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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039219
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】12R-リポキシゲナーゼ産生促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240314BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240314BHJP
   A61K 36/30 20060101ALI20240314BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
A61K36/30
A61P17/00 ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143604
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】森瀬 綾子
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB312
4C083AB352
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC792
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD352
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC25
4C083DD41
4C088AB12
4C088AC01
4C088AC03
4C088AC04
4C088AC05
4C088AC06
4C088AC11
4C088BA08
4C088CA03
4C088NA14
4C088ZA89
(57)【要約】
【課題】くすみのない明るい肌にする12R-リポキシゲナーゼ産生促進剤を提供する。
【解決手段】角質層中でω-O-アシルセラミド中のリノール酸残基を過酸化脂質化する12R-リポキシゲナーゼの産生を促進させることで、角質細胞の脂質膜であるコルネオサイトリピッドエンベロープとコーニファイドエンベロープ構造の形成を促進して、微絨毛様突起の形成を抑制し、角質細胞の機能を正常化することでくすみのない明るい肌にするコンフリー抽出物を含有することを特徴とする、12R-リポキシゲナーゼ産生促進剤、角質細胞のコルネオサイトリピッドエンベロープ形成促進剤及び角質細胞の微絨毛様突起形成抑制剤を提供する。本願発明は、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品等へ配合することが可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンフリー抽出物を含有することを特徴とする12R-リポキシゲナーゼ産生促進剤。
【請求項2】
コンフリー抽出物を含有することを特徴とする角質細胞のコルネオサイトリピッドエンベロープ形成促進剤。
【請求項3】
コンフリー抽出物を含有することを特徴とする角質細胞の微絨毛様突起形成抑制剤。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コンフリー抽出物を含有することを特徴とする12R-リポキシゲナーゼ産生促進剤に関し又12R-リポキシゲナーゼ産生促進剤が関与する症状や疾患に対する予防、改善又は治療用薬剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
肌表面を覆う角質層の状態は、肌の美観を左右する。美しい肌では角質細胞が一定の速度で作られ、また落屑して角質層の機能を常に正常に保っている。しかし、紫外線や乾燥などの影響により角質細胞の産生が乱れると、角質細胞が落屑せずに角質層が肥厚してしまい、肌の明るさや透明感が低下してくすみなどの原因になり、美容上の問題になる。
【0003】
角質細胞は、表皮の顆粒細胞が分化して形成される表皮の最外層に位置する細胞で、タンパク質が凝集して形成されるコーニファイドエンベロープ(CE)で覆われている。さらにCEにはアシルセラミドが結合してコルネオサイトリピッドエンベロープ(CLE)を形成している。CEやCLEは、角質細胞の機能を発揮するために必要な構造物であり、正常なCEやCLEを有している角質細胞は、スクラブ剤やふき取り化粧水を用いた物理的な施術やピーリングなどの化学的な介入を行わなくても正常に落屑し、角質層が肥厚することもなく、くすみのない明るい肌になる。
【0004】
微絨毛様突起は、角質細胞表面に観察される微細構造で、アトピー性皮膚炎など炎症を伴う皮膚疾患や紫外線曝露によって乾燥した皮膚の角質細胞でよく観察され、皮膚のターンオーバーが亢進し、皮膚状態が非常に悪い指標となる(特許文献1)。CE構造の異常を示す指標の一つでもあり、CE上に散在している細胞接着因子のコルネオデスモソームは微絨毛様突起に集積しており、微絨毛様突起を有する角質細胞同士は強固に接着して、角質細胞の剥離が困難となる。また、微絨毛様突起は、ビタミンA誘導体で改善することが示されている(特許文献2)。
【0005】
