(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039238
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】水素生成システムおよび水素生成システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20240314BHJP
C25B 1/042 20210101ALI20240314BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20240314BHJP
C25B 9/67 20210101ALI20240314BHJP
C01B 3/02 20060101ALI20240314BHJP
C25B 15/021 20210101ALI20240314BHJP
C25B 15/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/042
C25B9/23
C25B9/67
C01B3/02 H
C25B15/021
C25B15/00 303
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143636
(22)【出願日】2022-09-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岩井 康
(72)【発明者】
【氏名】浦下 靖崇
(72)【発明者】
【氏名】松田 直彦
(72)【発明者】
【氏名】小阪 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】入江 弘毅
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC01
4K021BC05
4K021BC06
4K021CA08
4K021CA09
4K021CA12
4K021DB16
4K021DB40
4K021DB53
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】水素を生成する際の運用コストを増大させることなく、金属成分を含む水素極が損傷することを防止する。
【解決手段】金属成分を含む水素極11に水蒸気を供給して水蒸気電解により水素を生成する電解モジュール19と、生成された水素を貯蔵する水素貯蔵設備40と、水素極11に水蒸気を供給する水蒸気供給部20と、水素貯蔵設備40から水素極11に供給される水素の供給量と、水蒸気供給部20から水素極11に供給される水蒸気の供給量と、を調整する調整部50と、電解モジュール19を起動する際に、電解モジュール19が第1切替温度を上回ったことに応じて、加熱媒体供給部70から水素極11に加熱媒体が供給される加熱媒体供給状態を、水蒸気供給部20から水素極11に水蒸気が供給される水蒸気供給状態に切り替えるよう調整部50を制御する制御装置80と、を備える水素生成システム100を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素極と、酸素極と、前記水素極と前記酸素極との間に配置される電解質層と、を有する電解セルの集合体であり、水蒸気を前記水素極に供給して水蒸気電解により水素を生成する電解モジュールと、
前記水素極に前記水蒸気を供給する水蒸気供給部と、
前記水素極に前記水素を供給する水素供給部と、
前記酸素極に加熱媒体を供給する加熱媒体供給部と、
前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体を供給する加熱媒体系統と、
前記水素供給部から前記酸素極に前記水素を供給する水素系統と、を備える水素生成システム。
【請求項2】
前記水素供給部は、前記電解モジュールにより生成された前記水素を貯蔵し、前記水素極および前記酸素極へ前記水素を供給する請求項1に記載の水素生成システム。
【請求項3】
前記水素供給部から前記水素極に供給される前記水素の供給量と、前記水素供給部から前記酸素極に供給される前記水素の供給量と、前記水蒸気供給部から前記水素極に供給される前記水蒸気の供給量と、前記加熱媒体供給部から前記酸素極に供給される前記加熱媒体の供給量と、前記加熱媒体供給部から前記水素極に供給される前記加熱媒体の供給量とを調整する調整部を備える請求項1または請求項2に記載の水素生成システム。
【請求項4】
前記電解モジュールを起動する際に、前記調整部は、前記電解モジュールが第1切替温度を上回ったことに応じて、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給され前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給されない状態を、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給されず前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給される状態に切り替える請求項3に記載の水素生成システム。
【請求項5】
前記電解モジュールを起動する際に、前記調整部は、前記電解モジュールが前記第1切替温度より高い第2切替温度を上回ったことに応じて、前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給されない状態を、前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給される状態に切り替える請求項4に記載の水素生成システム。
【請求項6】
前記電解モジュールを起動する際に、前記調整部は、前記電解モジュールが第3切替温度を上回ったことに応じて、前記水素系統を介して前記酸素極に前記水素が供給されない状態を、前記水素系統を介して前記酸素極に前記水素が供給される状態に切り替える請求項5に記載の水素生成システム。
【請求項7】
前記電解モジュールを起動する際に、前記調整部は、前記電解モジュールが前記第3切替温度よりも高い第4切替温度を上回ったことに応じて、前記水蒸気供給部から前記水素極に供給する前記水蒸気の供給量を増加させる請求項6に記載の水素生成システム。
【請求項8】
前記電解モジュールを停止する際に、前記調整部は、前記電解モジュールが第5切替温度を下回ったことに応じて、前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給される状態を前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給されない状態に切り替える請求項5に記載の水素生成システム。
【請求項9】
前記電解モジュールを停止する際に、前記調整部は、前記電解モジュールが前記第5切替温度よりも低い第6切替温度を下回ったことに応じて、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給されず前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給される状態を、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給され前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給されない状態に切り替える請求項8に記載の水素生成システム。
【請求項10】
前記第1切替温度は、前記水素極における前記水蒸気の露点より高い温度である請求項4に記載の水素生成システム。
【請求項11】
前記第6切替温度は、前記水素極における前記水蒸気の露点より高い温度である請求項9に記載の水素生成システム。
【請求項12】
前記第2切替温度は、前記水素極に含まれる金属成分が酸化する温度よりも低い温度である請求項5に記載の水素生成システム。
【請求項13】
前記第5切替温度は、前記水素極に含まれる金属成分が酸化する温度よりも低い温度である請求項8に記載の水素生成システム。
【請求項14】
前記第4切替温度は、前記電解モジュールが前記水蒸気電解により前記水素を生成することが可能な温度よりも高い温度である請求項7に記載の水素生成システム。
【請求項15】
前記電解モジュールの加熱媒体排出系統に配置される水素濃度計及び水素処理設備を備える請求項1または請求項2に記載の水素生成システム。
【請求項16】
水素生成システムの制御方法であって、
前記水素生成システムは、
水素極と、酸素極と、前記水素極と前記酸素極との間に配置される電解質層と、を有し、水蒸気を前記水素極に供給して水蒸気電解により水素を生成する電解モジュールと、
前記水素極に前記水蒸気を供給する水蒸気供給部と、
前記水素極に前記水素を供給する水素供給部と、
前記酸素極に加熱媒体を供給する加熱媒体供給部と、
前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体を供給する加熱媒体系統と、
前記水素供給部から前記酸素極に前記水素を供給する水素系統と、
前記水素供給部から前記水素極に供給される前記水素の供給量と、前記水素供給部から前記酸素極に供給される前記水素の供給量と、前記水蒸気供給部から前記水素極に供給される前記水蒸気の供給量と、前記加熱媒体供給部から前記酸素極に供給される前記加熱媒体の供給量と、前記加熱媒体供給部から前記水素極に供給される前記加熱媒体の供給量とを調整する調整部と、を備え、
前記電解モジュールを起動する際に、前記電解モジュールが第1切替温度を上回ったことに応じて、前記加熱媒体供給部から前記水素極へ前記加熱媒体が供給され前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給されない状態を、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給されず前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給される状態に切り替えるよう前記調整部を制御する第1制御工程を備える水素生成システムの制御方法。
【請求項17】
前記電解モジュールを起動する際に、前記電解モジュールが前記第1切替温度よりも高い第2切替温度を上回ったことに応じて、前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給されない状態を、前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給される状態に切り替えるよう前記調整部を制御する第2制御工程を備える請求項16に記載の水素生成システムの制御方法。
