(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039264
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】メモリデバイス
(51)【国際特許分類】
G11C 11/22 20060101AFI20240314BHJP
H10B 51/40 20230101ALI20240314BHJP
【FI】
G11C11/22 230
G11C11/22 120
H01L27/11592
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143683
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 玲華
(72)【発明者】
【氏名】太田 健介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正道
【テーマコード(参考)】
5F083
【Fターム(参考)】
5F083FR06
5F083GA21
5F083KA01
5F083KA05
5F083LA12
5F083LA16
5F083MA06
5F083MA16
5F083MA19
5F083ZA01
(57)【要約】
【課題】メモリデバイスの信頼性を向上する。
【解決手段】実施形態のメモリデバイスは、基板の表面に対して垂直な第1の方向において前記基板の上方に設けられた導電層と、前記第1の方向に延び、前記基板の表面に対して平行な第2の方向において前記導電層に隣り合い、強誘電体層を含むピラーと、前記第3の導電層と前記ピラーとの間に設けられた強誘電体トランジスタを含むメモリセルと、前記メモリセルの読み出しシーケンスにおいて、前記メモリセルに読み出しパルスを供給する回路と、を含む。読み出しパルスは、第1の期間において第1の電圧値V11を有し、第1の期間T1の後の第2の期間T2において第1の電圧値V11と同じ極性でかつ前記第1の電圧値V11の絶対値より小さな絶対値の第2の電圧値V12を有する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に対して垂直な第1の方向において前記基板の上方に設けられた第1の導電層と、
前記第1の導電層と前記基板との間に設けられた第2の導電層と、
前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられた第3の導電層と、
前記第1の方向に延び、前記基板の表面に対して平行な第2の方向において前記第1乃至第3の導電層に隣り合い、強誘電体層を含むピラーと、
前記第1の導電層と前記ピラーとの間に設けられた第1のトランジスタと、
前記第2の導電層と前記ピラーとの間に設けられた第2のトランジスタと、
前記第3の導電層と前記ピラーとの間に設けられた強誘電体トランジスタを含むメモリセルと、
前記メモリセルの読み出しシーケンスにおいて、前記メモリセルに読み出しパルスを供給する回路と、
を具備し、
前記読み出しパルスは、
第1の期間において第1の電圧値を有し、
前記第1の期間の後の第2の期間において前記第1の電圧値と同じ極性でかつ前記第1の電圧値の絶対値より小さな絶対値の第2の電圧値を有する、
メモリデバイス。
【請求項2】
前記読み出しパルスは、前記強誘電体トランジスタのゲートとチャネルとの間に印加される電圧パルスである、
請求項1に記載のメモリデバイス。
【請求項3】
前記読み出しパルスは、正の極性を有する、
請求項1のメモリデバイス。
【請求項4】
前記回路は、書き込みシーケンスにおいて、正の極性の第3の電圧値を有する書き込みパルスを、前記メモリセルに供給し、
前記第1の電圧値の絶対値は、前記第3の電圧値の絶対値より小さい、
請求項3に記載のメモリデバイス。
【請求項5】
前記回路は、
前記第1の導電層に、第1の正電圧を印加し、
前記ピラーに、前記第1の正電圧より小さい第2の正電圧を印加する、
請求項3に記載のメモリデバイス。
【請求項6】
前記読み出しパルスは、負の極性を有する、
請求項1に記載のメモリデバイス。
【請求項7】
前記回路は、消去シーケンスにおいて、負の極性の第4の電圧値を有する消去パルスを、前記メモリセルに供給し、
前記第1の電圧値の絶対値は、前記第4の電圧値の絶対値より小さい、
請求項6に記載のメモリデバイス。
【請求項8】
前記回路は、
前記第1の導電層に、第3の正電圧を印加し、
前記ピラーに、前記第3の正電圧より大きい第4の正電圧を印加する、
請求項6に記載のメモリデバイス。
【請求項9】
消去シーケンスにおいて、
前記回路は、第1の極性の消去パルスを、前記メモリセルに供給し、
前記読み出しシーケンスにおいて、
前記回路は、前記第1の極性と異なる第2の極性の前記読み出しパルスの印加の後、前記第1の極性の第1のパルスを、前記メモリセルに供給し、
前記第1のパルスの電圧値の絶対値は、前記消去パルスの電圧値の絶対値より小さい、
請求項1に記載のメモリデバイス。
【請求項10】
第1の書き込みサイクル前の前記読み出しシーケンスにおいて、前記読み出しパルスは、前記第1の電圧値を有し、
前記第1の書き込みサイクル後の前記読み出しシーケンスにおいて、前記読み出しパルスは、前記第1の電圧値の絶対値より大きな絶対値の第5の電圧値を有する、
請求項1に記載のメモリデバイス。
【請求項11】
基板の表面に対して垂直な第1の方向において前記基板の上方に設けられた第1の導電層と、
前記第1の導電層と前記基板との間に設けられた第2の導電層と、
前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられた第3の導電層と、
前記第1の方向に延び、前記基板の表面に対して平行な第2の方向において前記第1乃至第3の導電層に隣り合い、酸化ハフニウムを含むピラーと、
前記第1の導電層と前記ピラーとの間に設けられた第1のトランジスタと、
前記第2の導電層と前記ピラーとの間に設けられた第2のトランジスタと、
前記第3の導電層と前記ピラーとの間に設けられた強誘電体トランジスタを含むメモリセルと、
前記メモリセルの読み出しシーケンスにおいて、前記メモリセルに読み出しパルスを供給する回路と、
を具備し、
前記読み出しパルスは、
第1の期間において第1の電圧値を有し、
前記第1の期間の後の第2の期間において前記第1の電圧値と同じ極性でかつ前記第1の電圧値の絶対値より小さな絶対値の第2の電圧値を有する、
メモリデバイス。
【請求項12】
前記読み出しパルスは、正の極性を有する、
請求項11のメモリデバイス。
【請求項13】
前記回路は、書き込みシーケンスにおいて、正の極性の第3の電圧値を有する書き込みパルスを、前記メモリセルに供給し、
前記第1の電圧値の絶対値は、前記第3の電圧値の絶対値より小さい、
請求項12に記載のメモリデバイス。
【請求項14】
前記回路は、
前記第1の導電層に、第1の正電圧を印加し、
前記ピラーに、前記第1の正電圧より小さい第2の正電圧を印加する、
請求項12に記載のメモリデバイス。
【請求項15】
前記読み出しパルスは、負の極性を有する、
請求項11に記載のメモリデバイス。
【請求項16】
前記回路は、消去シーケンスにおいて、負の極性の第4の電圧値を有する消去パルスを、前記メモリセルに供給し、
前記第1の電圧値の絶対値は、前記第4の電圧値の絶対値より小さい、
請求項15に記載のメモリデバイス。
【請求項17】
前記回路は、
前記第1の導電層に、第3の正電圧を印加し、
前記ピラーに、前記第3の正電圧より大きい第4の正電圧を印加する、
請求項15に記載のメモリデバイス。
【請求項18】
前記酸化ハフニウムは、ジルコニウムを含む、
請求項15に記載のメモリデバイス。
【請求項19】
消去シーケンスにおいて、
前記回路は、第1の極性の消去パルスを、前記メモリセルに供給し、
前記読み出しシーケンスにおいて、
前記回路は、前記第1の極性と異なる第2の極性の前記読み出しパルスの印加の後、前記第1の極性の第1のパルスを、前記メモリセルに供給し、
前記第1のパルスの電圧値の絶対値は、前記消去パルスの電圧値の絶対値より小さい、
請求項11に記載のメモリデバイス。
【請求項20】
第1の書き込みサイクル前の前記読み出しシーケンスにおいて、前記読み出しパルスは、前記第1の電圧値を有し、
前記第1の書き込みサイクル後の前記読み出しシーケンスにおいて、前記読み出しパルスは、前記第1の電圧値の絶対値より大きな絶対値の第5の電圧値を有する、
請求項11に記載のメモリデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、メモリデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電体の分極特性を利用してデータを記憶するメモリデバイスが、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7005398号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0376154号明細書
【特許文献3】米国特許第10,127,964号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メモリデバイスの信頼性を向上する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のメモリデバイスは、基板の表面に対して垂直な第1の方向において前記基板の上方に設けられた第1の導電層と、前記第1の導電層と前記基板との間に設けられた第2の導電層と、前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられた第3の導電層と、前記第1の方向に延び、前記基板の表面に対して平行な第2の方向において前記第1乃至第3の導電層に隣り合い、強誘電体層を含むピラーと、前記第1の導電層と前記ピラーとの間に設けられた第1のトランジスタと、前記第2の導電層と前記ピラーとの間に設けられた第2のトランジスタと、前記第3の導電層と前記ピラーとの間に設けられた強誘電体トランジスタを含むメモリセルと、前記メモリセルの読み出しシーケンスにおいて、前記メモリセルに読み出しパルスを供給する回路と、を含み、前記読み出しパルスは、第1の期間において第1の電圧値を有し、前記第1の期間の後の第2の期間において前記第1の電圧値と同じ極性でかつ前記第1の電圧値の絶対値より小さな絶対値の第2の電圧値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態のメモリデバイスの構成例を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態のメモリデバイスのメモリセルアレイの構成例を示す回路図。
【
図3】第1の実施形態のメモリデバイスのメモリセルアレイの構造例を示す断面図。
【
図4】第1の実施形態のメモリデバイスのメモリセルの構造例を示す上面図。
【
図5】第1の実施形態のメモリデバイスのメモリセルの構成例を示す断面図。
【
図6】第1の実施形態のメモリデバイスの動作原理を説明するための図。
【
図7】第1の実施形態のメモリデバイスの動作原理を説明するための図。
【
図8】第1の実施形態のメモリデバイスの動作原理を説明するための図。