CEとCLEの形成には12R-リポキシゲナーゼが必要である。この酵素の欠損により、CLEの形成が不全になるだけでなく、CLEが結合する角質細胞のCEも薄くなり角質細胞の健全性が損なわれることが示されている(非特許文献1)。そのため、この酵素が正常な角質細胞の形成に重要な因子であると考えられる。しかし、12R-リポキシゲナーゼを用いて肌のくすみを改善する方法は報告されていない。
【0006】
コンフリー(和名:ヒレハリソウ、学名:Symphytum officinale)とは、ムラサキ科ヒレハリソウ属の多年生草木である。古くから民間療法に利用され、葉は食用とされてきた。また、鎮痒剤(特許文献4)、抗炎症剤(特許文献4)、DNA損傷修復剤(特許文献5)としても利用されている。また、特許文献6では、ふき取り化粧水として古い角質細胞を物理的に拭き取る作用が示されている。肌のくすみの原因の一つに古い角質細胞が落屑せずに滞留することが挙げられるが、特許文献6では肌のくすみ改善効果について示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-344390
【特許文献2】特開2005-239623
【特許文献3】特開2008-81505
【特許文献4】特開2009-256222
【特許文献5】特開2018-168166
【特許文献6】特開2018-172343
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】D.Crumrine J. Invest. Dermatol. 139, 760-768 (2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かかる状況に鑑み、本願発明の課題は、有効で、副作用の少ない12R-リポキシゲナーゼ産生促進作用を有する、12R-リポキシゲナーゼ産生促進剤、角質細胞のコルネオサイトリピッドエンベロープ形成促進剤及び角質細胞の微絨毛様突起形成抑制剤を提供することで、くすみのない明るい肌にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、健常人において角質細胞表面を覆うCLEの形成が不十分であると角質細胞表面形状の異常である微絨毛様突起が形成されやすくなることを見出した。この結果から、CLEの形成を促進することが、微絨毛様突起の形成を抑制し、十分なCLEやCEを有し正常に機能する角質細胞が形成されることで、くすみのない肌にすることができると考えた。本願発明ではこの考えを基に、CLEの前駆物質を産生して、CLE形成を促進する12R-リポキシゲナーゼに着目し、当該酵素の産生促進作用を有する有効成分を探索し、コンフリー抽出物を同定した。また、コンフリー抽出物にはCLE形成促進作用と微絨毛様突起形成抑制作用を示すことを明らかにし、これら作用により正常に機能する角質細胞が生成され、角質層の機能が改善することで皮膚の明度が増すことを示した。そして、コンフリー抽出物を含有する12R-リポキシゲナーゼ産生促進剤、角質細胞のコルネオサイトリピッドエンベロープ形成促進剤及び角質細胞の微絨毛様突起形成抑制剤を提供することで本願発明を完成させた。
【発明の作用】
【0011】
本願発明のコンフリー抽出物は、12R-リポキシゲナーゼ産生促進作用、角質細胞のコルネオサイトリピッドエンベロープ形成促進作用及び角質細胞の微絨毛様突起形成抑制作用を有しており、角質細胞表面のCLE形成を促進することで、角質細胞表面の微絨毛様突起形成を抑制して、角質細胞の機能を正常化して、肌を明るくするので、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品の分野において利用できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本願発明について詳細に述べる。
【0013】
本願発明で述べている12R-リポキシゲナーゼ(12R-LOX)とは、ALOX12B遺伝子にコードされるアラキドン酸代謝に関与する酵素である。当該酵素は、表皮の角質層においてO-リノレオイル-ω-ハイドロキシセラミドのリノール酸部分を過酸化脂質化する反応を触媒し、角質細胞表面のCEに結合している脂質膜であるCLEの前駆体を産生する。そのため、ALOX12B遺伝子が欠損するとCLEが形成されなくなる(Y.Zheng, et. al. J. Biol Chem 286, 24046-24056 (2011))。また、12R-LOXは、紫外線で発現が抑制され、紫外線によるCLE形成抑制の原因となる(D.Guneri, et al. Int. J. Cosmet. Sci. 41, 274-280 (2019))。加えて、ALOX12B遺伝子はステロイド産生と脂質代謝に関与することから、生殖機能における働きが注目されており、特に40歳未満で卵巣機能が低下して無月経(月経が3ヶ月以上無い状態)となる早発卵巣不全の原因遺伝子である可能性が指摘されている(A.Alavi, et al. Mol Genet Genomics 295, 1039-1053 (2020))。即ち、皮膚において正常な角質細胞の形成に関与し、生殖機能にも関与する当該酵素は、美容や生殖医療の分野で注目されており、産業的に重要視されている。
【0014】