【請求項18】
前記電解モジュールを起動する際に、前記電解モジュールが第3切替温度を上回ったことに応じて、前記水素系統を介して前記酸素極に前記水素が供給されない状態を、前記水素系統を介して前記酸素極に前記水素が供給される状態に切り替えるよう前記調整部を制御する第3制御工程を備える請求項17に記載の水素生成システムの制御方法。
【請求項19】
前記電解モジュールを起動する際に、前記電解モジュールが前記第3切替温度よりも高い第4切替温度を上回ったことに応じて、前記水蒸気供給部から前記水素極に供給する前記水蒸気の供給量を増加させるよう前記調整部を制御する第4制御工程を備える請求項18に記載の水素生成システムの制御方法。
【請求項20】
前記電解モジュールを停止する際に、前記電解モジュールが第5切替温度を下回ったことに応じて、前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給される状態を前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給されない状態に切り替えるよう前記調整部を制御する第5制御工程を備える請求項17に記載の水素生成システムの制御方法。
【請求項21】
前記電解モジュールを停止する際に、前記電解モジュールが前記第5切替温度よりも低い第6切替温度を下回ったことに応じて、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給されず前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給される状態を、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給され前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給されない状態に切り替えるよう前記調整部を制御する第6制御工程を備える請求項20に記載の水素生成システムの制御方法。
【請求項22】
前記電解モジュールの加熱媒体排出系統に配置される水素濃度計の計測値が予め設定された閾値濃度を上回ったことに応じて、前記加熱媒体排出系統に配置される水素処理設備により前記加熱媒体排出系統に含まれる前記水素を燃焼処理する請求項16に記載の水素生成システムの制御方法。
【請求項23】
前記電解モジュールの加熱媒体排出系統に配置される水素濃度計の計測値が予め設定された閾値濃度を上回ったことに応じて、前記電解モジュールに供給する電流量を減少または停止する請求項16に記載の水素生成システムの制御方法。
【請求項24】
前記電解モジュールの加熱媒体排出系統に配置される水素濃度計の計測値が予め設定された閾値濃度を上回ったことに応じて、前記電解モジュールに供給する前記加熱媒体の供給量を増加する請求項16に記載の水素生成システムの制御方法。
【請求項25】
前記閾値濃度を大気中の前記水素の爆発下限界濃度の1/4とする請求項22から請求項24のいずれか一項に記載の水素生成システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素生成システムおよび水素生成システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水蒸気電解により水素を製造する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1は、固体酸化物形電解セル(SOEC:Solid Oxide Electrolysis Cell)を備えた装置に関するものであり、SOECで生成した水素を用いて発電する燃料電池の反応熱を蓄熱装置に回収し、SOECへ供給される水蒸気を加熱することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SOECのセルスタックの水素極には電子伝導性を有する金属材料、例えばニッケル(Ni)が含まれており、400℃以上の高温では酸化雰囲気においてニッケルの多くが酸化し、酸化ニッケルとなり、体積膨張によってセルスタックが損傷してしまうおそれがある。400℃以上の高温で水素極が酸化されないようにするには、水素極を還元雰囲気に保つ必要があり、例えば水素極の系統を窒素ガスなどの不活性ガスで充填する方法が考えられるが、そのためには不活性ガス供給設備と製造のためのエネルギーが必要となり、水素を生成する際の運用コストが増大してしまう。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、水素を生成する際の運用コストを増大させることなく、水素極が損傷することを防止することができる水素生成システムおよび水素生成システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下の手段を採用する。
本開示に係る水素生成システムは、水素極と、酸素極と、前記水素極と前記酸素極との間に配置される電解質層と、を有する電解セルの集合体であり、水蒸気を前記水素極に供給して水蒸気電解により水素を生成する電解モジュールと、前記水素極に前記水蒸気を供給する水蒸気供給部と、前記水素極に前記水素を供給する水素供給部と、前記酸素極に加熱媒体を供給する加熱媒体供給部と、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体を供給する加熱媒体系統と、前記水素供給部から前記酸素極に前記水素を供給する水素系統と、を備える。
【0007】
本開示に係る水素生成システムの制御方法において、前記水素生成システムは、水素極と、酸素極と、前記水素極と前記酸素極との間に配置される電解質層と、を有し、水蒸気を前記水素極に供給して水蒸気電解により水素を生成する電解モジュールと、前記水素極に前記水蒸気を供給する水蒸気供給部と、前記水素極に前記水素を供給する水素供給部と、前記酸素極に加熱媒体を供給する加熱媒体供給部と、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体を供給する加熱媒体系統と、前記水素供給部から前記酸素極に前記水素を供給する水素系統と、前記水素供給部から前記水素極に供給される前記水素の供給量と、前記水素供給部から前記酸素極に供給される前記水素の供給量と、前記水蒸気供給部から前記水素極に供給される前記水蒸気の供給量と、前記加熱媒体供給部から前記酸素極に供給される前記加熱媒体の供給量と、前記加熱媒体供給部から前記水素極に供給される前記加熱媒体の供給量とを調整する調整部と、を備え、前記電解モジュールを起動する際に、前記電解モジュールが第1切替温度を上回ったことに応じて、前記加熱媒体供給部から前記水素極へ前記加熱媒体が供給され前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給されない状態を、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給されず前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給される状態に切り替えるよう前記調整部を制御する第1制御工程を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、水素生成システムの起動のための運用コストを増大させることなく、水素極が損傷することを防止することができる水素生成システムおよび水素生成システムの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る水素生成システムの概略構成を示す図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る円筒形の電解モジュールの一例を示す部分断面図である。
【
図3】水素生成システムの起動時の動作を示すフローチャートである。
【
図4】水素生成システムの起動時の動作を示すフローチャートである。
【
図5】電解モジュールの起動時の時間経過と電解セルの温度と基体管管内(水素極)入口のガス濃度との関係および起動時の電解セルの温度と各制御動作の実施のタイミングの例を示すグラフである。
【
図6】水素生成システムの停止時の動作を示すフローチャートである。
【
図7】電解モジュールの停止時の時間経過と電解セル温度、基体管管内(水素極)入口ガス濃度との関係および停止時の電解セルの温度と各制御動作の実施のタイミングの例を示すグラフである。
【
図8】本開示の第2実施形態に係る水素生成システムの概略構成を示す図である。
【
図9】本開示の第3実施形態に係る水素生成システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1実施形態〕
以下、本開示の第1実施形態に係る(水素生成システム)100について、
図1を参照して説明する。
図1は、本開示の第1実施形態に係る水素生成システム100の概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の水素生成システム100は、電解モジュール19と、電力供給部18と、水蒸気供給部20と、水素分離設備30と、水素貯蔵設備(水素供給部)40と、調整部50と、空気供給部(加熱媒体供給部)70と、制御装置80と、を備える。尚、本開示では水素貯蔵設備(水素供給部)を備えたシステムを示しているが、水素貯蔵設備(水素供給部)40は水素パイプラインであっても良く、パイプラインから水素を取り出して本システムに供給し、また生成した水素が直接水素パイプラインへ供給されてもよい。
【0011】
固体酸化物形電解セル(以下、電解セルという)10は、水蒸気供給部20から供給される水蒸気を水素極11に供給して水蒸気電解により水素および酸素を生成する電解モジュール19を構成する要素であり、水素極11と、酸素極12と、水素極11と酸素極12との間に配置される電解質層13と、を有する。電解モジュール19は、電解セル10の集合体である。水蒸気電解は電力を発生する燃料電池の逆反応であり、電解セル10は固体酸化物形燃料電池セル(SOFC)とほぼ同様な構成及び材料を使用することができる。
【0012】
図1は電解モジュール19と、電解セル10と、水素極11と、酸素極12と、電解質層13との関係を模式的に示したものである。固体酸化物形電解モジュール19(以下、電解モジュール19と呼ぶ)としては、例えば、円筒形状で多孔質材料からなる管体に水素極11を配置し、水素極11の上に電解質層13を配置し、電解質層13の上に酸素極12を配置した円筒形セルスタックを用いることができる。また、電解モジュール19は運転温度を計測する温度センサ17を有する。
【0013】
