(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039256
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ステータ及びモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/50 20060101AFI20240314BHJP
H02K 3/52 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
H02K3/50 A
H02K3/52 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143667
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】峰松 泰浩
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC05
5H604CC13
5H604DA15
5H604PB03
5H604QB04
5H604QB14
(57)【要約】
【課題】軸線方向においてモータをコンパクト化する技術を提供する。
【解決手段】環状に並ぶ複数のコイル群40A,40B,50A,50B,60A,60Bと、軸線に沿ってコイル群の一方の側に設けられた複数の配線層を有する基板70と、を備え、コイル群40A,40Bは、一周方向R1に第1コイル群40A,40B、第2コイル群50A,50B、第3コイル群60A,60Bの順に設けられており、第1コイル群40A,40Bの通電方向は、第2コイル群50A,50B及び第3コイル群60A,60Bの通電方向とは異なる。第1コイル群40A,40Bにおいて、第2コイル42の第1端部U3,U21と第3コイル43の第1端部U5,U23とは、配線層75において電気的に接続されており、第1コイル41の第2端部U2,U20と第2コイル42の第2端部U4,U22とは、配線層74において電気的に接続されていることを特徴とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に並ぶ複数のコイル群と、
軸線に沿って前記コイル群の一方の面に設けられた複数の配線層を有する基板と、
を備え、
前記コイル群は、一周方向に第1コイル群、第2コイル群、第3コイル群の順に設けられており、
前記第1コイル群の通電方向は、前記第2コイル群及び前記第3コイル群の通電方向とは異なり、
各コイル群は、前記一周方向に第1コイル、第2コイル、第3コイルの順にコイルを有し、
各コイルは、2つの端部を前記一周方向に第1端部、第2端部の順に有し、
前記第1コイル群において、前記第2コイルの第1端部と前記第3コイルの第1端部とは、複数の配線層のうち第1配線層において電気的に接続されており、前記第1コイルの第2端部と前記第2コイルの第2端部とは、複数の配線層のうち第2配線層において電気的に接続されている
ことを特徴とするステータ。
【請求項2】
前記第1端部及び前記第2端部はそれぞれ、前記基板の側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
周方向に連続した3つのコイル群にそれぞれ外部接続部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のステータ。
【請求項4】
前記外部接続部は、前記基板において最上層に設けられており、貫通孔を介して下の層に電気的に接続されていることを特徴とする請求項3に記載のステータ。
【請求項5】
前記複数の配線層の間には絶縁層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のステータ。
【請求項6】
前記複数のコイル群は、それぞれ径方向に対向して配置された一対の第1コイル群、一対の前記第2コイル群及び一対の前記第3コイル群を含み、
前記一対の第1コイル群は、前記第2配線層において互いに電気的に接続されており、
一方の前記第1コイル群は、前記第2配線層において前記第2コイル群又は前記第3コイル群に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のステータ。
【請求項7】
前記第2コイル群の前記第1コイルの第1端部と前記第2コイルの第1端部、及び前記第2コイルの前記第2端部と前記第3コイルの前記第2端部は、前記第1配線層において電気的に接続されており、
前記一対の第2コイル群は、複数の配線層のうち第3配線層において互いに電気的に接続されており、
一方の前記第2コイル群は、前記第3配線層において前記第1コイル群に電気的に接続されている
ことを特徴とする請求項6に記載のステータ。
【請求項8】
前記第3コイル群の前記第1コイルの第1端部と前記第2コイルの第1端部、及び前記第2コイルの前記第2端部と前記第3コイルの前記第2端部は、前記第1配線層において電気的に接続されており、
