(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039258
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】空間構造体
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
E04B2/74 561M
E04B2/74 561E
E04B2/74 561G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143671
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 和希
(72)【発明者】
【氏名】西村 たか子
(72)【発明者】
【氏名】土山 和功
(72)【発明者】
【氏名】中田 貴規
(57)【要約】
【課題】ビームの交差部において移動パネルを隣り合うガイドレールに支柱を迂回して移動させることができるようにした空間構造体を提供する。
【解決手段】複数の支柱3と、これら支柱3同士の上部を交差するように連結する複数のビーム4と、ビーム4に沿って設けられ、移動パネル9が移動可能に支持されるガイドレール5とを有する自立可能なフレーム体2とを備え、ビーム4の交差部において支柱3を挟んで隣り合う二つのガイドレール5は、ブリッジレール13により接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支柱と、これら支柱同士の上部を交差するように連結する複数のビームと、該ビームに沿って設けられ、移動パネルが移動可能に支持されるガイドレールとを有する自立可能なフレーム体とを備え、
前記ビームの交差部において前記支柱を挟んで隣り合う二つの前記ガイドレールは、ブリッジレールにより接続されていることを特徴とする空間構造体。
【請求項2】
前記ブリッジレールは、前記支柱を挟んで隣り合う前記二つのガイドレールに直線的に架設されていることを特徴とする請求項1に記載の空間構造体。
【請求項3】
前記ブリッジレールは、直角に隣り合う前記二つのガイドレールに対して、ほぼ45度の角度で架設されていることを特徴とする請求項2に記載の空間構造体。
【請求項4】
前記フレーム体は、少なくとも3方向から前記支柱に接続されたビームを備え、各ビームに設けられた互いに隣り合う前記ガイドレール同士に前記ブリッジレールが架設されていることを特徴とする請求項1に記載の空間構造体。
【請求項5】
前記ガイドレール及び前記ブリッジレールに案内される前記移動パネルの二つのガイドローラ間の寸法は、前記ブリッジレールの全長と同等または小であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の空間構造体。
【請求項6】
前記移動パネルは、床面に対して幅方向のほぼ中央部のみで接するようになっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の空間構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にオフィスや展示場等の室内空間を仕切るための空間構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
このような空間構造体としては、天井に水平に取り付けられた複数のビームに沿ってガイドレールを設け、このガイドレールに複数の移動パネルまたは固定パネルを支持して室内空間を仕切るようにした天吊りタイプのものが知られている。このような天吊りタイプの空間構造体では、その高さが天井の高さに左右されるため自由度が小さく、かつ業務環境や業務形態等の変化に対応することができない。また、床面と天井との間がパネルにより仕切られてしまうので室内空間の開放感もなくなる。
【0003】
このような問題に対処するものして、例えば特許文献1に記載されているような空間構造体(移動間仕切装置)がある。この空間構造体は、床面より起立する複数の支柱の上部同士をビーム(連結杆)により連結し上面視L字状、T字状、ロ字状となし、ビームに沿って設けられたガイドレールにより移動パネルを支持することにより、室内空間を所定の大きさの方形に仕切ることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3740554号公報(第1図、第3頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている空間構造体においては、移動パネルを移動させる場合、支柱間のガイドレールに沿って直線的にしか移動することができない。そのため、例えばホワイトボード付きの移動パネルを、ビームのL字交差部やT字交差部において隣り合うガイドレール間に移動させて兼用したりすることはできず、交差部の両方のガイドレールに移動パネルを複数支持しておく必要がある。例えば、T字交差部のガイドレールのそれぞれに移動パネルを支持させた場合には、空間構造体によって仕切られた内部空間の閉塞感が増す。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、ビームの交差部において移動パネルを隣り合うガイドレールに支柱を迂回して移動させることができるようにした空間構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の空間構造体は、