図2は、本実施形態に係る円筒形の電解モジュール19の一例を示す部分断面図である。電解モジュール19は、一例として円筒形状の基体管14と、基体管14の外周面の複数箇所に形成されている。隣り合う電解モジュール19の間には、インターコネクタ15が形成されている。電解モジュール19は、水素極11と電解質層13と酸素極12とを基体管14の表面に積層して形成されている。
【0014】
基体管14の外周面に形成された複数の電解モジュール19の内、基体管14の軸方向において最も端の一端に形成された電解モジュール19の酸素極12に、インターコネクタ15を介して電気的に接続されたリード膜16を備え、最も端の他端に形成された電解モジュール19の水素極11に電気的に接続されたリード膜16を備える。なお、以降の説明において、「水素極11に媒体(空気、水蒸気、水素等)を供給する」とは、基体管14の内側の空間に媒体を流通させることで、基体管14の細孔に媒体を拡散させて基体管14の外周面に形成される水素極11に媒体を供給することをいう。
【0015】
基体管14は、多孔質材料からなり、例えば、CaO安定化ZrO2(CSZ)、CSZと酸化ニッケル(NiO)との混合物(CSZ+NiO)、又はY2O3安定化ZrO2(YSZ)、又はMgAl2O4などを主成分とされる。この基体管14は、電解モジュール19とインターコネクタ15とリード膜16とを支持すると共に、基体管14の内周面に供給される水蒸気を基体管14の細孔を介して基体管14の外周面に形成される水素極11に拡散させるものである。
【0016】
水素極11は、金属材料(例えばNi等)とジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で構成され、例えば、Ni/YSZが用いられる。酸素極12は、例えば、LaSrMnO3系酸化物、又はLaCoO3系酸化物で構成される。電解質層13として、ガスを通しにくい気密性と、高温で高い酸素イオン導電性とを備えるYSZが主として用いられる。
【0017】
インターコネクタ15は、例えば、SrTiO3系などのM1-xLxTiO3(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で表される導電性ペロブスカイト型酸化物から構成される。インターコネクタ15は、水蒸気と空気(酸化性ガス)とが混合しないように緻密な膜となっている。
【0018】
また、インターコネクタ15は、酸化雰囲気と還元雰囲気との両雰囲気下で安定した耐久性と電気導電性を備える。このインターコネクタ15は、隣り合う電解モジュール19において、一方の電解モジュール19の酸素極12と他方の電解モジュール19の水素極11とを電気的に接続し、隣り合う電解モジュール19同士を直列に接続するものである。
【0019】
リード膜16は、電子伝導性を備え、Ni/YSZ等のNiとジルコニア系電解質材料との複合材やSrTiO3系などのM1-xLxTiO3(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で構成されている。リード膜16は、インターコネクタ15により直列に接続される複数の電解モジュール19に直流電力を供給するものである。
【0020】
リード膜16を介して、水素極11と酸素極12との間に外部から電力を供給すると、水素極11に供給された高温の水蒸気の一部が電子を受けて水素と酸素イオンに分離され水素を生成する。分離された酸素イオンは電解質層13の内部を酸素極12へ移動し、電子を放出して酸素が生成される。
【0021】
温度センサ17は、電解モジュール19の温度(電解セル10自体の温度、あるいは電解セル10が配置される空間の雰囲気温度)を検出するセンサである。温度センサ17が検出した電解モジュール19の温度は、制御装置80に伝達される。
【0022】
電力供給部18は、電解モジュール19に水蒸気電解を行うための電力を供給する装置である。電力供給部18から電解モジュール19への電力供給状態は、制御装置80により制御される。
【0023】
水蒸気供給部20は、水蒸気を生成し、電解モジュール19に供給する装置である。水蒸気は、水蒸気供給管21により電解モジュール19の水素極11に供給される。水素極11に供給される水素極入口ガス温度は、例えば、400℃以上である。
【0024】
水素分離設備30は、電解モジュール19の水素極11で生成された水素と水蒸気との混合ガスから水素を分離する設備である。水素供給弁31を開状態とする際に、水素極11で生成された水素が水素排出管33を介して水素分離設備30に供給される。水素分離設備30で分離された水素は、水素昇圧機32により、水素貯蔵設備40へ供給される。水素分離設備30は、例えば水素排出管33から供給される水素と水蒸気の混合ガスを冷却し、混合ガスに含まれる水蒸気を凝縮させて回収水として回収する。
【0025】
水素貯蔵設備40は、電解モジュール19により生成された水素を貯蔵し、水素供給管41を介して、水素供給先へ水素を供給する設備である。また、水素貯蔵設備40は、水素供給管42および水蒸気供給管21を介して、水素極11に水素を供給することができる。また、水素貯蔵設備40は、水素供給管(水素系統)43を介して、電解モジュール19の酸素極12に水素を供給することができる。水素貯蔵設備40から水素極11に供給される水素は、水素極11を所望の温度に維持するため、望ましくは水素供給管42を流通する過程で加熱されて水蒸気供給管21に供給されるのが良い。
【0026】
調整部50は、水蒸気供給部20から供給される水蒸気の供給量と、水素貯蔵設備40から水素極11に供給される水素の供給量と、水素貯蔵設備40から酸素極12に供給される水素の供給量と、空気供給部70から酸素極12に供給される空気の供給量と、空気供給部70から水素極11に供給される空気の供給量とを調整する装置である。
【0027】
調整部50は、水蒸気供給管21に配置される水蒸気調整弁51と、水素供給管42に配置される水素調整弁52と、水素供給管42の下流側の水蒸気供給管21に近接した位置に配置される水素調整弁(または仕切弁)53と、空気供給管72に配置される空気調整弁54と、空気排出管73に配置される水素極通気ガスの空気側排出量調整弁55と、水素供給弁56と、空気調整弁57と、を有する。
【0028】
水素調整弁53は、水素極に水蒸気は供給するが、水素は供給しない場合に閉状態にする弁である。水素調整弁53を閉状態にすることにより、水素極に水蒸気は供給するが、水素は供給しない場合に、水蒸気が水素供給管42に侵入することを防止することができる。
【0029】
水素供給弁56は、水素供給管43を介して、水素貯蔵設備40から空気供給管74を介して酸素極12に供給される水素の供給量を調整する弁である。空気供給管74に供給された水素は、電解モジュール19の酸素極12側に供給される。電解モジュール19の酸素極12および基体管14の酸素極12側に供給された水素は、触媒作用により燃焼し、電解モジュール19の温度を上昇させる。
【0030】
図1に示す水素生成システム100は、水素供給弁56を開状態にすることにより、水素貯蔵設備40に貯蔵される水素を酸素極12および基体管14の酸素極12側に供給するものであるが、他の態様であってもよい。例えば、水素あるいは他の燃料ガス(メタンガス等)を供給する燃料供給部(図示略)を設け、燃料供給部から電解モジュール19の酸素極12側に燃料ガスを供給し、触媒作用により燃焼させるようにしてもよい。
【0031】
空気供給部70は、高温(例えば、400℃未満)に加熱した空気を酸素極12および水素極11に供給する装置である。空気供給部70から酸素極12および水素極11に供給される空気の供給量は、空気調整弁57により調整される。空気供給部70から水素極11に供給される空気の供給量は、空気調整弁54により調整される。
【0032】
制御装置80は、水素生成システム100を制御する装置である。制御装置80は、制御プログラムを記憶する記憶部(図示略)とプログラムを実行する演算部(図示略)とを有し、記憶部から読み出したプログラムを演算部で実行することにより、水素生成システム100を制御する各種の動作を実行する。
【0033】
次に、本実施形態の制御装置80が電解モジュール19の起動時に実行する制御動作について説明する。
図3および
図4は、水素生成システム100の起動時の制御動作を示すフローチャートである。
図5は、電解モジュール19の起動時の電解モジュール19の温度と基体管14管内入口(水素極11)のガス濃度との関係および起動時の電解モジュール19の温度と各制御動作の実施のタイミングの例を示すグラフである。
【0034】
ステップS101で、制御装置80は、基体管14管内(水素極11)と酸素極12への空気の供給を開始するよう制御する。制御装置80は、空気調整弁54と空気側排出量調整弁55とを開状態とし、水蒸気調整弁51と水素調整弁52と水素調整弁(または仕切弁)53を閉状態とするよう調整部50を制御する。また、制御装置80は、空気調整弁57を開状態とし、水素供給弁31と水素供給弁56を閉状態とするよう制御する。
【0035】
空気供給部70から酸素極12に供給される空気は、酸素極12を加熱し、電解モジュール19全体及び基体管14を加熱して外部に排出される。空気供給管(加熱媒体供給系統)72は、空気供給部70から水素極11に空気を供給する系統である。空気供給部70から空気供給管72を介して基体管14管内に供給される空気は、基体管14を加熱して水素極11を含む電解モジュール19全体を加熱し、空気排出管73を介して外部に排出される。
【0036】
ステップS102で、制御装置80は、温度センサ17が検出する電解モジュール19の温度TaがTemp1(第1切替温度)を上回るかどうかを判定し、温度TaがTemp1を上回ったことに応じて、ステップS103へ処理を進める。Temp1は、水蒸気が内部でドレン化しないように、水素極11における水蒸気の露点より高い温度に設定される。Temp1は、例えば、150℃以上かつ200℃以下の温度である。後述するTemp2は、Temp1よりも高い温度に設定する。
【0037】
図5に示すように、時刻t0に水素生成システム100の起動を開始すると電解モジュール19の温度が漸次上昇する。電解モジュール19の温度がTemp1に到達した時刻を時刻t1とする。
図5に示すように、水素生成システム100の起動が開始されてから時刻t1に至るまでは、基体管14管内の入口ガス濃度は、空気が100%のまま維持される。
【0038】
ステップS103で、制御装置80は、空気供給部70から基体管14管内(水素極11)への空気の供給を停止するよう、空気調整弁54を開状態から閉操作を開始する。
