(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039237
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ダクトの耐震架台、及び施工方法
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20240314BHJP
F16L 3/08 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
F24F13/02 F
F16L3/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143635
(22)【出願日】2022-09-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1)発表日:2022年3月1日 集会名:2021年度(第92回)日本建築学会関東支部研究発表会オンライン開催 アドレス:http://kanto.aij.or.jp/research 2)発表日:2022年6月22日 集会名:The Fourth European and Mediterranean Structural Engineering and Construction Conference(ISEC学会)(ドイツ:ライプツィヒ応用科学大学オンライン開催) アドレス:https://www.isec-society.org/EURO_MED_SEC_04/ 3)発表日:2022年9月6日 集会名:2022年度日本建築学会大会(北海道)学術講演会オンライン開催 アドレス:https://www.aij.or.jp/jpn/taikai2022/
(71)【出願人】
【識別番号】515285062
【氏名又は名称】株式会社アイデアン
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】坂爪 和人
【テーマコード(参考)】
3H023
3L080
【Fターム(参考)】
3H023AA05
3H023AB05
3H023AC09
3H023AD31
3H023AD55
3L080AA09
3L080AE02
(57)【要約】
【課題】耐震架台の施工性を向上させる。
【解決手段】ダクトを吊り下げ支持する耐震架台1は、ダクトの両側部に夫々離間して配置された一対の柱部材10、10と、ダクトの外面を包囲するダクト包囲部材20と、各柱部材とダクト包囲部材とを連結する連結板30と、を備える。各連結板は各柱部材に対して、各柱部材の長手方向に離間した2箇所に設けた第一締結孔10a、10aにおいて締結されており、各連結板はダクト包囲部材に対して、ダクト包囲部材の鉛直方向に離間した少なくとも2箇所に設けた第二締結孔20b、20bにおいて締結されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクトを吊り下げ支持すると共に該ダクトの横揺れを低減するダクトの耐震架台であって、
前記ダクトの両側部に夫々離間して配置された一対の柱部材と、
前記ダクトの外面を包囲するダクト包囲手段と、
前記各柱部材と前記ダクト包囲手段とを連結する連結手段と、を備え、
前記各連結手段は前記各柱部材に対して、前記各柱部材の長手方向に離間した2箇所に設けた第一締結部において締結されており、
前記ダクト包囲手段と前記各連結手段は、前記各第一締結部を中心とした前記柱部材と前記連結手段との回転変位を阻止するように構成されていることを特徴とするダクトの耐震架台。
【請求項2】
ダクトを吊り下げ支持すると共に該ダクトの横揺れを低減するダクトの耐震架台であって、
前記ダクトの両側部に夫々離間して配置された一対の柱部材と、
前記ダクトの外面を包囲するダクト包囲手段と、
前記各柱部材と前記ダクト包囲手段とを連結する連結手段と、を備え、
前記各連結手段は板状部材であり、
前記各連結手段は前記各柱部材に対して、該各柱部材の長手方向に離間した2箇所に設けた第一締結部において締結されており、
前記各連結手段は前記ダクト包囲手段に対して、該ダクト包囲手段の鉛直方向に離間した少なくとも2箇所に設けた第二締結部において締結されていることを特徴とするダクトの耐震架台。
【請求項3】
前記ダクト包囲手段は、前記ダクトの上部と下部に配置される水平材と、前記ダクトの両側部に配置される垂直材とを有することを特徴とする請求項2に記載のダクトの耐震架台。
【請求項4】
ダクトを吊り下げ支持すると共に該ダクトの横揺れを低減するダクトの耐震架台であって、
前記ダクトの両側部に夫々離間して配置された一対の柱部材と、
前記ダクトの外面を包囲するダクト包囲手段と、を備え、
前記ダクト包囲手段は、前記ダクトの上部及び下部に配置されて前記両柱部材間に跨がって架設される一対の水平材と、前記ダクトの両側部に配置されて、前記両水平材間を接続する一対の垂直材と、を備え、
前記各水平材の長手方向の両端部は前記各柱部材に対して、前記各柱部材の長手方向に離間した2箇所に設けた第一締結部において締結されており、
前記各垂直材は前記各水平材に対して剛接合されていることを特徴とするダクトの耐震架台。
【請求項5】
前記ダクト包囲手段は、分離及び結合自在な複数の分割体から構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のダクトの耐震架台。
【請求項6】
ダクトを吊り下げ支持すると共に該ダクトの横揺れを低減するダクトの耐震架台の施工方法であって、
前記ダクトの取り付け高さレベルに応じて長手方向に離間した2箇所に夫々第一締結部を備えた一対の柱部材を、前記ダクトの両側部から離間する位置に夫々設置する柱部材設置工程と、
前記ダクトの外面を包囲するダクト包囲手段を前記ダクトに装着する装着工程と、
前記ダクト包囲手段と前記各柱部材とを連結する連結手段に、前記ダクトと前記各柱部材との間隔に応じて、前記各柱部材の前記各第一締結部と締結される第一被締結部を形成する加工工程と、
前記各連結手段の前記第一被締結部を前記各柱部材の前記第一締結部に締結する第一締結工程と、
を含むことを特徴とするダクトの耐震架台の施工方法。
【請求項7】
ダクトを吊り下げ支持すると共に該ダクトの横揺れを低減するダクトの耐震架台の施工方法であって、
前記ダクトの取り付け高さレベルに応じて長手方向に離間した2箇所に夫々第一締結部を備えた一対の柱部材を、前記ダクトの両側部から離間する位置に夫々設置する柱部材設置工程と、
鉛直方向に離間した少なくとも2つの第二締結部を幅方向の各端部に備えたダクト包囲手段を前記ダクトに装着して該ダクトの外面を包囲する装着工程と、
前記第二締結部と締結される第二被締結部を備えると共に、前記ダクト包囲手段と前記各柱部材とを連結する板状部材からなる連結手段に、前記ダクトと前記各柱部材との間隔に応じて、前記各柱部材の前記各第一締結部と締結される第一被締結部を形成する加工工程と、
前記各連結手段の前記第一被締結部を前記各柱部材の前記第一締結部に締結する第一締結工程と、
前記各連結手段の前記第二被締結部を前記ダクト包囲手段の前記第二締結部と締結する第二締結工程と、
を含むことを特徴とするダクトの施工方法。
【請求項8】
ダクトの両側部に夫々離間して配置された一対の柱部材と、前記ダクトの外面を包囲するダクト包囲手段と、を備え、前記ダクトを吊り下げ支持すると共に該ダクトの横揺れを低減するダクトの耐震架台の施工方法であって、
前記ダクト包囲手段は、前記ダクトの上部及び下部に配置されて前記両柱部材間に跨がって架設される一対の水平材と、前記各水平材に対して剛接合されて前記両水平材間を接続すると共に、前記ダクトの両側部に配置される一対の垂直材と、を備えており、