前記一対の第3コイル群は、複数の配線層のうち第4配線層において互いに電気的に接続されており、
一方の前記第3コイル群は、前記第4配線層において前記第2コイル群に電気的に接続されている
ことを特徴とする請求項7に記載のステータ。
【請求項9】
ロータと、
前記ロータを外側で囲んで設けられた、一周方向に第1コイル群、第2コイル群、第3コイル群の順に並ぶ複数のコイル群を有する環状のステータと、
を備え、
前記ステータは、一方の面に設けられた複数の配線層を有する基板を有し、
前記第1コイル群の通電方向は、前記第2コイル群及び前記第3コイル群の通電方向とは異なり、
各コイル群は、前記一周方向に第1コイル、第2コイル、第3コイルの順に複数のコイルを有し、
各コイルは、2つの端部を前記一周方向に第1端部、第2端部の順に有し、
前記第1コイル群において、前記第2コイルの第1端部と前記第3コイルの第1端部とは、複数の配線層のうち第1配線層において電気的に接続されており、前記第1コイルの第2端部と前記第2コイルの第2端部とは、複数の配線層のうち第2配線層において電気的に接続されている
ことを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ及び当該ステータを備えるモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固定子コイルを環状に有する固定子と、軸線方向において固定子の両面に設けられた固定子回路基板と、を備えるモータが知られている(例えば、特許文献1)。各固定子コイルは、外部機器へ電力を供給するためのピンを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたモータにおいては、固定子回路基板が軸線方向において固定子の両面に設けられており、各固定子コイルの端部となる2つのピンは、軸線方向においてそれぞれ異なる側に引き出されている。そのため、軸線方向においてモータは、嵩高になっており、モータを特に軸線方向においてコンパクト化したいという需要があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、軸線方向においてモータをコンパクト化する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るモータは、環状に並ぶ複数のコイル群と、軸線に沿って前記コイル群の一方の面に設けられた複数の配線層を有する基板と、を備え、前記コイル群は、一周方向に第1コイル群、第2コイル群、第3コイル群の順に設けられており、前記第1コイル群の通電方向は、前記第2コイル群及び前記第3コイル群の通電方向とは異なり、各コイル群は、前記一周方向に第1コイル、第2コイル、第3コイルの順にコイルを有し、各コイルは、2つの端部を前記一周方向に第1端部、第2端部の順に有し、前記第1コイル群において、前記第2コイルの第1端部と前記第3コイルの第1端部とは、複数の配線層のうち第1配線層において電気的に接続されており、前記第1コイルの第2端部と前記第2コイルの第2端部とは、複数の配線層のうち第2配線層において電気的に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軸線方向においてモータをコンパクト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態に係るモータを説明するための斜視図である。
【
図2A】本実施の形態に係るモータのステータを説明するための斜視図である。
【
図2B】樹脂で覆われる前の本実施の形態におけるステータを示す斜視図である。
【
図3A】樹脂で覆われる前の本実施の形態におけるステータの分解斜視図である。
【
図4】
図3AにおけるIV-IV線に沿った部分の拡大断面図である。
【
図5A】基板の一番目の配線層を示す平面図である。
【
図5B】基板の二番目の配線層を示す平面図である。
【
図5C】基板の三番目の配線層を示す平面図である。
【
図5D】基板の四番目の配線層を示す平面図である。
【
図6A】本実施の形態におけるU相のコイル群における配線を示す配線図である。
【
図6B】本実施の形態におけるV相のコイル群における配線を示す配線図である。
【
図6C】本実施の形態におけるW相のコイル群における配線を示す配線図である。
【
図7】本実施の形態におけるステータ全体の配線図である。
【
図8】比較例のU相におけるコイル群における配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0010】