続いてステップS104で、制御装置80は、水蒸気供給部20から水素極11への水蒸気の供給を開始するよう、水蒸気調整弁51を閉状態から開操作を開始する。
【0039】
以上のように、制御装置80は、水素生成システム100を起動する際に、電解モジュール19の温度TaがTemp1を上回ると、基体管14管内へ空気供給部70から空気が供給されて水蒸気供給部20から基体管14管内に水蒸気は供給されない状態(加熱空気供給状態)から、基体管14管内へ空気は供給されず水蒸気供給部20から水蒸気が供給される状態(水蒸気供給状態)に移行して、水素極11側の酸素パージを完了させるよう調整部50を制御する(第2制御工程)。
【0040】
ステップS105で、制御装置80は、温度センサ17が検出する電解モジュール19の温度TaがTemp2(第2切替温度)を上回るかどうかを判定し、温度TaがTemp2を上回ると、ステップS107へ処理を進める。Temp2は、水素極11に含まれる金属成分が酸化する温度よりも低い温度である。Temp2は、例えば、350℃以上かつ400℃以下の温度である。Temp2は、水素極11に含まれる金属成分が水蒸気と反応して酸化する速度が著しく上昇する温度よりも低く設定される。
【0041】
図5に示すように、時刻t1で電解モジュール19への水蒸気の供給が開始されると、酸素極12側の空気と基体管14管内の高温水蒸気により電解モジュール19の温度が漸次上昇する。電解モジュール19の温度がTemp2に到達した時刻を時刻t2とする。
図5に示すように、時刻t1を経過して水蒸気の供給を開始して水素極11の入口の空気中の酸素濃度を0%まで低下させ、水蒸気の濃度を100%に上昇させる。その後、時刻t2に至るまで、基体管14管内(水素極11)入口のガス濃度は、水蒸気が100%のまま維持される。
【0042】
ステップS106で、制御装置80は、水素貯蔵設備40から基体管14管内(水素極11)への水素の供給を開始して、基体管14管内入口の水素濃度が所定の値になるよう、水素調整弁52および水素調整弁(または仕切弁)53を閉状態から開操作を開始する。
【0043】
続いてステップS107で、制御装置80は、水蒸気供給部20から基体管14管内(水素極11)への水蒸気の供給を減少させ、基体管14管内入口の水蒸気濃度が所定の値になるよう、水蒸気調整弁51を開状態から閉操作を実施する。
【0044】
以上のように、制御装置80は、水素生成システム100を起動する際に、電解モジュール19の温度TaがTemp2を上回ると、水蒸気供給状態から、還元性ガスである水素を混合した状態に切り替えるよう調整部50を制御する(第3制御工程)。水蒸気供給状態から還元性ガスである水素を混合した状態に切り替えることで、水素極11が還元状態に維持されるため、水蒸気に含まれる酸素による水素極の水蒸気酸化が防止される。
【0045】
ステップS108で、制御装置80は、温度センサ17が検出する電解モジュール19の温度TaがTemp3を上回るかどうかを判定し、温度TaがTemp3を上回ると、ステップS109へ処理を進める。Temp3は、例えば、400℃以上かつ500℃以下の温度である。ここで、電解モジュール19の温度TaがTemp3に到達した時刻を時刻t3とする。
【0046】
ステップS109で、制御装置80は、水素貯蔵設備40から酸素極12への水素の供給を開始するよう、水素供給弁56を閉状態から開状態に切り替える。電解モジュール19の酸素極12に供給された水素は、酸素極12の触媒作用により燃焼し、電解モジュール19の酸素極12側の温度を上昇させる。
【0047】
ステップS110で、制御装置80は、温度センサ17が検出する電解モジュール19の温度TaがTemp4を上回るかどうかを判定し、温度TaがTemp4を上回ると、ステップS111へ処理を進める。Temp4は、電解モジュール19が水蒸気電解により水素を生成することが可能な温度よりも高い温度であり、例えば、600℃以上かつ700℃以下の温度である。ここで、電解モジュール19の温度TaがTemp4に到達した時刻を時刻t4とする。
【0048】
ステップS111で、制御装置80は、水蒸気供給部20から水素極11への水蒸気供給量を電解開始条件に合致させるように増加させる。制御装置80は、水蒸気調整弁51の弁開度を調整すると共に、基体管14管内(水素極11)の入口水素濃度を電解開始条件に合致させるよう、水素貯蔵設備40から水素極11への水素供給量を制御する水素調整弁52の開度を調整する。
【0049】
ステップS112で、制御装置80は、電解モジュール19の温度TaがTemp5を上回ること、と基体管14管内(水素極11)の入口水素濃度と供給水蒸気量が電解開始条件に合致しているかどうか、と電力供給を開始できる準備が整っているかを判定し、すべての条件を満たすと、ステップS113へ処理を進める。
【0050】
ステップS113で、制御装置80は、電力供給部18から電解モジュール19への電力供給を開始し、電流量を漸増させるよう電力供給部18を制御する。電力供給部18から電力が供給される電解モジュール19は、水蒸気電解により水素および酸素の生成を開始する。ステップS113で、電解モジュール19への電力供給を開始した時刻を時刻t5とする。時刻t5以降、水蒸気調整弁51の弁開度を調整して水素極11への水蒸気供給量を制御すると共に、水素調整弁52の開度を調整して基体管14管内(水素極11)の入口水素濃度を制御する。
【0051】
ステップS114で、制御装置80は、温度センサ17が検出する電解モジュール19の温度TaがTemp6を上回るかどうか、または電解モジュール19に供給される電流量が所定の値を上回るかどうか、を判定し、いずれかの条件を満たすと、ステップS115へ処理を進める。Temp6は、例えば、650℃以上かつ750℃以下の温度である
。ここで、判定条件が成立した時刻を時刻t6とする。
【0052】
その後、ステップS116で、電解モジュール19に供給される電流量が定格値に到達したかどうかを判定し、YESと判定されればその時点で起動完了となり、電解モジュール19の定格運転状態となる。ここで、定格電流に到達した時刻を時刻t7とする。なお、電流量が定格値に到達する前に制御装置80は、水素極11への水蒸気供給量と基体管14管内(水素極11)の入口水素濃度が定格条件となるように、水蒸気調整弁51と水素調整弁52を制御する。ここで、水蒸気調整弁51と水素調整弁52の開度を電流量の関数で制御しても良い。
【0053】
次に、本実施形態の制御装置80が電解モジュール19の停止時に実行する動作について説明する。
図6は、水素生成システムの停止時の動作を示すフローチャートである。
図7は、電解モジュール19の停止時の経過時間と基体管14管内(水素極11)入口のガス濃度との関係および電解モジュール19の温度と各制御動作の実施のタイミングの例を示すグラフである。
【0054】
ステップS201で、制御装置80は、電力供給部18から電解モジュール19への電力供給停止に向け、電流を低減するよう電力供給部18を制御する。
【0055】
ステップS202で、制御装置80は、電流が停止したかどうかを判定し、電流がゼロになってからステップS203へ処理を進める。
【0056】
ステップS203で、制御装置80は、水素貯蔵設備40から基体管14管内(水素極11)への水素の供給量の調整を開始して、基体管14管内入口が還元雰囲気となるよう、水素濃度を所定の値にするべく、水素調整弁52の操作を開始する。
続いてステップS204で、制御装置80は、水蒸気供給部20から基体管14管内(水素極11)への水蒸気の供給を減少させ、基体管14管内入口の水蒸気濃度が所定の値になるよう、水蒸気調整弁51の閉操作を実施する。
【0057】
ステップS205で、制御装置80は、温度センサ17が検出する電解モジュール19の温度TaがTemp10(第5切替温度)を下回るかどうかを判定し、温度TaがTemp10を下回ったことに応じて、ステップS206へ処理を進める。Temp10は、例えば、350℃以上かつ400℃以下の温度である。Temp10は、水素極11に含まれる金属成分が水蒸気と反応して酸化する温度よりも低く設定される。
【0058】
図7に示すように、時刻t8で電解モジュール19の停止動作を開始し、電解電流がゼロになる時刻をt9とする。時刻t9から、水素調整弁52の開度を調整して基体管14管内(水素極11)の入口ガスを還元雰囲気に調整開始し、水蒸気供給部20から基体管14管内(水素極11)への水蒸気の供給を減少させ、基体管14管内入口の水蒸気濃度が所定の値になるよう、水蒸気調整弁51の閉操作を実施する。
【0059】
基体管14管内入口の水蒸気濃度が所定の値になり、還元雰囲気に調整完了した時刻を時刻t10とする。時刻t8から時刻t9の期間において電解電流が漸減し、t9以降電解電流が流れないため、電解電流のジュール熱による発熱が減少、消滅し、電解モジュール19の温度Taが漸次低下する。電解モジュール19の温度TaがTemp10となった時刻を時刻t11とする(
図7参照)。
【0060】
ステップS206で、制御装置80は、水素貯蔵設備40から水素極11への水素の供給を減少させて停止するよう、水素調整弁52および水素調整弁(または仕切弁)53を開状態から閉状態に切り替える。
続いてステップS207で、制御装置80は、水蒸気供給部20から水素極11への水蒸気の供給を増加させるよう、水蒸気調整弁51を開操作する。
【0061】
以上のように、制御装置80は、電解モジュール19を停止する際に、電解モジュール19の温度TaがTemp10を下回ったことに応じて、水素貯蔵設備40から水素極11へ水素が供給され水蒸気供給部20から水素極11に水蒸気が還元雰囲気を保つ範囲で供給されている状態(水素供給状態)を、水素貯蔵設備40から水素極11へ水素が供給されず水蒸気供給部20から水素極11に水蒸気が供給される状態(水蒸気供給状態)に切り替えるよう調整部50を制御する(第5制御工程)。
【0062】
図7に示すように、時刻t11の後、水素極11の入口の水素の濃度が低下し、それに伴って水素極11の入口の水蒸気の濃度が上昇し、水素の濃度が0%かつ水蒸気の濃度が100%となる。基体管14管内(水素極11)と酸素極12を流れるガスにより電解モジュール19は冷却され、温度Taが漸次低下し、Temp11となった時刻をt12とする(
図7参照)。
【0063】
ステップS208で、制御装置80は、温度センサ17が検出する電解モジュール19の温度TaがTemp11(第6切替温度)を下回るかどうかを判定し、温度TaがTemp11を下回ったことに応じて、ステップS209へ処理を進める。Temp11は、水素極11における水蒸気の露点より高い温度である。Temp11は、例えば、150℃以上かつ200℃以下の温度である。