前記ダクトの取り付け高さレベルに応じて長手方向に離間した2箇所に夫々第一締結部が形成された前記一対の柱部材を、前記ダクトの両側部から離間する位置に夫々設置する柱部材設置工程と、
前記ダクト包囲手段の前記各水平材に、前記ダクトと前記各柱部材との間隔に応じて、前記各柱部材の前記各第一締結部と締結される第一被締結部を夫々形成させる加工工程と、
前記ダクト包囲手段を前記ダクトに装着する装着工程と、
前記ダクト包囲手段の前記第一被締結部を前記各柱部材の前記第一締結部に締結する第一締結工程と、
を含むことを特徴とするダクトの耐震架台の施工方法。
【請求項9】
前記ダクト包囲手段は、分離及び結合自在な複数の分割体から構成されており、
前記装着工程においては、前記両分割体の間に前記ダクトを挟むと共に、前記両分割体を直接に、又は間接的に締結して一体化することを特徴とする請求項6乃至8の何れか一項に記載のダクトの耐震架台の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダクトの耐震架台及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダクトは空調、換気、又は排気のために建物内に設置される重要な建築設備である。板金から作製されるダクトには断熱材や吸音材が施されるため、ダクトの重量は例えば1mあたり25kg程度と比較的高重量になる。
ダクトの施工時には、天井等から吊り下げられたダクトが地震等の外力により損傷することを防止するために、ダクトの横揺れを抑制する耐震架台をダクトの長手方向に所定の支持間隔にて(例えば12mごとに)配置する。
特許文献1には、ダクトを支持するダクトサポートが記載されている。このダクトサポートは、支持対象である空調ダクトの幅寸法に相当する間隔で天井梁等から垂直に吊り下げられた一対の側面サポート材と、2つの側面サポート材の下部にダクトの高さ寸法に相当する間隔をおいて溶接された一対の上面サポート材及び下面サポート材と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
仮に、天井が平坦面である場合、側面サポート材を天井に対して自由に位置決めすることが可能である。従って、このような条件下では、特許文献1に記載の各側面サポート材をダクトの側面に密着させた上で、ダクトを複数の耐震架台によって支持することは容易である。
しかし、デッキプレートを用いたスラブ天井等のように、天井に凹凸がある場合は、側面サポート材を取り付け可能な位置に制限が生ずる。このため、側面サポート材をダクトの側面に密着させるためには、建築設計図面の確認、事前の現場調査による干渉物の確認、及び耐震架台ごとの設計図面の作成等が必要となる。上記作業は煩雑であり、労力、準備期間、及び製作コストの増大を招く。
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、耐震架台の施工性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、ダクトを吊り下げ支持すると共に該ダクトの横揺れを低減するダクトの耐震架台であって、前記ダクトの両側部に夫々離間して配置された一対の柱部材と、前記ダクトの外面を包囲するダクト包囲手段と、前記各柱部材と前記ダクト包囲手段とを連結する連結手段と、を備え、前記各連結手段は前記各柱部材に対して、前記各柱部材の長手方向に離間した2箇所に設けた第一締結部において締結されており、前記ダクト包囲手段と前記各連結手段は、前記各第一締結部を中心とした前記柱部材と前記連結手段との回転変位を阻止するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐震架台の施工性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る耐震架台によって支持されたダクトの一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係るダクトの耐震架台を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は斜視図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係るダクトの耐震架台の分解斜視図である。
【
図4】(a)~(c)は、柱部材の上端部の構成例を示す図である。
【
図5】ダクト包囲部材と連結板との他の接合例を示す耐震架台の正面図である。
【
図6】(a)、(b)は、耐震架台の施工手順の一例を説明するフローチャートである。
【
図7】本発明の第二の実施形態に係るダクトの耐震架台を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は斜視図である。
【
図8】本発明の第二の実施形態に係るダクトの耐震架台の分解斜視図である。
【
図9】(a)、(b)は、耐震架台の施工手順の一例を説明するフローチャートである。
【
図10】耐震架台の載荷試験を従来の耐震架台の一例に基づき説明する正面図である。
【
図11】本発明の第一の実施形態に係る耐震架台と従来の耐震架台に係る性能比較表及び荷重-変位グラフである。
【
図12】本発明の第一及び第二の実施形態に係る耐震架台に係る性能比較表及び荷重-変位グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。また、各実施形態に記載した構成例は、矛盾しない限り、他の実施形態に適用してもよい。
【0009】
〔第一の実施形態〕
図1は、本発明の一実施形態に係る耐震架台によって支持されたダクトの一例を示す斜視図である。図中、鉛直方向をZ方向、ダクト100の長手方向(気流が流れる方向)をY方向、Z方向とY方向に直交する方向をX方向とする。
ダクトの耐震架台1は、天井110や梁等からダクト100を吊り下げ支持すると共に、地震時等においてダクト100の振れ(図中X方向への横揺れ)を抑制、或いは低減する振れ止め手段である。図示するように、耐震架台1はダクト100の長手方向に所定の間隔毎に設置される。
以下、ダクト100の横断面形状(ZX平面における断面形状)が概略矩形状であるダクトの例に基づき本発明を説明するが、ダクト100は、矩形状以外の横断面形状を備えていてもよい。
【0010】
図2は、本発明の第一の実施形態に係るダクトの耐震架台を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は斜視図である。
図3は、本発明の第一の実施形態に係るダクトの耐震架台の分解斜視図である。
図2(b)と
図3においては天井と柱部材の一部の図示を省略している。また、
図3においては、ボルト及びナットの図示を省略している。
【0011】
耐震架台1は、ダクト100の両側部にダクト100から離間して配置されると共に、天井110から垂下する一対の柱部材10、10と、ダクト100の外面に添設されてダクト100の外周囲を包囲するダクト包囲部材(ダクト包囲手段)20と、柱部材10、10とダクト包囲部材20とを連結する一対の連結板(連結手段)30、30とを備える。
【0012】
連結板30、30は各柱部材10、10に対して、各柱部材10、10の長手方向(Z方向)に離間した2箇所に設けた第一締結孔(第一締結部)10a…、10a…に締結されている。連結板30は、第一締結孔10a、10aにおいてボルトB(Ba、ピン部材の一例)及びナットを用いて、柱部材10に締結されている。
本例において、連結板30、30とダクト包囲部材20は、第一締結孔10a…を中心とした連結板30、30及びダクト包囲部材20の回転変位(ZX平面内における回転変位)を阻止するように一体化されている。
【0013】
<柱部材>
柱部材10は、柱本体11と、柱本体11の上端面に溶接されたトッププレート12とを備える。