[1]本実施の形態に係るステータ(1)は、環状に並ぶ複数のコイル群(40,50,60)と、軸線(x)に沿ってコイル群(40,50,60)の一方の側(x1)に設けられた複数の配線層(72,73,74,75)を有する基板(70)と、を備え、コイル群(40,50,60)は、一周方向(R1)に第1コイル群(40)、第2コイル群(50)、第3コイル群(60)の順に設けられており、第1コイル群(40)の通電方向は、第2コイル群(50)及び第3コイル群(60)の通電方向とは異なり、各コイル群(40,50,60)は、一周方向(R1)に第1コイル(41,51,61)、第2コイル(42,52,62)、第3コイル(43,53,63)の順にコイルを有し、各コイル(41,42,43,51,52,53,61,62,63)は、2つの端部を一周方向(R1)に第1端部(U1,U3,U5,U19,U21,U23,W7,W9,W11,W25,W27,W29,V13,V15,V17,V31,V33,V35)、第2端部(U2,U4,U6,U20,U22,U24,W8,W10,W12,W26,W28,W30,V14,V16,V18,V32,V34,V36)の順に有し、第1コイル群(40)において、第2コイル(42)の第1端部(U3,U21)と第3コイル(43)の第1端部(U5,U23)とは、配線層(75)において電気的に接続されており、第1コイル(41)の第2端部(U2,U20)と第2コイル(42)の第2端部(U4,U22)とは、配線層(75)とは異なる配線層(74)において電気的に接続されていることを特徴とする。
【0011】
[2]上記[1]に記載のステータ(1)の一態様において、第1端部(U1,U3,U5,U19,U21,U23,W7,W9,W11,W25,W27,W29,V13,V15,V17,V31,V33,V35)及び第2端部(U2,U4,U6,U20,U22,U24,W8,W10,W12,W26,W28,W30,V14,V16,V18,V32,V34,V36)はそれぞれ、基板(70)の側に設けられている。
【0012】
[3]上記[1]又は[2]に記載のステータ(1)の一態様において、周方向(R)に連続した3つのコイル群(40,50,60)にそれぞれ外部接続部(79U,79W,79V)が設けられている。
【0013】
[4]上記[3]に記載のステータ(1)の一態様において、外部接続部(79U,79W,79V)は、基板(70)において最上層(72)に設けられており、導通孔(72v)を介して下の配線層(73)に電気的に接続されている。
【0014】
[5]上記[1]から[4]のいずれか一に記載のステータ(1)の一態様において、複数の配線層(72,73,74,75)の間には絶縁層(71)が設けられている。
【0015】
[6]上記[1]から[5]のいずれか一に記載のステータ(1)の一態様において、複数のコイル群(40,50,60)は、それぞれ径方向に対向して配置された一対の第1コイル群(40A,40B)、一対の第2コイル群(50A,50B)及び一対の第3コイル群(60A,60B)を含み、一対の第1コイル群(40A,40B)は、配線層(74)において互いに電気的に接続されており、一方の第1コイル群(40B)は、配線層(74)において第3コイル群(60A)に電気的に接続されている。
【0016】
[7]上記[6]に記載のステータ(1)の一態様において、第2コイル群(50A,50B)の第1コイル(51)の第1端部(W7,W25)と第2コイル(52)の第1端部(W9,W27)、及び第2コイル(52)の第2端部(W10,W28)と第3コイル(53)の第2端部(W12,W30)は、配線層(75)において電気的に接続されており、一対の第2コイル群(50A,50B)は、配線層(74,75)とは異なる配線層(73)において互いに電気的に接続されており、第2コイル群(50B)は、配線層(73)において第1コイル群(40A)に電気的に接続されている。
【0017】
[8]上記[6]又は[7]に記載のステータ(1)の一態様において、第3コイル群(60A,60B)の第1コイル(61)の第1端部(V13,V31)と第2コイル(62)の第1端部(V15,V33)、及び第2コイル(62)の第2端部(V16,V34)と第3コイル(63)の第2端部(V18,V36)は、配線層(75)において電気的に接続されており、一対の第3コイル群(60A,60B)は、配線層(73,74,75)とは異なる配線層(72)において互いに電気的に接続されており、一方の第3コイル群(60B)は、配線層(72)において第2コイル群(50A)に電気的に接続されている。
【0018】
[9]本実施の形態に係るモータ(100)は、ロータ(110)と、環状に並ぶ複数のコイル群(40,50,60)と、軸線(x)に沿ってコイル群(40,50,60)の一方の側(x1)に設けられた複数の配線層(72,73,74,75)を有する基板(70)と、を備え、コイル群(40,50,60)は、一周方向(R1)に第1コイル群(40)、第2コイル群(50)、第3コイル群(60)の順に設けられており、第1コイル群(40)の通電方向は、第2コイル群(50)及び第3コイル群(60)の通電方向とは異なり、各コイル群(40,50,60)は、一周方向(R1)に第1コイル(41,51,61)、第2コイル(42,52,62)、第3コイル(43,53,63)の順にコイルを有し、各コイル(41,42,43,51,52,53,61,62,63)は、2つの