【0064】
ステップS209で、制御装置80は、空気供給部70から水素極11への空気の供給を開始するよう、空気側排出量調整弁55を閉状態から開状態に、水素供給弁31を開状態から閉状態に切り替え後、空気調整弁54を閉状態から開状態に切り替える。
ステップS210で、制御装置80は、水蒸気供給部20から水素極11への水蒸気の供給を停止するよう、水蒸気調整弁51を開状態から閉状態に切り替える。
【0065】
以上のように、制御装置80は、電解モジュール19を停止する際に、電解モジュール19の温度TaがTemp11を下回ったことに応じて、空気供給部70から水素極11へ空気が供給されず水蒸気供給部20から水素極11に水蒸気が供給される状態(水蒸気供給状態)を、空気供給部70から水素極11へ空気が供給され水蒸気供給部20から水素極11に水蒸気が供給されない状態(加熱媒体供給状態)に切り替えるよう調整部50を制御する(第6制御工程)。
【0066】
図7に示すように、時刻t12の後、水素極11の入口の水蒸気の濃度が低下し、水素極11の入口の空気の濃度が上昇し、水蒸気の濃度が大気湿度程度まで低下し空気濃度100%となる。系内の水蒸気よりも供給空気の温度が低いため、電解モジュール19の温度Taが漸次低下する。し、温度TaがTemp11となる時刻t13とする(
図7参照)。
【0067】
ステップS211で、制御装置80は、温度センサ17が検出する電解モジュール19の温度TaがTemp12を下回るかどうかを判定し、温度TaがTemp12を下回ったことに応じて、ステップS212へ処理を進める。Temp12は、例えば、50℃以下の温度である。
【0068】
ステップS212で、制御装置80は、水素極11と酸素極12への空気の供給を停止するよう調整部50を制御する。制御装置80は、空気調整弁54と空気側排出量調整弁55とを閉状態とするよう制御する。また、制御装置80は、空気調整弁57を閉状態とするよう制御する。以上により、水素生成システム100が停止した状態となる。
【0069】
以上で説明した本実施形態の水素生成システム100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の水素生成システム100によれば、電解モジュール19が、水蒸気供給部20から水素極11に供給される水蒸気を電解することにより水素が生成され、水素貯蔵設備40に貯蔵される。電解モジュール19を動作させる際には、電解モジュール19を水蒸気電解させるために十分な温度まで高める必要がある。しかし電解モジュール19の昇温過程で、水素極11に水蒸気を供給しながら通電せず、水蒸気電解しないまま温度を上昇させていくと、水蒸気(水分子)に含まれる酸素が、水素極11に含まれる金属成分を水蒸気酸化させるようになり、温度が高まるほどその傾向が強くなる。
【0070】
そこで先ず、空気供給部70から水素極11に空気を供給することにより、電解モジュール19を第1切替温度(Temp1)以下の温度まで空気で昇温し、電解モジュール19が第1切替温度(Temp1)を上回ったところで、空気供給状態を、水蒸気供給状態に切り替えるよう調整部50を制御する。第1切替温度を上回った温度で切り替えることで、供給した水蒸気の電解モジュール内でのドレン化を防止できるため水素極11や電解モジュールの金属部の腐食が防止される。
【0071】
次いで水素極11に水素を供給する。電解モジュール19の温度が第2切替温度(Temp2)を上回ったところで、水蒸気酸化を防止するために、制御装置80が、水蒸気供給状態から、還元性ガスである水素を混合した状態に切り替えるよう調整部50を制御する。水蒸気供給状態から水素を混合した状態に切り替えることで、水素極11が還元雰囲気におかれるため、水蒸気に含まれる酸素による水素極の水蒸気酸化が防止される。
【0072】
したがって、水蒸気供給状態から還元用水素を混合した状態に切り替えない場合に比べ、金属成分を含む水素極11が損傷することを防止することができる。また、水素極11の酸化を防止するために用いる水素は、電解モジュール19により生成された水素を貯蔵する水素貯蔵設備40から水素極11に供給され、供給された水素は水素分離設備で再び回収される。
【0073】
そのため、水素極11の酸化を防止するために窒素ガス等を供給する設備を別途設けた場合に比べ、水素を生成する際の設備コスト及び運用コストを低減できる。また、水素の混合時に水素極11の通気ガス流路の空気を水蒸気に置換することで酸素が存在しないため、安全性を確保することができる。
【0074】
本実施形態の水素生成システム100によれば、電解モジュール19がTemp10を下回ったことに応じて、水素貯蔵設備40から水素極11に水素が供給される状態が水素極11に水素が供給されず水蒸気供給部20から水素極11に水蒸気が供給される状態に切り替えられる。水素極11に空気を供給するのに先立って水素極11の水素が水蒸気に置換されるため、空気と水素とが混合することによる異常燃焼等の発生を適切に防止することができる。
【0075】
本実施形態の水素生成システム100によれば、電解モジュール19がTemp10よりも低いTemp11を下回ったことに応じて、空気供給部70から水素極11に空気が供給されず水蒸気供給部20から水素極11に水蒸気が供給される状態が、空気供給部70から水素極11に空気が供給され水蒸気供給部20から水素極11に水蒸気が供給されない状態に切り替えられる。そのため、Temp11以上の温度で水素極11の水蒸気を空気に置換する場合に比べ、水素極11が酸化しにくい状態となり、水素極11が損傷することを防止することができる。
【0076】
本実施形態の水素生成システム100によれば、Temp2およびTemp10が水素極11に含まれる金属成分が酸化する温度よりも低いため、水素極11が酸化して損傷することを確実に防止することができる。
【0077】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態に係る水素生成システム100Aについて説明する。本実施形態の水素生成システム100Aは、第1実施形態の水素生成システム100の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとする。
【0078】
図8に示すように、本実施形態の水素生成システム100Aは、水素排出管33から水素供給管42に水素を分岐させる分岐管34と、分岐管34に配置される再循環ブロワ44を備える点が第1実施形態の水素生成システム100と異なる。
【0079】
本実施形態の水素生成システム100Aの起動時の動作は、第1実施形態の水素生成システム100の起動時の動作に対して、
図3のステップS106の動作が異なる。第1実施形態のステップS106で、制御装置80は、水素貯蔵設備40から水素極11への水素の供給を開始するよう、水素調整弁52を開操作して水素調整弁(または仕切弁)53を閉状態から開状態に切り替える。また、水素調整弁52の開状態は、ステップS106の後も維持される。
【0080】
一方、本実施形態の制御装置80は、水素貯蔵設備40から水素極11への水素の供給を開始するよう、水素調整弁52および水素調整弁53を閉状態から開状態に切り替えた後、水素貯蔵設備40から所望量の水素が水素供給管42に供給されたことに応じて、水素調整弁52を開状態から閉状態に切り替える。
【0081】
本実施形態の制御装置80は、水素貯蔵設備40から水素極11への水素の供給を開始したことに応じて、再循環ブロワ44を動作させ、水素極11から水素排出管33に供給された水素を、分岐管34を介して水素供給管42へ導く。水素供給管42へ導かれた水素は、再び水素極11に供給される。このように、再循環ブロワ44を動作させることにより、水素は、水素排出管33、分岐管34、水素供給管42、水蒸気供給管21、水素極11の順に循環する。またこの時、水素極11に供給される水素量は、再循環ブロワ44の流量制御により実施される。
【0082】
本実施形態の水素生成システム100Aによれば、電解開始前に基体管14管内(水素極11)を通気させるガスの流量・組成を変化させる必要がない時は、水素極11から水素排出管33に供給された水素全量を再び水素極11へ導くため、水素分離設備30および水素貯蔵設備40を通過させる必要がない。そのため、水素分離設備30において水素を冷却して水蒸気を除去するための動力と、水素貯蔵設備40において水素を加熱して水素供給管42へ供給するための動力が不要となる。よって、水素生成システム100Aの起動時に必要な動力を減少させることができる。
【0083】
〔第3実施形態〕
次に、本開示の第3実施形態に係る水素生成システム100Bについて説明する。本実施形態の水素生成システム100Bは、第2実施形態の水素生成システム100Aの変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第2実施形態と同様であるものとする。本実施形態の水素生成システム100Bは、
図9に示すように、電解モジュール19の加熱媒体排出系統に水素処理設備75および水素濃度計76を備える点が、第2実施形態の水素生成システム100Aと異なる。
【0084】
電解モジュール19では、水素極11で生成されあるいは水素極11に供給される水素は、酸素極12側の加熱媒体(空気)とは直接混合しない構造となっているが、水素極11側から酸素極12側に水素がリークする可能性がある。そこで、本実施形態では、水素極11側から酸素極12側にリークした水素が酸素極12から外部に排出される空気に混入して外気へ放出されないように処理をするものである。
【0085】
水素処理設備75は、混入した水素を酸化させて無害な水に化学変化させる設備である。水素処理設備75の例としては、水素燃焼触媒を内部に有する、触媒反応により、酸素極12および空気排出管73から排出される空気に混入した水素を燃焼させる設備が挙げられる。
【0086】
水素濃度計76は、酸素極12および空気排出管73から排出される空気に混入した水素の濃度を検出する装置である。制御装置80は、水素濃度計76が検出する水素の濃度の計測値が所定の閾値濃度を上回る場合に、水素処理設備75が排出された空気に混入する水素を酸化させて無害な水に化学変化させる。
【0087】
なお、
図9には、水素処理設備75と水素濃度計76の双方を設けた例を示したが、水素処理設備75を設けずに水素濃度計76のみを設けるようにしてもよい。この場合、制御装置80は、水素濃度計76が検出する水素の濃度が所定の閾値濃度を上回る場合に、外部に排出される空気中の水素濃度を低下させるように空気供給部70が酸素極12に供給する空気の流量を増加させる。
【0088】
