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  • 特開-予作動式スプリンクラー設備 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039235
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】予作動式スプリンクラー設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 37/00 20060101AFI20240314BHJP
   A62C 35/68 20060101ALI20240314BHJP
   A62C 35/60 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A62C37/00
A62C35/68
A62C35/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143633
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】390010342
【氏名又は名称】エア・ウォーター防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀晃
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189CA10
2E189CE04
2E189CH03
2E189MB05
(57)【要約】
【課題】従来の予作動式のスプリンクラー設備においては、放水までの時間が長い。
【解決手段】防護区画内での火災を感知する感知器301と、感知器からの信号を受け取る制御装置302と、制御装置により開閉を制御されるバルブ105と、バルブを経由して水が供給される、防護区画内に設けられる閉鎖型スプリンクラーヘッド103とを備え、閉鎖型スプリンクラーヘッド103は感熱機構を有し、感熱機構が熱により破壊されて放水可能となり、火災時に感熱機構が熱により破壊されて閉鎖型スプリンクラーヘッドが放水可能となる前に、感知器301が火災を感知して制御装置302に信号を送るように感知器が防護区画内に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防護区画に設けられる予作動式スプリンクラー設備であって、
前記防護区画内での火災を感知する感知器と、
前記感知器からの信号を受け取る制御装置と、
前記制御装置により開閉を制御されるバルブと、
前記バルブを経由して水が供給される、前記防護区画内に設けられる閉鎖型スプリンクラーヘッドとを備え、
前記閉鎖型スプリンクラーヘッドは感熱機構を有し、前記感熱機構が熱により破壊されて放水可能となり、
火災時に前記感熱機構が熱により破壊されて前記閉鎖型スプリンクラーヘッドが放水可能となる前に、前記感知器が火災を感知して前記制御装置に信号を送るように前記感知器が前記防護区画内に配置される、予作動式スプリンクラー設備。
【請求項2】
前記閉鎖型スプリンクラーヘッドに接続される配管をさらに備え、前記配管内には常態で水が存在せずに負圧状態、加圧状態、または大気圧状態に保たれる、請求項1に記載の予作動式スプリンクラー設備。
【請求項3】
前記閉鎖型スプリンクラーヘッドに接続される配管をさらに備え、前記配管内には常態で水が存在して負圧状態、加圧状態、または大気圧状態に保たれる、請求項1に記載の予作動式スプリンクラー設備。
【請求項4】
前記感知器は煙を感知する、請求項1から3のいずれか1項に記載の予作動式スプリンクラー設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、予作動式スプリンクラー設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、予作動式スプリンクラー設備は、たとえば、特開2022-37198号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-37198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の予作動式のスプリンクラー設備においては、放水までの時間が長いという問題があった。予作動式のスプリンクラー設備は、感知器からの信号によって予作動制御盤が機能し、予作動式流水検知装置の電磁弁を起動すると同時に流水検知装置が開放する機構を有する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、予作動式のスプリンクラー設備においてスプリンクラーヘッドからの放水に時間がかかる理由を、鋭意検討した。その結果、閉鎖型のスプリンクラーヘッドの感熱機構が破壊されるまでに予作動式の装置を作動させることで放水までの時間を短くできることを見出した。
【0006】
閉鎖型スプリンクラーヘッドは感熱機構を有する。感熱によって、感熱機構部分が破壊されて放水口より放水する。閉鎖型スプリンクラーヘッドには標準型および側壁型がある。さらに標準型は高感度型、小区画型およびその他のものがある。
【0007】
閉鎖型スプリンクラーヘッドは、感熱体の種類により、可溶片型とグラスバルブ型がある。可溶片型は低融点合金により融着したものが感熱によって溶融して開放する機構を備えたものである。グラスバルブ型は、ガラス管の中にグリセリン等の化学薬品を封入したものが熱膨張することによりガラス管が破壊されて開放する機構を備えたものである。
