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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039273
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】解析装置および表示方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/447 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
G01N27/447 325D
G01N27/447 325B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143695
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻野 康太
(72)【発明者】
【氏名】原田 亨
(57)【要約】
【課題】電気泳動データの解析において、ゲルイメージのバンドに対応する成分のサイズを容易に認識する。
【解決手段】サンプルについて電気泳動分離により得られた1以上のデータを解析する解析装置1であって、メモリ11と、表示部13と、プロセッサ10とを備える。メモリ11は、データを記憶する。表示部13は、データに基づいて、ゲルイメージ、エレクトロフェログラム、ゲルイメージに対応する第1サイズガイドG1、および、エレクトロフェログラムに対応する第2サイズガイドG2を表示する。プロセッサ10は、ゲルイメージにおいて第1サイズガイドG1がサイズに関連する特定値に対応する第1位置にある場合、エレクトロフェログラムにおいて特定値に対応する第2位置に、第2サイズガイドG2を表示する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルについて電気泳動分離により得られた1以上のデータを解析する解析装置であって、
前記データを記憶するメモリと、
前記データに基づいて、ゲルイメージ、エレクトロフェログラム、前記ゲルイメージに対応する第1サイズガイド、および、前記エレクトロフェログラムに対応する第2サイズガイドを表示する表示部と、
プロセッサとを備え、
前記プロセッサは、
前記ゲルイメージにおいて前記第1サイズガイドがサイズに関連する特定値に対応する第1位置にある場合、
前記エレクトロフェログラムにおいて前記特定値に対応する第2位置に、前記第2サイズガイドを表示する、解析装置。
【請求項2】
前記第1サイズガイドは、前記ゲルイメージのサイズに関連する値を示す軸に対応して移動可能であり、
前記第1サイズガイドを前記第1位置へ移動させるユーザの指示を受け付けた場合、
前記プロセッサは、前記第2位置に前記第2サイズガイドを表示する、請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記解析装置に対するユーザの指示を入力するための入力部をさらに備え、
前記プロセッサは、前記入力部による、前記第1サイズガイドの移動の指示を受け付ける、請求項2に記載の解析装置。
【請求項4】
前記入力部は、ポインティングデバイスまたはキーボードである、請求項3に記載の解析装置。
【請求項5】
前記特定値は、特定サイズ、特定泳動時間および特定移動時間インデックスの少なくとも1つを含み、
前記特定値に対応する前記第2位置は、前記特定値に対応するサイズに対応する位置、前記特定値に対応する泳動時間に対応する位置、および、前記特定値に対応する移動時間インデックスに対応する位置の少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の解析装置。
【請求項6】
前記第1サイズガイドは、前記第1位置を示す線分を含み、
前記第2サイズガイドは、前記第2位置を示す線分を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の解析装置。
【請求項7】
前記第1サイズガイドは、前記特定値の数値の表示を含み、
前記第2サイズガイドは、前記第2位置に対応する数値の表示を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の解析装置。
【請求項8】