本願発明で述べている角質細胞表面の脂質膜(コルネオサイトリピッドエンベロープ、Corneocyte Lipid Envelope:CLE)は、角質細胞表面に結合したω-アシルセラミドで構成させる脂質膜で、CEと角質細胞間脂質層を結びつけることで皮膚バリアの形成に関与している。CLEを構成するセラミドは、ω水酸基にリノール酸が結合したものを前駆体とし、脂肪酸の鎖長がC28以上であり、非常に疎水性が高いという特徴がある。また、遺伝性の疾患である魚鱗癬の中には、CLEを構成するセラミドの輸送や合成に関与する遺伝子の異常が原因で発症するものもあることから、CLE、その構成脂質又はセラミド合成に関与する遺伝子などを標的とした皮膚バリア機能の改善方法や魚鱗癬の新規治療法の開発が期待されている。
【0015】
本願発明に用いるコンフリー抽出物とは、ムラサキ科ヒレハリソウ属ヒレハリソウ(Symphytum officinale)の花、実、種子、茎、葉、根等の植物体の一部又は全草から抽出したものであり、茎、葉、根から抽出したものが好ましく、最も好ましくは葉から抽出したものである。又、抽出には、これらの植物体をそのまま使用してもよく、乾燥、粉砕、細切等の処理を行ってもよい。
【0016】
抽出方法は、特に限定されないが、水もしくは熱水又は水と有機溶媒の混合溶媒を用い、撹拌又はカラム抽出する方法等により行うことができる。抽出溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコール及び液状多価アルコール等の極性溶媒がよく、特に好ましくは、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール及びプロピレングリコールがよい。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いてもよい。特に好ましい抽出溶媒としては、水又は水-エタノール系の混合極性溶媒が挙げられる。溶媒の使用量については、特に限定はなく、例えばコンフリーの植物体(乾燥重量)に対し、10倍以上、好ましくは20倍以上であればよいが、抽出後に濃縮を行ったり、単離したりする場合の操作の便宜上100倍以下であることが好ましい。また、抽出温度や時間は、用いる溶媒の種類や抽出時の圧力等によって適宜選択できる。
【0017】
上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いてもよいが、必要に応じて、本願発明の作用を奏する範囲で、濃縮(減圧濃縮、膜濃縮等による濃縮)、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、エタノール沈殿等の処理を行ってから用いてもよい。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いてもよい。抽出物は、単独で用いてもよいが、2種以上を併用してもよい。併用する場合、その混合比率は限定されない。
【0018】
本願発明の外用剤又は内用剤への配合は、上記抽出物をそのまま使用してもよく、抽出物の作用を損なわない範囲内で、化粧品、医薬部外品、医薬品又は食品等に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤、賦形剤、皮膜剤、甘味料、酸味料等の成分が含有されていてもよい。
【0019】
本願発明の剤型としては、例えば、化粧水、クリーム、マッサージクリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、軟膏、パップ剤、ペースト剤、プラスター剤、エッセンス、散剤、丸剤、錠剤、注射剤、坐剤、乳剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤(チンキ剤、流抽出物剤、酒精剤、懸濁剤、リモナーデ剤等を含む)、錠菓、飲料等が挙げられる。
【0020】
本願発明で用いるコンフリー抽出物の含有量は、固形物に換算して0.001重量%以上、好ましくは0.01~1重量%がよい。0.001重量%未満であると本願発明の作用が十分に発揮されにくい場合がある。添加の方法については、予め加えておいても、製造途中で添加してもよく、作業性を考えて適宜選択すればよい。
【0021】
次に本願発明を詳細に説明するため、実施例として本願発明に用いるコンフリー抽出物の製造例、処方例及び実験例を挙げるが、本願発明はこれに限定されるものではない。例中の含有量は、全て重量%とする。
【0022】
以下に、コンフリー抽出物の製造例を示す。
【実施例0023】
製造例1 コンフリーの熱水抽出物
コンフリーの葉の乾燥物10gに精製水200mLを加え、95~100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してコンフリーの葉の熱水抽出物を1.6g得た。
【0024】
製造例2 コンフリーの50%エタノール抽出物
コンフリーの葉の乾燥物10gに50%エタノール200mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、コンフリーの葉の50%エタノール抽出物を1.2g得た。
【0025】
製造例3 コンフリーのエタノール抽出物
コンフリーの葉の乾燥物10gにエタノール200mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、コンフリーの葉のエタノール抽出物を0.8g得た。
【0026】
製造例4 コンフリーの1,3-ブチレングリコール抽出液
コンフリーの葉の乾燥物10gに1,3-ブチレングリコール200mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、コンフリーの葉の1,3-ブチレングリコール抽出液を180mL得た。