【
図9】第1の実施形態のメモリデバイスの消去シーケンスを説明するための図。
【
図10】第1の実施形態のメモリデバイスの書き込みシーケンスを説明するための図。
【
図11】第1の実施形態のメモリデバイスの読み出しシーケンスを説明するための図。
【
図12】第1の実施形態のメモリデバイスの読み出しシーケンスを説明するための図。
【
図13】第1の実施形態のメモリデバイスの読み出しシーケンスを説明するための図。
【
図14】第2の実施形態のメモリデバイスの読み出しシーケンスを説明するための図。
【
図15】第2の実施形態のメモリデバイスの読み出しシーケンスを説明するための図。
【
図16】第2の実施形態のメモリデバイスの読み出しシーケンスを説明するための図。
【
図17】第3の実施形態のメモリデバイスの読み出しシーケンスを説明するための図。
【
図18】第4の実施形態のメモリデバイスの読み出しシーケンスを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1乃至
図18を参照して、実施形態のメモリデバイスについて、説明する。
【0008】
以下、図面を参照しながら、本実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については、同一符号を付す。
また、以下の各実施形態において、末尾に区別化のための数字/英字を伴った参照符号を付された構成要素(例えば、回路、配線、各種の電圧及び信号など)が、相互に区別されなくとも良い場合、末尾の数字/英字が省略された記載(参照符号)が用いられる。
【0009】
(実施形態)
(1)第1の実施形態
図1乃至
図13を参照して、第1の実施形態のメモリデバイスについて、説明する。
【0010】
(a)構成例
図1乃至
図5を参照して、本実施形態のメモリデバイス1の構成例について、説明する。
【0011】
図1は、本実施形態のメモリデバイス1の構成例を説明するためのブロック図である。
【0012】
図1に示されるように、本実施形態のメモリデバイス1は、メモリコントローラ2に電気的に結合される。
【0013】
メモリコントローラ2は、コマンドCMD、アドレスADD及び各種の制御信号CNTを本実施形態のメモリデバイス1に送る。
メモリデバイス1は、コマンドCMD、アドレスADD及び各種の制御信号CNTを受ける。データDATは、メモリデバイス1とメモリコントローラ2との間で、転送される。以下において、書き込みシーケンス時に、メモリコントローラ2からメモリデバイス1に転送されるデータDATは、書き込みデータとよばれる。書き込みデータDATは、メモリデバイス1内に書き込まれる。読み出しシーケンス時に、メモリデバイス1からメモリコントローラ2に転送されるデータDATは、読み出しデータとよばれる。読み出しデータDATはメモリデバイス1から読み出される。
【0014】
本実施形態のメモリデバイス1は、例えば、メモリセルアレイ100、コマンドレジスタ110、アドレスレジスタ120、ロウ制御回路140、センスアンプ回路150、ドライバ回路160、及びシーケンサ190を含む。
【0015】
メモリセルアレイ100は、データを記憶する。メモリセルアレイ100内に、複数のビット線及び複数のワード線が設けられる。メモリセルアレイ100は、複数のブロックBLK0~BLKn(nは1以上の整数)を含んでいる。ブロックBLKは、複数のメモリセルの集合である。各メモリセルは、1つのビット線と1つのワード線とに関連付けられている。メモリセルアレイ100の構成は後述される。
【0016】
コマンドレジスタ110は、メモリコントローラ2からのコマンドCMDを保持する。コマンドCMDは、例えば、シーケンサ190に読み出しシーケンス、書き込みシーケンス、及び消去シーケンス等を実行させる命令を含んでいる。
【0017】
アドレスレジスタ120は、メモリコントローラ2からのアドレスADDを保持する。アドレスADDは、例えば、ブロックアドレス、ページアドレス(ワード線アドレス)、及びカラムアドレスを含んでいる。例えば、ブロックアドレス、ページアドレス、及びカラムアドレスは、ブロックBLK、ワード線、及びビット線の選択にそれぞれ使用される。以下において、ブロックアドレスに基づいて選択されたブロックは、選択ブロックとよばれる。ページアドレスに基づいて選択されたワード線は、選択ワード線とよばれる。
【0018】
ロウ制御回路140は、メモリセルアレイ100のロウに関する動作を制御する。ロウ制御回路140は、アドレスレジスタ120内のブロックアドレスに基づいて、メモリセルアレイ100内の1つのブロックBLKを選択する。ロウ制御回路140は、例えば、選択ワード線に対応する配線に印加された電圧を、選択ブロックBLK内の選択ワード線に転送する。
【0019】
センスアンプ回路150は、メモリセルアレイ100のカラムに関する動作を制御する。センスアンプ回路150は、書き込みシーケンスにおいて、メモリコントローラ2からの書き込みデータDATに応じて、メモリセルアレイ100内に設けられたビット線BLのそれぞれに電圧を印加する。センスアンプ回路150は、読み出しシーケンスにおいて、ビット線BLの電位(又は、電流の発生の有無)に基づいてメモリセルMCに記憶されたデータを判定する。センスアンプ回路150は、この判定結果に基づいたデータを、読み出しデータとしてメモリコントローラ2に転送する。
【0020】
ドライバ回路160は、読み出しシーケンス、書き込みシーケンス、消去シーケンス等で使用される電圧を、メモリセルアレイ100に供給する。ドライバ回路160は、アドレスレジスタ120内のアドレスに基づいて、例えば、ワード線に対応する配線及びビット線に対応する配線などに所定の電圧を、印加する。
【0021】
ドライバ回路160は、実行される各動作シーケンスにおいて、読み出し回路(読み出しドライバともよばれる)、書き込み回路(書き込みドライバともよばれる)及び消去回路(消去ドライバともよばれる)として、機能する。
【0022】
シーケンサ190は、メモリデバイス1全体の動作を制御する。例えば、シーケンサ190は、コマンドレジスタ110内のコマンドCMDに基づいて各回路を制御する。
【0023】
例えば、メモリデバイス1とメモリコントローラ2との間の通信は、NANDインターフェイス規格によってサポートされている。
【0024】
尚、メモリデバイス1は、入出力回路(図示せず)及び電圧生成回路(図示せず)などをさらに含んでいてもよい。入出力回路は、メモリデバイス1とメモリコントローラ2との間における、メモリデバイス1側のインターフェイス回路として機能する。電圧生成回路は、メモリデバイス1の各種の動作のための複数の電圧を、生成する。
【0025】
<メモリセルアレイ>
図2は、本実施形態のメモリデバイスのメモリセルアレイの構成例を示す回路図である。
【0026】
図2において、メモリセルアレイ100に含まれた複数のブロックBLKのうち1つのブロックBLKが抽出されて示されている。
【0027】
図2に示されるように、ブロックBLKは、例えば、4つのストリングユニットSU0,SU1,SU2,SU3を含む。各ストリングユニットSU(SU0,SU1,SU2,SU3)は、複数のメモリセルストリングMSを含む。複数のメモリセルストリングMSのそれぞれは、複数のビット線BL0,BL1,・・・,BLm-1(mは1以上の整数)のうち対応する1つに接続されている。
【0028】
各メモリセルストリングMSは、複数のメモリセルMC0,MC1,・・・,MCn-1(nは1以上の整数)、及びセレクトトランジスタST1,ST2を含んでいる。
【0029】
例えば、n個のメモリセルMC(MC0,MC1,MC2,MC3,・・・,MCn-2,MCn-1)が、各メモリセルストリングMS内に設けられている。
【0030】
メモリセルMCは、1ビット以上のデータを実質的に不揮発に記憶できる。
【0031】
セレクトトランジスタST1,ST2のそれぞれは、各種の動作時におけるストリングユニットSUの選択に使用される。例えば、各セレクトトランジスタST1は、1つ以上のトランジスタを含んでもよい。例えば、各セレクトトランジスタST2は、1つ以上のトランジスタを含んでもよい。
【0032】
各メモリセルストリングMSにおいて、複数のメモリセルMCは、セレクトトランジスタST1のソースとセレクトトランジスタST2のドレインとの間に直列接続される。同一のブロックBLK内の各メモリセルMC0,MC1,MC2,MC3,・・・,MCn-2,MCn-1のゲートは、複数のワード線WL0,WL1,WL2,WL3,・・・,WLn-2,WLn-1のうち対応する1つに接続される。
【0033】
各メモリセルストリングMSにおいて、セレクトトランジスタST1の一方の端子(ここでは、ドレイン)は、複数のビット線BL0,BL1,・・・,BLm-1のうち対応する1つに接続される。
セレクトトランジスタST1の一方の端子(ここでは、ソース)は、直列接続されたメモリセルMC0,・・・,MCn-1の一端に接続される。
【0034】
セレクトトランジスタST1のゲートのそれぞれは、複数のセレクトゲート線SGDのうち対応する1つに接続される。
【0035】
ストリングユニットSU0内のセレクトトランジスタST1のゲートは、セレクトゲート線SGD0に接続される。ストリングユニットSU1内のセレクトトランジスタST1のゲートは、セレクトゲート線SGD1に接続される。ストリングユニットSU2内のセレクトトランジスタST1のゲートは、セレクトゲート線SGD2に接続される。ストリングユニットSU3内のセレクトトランジスタST1のゲートは、セレクトゲート線SGD3にそれぞれ接続される。
【0036】
セレクトトランジスタST2の一方の端子(ここでは、ドレイン)は、直列接続されたメモリセルMC0,・・・,MCn-1の他端に接続される。セレクトトランジスタST2の他方の端子(ここでは、ソース)は、ソース線SLに接続される。同一のブロックBLK内の複数のセレクトトランジスタST2のソースは、ソース線SLに共通に接続される。
【0037】
例えば、複数のセレクトトランジスタST2のゲートのそれぞれは、1つのセレクトゲート線SGSに共通に接続される。但し、複数のセレクトゲート線SGSが、ストリングユニットSU毎に独立に設けられてもよい。
【0038】
上述のメモリセルアレイ100の回路構成において、複数のブロックBLK間で同一カラムに対応するセレクトトランジスタST1のドレインは、同じビット線BLに接続される。ソース線SLは、例えば、複数のブロックBLK間で共通に接続される。
複数のストリングユニットSU間で同一のカラムに対応するセレクトトランジスタST1のドレインは、同じビット線BLに接続される。
【0039】
1つのストリングユニットSU内で共通のワード線WLに接続された複数のメモリセルMCは、例えば、セルユニットCUとよばれる。
【0040】
例えば、1つのセルユニットCUは、メモリセルMCの各々が1ビットのデータを記憶する場合に、1ページ分のデータを記憶することが可能である。メモリセルMCの各々が2ビットのデータを記憶する場合に、1つのセルユニットCUは、2ページ分のデータを記憶することが可能である。
【0041】