前記1以上のデータが複数のデータである場合、前記プロセッサは、前記第1位置を示す前記第1サイズガイドを前記複数のデータについて表示する、請求項1~4のいずれか1項に記載の解析装置。
【請求項9】
前記第2サイズガイドは、前記エレクトロフェログラムのサイズに関連する値を示す軸に対応して移動可能であり、
前記第2サイズガイドを、前記エレクトロフェログラムにおいて第3位置へ移動させるユーザの指示を受け付けた場合、
前記プロセッサは、前記第3位置に対応するサイズに関連する値に対応する第4位置に、前記第2サイズガイドを表示する、請求項1~4のいずれか1項に記載の解析装置。
【請求項10】
サンプルについて電気泳動分離により得られた1以上のデータの表示方法であって、
前記データに基づいて、ゲルイメージおよびエレクトロフェログラムを表示するステップと、
前記ゲルイメージにおいて、サイズに関連する値に対応する値を示す軸に対応して移動可能な第1サイズガイドを、第1位置へ移動させるユーザの指示を受け付けるステップと、
前記第1位置に対応するサイズに関連する特定値を算出するステップと、
前記エレクトロフェログラムにおいて、前記特定値に対応する第2位置を算出するステップと、
前記エレクトロフェログラムにおいて、前記第2位置に第2サイズガイドを表示するステップとを含む、表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析装置および表示方法に関し、より特定的には、電気泳動データの解析装置および表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気泳動データを解析・表示するソフトウェアでは、検出されたデータを、ゲルイメージ、エレクトロフェログラムおよびピークリストなどの形態で表示する。
【0003】
特開2020-20725号公報(特許文献1)には、検出されたデータをエレクトロフェログラムおよびゲルイメージの形態で表示する電気泳動で分離されたサンプルのデータ解析装置の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-20725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゲルイメージには、電気泳動で分画されたサンプル中の成分に対応するバンドが含まれる。通常、ユーザはこのバンドのサイズに基づいて、どのような成分がサンプルに含まれていたかを解析する。しかし、ゲルイメージ上のバンドは泳動方向に幅があり、当該幅の中のどの位置が、実際の成分のサイズに対応するかを判定することが困難な場合があった。この場合、ゲルイメージのバンドに対応する成分のサイズを求めることが困難となり得る。
【0006】
本開示は、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、電気泳動データの解析において、ゲルイメージのバンドに対応する成分のサイズを容易に認識することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、サンプルについて電気泳動分離により得られた1以上のデータを解析する解析装置であって、メモリと、表示部と、プロセッサとを備える。メモリは、データを記憶する。表示部は、データに基づいて、ゲルイメージ、エレクトロフェログラム、ゲルイメージに対応する第1サイズガイド、および、エレクトロフェログラムに対応する第2サイズガイドを表示する。プロセッサは、ゲルイメージにおいて第1サイズガイドがサイズに関連する特定値に対応する第1位置にある場合、エレクトロフェログラムにおいて特定値に対応する第2位置に、第2サイズガイドを表示する。
【0008】
本開示の第2の態様は、サンプルについて電気泳動分離により得られた1以上のデータの表示方法であって、データに基づいて、ゲルイメージおよびエレクトロフェログラムを表示するステップと、ゲルイメージにおいて、サイズに関連する値に対応する値を示す軸に対応して移動可能な第1サイズガイドを、第1位置へ移動させるユーザの指示を受け付けるステップと、第1位置に対応するサイズに関連する特定値を算出するステップと、エレクトロフェログラムにおいて、特定値に対応する第2位置を算出するステップと、エレクトロフェログラムにおいて、第2位置に第2サイズガイドを表示するステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示による解析装置によれば、電気泳動データの解析において、ゲルイメージのバンドに対応する成分のサイズを容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る解析システムの全体の構成を示す図である。