【0014】
<<柱本体>>
柱本体11は、天井等に固定されてダクト100を支持する手段であり、例えばリップ溝型鋼(C形鋼)から構成される。
図2に示すように柱本体11は、その下部においてその長手方向に離間した2箇所に貫通形成された第一締結孔10a、10aを備える。第一締結孔10a、10aは、ダクト100の高さ寸法に合わせて、且つ、ダクトの取り付け高さレベル(天井110からの距離)に応じた位置に配置され、ZX平面内に開口している。第一締結孔10a、10aは、ボルトBa、Ba及びナットを用いて、連結板30を柱本体11に締結する際に使用される。
柱本体11を構成する鋼材の種類(断面規格)と長手方向長は、ダクトの重量とダクトの取り付け高さレベルに応じて、必要な強度を満たすように決定される。
【0015】
<<トッププレート>>
図4(a)~(c)は、柱部材の上端部の構成例を示す図である。(a)~(c)には、夫々斜視図及び下面図を示している。
トッププレート12は柱部材10を天井に固定する手段である。トッププレート12は、少なくとも一部が柱本体11の外側面よりも外方に突出したつば状或いはフランジ状である。トッププレート12の面内の適所には複数の孔13、13…が貫通形成されている。例えば柱部材10は、孔13、13…に挿通されると共に、天井(スラブ)に打ち込まれるあと施工アンカー等を利用して天井に固定される。
【0016】
トッププレート12の下面には必要に応じて複数の補強リブ14(14A、14B、14C、14D)…が配置される。図示する補強リブ14、14…は、概略三角形の平板状であり、直交する2辺がトッププレート12の下面と柱本体11の側面(外周面)との双方に溶接されている。
以下、便宜上、C形鋼のウェブ側を前方、リップ側を後方、フランジ側を側方として説明する。
【0017】
図4(a)は、柱本体11の前方と後方(Y方向)に突出するトッププレート12を備えた柱部材10の例である。柱部材10は、柱本体11の前方と後方とに夫々配置されたフロントリブ14A及びバックリブ14Bを備えている。
図4(b)は、柱本体11の全周において柱本体11の外面から外方に突出したトッププレート12を備えた柱部材10の例である。柱部材10は、フロントリブ14A及びバックリブ14Bの他に、柱本体11の両側方に夫々配置されたサイドリブ14C、14Dを備えている。
図4(c)は、柱本体11の前方、後方、及び一側方において、柱本体11の外面から外方に突出したトッププレート12を備えた柱部材10の例である。トッププレート12は柱本体11に対してX方向に非対称形に配置されている。柱部材10は、フロントリブ14A及びバックリブ14Bの他に、柱本体11の一側方に配置されたサイドリブ14Cを備えている。
柱部材10が柱本体11の一側方のみにサイドリブ14Cを備える場合、一の耐震架台1中においてサイドリブ14C、14CをX方向に対称に配置する(YZ平面に対して対称に配置する)ことが望ましい。つまり、柱部材10、10同士が対向する側にサイドリブ14C、14Cを配置するか、又は、柱部材10、10同士が対向しない側にサイドリブ14C、14Cを配置する。一の耐震架台1中においてサイドリブ14C、14CをX方向に対称に配置することで、X方向への揺れ又は変形を耐震架台1全体としてバランス良く抑制できる。
【0018】
なお、トッププレート12の形状、及び、補強リブ14の位置や数量は、柱本体11を構成する鋼材の種類(断面規格)、ダクトの重量、及びダクトの取り付け高さレベル(柱本体11の長さ)に応じて、必要な耐力を得られるように設定される。
【0019】
<ダクト包囲部材>
図2に示すように、ダクト包囲部材20はZX平面視で概略環状である。ダクト包囲部材20の中央の孔部は、ダクト100が挿通されるダクト挿通部26である。ダクト100の横断面形状が概略矩形状の本例において、ダクト包囲部材20は矩形環状であり、概略矩形状のダクト挿通部26を有する。
【0020】
ダクト包囲部材20は、ダクトの上部と下部に夫々配置される水平材21、21と、ダクトの両側部に配置される垂直材22、22とを有する。ダクト包囲部材20は、水平材21、21と垂直材22、22が、ダクトの各外側面に添設されるか、又は密着するように、ダクトに対して装着される。ダクト包囲部材20は、少なくともダクトがダクト挿通部26内でZX平面に沿って移動しないように、ダクトを保持する。
水平材21と垂直材22には、例えばL形鋼を用いることができる。水平材21と垂直材22、22にL形鋼を用いる場合、ダクト包囲部材20は、各L形鋼の外角側の一側面がダクト100の外側面に密着するように配置され、各L型鋼の外角側の他の側面が連結板30と密着するように配置される。
【0021】
ダクト包囲部材20は、幅方向(
図2中X方向)の各端部であってそれぞれ鉛直方向に離間した合計4箇所に、ダクト包囲部材20を連結板30、30と締結する際に使用される第二締結孔(第二締結部)20b、20b…を備える。第二締結孔20b、20b…はダクト包囲部材20の4つの角部に配置されており、ZX平面内に開口している。
【0022】
<<分割体>>
ダクト包囲部材20は、分離及び結合自在な2つの分割体23、23から構成されている。本例においてダクト包囲部材20は、上下方向に二分割可能に構成されている。ダクト包囲部材20は各分割体23、23に分離及び結合自在であるため、ダクトへの装着が容易であると共に、ダクトが施工された後にダクト包囲部材20をダクトへ取り付けることが可能である。
【0023】
本例において分割体23、23は同一の構成を有しており、各分割体はダクト100の上部と下部の何れにも装着できる。
一の分割体23は、水平材21と、水平材21の長手方向の両端部から該水平材と直交する(交差する)方向に並行して伸びる垂直材片24、24と、各垂直材片24、24の自由側の端縁(水平材21に拘束されていない側の端縁)に配置された締結プレート25、25とを備える。
締結プレート25は、その面がXY平面に沿って延びており、垂直材片24の長手方向と交差(直交)している。締結プレート25の面内には孔25cが貫通形成されている。
【0024】
水平材21と垂直材片24、24とは剛接合されている。本例においては、水平材21の端部に垂直材片24の端縁が溶接されて、水平材21と垂直材片24、24とが一体化されている。なお、垂直材片の端部に水平材の端縁が溶接されてもよい。垂直材片24、24と締結プレート25、25とは溶接により一体化されている。締結プレート25…は、分割体23、23を締結し、一体化するために使用される。一方の分割体23の締結プレート25、25と、他方の分割体23の締結プレート25、25とは、両分割体23、23が一体化されたときに密着するように配置されていることが望ましい。
【0025】
2つの分割体23、23は、以下のように結合される。
各分割体23、23の各締結プレート25、25…に設けた孔25c、25c…同士を連通させた状態にて、該孔にボルトの軸部を挿通し、ボルトBcにナットを螺着することで両分割体23、23を締結、一体化して、ダクト包囲部材20とする。
本例において両分割体23、23を締結するボルトBcの軸部はZ方向に延びている。耐震架台の各部は、ボルトBcの軸部を中心とする回転平面(XY平面)が、耐震架台1の水平変位に基づく回転変形が起こる平面(ZX平面)と異なるように(本例では直交するように)構成されている。
【0026】
<<分割体の他の態様>>
なお、ダクト包囲部材20は、夫々の分割体23、23が互いに異なる形状となるように分割されていてもよい。ダクト包囲部材20は、3以上の分割体から構成されてもよい。ダクト包囲部材20は、上下方向以外の方向(例:水平方向)に分割されてもよい。
【0027】
<連結板>