また、制御装置80は、水素濃度計76が検出する水素の濃度の計測値が所定の閾値濃度を上回る場合に、外部に排出される空気中の水素濃度を低下させるように電解モジュールへ供給する電流を減じてもよい。以上の説明において、所定の閾値濃度は、例えば、大気中の水素の爆発下限界濃度の1/4とするのが好ましい。
【0089】
さらに、制御装置80は、水素濃度計76が検出する水素の濃度の計測値が、空気供給部70が酸素極12に供給する空気の流量を増加させることでは安全な濃度まで低下させられないほどの高濃度であると判断した場合に、水素生成システム100Bの動作を停止させるように制御してもよい。
【0090】
また、本実施形態において、制御装置80は、温度センサ17が検出する電解モジュール19の温度Taが所定の閾値温度を上回る場合に、水素の漏れや電解モジュール19の破損などの異常が発生したと判断し、水素生成システム100Bの動作を停止させるように制御してもよい。また、温度センサ17に替えて、水素処理設備75の入口や水素処理設備75の内部に他の温度センサを設け、この温度センサが検出する温度が所定の閾値温度を上回る場合に、水素の漏れや電解モジュール19の破損などの異常が発生したと判断し、水素生成システム100Bの動作を停止させるように制御してもよい。
【0091】
以上説明した各実施形態に記載の水素生成システム(1)は例えば以下のように把握される。
本開示の第1態様に係る水素生成システム(100)は、水素極(11)と、酸素極(12)と、前記水素極と前記酸素極との間に配置される電解質層(13)と、を有し、水蒸気を前記水素極に供給して水蒸気電解により水素を生成する電解モジュール(19)と、前記水素極に前記水蒸気を供給する水蒸気供給部(20)と、前記水素極に前記水素を供給する水素供給部(40)と、前記酸素極に加熱媒体を供給する加熱媒体供給部(70)と、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体を供給する加熱媒体系統(72)と、前記水素供給部から前記酸素極に前記水素を供給する水素系統(43)と、を備える。
【0092】
本開示の第1態様に係る水素生成システム(100)によれば、電解モジュールが、水蒸気供給部から供給される水蒸気を水蒸気電解することにより水素が生成される。電解モジュールを起動する際には、電解モジュールが水蒸気を水蒸気電解するために十分な温度まで高めるため、水蒸気供給部から水素極に水蒸気が供給される。電解モジュールの温度が高まるにつれて水素極に含まれる金属成分が水蒸気(水分子)に含まれる酸素により水蒸気酸化されるようになり、温度が高まるほどその傾向が強くなる。本開示の第1態様に係る水素生成システムによれば、水素供給部から水素極に水素を供給することにより水素極に存在する水蒸気が水素により置換されるため、水蒸気に含まれる酸素による水素極の酸化を防止することができる。
【0093】
本開示の第2態様に係る水素生成システムは、第1態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記水素供給部は、前記電解モジュールにより生成された前記水素を貯蔵し、前記水素極および前記酸素極へ前記水素を供給する。
【0094】
本開示の第2態様に係る水素生成システムによれば、水素極の酸化を防止するために用いる水素は、電解モジュールにより生成された水素を貯蔵する水素供給部から水素極に供給される。そのため、水素極の酸化を防止するために別途の設備を設けて窒素ガス等の不活性ガスを供給する場合に比べ、不活性ガスを生成する際の運用コストを増大させることがない。
【0095】
本開示の第3態様に係る水素生成システムは、第1態様または第2態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記水素供給部から前記水素極に供給される前記水素の供給量と、前記水素供給部から前記酸素極に供給される前記水素の供給量と、前記水蒸気供給部から前記水素極に供給される前記水蒸気の供給量と、前記加熱媒体供給部から前記酸素極に供給される前記加熱媒体の供給量と、前記加熱媒体供給部から前記水素極に供給される前記加熱媒体の供給量とを調整する調整部(50)を備える。
【0096】
本開示の第3態様に係る水素生成システムによれば、水素極に供給される水素の供給量、酸素極に供給される水素の供給量、水素極に供給される水蒸気の供給量、酸素極に供給される加熱媒体の供給量、水素極に供給される加熱媒体の供給量を、調整部により調整し、水素極が損傷することを防止しつつ水蒸気電解により適切に水素を生成することができる。
【0097】
本開示の第4態様に係る水素生成システムは、第3態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記電解モジュールを起動する際に、前記調整部は、前記電解モジュールが第1切替温度(Temp1)を上回ったことに応じて、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給され前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給されない状態を、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給されず前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給される状態に切り替える。
【0098】
本開示の第4態様に係る水素生成システムによれば、電解モジュールが第1切替温度を上回ったことに応じて、水素極に存在する加熱媒体の水蒸気への置換が行われる。水素極に水素を供給するのに先立って加熱媒体の水蒸気への置換が行われるため、例えば加熱媒体が酸素を含む媒体(空気等)である場合に、加熱媒体と水素とが混合することによる異常燃焼等の発生を適切に防止することができる。
【0099】
本開示の第5態様に係る水素生成システムは、第4態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記電解モジュールを起動する際に、前記調整部は、前記電解モジュールが前記第1切替温度より高い第2切替温度(Temp2)を上回ったことに応じて、前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給されない状態を、前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給される状態に切り替える。
【0100】
本開示の第5態様に係る水素生成システムによれば、電解モジュールが第2切替温度を上回ったことに応じて、水素極に存在する水蒸気の水素への置換が行われる。水素極に存在する水蒸気が還元性ガスである水素に漸次置換されて水素極が還元雰囲気となるため、水蒸気に含まれる酸素による水素極の水蒸気酸化を適切に防止することができる。
【0101】
本開示の第6態様に係る水素生成システムによれば、第5態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記電解モジュールを起動する際に、前記調整部は、前記電解モジュールが第3切替温度(Temp3)を上回ったことに応じて、前記水素系統を介して前記酸素極に前記水素が供給されない状態を、前記水素系統を介して前記酸素極に前記水素が供給される状態に切り替える。
【0102】
本開示の第6態様に係る水素生成システムによれば、電解モジュールが第3切替温度を上回ったことに応じて酸素極に水素が供給され、酸素極の触媒作用により水素が燃焼し、電解モジュールの酸素極側の温度を上昇さモジュールことができ、電解モジュール全体を昇温できる。
【0103】
本開示の第7態様に係る水素生成システムによれば、第6態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記電解モジュールを起動する際に、前記調整部は、前記電解モジュールが前記第3切替温度よりも高い第4切替温度(Temp4)を上回ったことに応じて、前記水蒸気供給部から前記水素極に供給する前記水蒸気の供給量を増加させる。
【0104】
本開示の第7態様に係る水素生成システムによれば、電解モジュールが第4切替温度を上回ったことに応じて水素極に供給される水蒸気の供給量が増加するため、水蒸気電解反応により減少する水蒸気を補い、適切に水蒸気電解反応を促進させることができる。
【0105】
本開示の第8態様に係る水素生成システムは、第5態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記電解モジュールを停止する際に、前記調整部は、前記電解モジュールが前記第5切替温度(Temp10)を下回ったことに応じて、前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給される状態を前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給されない状態に切り替える。
【0106】
本開示の第8態様に係る水素生成システムによれば、電解モジュールが第5切替温度を下回ったことに応じて、水素供給部から水素極に水素が供給される状態が水素極に水素が供給されない状態に切り替えられる。水素極に加熱媒体を供給するのに先立って水素極の水素が他の媒体に置換されるため、例えば加熱媒体が酸素を含む媒体(空気等)である場合に、加熱媒体と水素とが混合することによる異常燃焼等の発生を適切に防止することができる。
【0107】
本開示の第9態様に係る水素生成システムは、第8態様において、前記電解モジュールを停止する際に、前記調整部は、前記電解モジュールが前記第5切替温度よりも低い第6切替温度(Temp11)を下回ったことに応じて、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給されず前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給される状態を、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給され前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給されない状態に切り替える。
【0108】
本開示の第9態様に係る水素生成システムによれば、電解モジュールが第5切替温度よりも低い第6切替温度を下回ったことに応じて、水素極の水蒸気が加熱媒体に置換される。そのため、加熱媒体に酸素が含まれる際、第5切替温度以上の温度で水素極の水蒸気を加熱媒体に置換する場合に比べ、水素極が酸化しにくい状態となり、水素極が損傷することを防止することができる。
【0109】