端部を一周方向(R1)に第1端部(U1,U3,U5,U19,U21,U23,W7,W9,W11,W25,W27,W29,V13,V15,V17,V31,V33,V35)、第2端部(U2,U4,U6,U20,U22,U24,W8,W10,W12,W26,W28,W30,V14,V16,V18,V32,V34,V36)の順に有し、第1コイル群(40)において、第2コイル(42)の第1端部(U3,U21)と第3コイル(43)の第1端部(U5,U23)とは、配線層(75)において電気的に接続されており、第1コイル(41)の第2端部(U2,U20)と第2コイル(42)の第2端部(U4,U22)とは、配線層(75)とは異なる配線層(74)において電気的に接続されていることを特徴とする。
【0019】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率等が異なる部分が含まれている場合がある。
【0020】
<モータの構成>
本実施の形態に係るモータ100は、例えば、3相(U相、V相及びW相)が設定されて、各相のコイルに適宜なタイミングにおいて電力を供給することにより回転が制御される内転型のブラシレスDCモータである。モータ100の具体的な構成については以下に具体的に説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態に係るモータ100を説明するための斜視図である。モータ100は、ロータ110と、回転軸(図示せず)と、ステータ1と、を備える。ロータ110は、円筒状に形成されている。ロータ110の中央には回転軸が貫通して設けられている。ロータ110と回転軸とは、射出成形により一体的に成型されている。説明の便宜上、回転軸の回転中心となる軸線xにおいて、モータ100の一方の側を「上側x1」とし、他方の側を「下側x2」とする。また、図面において、軸線x周りの方向である「周方向R」のうち、時計回り方向を「周方向R1」とし、反時計回り方向を「周方向R2」とする。
【0022】
ロータ110は、径方向において、後述するステータ1の内側に配置されている。ロータ110は、磁極の異なる複数のマグネット111S,111N,111s,111n(単に、「マグネット111」ともいう)と、ロータコア112と、を有する。
【0023】
マグネット111は、ロータコア112に埋め込まれている。マグネット111Sとマグネット111Nは、例えば、ロータコア112において、周方向Rに所定の間隔をあけて交互に放射状に設けられている。各マグネット111Sとマグネット111Nの間にもそれぞれ磁極の異なるマグネット111sとマグネット111nとが設けられている。マグネット111は、例えば、ネオジム磁石のような希土類磁石により形成される。また、マグネット111には、ボンド磁石や焼結磁石を用いてもよい。なお、マグネット111は、限定されることはなく、円筒形状の磁石や多角形状の磁石を用いてもよい。
【0024】
図2Aは、本実施の形態に係るモータ100のステータ1を説明するための斜視図である。
図2Bは、樹脂で覆われる前の本実施の形態におけるステータ1を示す斜視図である。ステータ1は、ロータ110の外周側に設けられている。ステータ1には、例えば、インバータ回路(図示せず)から交流電力が供給される。ステータ1は、樹脂材料10により覆われている。ステータ1は、ステータコア20と、インシュレータ30と、複数のコイル群40,50,60と、多層の基板70と、を有する。
【0025】
ステータコア20は、例えば、周方向Rに沿って円環状に配置されている。ステータコア20は、例えば、ケイ素鋼板、電磁鋼板等の軟磁性鋼板等の板状の金属部材を軸方向に複数積層することによって形成されている。ステータコア20は、ロータ110と対向する内周部21と、外周部22と、を有する。
【0026】
インシュレータ30は、例えば樹脂等の絶縁体により形成される。インシュレータ30は、ステータコア20を、軸線xにおいて上側x1及び下側x2から覆っている。インシュレータ30は、内周部31と、外周部32と、を有する。
【0027】
図3Aは、樹脂で覆われる前の本実施の形態におけるステータ1の分解斜視図である。
図3Bは、
図3Aにおけるステータ1の平面図である。複数のコイル群40A,40B,50A,50B,60A,60Bがステータ1の周方向Rに連続して設けられている。コイル群40は、U相(第1相)を構成しており、ステータ1においては、2つのコイル群40A,40Bが径方向に対向する位置に設けられている。コイル群50A,50Bは、W相(第2相)を構成しており、ステータ1においては、2つのコイル群50A,50Bが径方向に対向する位置に設けられている。コイル群60A,60Bは、V相(第3相)を構成しており、ステータ1においては、2つのコイル群60A,60Bが径方向に対向する位置に設けられている。なお、以下では「コイル群40A,40B」、「コイル群50A,50B」及び「コイル群60A,60B」をまとめて、単に、「コイル群40,50,60」とも言う。
