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特開2024-39251SCCA1の発現を抑制するための、ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物
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  • 特開-SCCA1の発現を抑制するための、ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039251
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】SCCA1の発現を抑制するための、ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240314BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20240314BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240314BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240314BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240314BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240314BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240314BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240314BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240314BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240314BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240314BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240314BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20240314BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/185 ZNA
A61P17/00
A61P43/00 111
A61Q19/00
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/12
A61K9/107
A23L33/105
C12N15/12
C12N5/071
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143660
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】米田 早織
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C076
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LE04
4B018LE05
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065BB26
4B065BC03
4B065BC07
4B065BC11
4B065BD16
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA50
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA27
4C076BB31
4C076CC18
4C083AA111
4C083AA112
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD08
4C083DD22
4C083DD31
4C083DD39
4C083DD41
4C083FF01
4C088AB55
4C088BA08
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC41
(57)【要約】
【課題】SCCA1の発現を抑制するための組成物を提供する。
【解決手段】SCCA1の発現を抑制するための組成物であって、ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SCCA1の発現を抑制するための組成物であって、ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物。
【請求項2】
表皮角化細胞においてSCCA1の発現を抑制するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
表皮角化細胞の分化を正常化するための組成物であって、ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物。
【請求項4】
局所用組成物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
溶液、懸濁液、分散液、エマルジョン、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、フォーム、ペースト、またはスプレーの形態である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
化粧用組成物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SCCA1の発現を抑制するための組成物であって、ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
扁平上皮癌関連抗原(SCCA1:Squamous Cell Carcinoma Antigen 1)は、もともと、扁平上皮癌細胞で発見された抗原であり、子宮頸部、胚、食道、皮膚の扁平上皮細胞癌で高い血中濃度を示し、扁平上皮細胞癌の診断に利用されている(非特許文献1)。
【0003】