図2】ゲルイメージ上のバンドの幅を説明するための図である。
図3】実施形態に係る解析画面の一例を示す図である。
図4】比較例に係る解析画面の一例を示す図である。
図5】多数のサンプルの解析結果を含む場合の実施形態に係る解析画面の例を示す図である。
図6】サイズ差が小さい複数の成分を含む場合の実施形態に係る解析画面の例である。
図7】解析装置の表示処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0012】
[1.解析システムの構成]
図1は、解析システムの全体の構成を示す図である。図1に示されているように、解析システム100は、解析装置1と電気泳動装置2とを含む。
【0013】
電気泳動装置2は、サンプルを特定の支持体(膜、ゲル等)に設置した後、支持体に直流電場をかけることで、サンプルにふくまれる成分をその鎖長に応じて分離するための装置である。一実施例において、電気泳動装置2は、行列状にウェルが形成されたプレート21に設置された1以上のサンプルを自動的に連続分析する。具体的には、たとえば、ユーザは1以上のサンプルをプレート21に設置する。電気泳動装置2は、プレート21から微細な分析流路中にサンプルを導入する。分析流路中には蛍光色素が含まれており、サンプルは分析流路中を泳動する間に蛍光色素で染色される。電気泳動装置2は、分析流路に電圧を印加し、サンプルを成分ごとに分離する。そして、電気泳動装置2は、分析流路に紫外線を照射し、分離された成分から発生する蛍光を検出する。電気泳動装置2は、蛍光の信号強度と、分析流路中の移動距離との関係を示す分離データを取得する。なお、当該移動距離は、一般にサンプルのサイズ(分子量)に相関する。
【0014】
一実施例において、サンプルはデオキシリボ核酸(DNA)を成分として含み、電気泳動装置2は、DNAをそのサイズである塩基対の数(bp:base pair)によって分離する。ただし、サンプルの成分は以上の例に限定されず、電気泳動により分離されることが可能であればよく、たとえばリボ核酸(RNA)またはタンパク質であってもよい。
【0015】
一実施例において、電気泳動装置2は、4つの分析流路を有し、一度に4つのサンプルの電気泳動が可能である。
【0016】
解析装置1は、電気泳動で得られた1以上の分離データを電気泳動装置2から取得して、データ解析処理を実施する。分離データは、本開示における「データ」の一実施例に対応する。
【0017】
解析装置1は、プロセッサ10と、メモリ11と、入力部12と、表示部13とを備える。
【0018】
プロセッサ10は、たとえばCPU(Central Processing Unit)を含む。プロセッサ10は、メモリ11に格納されているプログラムをRAM等に展開して実行する。
【0019】
メモリ11は、たとえば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリを含む。ROMに格納されるプログラムは、解析装置1の処理手順が記されたプログラムである。不揮発性メモリは、電気泳動装置2から送られてきた分離データをデータファイルとして記憶する。なお、メモリ11は、不揮発性メモリに代えてまたはこれに加えてハードディスク装置を含んでいても良い。
【0020】
入力部12は、解析装置1に対するユーザの指示を入力するための部である。たとえば、入力部12は、キーボードおよびマウス等のポインティングデバイスを含む。
【0021】
表示部13は、液晶ディスプレイ等を含む。解析装置1は、処理手順が記されたプログラムに従って、表示用データを生成し、表示部13に表示させる。この制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0022】
表示部13は、ゲルイメージおよびエレクトロフェログラムを含む、分離データの解析結果を表示する。ゲルイメージは、複数サンプルの分析結果を俯瞰的に確認できる表示形式である。一方、エレクトロフェログラムは単一サンプルの分析結果を詳細に確認できる表示形式である。
【0023】
