IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特開-排気管 図1
  • 特開-排気管 図2
  • 特開-排気管 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039217
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】排気管
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/08 20100101AFI20240314BHJP
   F01N 13/14 20100101ALI20240314BHJP
【FI】
F01N13/08 A
F01N13/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143602
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 敏史
【テーマコード(参考)】
3G004
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004AA09
3G004BA06
3G004BA09
3G004DA01
3G004DA11
3G004DA14
3G004DA15
3G004EA05
3G004FA01
3G004GA06
(57)【要約】
【課題】インシュレータで覆うことができないフランジ近傍の遮熱性や断熱性を向上することができる排気管を提供することを提供する。
【解決手段】排気管1は、外管2と、外管2の周囲を覆うインシュレータ4と、外管2の内部に設けられた内管3と、を有し、内管3は、上流側が外管2に接続されて、外管2との接続箇所から下流端3dに至るまで、外管2の内周面2aとの間に空洞部3bを形成しながら下流側に延び、外管2は、別の排気管との接続用のフランジ2bが下流端2dに設けられており、インシュレータ4の下流端4aは、フランジ2bから上流側に所定距離Lだけ離れた位置に設定されており、内管3の下流端3dは、インシュレータ4の下流端4aを超えるまで下流側に延び、かつ、フランジ2bの直前まで下流側に延びている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガスを導く排気通路の一部を形成する排気管であって、
外管と、
前記外管の周囲を覆うインシュレータと、
前記外管の内部に設けられた内管と、
を有し、
前記内管は、上流側が前記外管に接続されて、前記外管との接続箇所から下流端に至るまで、前記外管の内周面との間に空洞部を形成しながら下流側に延び、
前記外管は、別の排気管との接続用のフランジが下流端に設けられており、
前記インシュレータの下流端は、前記フランジから上流側に所定距離だけ離れた位置に設定されており、
前記内管の下流端は、前記インシュレータの下流端を超えるまで下流側に延びており、
前記内管の下流端は、前記フランジの直前まで下流側に延びている、
排気管。
【請求項2】
請求項1に記載の排気管であって、
前記外管の下流端に設けられた前記フランジは、排気ガス浄化装置の流入端に設けられたフランジに接続される、
排気管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスを導く排気通路の一部を形成する排気管に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関を搭載した車両には、内燃機関で生じた燃焼ガスを排気ガスとして外部へ導く排気管が備えられている。排気管は、通常車両下面に沿って配置されるうえ、排気ガスによって非常に高温となっている。
【0003】
そのため、舗装されていない場所を走行する際、枯草等が排気管に触れて引火するおそれがある。また、排気管からの放熱で排気ガスの温度が下がり、触媒の浄化能力を十分に発揮させることができない可能性が有る。そこで、排気管を筒状のインシュレータで覆って、排気管の内部と外部の間を2層以上の構造とし、遮熱や断熱を行う技術が知られている。
【0004】