【実施例0027】
処方例1 ローション
処方 含有量(%)
1.コンフリー抽出液(製造例4) 1.0
2.1,3-ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~6及び11と、成分7~10をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0028】
比較例1 従来のローション
処方例1において、コンフリー抽出液を精製水に置き換えたものを従来のローションとした。
【0029】
処方例2 乳液
処方 含有量(%)
1.コンフリー抽出物(製造例1) 1.0
2.スクワラン 5.0
3.オリーブ油 5.0
4.ホホバ油 5.0
5.セタノール 1.5
6.モノステアリン酸グリセリン 2.0
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート 2.0
9.香料 0.1
10.プロピレングリコール 1.0
11.グリセリン 2.0
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2~8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分10~13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分9を加え、更に30℃まで冷却して成分1を加え、製品とする。
【0030】
比較例2 従来の乳液
処方例2において、コンフリー抽出物を精製水に置き換えたものを従来の乳液とした。
【0031】
処方例3 クリーム
成分 含有量(%)
1.コンフリー抽出物(製造例2) 1.0
2.イソステアリン酸ポリグリセリル-10 1.3
3.ミリスチン酸ポリグリセリル-10 1.3
4.グリセリン 4.5
5.ジメチコン 10.0
6.ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 10.0
7.EDTA-2Na 0.05
8.カルボキシビニルポリマー 0.3
9.1,3-ブチレングリコール 10.0
10.パラオキシ安息香酸メチル 0.3
11.AMPD 0.15
12.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2~6を加熱して混合し、70℃に保ち油相とする。成分7~12を加熱溶解して混合し、70℃に保ち水相とする。油相に水相を加え乳化し、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分1を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0032】
比較例3 従来のクリーム
処方例3において、コンフリー抽出物を精製水に置き換えたものを従来のクリームとする。
【0033】
処方例4 ゲル剤
成分 含有量(%)
1.コンフリー抽出物(製造例3) 0.5
2.エタノール 5.0
3.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
4.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.1
5.香料 適量
6.1,3-ブチレングリコール 5.0
7.グリセリン 5.0
8.キサンタンガム 0.1
9.カルボキシビニルポリマー 0.2
10.水酸化カリウム 0.2
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2~5と、成分1及び6~11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合して製品とする。
【0034】
処方例5 浴用剤
成分 含有量(%)
1.コンフリー抽出物(製造例2) 1.0
2.炭酸水素ナトリウム 50.0
3.黄色202号(1) 適量
4.香料 適量
5.硫酸ナトリウムにて全量を100とする
[製造方法]成分1~5を均一に混合し製品とする。
【0035】
処方例6 錠剤
成分 含有量(%)
1.コンフリー抽出物(製造例3) 0.5
2.乾燥コーンスターチ 29.5
3.カルボキシメチルセルロースカルシウム 20.0
4.微結晶セルロース 40.0
5.ポリビニルピロリドン 7.0
6.タルク 3.0
[製造方法]成分1~4を混合し、次いで成分5の水溶液を結合剤として加えて顆粒成型する。成型した顆粒に成分6を加えて打錠する。1錠0.52gとする。
【0036】
処方例7 錠菓
成分 含有量(%)
1.コンフリー抽出物(製造例3) 0.5
2.乾燥コーンスターチ 50.8
3.エリスリトール 40.5
4.クエン酸 5.0
5.ショ糖脂肪酸エステル 3.0
6.香料 0.1
7.精製水 0.1
[製造方法]成分1~4及び7を混合し、顆粒成型する。成型した顆粒に成分5及び6を加えて打錠する。1粒1.0gとする。
【実施例0037】
以下、本願発明を作用的に説明するために、実験例を挙げる。なお、本願発明はこれにより限定されるものではない。
【0038】
実験例1 12R-リポキシゲナーゼ遺伝子ALOX12Bの発現促進
ALOX12B遺伝子の発現促進作用を下記の条件にて測定した。
【0039】