[2.従来の解析システムとの比較]
電気泳動分離の分離データを解析するソフトウェアにおいては、サンプルを分離した結果が、ゲルイメージ、エレクトロフェログラムおよびピークリストなどの形態で表示される。特許文献1には、検出されたデータをエレクトロフェログラムおよびゲルイメージの形態で表示するデータ解析装置の一例が示されている。
【0024】
ゲルイメージには、サンプル中の各成分に対応するバンドが含まれる。ユーザは、このバンドのサイズに基づいて、サイズに対応する成分がサンプルに含まれていたことを認識できる。しかし、ゲルイメージのバンドには泳動方向に幅があるため、当該幅の中のどの位置が、実際の成分のサイズに対応するのかを特定することは困難な場合があった。
【0025】
図2は、ゲルイメージ上のバンドの一例を示す図である。たとえば矢印で示したバンドには幅があるので、バンドに対応する成分のサイズを正確に推定することは困難である。すなわち、ゲルイメージだけでは、バンドに対応する成分のサイズを判定することが困難である場合があった。
【0026】
そこで、本実施に係る解析システムにおいては、ゲルイメージにおいて所定のサイズに対応する位置を示す第1サイズガイドと、エレクトロフェログラムにおいて所定のサイズに対応する位置を示す第2サイズガイドとが示される。そして、第1サイズガイドと第2サイズガイドの位置は連動するように構成される。これにより、第2サイズガイドがエレクトロフェログラム中のピークの頂点に位置するように、ユーザが第1サイズガイドを移動させたときの、第1サイズガイドの位置に基づいて、バンドに対応する成分のサイズを容易に推定することが可能になる。なお、以降の説明において、第1サイズガイドおよび第2サイズガイドを、「サイズガイド」と総称する。
【0027】
[3.実施形態に係る解析画面]
(3-1.解析画面の概要)
次に、分離データを解析するための解析画面である図3を説明する。
【0028】
図3は、実施形態に係る解析装置1の解析画面の一例を示す図である。なお、本明細書において、「実施形態に係る解析装置1の解析画面」は、「実施形態に係る解析画面」とも称する。解析画面は、たとえば表示部13に表示され、ゲルイメージウィンドウW1、エレクトロフェログラムウィンドウW2およびプレートイメージウィンドウW3を含む。解析画面は、他の解析に関する表示を含んでもよい。たとえば、解析画面は、ピークに対応するサイズ、移動時間インデックス、ピークの信号強度から算出された濃度等の値を含む、ピークテーブルを含んでも良い。
【0029】
プレートイメージウィンドウW3は、図1のプレート21に形成されている行列状のウェルの配置に対応する画像であるプレートイメージを表示する。一実施例において、プレート21は、A~H行、X1~X3,1~12列のウェルを含む。プレートイメージにおいては、サンプルが設置されたウェルが、サンプルが設置されていないウェルとは異なる視覚的表現を有するように示されている。なお、図4以降では、プレートイメージウィンドウW3の表記を省略する。
【0030】
ゲルイメージウィンドウW1は、各サンプルのゲルイメージを表示する。ゲルイメージウィンドウW1においては、各ゲルイメージに対応するサンプルの分析順が(1)~(8)として示され、ウェルの位置がその下に示される。図3の例では、プレート21のA行X1列のウェルX1Aに設置された解析コントロールとして使用されるサンプル(以下、「コントロール」と称する)について、4つの分析流路を使用して分析が実行される。よって、分析順(1)~(4)には同じウェルX1Aが示されている。その後、分析順(5)以降で、ウェルA1~A4に設置された、解析対象となる未知サンプルが順に1回ずつ分析されている。本明細書において、コントロールおよび未知サンプルを、「サンプル」と総称する。
【0031】
ゲルイメージは、電気泳動装置2で得られた分離データに基づいて作成される、サンプルの分離データを簡易な表現で表した画像である。一実施例において、ゲルイメージの縦軸は、サイズ(bp)である。ただし、ゲルイメージの縦軸は、サイズに関連する値であればよく、泳動時間または移動時間インデックスであってもよい。ゲルイメージの縦軸の単位は、たとえば、入力部12を用いて、解析画面に表示される図示しない所定のボタンを操作することで変更することができる。「移動時間インデックス」は、分析流路における移動時間のインデックスであり、サイズを算出するために用いられる。ゲルイメージにおける濃淡は、信号強度(mV)に相関する。よって、ゲルイメージにおける縞(一般に「バンド」と称される)の各々は、試料に含まれる成分を示している。