本開示の第10態様に係る水素生成システムは、第4態様において、前記第1切替温度が前記水素極における前記水蒸気の露点より高い温度である。また、本開示の第11態様に係る水素生成システムは、第9態様において、前記第6切替温度が前記水素極における前記水蒸気の露点より高い温度である。
本開示の第10態様および第11態様に係る水素生成システムによれば、第1切替温度および第6切替温度が水素極における水蒸気の露点よりも高いため、水素極に供給される水蒸気が凝縮してドレン水が発生することを適切に防止することができる。
【0110】
本開示の第12態様に係る水素生成システムは、第5態様において、第2切替温度が前記水素極に含まれる金属成分が酸化する温度よりも低い温度である。
本開示の第12態様に係る水素生成システムによれば、水素極に含まれる金属成分が酸化する温度よりも低い温度で水蒸気から水素への置換が行われるため、水素極に含まれる金属成分が水蒸気により酸化することを適切に防止することができる。
【0111】
本開示の第13態様に係る水素生成システムは、第8態様において、前記第5切替温度が前記水素極に含まれる金属成分が酸化する温度よりも低い温度である。
本開示の第13態様に係る水素生成システムによれば、水素極に含まれる金属成分が酸化する温度よりも低い温度で水素から水蒸気への置換が行われるため、水素極に含まれる金属成分が水蒸気により酸化することを適切に防止することができる。
【0112】
本開示の第14態様に係る水素生成システムは、第7態様において、前記第4切替温度が、前記電解モジュールが前記水蒸気電解により前記水素を生成することが可能な温度よりも高い温度である。
本開示の第14態様に係る水素生成システムによれば、電解モジュールが水蒸気電解により水素を生成することが可能な温度よりも高い第4切替温度を上回ったことに応じて水蒸気の供給量を増加させるため、水素極の水蒸気量が過度に増加することを防止することができる。
【0113】
本開示の第15態様に係る水素生成システムは、第1態様または第2態様において、前記電解モジュールの加熱媒体排出系統に配置される水素濃度計及び水素処理設備を備える。
本開示の第15態様に係る水素生成システムによれば、加熱媒体排出系統に配置された水素濃度計で水素の濃度を検知し、水素処理設備で適切に処理することができる。
【0114】
本開示の第16態様に係る水素生成システムの制御方法において、水素生成システムは、金属成分を含む水素極と、酸素極と、前記水素極と前記酸素極との間に配置される電解質層と、を有し、水蒸気を前記水素極に供給して水蒸気電解により水素を生成する電解モジュールと、前記水素極に前記水蒸気を供給する水蒸気供給部と、前記水素極に前記水素を供給する水素供給部と、前記酸素極に加熱媒体を供給する加熱媒体供給部と、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体を供給する加熱媒体系統と、前記水素供給部から前記酸素極に前記水素を供給する水素系統と、前記水素供給部から前記水素極に供給される前記水素の供給量と、前記水素供給部から前記酸素極に供給される前記水素の供給量と、前記水蒸気供給部から前記水素極に供給される前記水蒸気の供給量と、前記加熱媒体供給部から前記酸素極に供給される前記加熱媒体の供給量と、前記加熱媒体供給部から前記水素極に供給される前記加熱媒体の供給量とを調整する調整部と、を備え、前記電解モジュールを起動する際に、前記電解モジュールが第1切替温度を上回ったことに応じて、前記加熱媒体供給部から前記水素極へ前記加熱媒体が供給され前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給されない状態を、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給されず前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給される状態に切り替えるよう前記調整部を制御する第1制御工程を備える。
【0115】
本開示の第16態様に係る水素生成システムの制御方法によれば、第1制御工程が、電解モジュールを起動する際に、電解モジュールが第1切替温度を上回ったことに応じて、水蒸気供給部から供給される水蒸気を水素極に供給することにより、水素極に存在する加熱媒体の水蒸気への置換が行われる。これにより、加熱媒体が酸素を含む媒体(空気等)である場合に、第1切替温度を上回る比較的低温における加熱媒体中の酸素によって引き起こされる水素極の酸化を防止できる。
【0116】
また、水素極に水素を供給するのに先立って加熱媒体の水蒸気への置換が行われるため、例えば加熱媒体が酸素を含む媒体(空気等)である場合に、加熱媒体と水素とが混合することによる異常燃焼等の発生を適切に防止することができる。
【0117】
本開示の第17態様に係る水素生成システムの制御方法は、第16態様において、前記水素生成システムは、前記電解モジュールを起動する際に、前記電解モジュールが前記第1切替温度よりも高い第2切替温度を上回ったことに応じて、前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給されない状態を、前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給される状態に切り替えるよう前記調整部を制御する第2制御工程を備える。
【0118】
本開示の第17態様に係る水素生成システムの制御方法によれば、電解モジュールが第2切替温度を上回ったことに応じて、水素極に存在する水蒸気の水素への置換が行われる。水素極に存在する水蒸気が還元性ガスである水素に漸次置換されて水素極が還元雰囲気となるため、水蒸気に含まれる酸素による水素極の水蒸気酸化を適切に防止することができる。
【0119】
本開示の第18態様に係る水素生成システムの制御方法は、第17態様において、前記電解モジュールを起動する際に、前記電解モジュールが第3切替温度を上回ったことに応じて、前記水素系統を介して前記酸素極に前記水素が供給されない状態を、前記水素系統を介して前記酸素極に前記水素が供給される状態に切り替えるよう前記調整部を制御する第3制御工程を備える。
【0120】
本開示の第18態様に係る水素生成システムの制御方法によれば、電解モジュールが第3切替温度を上回ったことに応じて酸素極に水素が供給され、酸素極の触媒作用により水素が燃焼し、電解モジュールの酸素極側の温度を上昇させ、電解モジュール全体を昇温させることができる。
【0121】
本開示の第19態様に係る水素生成システムの制御方法は、第18態様において、前記電解モジュールを起動する際に、前記電解モジュールが前記第3切替温度よりも高い第4切替温度を上回ったことに応じて、前記水蒸気供給部から前記水素極に供給する前記水蒸気の供給量を増加させるよう前記調整部を制御する第4制御工程を備える。
【0122】
本開示の第19態様に係る水素生成システムの制御方法によれば、電解モジュールが第4切替温度を上回ったことに応じて水素極に供給される水蒸気の供給量が増加するため、水蒸気電解反応に適した供給水蒸気濃度に調整でき、適切に水蒸気電解反応を実行させることができる。
【0123】
本開示の第20態様に係る水素生成システムの制御方法は、第17態様において、前記電解モジュールを停止する際に、前記電解モジュールが前記第5切替温度を下回ったことに応じて、前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給される状態を前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給されない状態に切り替えるよう前記調整部を制御する第5制御工程を備える。
【0124】
本開示の第20態様に係る水素生成システムの制御方法によれば、電解モジュールが第5切替温度を下回ったことに応じて、水素供給部から水素が供給される状態が水素極に水素が供給されない状態に切り替えられる。そのため、水素極に加熱媒体を供給するのに先立って水素極の水素が他の媒体に置換されるため、例えば加熱媒体が酸素を含む媒体(空気等)である場合に、加熱媒体と水素とが混合することによる異常燃焼等の発生を適切に防止することができる。
【0125】
本開示の第21態様に係る水素生成システムの制御方法は、第20態様において、前記電解モジュールを停止する際に、前記電解モジュールが前記第5切替温度よりも低い第6切替温度を下回ったことに応じて、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給されず前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給される状態を、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給され前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給されない状態に切り替えるよう前記調整部を制御する第6制御工程を備える。
【0126】
本開示の第21態様に係る水素生成システムの制御方法によれば、電解モジュールが第5切替温度よりも低い第6切替温度を下回ったことに応じて、水素極の水蒸気が加熱媒体に置換される。そのため、加熱媒体に酸素が含まれる際、第5切替温度以上の温度で水素極の水蒸気を加熱媒体に置換する場合に比べ、水素極が酸化しにくい状態となり、水素極が損傷することを防止することができる。
【0127】
また、本開示の第21態様に係る水素生成システムの制御方法によれば、電解モジュールを流通する媒体が加熱媒体のみとなり、電解モジュールが冷却されて温度が低下しても、内部で水蒸気が結露することを防止できる。
【符号の説明】
【0128】
10 電解セル
11 水素極
12 酸素極
13 電解質層
14 基体管
15 インターコネクタ
16 リード膜
17 温度センサ
18 電力供給部
19 電解モジュール
20 水蒸気供給部
21 水蒸気供給管
30 水素分離設備
31 水素供給弁
32 水素昇圧機
33 水素排出管
34 分岐管
40 水素貯蔵設備(水素供給部)
41 水素供給管
42 水素供給管
43 水素供給管(水素系統)
44 再循環ブロワ
50 調整部
51 水蒸気調整弁
52 水素調整弁
53 水素調整弁(または仕切弁)
54 空気調整弁
55 水素極通気ガスの空気側排出量調整弁
56 水素供給弁
57 空気調整弁
70 空気供給部
72 空気供給管(加熱媒体系統)
73 空気排出管
74 空気供給管
75 水素処理設備
76 水素濃度計
80 制御装置(制御部)
100,100A,100B 水素生成システム
