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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039257
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ICカード
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20240314BHJP
   B42D 25/305 20140101ALI20240314BHJP
【FI】
G06K19/077 296
G06K19/077 144
G06K19/077 244
G06K19/077 272
B42D25/305 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143668
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】片岡 慎
【テーマコード(参考)】
2C005
【Fターム(参考)】
2C005MA16
2C005MB08
2C005NA09
2C005NB03
(57)【要約】
【課題】本発明に係るICカードによれば、アンテナの設計を最適化して、ICカード製造の自由度を向上させるICカードを提供することができる。
【解決手段】本発明に係るICカード1は、開口部51を有するカード基材5と、アンテナシート11と、アンテナコイルと、アンテナシート11の表面に形成された第一結合コイル122と、アンテナシート11の裏面に形成された第二結合コイル123と、を有するアンテナ基板と、開口部51に嵌め込まれ、基板21と、第一結合コイル122と対向し電磁結合可能な接続コイルと、ICチップ22と、樹脂封止部30と、を有するICモジュール20と、を備え、第一結合コイル122は、板厚方向から見て、樹脂封止部30と重ならないように配置されており、第二結合コイル123は、板厚方向から見て、少なくとも一部が樹脂封止部30と重なるように配置されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するカード基材と、
前記カード基材の裏面側に設けられ、
絶縁性のアンテナシートと、
前記アンテナシートの表面と裏面との少なくとも一面にわたって形成された導電性のアンテナコイルと、
前記アンテナシートの前記表面に形成された第一結合コイルと、
前記アンテナシートの前記裏面に形成された導電性の第二結合コイルと、
を有するアンテナ基板と、
前記カード基材の前記開口部に嵌め込まれ、
シート状に形成された基板と、
前記基板の裏面に螺旋状に形成され板厚方向において前記第一結合コイルと対向し電磁結合可能な接続コイルと、
前記接続コイルの内周側に備えられたICチップと、
前記基板の前記裏面に前記ICチップを覆うように備えられた樹脂封止部と、
を有するICモジュールと、
を備え、
前記第一結合コイルは、前記板厚方向から見て、前記樹脂封止部と重ならないように配置されており、
前記第二結合コイルは、前記板厚方向から見て、少なくとも一部が前記樹脂封止部と重なるように配置されている
ICカード。
【請求項2】
前記カード基材は、金属によって形成される
請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
前記第二結合コイルの最外周の導線は、前記板厚方向から見て、前記開口部の周縁に重なるまたは、前記周縁よりも内周側に形成されている
請求項1または請求項2に記載のICカード。
【請求項4】
前記第一結合コイルの最外周の導線は、前記板厚方向から見て、前記第二結合コイルの最外周の導線よりも前記樹脂封止部から遠くに形成されている
請求項1または請求項2に記載のICカード。
【請求項5】
前記第一結合コイルと前記第二結合コイルとは、異なる形状に巻き回されて形成される
請求項1または請求項2に記載のICカード。
【請求項6】
少なくとも前記第一結合コイルの最内周の導線は、円形形状である
請求項1または請求項2に記載のICカード。
【請求項7】
少なくとも前記第二結合コイルの最外周の導線は、矩形形状である
請求項1または請求項2に記載のICカード。
【請求項8】
前記アンテナ基板は、表面を開口されて前記樹脂封止部の少なくとも一部を収容する凹部を備えている
請求項1または請求項2に記載のICカード。
【請求項9】
前記凹部は、前記第一結合コイルの最内周の導線よりも内周側に形成される
請求項8に記載のICカード。
【請求項10】
前記第一結合コイルの最内周の導線は、前記凹部と隣り合って形成される
請求項8に記載のICカード。
【請求項11】
前記アンテナ基板は、前記板厚方向において、前記凹部と異ならない位置に前記第一結合コイルと前記第二結合コイルとを導通させる導通部をさらに備える