SCCA1については様々な研究が行われており、乾癬表皮の上層においてその発現の亢進が認められること(非特許文献2)、細胞のアポトーシス抑制作用を有する抗アポトーシス因子であること(特許文献1)、コントロールと比較すると、アトピー性乾燥皮膚では16倍、露光部皮膚では90倍、花粉症アレルギー性皮膚では232倍、乾癬皮膚では466倍、その発現が亢進していること(特許文献2)等が報告されている。
【0004】
また、女性のライフステージごとにSCCA1の発現量が変化することも報告されている。女性の年代を、以下の5つのステージ:幼年期(2~9歳)、思春期(10~19歳:初潮を迎えた人)、成人期(20~44歳:規則正しい性周期であり、且つ妊娠・授乳中でない人)、更年期(45~59歳:更年期症状を有し、且つ妊娠・授乳中でない人)、および閉経後(60~90歳:閉経した人)に分けてSCCA1の発現量を測定すると、更年期以降、顕著にSCCA1発現量が増加することが報告されている(特許文献3)。
【0005】
このようにSCCA1は様々な生理機能との関連が示唆されており、SCCA1を適切に制御することにより疾患の治療や身体機能の改善につながることが期待される。SCCA1を制御する薬剤としては、例えば、1-ピペリジンプロピオン酸および/またはその塩が、SCCA1産生を有意に抑制することが報告されており、さらに、1-ピペリジンプロピオン酸および/またはその塩が表皮肥厚を予防、改善できることが報告されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-281140
【特許文献2】特開2007-279024
【特許文献3】特開2012-240911
【特許文献4】特開2009-242345
【0007】
【非特許文献1】H. Kato et al., Cancer, 1997, 40; 1621-1628、N. Mno et al., Cancer, 1998, 62; 730-734
【非特許文献2】Takeda A. et al、J. Invest. Dermatol., 2002, 118(1), 147-154
【発明の概要】
【0008】
本発明は、SCCA1の発現を抑制するための組成物を提供する。
【0009】
本発明者らは、ゲンノショウコエキスがSCCA1の発現を抑制することを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0010】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)SCCA1の発現を抑制するための組成物であって、ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物。
(2)表皮角化細胞においてSCCA1の発現を抑制するための、(1)に記載の組成物。
(3)表皮角化細胞の分化を正常化するための組成物であって、ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物。
(4)局所用組成物である、(1)~(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)溶液、懸濁液、分散液、エマルジョン、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、フォーム、ペースト、またはスプレーの形態である、(4)に記載の組成物。
(6)化粧用組成物である、(1)~(5)のいずれかに記載の組成物。
(7)SCCA1の発現の抑制を目的とする薬剤の製造のための、ゲンノショウコエキスの使用。
(8)表皮角化細胞におけるSCCA1の発現の抑制を目的とする薬剤の製造のための、(7)に記載の使用。
(9)表皮角化細胞の分化を正常化することを目的とする薬剤の製造のための、ゲンノショウコエキスの使用。
(10)表皮角化細胞の分化を正常化して皮膚のキメを改善することを目的とする薬剤の製造のための、(9)に記載の使用。
(11)ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物の、SCCA1の発現を抑制するための使用。
(12)ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物の、表皮角化細胞においてSCCA1の発現を抑制するための、(11)に記載の使用。
(13)ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物の、表皮角化細胞の分化を正常化するための使用。
(14)ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物の、表皮角化細胞の分化を正常化して皮膚のキメを改善するための、(13)に記載の使用。
(15)前記組成物が局所用組成物である、(11)~(14)のいずれかに記載の使用。
(16)前記組成物が溶液、懸濁液、分散液、エマルジョン、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、フォーム、ペースト、またはスプレーの形態である、(15)に記載の使用。
(17)前記組成物が化粧用組成物である、(11)~(16)のいずれかに記載の使用。
(18)SCCA1の発現を抑制するための、ゲンノショウコエキス。
(19)表皮角化細胞においてSCCA1の発現を抑制するための、(18)に記載のゲンノショウコエキス。
(20)表皮角化細胞の分化を正常化するための、ゲンノショウコエキス。
(21)表皮角化細胞の分化を正常化して皮膚のキメを改善するための、(20)に記載のゲンノショウコエキス。
(22)被験体において、SCCA1の発現を抑制する方法であって、ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物の有効量を投与することを含む、方法。
(23)表皮角化細胞においてSCCA1の発現を抑制する方法であって、ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物の有効量を投与することを含む、(22)に記載の方法。
(24)被験体において、表皮角化細胞の分化を正常化する方法であって、ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物の有効量を投与することを含む、方法。
(25)表皮角化細胞の分化を正常化して皮膚のキメを改善する方法であって、ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物の有効量を投与することを含む、(24)に記載の方法。