【0008】
予作動式のスプリンクラー設備は、閉鎖型スプリンクラーヘッドに破損事故などが発生しても感知器が作動しないかぎり放水することはない。そのため、水損事故を防止する安全性の高い設備である。そして、感熱機構が破壊される前に予作動式の装置を作動させることで迅速な放水が可能となる。
【0009】
このような知見によりなされた防護区画に設けられる予作動式スプリンクラー設備は、防護区画内での火災を感知する感知器と、感知器からの信号を受け取る制御装置と、制御装置により開閉を制御されるバルブと、バルブを経由して水が供給される、防護区画内に設けられる閉鎖型スプリンクラーヘッドとを備える。閉鎖型スプリンクラーヘッドは感熱機構を有し、感熱機構が熱により破壊されて放水可能となる。火災時に感熱機構が熱により破壊されて閉鎖型スプリンクラーヘッドが放水可能となる前に、感知器が火災を感知して制御装置に信号を送るように感知器が防護区画内に配置される。
【0010】
このように構成された予作動式スプリンクラー装置においては、火災時に感熱機構が熱により破壊されて閉鎖型スプリンクラーヘッドが放水可能となる前に、感知器が火災を感知して制御装置に信号を送るように感知器が防護区画内に配置される。これにより閉鎖型スプリンクラーヘッドが放水可能となり、閉鎖型スクリンクラーヘッドに水が供給されると直ちに放水されるため、放水までの時間を短くすることができる。
【0011】
好ましくは、閉鎖型スプリンクラーヘッドに接続される配管をさらに備え、配管内には常態で水が存在せずに負圧状態、加圧状態、または大気圧状態に保たれる。
【0012】
この場合、配管内には常態で水が存在しないため、閉鎖型スクリンクラーヘッドが損傷したとしても水損の発生を防止できる。配管内が負圧であれば、配管内に火災時に迅速に水を提供することができる。配管内が加圧状態であれば、容易に配管内の空気の漏れを検出できる。配管内が大気圧であれば低コストで予作動式スプリンクラー装置を構成することができる。
【0013】
常態とは火災が発生していない状態をいう。負圧とは大気圧よりも低い圧力をいう。
好ましくは、閉鎖型スプリンクラーヘッドに接続される配管をさらに備え、配管内には常態で水が存在して負圧状態、加圧状態、または大気圧状態に保たれる。
【0014】
この場合、配管内には状態で水が存在するため、閉鎖型スプリンクラーヘッドが放水可能となれば直ちに放水を開始できる。配管内が負圧であれば、閉鎖型スプリンクラーヘッドの損傷時における水損を最小限とすることができる。
【0015】
好ましくは、感知器は煙を感知する。この場合、感知器が熱のみを感知する場合と比較して、早期に感知器は火災を感知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1に従った、予作動式スプリンクラー設備の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
(スプリンクラー設備の構成)
図1は、実施の形態1に従った予作動式スプリンクラー設備の模式図である。図1で示すように、乾式のスプリンクラー設備1は、建屋10に設けられる。建屋10は、下層階である第一区画11と、上層階である第二区画12とを有する。
【0018】
放水システム100は、一次配管101と、一次配管101に接続された二次配管102と、二次配管102に設けられた閉鎖型スプリンクラーヘッド103と、一次配管101と二次配管102との境界に設けられたバルブ105と一次配管101に水を送るための水ポンプ106とを有する。
【0019】
一次配管101には水が充填されている。この水は、水ポンプ106により加圧されている。水ポンプ106には消火水槽(図示せず)から水が供給される。建屋10の最上階の高架水槽から水ポンプ106に水が供給されてもよい。
【0020】
一次配管101は、水ポンプ106から建屋10の最上部まで垂直に立ち上がり、各階で分岐されている。この実施の形態では2階建ての建屋10を記載しているが、建屋10の階は2階に限定されない。
【0021】
一次配管101の水は、バルブ105で止められており、バルブ105が開くことで一次配管101の水が二次配管102へ送られる。バルブ105の開閉は、コンピュータにより構成される制御装置302により制御される。
【0022】
二次配管102はバルブ105に接続されている。二次配管102は第二区画12に配置されている。なお、この実施の形態ではバルブ105が第二区画12に配置されている例を示しているが、バルブ105が第一区画11に配置されていてもよい。
【0023】
二次配管102は第二区画12の天井に配置されている。二次配管102には複数の閉鎖型スプリンクラーヘッド103が設けられている。閉鎖型スプリンクラーヘッド103の数は、第二区画12の広さによって決定される。
【0024】
この実施の形態では、防護区画としての第二区画12に閉鎖型スプリンクラーヘッド103が設けられる例を示しているが、第一区画11に二次配管102および閉鎖型スプリンクラーヘッド103が配置されていてもよい。
【0025】
閉鎖型スプリンクラーヘッド103には、水を放水する孔が複数設けられている。閉鎖型スプリンクラーヘッド103は感熱機構(可溶金属片、または、化学薬品を封入したガラス管)を有する。常態では、水を放水する孔と、一次配管101との間は閉鎖型スプリンクラーヘッド103内で遮蔽されている。感熱機構が火災時の火炎により溶融または破壊すると遮断が開放される。バルブ105が開かれて一次配管101および二次配管102を経由して水が閉鎖型スプリンクラーヘッド103の孔から放水される。