連結板30、30は板状部材であり、本例においては概略矩形状である。連結板30の面内の適所には、第一締結孔10a、10a、及び第二締結孔20b、20bと連通する孔(第一被締結部)30a…、孔(第二被締結部)30b…が貫通形成されている。本例において、孔30a…、30b…は連結板30の各隅部に配置されている。
連結板30の厚さは、6mmのように設定される。
柱部材10と連結板30とは、第一締結孔10a、10aと孔30a、30aとを連通させた状態にて、各孔にボルトBa、Baの軸部を挿通し、ボルトにナットを螺着することで締結され、一体化される。
ダクト包囲部材20と連結板30とは、第二締結孔20b、20bと孔30b、30bとを連通させた状態にて、各孔にボルトBb、Bbの軸部を挿通し、ボルトにナットを螺着することで締結され、一体化される。
【0028】
孔30a、30aは、柱部材10、10とダクト100(より正確には柱本体11、11とダクト包囲部材20)との間隔に応じて、ダクト100の施工現場において連結板30に対して加工される。連結板30の孔30a、30aは、孔30b、30bを第二締結孔20b、20bと連通させたときに、第一締結孔10a、10aと連通する位置に開口される。
連結板30の幅方向長(X方向長)は、ダクト100と柱部材10との間隔に応じて、ダクト100の施工現場において
図3のカット部31が切断されることにより調整されてもよい。
【0029】
<<回転抑制の原理>>
柱本体11と連結板30(ダクト包囲部材20と連結板30)との締結にはボルトB及びナット(或いはその他のピン状の部材)が用いられる。ピン結合自体は、結合された部材同士がその軸部を中心として回転することを抑制するものではない。
しかし、本実施形態において、連結板30の孔30a…、30b…(被締結部)は、連結板30の面内において四角形状に配置されている。即ち一の連結板30に連結される柱本体11とダクト包囲部材20の各締結部(第一締結孔10a…、第二締結孔20b…)は四角形状に配置されている。
連結板30はZX平面に沿って配置されるため、ZX平面に沿って作用する応力に対して断面二次モーメントが大きくなる。連結板30は、各締結部を中心とする回転変形に対して大きな抵抗力を発揮する。連結板30は、柱本体11とダクト包囲部材20の各締結部の位置関係がZX平面内で変位することを阻止する。
連結板30は、結合された部材同士が締結部を中心として回転することを阻止する回転阻止手段として機能し、水平方向(X方向)への荷重が増大したときの耐震架台1の層間変形を抑制する(層間変形角を小さくする)。
本実施形態のように柱部材10とダクトとを離間させた場合であっても、ダクトをダクト包囲部材20にて包囲すると共に、ダクト包囲部材と柱部材とを連結板30により連結することで、ダクトの水平変位を抑制できる態様でダクトを支持できる。
【0030】
<他の接合例>
図5は、ダクト包囲部材と連結板との他の接合例を示す耐震架台の正面図である。
耐震架台1Bにおいて、ダクト包囲部材20と各連結板30、30とは、分割体23、23同士が連結する箇所(又は密着する箇所)の近傍に設定された補助締結部において、締結されている。
即ち、ダクト包囲部材20の垂直材片24は、その自由側の端部に連結板30を締結するための孔20d(補助締結部)を備える。連結板30は、垂直材片24の孔20dと連通する孔30d(補助被締結部)を備える。ダクト包囲部材20と連結板30、30とは、孔20dと孔30dに挿通されたボルトBd、及びナットを用いて締結されている。
理論上、ダクト包囲部材20と連結板30、30とを接合するボルトの本数を増加させても、連結板30、30の撓みの大きさに影響を与えない。しかし、補助締結部を設けることで分割体23、23同士の位置ずれを抑制できるため、補助締結部は柱部材10の全長が長くなる場合(層間変形角に対して水平変位が大きくなる場合)に効果的である。
【0031】
<寸法例>
耐震架台1による支持対象となるダクトの最小サイズは200×200[mm]である。なお、これよりも小さいダクトは、耐震架台による振れ止めが不要である。耐震架台1による支持対象となるダクトの最大重量は500[kg]である。
ダクトの吊り下げに必要な柱部材10の長手方向の全長は、2500[mm]までである。
連結板30に関して、第一締結孔10aと第二締結孔20bとの最小間隔は、柱本体11とダクト包囲部材20に使用される最小サイズの鋼材の大きさから40~65[mm]である。従って、第一締結孔10a、10a間(又は第二締結孔20b、20b間)の最小間隔は、250mmとなる。以上より、最小サイズの連結板30に矩形状に配置される孔30a…、30b…の縦横比率は、75:250≒1:3となる。
天井がデッキプレートの場合、連結板30に設定される幅方向長は150~400[mm]である。
連結板30の厚さは4.5~6.0[mm]に設定される。連結板30に許容される幅方向長の最大値は、連結板30を厚くすれば大きくできる。
上記寸法は一例であって、規格寸法の増減により上記以外の数値が採用される場合もありうる。
【0032】
<施工手順>
図6(a)、(b)は、耐震架台の施工手順の一例を説明するフローチャートである。以下、耐震架台を天井であるデッキプレートに取り付ける場合の例により説明する。
【0033】
<<ダクトの施工後に耐震架台を設置する場合>>
図6(a)は、ダクトの施工後に耐震架台を設置する場合の例である。ダクトは、新設されるダクトでも既設のダクトでもよい。
【0034】
ステップS1、S2、S6は、耐震架台の各部品を工場にて製作する工程である。ダクトが新設される場合、耐震架台を構成する各部品のサイズは、ダクトの施工図面に記載された各部の寸法に基づいて決定される。既設のダクトに耐震架台を取り付ける場合は、現場で計測されたダクトの外形寸法とダクトの取り付け高さレベルとに基づいて、耐震架台を構成する各部品のサイズが決定される。
その他の工程は、ダクトを設置する現場(又はダクトが設置された現場)にて実施される施工工程である。
【0035】
ステップS1において、ダクトの高さ寸法と天井からの距離とに応じた長手方向長を有する柱部材10を作製する。本工程においては、ダクトの取り付け高さレベル(ダクト包囲部材20又は連結板30の取り付け位置)に応じて、柱本体11に第一締結孔10a、10aを開口させる。
ステップS2においては、ダクトの外形寸法に合わせて、ダクト包囲部材20(分割体23、23)を作製する。分割体23には第二締結孔20b、20bを開口させる。必要に応じて分割体23に孔20d、20d(
図5)を開口させる。
【0036】
ステップS3において、ダクトを施工する。従来の施工方法に従って、吊りボルト等を用いてダクトを天井から吊り下げ支持する。なお、既設のダクトに耐震架台を取り付ける場合、本工程は省略される。
ステップS4において、ダクト包囲部材20をダクトに装着する。即ち、ダクトの上部と下部に夫々分割体23、23を配置し、両分割体23、23をボルト及びナットを用いて締結する。
ステップS5において、ダクトと柱部材10、10との間隔が、連結板30、30の許容する幅方向長の範囲内(例えば200mm~400mm程度)となるように、柱部材10、10をデッキプレートに取り付ける。デッキプレートのうち柱部材を取り付けやすい箇所を適宜選定して、デッキプレートに柱部材10、10を固定する。
【0037】
ステップS6においては、連結板30、30を作製する。連結板30、30の上下方向長はダクト包囲部材20の上下方向長に応じて決定される。また、連結板30、30の幅方向長は、ダクト包囲部材20と柱部材10とが有しうる間隔の最大値に基づいて決定される。本工程においては、少なくともダクト包囲部材20の各孔(第二締結孔20b、孔20d)と連通する孔(孔30b、孔30d)が形成される。
【0038】