【0032】
エレクトロフェログラムウィンドウW2は、各サンプルのエレクトロフェログラムを表示する。図3の例では、エレクトロフェログラムウィンドウW2には、A行1列のウェルA1に設置された未知サンプルのエレクトロフェログラムが表示されている。
【0033】
エレクトロフェログラムは、電気泳動装置2で得られた分離データに基づいて作成される。一実施例において、エレクトロフェログラムの横軸は、サイズ(bp)である。ただし、エレクトロフェログラムの横軸は、サイズに関連する値であればよく、図3のグラフの横軸に括弧書きで示したように、泳動時間または移動時間インデックスであってもよい。エレクトロフェログラムの横軸の単位は、ゲルイメージの縦軸の単位と同じでも、異なっても良い。エレクトロフェログラムの横軸の単位は、たとえば、入力部12を用いて、解析画面に表示される図示しない所定のボタンを操作することで変更することができる。エレクトロフェログラムの縦軸は信号強度(mV)である。
【0034】
エレクトロフェログラムには、試料に含まれる成分に対応するピークが示される。当該ピークは、たとえば、解析装置1により、信号強度の時間あたりの変化が所定の閾値以上であることを指標として検出される。エレクトロフェログラムで示されたピークは、ゲルイメージにおけるバンドに対応している。
【0035】
(3-2.サイズガイド)
本実施形態に係る解析画面には、ゲルイメージに対応する第1サイズガイドG1、および、エレクトロフェログラムに対応する第2サイズガイドG2が表示される。
【0036】
第1サイズガイドG1は、ゲルイメージ上の所定のサイズに対応する位置を示すための表示である。第1サイズガイドG1は、ゲルイメージのサイズ軸(縦軸)に対応して移動可能である。一実施例において、第1サイズガイドG1は、特定サイズに対応する第1位置を示す線分を含む。第1位置はたとえばゲルイメージ上の任意の位置であるが、後述するように、第1サイズガイドG1の位置を調整することによりバンドのサイズを判定できる。当該線分は、好ましくは、縦軸に垂直に、すなわち、バンドと平行に表示される。第1サイズガイドG1により、ユーザはゲルイメージ上の第1位置を容易に認識できる。
【0037】
複数のデータに基づいたゲルイメージが表示される場合、第1サイズガイドG1は、第1位置を示すサイズガイドを複数のデータについて表示する。図3においては、第1サイズガイドG1は、複数のサンプルのゲルイメージにオーバーラップする1つの線分として表示されている。これにより、共通の第1サイズガイドG1と複数のゲルイメージの各々のバンドとの位置関係を一度に認識することができる。より特定的には、複数のゲルイメージの各々が、第1サイズガイドG1が示すサイズと同じサイズのバンドを含むかを同時に認識できる。さらに特定的には、所定のゲルイメージにおいて解析対象となるバンドと、同一のサイズのバンドを含むゲルイメージが容易に認識できる。この場合、後述するように、所定の解析対象となるバンドに対応する成分のサイズを認識した場合、当該同一のサイズのバンドに対応する成分のサイズも同時に明らかになる。また、後述するように、多数のサンプルを同時に比較検討することも容易になる。
【0038】
第2サイズガイドG2は、エレクトロフェログラム上の所定のサイズに対応する位置を示すための表示である。一実施例において、第2サイズガイドG2は、特定サイズに対応する第2位置を示す線分を含む。当該線分は、好ましくは、サイズ軸(横軸)に垂直に表示される。これにより、ユーザはエレクトロフェログラム上の第2位置を容易に認識できる。
【0039】
ゲルイメージにおける第1サイズガイドG1の位置、および、エレクトロフェログラムにおける第2サイズガイドG2の位置は対応している。より具体的には、ゲルイメージにおいて第1サイズガイドG1がサイズに関連する特定値に対応する第1位置にある場合、エレクトロフェログラムにおいて当該特定値に対応する第2位置に、第2サイズガイドG2が表示される。本実施例において当該特定値はたとえば特定サイズである。ただし、特定値は、サイズに関連する特定の値であればよく、特定泳動時間または特定移動時間インデックスであってもよい。本実施例において、特定値に対応する第2位置は、特定値に対応するサイズに対応する位置である。ただし、特定値に対応する第2位置は、特定値に対応する泳動時間に対応する位置、または、特定値に対応する移動時間インデックスに対応であってもよい。これにより、ゲルイメージおよびエレクトロフェログラムの各々において、サイズ、泳動時間および移動時間インデックスのうち、いずれの単位を用いた軸が使用されている場合においても、共通の特定値に対応する位置に、サイズガイドを表示することができる。