請求項8に記載のICカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体メモリー等を内蔵するICカードとして、接触型及び非接触型の双方として機能する、いわゆる複合ICカード(デュアルICカード)が知られている。複合ICカードは、例えば、クレジットカードや、キャッシュカード、プリペイドカード、会員カード、ギフトカード、交通カード、パスポートおよび免許証などに使用されている。複合ICカードは、例えば、接触型外部機器と接触するための接触端子と、接触型及び非接触型の双方として機能するICチップと、を搭載し、コイルが形成されたICモジュールと、ICモジュールに形成されたコイルへ非接触で電気的に結合するための結合コイルと外部の端末と非接触通信するための通信用のアンテナコイル(主コイル)とを有するアンテナを備えたアンテナシートと、を外装基材で挟持して構成される。外装基材としては、主にポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニルまたは酢酸ビニル共重合体等からなるシートが用いられる。
【0003】
近年の顧客要望の多種多様化により、外装基材の表面に金属を施したり、外装基材に金属板を用いたりして、独特の高級感を持つように視覚的・意匠的にメタリック感を演出することで、一般的なカードとの差別化を図るICカードのニーズが増加している。このように外装基材に金属を用いた非接触通信用のICカードは、外装基材である金属板にICモジュールを収容する貫通孔を設けることで、ICモジュールのコイルと、外装基材の裏面側に設けられたアンテナシートの結合コイルとを電気的に接続させる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方で、ICチップを搭載したICモジュールには、一般的にICチップとワイヤ等を覆う樹脂封止材が設けられる。樹脂封止材は、ICチップを外力負荷や環境負荷から保護したり、ワイヤ等の断線を防いだりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0235122号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のようなICカードは、樹脂封止材を備えたICモジュールを貫通孔に収容しようとすると、ICカードの板厚方向において、ICモジュール全体の厚みが大きくなるため、アンテナシートと干渉してしまう虞があった。アンテナシートに干渉しないようにICモジュールを配置しようとすると、外装基材の表面からICモジュールが飛び出してしまうため、外装基材や、外装基材とアンテナシートとを接着する接着材などの厚みを大きくして、板厚方向に高さを持たせる必要があった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、アンテナの設計を最適化して、ICカード製造の自由度を向上させるICカードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係るICカードは、開口部を有するカード基材と、前記カード基材の裏面側に設けられ、絶縁性のアンテナシートと、前記アンテナシートの表面と裏面との少なくとも一面にわたって形成された導電性のアンテナコイルと、前記アンテナシートの前記表面に形成された第一結合コイルと、前記アンテナシートの前記裏面に形成された導電性の第二結合コイルと、を有するアンテナ基板と、前記カード基材の前記開口部に嵌め込まれ、シート状に形成された基板と、前記基板の裏面に螺旋状に形成され板厚方向において前記第一結合コイルと対向し電磁結合可能な接続コイルと、前記接続コイルの内周側に備えられたICチップと、前記基板の前記裏面に前記ICチップを覆うように備えられた樹脂封止部と、を有するICモジュールと、を備え、前記第一結合コイルは、前記板厚方向から見て、前記樹脂封止部と重ならないように配置されており、前記第二結合コイルは、前記板厚方向から見て、少なくとも一部が前記樹脂封止部と重なるように配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るICカードによれば、アンテナの設計を最適化して、ICカード製造の自由度を向上させるICカードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一実施形態に係るICカードを模式的に示す平面図である。
図2】同ICカードの構成を説明する斜視図である。
図3】同ICカードのアンテナ基板の構成を模式的に示す斜視図である。
図4】同ICカードのアンテナ基板を模式的に示す斜視図である。
図5】カード基材の下側に設けられた同アンテナ基板の結合コイルを拡大した図である。
図6】(a)は、同ICカードのICモジュールを表面側から見た斜視図である。(b)は、同ICカードのICモジュールを裏面側から見た斜視図である。
図7図5のA-A断面に沿う同ICカードと開口部に収容されたICモジュールとを模式的に示す断面図である。
図8】同ICカードのICモジュールの通信性能の測定結果について従来のICカードと比較したグラフを示した図である。
図9】凹部が形成される前の第二実施形態に係るICカードの開口部を拡大した断面図である。
図10】凹部110が形成された後の同ICカードの開口部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態について、図1から図8を参照して説明する。また、以下で説明する実施形態や変形例において、相互に対応する構成については同一の符号を付し、重複部分については説明を省略する場合がある。さらに、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的または絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
【0012】