【0028】
モータ100においては、コイル群40,50,60は、互いに、例えば、スター結線されている。ステータ1においてコイル群40,50,60は、周方向R1において、コイル群40,コイル群50,コイル群60,コイル群40,コイル群50,コイル群60の順に環状に設けられている。
【0029】
コイル群40A,40Bは、第1コイル41と、第2コイル42と、第3コイル43と、を有している(以下、まとめて「コイル41,42,43」ともいう)。コイル群40において、周方向R1において、コイル41、コイル42、コイル43の順に並んで設けられている。
【0030】
コイル41,42,43は、インシュレータ30を介してステータ1に導線を巻き回すことにより形成されている。コイル群40Aのコイル41,42,43はそれぞれ、第1端子(第1端部)U1,U3,U5と、第2端子(第2端部)U2,U4,U6と、を有している(以下、まとめて「端子U1,U2,U3,U4,U5,U6」ともいう)。端子U1,U2,U3,U4,U5,U6は、引出線として、上側x1に引き出されている。
【0031】
コイル群40Bのコイル41,42,43はそれぞれ、第1端子(第1端部)U19,U21,U23と、第2端子(第2端部)U20,U22,U24と、を有している(以下、まとめて「端子U19,U20,U21,U22,U23,U24」ともいう)。端子U19,U20,U21,U22,U23,U24は、引出線として、上側x1に引き出されている。
【0032】
コイル群40Aにおいてコイル41,42,43の第1端子U1,U3,U5及び第2端子U2,U4,U6は、周方向R1において、交互に並んでいる。コイル群40Bにおいてコイル41,42,43の第1端子U19,U21,U23及び第2端子U20,U22,U24は、周方向R1において、交互に並んでいる。
【0033】
コイル51,52,53は、インシュレータ30を介してステータ1に導線を巻き回すことにより形成されている。コイル群50Aのコイル51,52,53はそれぞれ、第1端子(端部)W7,W9,W11と、第2端子(端部)W8,W10,W12と、を有している(以下、まとめて「端子W7,W8,W9,W10,W11,W12」ともいう)。端子W7,W8,W9,W10,W11,W12は、引出線として、上側x1に引き出されている。
【0034】
コイル群50Bのコイル51,52,53はそれぞれ、第1端子(端部)W25,W27,W29と、第2端子(端部)W26,W28,W30と、を有している(以下、まとめて「端子W25,W26,W27,W28,W29,W30」ともいう)。端子W25,W26,W27,W28,W29,W30は、引出線として、上側x1に引き出されている。
【0035】
コイル群50Aにおいてコイル51,52,53の第1端子W7,W9,W11及び第2端子W8,W10,W12は、周方向R1において、交互に並んでいる。コイル群50Bにおいてコイル51,52,53の第1端子W25,W27,W29及び第2端子W26,W28,W30は、周方向R1において、交互に並んでいる。
【0036】
コイル群60Aにおいてコイル61,62,63の第1端子V13,V15,V17及び第2端子V14,V16,V18は、周方向R1において、交互に並んでいる。コイル群60Bにおいてコイル61,62,63の第1端子V31,V33,V35及び第2端子V32,V34,V36は、周方向R1において、交互に並んでいる。
【0037】
コイル61,62,63は、インシュレータ30を介してステータ1に導線を巻き回すことにより形成されている。コイル群60Aのコイル61,62,63はそれぞれ、第1端子(端部)V13,V15,V17と、第2端子(端部)V14,V16,V18と、を有している(以下、まとめて「端子V13,V14,V15,V16,V17,V18」ともいう)。端子V13,V14,V15,V16,V17,V18は、引出線として、上側x1に引き出されている。
【0038】
コイル群60Bのコイル61,62,63はそれぞれ、第1端子(端部)V31,V33,V35と、第2端子(端部)V32,V34,V36と、を有している(以下、まとめて「端子V31,V32,V33,V34,V35,V36」ともいう)。端子V31,V32,V33,V34,V35,V36は、引出線として、上側x1に引き出されている。
【0039】
コイル群60Aにおいてコイル61,62,63の第1端子V13,V15,V17及び第2端子V14,V16,V18は、周方向R1において、交互に並んでいる。コイル群60Bにおいてコイル61,62,63の第1端子V31,V33,V35及び第2端子V32,V34,V36は、周方向R1において、交互に並んでいる。
【0040】
図4は、
図3AにおけるIV-IV線に沿った部分の拡大断面図である。本実施の形態において、基板70は、コイル群40,50,60の端子U1~U6,W7~W12,V13~V18,U19~U24,W25~W30,V31~V36が引き出された側、つまり、モータ100の上側x1にのみ設けられている。なお、端子U1~U6,W7~W12,V13~V18,U19~U24,W25~W30,V31~V36が下側x2に向かって引き出される場合、基板70は、モータ100の下側x2に設けられる。