【0026】
負圧システム200は、二次配管102に接続される負圧用配管201と、負圧用配管201内を負圧にする負圧ポンプ204とを有する。
【0027】
負圧ポンプ204は第一区画11に設けられて負圧を発生させる。この実施の形態では、水ポンプ106および負圧ポンプ204は同じ第一区画11に設置されているが、これらが互いに異なる区画に設けられてもよい。負圧ポンプ204は空気および水を吸引することができる。負圧ポンプ204が空気のみを吸引して水を吸引できない場合には、負圧用配管201に気水分離機を設けて負圧ポンプ204に水が流入しないようにする必要がある。
【0028】
負圧ポンプ204は定常状態であり負圧用配管201内を第1の真空度にする第1運転モードと、第1の真空度よりも高真空の第2の運転モードを有する。負圧ポンプ204以外に高真空用の追加の真空ポンプを設けて、定常状態では負圧ポンプのみを駆動させて第1の運転モードとして、第2の運転モードとするときには追加の真空ポンプを駆動させて高真空の第2の運転モードを実現してもよい。
【0029】
負圧ポンプ204に接続された負圧用配管201は負圧ポンプ204から建屋10の最上階まで垂直に立ち上がり、各階で分岐されている。各階において負圧用配管201が分岐して各部屋に負圧用配管201が張り巡らされている。
【0030】
検知システム300は、感知器301および制御装置302を有する。第二区画12内で火災が発生すると、その熱または煙を感知器301が検知する。制御装置302とバルブ105とが信号線311により接続されている。制御装置302と水ポンプ106とが信号線312により接続されている。制御装置302と負圧ポンプ204は信号線313により接続されている。
【0031】
感知器301は検定品であり、熱感知器、煙感知器、炎感知器、複合式感知器、多信号感知器がある。熱感知器は差動式、定温式、補償式、熱アナログ式のいずれであってもよい。炎感知器は赤外線式、紫外線式、赤外線紫外線併用式のいずれであってもよい。複合式感知器は、一つの感知器内に性能の異なる複数の感知要素を有するものである。多信号感知器は性能、種別、公称作動温度などの異なる2以上の信号を発するものである。
【0032】
流水検知装置108が二次配管102に設けられている。流水検知装置108は一次配管101に設けられていてもよい。流水検知装置108は信号線315により制御装置302に接続されている。流水検知装置108は、二次配管102内の水の流れを検知する。
【0033】
(予作動式のスプリンクラー設備1の動作)
このスプリンクラー設備1は、感知器301が火災を検知した後に感知器301からの信号を制御装置302が受信し、制御装置302が信号線311を経由してバルブ105を開く、いわゆる予作動式である。
【0034】
バルブ105が開くと二次配管102に水が充填される。この段階では閉鎖型スプリンクラーヘッド103の感熱機構が溶融していない可能性がある。しかしながら二次配管102に水が充填されているため、感熱機構の溶融とともに閉鎖型スプリンクラーヘッド103から水を放出することができる。そのため、早期の消火が可能となる。
【0035】
感知器301が火災を感知するタイミングと感熱機構が溶融するタイミングとを比較すると感知器301が火災を感知するタイミングが先で、感熱機構が溶融するタイミングが後である。この火災とは、感知器301のみを加熱するような火災ではなく、防護区画である第二区画12の床面付近で発生する火災をいう。
【0036】
すなわち、防護区画としての第二区画12に設けられる予作動式のスプリンクラー設備1であって、第二画内での火災を感知する感知器301と、感知器からの信号を受け取る制御装置302と、制御装置302により開閉を制御されるバルブ105と、バルブを経由して水が供給される、防護区画内に設けられる閉鎖型スプリンクラーヘッド103とを備え、閉鎖型スプリンクラーヘッド103は感熱機構を有し、感熱機構が熱により破壊されて放水可能となり、火災時に感熱機構が熱により破壊されて閉鎖型スプリンクラーヘッド103が放水可能となる前に、感知器301が火災を感知して制御装置302に信号を送るように感知器301が防護区画内に配置される。
【0037】
好ましくは、閉鎖型スプリンクラーヘッド103に接続される二次配管102をさらに備え、二次配管102内には常態で水が存在せずに負圧状態、加圧状態、または大気圧状態に保たれる。この場合、二次配管201内を所定の圧力に保つ手段が設けられる。
【0038】
好ましくは、二次配管102内には常態で水が存在して負圧状態、加圧状態、または大気圧状態に保たれる。この場合、二次配管201内を所定の圧力に保つ手段が設けられる。
【0039】
好ましくは、感知器301は煙を感知する。煙を感知する場合には早期の火災の感知が可能になる。
【0040】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1 スプリンクラー設備、10 建屋、11 第一区画、12 第二区画、100 放水システム、101 一次配管、102 二次配管、103 閉鎖型スプリンクラーヘッド、105 バルブ、106 水ポンプ、108 流水検知装置、200 負圧システム、201 負圧用配管、204 負圧ポンプ、300 検知システム、301 感知器、302 制御装置、311,312,313,315 信号線。
図1