本実施形態において、メモリセルMCは、強誘電体トランジスタ(FeFET:ferroelectric field effect transistor)である。強誘電体トランジスタの閾値電圧は、強誘電体トランジスタの強誘電体層の自発分極の向きに応じて、変化する。
本実施形態のメモリデバイス1は、自発分極の向きに応じた強誘電体トランジスタMCの閾値電圧の変化とデータとの関連付けによって、データを記憶する。
【0042】
本実施形態において、メモリセルMCは、強誘電体トランジスタMCともよばれる。
本実施形態において、強誘電体トランジスタをメモリセルMCに用いたメモリデバイスは、強誘電体メモリともよばれる。
【0043】
図3は、本実施形態のメモリデバイス1のメモリセルアレイ100の構造例を示す断面図である。
【0044】
図3において、図示の明瞭化のため、基板の上面を覆う絶縁層(層間絶縁膜)は、省略されている。
【0045】
図3に示されるように、メモリセルMCは、基板40の上面(X-Y面)上に、2次元に配列されている。メモリセルMCは、基板40の上面に対して垂直な方向(Z方向)に、配列されている。
このように、本実施形態において、メモリデバイス1は、3次元構造のメモリセルアレイ100を有する。
【0046】
例えば、基板40は、半導体基板(例えば、シリコン基板)である。
【0047】
基板40は、半導体層41を含む。半導体層41は、付与されるべき導電型に応じたドーパント(不純物)を含む。例えば、半導体層41は、p型の半導体層である。半導体層は、所定の濃度のp型ドーパント(例えば、ホウ素)を含む。
半導体層41は、例えば、半導体基板40内に設けられたウェル領域である。
【0048】
複数の半導体領域44,45は、半導体層41内に設けられている。半導体領域44,45のそれぞれは、付与されるべき導電型に応じたn型又はp型のドーパント(不純物)を含む。
【0049】
例えば、半導体領域44は、n型の半導体領域(拡散層)である。n型の半導体領域44は、所定の濃度のn型ドーパント(例えば、リン又はヒ素)を含む。
半導体領域44は、コンタクトプラグ70を介して、配線(例えば、金属層)71に接続されている。コンタクトプラグ70は、半導体領域44上に設けられている。コンタクトプラグ70は、Z方向に延びる。配線71は、Z方向における半導体層41の上方に設けられている。配線71は、ソース線SLとして機能する。
【0050】
例えば、半導体領域45は、p型の半導体領域(拡散層)である。p型の半導体領域45は、所定の濃度のp型ドーパントを含む。
半導体領域45は、コンタクトプラグ74を介して、配線(例えば、金属層)75に接続されている。コンタクトプラグ74は、半導体領域45上に設けられている。コンタクトプラグ74は、Z方向に延びる。配線75は、Z方向における半導体層41の上方に設けられている。配線75は、ウェル配線CPWELLとして機能する。配線75を介した半導体層41に対する電圧の印加によって、半導体層41の電位が、制御され得る。
【0051】
複数の導電層51,53,55が、Z方向において半導体層41上に積層されている。絶縁層(図示せず)が、Z方向に隣り合う導電層53,55間に設けられている。
【0052】
導電層51は、Z方向における基板40の上方において、Y方向に配列されている。導電層51は、X-Y平面に広がる板状の構造を有する。導電層51は、ソース側セレクトゲート線SGSとして機能する。導電層51は、例えば、複数のストリングユニットSU(SU0,SU1,SU2,SU3)に共通化されている。
【0053】
複数の導電層55は、Z方向における導電層53の上方において、Y方向に配列されている。各導電層55は、X方向に延在する。各導電層55は、ドレイン側セレクトゲート線SGD(SGD0,SGD1,SGD2,SGD3)として機能する。各導電層55は、例えば、ストリングユニットSU(SU0,SU1,SU2,SU3)ごとに、互いに分離されている。
【0054】
複数の導電層53は、Z方向における基板40の上方に、積層されている。複数の導電層53は、Z方向における導電層51と導電層55との間の空間において、Z方向に並んでいる。各導電層53は、例えば、X-Y平面に広がる板状の構造を有する。各導電層53は、ワード線WLとして機能する。導電層53は、ブロックBLK内の複数のストリングユニットSUにまたがる。
【0055】
複数のピラー60が、導電層51,53,55(及び図示されない絶縁層)を含む積層体500内に、設けられている。各ピラー60は、Z方向に延びる。ピラー60は、複数の導電層51,53,55を貫通する。ピラー60の側面(Z方向に沿う面)は、各導電層51,53,55に対向する。
【0056】
ピラー60のZ方向における下端(底部)は、半導体層41に接触する。ピラー60のZ方向における上端(上部)は、コンタクトプラグ79を介して、配線(例えば、金属層)78に接続される。配線78は、Y方向に延びる。配線78は、ビット線BLとして機能する。例えば、Y方向に並ぶ複数のピラー60は、1つの配線(ビット線)78に共通に接続されている。
【0057】
ピラー60は、半導体層61、絶縁層63、強誘電体層65及びコア層69を含む。本実施形態において、強誘電体層65を含むピラー60は、メモリピラーとよばれる。
【0058】
コア層69は、Z方向に沿って延在する柱状の構造を有する。例えば、コア層69の上端は、最上層の配線78が設けられた領域と導電層55が設けられた領域との間の領域内に、配置されている。コア層69の下端は、半導体層61に接触する。コア層69は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)等の絶縁体を含む。
【0059】
半導体層61は、コア層69と絶縁層63との間、及び、コア層69と半導体層41との間に設けられている。半導体層61の下端は、コア層69の下端と半導体層41の上面との間に設けられている。半導体層61は、半導体層41に直接接触した部分を有する。これによって、半導体層61は、半導体層41と電気的に接続される。例えば、半導体層61は、コア層69を覆っている。半導体層61は、円筒状(又は楕円筒状)の構造を有する。半導体層61は、例えば、シリコンを含む層(例えば、ポリシリコン層又はアモルファスシリコン層)である。
【0060】
絶縁層63は、強誘電体層65と半導体層61との間に設けられている。絶縁層63は、半導体層61の側面(Z方向に沿う面)を覆っている。絶縁層63は、例えば、酸化シリコンを含む層である。
【0061】
強誘電体層65は、導電層51,53,55と絶縁層63との間に設けられている。強誘電体層65の側面(Z方向に沿う面)は、導電層51,53,55に対向する。
強誘電体層65は、例えば、酸化ハフニウムを含む層である。シリコン、アルミニウム、バリウム、ジルコニウム、ガドリニウム、ランタン、ストロンチウム及びイットリウムのうち少なくとも1つが添加された酸化ハフニウム層が、強誘電体層65に用いられてもよい。
強誘電体層65は、自発分極特性を有する。
【0062】
導電層53とメモリピラー60との交差部における強誘電体層65を含む部分が、メモリセル(強誘電体トランジスタ)MCとして、機能する。
導電層51とメモリピラー60との交差部における部分が、セレクトトランジスタST2として、機能する。
導電層55とメモリピラー60との交差部における部分が、セレクトトランジスタST1として、機能する。
【0063】
図4及び
図5は、本実施形態のメモリデバイス1における、メモリセルMCの構造例を説明するための図である。
図4は、本実施形態における、メモリセルMCの平面構造を説明するための上面図である。
図5は、本実施形態における、メモリセルMCの断面構造を説明するための断面図である。
【0064】
図4及び
図5に示されるように、メモリピラー60は、円柱状(又は楕円柱状)の構造を有する。
コア層69は、Z方向に延びる円柱状(又は楕円柱状)の構造を有する。
【0065】
半導体層61は、Z方向に延在する円筒状(又は、楕円筒状)の構造を有する。
【0066】
絶縁層63は、導電層53と半導体層61との間に設けられている。絶縁層63は、円筒状(又は楕円筒状)の構造を有する。円筒状の絶縁層63は、半導体層61の側面(Z方向に沿う面)を覆う。
【0067】
強誘電体層65は、導電層53と絶縁層63との間に設けられている。強誘電体層65は、円筒状(又は、楕円筒状)の構造を有する。円柱状の強誘電体層65は、絶縁層63を介して、半導体層61の側面を覆う。
【0068】
上述のように、本実施形態において、メモリセルMCは、強誘電体トランジスタである。
絶縁層63及び強誘電体層65を含む積層膜は、強誘電体トランジスタMCのゲート絶縁膜として機能する。但し、絶縁層63のみがゲート絶縁膜として扱われ、強誘電体層65がメモリ層として扱われてもよい。絶縁層63は、異なる材料からなる複数の層を含む積層膜でもよいし、ある1つの材料の単層膜でもよい。絶縁層63は、界面層ともよばれる。
【0069】
導電層53は、強誘電体メモリ1のワード線WLであるとともに、強誘電体トランジスタMCのゲート電極として機能する。導電層53は、Z方向において絶縁層89間に設けられている。
導電層53は、例えば、金属層(例えば、タングステン層)と導電性化合物層(例えば、窒化チタン層)との積層膜である。この場合において、導電性化合物層(図示せず)が、金属層(図示せず)と絶縁層89との間、及び、金属層と強誘電体層65との間に設けられている。
【0070】
強誘電体トランジスタMCのチャネル領域CHNは、半導体層61内に設けられている。強誘電体トランジスタMCのチャネル領域CHNは、強誘電体層65及び絶縁層63を介して導電層53に対向する。強誘電体トランジスタMCの2つのソース/ドレイン領域(S/D)は、チャネル領域CHNを介して、Z方向に並ぶ。
【0071】
このように、強誘電体トランジスタMCは、縦型トランジスタである。それゆえ、メモリセルとしての強誘電体トランジスタMCの電流経路は、Z方向に沿う。
【0072】
セレクトトランジスタST(ST1,ST2)は、強誘電体トランジスタMCと実質的に同じ構造を有する。但し、セレクトトランジスタSTの構造は、強誘電体トランジスタMCの構造と異なってもよい。例えば、セレクトトランジスタSTは、強誘電体層(メモリ層)を有さない構造でもよい。
【0073】
尚、
図3の構造のメモリセルアレイ100は、周知の技術の製造方法によって、形成される。
【0074】
本実施形態のメモリデバイス1において、強誘電体トランジスタの分極特性によって、強誘電体トランジスタMCが、メモリセルMCとして用いられる。
【0075】
<メモリセルの動作原理>
図6乃至
図8を参照して、強誘電体トランジスタMCのメモリセルとしての動作原理を説明する。
【0076】
図6及び
図7は、メモリセルとしての強誘電体トランジスタMCの特性を説明するための模式図である。
図6は、強誘電体トランジスタMCの分極特性を示すグラフである。
図6のグラフの横軸は、強誘電体トランジスタMCのゲート-ソース間の電圧Vgを示す。
図6のグラフの縦軸は、強誘電体トランジスタMCの強誘電体層65の自発分極率Pを示す。
図7は、強誘電体層65の自発分極の状態に応じた、強誘電体トランジスタMCの状態を模式的に示す図である。
【0077】
図6に示されるように、電圧Vgと自発分極率Pとの関係において、強誘電体層65は、ヒステリシス曲線で示される特性を有する。