複数の支柱と、これら支柱同士の上部を交差するように連結する複数のビームと、該ビームに沿って設けられ、移動パネルが移動可能に支持されるガイドレールとを有する自立可能なフレーム体とを備え、
前記ビームの交差部において前記支柱を挟んで隣り合う二つの前記ガイドレールは、ブリッジレールにより接続されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ビームの交差部において移動パネルをブリッジレールを介して隣り合うガイドレールに支柱を迂回して移動させることができるので、移動パネルを隣り合うガイドレールにそれぞれ支持しておく必要はなく、移動パネルを兼用して閉塞感なく室内空間を仕切ることができる。
【0008】
前記ブリッジレールは、前記支柱を挟んで隣り合う前記二つのガイドレールに直線的に架設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、支柱を迂回して移動パネルを隣り合う二つのガイドレール間を短いルートで速やかに移動させることができる。
【0009】
前記ブリッジレールは、直角に隣り合う前記二つのガイドレールに対して、ほぼ45度の角度で架設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ビームの交差部において隣り合う二つのガイドレールをブリッジレールを介して対称に連結することができるので、一方のガイドレールから他方のガイドレールへの移動パネルの移動がスムーズになるとともに、最短ルートで支柱周りに移動パネルを見栄えよく配置することができる。
【0010】
前記フレーム体は、少なくとも3方向から前記支柱に接続されたビームを備え、各ビームに設けられた互いに隣り合う前記ガイドレール同士に前記ブリッジレールが架設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ビームのT字交差部や十字交差部において、移動パネルを180度回転させて表面と裏面を入れ替え操作することができる。
【0011】
前記ガイドレール及び前記ブリッジレールに案内される前記移動パネルの二つのガイドローラ間の寸法は、前記ブリッジレールの全長と同等または小であることを特徴としている。
この特徴によれば、T字交差部や十字交差部において、移動パネルの表面と裏面を反転させて移動させる操作がし易くなる。また、移動パネルをブリッジレールのみで支持しビームに対して傾斜状態に支持することができる。
【0012】
前記移動パネルは、床面に対して幅方向のほぼ中央部のみで接するようになっていることを特徴としている。
この特徴によれば、移動パネルがブリッジレールに沿って移動する際の床面に対しての接触抵抗が小さくなるので、交差部での方向転換がスムーズとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例に係る空間構造体の斜視図である。
【
図5】
図1のA部を斜め下方より見た拡大斜視図である。
【
図6】
図1のB部を斜め下方より見た拡大斜視図である。
【
図7】
図1のA部において移動パネルを一方のガイドレールから交差する他方のガイドレール側にブリッジレールを介して移動させる際の概略平面図である。
【
図8】
図1のB部において移動パネルを支柱を挟んで対向するガイドレールの反対側に移動させる際の概略平面図である。
【
図9】同じくB部において移動パネルを支柱を挟んで対向する反対側のガイドレールに表裏が反転するように移動させる際の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の空間構造体を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0015】
実施例に係る空間構造体につき、
図1から
図6を参照して説明する。なお、便宜上、
図1の紙面斜め右下方を前方、斜め左上方を後方、斜め右上方を右方、斜め左下方を左方として説明する。
図1に示すように、本実施例の空間構造体1は、オフィスや展示場等の広い室内空間を方形に区画するために床面に自立させて設置されるものであり、ミーティングや業務スペースなどに使用される。
【0016】