図1は、本発明の第一実施形態に係るICカード1を模式的に示す平面図である。図2は、図1のICカード1の構成を説明する斜視図である。
【0013】
以下のICカード1の説明において、ICカード1の長辺に沿う方向を長辺方向D1とし、水平面上で長辺方向D1に直交するICカード1の短辺に沿う方向を短辺方向D2とする。長辺方向D1及び短辺方向D2に沿う面は水平面とする(以下、単に水平面という)。また、長辺方向D1及び短辺方向D2と直交する鉛直方向を板厚方向Dtとする。
【0014】
長辺方向D1において、ICカード1の板厚方向Dtに沿う中心軸(不図示)から離れる一方側を左方LHとし、他方側を右方RHとする。また、短辺方向D2において、一方側を前方FRとし、他方側を後方RRとする。さらに、ICカード1の板厚方向Dtにおいて、上方側を上側UPとし、下方側を下側DWとする。なお、板厚方向Dtの上側UP側に備えられた面を表面とし、下側DWに備えられた面を裏面とする。
【0015】
図1に示すように、ICカード1は、外部機器との間で、接触型通信と非接触型通信とを可能としたデュアルICカードである。非接触型通信の通信領域は、本実施形態では、一般に市場において流通しているHF帯(13.56MHz)を用いる。ICカード1は、板状であり、板厚方向Dtの上側UPから見て、互いに対抗する長辺及び短辺を有する長方形形状に形成されている。ICカード1は、板厚方向Dtの厚みが、例えば、0.5~1.0mm程度に形成されている(ICカード1がクレジットカードである場合、ICカード1の厚みは0.76mm)。
【0016】
ICカード1は、図2に示すように、カード基材5と、アンテナ基板10と、ICモジュール20と、接着剤層40と、を備えている。
【0017】
[カード基材5]
カード基材5は、図2に示すように、ICカード1の表面1f側に配置される基材である。カード基材5の表面5fは、ICカード1の表面1fである。カード基材5は、本実施形態では、金属によって形成され、材料としては、鉄、ステンレス、銅、ニッケル、錫、亜鉛鉄、アルミニウム、マグネシウム、クロム、コバルト、モリブデン、チタン及びこれらの合金などを利用することが出来るが、重量感を一層求める上では、比重が大きく、金などの貴金属に比べ安価で、人体に対する毒性も低いタングステンを用いることが望ましい。
【0018】
なお、カード基材5の材料は、金属に限定されない。カード基材5は、例えば、非晶質ポリエステルなどのポリエステル系材料、PVC(ポリ塩化ビニル)などの塩化ビニル系材料、ポリカーボネート系材料、PET-G(ポリエチレンテレフタレート共重合体)などの十分な強度やエンボス性などのカードに必要な特性が得られる絶縁性の材料を用いてもよい。また、カード基材5は、金属シートや磁性体材料などを用いて形成されることもある。また、カード基材5は、UV硬化タイプや混合液反応硬化タイプ等の高い流動性と絶縁性とを有するプラスチック材料を用いて、カード形状に成形することもある。
【0019】
カード基材5の外形等の形状は、適宜カード規格に準じた外形等の形状を採用することができる。カード基材5は、二層以上の積層体として構成されていてもよい。また、カード基材5は、さらに磁気層、保護層等を設けてもよいし、感熱、熱転写またはインクジェット等の機能性の表面コートが施されていてもよい。カード基材5の表面5fは、透光性、着色透明性、または無色透明性を備えているのが好ましい。また、カード基材5には、細かい線状の凸部または凹部が形成されていてもよい。カード基材5は、開口部51を備えている。
【0020】
開口部51は、図1及び図2に示すように、中心軸O1を中心としてカード基材5を板厚方向Dtに貫通する。開口部51は、例えばカード基材5をミリング加工することで形成される。開口部51を板厚方向Dtの上側UPであるカード基材5の表面5fから見た形状は、特に限定されないが、本実施形態では、図1に示すように後述のICモジュール20のモジュール基板21に合わせて略矩形状に形成されている。
【0021】
[アンテナ基板10]
図3は、ICカード1のアンテナ基板10の構成を模式的に示す斜視図である。図4は、ICカード1のアンテナ基板10を模式的に示す斜視図である。
アンテナ基板10は、本実施形態において、図3に示すように、カード基材5の裏面5g(図2参照)側に設けられる。アンテナ基板10は、図3及び図4に示すように、アンテナシート11と、ブースターアンテナ12と、表裏導通部13と、キャパシタ14と、を備える。
【0022】
アンテナシート11は、可撓性を有する絶縁性の基板である。アンテナシート11は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、PET-G(テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系、ABS、ポリアクリル酸エステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリイミド、ガラスエポキシ、フェノール樹脂等の材料を適宜選択することができる。アンテナシート11は、凹部110を備えている。
【0023】
凹部110は、例えば、ミリング加工によってアンテナシート11の表面11fを開口されて形成されている。凹部110は、後述の樹脂封止部30の外枠31の円形形状に沿って周縁110aが円を描くように略円形形状に形成される。凹部110は、開口部51の下側DWに配置され、開口部51よりも開口面積が小さい。凹部110の中心は、本実施形態では、板厚方向Dtにおける開口部51の中心軸O1上に配置されている。凹部110は、後述するICモジュール20の樹脂封止部30の少なくとも一部を収容する。