【0078】
電圧Vgが強誘電体トランジスタMCのゲート(ワード線)に印加された場合、電界が強誘電体層65内に発生する。発生した電界の影響によって、強誘電体層65内の結晶格子内に配置されたイオンの位置が変化する。これによって、分極が、強誘電体層65内に発生する。
【0079】
自発分極率(分極量ともよばれる)は、強誘電体層65の自発分極の度合いを示す。自発分極率は、強誘電体層65と強誘電体層65に接する他の層(ここでは、絶縁層63)との境界領域において、強誘電体層65に発生する単位面積当たりの表面電荷量のうち、自発分極に由来する電荷の量に応じる。
【0080】
例えば、電圧Vgが0Vであり、強誘電体層65の自発分極率が負の値Paである場合(
図6の“Q0”における状態)、
図7の(a)に示されるように、自発分極plz1における正の自発分極電荷が、導電層(ゲート)53側に発生し、負の自発分極電荷が、半導体層61(チャネル領域)側に発生する。以下において、正の自発分極電荷が導電層側に発生している状態は、アップ状態とよばれる。
【0081】
強誘電体層65が負の自発分極率を有している状態で、強誘電体トランジスタMCに印加される電圧Vgが0Vから或る正の電圧値“V1”に増加された場合(
図6の“Q1”における状態)、強誘電体層65の自発分極は、ほとんど反転しない。この場合において、強誘電体層65の自発分極率Pの大きさは、ほとんど変化しない。
【0082】
電圧Vgの電圧値が、V1から正の電圧値“V2”に増加された場合(
図6の“Q2”における状態)、
図7の(b)に示されるように、強誘電体層65の自発分極plz2の向きが、負の自発分極(以下では、負の自発分極状態ともよばれる)plz1に対して、部分的に反転する。これによって、強誘電体層65の自発分極率Pが、ある値P1まで急峻に増加する。
【0083】
尚、自発分極の向きが一度反転すると、自発分極の向きが反転した状態は、電圧Vgの電圧値がV2から0Vに戻されたとしても、維持される。それゆえ、電圧Vgが、状態A2における電圧値V2から0Vに低下されたとしても、状態Qaのように、自発分極率Pは、値Paより高い値Pbとなる。
【0084】
電圧Vgの電圧値が、V2から正の電圧値“V3”に増加された場合(
図6の“Q3”における状態)、強誘電体層65の自発分極の反転が進行し、自発分極率Pは、負の値P1から正の値P2まで増加する。
【0085】
上述のように、自発分極の反転状態は、維持される。それゆえ、電圧Vgの電圧値が、状態Q3におけるV3から0Vに低下された場合(
図6の“Qb”における状態)、自発分極率Pは、値Pbより高い値Pcとなる。
【0086】
電圧Vgの電圧値が、V3から正の電圧値V4に増加された場合(
図6の“Q4”における状態)、
図7の(c)に示されるように、強誘電体層65の自発分極plz2の向きは、ほぼすべて反転する。この場合において、自発分極率Pは、正の値P3まで増加し、例えば、飽和状態となる。
電圧Vgの電圧値がV4から0Vまで低下された場合、電圧Vgが0Vであったとしても、強誘電体層65は、正の値Pdの自発分極率を有し、正の自発分極率を有する状態Qcを維持する。
【0087】
自発分極plz2において、負の自発分極電荷が、導電層(ゲート)53側に発生し、正の自発分極電荷が、半導体層61(チャネル領域)側に発生する。以下において、負の自発電極電荷が導電層側に発生している状態は、ダウン状態とよばれる。
【0088】
このように、正の電圧値を有する電圧Vgが、負の自発分極率を有する強誘電体層65に対して印加された場合、強誘電体層65の自発分極率は、負の値から正の値側へ変わる。
【0089】
強誘電体層65が正の自発分極率を有する場合、正の自発分極率に応じた大きさの正の電圧が、強誘電体トランジスタMCのゲート(導電層53)とチャネル領域(半導体層61)との間に印加された状態となる。
この結果として、強誘電体層65が正の自発分極率を有する場合の強誘電体トランジスタMCの閾値電圧の値は、強誘電体層65が負の自発分極率を有する場合の強誘電体トランジスタMCの閾値電圧の値に比較して、低下する。
【0090】
電圧Vgの電圧値が、0Vから負の電圧値“V5”まで低下された場合(
図6の“Q5”における状態)、強誘電体層65の自発分極の向きは、正の分極方向から負の分極方向に反転する。
【0091】
これによって、強誘電体トランジスタMCの強誘電体層65の自発分極率は、正の値から負の値に変わる。この時、強誘電体層65の自発分極率は、負の値で飽和する。
このように、強誘電体トランジスタMCに対する負の極性の電圧Vgの印加によって、強誘電体層65の自発分極率は、正の値から負の値に変わる。
【0092】
強誘電体層65の自発分極率が正の値から負の値に変化した後、電圧Vgの電圧値がV5から0Vまで増加された場合、強誘電体層65の自発分極率は、負の値(例えば、分極率Pa)を維持する。
【0093】
以上のように、強誘電体層65の自発分極率の変化に応じて、強誘電体トランジスタMCの閾値電圧は、変化する。変化された閾値電圧の大きさは、強誘電体層65の自発分極の方向を変える電圧値を有する電圧の印加まで、維持される。
【0094】
強誘電体トランジスタがメモリセルMCとして用いられる場合、自発分極率に応じて変化する強誘電体トランジスタMCの複数の閾値電圧を記憶すべきデータと関連付けることができる。
【0095】
それゆえ、強誘電体トランジスタMCは、データを不揮発に記憶するメモリセルMCとして、メモリデバイス1に適用され得る。
【0096】
<閾値電圧とデータとの関係>
図8は、メモリセルMCとしての強誘電体トランジスタMCの閾値電圧とデータとの関係を説明するための図である。
図8の(a)及び(b)のそれぞれにおいて、グラフの横軸は、強誘電体トランジスタMCの閾値電圧Vthに対応し、グラフの縦軸は、強誘電体トランジスタMCの存在確率に対応する。
【0097】
図8の(a)は、メモリセルMCとしての強誘電体トランジスタMCが1ビットのデータを記憶する場合における、“0”及び“1”データと強誘電体トランジスタMCの閾値電圧Vthとの関係を示すグラフである。1ビットのデータを記憶するメモリセル(強誘電体トランジスタ)MCは、SLC(Single level cell)とよばれる。
【0098】
図8の(a)の場合、例えば、或る電圧レベルVRより高い電圧値の閾値電圧を有する強誘電体トランジスタMCの状態(データ保持状態)は、消去状態(又はEr状態)とよばれる。或る電圧レベルVRより低い電圧値の閾値電圧を有する強誘電体トランジスタMCの状態は、プログラム状態(又はA状態)とよばれる。
【0099】
例えば、強誘電体トランジスタMCの消去状態は、強誘電体トランジスタMCの強誘電体層65の自発分極率が負の値を有する状態(例えば、
図6の“Q0”の状態)に相当する。強誘電体トランジスタMCのプログラム状態は、強誘電体トランジスタMCの強誘電体層65の自発分極率が正の値を有する状態(例えば、
図6の“Qc”の状態)に相当する。
【0100】
この場合において、例えば、Er状態の閾値電圧分布D1aは、
図6の自発分極率Paの強誘電体層65を含む強誘電体トランジスタMCの集合に相当する。A状態の閾値電圧分布D2aは、
図6の自発分極率Pdの強誘電体層65を含む強誘電体トランジスタMCの集合に相当する。
【0101】
例えば、“0”データが、閾値電圧分布D1aに属するEr状態の強誘電体トランジスタMCに関連づけられる。“1”データが、閾値電圧分布D2bに属するA状態の強誘電体トランジスタMCに関連付けられる。
【0102】
上述のように、負の電圧値(例えば、電圧V5)のゲート-ソース間電圧VgがメモリセルMCに印加された場合、メモリセルとしての強誘電体トランジスタMCは、消去状態に設定される。
正の電圧値(例えば、電圧V4)のゲート-ソース間電圧VgがメモリセルMCに印加された場合、メモリセルとしての強誘電体トランジスタMCは、プログラム状態に設定される。
【0103】
以下において、強誘電体トランジスタMCのデータ保持状態を消去状態に設定するための電圧パルスは、消去パルスとよばれる。消去パルスは、負の電圧値を有する。
【0104】
強誘電体トランジスタMCのデータ保持状態をプログラム状態に設定するための電圧パルスは、書き込みパルス(又はプログラムパルス)とよばれる。書き込みパルスは、正の電圧値を有する。
【0105】
複数の閾値電圧分布を区別するために、隣り合う閾値電圧分布D1a,D2a間に設けられた電圧値(例えば、
図8の(a)の電圧レベルVR)は、読み出しレベルとよばれる。
【0106】
1つ以上の読み出しレベルVRを含む読み出しパルスが、強誘電体トランジスタMCに記憶されたデータの読み出し時に、強誘電体トランジスタMCのゲートに印加される。
【0107】
読み出しレベルVRの印加によって、強誘電体トランジスタMCがオンした場合、強誘電体トランジスタMCは、読み出しレベルVR以下の閾値電圧を有する。読み出しレベルVRの印加によって、強誘電体トランジスタMCがオフした場合、強誘電体トランジスタMCは、読み出しレベルVRより高い閾値電圧を有する。
強誘電体トランジスタMCのオン/オフに応じた信号の検知によって、強誘電体トランジスタMCが記憶しているデータが、読み出される。
【0108】
電圧レベル(以下では、読み出しパス電圧とよばれる)VREADが、消去状態の閾値電圧分布D1aより高い電圧レベルに、設けられている。強誘電体トランジスタMCに対する電圧レベルVREADの印加によって、強誘電体トランジスタMCは、記憶しているデータに依存せずに、オンする。
【0109】
図8の(b)は、メモリセルMCが2ビットのデータを記憶する場合における、“00”、“01”、“10”及び“11”のデータと、強誘電体トランジスタMCの閾値電圧との関係を示すグラフである。2ビットのデータを記憶するメモリセルMCは、MLC(Multi level cell)とよばれる。
【0110】
図8の(b)の場合、2ビットデータを記憶する強誘電体トランジスタMCは、記憶するデータに応じて、1つの消去状態(Er状態)及び3つのプログラム状態(A状態、B状態及びC状態)のうちいずれか1つの状態を有し得る。
【0111】
例えば、Er状態の閾値電圧分布D1bは、
図6の自発分極率Paの強誘電体層65を含む強誘電体トランジスタMCの集合に相当する。A状態の閾値電圧分布D2bは、
図6の自発分極率Pbの強誘電体層65を含む強誘電体トランジスタMCの集合に相当する。B状態の閾値電圧分布D3bは、
図6の自発分極率Pcの強誘電体層65を含む強誘電体トランジスタMCの集合に相当する。C状態の閾値電圧分布D4bは、
図6の自発分極率Pdの強誘電体層65を含む強誘電体トランジスタMCの集合に相当する。
【0112】
例えば、“00”データが、消去状態の閾値電圧分布(Er状態の分布)D1bの強誘電体トランジスタMCに関連付けられる。 “10”データが、4つの閾値電圧分布のうち最も低い閾値電圧分布(C状態の分布)D4bの強誘電体トランジスタMCに関連付けられる。“01”データが、消去状態の閾値電圧分布D1bの隣りの閾値電圧分布(A状態の分布)D2bの強誘電体トランジスタMCに関連付けられる。“11”データが、閾値電圧分布D4bと閾値電圧分布(B状態の分布)D2bとの間の閾値電圧分布D3bの強誘電体トランジスタMCに関連付けられている。