例えば特許文献1は、内部を流れる排気の流れ方向が変えられた単数または複数の屈曲部が形成された排気管を覆うインシュレータが開示されている。インシュレータは、排気管の少なくとも1つの屈曲部と、当該屈曲部から所定距離だけ車両の前方側の排気管と、を周方向に覆う筒状の形状を有し、覆った個所の前記排気管からの熱を遮断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-76045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたようなインシュレータを用いて、排気管の全域を覆うことは困難であり、製造の都合上、インシュレータで覆えない部分が残ってしまうという問題があった。具体的には、上流側の排気管に設けられたフランジと、下流側の排気管に設けられたフランジとを接続することで、これら排気管同士を連結するような場合、製造の都合上、インシュレータをフランジに近接させることができない。そのため、インシュレータとフランジの間に隙間が空いて、インシュレータに覆われない部分が生じてしまう。排気管においてこのような部分が存在すると、上述のような枯草の引火や、触媒の浄化能力の低下が起こる可能性があり、好ましくない。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、インシュレータで覆うことができないフランジ近傍の遮熱性や断熱性を向上することができる排気管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため本開示による排気管は、内燃機関の排気ガスを導く排気通路の一部を形成する排気管であって、外管と、前記外管の周囲を覆うインシュレータと、前記外管の内部に設けられた内管と、を有し、前記内管は、上流側が前記外管に接続されて、前記外管との接続箇所から下流端に至るまで、前記外管の内周面との間に空洞部を形成しながら下流側に延び、前記外管は、別の排気管との接続用のフランジが下流端に設けられており、前記インシュレータの下流端は、前記フランジから上流側に所定距離だけ離れた位置に設定されており、前記内管の下流端は、前記インシュレータの下流端を超えるまで下流側に延びており、前記内管の下流端は、前記フランジの直前まで下流側に延びている。
【0009】
これによれば、内管の下流端が外管とフランジとの境界に位置する結果、インシュレータで覆われず外管が露出している全域が2層構造となり、遮熱性や断熱性をより向上することができる。また、排気管の製造時において外管の外周面にフランジを溶接する際には、専用の治具(外管に挿入することで外管の径を補正するための治具)を用いて溶接している。このような治具をセットする際も、内管の下流端が外管とフランジとの境界に位置しているため、外管の下流側から挿入した治具を、内管の下流端に当たるまで押し込むだけで、適切な位置で位置決めすることができる。
【0010】
上記排気管において、前記外管の下流端に設けられた前記フランジは、排気ガス浄化装置の流入端に設けられたフランジに接続されてもよい。
【0011】
これによれば、インシュレータで覆われず外管が露出している全域が2層構造となり、排気ガス浄化装置の直前の排気管の排気ガスの保温効果が高いので、例えば、排気ガス浄化装置に向けて添加された反応液を、適切な温度で気化させたまま排気ガス浄化装置に届けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ディーゼルエンジンを搭載した車両の概略図である。
図2図1における排気システムの一部を示す部分断面図である。
図3図2における尿素水拡散用排気管とNOx後処理装置の接続部付近の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
●[ディーゼルエンジンを搭載した車両の概要(図1)]
以下、本発明の一実施形態に係る排気管としての尿素水拡散用排気管1について説明する。まず、図1を用いて、ディーゼルエンジンを搭載した車両の概要を説明する。
【0014】
図1に示すように車両50の前部には、ディーゼルエンジン51(内燃機関に相当)が搭載されている。ディーゼルエンジン51は、吸気マニホルド52から供給される吸気を圧縮し、燃料の自然着火を起こして燃焼ガスを発生させ、熱エネルギーを運動エネルギーに変換する。ディーゼルエンジン51は、排気システム53を有しており、不要になった燃焼ガスを浄化して排気ガスとして大気中に放出する。
【0015】
排気システム53は、排気マニホルド54、過給機55、第1浄化装置56、NOx後処理装置21、第2浄化装置57、サイレンサ58等によって一連の排気通路を形成しており、それぞれが排気管を介して連結されている。排気管には、燃料添加弁59や尿素添加弁12が設けられているものがある。各添加弁からは燃料や尿素水が噴射される。例えば、第1浄化装置56は、酸化触媒と微粒子捕集フィルタを有しており、CO、HCを浄化してスス等の微粒子を捕集する。また、NOx後処理装置21は、SCR触媒を有しており、NOxを浄化する。また、第2浄化装置57は、酸化触媒を有し、浄化に利用されなかったアンモニアを浄化する。
【0016】
排気システム53は、排気ガスによって高温となっている。また、排気システム53の大部分は、車両50の下面に沿って配置されている。したがって、車両50が舗装されていない場所を走行する際、枯草60等が排気システム53に触れる場合がある。特にNOx後処理装置21へと続く排気管(尿素水拡散用排気管1、図2参照)は、排気システム53において比較的上流側に位置するとともに、路面との距離が近いため、枯草等が触れても引火しないような対策が必要な部分である。また、排気ガスの温度を維持してNOx後処理装置21に排気ガスを届ける必要もある(詳細は後述する)。