空間構造体1は、床面に自立させて設置されるフレーム体2を備えている。フレーム体2は、天井面よりも低い上下寸法の前後左右に所定間隔おきに並ぶ6本の支柱3と、各支柱3の上端部同士を平面視「日」形状をなすように直角に連結している前後左右7本のビーム4とを備えている。支柱3及びビーム4は、例えばアルミニウム材等の押出し成形によって製作されている。
【0017】
図2に示すように、各ビーム4の下端部に形成された下向き凹状の下面には、下端が内向き対向状に折曲された下向きコ字状断面のガイドレール5が複数のねじ6により固定されている。ガイドレール5は、例えばアルミニウム材等の押出し成形によって製作され、前方の左右方向に延びる2本のガイドレール5と前後方向に延びる3本のガイドレール5の長さは、後述するブリッジレール13を接続するためにビーム4の全長よりも所要寸法短かく形成されている(
図3、
図4参照)。なお各ビーム4の長さ方向の両側面は、ガイドレール5の両側面と共にカバー部材7,7により覆われているが、このようなカバー部材7は省略することもできる。
【0018】
後方の左右方向に延びるビーム4、4の下面に取り付けられたガイドレール(図示略)と床面との間には、下端にアジャスタ(図示略)を有する複数枚の固定パネル8が建付けされている。また、左右両端の前後方向に延びるビーム4、4の下面に取り付けられたガイドレール(図示略)と床面との間にも1枚の固定パネル8が建付けされている。なお、各固定パネル8は、ガイドレールに移動可能に吊支することもできる。
【0019】
図1に示すように、支柱3を挟んで対向する前方の左右方向に延びる2本のガイドレール5、5には、移動パネル9、9が移動可能に支持されている。すなわち、
図2に示すように、移動パネル9の枠状フレーム9aの上面に上下方向を向く左右一対の支持軸9bの下端を固着し、両支持軸9bの上端部に水平回転自在に取り付けられたガイドローラ10を、ガイドレール5内に転動可能に嵌挿することにより、移動パネル9はガイドレール5に移動可能に支持されている。なお、本実施例の移動パネル9は、枠状フレーム9aにホワイトボード11を取り付けて形成されているが、透明または半透明のガラスパネルや、表面と裏面の色、模様、デザイン等が異なる移動パネルなどを使用してもよい。移動パネル9の枠状フレーム9aの下面の幅方向の中央部には、移動時に床面に接して回転する車輪12が取り付けられている。なお、車輪12の代わりに水平回転自在なキャスタを取り付けてもよい。
【0020】
図3及び
図5に示すように、フレーム体2の前側の左方のコーナー部(
図1のA部)のガイドレール5、5、すなわち支柱3に2方向からL字状に直角に接続された2本のビーム4、4に取り付けた隣り合うガイドレール5、5の交差方向の終端には、ガイドレール5と同じ断面形状の直線形状のブリッジレール13の両端が、平面視及び底面視において45度をなすように、かつガイドレール5、5と連続するように架設されている。ブリッジレール13の両端部の上面は、ビーム4の下面にねじ14により固定されている。隣り合うカバー部材7、7の下端部は、ブリッジレール13が挿通されるように切り欠かれている。なお、右方のL字交差部のガイドレール5にも同様のブリッジレール13が架設されている。
【0021】
また、
図4及び
図6に示すように、フレーム体2の前側中央部のT字交差部(
図1のB部)の3本のガイドレール5、すなわち、支柱3に3方向から直角に接続された各ビーム4に取り付けられた隣り合う3本のガイドレール5の交差方向の終端にも、上記と同様のブリッジレール13、13の両端が、平面視及び底面視において45度をなすように、かつ3本のガイドレール5と連続するように架設されている。
【0022】
このように、ビーム4のL字交差部とT字交差部のガイドレール5にブリッジレール13を架設すると、移動パネル9を
図3及び
図4の矢印方向に移動させることができる。なお、
図6に示すように、本実施例においては、ブリッジレール13の全長、すなわちガイドレール5、5に連続する両端部間の寸法は、移動パネル9のガイドローラ10、10の中心間の寸法とほぼ等しくしてあるが、ガイドローラ10、10間の寸法をブリッジレール13の全長よりも所定寸法小としてもよい。
【0023】
次に、
図7から
図9の概略平面図を参照して移動パネル9の移動操作について説明する。
図7に示すように、例えば左側の移動パネル9を
図1のA部のL字交差部側に移動させると、移動パネル9を、ブリッジレール13を介して左右方向を向くガイドレール5から前後方向を向くガイドレール5側に、支柱3を迂回して移動させることができる。これにより、移動パネル9の位置を前方から左側方かつ後方に変更してホワイトボード11を使用することができる。
【0024】
図8に示すように、右側の移動パネル9を