【0113】
隣り合う2つの閾値電圧分布間のそれぞれに、読み出しレベルVAR,VBR,VCRが設けられている。
【0114】
読み出しレベルVARの印加によって、強誘電体トランジスタMCの閾値電圧が、消去状態(Er状態)に属する値であるかプログラム状態(A状態、B状態及びC状態)に属する値であるか判別される。
読み出しレベルVCRの印加によって、強誘電体トランジスタMCの閾値電圧が、C状態に属する値であるか、B状態、A状態又はEr状態に属する値であるか判別される。
読み出しレベルVBRの印加によって、強誘電体トランジスタMCの閾値電圧が、A状態又はEr状態に属する値であるか、B状態又はC状態に属する値であるか判別される。
【0115】
例えば、読み出しレベルVAR,VCRの印加によって、2ビットのデータのうち下位ビットのデータが読み出される。例えば、読み出しレベルVBRの印加によって、2ビットのデータのうち上位ビットのデータが読み出される。
【0116】
このように、強誘電体トランジスタが、メモリセルMCとして、メモリデバイス1に適用され得る。これによって、強誘電体メモリが、提供される。
【0117】
(b)動作例
図9乃至
図12を参照して、本実施形態のメモリデバイス(強誘電体メモリ)の動作例について、説明する。
【0118】
以下において、動作の対象のメモリセル(強誘電体トランジスタ)MCは、選択セルとよばれる。選択セルを含むメモリセルストリング(動作の対象のメモリセルストリング)は、選択ストリングとよばれる。選択ストリングを含むストリングユニット(動作の対象のストリングユニット)は、選択ストリングユニットとよばれる。選択ストリングユニットを含むブロック(動作の対象のブロック)は、選択ブロックとよばれる。
【0119】
また、選択セル以外のメモリセルは、非選択セルとよばれる。選択ストリング以外のメモリセルストリングは、非選択ストリングとよばれる。選択ストリングユニット以外のストリングユニットは、非選択ストリングユニットとよばれる。選択ブロック以外のブロックは、非選択ブロックとよばれる。
【0120】
以下において、説明の簡略化のため、1ビットのデータを記憶するメモリセル(SLC)に対する各種の動作シーケンスが、例示されている。
【0121】
(b-1)消去シーケンス
図9を参照して、本実施形態のメモリデバイス1の消去シーケンスについて、説明する。
【0122】
図9は、本実施形態のメモリデバイス1の消去シーケンスに用いられる、消去パルス(消去電圧)を示す波形図である。
図9において、グラフの横軸は時間に対応し、グラフの縦軸は電圧値に対応する。
【0123】
消去シーケンスの実行時、メモリコントローラ2は、メモリデバイス1に、消去コマンドCMD及びアドレス(選択アドレス)ADDを送る。
本実施形態のメモリデバイス1は、消去コマンドCMDに基づいて、アドレスADDに示されるメモリセルアレイ100内の領域に対して、消去シーケンスを実行する。
【0124】
消去シーケンス時において、データの消去対象のメモリセルMCを含むストリングユニットSU及びブロックBLKが、選択状態にそれぞれ設定される。
例えば、消去シーケンスにおける消去動作は、1つのブロック単位で実行される。
【0125】
ブロック単位の消去シーケンス時において、ドライバ回路160は、シーケンサ190の制御によって、各種の電圧を、メモリセルアレイ100内の複数の配線WL,SGS,SGD,BL,SLのそれぞれに、供給する。
【0126】
ドライバ回路160は、正の電圧値を有する電圧をセレクトゲート線SGD,SGSのそれぞれに印加する。これによって、セレクトトランジスタST1,ST2は、オンする。
【0127】
この後、ドライバ回路160は、
図9の消去パルスVERAを、メモリセルMCに供給する。
【0128】
図9に示されるように、消去パルスVERAは、負の極性の電圧である。例えば、消去パルスVERAは、矩形状のパルス波形を有する。消去パルスVERAは、負の電圧値V19を有する。
【0129】
消去パルスVERAのような、強誘電体トランジスタMCに対する負の極性の電圧は、強誘電体トランジスタMCのチャネル領域(半導体層61)側の電位が、強誘電体トランジスタMCのゲート電極(導電層53)側の電位より高くなる状態の電圧である。
【0130】
負の極性の電圧がメモリセルMCに印加される場合、ドライバ回路160は、メモリピラー60の電位をワード線WL(導電層53)の電位より高くする。
【0131】
例えば、ドライバ回路160は、ビット線BL及びソース線SLに正の電圧値を有する電圧を印加する。以下において、ビット線BLに印加された電圧は、ビット線電圧とよばれ、ソース線SLに印加された電圧は、ソース線電圧とよばれる。
ドライバ回路160は、選択ブロックBLK内の全てのワード線WLに、0Vの電圧、又は、ビット線電圧及びソース線電圧より小さい(低い)正の極性の電圧を、印加する。
【0132】
これによって、負の極性の消去パルスVERAが、選択セルMCのそれぞれに印加される。例えば、消去パルスVERAは、ワード線WLとビット線BLとの間の電位差に応じた電圧値を有する。
【0133】
例えば、ドライバ回路160は、ビット線電圧及びソース線電圧の供給期間の制御によって、消去パルスVERAのパルス幅(電圧供給期間)を制御する。
【0134】
消去パルスVERAの供給によって、選択セルである強誘電体トランジスタMCは、消去状態に設定される。
【0135】
この後、消去パルスVERAの供給が、停止される。
ドライバ回路160は、ビット線BL及びソース線SLに、0Vの電圧を印加する。ドライバ回路160は、ワード線WLに、0Vの電圧を印加する。
【0136】
消去パルスVERAの供給が停止された後、0Vの電圧が、セレクトゲート線SGD,SGSに印加される。これによって、セレクトトランジスタST1,ST2は、オフする。
【0137】
以上のように、本実施形態のメモリデバイス1において、消去シーケンスが、完了する。
【0138】
尚、本実施形態のメモリデバイス1の消去シーケンスにおいて、消去パルスVERAの供給の後に、消去ベリファイが、実行されてもよい。また、消去シーケンスは、ブロックより小さい単位、例えば、ページ単位(1本のワード線単位)で、実行されてもよい。
【0139】
(b-2)書き込みシーケンス
図10を参照して、本実施形態のメモリデバイス1の書き込みシーケンスについて、説明する。
【0140】
図10は、本実施形態のメモリデバイス1の書き込みシーケンスに用いられる、書き込みパルス(書き込み電圧)を示す波形図である。
図10において、グラフの横軸は時間に対応し、グラフの縦軸は電圧値に対応する。
【0141】
書き込みシーケンスの実行時、メモリコントローラ2は、メモリデバイス1に、書き込みコマンドCMD、アドレスADD及び書き込みデータDATを送る。
本実施形態のメモリデバイス1は、書き込みコマンドCMDに基づいて、アドレスADDに示されるメモリセルアレイ100内の領域に対して、書き込みシーケンスを実行する。
【0142】
書き込みシーケンス時において、データの書き込み対象のメモリセルMCを含むストリングユニットSU及びブロックBLKが、選択状態にそれぞれ設定される。
例えば、書き込みシーケンスにおけるプログラム動作は、ページ単位で実行される。
【0143】
書き込みシーケンス時において、ドライバ回路160は、シーケンサ190の制御によって、各種の電圧を、メモリセルアレイ100内の複数の配線WL,SGD,SGS,BL,SLのそれぞれに、供給する。
【0144】
ドライバ回路160は、或る電圧値の電圧を、ビット線BL及びソース線SLを印加する。
【0145】
ドライバ回路160は、選択されたセレクトゲート線SGDに、正の電圧値を有する電圧を、印加する。これによって、選択されたセレクトゲート線SGDに接続されたセレクトトランジスタST1は、オンする。
【0146】
ドライバ回路160は、非選択のセレクトゲート線SGDに、或る電圧値を有する電圧(例えば、グランド電圧)を印加する。これによって、非選択のセレクトゲート線SGDに接続されたセレクトトランジスタST1は、オフする。
【0147】
ドライバ回路160は、セレクトゲート線SGSに、0V又は正の電圧値を有する電圧を印加する。例えば、セレクトトランジスタST2は、オフする。
【0148】
ドライバ回路160は、正の電圧値を有する電圧(非選択電圧又は書き込みパス電圧とよばれる)を、非選択の複数のワード線WLに印加する。
【0149】
ドライバ回路160は、書き込みシーケンスのプログラム動作を実行する。
【0150】
ドライバ回路160は、
図10の書き込みパルスVWRを、選択ワード線WLに接続されたメモリセルMCに供給する。
【0151】
図10に示されるように、書き込みパルスVWRは、正の極性の電圧である。例えば、書き込みパルスVWRは、矩形状のパルス波形を有する。書き込みパルスVWRは、正の電圧値V10を有する。
【0152】
書き込みパルスVWRのような、強誘電体トランジスタMCに対する正の極性の電圧は、強誘電体トランジスタMCのゲート電極(導電層53)側の電位が、強誘電体トランジスタMCのチャネル領域(半導体層61)側の電位より高くなる状態の電圧である。
【0153】
正の極性の電圧が、選択ワード線WLに接続された選択セルMCに印加される場合、ドライバ回路160は、選択ワード線WLの電位をメモリピラー60の電位より高くする。
【0154】
例えば、ドライバ回路160は、0Vのビット線電圧をビット線BLに印加する。0Vの電圧が、オン状態のセレクトトランジスタST1を介して、メモリピラー60に印加される。
【0155】
ドライバ回路160は、ビット線電圧より大きい正の電圧値の電圧を、選択ワード線WLに印加する。
【0156】
これによって、正の極性の書き込みパルスVWRが、選択セルMCのそれぞれに印加される。書き込みパルスVWRは、ワード線WLとビット線BLとの間の電位差に応じた電圧値V10を有する。
【0157】
例えば、ドライバ回路160は、ワード線WLに対する電圧の供給期間の制御によって、書き込みパルスVWRのパルス幅(電圧供給期間)を制御する。
【0158】
この後、書き込みパルスVWRの供給が、停止される。
ドライバ回路160は、ビット線BL及びソース線SLに、0Vの電圧を印加する。ドライバ回路160は、複数のワード線WLに、0Vの電圧を印加する。
【0159】
書き込みパルスVWRの供給が停止された後、0Vの電圧が、選択されたセレクトゲート線SGD,SGSに印加される。これによって、セレクトトランジスタST1,ST2は、オフする。
【0160】
例えば、ドライバ回路160は、プログラム動作後において、書き込みシーケンスのベリファイ動作を行う。ベリファイ動作によって、プログラム動作後の選択セルMCの閾値電圧の大きさが、検証される。
【0161】
図10に示されるように、正の電圧値を有する電圧(ベリファイパルス)VVFYが、選択セルMCに供給される。
【0162】
ドライバ回路160は、正の電圧値を有する電圧を、ビット線に印加する。
【0163】
ドライバ回路160は、正の電圧値を有する電圧を、選択されたセレクトゲート線SGD,SGSに印加する。これによって、セレクトトランジスタST1,ST2は、オンする。
【0164】