【0040】
より具体的には、たとえば、ユーザは入力部12を用いて、ゲルイメージにおける第1位置へ第1サイズガイドG1を移動する指示を入力する。ユーザは、たとえば、ポインティングデバイスまたはキーボードを用いて、第1位置を選択することにより、第1位置への移動の指示を入力する。ユーザは、たとえば、カーソルを第1位値に移動させる、または、第1位置をクリックすることにより、第1位置を選択する。ユーザは、第1サイズガイドG1をドラッグしたり、キーボードの矢印ボタン等を押したりして、第1サイズガイドG1を第1位置へ移動させても良い。また、ユーザは、第1サイズガイドG1の位置を移動するための解析画面中の専用のアイコン(図示せず)を、ポインティングデバイスまたはキーボードを用いて操作することにより、第1サイズガイドG1を第1位置へ移動させても良い。これにより、ユーザは汎用性のある入力部12を用いて、容易に第1サイズガイドG1の移動の指示を入力することができる。
【0041】
解析装置1のプロセッサ10は、第1位置への移動の指示を受け付けた場合、第1位置に対応する特定サイズを算出し、特定サイズに対応するエレクトロフェログラム中の第2位置を示す第2サイズガイドG2を表示部に表示する。これにより、ユーザはエレクトロフェログラム中の所望する位置に第2サイズガイドG2が位置するように、第1サイズガイドG1を移動させることができる。
【0042】
第1サイズガイドG1の表記は図3の例に限定されない。以下に、第1サイズガイドG1の表記の例について説明する。
【0043】
第1サイズガイドG1は、たとえば、一部のサンプルのゲルイメージにのみオーバーラップされるように表示されても良い。当該一部のサンプルは、たとえば、ユーザによって選択されたサンプルである。
【0044】
また、第1サイズガイドG1を構成する線分は1つでなく、複数であってもよい。たとえば、第1サイズガイドG1は、各ゲルイメージにオーバーラップする部分にのみ表示され、各ゲルイメージの間隙には表示されなくても良い。逆に当該間隙のみに表示されてもよい。
【0045】
また、第1サイズガイドG1の表示形式は線分でなくてもよく、たとえば、各ゲルイメージの特定サイズに対応する第1位置を指す矢印として、各ゲルイメージの間隙に表示されてもよい。
【0046】
一実施例において、第1サイズガイドG1は、特定サイズの数値V1の表示を含む。図3の例では、第1サイズガイドG1に対応して、特定サイズの数値V1が表示されている。これにより、ユーザは第1サイズガイドG1に対応する特定サイズの数値V1を容易に認識することができる。特定サイズの数値V1の表示場所は、望ましくは図3の例のように第1サイズガイドG1に隣接する場所であるが、特に限定されず、ユーザが数値V1が第1サイズガイドG1に対応していることが認識できる場所であれば良い。
【0047】
第1サイズガイドG1の位置に対応するゲルイメージの縦軸の数値が表示されている場合、ユーザは当該縦軸の数値に基づいて、第1サイズガイドG1の対応する特定サイズを判定することも可能である。
【0048】
このように、第1サイズガイドG1の表記方法は、特に限定されず、ゲルイメージの特定サイズに対応する第1位置を、ユーザに認識させることが可能であれば良い。
【0049】
一実施例において、第1サイズガイドG1は、サイズガイド表示ボタン32を選択することにより、解析画面に表示される。しかし、第1サイズガイドG1は、解析画面において常に表示されても良い。
【0050】
第2サイズガイドG2の表記は、第1サイズガイドG1と同様に、図3の例に限定されない。
【0051】
一実施例において、第2サイズガイドG2は、第2位置に対応する数値V2の表示を含む。図3の例では、第2サイズガイドG2に対応して、特定サイズの数値V2が表示されている。これにより、ユーザは第2サイズガイドG2に対応する特定サイズの数値V2を必要に応じて容易に参照することができる。