【0024】
ブースターアンテナ12は、図3及び図4に示すように、アンテナシート11の表面11fと裏面11gとの両面に備えられたアンテナパターンである。ブースターアンテナ12は、結合コイル121と、主コイル(アンテナコイル)124とを有する。
【0025】
図5は、カード基材5の下側DWに設けられたアンテナ基板10の結合コイル121を拡大した図である。
結合コイル121は、導電性の第一結合コイル122と、導電性の第二結合コイル123と、を備える。
【0026】
第一結合コイル122は、図5に示すように、開口部51の中心軸O1を中心として、アンテナシート11の表面11fに後述する樹脂封止部30の外枠31(図6参照)の円形形状に巻き回されるように二巻き以上形成され、螺旋状に備えられる。第一結合コイル122は、カード基材5の開口部51から一部が露出していてもよい。第一結合コイル122は、図示しない接続配線を介してキャパシタ14の第一キャパシタ141へ電気的に接続される。なお、第一結合コイル122は、すべての導線が円形形状に巻き回されていなくてもよく、少なくとも第一結合コイル122の内周側122iに形成された最内周の導線122aが円形形状であればよい。
【0027】
最内周の導線122aは、凹部110の周縁110aよりも第一結合コイル122の外周側122jに形成される。そのため、第一結合コイル122は、板厚方向Dtから見て、凹部110と重ならない。また、第一結合コイル122は、板厚方向Dtから見て、凹部110よりも一回り小さい樹脂封止部30と重ならない。
【0028】
第一結合コイル122は、最内周の導線122aの先端に、端子部122pを備える。端子部122pは、第一結合コイル122の線幅(太さ)よりも幅を広くして、略円状に形成されている。端子部122pは、板厚方向Dtから見て、凹部110と重ならない位置に形成される。端子部122pの配置は、特に限定されないが、迂回して配線される第一結合コイル122の長さを減らすために、第一結合コイル122の中心から近い位置に配置されるのが好ましい。
【0029】
第二結合コイル123は、図5に示すように、開口部51の中心軸O1を中心として、アンテナシート11の裏面11gに、第一結合コイル122と異なる形状である矩形形状に巻き回されるように二巻き以上形成され、螺旋状に備えられる。ここで、凹部110は、アンテナシート11の表面11fに形成されており、アンテナシート11を貫通しない。そのため、第二結合コイル123は、アンテナシート11の裏面11gにおいて、板厚方向Dtから見て凹部110と重なる位置に配置することができる。また、第二結合コイル123は、板厚方向Dtから見て、少なくとも一部が後述の樹脂封止部30と重なる位置に配置することができる。第二結合コイル123は、図示しない接続配線を介してキャパシタ14の第二キャパシタ142へ電気的に接続される。なお、第二結合コイル123は、すべての導線が矩形形状に巻き回されていなくてもよく、少なくとも第二結合コイル123の外周側123jに形成された最外周の導線123bが矩形形状であればよい。
【0030】
図5に示すように、最外周の導線123bは、開口部51の周縁51aに重なるように形成されている。ただし、最外周の導線123bは、開口部51の周縁51aよりも第二結合コイル123の内周側123iに形成されていてもよい。この場合は、第二結合コイル123は、板厚方向Dtから見て開口部51に収まる。
【0031】
第二結合コイル123は、最内周の導線123aの先端に、端子部123pを備える。端子部123pは、第二結合コイル123の線幅(太さ)よりも幅を広くして、略円状に形成されている。端子部123pは、板厚方向Dtから見て、凹部110と重ならない位置に形成される。端子部123pは、本実施形態では、板厚方向Dtから見て、端子部122pと重なる位置に配置される。
【0032】
第一結合コイル122は、第二結合コイル123よりも大きくなるように形成されている。具体的には、第一結合コイル122の外周側122jに形成された最外周の導線122bは、第二結合コイル123の最外周の導線123bよりも中心軸O1から離れて(遠くに)形成されている。
【0033】
カード基材5の開口部51と、第一結合コイル122と、アンテナシート11の凹部110と、第二結合コイル123とは、図5に示すように、板厚方向Dtに沿って上側UPから下側DWに向かってこの順に配置される。
【0034】
主コイル(アンテナコイル)124は、図3及び図4に示すように、アンテナシート11の裏面11gに備えられる。主コイル124は、図示しない配線等によってアンテナシート11の裏面11gの第二結合コイル123と第二キャパシタ142とに電気的に接続されて、リーダライタなどの非接触型外部機器との非接触型通信を行う。主コイル124は、図4に示すように、矩形状に形成されている。主コイル124は、アンテナシート11の周縁11kに沿って一巻き、または二巻きに形成されている。ただし、主コイル124は、非接触型外部機器との非接触型通信が可能であればよく、巻き数、形状及び線幅等については限定されない。なお、主コイル124は、アンテナシート11の表面11fに備えられてもよく、表面11fと裏面11gとの少なくとも一面にわたって形成されていればよい。