【0041】
基板70は、絶縁層71と、配線層72,73,74,75と、を有する。絶縁層71は、例えば、エポキシ等の絶縁性を有する樹脂材料で形成されている。配線層72,73,74,75は、金属等により形成されている。基板70は、絶縁層71及び配線層72,73,74,75は、軸線xに沿って交互に積層されることにより形成された、銅配線(以下、「導体路」ともいう)を有する結線基板である。
【0042】
基板70は、複数のランド78と、パッド(外部接続部)79U,79W,79Vと、を有する。ランド78は、導電性を有する部材により形成されており、各コイル41,42,43,51,52,53,61,62,63から引き出された導線の端子U1~U6,W7~W12,V13~V18,U19~U24,W25~W30,V31~V36に電気的に接続可能な接続部である。
【0043】
図5Aは、基板70の一番目の配線層72を示す平面図である。
図5Bは、基板70の二番目の配線層73を示す平面図である。
図5Cは、基板70の三番目の配線層74を示す平面図である。
図5Dは、基板70の四番目の配線層75を示す平面図である。本実施の形態において4層ある配線層72,73,74,75のうち、配線層72は、軸線xに沿って最も上側x1にある配線層(第4配線層)である。
【0044】
上側x1に面する配線層72の面は、例えば、レジスト等により被覆された絶縁性の被覆部76を有している。配線層72には、パッド79U,79W,79Vが設けられている。パッド79U,79W,79V(以下、単に「パッド79」ともいう)は、径方向において配線層72の中央部に形成されていて、被覆部76から外部に露出している。パッド79は、外部装置と接続される外部接続部であり、パッド79を通じて外部装置からモータ100を駆動する電力が供給される。パッド79UはU相を構成するコイル群40A,40Bを通じてモータ100に電力を供給し、パッド79WはW相を構成するコイル群50A,50B通じてモータ100に電力を供給し、パッド79VはV相を構成するコイル群60A,60Bを通じてモータ100に電力を供給する。パッド79U,79W,79Vは、周方向R1において連続するコイル群40,50,60に設けられている。
【0045】
径方向において、被覆部76の中央部には、例えば、非導電性のインクを用いたスクリーン印刷により基板上の一定の範囲に形成された膜(シルク)により、ロゴ、文字、記号等(不図示)が表記可能である。なお、中央部は、シルクを有さない非形成領域のみを有してもよい。
【0046】
配線層72は、複数の導体路720,721を有する。導体路720は、コイル群60Aのコイル63の端子V17と、コイル群60Bのコイル61の端子V32とを電気的に接続する。導体路721は、コイル群60Bのコイル63の端子V35と、コイル群50Aのコイル51の端子W8とを電気的に接続する。
【0047】
配線層73は、配線層72に対して直ぐ下側x2にある配線層(第3配線層)である。配線層72と配線層73とは、ビアとして形成された複数の導通孔72vを介して電気的に接続されている。導通孔72vは、少なくともパッド79が設けられた領域を周方向Rに超えて設けられている。つまり、パッド79を通じて供給された電力は、基板70の配線層73において各コイル群40,50,60に供給される。具体的には、パッド79Uは、配線層73においてコイル群40Aのコイル43の端子U6と電気的に接続されている。パッド79Wは、配線層73においてコイル群50Aのコイル51の端子W8と電気的に接続されている。パッド79Vは、配線層73においてコイル群60Aのコイル61の端子V14と電気的に接続されている。
【0048】
配線層73は、複数の導体路730,731を有する。導体路730は、コイル群50Aのコイル53の端子W11と、コイル群50Bのコイル51の端子W26とを電気的に接続する。導体路731は、コイル群50Bのコイル53の端子W29と、コイル群40Aのコイル43の端子U6とを電気的に接続する。
【0049】
配線層74は、配線層73に対して直ぐ下側x2にある配線層(第2配線層)である。配線層74は、複数の導体路740,741,742,743を有する。導体路740は、コイル群40Aのコイル41の端子U1と、コイル群40Bのコイル43の端子U24とを電気的に接続する。導体路741は、コイル群40Aのコイル41の端子U2と、コイル群40Aのコイル42の端子U4とを電気的に接続する。導体路742は、コイル群60Aのコイル61の端子V14と、コイル群40Bのコイル41の端子U19とを電気的に接続する。導体路743は、コイル群40Bのコイル41の端子U20と、コイル群40Bのコイル42の端子U22とを電気的に接続する。
【0050】