ステップS7において、連結板30、30を加工する。即ち、孔30bを第二締結孔20bに連通させたときに、第一締結孔10aと連通する孔30aを連結板30に開口させる。また、必要に応じて連結板30の幅方向の端部(
図3のカット部31)を切断して、連結板30の幅方向長を調整する。
【0039】
ステップS8において、柱部材10、10とダクト包囲部材20とを、連結板30、30にて連結する。連結板30、30との連結には、ボルトBa、Bb(必要に応じてボルトBd)及びナットを用いる。
【0040】
以上示した各ステップは、必要に応じて適宜入れ替えて実施されてもよい。
また、ステップS1中の柱本体11に第一締結孔10a…開口させる作業は、ダクトの施工現場にて実施してもよい。
【0041】
<<ダクトの施工前に耐震架台を設置する場合>>
図6(b)は、ダクトの施工前に耐震架台の一部を設置する場合の例である。ダクトは新設されるダクトである。(a)のステップと同様のステップには同一のステップ番号を付して適宜その説明を簡略化する。
【0042】
ステップS1、S2、S6は、耐震架台の部品を工場にて製作する工程である。各工程において、耐震架台を構成する各部品のサイズは、ダクトの施工図面に基づいて決定される。
その他の工程は、ダクトを設置する現場にて実施される施工工程である。
【0043】
ステップS5において、柱部材10、10をデッキプレートに固定する。ダクトの施工図面からダクトの取り付け位置を割り出すと共に、ダクトと柱部材10、10との間隔が連結板30、30の許容幅の範囲内(例えば200mm~400mm程度)となるように、柱部材10、10をデッキプレートに取り付ける。デッキプレートのうち柱部材を取り付けやすい箇所を適宜選定して、デッキプレートに柱部材10、10を固定する。
ステップS3において、ダクトを施工する。
ステップS4において、ダクト包囲部材20をダクトに装着する。
ステップS6においては、連結板30、30を作製する。
ステップS7において、連結板30、30を加工する。
ステップS8において、柱部材10、10とダクト包囲部材20とを、連結板30、30にて連結する。
以上示した各ステップは、必要に応じて適宜入れ替えて実施されてもよい。
【0044】
<効果>
本実施形態においては、柱部材10、10とダクト包囲部材20との間に連結板30、30を配置するので、柱本体11とダクト100とを密着させる必要がない。また、ダクト100と柱部材10との間隔を耐震架台1ごとに決定できる。更にダクト100は柱部材10、10の一方寄りに配置されてもよい。このように本実施形態においては、現場の状況に応じて、ダクトに対する柱部材10の位置を任意に決定できる。
例えば、柱を取り付ける天井がデッキプレートや折板である場合には、柱部材を取り付け可能な箇所が制限される。このため、柱本体とダクトとを密着させる従来の構成では、事前の現場調査や厳密な寸法出しが行われた施工図面を準備する必要がある。
しかし、本実施形態に係る耐震架台1は連結板30、30を備えており、現場の個別事情に応じてダクトと柱部材10、10の間隔を比較的自由に決定できるので、耐震架台の施工性が向上する。また、耐震架台の工事に関して労力、準備期間、及び製作コストを低減できる。
また、ダクト100と柱部材10、10との位置関係を任意に設定できるので、ダクト100を、耐震架台1の設置前に施工することも、耐震架台1の一部(柱部材10)の設置後に施工することもできる。
本実施形態においては、ダクト包囲部材20を構成する分割体23、23同士の接合と、柱部材10、10とダクト包囲部材20とに対する連結板30、30の接合には、ボルト及びナットを用いることができ、特別な接合方法を要しない。
【0045】
<変形例>
連結板30は矩形状でなくてもよい。連結板30は、柱部材10とダクト包囲部材20とに締結されたときに、ダクトの横揺れに基づく耐震架台1の変形を抑制できればよい。また、第一締結孔10a…と第二締結孔20b…は、耐震架台1においてその変形を抑制できる位置関係となるように配置される。
連結板30の幅方向長は柱部材10とダクト包囲部材20とを連結するために必要且つ十分な長さを超えてもよい。即ち、柱部材10側に位置する連結板30の幅方向の端部は、柱本体11の外側面を超えて柱本体11の外方に(ダクトとは反対側に)突出していても構わない。
本例において第一締結孔10aと第二締結孔20bの高さレベルは同一であるが、各孔の高さレベルは異なっていてもよい。
本実施形態には、締結プレート25、25の孔25cに挿通されたボルトを用いて両分割体23、23を締結、一体化する構成を示した。しかし、分割体23、23は、直接に締結されていなくてもよい。即ち、分割体23、23は連結板30、30を介して間接的に一体化されてもよい。
【0046】
〔第二の実施形態〕
図7は、本発明の第二の実施形態に係るダクトの耐震架台を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は斜視図である。
図8は、本発明の第二の実施形態に係るダクトの耐震架台の分解斜視図である。
図7(b)と
図8においては天井と柱部材の一部の図示を省略している。また、
図8においては、ボルト及びナットの図示を省略している。
第一の実施形態と同一の部材には同一の符号を付して適宜その説明を省略する。
【0047】
<ダクト包囲部材>
耐震架台2においてダクト包囲部材40は、ダクトの上部及び下部に配置されて両柱部材10、10間に跨がって架設される一対の水平材41、41と、ダクトの両側部に配置されて、両水平材41、41間を接続する一対の垂直材42、42と、を備える。ダクト包囲部材40の中央の孔部は、ダクト100が挿通されるダクト挿通部46である。
本実施形態が第一の実施形態と異なる点は、ダクト包囲部材の水平材が垂直材を超えて、柱本体11に向けて幅方向(
図7中X方向)の外方に延在している点、及び連結板30(
図2)が省略されている点にある。また、本実施形態においては、水平材41、41を構成する各L形鋼の外角側の一側面がダクトの外側面に密着するように配置され、各L型鋼の外角側の他の側面が柱本体11、11の前面と密着するように配置される点も第一の実施形態とは異なる。
水平材41の長手方向の両端部には、第一締結孔10a、10aと連通する孔(第一被締結部)40a、40aが貫通形成されている。孔40a、40aは、ZX平面内に開口している。なお、柱本体11の第一締結孔10a、10aは、水平材41、41の接合位置に合わせて開口されている。
【0048】
ダクト包囲部材40のうち、垂直材42、42、及び、垂直材42、42間に位置する水平材41、41の部分(水平材41、41の長手方向の中間部)は、ダクトの外周囲に密着又は添設されるダクト包囲部(ダクト包囲手段)47である。ダクト包囲部47は、第一の実施形態に示したダクト包囲部材20(
図1参照)に相当する部分である。
【0049】
水平材41のうち、垂直材42を超えて柱部材10に向かって延在する部分は、ダクト包囲部47を柱部材10、10に連結する端部連結部48、48である。端部連結部48、48における孔40a、40aの開口位置は、ダクトと柱部材10との間隔に応じて調整される。また、端部連結部48、48の長さは、ダクトと柱部材10との間隔に応じて調整されうる。
【0050】
<<分割体>>
ダクト包囲部材40は、分離及び結合自在な2つの分割体43、43から構成されている。本例においてダクト包囲部材40は、上下方向に二分割可能に構成されている。本例において分割体43、43は同一の構成を有しており、各分割体はダクトの上部と下部の何れにも装着できる。
一の分割体43は、水平材41と、水平材41の長手方向の各端部寄りの適所から、該水平材41と直交する(交差する)方向に並行して伸びる垂直材片44、44と、各垂直材片44、44の自由側の端部(水平材41に拘束されていない側の端部)に配置された締結プレート45、45とを備える。締結プレート45の面内には孔45cが貫通形成されている。