【0052】
また、上記では、ユーザが第1サイズガイドG1を操作することにより第2サイズガイドG2が連動して動く構成を説明したが、ユーザが第2サイズガイドG2を操作することにより第1サイズガイドG1が連動して動く構成に変えてもよい。具体的には、第2サイズガイドG2は、エレクトロフェログラムのサイズ軸に対応して移動可能に構成される。第2サイズガイドG2を、エレクトロフェログラムにおいて第3位置へ移動させるユーザの指示を受け付けた場合、プロセッサは、第3位置に対応するサイズに対応する第4位置に、第2サイズガイドG2を表示する。これにより、ユーザは、第1サイズガイドG1の位置が解析を所望するバンドにオーバーラップするように第2サイズガイドG2を所定のピークに移動させたのち、第2サイズガイドG2を当該ピークの頂点に移動させることができる。その結果、解析を所望するバンドに対応する成分のサイズを容易に認識することができる。
【0053】
また、第1サイズガイドG1および第2サイズガイドG2の両方がユーザによる操作を受け付けることが可能な構成としても良い。当該構成の場合、操作を受け付けたサイズガイドに、操作を受け付けなかった方のサイズガイドが連動して動く。これにより、ユーザは適宜第1サイズガイドG1および第2サイズガイドG2を移動させることにより、解析を所望するバンドに対応する成分のサイズを容易に認識することができる。
【0054】
(3-3.バンドに対応する成分のサイズの推定)
解析装置1を用いれば、ユーザは、解析対象である特定バンドに対応する成分のサイズを、特定バンドに対応する特定ピークを用いて判定することができる。より特定的には、ユーザは第2サイズガイドG2を特定ピークの頂点に対応するように、第1サイズガイドG1を移動させることにより、特定バンドに対応する成分のサイズを容易に認識することができる。
【0055】
ここで、「特定バンド」とはたとえば、ユーザが当該バンドのサイズに基づいて、バンドに対応する成分が何かを判定したいと考えるバンドである。「特定ピーク」は、ゲルイメージ上の特定バンドに対応する、エレクトロフェログラム上のピークである。
【0056】
特定ピークの頂点は、たとえば特定ピークの極大値を示す点であり、もしくは、目視において特定ピークの極大値を示すと推定される点である。第2サイズガイドG2の位置(第2位置)は、たとえば、当該特定ピークの頂点を通過し、横軸に垂直な直線上の位置である。換言すれば、第2位置は、特定ピークの頂点に対応する特定サイズを示す位置である。
【0057】
特定バンドに対応する成分のサイズは、特定ピークの頂点が対応する特定サイズに対応すると考えられる。そのため、第2サイズガイドG2の位置がエレクトロフェログラム上の特定ピークの頂点に対応するように第1サイズガイドG1の位置(第1位置)を調整すると、第1サイズガイドG1の位置は、ゲルイメージの特定バンド上の特定サイズに対応する位置となる。よって、ユーザは、第1サイズガイドG1を参照して、特定バンドに対応する成分のサイズを容易に認識することができる。
【0058】
上記のように、実施形態に係る解析装置1においては、ゲルイメージ上の第1サイズガイドG1に連動して、エレクトロフェログラム上に第2サイズガイドG2を表示する。これにより、ゲルイメージ上の第1サイズガイドG1、および、エレクトロフェログラム上の第2サイズガイドG2の対応を、容易に確認できる。また、エレクトロフェログラムのピーク形状を確認しながら、サイズガイドの位置を動かせるので、より正確にサイズガイドの位置を調整できる。さらに、第2サイズガイドG2をピークの頂点に位置するように、第1サイズガイドG1を移動させることにより、ゲルイメージのバンドに対応する成分のサイズを容易に認識することが可能である。よって、ユーザの解析効率が向上する。
【0059】
[4.比較例に係る解析画面]
次に、比較例として、エレクトロフェログラム上に第2サイズガイドG2が表示されない解析画面を説明する。
【0060】
