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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039268
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ねじ締結装置及びねじ締結方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
B23P19/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143690
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 透
(72)【発明者】
【氏名】保坂 秀樹
(57)【要約】
【課題】ねじの締結品質を確保することが可能なねじ締結装置及びねじ締結方法を提供する。
【解決手段】ビット27を回転させてボルト15の嵌合穴19に嵌合させるに際し、チャック爪35,35によってボルト15の頭部16を第1把持力(把持力強)で把持したので、ビット27をボルト15の嵌合穴19に円滑かつ確実に嵌合させることができる。また、ビット27を回転させてボルト15をワーク2のねじ穴3に螺合させるに際し、チャック爪35,35によってボルト15の頭部16を第2把持力(把持力弱)で把持したので、ボルト15をねじ穴3に容易に螺合させることができる。これにより、ボルト15の締結品質を確保することができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部に嵌合穴が形成されたねじを被締結部品に締結させるねじ締結装置であって、
先端部がねじの嵌合穴に嵌合されるビットが装着されたねじ締結ユニットと、前記ねじ締結ユニットをねじ切出し位置とねじ締結位置とに位置決め可能な位置決めユニットと、を備え、
前記ねじ切出し位置には、ねじ供給装置から供給されたねじが頭部を上に向けて配置され、
前記ねじ締結ユニットには、前記ねじ切出し位置に切り出されたねじの頭部を把持するチャックユニットが設けられ、
前記チャックユニットは、一対のチャック爪と、前記一対のチャック爪による把持力を調節可能なアクチュエータと、を有し、
前記チャック爪の先端部には、ねじの頭部の外周面に当接される外周面当接部と、ねじの頭部の座面に当接される座面当接部と、が設けられ、
前記アクチュエータは、前記ビットを回転させて前記ビットをねじの嵌合穴に嵌合させるに際し、前記チャック爪とねじとの相対回転を制限する第1把持力を出力し、前記ビットを回転させてねじをねじ穴に螺合させるに際し、前記チャック爪とねじとの相対回転を許容する第2把持力を出力することを特徴とするねじ締結装置。
【請求項2】
請求項1に記載のねじ締結装置であって、
前記一対のチャック爪によって把持されたねじの嵌合穴と前記ビットとの嵌合状態を判定する嵌合状態判定手段を備え、
前記嵌合状態判定手段は、前記ねじ締結ユニットの可動部に設けられた被検出部と、前記ねじ締結ユニットの固定部に設けられたセンサと、前記センサの検出結果に基づいて前記嵌合状態を判定する制御ユニットと、を備えることを特徴とするねじ締結装置。
【請求項3】
先端部がねじの嵌合穴に嵌合されるビットを装着したねじ締結ユニットと、前記ねじ締結ユニットをねじ切出し位置とねじ締結位置とに位置決めする位置決めユニットと、を備えるねじ締結装置を用いたねじ締結方法であって、
前記ねじ締結ユニットに、前記ねじ切出し位置に切り出されたねじの頭部を把持するチャックユニットを設け、
前記チャックユニットを、一対のチャック爪と、前記一対のチャック爪による把持力を調節可能なアクチュエータと、によって構成し、
前記チャック爪の先端部に、ねじの頭部の外周面に当接される外周面当接部と、ねじの頭部の座面に当接される座面当接部と、を設けておいて、
前記チャック爪とねじとの相対回転を制限する第1把持力でねじの頭部を把持するステップと、
前記ビットを回転させることにより、前記第1把持力で把持されたねじの嵌合穴と前記ビットとを嵌合させるステップと、
前記チャック爪とねじとの相対回転を許容する第2把持力でねじの頭部を把持するステップと、
前記ビットを回転させることにより、前記第2把持力で把持されたねじをねじ穴に螺合させるステップと、