【0017】
●[尿素水拡散用排気管1の概要(図2)]
図2は、図1における排気システムの一部を示す部分断面図である。図2に示すように、本発明に係る尿素水拡散用排気管1は、ディーゼルエンジン51(図1参照)の排気ガスを導く排気通路の一部を形成している。尿素水拡散用排気管1の上流側には、尿素水混合用排気管11が接続されており、下流側には、NOx後処理装置21(排気ガス浄化装置に相当)が接続されている。ディーゼルエンジン51から排出された排気ガスは、尿素水混合用排気管11に流入し、本発明に係る尿素水拡散用排気管1を通って、NOx後処理装置21へ導かれる。
【0018】
図2において最上流に位置する尿素水混合用排気管11は、分散装置13を介して尿素水拡散用排気管1と接続されている。尿素水混合用排気管11は、尿素添加弁12を有し、尿素添加弁12からは、分散装置13に向かって尿素水が噴射される。尿素水は、分散装置13に当たって微粒化され、尿素水拡散用排気管1には微粒化した尿素水が混ざった排気ガスが流入する。
【0019】
尿素水拡散用排気管1は、微粒化した尿素水を気化させ、尿素を排気ガス中に拡散させてNOx後処理装置21へと導く。そのため、尿素水拡散用排気管1は、排気ガスの温度を維持し尿素水の気化を促進するとともに、NOx後処理装置21のSCR触媒26を活性化温度に維持するような排気通路であることが望ましく、外管2と、外管2の内部に設けられた内管3とを有し、断熱性を高めている。また、尿素水拡散用排気管1は、枯草等が外管2に触れて引火しないように、外管2の周囲を覆うインシュレータ4を有し、遮熱性を高めている。このような3層構造の尿素水拡散用排気管1において、微粒化した尿素水は、内管3を流れるうちに気化し、尿素が排気ガス中に拡散する。尿素水拡散用排気管1は、下流端2dにフランジ2bが設けられている。フランジ2bは、NOx後処理装置21の流入端に設けられたフランジ27に接続されている。NOx後処理装置21には、尿素を含む排気ガスが流入する。
【0020】
NOx後処理装置21は、SCR触媒26を有し、排気ガス中に拡散された尿素によって排気ガス中のNOxを還元して除去する。浄化された排気ガスは、さらに下流へと導かれ最終的に大気中に排出される。
【0021】
●[尿素水拡散用排気管1の構造(図2図3)]
図2に示すように尿素水拡散用排気管1において、内管3は、上流側が外管2に接続されている。具体的には、外管2の内周面2aに対して、内管3の外周面3aが例えばスポット溶接にて接続されている。このように外管2と内管3とは、上流側にて接続されて一体となっている。なお、図2では、尿素水拡散用排気管1は、ほぼ真っ直ぐ延びた形状で描かれているが、屈曲していても良い。尿素水拡散用排気管1を屈曲させる場合、外管2と内管3の空洞部3bを保持するために、空洞部3bに砂等の粒状物を入れて充満させて、そのうえで外管2と内管3をいっしょに曲げ加工する。
【0022】
図2図3に示すように内管3は、外管2との接続箇所から下流端3d(図3参照)に至るまで、外管2の内周面2aとの間に空洞部3bを形成しながら下流側に延びている。このような空洞部3bを存在させることにより、外管2と内管3との間で約100℃の温度降下を期待することができる。その結果、外管2の外周面2cの温度は、約300℃とすることができる。図3に示すように内管3の下流端3dは、ワイヤメッシュ6にて外管2の内周面2aに接触することなく保持されている。ワイヤメッシュ6は、外管2に接触しないように内管3を安定して保持するために、空洞部3bに配置されている。ワイヤメッシュ6は、内管3に形成された環状凸部3cに挟まれて、内管3の軸方向への動きが規制されている。
【0023】
図2に示すように外管2は、上流側にて分散装置13を嵌めることができるように拡径している。分散装置13は、外管2の上流側に嵌め込まれて溶接されている。一方、図3に示すように外管2は、下流側にてNOx後処理装置21との接続が可能となるように、接続用のフランジ2bが下流端2dに設けられている。具体的には、外管2の下流端2dの外周面2cに対しフランジ2bが溶接されている。なお、NOx後処理装置21における排気ガスの流入端(別の排気管)にもフランジ27が設けられている。
【0024】
図2図3に示すようにインシュレータ4は、外管2の周囲を覆っている。インシュレータ4は、例えば、外管2の長手方向に沿って半割状に分割されたものが接合されて筒状とされている。上述した外管2とフランジ2bの溶接は、インシュレータ4で外管2を覆った後に行われる。そのため、図3に示すようにインシュレータ4の下流端4aは、フランジ2bから上流側に所定距離Lだけ離れた位置に設定されている。つまり、インシュレータ4は、下流端4aからフランジ2bにかけては、外管2を覆っていない。なお、ワイヤメッシュ5は、インシュレータ4と外管2の間にできた隙間から枯草等が入らないように、インシュレータ4の下流端4a内側に配置されている。