(26)前記組成物が局所用組成物である、(22)~(25)のいずれかに記載の方法。
(27)前記組成物が溶液、懸濁液、分散液、エマルジョン、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、フォーム、ペースト、またはスプレーの形態である、(26)に記載の方法。
(28)前記組成物が化粧用組成物である、(22)~(27)のいずれかに記載の方法。
【0011】
本発明によれば、SCCA1の発現を抑制するための組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、ゲンノショウコエキスが表皮角化細胞におけるSCCA1遺伝子発現量に与える影響を評価した結果を表す。
【発明の具体的説明】
【0013】
本発明によれば、SCCA1の発現を抑制するための組成物が提供され、該組成物は、ゲンノショウコエキスを含んでなる。また、本発明によれば、治療上有効な量のゲンノショウコエキスを、それを必要とする被験体に投与することを含んでなる、SCCA1の発現を抑制するための方法が提供される。さらに、本発明によれば、SCCA1の発現の抑制を目的とする薬剤の製造における、ゲンノショウコエキスの使用が提供される。そしてさらに、本発明によれば、ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物の、SCCA1の発現を抑制するための使用が提供される。加えて、本発明によれば、SCCA1の発現を抑制するための、ゲンノショウコエキスが提供される。
【0014】
本発明において、SCCA1の発現を抑制するための組成物は、特に限定されるわけではないが、細胞の分化の正常化等の作用を発揮してもよい。したがって、本発明の組成物は、細胞の分化の正常化のための薬剤として用いることもできる。このような薬剤は、特に限定されるわけではないが、細胞の分化異常に起因する疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、じんま疹、皮膚肥満細胞症、乾癬、そう痒、喘息、鼻炎、結膜炎、角結膜炎、肥満細胞性白血病、全身性肥満細胞症、食物アレルギー、基底細胞癌、有刺細胞癌、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性及び非アレルギー性気管支喘息、レチノイン酸過剰症等)の予防や改善、肌のキメを整える等の様々な効果が期待できる。このような薬剤は、医師等により行われる治療目的で用いてもよく、美容目的で用いてもよく、保健機能食品等の食品として用いてもよい。
【0015】
本発明の別の態様によれば、表皮角化細胞の分化を正常化するための組成物が提供され、該組成物は、ゲンノショウコエキスを含んでなる。また、本発明のさらに別の態様によれば、治療上有効な量のゲンノショウコエキスを、それを必要とする被験体に投与することを含んでなる、表皮角化細胞の分化を正常化するための方法が提供される。さらに、本発明のさらに別の態様によれば、表皮角化細胞の分化の正常化を目的とする薬剤の製造における、ゲンノショウコエキスの使用が提供される。本発明のさらに別の態様によれば、ゲンノショウコエキスを含んでなる組成物の、表皮角化細胞の分化を正常化するための使用が提供される。本発明のさらに別の態様によれば、表皮角化細胞の分化を正常化するための、ゲンノショウコエキスが提供される。
【0016】
一般に、SCCA(Squamous Cell Carcinoma Antigen)は染色体18q21.33上にタンデムに並んでいる二つの遺伝子SCCA1およびSCCA2遺伝子によりコードされる。それらによりコードされるタンパク質、SCCA1およびSCCA2は共に分子量約45000のタンパクであり、高い相同性を示し、そのホモロジーは核酸レベルで95%である。これらのSCCAはovalbumin-serine protease inhibitor(ov-serpin)ファミリーに属している。ov-serpinはセルピンス-パーファミリーの中でもユニークな特徴を有している。セルピンは分泌されて細胞外で働くとされているが、ov-serpinは主に細胞内でも働くプロテアーゼインヒビターであり、SCCA1はセリンプロテアーゼ阻害剤である。なお、本発明におけるSCCA1には、その機能を損なわない範囲において、アミノ酸配列の一部に欠失、置換、挿入等の変異を有するものも含まれる。
【0017】
本発明によれば、SCCA1の発現を抑制するための組成物が提供される。SCCA1の発現の抑制は、SCCA1遺伝子の発現の抑制、またはSCCA1タンパク質の発現の抑制のいずれか、またはこの両方であってもよい。
【0018】
本発明の一つの実施態様によれば、本発明の組成物は、SCCA1遺伝子の発現を抑制する能力を有していてもよい。このような能力としては、特に限定されるわけではないが、例えば、SCCA1遺伝子のmRNAの転写開始を阻害する能力、SCCA1遺伝子のmRNAの発現を抑制する能力、SCCA1遺伝子のmRNAの分解を促進する能力等が挙げられる。
【0019】
本発明の一つの実施態様によれば、本発明の組成物は、SCCA1タンパク質の発現を抑制する能力を有していてもよい。このような能力としては、特に限定されるわけではないが、例えば、SCCA1遺伝子のmRNAからタンパク質への翻訳を阻害する能力、SCCA1タンパク質の細胞外分泌を阻害する能力、シグナル伝達機能を阻害する能力、SCCA1タンパク質の分解を促進する能力、SCCA1タンパク質の活性を阻害する能力等が挙げられる。
【0020】
本発明における「ゲンノショウコ」は、フウロソウ科フウロソウ属に属するゲンノショウコ(Geranium thunbergii)を意味する。本発明におけるゲンノショウコエキスの抽出原料として使用する部位としては、特に限定されるわけではないが、根、茎、葉および花等を乾燥させたものを用いることができる。本発明におけるゲンノショウコエキスは、特に限定されるわけではないが、ゲンノショウコを抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、またはこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれであってもよい。
【0021】
本発明におけるゲンノショウコエキスの製造方法は、特に制限されず、当該技術分野において通常使用される方法に応じて抽出することができる。前記抽出方法としては、特に限定されるわけではないが、例えば、熱水抽出法、超音波抽出法、ろ過法、還流抽出法、溶媒(例えばエタノール)抽出法等が挙げられる。これらは単独で実行、または2種以上の方法を併用して行ってもよい。また、高純度のエキスを得るためにエキスを同様の方法で1回以上ずつさらに抽出してもよい。