【0035】
主コイル124の線幅は、結合コイル121の線幅よりも広い。結合コイル121および主コイル124の線幅は適宜設定することができ、設定により設定通信周波数における両者の虚部インピーダンスを同等とするのが好ましい。ただし、主コイル124の線幅は、結合コイル121の線幅と略同じであってもよいし、結合コイル121の線幅よりも細くてもよい。
【0036】
結合コイル121および主コイル124を備えたブースターアンテナ12の製造方法に特に制限はなく、様々な方法で形成することができる。製造方法として、金属板や金属箔のレーザー切断や打ち抜き、金属箔や金属層のエッチング、金属線の配置などを例示できる。打ち抜きは、特に主コイル124を幅広に形成する際に好適である。絶縁被覆された金属線を使って結合コイル121を形成すると、立体交差部位に別途絶縁体を配置する必要がなく、簡便に形成できる。結合コイル121と主コイル124とを異なる材料で形成する場合、両者の接続方法としては、はんだ付け、溶接、圧接などを採用できる。ブースターアンテナ12の幅(太さ)、間隔、巻数は、ブースターアンテナ12の特性や配置による制限などに応じて適宜設定できる。
【0037】
表裏導通部(導通部)13は、板厚方向Dtから見て、凹部110と重ならない位置に形成される。具体的には、表裏導通部13は、アンテナ基板10において、板厚方向Dtの下側DWに向けて第一結合コイル122の最内周の導線122aに形成された端子部122pと、第二結合コイル123の最内周の導線123aに形成された端子部123pとをかしめることによって形成される。表裏導通部13は、端子部122pと端子部123pが、かしめによって接触して導通することで、電気的に接続される(図7参照)。この構成により、アンテナシート11に備えられたブースターアンテナ12の表面11fと裏面11gとの両面のアンテナパターンが導通する。
【0038】
なお、ブースターアンテナ12の表面11fと裏面11gとの両面のアンテナパターンを電気的に接続する方法は、特に限定されない。例えば、ブースターアンテナ12の表面11fと裏面11gとの両面のアンテナパターンを形成した後に、それらを導通させる孔を所望の位置に形成した後、導電性インキを充填することにより導通させる方法でも良いし、めっきによって導通をとっても良い。
【0039】
キャパシタ14は、例えばチップコンデンサ等(平板コンデンサも含む)である。キャパシタ14は、主コイル124と共振回路を構成し共振周波数を調整する。キャパシタ14は、第一キャパシタ141と、第二キャパシタ142とを備える。
【0040】
第一キャパシタ141は、アンテナシート11の表面11fに備えられる。第一キャパシタ141は、第一結合コイル122に直列または並列に接続される。
【0041】
第二キャパシタ142は、アンテナシート11の裏面11gに備えられる。第二結合コイル123と主コイル124に直列または並列に接続され、板厚方向Dtから見て、第一キャパシタ141に重なるように形成される。
【0042】
キャパシタ14の静電容量は、第一キャパシタ141と第二キャパシタ142との重なる面積によって静電容量を変更することができる。キャパシタ14は、第一キャパシタ141と第二キャパシタ142との双方の電極の線幅、長さ、双方の相対的な配置等を変えることによって静電容量を調整することができる。重なる面積を変更する方法としては、それらの電極を形成する時に電極の長さ、線幅、双方の相対的な配置などを設定しても良い。また、一定の長さ、線幅、双方の相対的な配置関係にある電極を形成した後に、電極を除去して長さや線幅を、短くしたり、狭くしたりすることでも、キャパシタの静電容量を変更することができる。キャパシタ14は、一般的なグラビア印刷によりレジストが塗工された銅箔やアルミニウム箔に対してエッチングを行うことで形成することができる。
【0043】
[ICモジュール20]
図6(a)は、ICカード1のICモジュール20を表面20f側から見た斜視図である。図6(b)は、ICカード1のICモジュール20を裏面20g側から見た斜視図である。図7は、図5のA-A断面に沿うICカード1と開口部51に収容されたICモジュール20とを模式的に示す断面図である。
ICモジュール20は、開口部51の中心軸O1を中心として、カード基材5の開口部51に嵌め込まれる。ICモジュール20は、図6(a)及び図6(b)に示すように、モジュール基板(基板)21と、ICチップ22と、接続コイル23と、接触端子24と、樹脂封止部30とを備える。ICモジュール20の外形サイズは、例えば接触端子24が、6端子で構成されている場合には、水平面において、約8mm×10.6mmの寸法で形成される。ICモジュール20は、本実施形態では、ICカード1の中心軸(不図示)よりも長辺方向D1において左方LHであって、短辺方向D2において前方FRへ配置される。
【0044】
図7に示すように、ICモジュール20は、開口部51の内周面に当接して電気的な短絡を生じないように、開口部51の内周面とICモジュール20との間に、わずかな隙間Cを介して配置される。隙間Cを備えることで、ICモジュール20が導電性の金属によって形成されたカード基材5に接触して電気的な短絡が生じ、ICカードが通信不良となってしまう虞を無くすことができる。
【0045】