前記一対のチャック爪を開いてねじをねじ穴に締め付けるステップと、
を含むことを特徴とするねじ締結方法。
【請求項4】
請求項3に記載のねじ締結方法であって、
前記ねじ締結ユニットの可動部に被検出部を設け、前記ねじ締結ユニットの固定部にセンサを設け、
前記センサの検出結果に基づき、前記一対のチャック爪によって把持されたねじの嵌合穴と前記ビットとの嵌合状態を判定するステップを含むことを特徴とするねじ締結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に嵌合穴が形成されたねじを被締結部品に締結させるねじ締結装置、及び該ねじ締結装置を用いたねじ締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、チャック爪12によって保持されたねじSをスクリューガイド21内に吸着保持するねじ締め機1(以下「先行技術」と称する)が開示されている。先行技術によれば、ねじSを吸着保持したスクリューガイド21をビットBとともに下降させ、スクリューガイド21がワークWの上面Wbに当接した時点でビットBがスクリューガイド21に対して軸方向へ相対移動し、スクリューガイド21内のねじSにビットBが係合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-130180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術では、ビットをねじに係合させるとき、チャック爪で把持していないので、吸着されただけのねじにビットを確実に係合させることが困難である。ビットとねじとの係合が不十分である場合、スクリューガイド内でねじが傾く、延いてはねじがねじ穴に対して傾くため、ねじがねじ穴に食い付き難くなる。他方、ねじをチャック爪で強固に保持した場合、ねじの締付トルクがばらつき、ねじの締結品質が低下する虞がある。
【0005】
本発明は、ねじの締結品質を確保することが可能なねじ締結装置及びねじ締結方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のねじ締結装置は、頭部に嵌合穴が形成されたねじを被締結部品に締結させるねじ締結装置であって、先端部がねじの嵌合穴に嵌合されるビットが装着されたねじ締結ユニットと、前記ねじ締結ユニットをねじ切出し位置とねじ締結位置とに位置決め可能な位置決めユニットと、を備え、前記ねじ切出し位置には、ねじ供給装置から供給されたねじが頭部を上に向けて配置され、前記ねじ締結ユニットには、前記ねじ切出し位置に切り出されたねじの頭部を把持するチャックユニットが設けられ、前記チャックユニットは、一対のチャック爪と、前記一対のチャック爪による把持力を調節可能なアクチュエータと、を有し、前記チャック爪の先端部には、ねじの頭部の外周面に当接される外周面当接部と、ねじの頭部の座面に当接される座面当接部と、が設けられ、前記アクチュエータは、前記ビットを回転させて前記ビットをねじの嵌合穴に嵌合させるに際し、前記チャック爪とねじとの相対回転を制限する第1把持力を出力し、前記ビットを回転させてねじをねじ穴に螺合させるに際し、前記チャック爪とねじとの相対回転を許容する第2把持力を出力することを特徴とする。
本発明のねじ締結方法は、先端部がねじの嵌合穴に嵌合されるビットを装着したねじ締結ユニットと、前記ねじ締結ユニットをねじ切出し位置とねじ締結位置とに位置決めする位置決めユニットと、を備えるねじ締結装置を用いたねじ締結方法であって、前記ねじ締結ユニットに、前記ねじ切出し位置に切り出されたねじの頭部を把持するチャックユニットを設け、前記チャックユニットを、一対のチャック爪と、前記一対のチャック爪による把持力を調節可能なアクチュエータと、によって構成し、前記チャック爪の先端部に、ねじの頭部の外周面に当接される外周面当接部と、ねじの頭部の座面に当接される座面当接部と、を設けておいて、前記チャック爪とねじとの相対回転を制限する第1把持力でねじの頭部を把持するステップと、前記ビットを回転させることにより、前記第1把持力で把持されたねじの嵌合穴と前記ビットとを嵌合させるステップと、前記チャック爪とねじとの相対回転を許容する第2把持力でねじの頭部を把持するステップと、前記ビットを回転させることにより、前記第2把持力で把持されたねじをねじ穴に螺合させるステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ねじの締結品質を確保することが可能なねじ締結装置及びねじ締結方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るねじ締結装置の平面図である。