Ta 電解モジュールの温度
【手続補正書】
【提出日】2023-02-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素極と、酸素極と、前記水素極と前記酸素極との間に配置される電解質層と、を有する電解セルの集合体であり、水蒸気を前記水素極に供給して水蒸気電解により水素を生成する電解モジュールと、
前記水素極に前記水蒸気を供給する水蒸気供給部と、
前記水素極に前記水素を供給する水素供給部と、
前記酸素極に加熱媒体を供給する加熱媒体供給部と、
前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体を供給する加熱媒体系統と、
前記水素供給部から前記酸素極に前記水素を供給する水素系統と、
前記水素供給部から前記水素極に供給される前記水素の供給量と、前記水素供給部から前記酸素極に供給される前記水素の供給量と、前記水蒸気供給部から前記水素極に供給される前記水蒸気の供給量と、前記加熱媒体供給部から前記酸素極に供給される前記加熱媒体の供給量と、前記加熱媒体供給部から前記水素極に供給される前記加熱媒体の供給量とを調整する調整部と、を備える水素生成システム。
【請求項2】
前記水素供給部は、前記電解モジュールにより生成された前記水素を貯蔵し、前記水素極および前記酸素極へ前記水素を供給する請求項1に記載の水素生成システム。
【請求項3】
前記電解モジュールを起動する際に、前記調整部は、前記電解モジュールが第1切替温度を上回ったことに応じて、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給され前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給されない状態を、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給されず前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給される状態に切り替える請求項1または請求項2に記載の水素生成システム。
【請求項4】
前記電解モジュールを起動する際に、前記調整部は、前記電解モジュールが前記第1切替温度より高い第2切替温度を上回ったことに応じて、前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給されない状態を、前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給される状態に切り替える請求項3に記載の水素生成システム。
【請求項5】
前記電解モジュールを起動する際に、前記調整部は、前記電解モジュールが第3切替温度を上回ったことに応じて、前記水素系統を介して前記酸素極に前記水素が供給されない状態を、前記水素系統を介して前記酸素極に前記水素が供給される状態に切り替える請求項4に記載の水素生成システム。
【請求項6】
前記電解モジュールを起動する際に、前記調整部は、前記電解モジュールが前記第3切替温度よりも高い第4切替温度を上回ったことに応じて、前記水蒸気供給部から前記水素極に供給する前記水蒸気の供給量を増加させる請求項5に記載の水素生成システム。
【請求項7】
前記電解モジュールを停止する際に、前記調整部は、前記電解モジュールが第5切替温度を下回ったことに応じて、前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給される状態を前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給されない状態に切り替える請求項4に記載の水素生成システム。
【請求項8】
前記電解モジュールを停止する際に、前記調整部は、前記電解モジュールが前記第5切替温度よりも低い第6切替温度を下回ったことに応じて、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給されず前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給される状態を、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給され前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給されない状態に切り替える請求項7に記載の水素生成システム。
【請求項9】
前記第1切替温度は、前記水素極における前記水蒸気の露点より高い温度である請求項3に記載の水素生成システム。
【請求項10】
前記第6切替温度は、前記水素極における前記水蒸気の露点より高い温度である請求項8に記載の水素生成システム。
【請求項11】
前記第2切替温度は、前記水素極に含まれる金属成分が酸化する温度よりも低い温度である請求項4に記載の水素生成システム。
【請求項12】
前記第5切替温度は、前記水素極に含まれる金属成分が酸化する温度よりも低い温度である請求項7に記載の水素生成システム。
【請求項13】
前記第4切替温度は、前記電解モジュールが前記水蒸気電解により前記水素を生成することが可能な温度よりも高い温度である請求項6に記載の水素生成システム。
【請求項14】
前記電解モジュールの加熱媒体排出系統に配置される水素濃度計及び水素処理設備を備える請求項1または請求項2に記載の水素生成システム。
【請求項15】
水素生成システムの制御方法であって、
前記水素生成システムは、
水素極と、酸素極と、前記水素極と前記酸素極との間に配置される電解質層と、を有し、水蒸気を前記水素極に供給して水蒸気電解により水素を生成する電解モジュールと、
前記水素極に前記水蒸気を供給する水蒸気供給部と、
前記水素極に前記水素を供給する水素供給部と、
前記酸素極に加熱媒体を供給する加熱媒体供給部と、
前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体を供給する加熱媒体系統と、
前記水素供給部から前記酸素極に前記水素を供給する水素系統と、
前記水素供給部から前記水素極に供給される前記水素の供給量と、前記水素供給部から前記酸素極に供給される前記水素の供給量と、前記水蒸気供給部から前記水素極に供給される前記水蒸気の供給量と、前記加熱媒体供給部から前記酸素極に供給される前記加熱媒体の供給量と、前記加熱媒体供給部から前記水素極に供給される前記加熱媒体の供給量とを調整する調整部と、を備え、
前記電解モジュールを起動する際に、前記電解モジュールが第1切替温度を上回ったことに応じて、前記加熱媒体供給部から前記水素極へ前記加熱媒体が供給され前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給されない状態を、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給されず前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給される状態に切り替えるよう前記調整部を制御する第1制御工程を備える水素生成システムの制御方法。
【請求項16】
前記電解モジュールを起動する際に、前記電解モジュールが前記第1切替温度よりも高い第2切替温度を上回ったことに応じて、前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給されない状態を、前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給される状態に切り替えるよう前記調整部を制御する第2制御工程を備える請求項15に記載の水素生成システムの制御方法。
【請求項17】
前記電解モジュールを起動する際に、前記電解モジュールが第3切替温度を上回ったことに応じて、前記水素系統を介して前記酸素極に前記水素が供給されない状態を、前記水素系統を介して前記酸素極に前記水素が供給される状態に切り替えるよう前記調整部を制御する第3制御工程を備える請求項16に記載の水素生成システムの制御方法。
【請求項18】
前記電解モジュールを起動する際に、前記電解モジュールが前記第3切替温度よりも高い第4切替温度を上回ったことに応じて、前記水蒸気供給部から前記水素極に供給する前記水蒸気の供給量を増加させるよう前記調整部を制御する第4制御工程を備える請求項17に記載の水素生成システムの制御方法。
【請求項19】
前記電解モジュールを停止する際に、前記電解モジュールが第5切替温度を下回ったことに応じて、前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給される状態を前記水素供給部から前記水素極に前記水素が供給されない状態に切り替えるよう前記調整部を制御する第5制御工程を備える請求項18に記載の水素生成システムの制御方法。
【請求項20】
前記電解モジュールを停止する際に、前記電解モジュールが前記第5切替温度よりも低い第6切替温度を下回ったことに応じて、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給されず前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給される状態を、前記加熱媒体供給部から前記水素極に前記加熱媒体が供給され前記水蒸気供給部から前記水素極に前記水蒸気が供給されない状態に切り替えるよう前記調整部を制御する第6制御工程を備える請求項19に記載の水素生成システムの制御方法。
【請求項21】
前記電解モジュールの加熱媒体排出系統に配置される水素濃度計の計測値が予め設定された閾値濃度を上回ったことに応じて、前記加熱媒体排出系統に配置される水素処理設備により前記加熱媒体排出系統に含まれる前記水素を燃焼処理する請求項15に記載の水素生成システムの制御方法。
【請求項22】
前記電解モジュールの加熱媒体排出系統に配置される水素濃度計の計測値が予め設定された閾値濃度を上回ったことに応じて、前記電解モジュールに供給する電流量を減少または停止する請求項15に記載の水素生成システムの制御方法。
【請求項23】
前記電解モジュールの加熱媒体排出系統に配置される水素濃度計の計測値が予め設定された閾値濃度を上回ったことに応じて、前記電解モジュールに供給する前記加熱媒体の供給量を増加する請求項15に記載の水素生成システムの制御方法。
【請求項24】
前記閾値濃度を大気中の前記水素の爆発下限界濃度の1/4とする請求項21から請求項23のいずれか一項に記載の水素生成システムの制御方法。
【請求項25】
前記第2切替温度は、前記水素極に含まれる金属成分が酸化する温度よりも低い温度である請求項16から請求項20のいずれか一項に記載の水素生成システムの制御方法。