配線層75は、配線層74に対して直ぐ下側にx2にある配線層(第1配線層)である。配線層75は、複数の導体路750,751,752,753,754,755,756,757,758,759,を有する。導体路750は、コイル群40Aのコイル42の端子U3と、コイル群40Aのコイル43の端子U5とを電気的に接続する。導体路751は、コイル群50Aのコイル51の端子W7と、コイル群50Aのコイル52の端子W9とを電気的に接続する。導体路752は、コイル群50Aのコイル52の端子W10と、コイル群50Aのコイル53の端子W12とを電気的に接続する。導体路753は、コイル群60Aのコイル61の端子V13と、コイル群60Aのコイル63の端子V15とを電気的に接続する。導体路754は、コイル群60Aのコイル52の端子V16と、コイル群60Aのコイル63の端子V18とを電気的に接続する。導体路755は、コイル群40Bのコイル42の端子U21と、コイル群40Bのコイル43の端子U23とを電気的に接続する。導体路756は、コイル群50Bのコイル51の端子W25と、コイル群50Bのコイル52の端子W27とを電気的に接続する。導体路757は、コイル群50Bのコイル52の端子W28と、コイル群50Bのコイル53の端子W30とを電気的に接続する。導体路758は、コイル群60Bのコイル61の端子V31と、コイル群60Bのコイル63の端子V33とを電気的に接続する。導体路759は、コイル群60Bのコイル52の端子V34と、コイル群60Bのコイル63の端子V36とを電気的に接続する。
【0051】
下側x1に面する配線層75の面は、例えば、レジスト等により被覆された絶縁性の被覆部77を有している。
【0052】
次に、各コイル群40,50,60における通電方向(配線方向)について説明する。以下では、パッド79Uに電流が供給された場合の形態を例にして説明する。
図6Aは、本実施の形態におけるU相のコイル群40における配線図である。
図6Bは、本実施の形態におけるW相のコイル群50における配線図である。
図6Cは、本実施の形態におけるV相のコイル群60における配線図である。
図7は、本実施の形態におけるステータ1全体の配線図である。
【0053】
本実施の形態において、U相を構成する第1コイル群40A,40B内における電流の向きは、周方向R2である。例えば、パッド79Uからコイル群40Aに供給された電流は、端子U6、端子U5、端子U3、端子U4、端子U2、端子U1の順にコイル群40Aを流れ、次いで、端子U1からコイル群40Bの端子U24に向かう。コイル群40Bの端子U24に供給された電流は、端子U23、端子U21、端子U22、端子U20、端子U19の順にコイル群40Bを流れ、次いで、コイル群60Aの端子V14に向かって流れる。
【0054】
第1コイル群40A,40Bにおいて、端子U5と端子U3及び端子U23と端子U21は、配線層75において接続されており、端子U4と端子U2及び端子U22及び端子U20は、配線層74において接続されている。端子U19とコイル群60Aの端子V14は、配線層74において接続されている。
【0055】
これに対して、W相及びV相を構成する第2コイル群50A,50B,60A,60B内における電流の向きは、第1コイル群40A,40Bにおける電流の向きとは反対方向であり、周方向R1である。コイル群60Aの端子V14に供給された電流は、端子V13、端子V15、端子V16、端子V18、端子V17の順にコイル群60Aを流れ、次いで、端子V17からコイル群60Bの端子V32に向かう。コイル群60Bの端子V32に供給された電流は、端子V31、端子V33、端子V34、端子V36、端子V35の順にコイル群60Bを流れ、次いで、コイル群50Aの端子W8に向かって流れる。
【0056】
第3コイル群60A,60Bにおいて、端子V13と端子V15、端子V16と端子V18、端子V31と端子V33及び端子V34と端子V36は、配線層75において接続されている。端子V17と端子V32及び端子V35とコイル群50Aの端子W8は、配線層72において接続されている。
【0057】
コイル群50Aの端子W8に供給された電流は、端子W7、端子W9、端子W10、端子W12、端子W11の順にコイル群50Aを流れ、次いで、端子W11からコイル群50Bの端子W26に向かう。コイル群50Bの端子W26に供給された電流は、端子W25、端子W27、端子W28、端子W30、端子W29の順にコイル群50Bを流れ、次いで、コイル群40Aの端子U6に向かって流れる。
【0058】
第2コイル群50A,50Bにおいて、端子W7と端子W9、端子W10と端子W12、端子W25と端子W27及び端子W28と端子W30は、配線層75において接続されている。端子W11と端子W26及び端子W29とコイル群40Aの端子U6は、配線層73において接続されている。
【0059】
また、スイッチの操作により、パッド79W,79Vに電流が供給された場合についての電流経路は、
図7から理解される。
【0060】