ヒト表皮ケラチノサイトに対して3mM CaClを添加して72時間分化誘導した後に、培地に対してコンフリー抽出液(製造例4)を固形分として0.015%になるように添加しさらに24時間培養した。培養後、50mJ/cmでUVBを照射し、照射2時間後にRNAiso+(タカラバイオ)を用いてRNAを単離した。このRNAに対して、High Capacity RNA to cDNA Kit(ThermoFisher Scientific)を用いて逆転写反応によるcDNA合成を行った後に、SYBR Select Master Mix(ThermoFisher Scientific)を用いてPCR反応を実施し、ALOX12Bの遺伝子発現量を測定した。PCRプライマーは、以下に示したものを用いた。95℃、2分の初期変性を行った後、PCR反応として95℃、15秒、60℃、60秒を1サイクルとして40サイクル行った。その他の操作は、定められた方法に従い、ALOX12Bの遺伝子発現量を内部標準であるGAPDHの遺伝子発現量に対する割合として求め、コンフリー抽出物を添加せずにUV照射も行わなかった場合(未処理)に対してコンフリー抽出物を添加せずにUV照射のみ行った場合(UVB照射)及びコンフリー抽出物を添加した後にUV照射を行った場合(UVB照射+コンフリー添加)のそれぞれの遺伝子発現比率を算出した。
【0040】
ALOX12B用のプライマーセット
Forward GCTGGAGACACACCTCATTGC(配列番号1)
Reverse CTGGACGGTGTATCGGGTATG(配列番号2)
GAPDH用のプライマーセット
Forward TGCACCACCAACTGCTTAGC(配列番号3)
Reverse TCTTCTGGGTGGCAGTGATG(配列番号4)
【0041】
試験結果を表1に示した。ALOX12Bの遺伝子発現量は、細胞にUVB照射することで低下した。しかし、あらかじめコンフリー抽出物を培地に対して0.015%添加して培養すると、UVB照射条件下においてALOX12B遺伝子発現は促進され、未処理条件と同程度の発現回復が見られた。
【0042】
【表1】
-:添加又は照射を行っていない、+:添加又は照射を行った。
【実施例0043】
実験例2 コンフリー含有製剤の連用によるCLEの形成促進
女性13名を対象に、処方例1で作製したローションを4週間連用させた。製剤の連用前後において、頬部から粘着テープを用いて角質層を採取した。採取した角質層を粘着テープから剥離し、スライドガラス上に播種した。風乾後、30μg/mLの濃度でナイルレッドを溶解した75%グリセロール溶液を用いて封入し、励起光470-490nm、観測光520nmの蛍光顕微鏡にて観察し、蛍光強度から角質細胞表面のCLEの量を計測した。
【0044】
連用前の角質細胞で観察された蛍光強度に対して、連用後では蛍光強度が2.9倍に増加した(表2)。この結果は、コンフリー抽出液を含む製剤を皮膚に塗布することにより、皮膚を構成するケラチノサイト中でALOX12B遺伝子の発現が促進され、高い12R-リポキシゲナーゼ活性を有するケラチノサイトより分化した角質細胞の表面に十分な量のCLEが形成されるようになったことを示している。
【0045】
【表2】
・連用前の角質細胞の蛍光強度を100とした。
【実施例0046】
実験例3 コンフリー含有製剤の連用による微絨毛様突起形成抑制
女性13名を対象に、処方例1で作製したローションを4週間連用させた。製剤の連用前後において、頬部から粘着テープを用いて角質層を採取した。採取した角質層をグルタルアルデヒド固定後、2%酸化オスミウム処理して、電顕観察試料とした。走査型電子顕微鏡にて角質細胞上の微絨毛様突起を観察し、画像を取得した。取得した画像から凹凸形状を検出し、解析領域中の凹凸形状の面積を微絨毛様突起の目立ちとして評価した。
【0047】
連用前の角質細胞で観察された微絨毛様突起の目立ちは、連用後では減少した(表3)。微絨毛様突起はCE構造の異常を示す指標であることから、この結果はコンフリー抽出液を含む製剤を使用することでCE構造の正常化が促進されたことを示している。
【0048】
【表3】
・連用前に観察された角質細胞上の凹凸形状の面積を100とした。
【実施例0049】
実験例4 コンフリー含有製剤の連用による皮膚明度の改善
女性13名を対象に、処方例1で作製したローションを4週間連用させた。製剤の連用前後において、分光測色計CM-2600d(コニカミノルタ)を用いて頬部の皮膚色を計測し、L値を皮膚明度として評価した。
【0050】
連用前の頬部に比べて連用後のL値は増加し、処方例1の連用により明るく透明感のある肌になった(表4)。
【0051】
【表4】
【0052】
この皮膚明度の改善は、コンフリー含有製剤の4週間の連用により皮膚を構成するケラチノサイト中でALOX12B遺伝子の発現が促進され、高い12R-リポキシゲナーゼ活性を有するケラチノサイトから分化した角質細胞の表面に十分な量のCLEが形成され、また微絨毛様突起の形成が抑制されCE形成が正常化したことによる角質細胞機能の改善に起因すると考えられた。加えて、処方例1~5の使用により、肌への刺激性は認められず、高い安全性を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本願発明は、コンフリー抽出物の使用により、12R-リポキシゲナーゼの産生を促進させる12R-リポキシゲナーゼ産生促進剤、角質細胞のコルネオサイトリピッドエンベロープ形成促進剤及び角質細胞の微絨毛様突起形成抑制剤を提供することができる。
【配列表】
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