モジュール基板(基板)21は、ガラスエポキシやPETなどの材料を用いて水平面上に形成されたシート状の基板である。モジュール基板21は、板厚方向Dtにおいて、表面21fと、裏面21gとを有し、板厚方向Dtから見て、矩形状に形成されている。
【0046】
ICチップ22は、図6(b)に示すように、モジュール基板21の裏面21gへ備えられる。ICチップ22は、接触型通信機能および非接触型通信機能を有する公知の構成のものを用いることができる。モジュール基板21の裏面21gに取り付けられたICチップ22は、図示しない複数の端子を備えており、後述の接続コイル23や表面21fに取り付けられた接触端子24の電極に対し、モジュール基板21に形成された配線、ワイヤ、銅メッキ等によって形成されたスルーホールまたはビア等を介して電気的に接続される。ICチップ22は、例えば板厚方向Dtから見て矩形状に形成されている。また、ICチップ22は、接続コイル23の内周側23iへ配置されている。
【0047】
接続コイル23は、モジュール基板21の裏面21gへ図示しない接着剤等によって備えられる。接続コイル23は、内周側23iへICチップ22が配置されるように螺旋状に10数回程度巻いて形成されている。接続コイル23は、例えば、モジュール基板21の裏面21gに、銅箔やアルミニウム箔をエッチングでパターン化することで形成され、接続コイル23の厚さは、5~50μmである。接続コイル23の最外端及び最内端には、接続コイル23の線幅(太さ)よりも幅が広く形成された最外周端子部231及び最内周端子部232が形成されている。最外周端子部231及び最内周端子部232は、スルーホールまたはビアを備えており、ICチップ22が備えている複数の電極の一部へワイヤボンディング等で電気的に接続される。
【0048】
接続コイル23は、アンテナ基板10の表面10f側からカード基材5の開口部51を介してICモジュール20が開口部51に嵌め込まれたときに、ブースターアンテナ12の結合コイル121と電磁結合可能となるように配置されている。接続コイル23と、カード基材5の開口部51と、第一結合コイル122と、アンテナシート11の凹部110と、第二結合コイル123とは、板厚方向Dtに沿って上側UPから下側DWに向かってこの順に配置される。
【0049】
接触端子24は、図示しない接触型外部機器と接触可能に構成される。接触端子24は、図6(a)に示すように、モジュール基板21の表面21fへ形成される。接触端子24は、例えば、6端子で構成されている。接触端子24は、裏面に図示しない電極を備える。接触端子24は、モジュール基板21に形成された配線、ワイヤ、銅メッキ等によって形成されたスルーホールまたはビア等を介してICチップ22へ電気的に接続される。なお、接触端子は6端子でなくてもよく、従来の8端子であってもよい。
【0050】
樹脂封止部30は、ICチップ22とモジュール基板21の裏面21gに形成された配線やワイヤ等を覆う突起状部位である。樹脂封止部30は、図7に示すように、下側DWにむかってドーム状となるように、モジュール基板21の裏面21gに備えられている。樹脂封止部30の外枠31は、アンテナシート11に設けられた凹部110の周縁110aよりも一回り小さく、円形形状に形成されている。樹脂封止部30は、図7に示すように、板厚方向Dtから見て表裏導通部13と重ならない位置に配置されている。樹脂封止部30は、例えば、公知のエポキシ樹脂、紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂等などで形成することができる。樹脂封止部30は、ICチップ22を外力負荷や環境負荷から保護したり、ワイヤ等の断線を防いだりすることができる。樹脂封止部30は、一般的にICチップ22の中心軸O1を中心として合わせて配置する。
【0051】
[接着剤層40]
接着剤層40は、図7に示すように、カード基材5と、アンテナ基板10とを接着する。接着剤層40は、アンテナ基板10の表面10f(図2参照)に接着剤を塗布、または接着用のシートを積層して形成された絶縁体である。接着剤層40は、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース等の材料より構成されている。接着剤層40は、接着剤層40を貫通する接着剤層開口部401(図2参照)を備えている。接着剤層開口部401は、板厚方向Dtから見て、カード基材5の開口部51と同じ形状及び大きさに形成される。
【0052】
ICカード1は、アンテナ基板10と、アンテナ基板10に積層されたカード基材5及び接着剤層40と、カード基材5の開口部51に嵌め込まれたICモジュール20とを、熱圧によるラミネートあるいは接着等により挟み込んで一体化させ、その後、カードの形状に打ち抜いて成形される。ICカード1は、さらに成形されたあとにエンボス加工等を施されていてもよい。
【0053】
このとき、接着剤層40とカード基材5とを合わせたICカード1の表面1fからアンテナ基板10の表面10fまでの板厚方向Dtの深さt1は、ICモジュール20の板厚方向Dtの厚みt2よりも小さい。また、ICカード1の表面1fからアンテナシート11に形成された凹部110の底面110fまでの板厚方向Dtの深さt3は、厚みt2よりも大きい。そのため、ICモジュール20は、ICカード1の表面1fから飛びだすことなく、開口部51に嵌め込むことができる。
【0054】
(作用)