図1のB部のT字交差部側に移動させ、互いに連続する右方のブリッジレール13と左方のブリッジレール13を通過させると、移動パネル9を、支柱3を挟んで対向する反対側のガイドレール5側に、支柱を迂回して移動させることができ、移動パネル9の位置を右方から左方に変更してホワイトボード11を使用することができる。この際、移動パネル9のガイドローラ10間の寸法をブリッジレール13の全長より若干短くしてあるので、ブリッジレール13に全体が支持された移動パネル9を、前側(
図8における右側)のガイドローラ10を支点として反時計方向に回動することができる。これにより、後側のガイドローラ10を左方のブリッジレール13側にスムーズに移動させることができる。また、移動パネル9をブリッジレール13により安定よく支持することができるので、移動パネル9のホワイトボード11をコーナー部において45度傾斜させた状態で使用することもできる(
図6参照)。
【0025】
図9に示すように、右側の移動パネル9を
図1のB部のT字交差部側に移動させ、右方のブリッジレール13を介して、前後方向に延びるガイドレール5側に一旦移動させた後、左方のブリッジレール13を介して対向する反対側のガイドレール5側に、スイッチバックして移動させると、移動パネル9が180度回転して表面と裏面を反転させることができ、ホワイトボード11の両面が使用可能となる。
【0026】
以上説明したように、実施例に係る空間構造体1においては、ビーム4の交差部において移動パネル9をブリッジレール13を介して隣り合うガイドレール5に支柱3を迂回して移動させることができるので、交差部のガイドレール5に移動パネル9を複数支持しておく必要はなく、移動パネル9を兼用して閉塞感なく室内空間を仕切ることができる。
【0027】
また、ブリッジレール13は、ビーム4の交差部のガイドレール5、5に45度の角度で架設されているので、移動パネル9を隣り合うガイドレール5に最短ルートで速やかに移動させることができる。また、交差部において隣り合う二つのガイドレール5、5をブリッジレール13を介して対照に連結することができるので、一方のガイドレール5から他方のガイドレール5への移動パネル9の移動がスムーズになるとともに、最短ルートで支柱3周りに移動パネルを見栄えよく配置することができる。
【0028】
さらに、ビーム4のT字交差部において、移動パネル9を180度回転させて表面と裏面を入れ替え操作することができるので、ミーティング等の際、移動パネル9のホワイトボード11の両面を使用することができる。また、表面と裏面の色、模様、デザイン等が異なる移動パネル9を使用した際には、空間構造体1を模様替えすることができる。
【0029】
さらに、移動パネル9の幅方向の中央部に車輪12が設けられているので、移動パネル9がブリッジレール13に沿って移動する際の床面に対しての接触抵抗が小さくなり、交差部での方向転換がスムーズとなる。
【0030】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内における追加や変更があっても、本発明に含まれる。
【0031】
例えば、前記実施例では、フレーム体2のビーム4を平面視「日」形状をなすように連結し、L字交差部とT字交差部にブリッジレール13を架設しているが、フレーム体2の中央部においてビーム4を十字状に交差させ、その十字交差部において隣り合うガイドレール5にブリッジレール13を架設するようにしてもよい。
【0032】
また、前記実施例では、後方と左右のビーム4に固定パネル8を支持しているが、固定パネル8の代わりに移動パネル9を支持してもよい。この際には、後部側のL字交差部とT字交差部の隣り合うガイドレール5にもブリッジレール13を架設するのがよい。
【0033】
また、前記実施例では、ブリッジレール13が直線状の形状を例示したが、湾曲した形状であってもよい。さらに、ブリッジレール13がガイドレール5に対して45度傾斜して取り付けられる例について説明したが、傾斜角度は45度に限らない。
【0034】
さらに、前記実施例では、左右方向に延びるビーム4と前後方向に延びるビーム4とを直角に交差するように連結しているが、鈍角をなすように連結された空間構造体にも本発明を適用することができる。
【0035】
また、前記実施例では、移動パネル9のガイドローラ10間の寸法をブリッジレール13の全長より若干短くしてあるが、これに限らず、例えば両者をほぼ同じ寸法としても同様に、後側のガイドローラ10を左方のブリッジレール13側にスムーズに移動させることができるとともに移動パネル9のホワイトボード11をコーナー部において45度傾斜させた状態で使用することができる。
【0036】
また、前記実施例では、移動パネル9にはホワイトボードが取り付けられているが、木製ボード、メッシュ板材等、他の面材が設けられていても良く、さらに、表面と裏面とが異なる面材となっていてもよい。