分割体43、43は、孔45c、45c…同士を連通させた状態にて、該孔にボルトBc、Bcの軸部を挿通し、ボルトにナットを螺着することで一体化される。
水平材41と垂直材片44、44とは剛接合されている。本例においては、水平材41に垂直材片44の端縁が溶接されて、水平材41と垂直材片44、44とが一体化されている。
分割体43、43は、水平材21に対応する水平材41がその長手方向の両端部に端部連結部48、48を備えている点を除いて第一の実施形態と同様に構成されている。
【0051】
<<回転抑制の原理>>
柱本体11とダクト包囲部材40との締結にはボルト及びナット(或いはその他のピン状の部材)が用いられる。ピン結合自体は、結合された部材同士がその軸部を中心として回転することを抑制するものではない。
しかし、本実施形態においては、水平材41、41と垂直材42、42とが剛接合されているため、柱本体11とダクト包囲部材40とが締結される4つの締結部(ボルトBaが示されている部分)が平行四辺形状に位置変位することを、水平材41、41と垂直材42、42との剛接合部にて阻止する。
ダクト包囲部材40は、柱部材10、10が締結部を中心として回転することを阻止する回転阻止手段として機能し、水平方向(X方向)への荷重が増大したときの耐震架台2の層間変形を抑制する(層間変形角を小さくする)。
本実施形態においても柱部材とダクトとが離間しているが、本実施形態に係る耐震架台2においても、ダクトの水平変位を抑制できる態様でダクトを支持できる。
【0052】
<<施工手順>>
図9(a)、(b)は、耐震架台の施工手順の一例を説明するフローチャートである。第一の実施形態と同一の工程には同一のステップ番号を付して適宜その説明を省略する。
ステップS1、S2は、耐震架台の部品を工場にて製作する工程である。その他の工程は、ダクトを設置する現場にて実施される施工工程である。連結板が省略されている本実施形態においては、連結板に関わるステップS6の工程が省略される。
【0053】
図9(a)は、ダクトの施工後に耐震架台を設置する場合の例である。
ステップS1に続くステップS2においては、ダクトの外形寸法に合わせて、ダクト包囲部材40(分割体43、43)を作製する。端部連結部48の長さは、ダクト包囲部材20と柱部材10とが有しうる間隔の最大値に基づいて決定される。本工程において孔40aは開口されない。
【0054】
ステップS3においてダクトを施工する。
ダクト包囲部材40は水平材41、41の加工後にダクトに装着されるため、ステップS3に続いてステップS5が実行される。
ステップS5において柱部材10、10を取り付ける。
ステップS14においては、ダクト包囲部材40をダクトに装着する。
ステップS17において、ダクト包囲部材40(各分割体43、43)を加工する。即ち、ダクト包囲部材40をダクトに装着したときに、第一締結孔10a、10a連通する孔40a、40aを、水平材41、41の各端部に開口させる。また、必要に応じて水平材41、41の長手方向(
図8中X方向)の端部(カット部49、49)を切断して、水平材41、41の長手方向長を調整する。
ステップS18においては、ダクト包囲部材40と柱部材10、10とを連結する。即ち、ダクト包囲部材40を柱部材10、10に対してボルトBa及びナットを用いて固定する。
【0055】
図9(b)は、ダクトの施工前に耐震架台の一部を設置する場合の例である。
本例においては、ステップS3とステップS5とが入れ替えて実行される。
【0056】
<効果>
本例においても第一の実施形態と同様に、現場の状況に応じて柱部材の位置を任意に決定できる。また、ダクトを先に施工してもよいし、柱部材を先に施工してもよい。
ダクト包囲部材40を構成する分割体43、43同士の接合と、ダクト包囲部材40と柱部材10、10との接合には、ボルト及びナットを用いることができ、特別な接合方法を要しない。
本例においては連結板が省略されるので、低コスト化と更なる施工性の向上を図れる。
【0057】
<変形例>
水平材41の長手方向長は柱部材10とダクト包囲部47とを連結するために必要且つ十分な長さを超えてもよい。即ち、水平材41の長手方向の端部は、柱本体11の外側面を超えて柱本体11の外方に突出していても構わない。
ダクトは、柱部材10、10間の中央位置に配置されている必要はない。つまり、ダクトと一方の柱部材10との間隔が狭く、ダクトと他方の柱部材10との間隔が広くてもよい。ダクトと各柱部材10、10との間隔に応じて、孔40aの開口位置が決定される。
【0058】
〔試験例〕
図10は、耐震架台の載荷試験を従来の耐震架台の一例に基づき説明する正面図である。
載荷試験は、ダクトを模した錘200の長手方向(Y方向、紙面に垂直な方向)の両端部を試験体210、210である耐震架台によって支持し、油圧ジャッキを用いて錘200の長手方向の中間部に水平荷重F(図中矢印)を載荷することにより実施した。なお、錘200については、水平荷重Fの印加により試験体210、210に対して位置変位しないように各試験体に固定した。
【0059】
載荷荷重10[kN]時、層間変形角1/200時、1/100時、1/50時、1/25時に載荷を一時停止して試験体210、210を目視にて確認し、試験体のたわみを計測した。また、層間変形角1/25後は除荷をし、載荷終了とした。
本載荷試験における錘200の総重量は200kgであり、各試験体210、210が100kgを負担するようにした。各試験体がW800×H500[mm]のダクトを支持するものとして、ダクト挿通部26、46のサイズ(
図1、
図7)と、従来の耐震架台のガセットプレート314(
図10)の取り付け位置を調整した。
【0060】
水平方向の許容値は以下のように算出した。
「建築構造設計基準の資料(令和3年改定)」より、鉄骨造における層間変形角の制限値は1/100である。また、実際に12m間隔で耐震架台を設置した場合、耐震架台1つ当たりに作用する重量は、ダクト重量に耐震架台の自重を加えた約330kgである。これに、「建築設備設計基準平成30年版」より、水平震度1.5Gを掛けて500kgとする。重力加速度を掛けて荷重換算すると、
500[kg]×9.8[m/s^2]=4900[N]=4.9[kN]
となる。よって、荷重4.9[kN]時の層間変形角が1/100以下であれば、許容値を満たしていると判定することとした。
【0061】
鉛直方向の許容値は以下のように算出した。
「日本建築学会 鋼構造設計規準」より、たわみの制限値は有効梁長さに対して、1/300である。連結板の幅が200[mm]の場合、試験体の梁長さ(幅方向全長、X方向全長)は1210[mm]となるから、本実験におけるたわみの許容値は以下のように算出される。
1210[mm]×(1/300)≒4.03[mm]
【0062】
図10に示すように、比較例に用いた従来の耐震架台300は、夫々天井(載荷試験においては反力フレームの梁220)に固定される一対の柱部材310、310と、柱部材の下端部において柱部材310、310間に渡される水平材313と、水平材313と各柱部材310、310とを夫々接続するガセットプレート314、314とを備える。
柱部材310は、柱本体311と、柱本体311の上端縁に溶接されると共に柱本体311から前後方向に突出するトッププレート312とを備える。なお、柱部材310、310は、梁220に対してボルト及びナットを用いて固定した。
ガセットプレート314、314は、水平材313の長手方向の各端部と各柱本体311、311の下端部とにボルト315…及びナットを用いて締結される。
【0063】
図11は、本発明の第一の実施形態に係る耐震架台と従来の耐震架台に係る性能比較表及び荷重-変位グラフである。