次にICカード1の作用について、図8を用いて説明する。図8は、ICカード1のICモジュール20の通信性能の測定結果について従来のICカードと比較したグラフを示した図である。図8のグラフは、横軸に周波数を示し、縦軸に通信性能(利得)を示す。
【0055】
一般的には、ICカード1は、HF帯(13.56MHz)の信号を用いて通信が行われる。そのため、周波数が13MHz~14MHzの帯域において、ICカード1の通信性能がよいのが好ましい。ICカード1全体の通信性能は、ICモジュール20の通信性能が高いほど高い。本実施形態では、測定結果が上側にあるほどICモジュール20の通信性能が高い。
【0056】
図8のグラフにおいて、実線で図示された実施例1は、本発明の第一実施形態に係るICカード1のICモジュール20の通信性能の測定結果である。また、図8のグラフにおいて、点線で図示された比較例1は、従来のICカードの通信性能のICモジュールの測定結果である。従来のICカードは、本発明の第一実施形態に係るICカード1と比較して、アンテナ基板のアンテナシートが凹部を備えていない。また、従来のICカードは、アンテナ基板の両面に備えられた結合コイル121の第一結合コイル122と第二結合コイル123とが、カード基材の開口部よりも大きな円を描くように螺旋状に備えられている。
【0057】
図8に示す測定結果から、実施例1のICモジュール20の通信性能の測定結果は、周波数が13MHz~14MHzの帯域において、比較例1より高くなっている。そのため、実施例1である本発明の第一実施形態に係るICカード1の通信性能は、従来例1のICカードの通信性能よりも高いことが確認できる。
【0058】
本実施形態では、第一結合コイル122は、板厚方向Dtから見て樹脂封止部30と重ならないように配置されている。また、第二結合コイル123は、板厚方向Dtから見て樹脂封止部と重なるように配置されている。そのため、第一結合コイル122は、樹脂封止部30と干渉することなくアンテナシート11上に配置することができる。また、第二結合コイル123は、樹脂封止部30と重なるように配置されることで、なるべくICモジュール20の接続コイル23に近づけて、通信性能を高くすることができる。
【0059】
また、本実施形態では、第二結合コイル123の最外周の導線123bは、板厚方向Dtから見て、開口部51の周縁51aに重なる、または、周縁51aよりも第二結合コイル123の内周側123iに形成されている。この場合も、第二結合コイル123は、なるべくICモジュール20の接続コイル23に近づけて、板厚方向Dtにおいて接続コイル23と対向させて通信性能を高くすることができる。
【0060】
また、本実施形態では、ICカード1の表面1fからアンテナ基板10の表面10fまでの板厚方向Dtの深さt1は、ICモジュール20の板厚方向Dtの厚みt2よりも小さいが、ICカード1の表面1fからアンテナシート11に形成された凹部110を含む深さt3が、ICモジュール20の板厚方向Dtの厚みt2よりも大きい。そのため、ICモジュール20は、ICカード1の表面1fから飛びだすことなく、開口部51に嵌め込むことができる。
【0061】
また、ICカード全体の総厚は、JIS規格やISO等によって規格されている。ICカード1は、凹部110によって、厚みt2のICモジュール20を収容できる。そのため、ICカード1は、カード基材5の厚みを自由に変更することができる。また、この場合も、ICカード1は、通信性能を維持しつつ、ICモジュール20を開口部51に嵌め込むことができる。なお、カード基材5は、金属によって形成される。そのため、一般的なカードに対して差別化を図り、重量感や独特の高級感を持つことができる。
【0062】
また、本実施形態では、第一結合コイル122と第二結合コイル123とは、異なる形状に巻き回されて形成される。そのため、第一結合コイル122と第二結合コイル123とは、磁界結合の効率を最適化するための好適な形状に設定でき、通信性能をさらに高くすることができる。
【0063】
また、本実施形態では、少なくとも第一結合コイル122の最内周の導線122aは、円形形状である。この場合は、最内周の導線122aをなるべく樹脂封止部30の外枠の形状である円形形状に近づけることで、樹脂封止部30との干渉を避けつつ、なるべくICモジュール20の接続コイル23に近づけて通信性能を高くすることができる。
【0064】
また、本実施形態では、少なくとも第二結合コイル123の最外周の導線123bは、矩形形状である。この場合は、最外周の導線123bをなるべく開口部51の周縁51aの形状である矩形形状に近づけることで、なるべく板厚方向DtにおいてICモジュール20の接続コイル23と対向させて、通信性能を高くすることができる。
【0065】
また、本実施形態では、アンテナシート11は、表面10fを開口されて樹脂封止部30の少なくとも一部を収容する凹部110を備えている。そのため、ICカード1は、ICモジュール20に設けられた樹脂封止部30をアンテナシート11に干渉させることなく、開口部51及び凹部110に収容することができる。また、凹部110を設けることで、ICモジュール20の高さを合わせやすくなり、接着剤層40またはカード基材5の層構成や板厚方向Dtの高さを変えて、自由度を増やすことが可能になる。
【0066】
また、本実施形態では、凹部110は、第一結合コイル122の最内周の導線122aよりも内周側122iに形成される。そのため、最内周の導線122aは、凹部110を避けて形成できる。
【0067】
