容積が多くなると、耐火骨材の表面の凹凸内にバインダが入り込んで、鋳型強度の発現に有効なバインダ量が減少するようになるためである、と考えられるのである。
【0056】
このため、高い鋳型強度を得るには、焼結砂における、直径が2~10μmの細孔の全容積は、0.50mL/g以下であることが有効であると考えられるのである。
【0057】
なお、先の表2には、直径が10μmよりも大きな細孔の全容積についても、その測定結果が示されているが、そのような直径が10μm超の細孔容積に対する、流動性や鋳型強度の関係を検討すると、直径2~10μmの細孔容積に対する流動性や鋳型強度の関係とは異なり、そのような直径10μm超の細孔容積が、流動性や鋳型強度には殆ど寄与するものではないことは、明らかである。
【0058】
以上の結果よりして、良好な流動性且つ高い鋳型強度を得るには、直径が2~10μmの細孔の全容積が0.20~0.50mL/gの範囲内にある耐火骨材を使用する必要があることが認められるのである。
【0059】
ここで、耐火骨材として用いた焼結砂A~Hについて、それぞれ、残留する微粉量を知るべく、以下の比濁法に従って、濁度を測定し、その結果を、先に求めた表2に示される流動性及び鋳型強度と共に、下記表3に示した。
【0060】
-濁度の測定-
測定対象となる耐火骨材の20gと水50mLとを、スターラーにて、30分間、撹拌・混合せしめた後、30分静置して得られる上澄み液を用い、90°散乱光/透過光レシオ測定方式(透過散乱方式)の濁度計(米国:HACH社製、ポータブル濁度計2100Q、東亜ディーケーケー株式会社販売)にて、濁度(NTU)を求める。なお、この濁度(NTU)の値が小さくなる程、混在する微粉量が少なくなることを示している。
【0061】
【表3】
【0062】
そして、かかる表3に示される各焼結砂についての濁度と、流動性及び鋳型強度との関係が、図3に示されているが、そこにおいて、実線にて示される如く、濁度(NTU)が高くなる程、焼結砂A~Hは、良好な流動性を示すことが認められる。これは、濁度が高くなる程、焼結砂に残留する微粉が多くなって、その多くなった微粉に付着する水の量が多くなるところから、流動に影響する水の量(砂表面の水厚さ)が減少するようになるからであると考えられる。
【0063】
一方、鋳型強度は、濁度が高くなる程、低下して、焼結砂Aにおいては、特に低い値を示した。この原因は、濁度が高く、残留微粉量が多くなると、焼結砂表面の微粉にバインダが付着してしまうために、鋳型強度の発現に有効なバインダ量が減少することとなるからである。
【0064】
そうすると、焼結砂に混在する微粉量に対応する濁度に関して、良好な流動性且つ高い鋳型強度を実現するには、かかる濁度が3000NTU以下であるように構成することが重要であるということが出来る。
【0065】
[実施例2]
上記した実施例1と同様に、鋳物砂用耐火骨材として、下記表4に示される化学組成と平均粒子径を有する焼結砂I~O及び溶融砂を、それぞれ準備した。そこにおいて、溶融砂は、実施例1にて準備したものと同一のものであり、また、焼結砂I~Oについては、実施例1と同様な焼結法に従って、より細かな焼結砂を形成せしめ、また焼結工程においては、焼成温度を表4の如く設定すると共に、整粒工程では、集塵の有無を選択し、更に、その集塵力を各焼結砂毎に変化させて、各焼結砂における微粉の除去量に差を付けた。
【0066】
【表4】
【0067】
次いで、それら各種の耐火骨材について、それぞれ、実施例1と同様にして、真円度、細孔容積、鋳型強度及び流動性を測定した。そして、それら得られた真円度、細孔容積、鋳型強度及び流動性の結果を、下記表5に示す。
【0068】
なお、鋳型強度の測定用の試験片(鋳型)は、バインダとして、フラン樹脂を用いて、作製した。具体的には、耐火骨材に対して、硬化剤(花王クエーカー社製、C-17)を0.2質量%添加し、混練した後、フラン樹脂(花王クエーカー社製、EF-5301)を1.0質量%添加し、更に、混練することにより、混練砂を得た。そして、その得られた混練砂を、50mmφ×50mmHの木枠に充填し、硬化させた後、温度:30℃、湿度:80%RHの環境下で、24時間保持した後、実施例1と同様に、オートグラフを用いて、圧縮強度を測定した。