図2】本実施形態に係るねじ締結装置の主要部の正面図である。
図3】本実施形態の説明図であって、一対のチャック爪の断面図である。
図4】本実施形態に係るねじ締結装置の嵌合状態判定手段の説明図であって、(A)はビットが原位置に位置している状態、(B)はビットが嵌合穴に正常に嵌合している状態、(C)はビットがボルトの頭部に乗り上げた状態を示す。
図5】本実施形態に係るねじ締結方法の説明図であって、ナットランナがねじ切出し位置に位置決めされた状態を示す図である。
図6】本実施形態に係るねじ締結方法の説明図であって、ボルトの頭部が一対のチャック爪によって把持された状態を示す図である。
図7】本実施形態に係るねじ締結方法の説明図であって、ボルトの嵌合穴にビットを嵌合させたナットランナを図5と同じ高さまで上昇させた状態を示す図である。
図8】本実施形態に係るねじ締結方法の説明図であって、ビットを回転させてボルトをワークのねじ穴に螺合させた状態を示す図である。
図9】本実施形態に係るねじ締結方法の説明図であって、一対のチャック爪を開いてボルトを締め付ける状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態を添付した図を参照して説明する。
図1に示されるように、ねじ締結装置1は、ナットランナ21(ねじ締結ユニット)と、ナットランナ21を移動及び位置決めする位置決めユニット11と、を備える。位置決めユニット11は、XYテーブル12と、ナットランナ21が取り付けられるZテーブル13とを有する。便宜上、位置決めユニット11に定められた機械座標系のZ方向をそのままZ方向と称する。
【0010】
なお、本実施形態においてワーク2(被締結部品)に締結されるねじは、略円柱形の頭部16の端面にヘクサロビュラ穴(以下「嵌合穴19」と称する)が形成されたボルト15(図5参照)である。ボルト15は、ボルト供給装置(図示省略)によって整列された後、図5に示されるように、ボルト切出し装置5によって1本づつ頭部16を上に向けて直立して切り出される。
【0011】
本実施形態において、ナットランナ21、位置決めユニット11、ボルト供給装置、及びボルト切出し装置5は、既存のナットランナ、位置決めユニット、ボルト供給装置、及びボルト切出し装置が適用される。よって、明細書の記載を簡潔にすることを目的に、ナットランナ21、位置決めユニット11、ボルト供給装置、及びボルト切出し装置5に関する詳細な説明を省略する。
【0012】
図2に示されるように、ねじ締結装置1は、ボルト切出し装置5によって切り出されたボルト15(図5参照)の頭部を把持するチャックユニット31を備える。チャックユニット31は、一対のチャック爪35,35と、一対のチャック爪35,35を駆動する2爪型の電動グリッパ32(アクチュエータ)と、を有する。電動グリッパ32は、ソケットアセンブリ23の外筒部24(固定部)に取り付けられる。なお、電動グリッパ32は、既存の電動グリッパが適用される。
【0013】
一対のチャック爪35,35は、図2及び図3において左右対称をなす。図3に示されるように、チャック爪35の上端には、略扇形のフランジ39(外フランジ)が形成される。フランジ39には、電動グリッパ32の爪33(図2参照)が結合される。これにより、電動グリッパ32の一対の爪33,33を開閉させると、一対のチャック爪35,35が開閉する。
【0014】
他方、チャック爪35の下端部(先端部)には、ボルト15の頭部16の外周面17が当接される外周面当接部36と、ボルト15の頭部16の座面18が当接される座面当接部37と、が設けられる。外周面当接部36は、チャック爪35の内周面38に設けられ、ボルト15の頭部16の外周面17に対応する曲面を有する。座面当接部37は、外周面当接部36の下端に設けられ、ボルト15の頭部16の座面18が着座する。なお、一対のチャック爪35,35間には、ソケットアセンブリ23(図2参照)に装着されたビット27が挿通される。
【0015】