【0022】
本発明におけるゲンノショウコエキスの製造のために使用される抽出溶媒の種類は特に制限されず、本発明の目的効果を有するエキスが得られるものであれば、当該技術分野において公知となっている任意の溶媒を使用してもよい。そのような溶媒の例としては、特に限定されるわけではないが、例えば、水、炭素数1~4のアルコール、酢酸エチル、アセトン、クロロホルム等が挙げられ、これらは2つ以上組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本発明におけるゲンノショウコエキスが商業的に販売されている場合、本発明の目的効果を有するエキスが得られるのであれば、それを使用してもよい。
【0024】
本発明の組成物に含まれるゲンノショウコエキスの配合量は、用途に応じて適宜決定できる。
【0025】
SCCA1の発現を抑制するために、本発明の組成物が作用する細胞は、特に限定されるわけではないが、好ましくは表皮角化細胞である。
【0026】
本発明における表皮角化細胞としては、特に限定されるわけではないが、例えば、生体から取得された細胞、その継代された細胞、または株化された細胞を使用してもよく、必要に応じてこれらの細胞を分化させて使用してもよい。本発明における表皮角化細胞としては、特に限定されるわけではないが、具体的には、正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)等が挙げられる。
【0027】
本発明における表皮角化細胞は、いかなる動植物に由来する細胞であってもよく、限定されるわけではないが、好ましくは動物細胞であり、好ましくはヒト細胞である。
【0028】
本発明の組成物は、経口用組成物、局所用組成物のいずれであってもよいが、好ましくは局所用組成物である。本発明の組成物を局所用組成物とする場合、局所用組成物に配合される公知の成分(添加剤)をさらに配合することができる。このような成分としては、限定されるわけではないが、例えば、乳化剤、水和剤、溶媒、エモリエント、安定剤、増粘剤、保存剤、滑沢剤、キレート剤、充填剤、賦形剤、粉末、芳香剤、香料、吸収剤、染料、乳白剤、抗酸化剤、ビタミン、アミノ酸等が挙げられる。
【0029】
本発明における局所用組成物は、液体、半固体、固体のいずれであってもよく、限定されるわけではないが、好ましくは、溶液、懸濁液、分散液、エマルジョン、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、フォーム、ペースト、またはスプレーの形態である。
【0030】
本発明の組成物は、特に限定されるわけではないが、医薬組成物、化粧用組成物、食品組成物のいずれかとしてもよく、好ましくは化粧用組成物である。本発明における化粧用組成物とは、化粧をすることを目的に使用される組成物のことを意味し、経口用組成物、局所用組成物のいずれであってもよい。
【0031】
本発明における食品組成物は、栄養機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品等の保健機能食品であってもよく、また治療食(すなわち、治療の目的を果たすもの、または、医師が食事箋を出し、それに従い栄養士等が作成した献立に基づいて調理されたもの)、食事療法食、介護食等として、製造されてもよい。
【実施例0032】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。含有量は特記しない限り、質量%で示す。
【0033】
ヒト表皮角化細胞の培養
市販されている正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK(NB)、クラボウ社製)を5×10cells/フラスコとなるようにT75フラスコに接種し、角化細胞用培地(Humedia-KG2、クラボウ社製)中で37℃、5%のCO雰囲気下でセミコンフルエントに達するまで培養し、種細胞とした。この角化細胞をトリプシン処理により回収し、24ウェルプレートに12×10cells/ウェルとなるように接種し、角化細胞用培地(Humedia-KG2、クラボウ社製)中で37℃、5%のCO雰囲気下で一晩培養した。翌日、1.8mMのCaClを含む角化細胞用培地に交換し、37℃、5%のCO雰囲気下で2日間培養し、細胞分化を誘導した。
【0034】
試料の添加
上述の通り分化誘導を実施した表皮角化細胞が存在している、1.8mMのCaClを含む角化細胞用培地に、培地中濃度が0.1%となるようにゲンノショウコエキスを添加し、37℃、5%のCO雰囲気下で培養を続けた。なお、コントロールは、1.8mMのCaClを含む角化細胞用培地とした。
【0035】
細胞からのRNAの抽出
ゲンノショウコエキス処理24時間後に培地を除去し、市販のRNA抽出試薬(RNeasy Mini Kit、Qiagen社製)を用いて、細胞の溶解とRNAの抽出を行った。
【0036】
定量PCR法によるSCCA1発現量の評価
抽出したRNAを鋳型として、SuperScript(R)VILOTM cDNA Synthesis Kit(InvitrogenTM)を用いてcDNAを合成した。その後、PCR試薬PlatinumTM SYBRTM Green qPCR SuperMix-UDG w/ROX(InvitrogenTM)と定量PCR装置StepOnePlusTM、リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems(R))を用いて定量PCRを実施し、SCCA1遺伝子の発現量を測定した。内部標準としてGAPDH遺伝子の発現量も同時に測定した。PCR用プライマーの配列は以下の通りである。
【0037】
SCCA1:
フォワードプライマー:5’-GGTCTCCAGAAGCTTGAAGA-3’(配列番号1)
リバースプライマー:5’-GCTCTCTTCCACTTTGAACC-3’(配列番号2)
GAPDH:
フォワードプライマー:5’-GAGTCAACGGATTTGGTCGT-3’(配列番号3)
リバースプライマー:5’-TTGATTTTGGAGGGATCTCG-3’(配列番号4)
【0038】
統計処理
得られた結果に対して、スチューデントのt検定(両側検定)による検定(P<0.01の場合、**と記載)を行った。
【0039】
結果を図1に示す。図1の結果から、ゲンノショウコエキスが表皮角化細胞におけるSCCA1遺伝子の発現を有意に抑制することが示された。
図1
【配列表】
2024039251000001.xml