ベリファイ動作時において、ドライバ回路160は、正の電圧値を有する電圧を、非選択のワード線WLに印加する。これによって、非選択セルは、オンする。
【0165】
ドライバ回路160は、正の電圧値を有する電圧を、選択ワード線WLに印加する。これによって、ベリファイパルスVVFYが、選択セルMCのゲート-チャネル間に、印加される。例えば、ベリファイパルスVVFYの電圧値は、各閾値電圧分布の下限値に応じた値を有する。
【0166】
ベリファイ電圧VVFYの印加時、選択セルMCの閾値電圧がベリファイパルスVVFYより大きいか否かに応じて、選択セルMCは、オン又はオフする。
【0167】
選択セルMCの閾値電圧がベリファイパルスVVFYより大きい場合、選択セルMCは、オフする。
選択セルMCの閾値電圧がベリファイパルスVVFY以下である場合、選択セルMCは、オンする。
【0168】
ベリファイ電圧VVFYの印加に対する選択セルMCのオン/オフの結果に基づいて、選択セルMCが、記憶すべきデータに応じた閾値電圧を有しているか否か判定される。
【0169】
この後、ベリファイパルスVVFYの供給が、停止される。
ドライバ回路160は、ビット線BL及びソース線SLに、0Vの電圧を印加する。ドライバ回路160は、複数のワード線WLに、0Vの電圧を印加する。
【0170】
ベリファイパルスVVFYの供給が停止された後、0Vの電圧が、セレクトゲート線SGD,SGSに印加される。これによって、セレクトトランジスタST1,ST2は、オフする。
【0171】
ベリファイ動作の結果に基づいて、書き込みパルスVWRが再度印加されるべきか否かが、決定される。
【0172】
例えば、選択セルMCの閾値電圧が、記憶すべきデータに応じた値に達するまで、プログラム動作及びベリファイ動作が、繰り返し実行される。
【0173】
ベリファイ動作によって、選択セルの閾値電圧が記憶すべきデータに応じた値に達したと判定された場合、書き込みシーケンスは、完了する。
【0174】
(b-3)読み出しシーケンス
図11及び
図12を参照して、本実施形態のメモリデバイス1の読み出しシーケンスについて、説明する。
【0175】
図11は、本実施形態のメモリデバイス1の読み出しシーケンスにおける、各配線の電位状態(印加電圧)を説明するための模式図である。
図12は、本実施形態のメモリデバイス1の読み出しシーケンスに用いられる、読み出しパルス(読み出し電圧)を示す波形図である。
図12において、グラフの横軸は時間に対応し、グラフの縦軸は電圧値に対応する。
【0176】
読み出しシーケンスの実行時、メモリコントローラ2は、メモリデバイス1に、読み出しコマンドCMD及びアドレスADDを送る。
本実施形態のメモリデバイス1は、読み出しコマンドCMDに基づいて、アドレスADDに示されるメモリセルアレイ100内の領域に対して、読み出しシーケンスを実行する。
【0177】
読み出しシーケンス時において、データの読み出し対象の選択セルMCを含むストリングユニットSU及びブロックBLKが、選択状態にそれぞれ設定される。
読み出しシーケンスは、ページ単位で実行される。
【0178】
図11に示されるように、ドライバ回路160は、ビット線電圧VBLを、ビット線BLに印加する。読み出しシーケンスがページ単位(セルユニット単位)で実行される場合、選択ストリングユニットSU-S内の選択ページに属する複数のビット線BLが、ビット線電圧VBLの印加によって、選択状態に設定される。ビット線電圧VBLは、正の電圧値を有する。例えば、ビット線電圧VBLの電圧値は、0.5V程度である。
尚、データの読み出し方式に応じて、全てのビット線BLのうち所定の本数のビット線BLのみが、選択状態に設定される場合もある。
【0179】
ドライバ回路160は、ソース線電圧VSLを、ソース線SL(及び半導体層41)に印加する。ソース線電圧VSLの電圧値は、例えば、グランド電圧(0V)である。
【0180】
ドライバ回路160は、電圧Vonを、選択ストリングユニットSU-Sのドレイン側セレクトゲート線SGD-Sに印加する。選択電圧Vonとビット線電圧VBLとの間の電位差は、ビット線BLに接続されたドレイン側セレクトトランジスタST1がオンすることが可能な電位差に設定される。例えば、選択電圧Vonの電圧値は、3V程度である。
【0181】
これによって、選択されたドレイン側セレクトゲート線SGD-Sに接続された複数のセレクトトランジスタST1は、オンする。
【0182】
選択されたドレイン側セレクトゲート線SGD-Sに対応する選択ストリングMS-Sは、オン状態のセレクトトランジスタST1を介して、ビット線BLに電気的に接続される。
【0183】
ドライバ回路160は、電圧Vonを、ソース側セレクトゲート線SGSに印加する。これによって、セレクトゲート線SGSに接続されたセレクトトランジスタST2は、オンする。
【0184】
ソース側セレクトゲート線SGSに接続された選択ストリングMS-Sは、オン状態のセレクトトランジスタST2を介して、ソース線SL(及び半導体層41)に電気的に接続される。
【0185】
ドライバ回路160は、電圧Voffを、非選択ストリングユニットSU-Uの非選択のドレイン側セレクトゲート線SGD-Uに印加する。電圧Voffは、例えば、0Vである。
【0186】
これによって、非選択のドレイン側セレクトゲート線SGD-Uに接続されたセレクトトランジスタST1は、オフする。
【0187】
非選択のドレイン側セレクトゲート線SGD-Uに接続された非選択ストリングMS-Uは、オフ状態のセレクトトランジスタST1によって、ビット線BLから電気的に分離される。
【0188】
このように、本実施形態のメモリデバイス1は、選択ブロックにおいて、ドレイン側及びソース側のセレクトゲート線SGD,SGSの電位の制御によって、1つ以上の選択セルMC-Sを含むグループ(選択ページ)が属するストリングユニットSU-Sを、選択的に活性化できる。
選択ブロック内において、非選択電圧VUSELが、非選択ワード線WL-Uに印加される。これによって、非選択電圧VUSELと電圧VBLとの間の電位差に基づいて、読み出しパス電圧VREADが、非選択ワード線WL-Uに接続された非選択セルMC-Uのチャネル-ゲート間に印加される。それゆえ、非選択セルMC-Uは、記憶しているデータに依存せずにオンする。
【0189】
ドライバ回路160は、
図12の読み出しパルスVRDを、選択セルMC-Sに供給する。読み出しパルスVRDは、選択セルMC-Sのゲートとチャネル(メモリピラー60)との間に印加される。
【0190】
図12に示されるように、本実施形態のメモリデバイス1において、読み出しパルスVRDは、2つの電圧値V11,V12を含む階段状のパルス波形を有する。
【0191】
読み出しパルスVRDは、時刻taから時刻tbまでの第1の期間T1において、第1の電圧値V11を有する。
【0192】
期間T1において、ドライバ回路160は、正の電圧値Vaを有する電圧VWLを、選択ワード線WL-Sに印加する。これによって、選択ワード線電圧VWLの電位が、電圧値Vaに設定される。電圧値Vaは、例えば、4V程度である。
期間T1において、電圧値Vaとビット線電圧VBLとの間の電位差が、電圧値V11に相当する。
【0193】
読み出しパルスVRDは、第1の期間T1の後、時刻tbから時刻tcまでの第2の期間T2において、第1の電圧値V11と異なる第2の電圧値V12を有する。
【0194】
本実施形態において、電圧値V12の絶対値は、電圧値V11の絶対値より小さい。電圧値V11の絶対値は、電圧値V12の絶対値より高く、書き込みパルスVWRの電圧値V10の絶対値より小さい。
ドライバ回路160は、時刻tbにおいて、選択ワード線電圧VWLの電圧値を、電圧値Vaから電圧値Vbへ変える。ワード線WLの電位(電圧値)が、電圧値Vaから電圧値Vbに下がる。これによって、選択ワード線電圧VWLが、電圧値Vbに設定される。電圧値Vbは、例えば、1.5V程度である。
【0195】
期間T2において、電圧値Vbとビット線電圧VBLとの間の電位差が、電圧値V12に相当する。
【0196】
このように、期間T2において、電圧値V12の読み出しパルスVRDが、選択セルMCのゲートとチャネルとの間に印加される。
【0197】
期間T1は、期間T2より短い。期間T1は、書き込みパルスVWRの供給期間(パルス幅)T0より短い。但し、期間T1は、期間T2と同じでもよい。
【0198】
電圧値V11の大きさ及び期間T1の長さは、上記の関係を満たす範囲において、適宜設定される。
傾向としては、電圧値V11を大きくすると、期間T1の長さは、短縮できる。
【0199】
尚、時刻taは、読み出しパルスVRDの立ち上りエッジのタイミングに対応する。時刻tbは、読み出しパルスVRDの電圧値の変化のタイミングに対応する。時刻tcは、読み出しパルスVRDの立下りエッジのタイミングに対応する。
【0200】
以下において、読み出しパルスVRDが電圧値V11を有する期間T1は、弱プログラム期間ともよばれる。読み出しパルスVRDが電圧値V12を有する期間T2は、センス期間ともよばれる。
【0201】
期間T2において、読み出しパルスVWRの電圧値V12は、1ビットデータを記憶するメモリセルMCに関して、
図8の2つの閾値電圧分布D1a,D2a間の電圧値(例えば、電圧値VR)に設定されている。
【0202】
選択セルMC-Sの閾値電圧が、電圧値V12以下である場合、選択セルMC-Sは、オンする。この場合において、ビット線BLが、オン状態の選択セルMC-S(及び、オン状態の非選択セルMC-U、及びオン状態のセレクトトランジスタST1,ST2)を介して、ソース線SLに電気的に接続される。この結果として、セル電流Icellが、選択ストリングMS-Sを介して、ビット線BLとソース線SLとの間に流れる。
【0203】
選択セルMC-Sの閾値電圧が、電圧値V12より高い場合、選択セルMC-Sは、オフする。この場合において、ビット線BLは、オフ状態の選択セルMC-Sによって、ソース線SLから電気的に分離される。この結果として、セル電流Icellは、ビット線BLとソース線SLとの間に流れない。
【0204】
センスアンプ回路150は、セル電流Icellの発生の有無をセンスする。センスアンプ回路150は、センス結果に応じた信号(セル信号)を増幅する。
センスアンプ回路150は、セル信号のセンス結果に基づいて、選択セルMC-S内のデータを判定する。センスアンプ回路150は、判定結果に基づく信号を、選択セルMC-S内のデータとして、出力する。
【0205】
これによって、選択セルMC-Sからの読み出しデータが、メモリデバイス1からメモリコントローラ2へ転送される。
【0206】
尚、センスアンプ回路150は、セル電流に応じたビット線BLの電位の変動の検知結果に基づいて、選択セルMC-S内のデータを判定してもよい。
【0207】
センス結果の取得の後、読み出しパルスVRDの供給は、停止される。
ドライバ回路160は、0Vの電圧を、選択及び非選択のワード線WLに印加する。ドライバ回路160は、0Vの電圧を、ビット線BL及びソース線SLに印加する。この後、ドライバ回路160は、0Vの電圧を、選択及び非選択のセレクトゲート線SGD,SGSに印加する。
【0208】