ねじ締結装置1は、一対のチャック爪35,35によってボルト15の頭部16を把持した状態(図6参照)で、ビット27がボルト15の嵌合穴19に正常に嵌合されているか否かを判定する嵌合状態判定手段を備える。図2図4を参照すると、嵌合状態判定手段は、ブラケット42を介して電動グリッパ32(固定部)の一側面(図2における左側面)に設けられた投光部43と、ブラケット44を介して電動グリッパ32の他側面(図2における右側面)に設けられた受光部45と、によって構成される光電センサ41(以下「センサ41」と称する)を有する。
【0016】
嵌合状態判定手段は、ソケットアセンブリ23の内筒部25(可動部)に固定された検出子47(被検出部)と、センサ41の検出結果に基づいてビット27とボルト15の嵌合穴19との嵌合状態を判定する制御ユニット(図示省略)と、を有する。なお、検出子47は、一定の板厚を有するリング形状をなす。制御ユニットは、投光部43から発せられたセンサ光が検出子41によって遮られてセンサ41がONすることで(図4の(B)参照)、ビット27とボルト15の嵌合穴19とが正常に嵌合されていると判定する。
【0017】
なお、ビット27が原位置(図5参照)に位置しているとき(図4の(A)参照)、投光部43から発せられた光Lが検出子41の上方を通過し、受光部45に到達してセンサ41がOFFすることにより、制御ユニットは、ビット27とボルト15の嵌合穴19とが正常に嵌合されていない(NG)と判定する。他方、ビット27がボルト15の頭部16に乗り上げているとき(図4の(C)参照)、投光部43から発せられたセンサ光が検出子41の下方を通過し、受光部45に到達してセンサ41がOFFすることにより、制御ユニットは、ビット27とボルト15の嵌合穴19とが正常に嵌合されていない(NG)と判定する。
【0018】
次に、図5乃至図9を参照し、ねじ締結装置1を用いたねじ締結方法を説明する。
まず、図5に示されるように、ナットランナ21(ねじ締結ユニット)のビット27を、ボルト切出し装置5によって切り出されたボルト15と同軸に位置決めする。便宜上、このときのナットランナ21のZ方向の位置をZ0とする。このとき、チャックユニット31の一対のチャック爪35,35は全開である。さらに、ソケットアセンブリ23は、内蔵された圧縮ばね(図示省略)の付勢力によって内筒部25が伸長されている。これにより、ビット27は、先端部(下端部)がチャック爪35,35の下端から突出した原位置に位置する。
【0019】
次に、ナットランナ21を下降させ、ナットランナ21をZ1(ボルト把持位置、図6参照)に位置決めする。これにより、ビット27がボルト15の頭部16によって押し上げられ、ソケットアセンブリ23が縮長される。次に、図6に示されるように、一対のチャック爪35,35を閉じてボルト15の頭部16を把持する。ボルト15は、頭部16の外周面17が一対のチャック爪35,35の外周面当接部36,36によって挟み付けられ、頭部16の座面18が一対のチャック爪35,35の座面当接部37,37に着座する。
【0020】
この状態で、ビット27を正回転させ、ビット27をボルト15の嵌合穴19(ヘクサロビュラ穴)に嵌合させる。このとき、電動グリッパ32は、チャック爪35,35とボルト15との相対回転を制限する第1把持力(把持力強)でボルト15の頭部16を把持しているので、ビット27をボルト15の嵌合穴19に円滑かつ確実に嵌合させることが可能である。
【0021】
そして、嵌合状態判定手段のセンサ41がONすると(図4の(B)参照)、図7に示されるように、ナットランナ21を上昇させてZ0に位置決めする。これにより、ボルト15は、ボルト切出し装置5から引き抜かれる。なお、ビット27を回転させた後、センサ41がOFFのとき、制御ユニット(図示省略)は、ビット27とボルト15との嵌合状態が正常ではない(NG)と判定し、アラームを発生する。また、ボルト切出し装置5は、ボルト15をナットランナ21へ受け渡すと、次のボルト15を切出して待機する。
【0022】
次に、ナットランナ21(ビット27)を、ワーク2(被締結部品)の指定されたねじ穴3(図8参照)と同軸のねじ締結位置に位置決めする。位置決め完了後、ナットランナ21を下降させ、ボルト15の棒先をねじ穴3に挿入する。この状態で、ビット27を正回転させ、図8に示されるように、ボルト15をねじ穴3に螺合させる。このとき、電動グリッパ32は、チャック爪35,35とボルト15との相対回転を許容する第2把持力(把持力弱)でボルト15の頭部16を把持しているので、ボルト15の軸が振れることなく、ボルト15を円滑に回転させることが可能である。