また、本実施形態では、アンテナシート11は、板厚方向Dtにおいて、凹部110と異ならない位置に第一結合コイル122と第二結合コイル123とを導通させる表裏導通部13をさらに備える。そのため、樹脂封止部30と表裏導通部13とが干渉せず、板厚方向DtにおけるICカード1全体としての厚みを減らすことができる。
【0068】
以上、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態及び以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0069】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について、図9及び図10を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。なお、以下の実施形態は、いずれも第一実施形態と比較して第一結合コイルが異なっている。従って、以下の説明では、第一実施形態との相違点を中心に説明する。
【0070】
図9は、凹部110が形成される前の第二実施形態に係るICカード1Aの開口部51を拡大した断面図である。
凹部110が形成される前において、第一結合コイル122Aの最内周の導線122Aaは、図9に示すように、第一実施形態の最内周の導線122aと比較して、導線が長辺方向D1に太い。
【0071】
図10は、凹部110が形成された後のICカード1Aの開口部を拡大した断面図である。なお、図10において、ICモジュール20は、第一実施形態と同様の構成であるため、説明と図示を省略する。
凹部110がミリング加工によってアンテナシート11に形成されると、アンテナ基板10の表面10fに形成された導線の太い最内周の導線122Aaは、内周側122iの部分を同時にミリング加工されて、削り取られる。すると、最内周の導線122Aaは、図10に示すように、削り取られた後の最内周の導線122Baとなる。
【0072】
本実施形態では、ミリング加工後に削り取られて形成された第一結合コイル122Aの最内周の導線122Baは、凹部110と隣り合う。この場合は、第一実施形態と比較して、さらに、最内周の導線122Baが内周側122iに形成されているため、開口部51に収容されるICモジュール20の接続コイル23により近づいて、通信性能を高くすることができる。
【0073】
以上、本発明の第二実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態及び以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0074】
(変形例)
例えば、上述した実施形態では、樹脂封止部がドーム状であり、外枠が円形形状であったが、特に限定されない。樹脂封止部は、例えば、三角錐状、三角柱状、または多角柱状であってもよいし、外枠が三角形状や多角形状に形成されていてもよい。また、アンテナ基板に形成される凹部についても特に限定されず、樹脂封止部の形状に合わせて三角形状や多角形状などの形状に形成されていてもよい。
【0075】
また、本発明に係る第一結合コイルは、円形形状に巻き回されていなくてもよい。例えば、第一結合コイルは、第二結合コイルと同様の矩形状に巻き回され形成されていてもよく、特に限定されない。
【0076】
また、第二実施形態では、凹部110が形成される前の第一結合コイル122Aの最内周の導線122Aaは、導線が長辺方向D1に太いが、特に限定されず、短辺方向D2に太くてもよいし、長辺方向D1及び短辺方向D2に太くなるように形成されていてもよい。
【0077】
また、上述した実施形態では、ICカードの例として、接触型及び非接触型の双方として機能する、いわゆる複合ICカードの例を説明したが、特に限定されず、接触型のみ機能するICカードや、非接触型のみ機能するICカードにおいても適用可能である。
【0078】
いずれの上記形態においても、本発明に係るICカードによれば、アンテナの設計を最適化して、ICカード製造の自由度を向上させるICカードを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係るICカードによれば、アンテナの設計を最適化して、ICカード製造の自由度を向上させるので産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1、1A ICカード
1f 表面
1g 裏面
5 カード基材
51 開口部
51a 周縁
10 アンテナ基板
10f 表面
10g 裏面
11 アンテナシート
110 凹部
12 ブースターアンテナ
13 表裏導通部(導通部)
121 結合コイル
122、122A 第一結合コイル
122a、122Aa、122Ba (第一結合コイルの)最内周の導線
122b (第一結合コイルの)最外周の導線
123 第二結合コイル
123a (第二結合コイルの)最内周の導線
123b (第二結合コイルの)最外周の導線
124 主コイル(アンテナコイル)
14 キャパシタ
20 ICモジュール
21 モジュール基板(基板)
21f 表面
21g 裏面
22 ICチップ
23 接続コイル
24 接触端子
30 樹脂封止部
31 (樹脂封止部の)外枠
40 接着剤層
D1 長辺方向
D2 短辺方向
Dt 板厚方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10