【0025】
図3に示すように内管3の下流端3dは、インシュレータ4の下流端4aを超えるまで下流側に延び、フランジ2bの直前で止まっている(内管3は、フランジ2bに対して排気管の長手方向にオーバーラップしない)。これにより、インシュレータ4で覆われず外管2が露出しているフランジ2b近傍が、外管2と内管3の2層構造となり、尿素水拡散用排気管1の遮熱性や断熱性を向上することができる。つまり、インシュレータ4の下流端4aとフランジ2bの間の外管2に直接、枯草等が接触したとしても、引火してしまうことはない(遮熱性の向上)。また、外管2からの放熱が防止されるので、排気ガスは、その温度を維持したままNOx後処理装置21に流入する(断熱性の向上)。
【0026】
また、内管3の下流端3dが外管2とフランジ2bとの境界に位置している。そのため、尿素水拡散用排気管1の製造時において外管2の外周面2cにフランジ2bを溶接する際に用いる治具であって、外管2の径を補正するための治具を、外管2の下流側から挿入して内管3の下流端3dに当たるまで押し込むだけで、治具を適切な位置で位置決めすることができる。
【0027】
●[NOx後処理装置21の上流側の構造(図3)]
尿素水拡散用排気管1にて尿素が拡散された排気ガスは、NOx後処理装置21へと導かれる。NOx後処理装置21においても枯草対策や排気ガスの保温対策が取られている。
【0028】
図3に示すように内管23は、上流側が外管22に対し、例えばスポット溶接にて接続されている。図3に示すように内管23は、外管22との接続箇所から下流端に至るまで、外管2の内周面2aとの間に空洞部23aを形成しながら下流側に延びている。
【0029】
図3に示すように外管22は、上流側にて尿素水拡散用排気管1と接続ができるように、接続用のフランジ27が上流端22aに設けられている。具体的には、外管22の上流端22aの外周面22cに対しフランジ27が溶接されている。フランジ27は、尿素水拡散用排気管1の下流端に設けられたフランジ2bに接続されている。
【0030】
図3に示すようにインシュレータ24は、外管22の周囲を覆っている。尿素水拡散用排気管1と同様、インシュレータ24の上流端24aは、フランジ27から下流側に所定距離だけ離れた位置に設定されている。つまり、インシュレータ24は、上流端24aからフランジ27にかけては、外管22を覆っていない。ただし、インシュレータ24で覆われず外管22が露出しているフランジ27近傍については、外管22と内管23の2層構造となっており、遮熱性や断熱性が低下することはない。また、ワイヤメッシュ25は、インシュレータ24と外管22の間にできた隙間から枯草等が入らないように、インシュレータ4の上流端24a内側に配置されている。
【0031】
本発明の尿素水拡散用排気管1は、本実施の形態で説明した外観、構成、構造等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0032】
本実施の形態の説明では、本発明に係る排気管として、NOx後処理装置21の上流側に接続された尿素水拡散用排気管1を例に説明した。しかし、フランジ近傍がインシュレータで覆うことができずに外管が露出するような排気管であれば、尿素水拡散用排気管1に限定されず、排気システムのいかなる部分に配置された排気管であっても良い。
【0033】
本実施の形態の説明では、内管3の下流端3dがフランジ2bの直前まで延びている例(図3参照)を説明した。しかし、内管3の下流端3dがインシュレータ4の下流端4aを超えて下流側まで延びていれば、外管2のみの1層構造となる部分が削減されるので、その分だけ遮熱性や断熱性を向上することはできる。したがって、例えば、内管3の下流端3dは、インシュレータ4の下流端4aとフランジ2bの間まで延びるものであっても良い。また、内管3の下流端3dは、フランジ2bとオーバーラップするまで延びていても良い。
【符号の説明】
【0034】
1 尿素水拡散用排気管
2、22 外管
2a 内周面
2b、27 フランジ
2c、3a、22c 外周面
2d、3d、4a 下流端
3 内管
3b、23a 空洞部
3c 環状凸部
4、24 インシュレータ
4a 下流端
5、6、25 ワイヤメッシュ
11 尿素水混合用排気管
12 尿素添加弁
13 分散装置
21 NOx後処理装置
26 SCR触媒
50 車両
51 ディーゼルエンジン
52 吸気マニホルド
53 排気システム
54 排気マニホルド
55 過給機
56 第1浄化装置
57 第2浄化装置
58 サイレンサ
59 燃料添加弁
60 枯草
図1
図2
図3