【0023】
次に、チャックユニット31のチャック爪35,35を開き(図9参照)、一対のチャック爪35,35によるボルト15の頭部16の把持を解消し、さらにボルト15を正回転させる。そして、図9に示されるように、ボルト15の座面18がワーク2に着座し、ボルト15の締付トルクが設定トルクに到達した時点で、ビット27の回転を停止させる。次に、ナットランナ21を上昇させ、ナットランナ21をZ0に位置決めする。
【0024】
そして、図5に示されるように、ナットランナ21のビット27を、ボルト切出し装置5によって切り出された次のボルト15と同軸に位置決めする。ねじ締結装置1は、ワーク2の指定された全てのねじ穴3(図8参照)にボルト15を締結させるまで、前述したステップを繰り返す。
【0025】
ここで、先行技術では、ビットをボルト(ねじ)に嵌合させるとき、ボルトをチャック爪で把持していないので、ビットをボルトに確実に嵌合させるのが困難である。ビットとボルトとの嵌合が不十分である場合、ビットの回転力がボルトにうまく伝わらず、ボルトがねじ穴に螺合し難く(食い付き難く)なる。
【0026】
これに対し、本実施形態では、チャック爪35の先端部に、ボルト15の頭部16の外周面17が当接される外周面当接部36と、ボルト15の頭部16の座面18が当接される座面当接部37とを設け、ビット27を回転させてビット27をボルト15の嵌合穴19に嵌合させるに際し、ボルト15の頭部16を、チャック爪35,35とボルト15の頭部16との相対回転を制限する第1把持力(把持力強)で把持したので、ビット27をボルト15の嵌合穴19に円滑かつ確実に嵌合させることができる。
また、本実施形態では、ビット27を回転させてボルト15をワーク2のねじ穴3に螺合させる(食い付かせる)に際し、ボルト15の頭部16を、チャック爪35,35とボルト15の頭部16との相対回転を許容する第2把持力(把持力弱)で把持したので、ボルト15がねじ穴3に対して傾くことを抑止し、ボルト15をねじ穴3に容易に螺合させる(食い付かせる)ことができる。また、ボルト15を締め付けている間は、一対のチャック爪35,35が開いている、即ち、一対のチャック爪35,35によるボルト15の頭部16の把持が解消されているので、ボルト15の締付トルクが安定し、ボルト15の締結品質を確保することができる。
さらに、本実施形態では、嵌合状態判定手段は、ビット27とボルト15の嵌合穴19との嵌合状態がNGであると判定した場合、アラームを発生するので、チャック爪35,35がボルト15を掴み損なった状態(図4の(A)参照)、或いはビット27がボルト15の頭部16に乗り上げた状態(図4の(C)参照)で、締結動作が継続される事態を防ぐことができる。
【0027】
なお、実施形態は、前述した形態に限定されるものではなく、例えば、次のように構成することができる。
本実施形態では、センサ41の検出子47をソケットアセンブリ23の内筒部25に取り付けたが、ビット27と一体でZ方向へ移動する突起等をセンサ41によって検出するように嵌合状態判定手段を構成してもよい。また、ビット27と一体でZ方向へ移動する部材に溝又は貫通孔を設け、センサ41がOFFしたときに嵌合状態が正常であると判定するように嵌合状態判定手段を構成してもよい。
また、本実施形態では、軸部の先端が棒先のボルト15を適用したが、軸部の先端が平先(全ねじ)のボルト15を適用してもよい。この場合、ボルト15とねじ穴3との初期の食い付きを容易にするため、ビット27を正回転させる前に所定量だけ逆回転させてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 ねじ締結装置、2 ワーク(被締結部品)、11 位置決めユニット、15 ボルト(ねじ)、16 頭部、19 嵌合穴、21 ナットランナ(ねじ締結ユニット)、27 ビット、31 チャックユニット、32 電動グリッパ(アクチュエータ)、35 チャック爪、36 外周面当接部、37 座面当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9