以上のような本実施の形態におけるステータ1を備えるモータ100によれば、基板70は軸線xに沿った方向においてモータ100の上側x1にのみ設けるだけでよいので、モータ100を軸線xに沿ってコンパクトにすることができる。さらに、モータ100においてコイル群40A,40Bにおける通電(配線)の向きは周方向R2であり、コイル群50A,50B,60A,60Bにおける通電(配線)の向きは周方向R1になっている。
【0061】
コイル群40A,40Bにおける通電の向きと、コイル群50A,50B,60A,60Bの通電の向きとを互いに逆にしたままで、特にコイル群40A,40Bにおけるコイル41,42,43同士を電気的に接続するための配線層の増加を抑制したい。
図8は、比較例のU相におけるコイル群400における配線図である。
【0062】
例えば、比較例におけるU相のコイル群400における通電の向きを、コイル群40A,40Bと同様とした場合であってもコイル410からコイル420、コイル430の順に通電する形態もある。この場合、電流は、コイル410の端子U2から入り、端子U1、コイル420の端子U3、端子U4、コイル430の端子U6、端子U5を順に通るようになっている。比較例におけるコイル群400においては、パッド79Uと端子U2とを電気的に接続する配線層と、端子U1と端子U3及び端子U4と端子U6とを電気的に接続する配線層と、端子U5と他のコイル群の端子とを電気的に接続する配線層との合計3つの配線層が必要になる。
【0063】
コイル430の端子U5と他のコイル群とを接続する導体路と、コイル410の側に延ばす必要があり、パッド79Uとコイル410の端子U2とを接続する導体路とを同一の配線層において交差させることはできない。そのため、それぞれ別の配線層を通す必要があり、U相のコイル群400において配線層が増加してしまう。比較例に係るコイル群400を備えたステータの場合、他のW相及びV相のコイル群における配線層との関係において基板は5層以上の配線層を有することになる。
【0064】
これに対して、上記実施の形態においては、コイル群40A,40Bにおける電流の向きを、第3コイル43の側から第1コイル41に向かうようにして、コイル43の端子U5,U23とコイル42の端子U3,U21とを導体路755を介して配線層75において電気的に接続し、コイル42の端子U4,U22とコイル41の端子U2,U20とを導体路743を介して配線層74において電気的に接続している。
【0065】
これにより、コイル群40A,40Bにおける電流の向きをコイル群50A,50B,60A,60Bにおける通電の向きに対して反対にしたままでも、U相のコイル群40A,40Bにおいては、2つの配線層74,75のみを介して配線されており、全てのコイル群40,50,60においても合計4層の配線層72,73,74,75により基板70は構成されている。これにより、基板70の多層化を抑制して薄型化を図ることができるとともに、コストの抑制も達成することができる。
【0066】
さらに、コイル群40,50,60における端子U1~U6,U19~U24,W7~W12,W25~W30,V13~V18,V31~V36を軸線xに沿ったいずれかの側(上側x1又は下側x2)に引き出せば基板70と接続することができるので生産性が向上する。
【0067】
さらに、異なる配線回路を有するコイル群40,50,60を基板70に採用することができるので、配線回路のバリエーションが増え、設計上の自由度が向上する。
【0068】
<その他>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。例えば、上記実施の形態においてコイル群40A,40Bにおける通電の向きは、反時計回りである周方向R2であったが、時計回りである周方向R1であってもよい。この場合、コイル群50A,50B,60A,60Bにおける通電の向きを反時計回りである周方向R2にすればよい。
【0069】
また、上記実施の形態におけるコイル群40の構成を、コイル群50又はコイル群60に適用させて、コイル群50,60の構成をコイル群40に適用させて、例えば、コイル群40がV相を構成し、コイル群50がU相を構成し、コイル群60がW相を構成してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1・・・ステータ
40,50,60・・・コイル群
41,42,43,51,52,53,61,62,63・・・コイル
U1,U3,U5,U19,U21,U23,W7,W9,W11,W25,W27,W29,V13,V15,V17,V31,V33,V35・・・第1端子(第1端部)
U2,U4,U6,U20,U22,U24,W8,W10,W12,W26,W28,W30,V14,V16,V18,V32,V34,V36・・・第2端子(第2端部)
70・・・基板
72・・・配線層(第4配線層)
73・・・配線層(第3配線層)
74・・・配線層(第2配線層)
75・・・配線層(第1配線層)
79U,79W,79V・・・パッド(外部接続部)
100・・・モータ
110・・・ロータ