本発明の第一の実施形態に対応する試験体「D-1500-200-100-00」の仕様は以下の通りである。なお、ダクト挿通部26のサイズはダクトのサイズと同じである。
柱本体:C-100×50×5×7.5
柱部材:1500mm(天井からダクト下面までの長さ)
ダクト包囲部材:L-65×65×6
ダクトサイズ:W800×H500[mm]
連結板:W200×H630×t6[mm](ボルト4点止め)
試験体の幅方向全長:1210[mm]
【0064】
従来の耐震架台に対応する試験体「D-1500-100-従来型」の仕様は以下の通りである。
柱本体:C-100×50×5×7.5
柱部材:1500mm(天井からダクト下面までの長さ)
水平材:C-100×50×5×7.5
ガセットプレート:W200×H200×t6[mm]
試験体の幅方向全長:1210[mm]
【0065】
図11に示すように、両者の初期剛性は概ね同値であるが、比較例である「D-1500-100-従来型」の剛性は約2[kN]において低下している。このため、層間変形角1/100時の耐力は、本発明の「D-1500-200-100-00」が大きくなった。本発明に係る耐震架台は、ダクト包囲部材と連結板があり構成部材が従来型よりも多いため、水平荷重が分担され剛性の低下が小さくなったのではないかと考えられる。本発明に係る耐震架台は従来の耐震架台に比べて耐力が優れ耐震性能が高いといえる。
なお、両者とも、水平方向と鉛直方向の許容値を満足した。
【0066】
図12は、本発明の第一及び第二の実施形態に係る耐震架台に係る性能比較表及び荷重-変位グラフである。
本発明の第一の実施形態に対応する試験体「D-2500-200-100-11」の仕様は以下の通りである。なお、ダクト挿通部26のサイズはダクトのサイズと同じである
柱本体:C-100×50×5×7.5
柱部材:2500mm(天井からダクト下面までの長さ)
ダクト包囲部材:L-65×65×6
ダクトサイズ:W800×H500[mm]
連結板:W200×H630×t6[mm](ボルト6点止め、
図5参照)
試験体の幅方向全長:1210[mm]
本発明の第二の実施形態に対応する試験体「D-2500-100-10-PL省略」の仕様は以下の通りである。なお、ダクト挿通部46のサイズはダクトのサイズと同じである
柱本体:C-100×50×5×7.5
柱部材:2500mm(天井からダクト下面までの長さ)
ダクト包囲部材:L-65×65×6
ダクトサイズ:W800×H500[mm]
試験体の幅方向全長:1210[mm]
【0067】
図12に示すように、両者とも、初期剛性、耐力ともに大きな差は見られなかった。「D-2500-100-10-PL省略」は、連結板を用いないために材料コストを削減でき、ボルト数も少なくなることで施工工程も簡略化される。「D-2500-100-10-PL省略」は、「D-2500-200-100-11」に比べると、低コスト化と、施工性の向上に有利である。
【0068】
また、たわみは「D-2500-100-10-PL省略」が「D-2500-200-100-11」よりも約3倍となった。
ここで、梁の両端部がピン支持されると共に、梁が等分布荷重を受けると仮定した場合のたわみの公式は次式で表される。
δ=5wL^4/384EI ・・・式(1)
但し、δ:たわみ[mm]、w:単位長さ当たりの荷重[N/mm]、L:梁長さ[mm]、E:ヤング係数[N/mm2]、I:断面二次モーメント[mm4]。
式(1)より、たわみは断面二次モーメントI[mm^4]に反比例する。従って、連結板を省略したことで有効面積の小さくなった「D-2500-100-10-PL省略」は断面二次モーメントが小さくなり、「D-2500-200-100-11」よりも大きなたわみが生じたと考えられる。
なお、両者とも、水平方向と鉛直方向の許容値を満足した。
【0069】
以上のように、第一及び第二の実施形態に係る各耐震架台は、必要な耐震性を具備し、且つ高い施工性を有する。
【0070】
〔本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ〕
<第一の実施態様>
本態様は、ダクト100を吊り下げ支持すると共にダクトの横揺れを低減するダクトの耐震架台1、2である。
耐震架台は、ダクトの両側部に夫々離間して配置された一対の柱部材10、10と、ダクトの外面を包囲するダクト包囲手段(ダクト包囲部材20、ダクト包囲部47)と、各柱部材とダクト包囲手段とを連結する連結手段(連結板30、端部連結部48)と、を備える。各連結手段は各柱部材に対して、各柱部材の長手方向に離間した2箇所に設けた第一締結部(第一締結孔10a、10a)において締結されており、ダクト包囲手段と各連結手段は、各第一締結部を中心とした柱部材と連結手段との回転変位を阻止するように構成されていることを特徴とする。
【0071】
本態様によれば、離間して配置されたダクトと柱部材とを連結手段によって連結するので、ダクトに対して柱部材の位置を自由に設定でき、施工性が向上する。
本態様に係る耐震架台全体としては第一締結部が四角形状に配置される。仮に、第一締結部と連結手段とがボルト及びナットを用いてピン接合されているならば、ダクトが横揺れしたときに4つの第一締結部が平行四辺形状に変形することを避けられない。本態様においては、ダクト包囲手段と連結手段の接合部分で、第一締結部が平行四辺形状に変形することを抑制するので、必要な耐震性を確保できる。
【0072】
<第二の実施態様>
本態様は、ダクト100を吊り下げ支持すると共にダクトの横揺れを低減するダクトの耐震架台1である。
耐震架台は、ダクトの両側部に夫々離間して配置された一対の柱部材10、10と、ダクトの外面を包囲するダクト包囲手段(ダクト包囲部材20)と、各柱部材とダクト包囲手段とを連結する連結手段(連結板30)と、を備える。
各連結手段は板状部材であり、各連結手段は各柱部材に対して、各柱部材の長手方向に離間した2箇所に設けた第一締結部(第一締結孔10a、10a)において締結されており、各連結手段はダクト包囲手段に対して、ダクト包囲手段の鉛直方向に離間した少なくとも2箇所に設けた第二締結部(第二締結孔20b、20b)において締結されていることを特徴とする。
【0073】
本態様によれば、離間して配置されたダクトと柱部材とを連結手段によって連結するので、ダクトに対して柱部材の位置を自由に設定でき、施工性が向上する。
本態様に係る耐震架台全体としては第一締結部が四角形状に配置される。仮に、第一締結部と連結手段とがボルト及びナットを用いてピン接合されているならば、ダクトが横揺れしたときに4つの第一締結部が平行四辺形状に変形することを避けられない。
本態様においては、板状部材からなる一の連結手段とダクト包囲手段とを少なくとも2つの第二締結部において締結する。板状部材からなる連結手段は、連結手段が延びる面に沿って作用する応力に対して十分に大きい断面二次モーメントによって抵抗する。本態様によれば、板状の連結手段によってダクトの横揺れを防止し、必要な耐震性を確保できる。
【0074】
<第三の実施態様>
本態様に係る耐震架台1において、ダクト包囲手段(ダクト包囲部材20)は、ダクト100の上部と下部に配置される水平材21、21と、ダクトの両側部に配置される垂直材22、22とを有することを特徴とする。
本態様は第二の実施態様と同様の効果を奏する。
【0075】
<第四の実施態様>
本態様は、ダクト100を吊り下げ支持すると共にダクトの横揺れを低減するダクトの耐震架台2である。