読み出しシーケンス時、非選択状態のブロックBLKにおいて、非選択のワード線WLの電位の状態は、フローティング状態に設定される。非選択状態のブロックBLKのストリングユニットSUにおいて、電圧Voffが、ドレイン側及びソース側セレクトゲート線SGD,SGSに印加される。これによって、読み出しシーケンス時、非選択状態のブロックBLK内のメモリセルストリングMSは、ビット線BL及びソース線SLから電気的に分離される。
【0209】
以上のように、本実施形態のメモリデバイス1の読み出しシーケンスが、完了する。
【0210】
尚、本実施形態において、読み出しパルスVRDと同じパルス形状の電圧パルスが、書き込みシーケンスのベリファイパルスVVFYに用いられてもよい。
【0211】
(c)メカニズム
図13を参照して、本実施形態のメモリデバイス1の読み出しシーケンスのメカニズムについて、説明する。
【0212】
図13は、本実施形態のメモリデバイス1における、読み出しシーケンス(読み出し動作)のメカニズムを説明するための模式図である。
【0213】
図13の(a)、(b)及び(c)に示されるように、強誘電体層65は、複数の自発分極(電気双極子)plz(plz1,plz2)を含む。
【0214】
上述のように、強誘電体層65内の自発分極plzの向きは、メモリセルMCの記憶しているデータに応じた向きに揃う。但し、複数の自発分極plzは、特性のばらつきを有する。例えば、強誘電体層65は、記憶しているデータに応じた自発分極の向きと異なる向きを有する少数の自発分極を含む場合がある。
それゆえ、強誘電体層65の分極は、複数の自発分極plz1,plz2の分極状態の全体的な傾向として現れる。
【0215】
図13の(a)に示されるように、或る強誘電体トランジスタ(選択セル)MCは、消去状態に対応するデータを記憶している。
【0216】
消去状態の強誘電体トランジスタMCにおいて、強誘電体層65は、アップ状態の複数の自発分極plz1を含む。
アップ状態の自発分極plz1に起因して、正孔90が、強誘電体層65と絶縁層63との間に蓄積される。この正孔90の蓄積によって、消去状態の強誘電体トランジスタMCの閾値電圧が、低下する。
【0217】
図13の(b)に示されるように、読み出しシーケンスにおいて、
図12のパルス波形を有する読み出しパルスVRDが、強誘電体層65を含む強誘電体トランジスタMCに、印加される。
【0218】
読み出しパルスVRDの期間T1において、電圧値V11の電圧パルスVRDが、強誘電体トランジスタMCのゲート-チャネル間に印加される。電圧値V11の絶対値は、電圧値V10の絶対値より小さく、電圧値V12の絶対値より大きい。電圧値V11は、強誘電体層65内の複数の自発分極plz1のうち比較的低い分極反転閾値電圧を有する自発分極の反転が生じ得る正の電圧値であることが望ましい。
【0219】
消去状態の強誘電体トランジスタMCにおいて、強誘電体層65の複数の自発分極plzのうち分極反転閾値の低い自発分極plzxに関して、その自発分極plzxが、電圧値V11の電圧の印加によって、反転する。これによって、分極反転閾値の低い自発分極において、アップ状態の自発分極plz1が、ダウン状態の自発分極plz2に変わる。
【0220】
尚、読み出しパルスVRDによる強誘電体層65におけるアップ状態からダウン状態への分極の変化は、分極反転閾値の低い自発分極に対する部分的なものであって、強誘電体トランジスタMCは、消去状態を維持する。
【0221】
ダウン状態の自発分極plz2を含む領域(自発分極が反転した領域)において、電子トラップが、強誘電体層65と絶縁層(界面層)63との間に、一時的に発生する。この結果として、電子99が、強誘電体層65と絶縁層63との間に蓄積される。
【0222】
図12の時刻tbにおいて、読み出しパルスVRDの電圧値は、電圧値V11から電圧値V12に低下する。
【0223】
電圧値V12の電圧が印加されている期間T2において、電子99は、デトラップされること無しに、強誘電体層65と絶縁層63との間に蓄積され続けている。
【0224】
蓄積された電子99の影響によって、消去状態の強誘電体トランジスタMCの閾値電圧は、一時的に上昇する。これによって、消去状態の強誘電体トランジスタMCの意図しない閾値電圧の低下が、防止される。
【0225】
期間T2において、一時的に閾値電圧が上昇している強誘電体トランジスタMCのセル信号(電流の発生の有無)が、センスアンプ回路150によってセンスされる。
【0226】
この結果として、センスされたセル信号は、消去状態の強誘電体トランジスタMCにおける意図しない閾値電圧の低下の影響を受けない。
【0227】
時刻tcにおいて読み出しパルスVRDの印加が停止された後、強誘電体層65と絶縁層63との間の電子99は、デトラップされる。これによって、電子99は、強誘電体層65と絶縁層63との間の界面から半導体層61に放出される。
【0228】
例えば、読み出しパルスVRDの印加の停止によって、反転された自発分極plzxは、ダウン状態からアップ状態へ戻る。
【0229】
このように、強誘電体トランジスタMCの閾値電圧の一時的な上昇によって、メモリセルの読み出しマージンは、向上できる。
【0230】
尚、プログラム状態の強誘電体トランジスタMCにおいて、強誘電体層65の複数の自発分極plzの大多数は、ダウン状態である。
【0231】
それゆえ、プログラム状態の強誘電体トランジスタMCにおいて、電圧値V11の電圧の印加によって、強誘電体層65内のごく少数の自発分極がアップ状態からダウン状態に変化したとしても、自発分極の反転による電子トラップの影響は、小さい。
したがって、
図12のパルス形状の読み出しパルスVRDが、プログラム状態の強誘電体トランジスタMCに印加された場合、プログラム状態に対応したデータが、電圧値V11の電圧の印加に起因する影響なしに、その強誘電体トランジスタMCから読み出され得る。
【0232】
(d)まとめ
強誘電体トランジスタ(FeFET)をメモリセルに用いた強誘電体メモリにおいて、データの記憶は、消去シーケンス及び書き込みシーケンスからなる書き込みサイクルによって、実行される。
【0233】
書き込みサイクルの回数が、増加すると、消去状態の強誘電体トランジスタの閾値電圧が低下する現象が、生じる。
【0234】
強誘電体メモリにおいて、メモリデバイスの読み出しマージンは、消去状態の強誘電体トランジスタの閾値電圧とプログラム状態の強誘電体トランジスタの閾値電圧との差から決定される
それゆえ、消去状態の強誘電体トランジスタの閾値電圧が低下した場合、読み出しマージンが、劣化する。
【0235】
本実施形態において、読み出しパルスVRDは、第1の電圧値V11と、第1の電圧値V11より低い(小さい)第2の電圧値V12とを含む。
【0236】
消去状態の強誘電体トランジスタMCの閾値電圧は、電圧値V11の電圧の印加によって、消去状態を維持しつつ、強誘電体トランジスタMCからのセル信号のセンス期間中において一時的に上昇する。
【0237】
この結果として、本実施形態のメモリデバイス1は、読み出しマージンの劣化を、抑制できる。
【0238】
したがって、本実施形態のメモリデバイスは、信頼性を向上できる。
【0239】
(2)第2の実施形態
図14乃至
図16を参照して、第2の実施形態のメモリデバイスについて、説明する。
【0240】
第1の電圧値と第2の電圧値とを含む読み出しパルスVRDは、第1の実施形態の強誘電体メモリのメカニズムと異なるメカニズムによって動作する強誘電体メモリに、供給されてもよい。
【0241】
本実施形態のメモリデバイス1は、強誘電体トランジスタMCの強誘電体層65の反強誘電特性を利用する。
【0242】
図14は、本実施形態のメモリデバイス1の読み出しシーケンスに用いられる、読み出しパルス(読み出し電圧)を示す波形図である。
図14において、グラフの横軸は時間に対応し、グラフの縦軸は電圧値に対応する。
【0243】
図14に示されるように、本実施形態において、負の極性の読み出しパルスVRDnが、読み出しシーケンス時において、選択セルMCに供給される。
【0244】
読み出しパルスVRDnは、第1の電圧値V11n及び第2の電圧値V12nを含む。
【0245】
電圧値V11n及び電圧値V12nのそれぞれは、負の電圧値を有する。電圧値V11nは、電圧値V12nより低い。電圧値V11nの絶対値は、電圧値V12nの絶対値より大きい。
【0246】
例えば、電圧値V11nの絶対値は、消去パルスVERAの電圧値V19の絶対値より小さい。
【0247】
読み出しパルスVRDnの期間T1において、電圧値V11nが、選択セルMCのゲート-チャネル間に印加される。読み出しパルスVRDnの期間T2において、電圧値V12nが、選択セルMCのゲート-チャネル間に印加される。
【0248】
上述の消去パルスVERAの極性と同じ極性の電圧パルスが強誘電体トランジスタMCに印加されている状態において、消去状態の強誘電体トランジスタMCにおける実効電界は、プログラム状態の強誘電体トランジスタにおける実効電界より大きい。
【0249】
図15は、本実施形態のメモリデバイス1のメカニズムを説明するための模式図である。
【0250】
図15に示されるように、反強誘電特性を有する強誘電体トランジスタMCにおいて、強誘電体層65zは、或る濃度のジルコニウムを、二酸化ハフニウム中に含む。
【0251】
図15の(a)に示されるように、消去状態の強誘電体トランジスタMCにおける強誘電体層65zの分極の或るモデルとして、正孔90が、自発分極plz1の影響によって、強誘電体層65zと絶縁層63の間に蓄積される。蓄積された正孔90によって、消去状態の強誘電体トランジスタMCの閾値電圧は、低下する。
【0252】
図15の(b)に示されるように、本実施形態において、第1の電圧値V11nを有する電圧パルスVRDnの印加時において、反強誘電相95が、強誘電体層65z内に形成される。反強誘電相95において、互いに異なる分極状態の2つの自発分極plz1,plz2が、反平行に隣り合う。
【0253】
反強誘電相95が形成された領域において、正孔90は、強誘電体層65zと絶縁層63との間の部分から離脱する。それゆえ、反強誘電相95を含む消去状態の強誘電体トランジスタMCにおいて、過剰な正孔(ホールトラップ)90が、強誘電体層65zと絶縁層63との間に生じにくくなる。
【0254】
この結果として、消去状態の強誘電体トランジスタMCの意図しない閾値電圧の低下は、抑制される。
【0255】
図15の(c)に示されるように、電圧値V12nを有する電圧パルスVRDnの印加時において、反強誘電相95は、強誘電体層65z内において維持される。反強誘電相95が維持された状態において、強誘電体トランジスタMCのセル信号が、センスされる。
【0256】
それゆえ、センスされたセル信号は、消去状態の強誘電体トランジスタMCにおける意図しない閾値電圧の低下の影響を受けない。
【0257】
図16は、本実施形態のメモリデバイス1の読み出しシーケンスにおける、各配線の電位状態(印加電圧)を説明するための模式図である。
【0258】
図16に示されるように、本実施形態において、セレクトトランジスタST1z,ST2zは、pチャネル型の電界効果トランジスタである。
【0259】