【0069】
また、流動性の評価については、耐火骨材に対して、硬化剤(花王クエーカー社製、C-17)を0.2質量%添加し、混練して得られる混練砂を用いて、実施例1と同様にして、タップフロー値を求めた。
【0070】
【表5】
【0071】
かかる表5の結果から明らかなように、細粒の焼結砂において、表面凹凸(直径2~10μmの細孔容積)が多い程、高い流動性(タップフロー値)を示した。また、フラン樹脂を用いた鋳型強度においても、表面凹凸が多い程、フラン強度は、低くなる傾向を示した。特に、焼結砂Iは、細孔容積が多かったため(0.61mL/g)、高い流動性を示しているが、鋳型強度(フラン)は、低い値を示すものであった。
【0072】
これらのことから、鋳型強度としてフラン樹脂を用いた場合においても、実施例1と同様な傾向を示すことが明らかとなった。なお、フラン樹脂は、鋳型の作製において、木型等を用いた手込め造型だけでなく、3D造型機を用いた三次元砂型積層造型法に広く用いられている。そして、三次元砂型積層造型法では、例えば、耐火骨材と硬化剤を混練した混練砂を振動等によりリコートし、目的とする造型箇所にのみフラン樹脂を滴下することで、鋳型が作製されることとなるのであり、また、フラン樹脂の滴下後に、造型された鋳型は、突き固めた手込め造型法とは異なり、鋳型強度が低くなり易いために、積層造型で作製された鋳型を取り出す際には、その取り出しの際の振動や持ち運びに堪え得る適度な鋳型強度が必要とされており、一般に、10kg/cm2 以上の強度を有することが要請されている。加えて、複雑形状を有する鋳型を作製する際には、鋳型表面粗さの観点から、中心粒径が0.11mm~0.13mm程度の細粒の鋳物砂が広く使用されており、そのため、三次元砂型積層造形法では、細粒の耐火骨材にて、より高い流動性と、高い鋳型強度が求められることとなる。
【0073】
上記の表5の結果から、細粒の焼結砂にフラン樹脂を用いた鋳型強度においても、細孔容積と高い相関を持つことから、手込め造型法だけでなく、三次元砂型積層造形法においても、細孔容積が限定された焼結砂(0.20~0.50mL/g)を用いることで、良好な流動性を維持しつつ、高い鋳型強度を有する良好な鋳型が作製され得ることは、明らかである。特に、焼結砂Jにおいては、高い流動性を維持しつつ、フラン強度が13.1kg/cm2 と、三次元砂型積層造形法としても十分な鋳型強度を有しているのである。これに対して、溶融砂は、表面凹凸が低く、流動性は実施例1の粗粒のものに比べても、著しく低い結果となっている。このことから、溶融砂は、三元砂型積層造形法において、流動性が乏しく、砂型造型には適さないことが明らかとなった。
【0074】
また、焼結砂I~Oと溶融砂について、それぞれ、残留する微粉量を知るべく、実施例1と同様にして、比濁法に従って濁度を測定し、その結果を、先に求めた流動性及び鋳型強度と共に、下記表6に示した。
【0075】
【表6】
【0076】
かかる表6の結果から明らかなように、焼結砂I~Oにおいて、濁度が高い程、高い流動性を示す一方、バインダ樹脂としてフラン樹脂を用いた鋳型についての鋳型強度は低下し、実施例1と同様な結果を示した。特に、焼結砂Jにおいては、濁度が2780NTUであることから、高い流動性を維持しつつ、フラン強度が13.1kg/cm2 と、三次元砂型積層造形法においても、充分な鋳型強度を有していることが明らかとなった。加えて、焼結砂Oは、濁度が低いものの、三次元砂型積層造形法で採用可能な流動性を示したのに対して、溶融砂は、焼結砂と比較して、著しく流動性が低いことが明らかとなった。これは、焼結砂は、砂表面に適度な細孔容積が存在し、細孔容積内に入り込む硬化剤量が多くなることで、流動に影響する硬化剤量(砂表面に存在する硬化剤の厚み)が減少し、良好な流動性を示したのに対して、溶融砂は、砂表面に存在する細孔容積が少ないために、焼結砂に比べて、流動に影響する硬化剤量が多くなることで、流動性の顕著な低下が認められるものとなった。
図1
図2
図3