耐震架台は、ダクトの両側部に夫々離間して配置された一対の柱部材10、10と、ダクトの外面を包囲するダクト包囲手段(ダクト包囲部材20。特にダクト包囲部47)と、を備える。ダクト包囲手段は、ダクトの上部及び下部に配置されて両柱部材間に跨がって架設される一対の水平材41、41と、ダクトの両側部に配置されて、両水平材間を接続する一対の垂直材42、42と、を備える。各水平材の長手方向の両端部(端部連結部48、48)は各柱部材に対して、各柱部材の長手方向に離間した2箇所に設けた第一締結部において締結(第一締結孔10a、10a)されており、各垂直材は各水平材に対して剛接合されていることを特徴とする。
【0076】
本態様によれば、ダクト包囲手段を構成する水平材が、離間して配置されたダクトと柱部材とを連結するので、ダクトに対して柱部材の位置を自由に設定でき、施工性が向上する。
本態様に係る耐震架台全体としては第一締結部が四角形状に配置される。仮に、第一締結部と連結手段とがボルト及びナットを用いてピン接合されているならば、ダクトが横揺れしたときに4つの第一締結部が平行四辺形状に変形することを避けられない。本態様においては、両柱間に跨がる水平材に垂直材を剛接合しており、該剛接合部においてダクトの横揺れを防止し、必要な耐震性を確保する。
【0077】
<第五の実施態様>
本態様に係る耐震架台1、2において、ダクト包囲手段(ダクト包囲部材20、40)は、分離及び結合自在な複数の分割体(分割体23、23、分割体43、43)から構成されていることを特徴とする
本態様によれば、ダクト包囲手段のダクト100への装着が容易となる。
【0078】
<第六の実施態様>
本態様は、ダクト100を吊り下げ支持すると共にダクトの横揺れを低減するダクトの耐震架台1、2の施工方法である。
本施工方法は、ダクトの取り付け高さレベルに応じて長手方向に離間した2箇所に夫々第一締結部(第一締結孔10a、10a)を備えた一対の柱部材10、10を、ダクトの両側部から離間する位置に設置する柱部材設置工程(ステップS5)と、ダクトの外面を包囲するダクト包囲手段(ダクト包囲部材20、ダクト包囲部47を含むダクト包囲部材40)をダクトに装着する装着工程(ステップS4、S14)と、ダクト包囲手段と各柱部材とを連結する連結手段(連結板30、ダクト包囲部材40の端部連結部48)に、ダクトと各柱部材との間隔に応じて、各柱部材の各第一締結部と締結される第一被締結部(孔30a、40a)を形成する加工工程と、各連結手段の第一被締結部を各柱部材の第一締結部に締結する第一締結工程(ステップS8、S18)と、を含むことを特徴とする。
【0079】
本態様によれば、離間して配置されたダクトと柱部材とを連結手段によって連結するので、ダクトに対して柱部材の位置を自由に設定でき、施工性が向上する。更に、第一被締結部が柱部材とダクトとの位置関係に基づいてダクトの施工現場で加工されるので、耐震架台について厳密に寸法出しされた設計図面が不要となり、作業効率が向上する。
【0080】
<第七の実施態様>
本態様は、ダクト100を吊り下げ支持すると共にダクトの横揺れを低減するダクトの耐震架台1の施工方法である。
本施工方法は、ダクトの取り付け高さレベルに応じて長手方向に離間した2箇所に夫々第一締結部(第一締結孔10a、10a)を備えた一対の柱部材10、10を、ダクトの両側部から離間する位置に設置する柱部材設置工程(ステップS5)と、鉛直方向に離間した少なくとも2つの第二締結部(第二締結孔20b、20b)を幅方向の各端部に備えたダクト包囲手段(ダクト包囲部材20)をダクトに装着してダクトの外面を包囲する装着工程と、第二締結部と締結される第二被締結部(孔30b、30b)を備えると共に、ダクト包囲手段と各柱部材とを連結する板状部材からなる連結手段(連結板30)に、ダクトと各柱部材との間隔に応じて、各柱部材の各第一締結部と締結される第一被締結部(孔30a、30a)を形成する加工工程と、各連結手段の第一被締結部を各柱部材の第一締結部に締結する第一締結工程(ステップS8)と、各連結手段の第二被締結部をダクト包囲手段の第二締結部と締結する第二締結工程(ステップS8)と、を含むことを特徴とする。
【0081】
本態様によれば、離間して配置されたダクトと柱部材とを連結手段によって連結するので、ダクトに対して柱部材の位置を自由に設定でき、施工性が向上する。更に、第一被締結部が柱部材とダクトとの位置関係に基づいてダクトの施工現場で加工されるので、耐震架台について厳密に寸法出しされた設計図面が不要となり、作業効率が向上する。また、板状部材からなる連結手段は、連結手段が延びる面に沿って作用する応力に対して十分に大きい断面二次モーメントによって抵抗する。本態様によれば、ダクトの横揺れを防止し、必要な耐震性を確保できる。
【0082】
<第八の実施態様>
本態様は、ダクト100の両側部に夫々離間して配置された一対の柱部材10、10と、ダクトの外面を包囲するダクト包囲手段(ダクト包囲部材40)と、を備え、ダクトを吊り下げ支持すると共にダクトの横揺れを低減するダクトの耐震架台2の施工方法である。
本態様において、ダクト包囲手段は、ダクトの上部及び下部に配置されて両柱部材間に跨がって架設される一対の水平材41、41と、各水平材に対して剛接合されて両水平材間を接続すると共に、ダクトの両側部に配置される一対の垂直材42、42と、を備えている。
本施工方法は、ダクトの取り付け高さレベルに応じて長手方向に離間した2箇所に夫々第一締結部(第一締結孔10a、10a)が形成された一対の柱部材を、ダクトの両側部から離間する位置に設置する柱部材設置工程(ステップS5)と、ダクト包囲手段の各水平材に、ダクトと各柱部材との間隔に応じて、各柱部材の各第一締結部と締結される第一被締結部(孔40a)を形成する加工工程と、ダクト包囲手段をダクトに装着する装着工程(ステップS14)と、ダクト包囲手段の第一被締結部を各柱部材の第一締結部に締結する第一締結工程(ステップS18)と、を含むことを特徴とする。
【0083】
本態様によれば、ダクト包囲手段を構成する水平材が、離間して配置されたダクトと柱部材とを連結するので、ダクトに対して柱部材の位置を自由に設定でき、施工性が向上する。更に、第一被締結部が柱部材とダクトとの位置関係に基づいてダクトの施工現場で加工されるので、耐震架台について厳密に寸法出しされた設計図面が不要となり、作業効率が向上する。また、水平材と垂直材との剛接合部が、ダクトの横揺れを防止し、必要な耐震性を確保する。
【0084】
<第九の実施態様>
耐震架台1、2のダクト包囲手段(ダクト包囲部材20、40)は、分離及び結合自在な複数の分割体23、23、43、43から構成されている。
本態様に係る耐震架台1、2の施工方法の装着工程(ステップS4、S14)においては、両分割体の間にダクト100を挟むと共に、両分割体を直接に、又は間接的に締結して一体化することを特徴とする。
本態様によれば、ダクト包囲手段のダクト100への装着が容易となる。
【符号の説明】
【0085】
B…ボルト、1、1B、2…耐震架台、10…柱部材、10a…第一締結孔(第一締結部)、11…柱本体、12…トッププレート、13…孔、14…補強リブ、14A…フロントリブ、14B…バックリブ、14C、14D…サイドリブ、20…ダクト包囲部材(ダクト包囲手段)、20b…第二締結孔(第二締結部)、20d…孔(補助締結部)、21…水平材、22…垂直材、23…分割体、24…垂直材片、25…締結プレート、25c…孔、26…ダクト挿通部、30…連結板(連結手段)、30a…孔(第一被締結部)、30b…孔(第二被締結部)、30d…孔(補助被締結部)、31…カット部、40…ダクト包囲部材、40a…孔(第一被締結部)、41…水平材、42…垂直材、43…分割体、44…垂直材片、45…締結プレート、45c…孔、46…ダクト挿通部、47…ダクト包囲部(ダクト包囲手段)、48…端部連結部(連結手段)、49…カット部、100…ダクト、110…天井、200…錘、210…試験体、220…梁、300…耐震架台、310…柱部材、311…柱本体、312…トッププレート、313…水平材、314…ガセットプレート、315…ボルト