本実施形態のメモリデバイス1の読み出しシーケンスにおいて、各配線に対する電圧の印加の順序は、第1の実施形態のメモリデバイス1の読み出しシーケンスと実質的に同じである。但し、本実施形態において、配線に印加される電圧(電位)の大きさが、第1の実施形態のメモリデバイス1の読み出しシーケンス(
図12参照)と異なる。
【0260】
読み出しシーケンスにおいて、ドライバ回路160は、ビット線電圧VBLzを、ビット線BLに供給する。ビット線電圧VBLzは、正の電圧値を有する。例えば、ビット線電圧VBLzの電圧値は、5V程度である。
【0261】
ドライバ回路160は、ソース線電圧VSLzを、ソース線SLに供給する。例えば、ソース線電圧VSLzは、ビット線電圧VBLzより小さい電圧値を有する。
【0262】
ドライバ回路160は、電圧Vonzを、選択されたセレクトゲート線SGD-Sに、供給する。電圧Vonzは、ビット線電圧VBLzより小さい正の電圧値を有する。例えば、電圧Vonzの電圧値は、2V程度である。
これによって、選択されたストリングユニットSU-Sにおいて、pチャネル型のセレクトトランジスタST1zは、オンする。
【0263】
ドライバ回路160は、電圧Voffzを、非選択のセレクトゲート線SGD-Uに供給する。電圧Voffzは、例えば、ビット線電圧VBLzと実質的に同じ電圧値を有する。例えば、電圧Voffzの電圧値は、5V程度である。
これによって、非選択のストリングユニットSU-Uにおいて、pチャネル型のセレクトトランジスタST1zは、オフする。
【0264】
ドライバ回路160は、電圧Vonzを、セレクトゲート線SGSに供給する。電圧Vonzは、ソース線電圧VSLzより小さい正の電圧値を有する。
これによって、セレクトトランジスタST2zは、オンする。
【0265】
ドライバ回路160は、非選択のワード線WL-Uに、非選択電圧VUSELzを印加する。非選択電圧VUSELzは、正の電圧値を有する。非選択電圧VUSELzの電圧値は、例えば、2V程度である。
これによって、非選択ワード線WL-Uに接続された非選択セルは、オンする。
【0266】
ドライバ回路160は、時刻taにおいて、電圧値Vazを、選択ワード線WL-Sに供給する。電圧値Vazは、ビット線電圧VBLzより小さい正の電圧値を有する。例えば、電圧値Vazは、1V程度である。
【0267】
これによって、負の極性の電圧パルスが、読み出しパルスVRDnとして、選択セルMC-Sのゲート-チャネル間に印加される。
【0268】
電圧値V11nは、ビット線電圧VBLzと電圧値Vazとの間の電位差に対応する。例えば、電圧値V11nは、-4V程度である。
【0269】
図15を用いて説明したように、負極性の電圧パルスの印加によって、反強誘電相95が、強誘電体層65z内に生じる。
これによって、強誘電体層65内において、正孔90の発生が、抑制される。
【0270】
この結果として、本実施形態において、強誘電体層65z内に形成された反強誘電相95によって、選択セルの強誘電体トランジスタMC-Sの閾値電圧が、一時的に上昇する。
【0271】
期間T1の経過の後、時刻tbにおいて、ドライバ回路160は、選択ワード線WL-Sの電位を、電圧値Vazから電圧値Vbzに変える。電圧値Vbzは、電圧値Vazより高く、電圧VBLzより低い正の電圧値を有する。電圧値Vbzは、例えば、3.5V程度である。
【0272】
負の極性の電圧パルスVRDnが、選択セルMC-Sのゲート-チャネル間に印加される。電圧パルスVRDnの印加中において、反強誘電相95は、強誘電体層65内に維持される。
【0273】
電圧値V12nは、ビット線電圧VBLzと電圧値Vbzとの間の電位差に対応する。例えば、電圧値V11nは、-1.5V程度である。
【0274】
期間T2において、選択セルMC-Sがオンしている場合、キャリアとしての正孔が、セル電流Icellとして、ビット線BLからソース線SLに移動する。
【0275】
第1の実施形態と同様に、センスアンプ回路150は、期間T2において、選択セルMC-Sのオン/オフに応じた電流の発生の有無を、センスする。
【0276】
これによって、センスアンプ回路150は、選択セルMC-S内のデータを判別する。
【0277】
センス結果の取得の後、読み出しパルスVRDの供給は、停止される。時刻tcにおいて、ドライバ回路160は、0Vの電圧を、選択ワード線WL-Sに供給する。また、ドライバ回路160は、0Vの電圧を、セレクトゲート線SGD,SGS、非選択のワード線WL-U、ビット線BL及びソース線SLに供給する。
【0278】
以上のように、本実施形態のメモリデバイスの読み出しシーケンスが、完了する。
【0279】
本実施形態において、メモリデバイス1の書き込みシーケンス及び消去シーケンスは、第1の実施形態の各シーケンスと、実質的に同じである。それゆえ、本実施形態において、書き込みシーケンス及び消去シーケンスの説明は、省略される。但し、本実施形態の書き込みシーケンス又は消去シーケンスに用いられる電圧パルスの極性が、第1の実施形態において用いられる電圧パルスの極性と異なってもよい。
【0280】
本実施形態のメモリデバイス1において、2つの電圧値V11n,V12nを有する負極性の読み出しパルスVRDnが、選択セルMC-Sに供給される。
【0281】
本実施形態において、比較的大きい絶対値を有する電圧値V11nの印加によって、反強誘電相95が、強誘電体層65内に形成される。反強誘電相95によって、強誘電体層65内における過剰な正孔の発生が、抑制される。これによって、消去状態の強誘電体トランジスタMCの閾値電圧が、一時的に上昇する。
【0282】
この結果として、本実施形態のメモリデバイス1は、読み出しマージンを改善できる。
【0283】
本実施形態のメモリデバイス1のように、反強誘電特性が強誘電体トランジスタMCの動作に寄与する場合、分極反転閾値電圧が低下され、書き込みサイクル耐性が良好になる。
【0284】
以上のように、本実施形態のメモリデバイス1は、信頼性を向上できる。
【0285】
(3)第3の実施形態
図17を参照して、第3の実施形態のメモリデバイスについて、説明する。
【0286】
図17は、本実施形態のメモリデバイス1の読み出しシーケンスを、説明するための模式図である。
【0287】
図17に示されるように、読み出しシーケンスにおいて、読み出しパルスVRDの供給の後、読み出しパルスVRDの極性と異なる極性の電圧パルスVWEが、選択セルMC-Sに供給される。
【0288】
例えば、正の極性を有する電圧パルスVRDが選択セルMC-Sに供給された場合、読み出しシーケンスにおいて、負の極性を有する電圧パルスVWEが、読み出しパルスVRDの供給後に、選択セルMC-Sに供給される。電圧パルスVWEは、負の電圧値V18を有する。
負の極性の電圧パルス(以下では、弱消去パルスとよばれる)VWEの電圧値V18の絶対値は、消去パルスVERAの電圧値V19の絶対値より小さい。
【0289】
以下において、負の極性を有する電圧パルスVWEの供給は、弱消去動作とよばれる。
【0290】
例えば、弱消去パルスVWEの供給期間(パルス幅)は、消去パルスVERの供給期間以下である。
【0291】
弱消去パルスVWEの供給は、読み出しパルスVRDの供給によるセル信号のセンス結果が、消去状態の強誘電体トランジスタMCに応じた値である場合に、実行される。
【0292】
セル信号のセンス結果が、プログラム状態の強誘電体トランジスタMCに応じた値である場合、プログラム状態の強誘電体トランジスタMCに対する弱消去パルスVWEの供給は、読み出しパルスVRDの供給の後、実行されない。
【0293】
例えば、各ビット線BLの電位の制御によって、弱消去パルスVWEの供給が、メモリセルMCごとに制御され得る。
弱消去動作時、より小さい正の電圧が、プログラム状態の強誘電体トランジスタMCが接続されたビット線BLに、印加される。これによって、プログラム状態の強誘電体トランジスタMCのゲート-チャネル間の電位差の絶対値は、弱消去パルスVWEの電圧値V18の絶対値より小さくなる。その結果として、自発分極の反転(データの弱消去)は、プログラム状態の強誘電体トランジスタMCに生じない。
【0294】
本実施形態において、弱消去パルスVWEの供給は、消去状態の強誘電体層65内の或る自発分極plzにおけるダウン状態からアップ状態への分極の再反転(復元)、及び、強誘電体トランジスタMC内に蓄積(トラップ)された電子の放出を、生じさせる。
【0295】
これによって、本実施形態において、消去状態の強誘電体層65は、読み出しパルスVRDの供給前の状態に、戻される。
【0296】
以上のように、本実施形態のメモリデバイスは、メモリデバイスの信頼性を向上できる。
【0297】
(4)第4の実施形態
図18を参照して、第4の実施形態のメモリデバイスについて、説明する。
【0298】
消去状態の強誘電体トランジスタMCの閾値電圧の低下量は、書き込みサイクルの回数に応じて、変化する。
或る傾向として、書き込みサイクルの回数の増加に応じて、消去状態の強誘電体トランジスタMCの閾値電圧の低下量は、大きくなる。
【0299】
書き込みサイクルの回数に応じて、読み出しパルスVRDの電圧値V11の大きさが、調整されてもよい。
【0300】
図18は、本実施形態のメモリデバイス1における、書き込みサイクルに応じた読み出しパルスVRDの波形を示す図である。
【0301】
図18に示されるように、読み出しシーケンスの設定の初期状態において、読み出しパルスVRDは、電圧値V11を有する。
【0302】
メモリデバイス1の使用に応じて、書き込みサイクルが増加すると、読み出しパルスVRDの電圧値V11の大きさが、増大される。
【0303】
例えば、j回(jは、1より大きい自然数)の書き込みサイクルが実行されたメモリデバイス1において、読み出しパルスVRDjは、期間T1において電圧値V11jを有する。電圧値V11jは、電圧値V11より大きい(高い)。
【0304】
例えば、k回(kは、jより大きい自然数)の書き込みサイクルが実行されたメモリデバイス1において、読み出しパルスVRDは、期間T1において電圧値V11kを有する。電圧値V11kは、電圧値V11jより大きい。
【0305】
但し、電圧値V11j,V11kは、書き込みパルスVWRの電圧値V0より小さい。
【0306】
尚、各読み出しパルスVRD0,VRDj,VRDkにおいて、期間T1の長さは、同じである。各読み出しパルスVRD0,VRDj,VRDkにおいて、電圧値V2の大きさは、同じである。また、各読み出しパルスVRD0,VRDj,VRDkにおいて、期間T2の長さは、同じである。但し、期間T1の長さは、各読み出しパルスVRD0,VRDj、VRDkにおける電圧値V11の増大に応じて、変化されてもよい。
【0307】
このように、読み出しパルスVRDの電圧値V11,V11j,V11kの増大によって、書き込みサイクルに応じた消去状態の強誘電体トランジスタMCの閾値電圧の意図しない低下の影響が、抑制される。
【0308】
以上のように、本実施形態のメモリデバイス1は、メモリデバイスの信頼性を向上できる。
【0309】
(5) その他
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0310】
1:メモリデバイス、MC:強誘電体トランジスタ(メモリセル)、55:導電層、60:ピラー、61:半導体層、63:絶縁層、65:強誘電体層、160:ドライバ回路。