図4は、比較例に係る解析装置の解析画面の一例を示す図である。なお、本明細書において、「比較例に係る解析装置の解析画面」は、「比較例に係る解析画面」とも称する。図4ではゲルイメージに第1サイズガイドG1Aが表示されているが、エレクトロフェログラムには第2サイズガイドが表示されない。よって、ユーザはバンドの対応する成分のサイズを判定するために、バンドを観察して、中央と思われる位置に第1サイズガイドG1Aを移動した。この場合、第1サイズガイドG1Aの対応するサイズは276bpであった。しかし、エレクトロフェログラムにおいて、276bpの位置を確認すると、ピークの頂点からずれている(点線5 参照)。すなわち、比較例に係る解析画面においては、ゲルイメージのバンドに対応する成分のサイズを正しく判別できない場合がある。以上の比較例からも、実施形態に係る解析画面のように、エレクトロフェログラムに第2サイズガイドG2を表示することは、ゲルイメージのバンドに対応する成分のサイズを知るために有用であるといえる。
【0061】
また、上記の比較例と違い、第2サイズガイドは表示されるが、第1サイズガイドと連動しない場合も、所定のバンドに対応するサイズを求めることは困難である。この場合、たとえば、ユーザが目視により解析を所望するバンドに対応するピークを見いだし、当該ピークに第2サイズガイドを移動した後、第2サイズガイドの対応する横軸の値を確認する、という作業が必要となる。電気泳動解析の分離データにおいては、通常複数のバンドが含まれるので、所定のバンドに対応するピークをエレクトロフェログラムから見いだすことはユーザに負荷を与えることとなる。また、電気泳動解析は複数のサンプルにそれぞれ対応する複数の分離データを同時に解析することが一般的である。この場合、解析画面においては複数のゲルイメージおよび複数のエレクトロフェログラムが表示されるため、解析画面に表示されるバンドおよびピークの数はさらに増加する。よって、ユーザが目視によって、所定のバンドに対応するピークをエレクトロフェログラムから見いだすことは、さらに困難になる。
【0062】
より具体的には、ユーザはたとえば、ゲルイメージにおいて解析対象となるバンドが上から何番目のバンドであるかを数えた後、エレクトロフェログラムのピークを左から数えることによって、対応するバンドを探索する。このような作業はユーザにとって煩雑であり、特に、バンド数が多い場合、あるいは、複数のピークが近接する場合などには、バンドの数あるいはピークの数を数え間違ったり、混同したりする可能性もある。
【0063】
一方で、本実施形態に係る解析画面においては、第1サイズガイドG1および第2サイズガイドG2を用いて、解析対象となるバンドと対応するピークの認識が容易である。また、第1サイズガイドG1および第2サイズガイドG2を用いて、解析対象となるバンドに対応するピークの頂点に対応するサイズを認識することも容易である。当該ピークの頂点に対応するサイズは、バンドに対応する成分のサイズに対応する。このことより、実施形態に係る解析画面においては、比較例に係る解析画面に比べ、所定のバンドに対応する成分のサイズを認識することが容易である。また、実施形態に係る解析画面においては、比較例に係る解析画面に比べ、ピークの数え間違いによるピークの取り違え等のヒューマンエラーが起こる可能性も低減される。よって、ユーザの解析効率および解析精度が向上する。特に、解析画面に含まれるサンプルまたはバンドの数が多いほど解析画面の煩雑度が増すので、第1サイズガイドG1および第2サイズガイドG2を用いたバンドに対応する成分のサイズの判定は、効果を発揮する。
【0064】
[5.多数のデータを含む場合の実施形態に係る解析画面]
次に、解析装置1によって、多数のサンプルまたはバンドを含むデータを解析する例を説明する。
【0065】
電気泳動解析の解析画面においては、しばしば多数の分離データが一度に表示され、一度に解析される。たとえば解析装置1においては、8行×15列=120個のサンプルを一度に解析することが可能である。これにより、最大120サンプルの分離データを一度に表示することが可能である。
【0066】
しかし、サンプル数および/またはサンプル当たりのバンドの数が多いほど、ゲルイメージとエレクトロフェログラムとを見比べて、バンドとピークとの対応を確認することが煩雑となり、ユーザに負荷を与えるおそれが大きくなる。場合によっては、解析結果を誤認する可能性も大きくなる。
【0067】
図5は、多数のサンプルの分離データを含む、本実施形態に係る解析画面の例を示す図である。図5の解析画面は、1つのコントロールおよび多数の未知サンプルについてのゲルイメージを含む解析画面である。
【0068】
図5は、サンプル辺りのバンド数が多いゲルイメージの一例として、菌のゲノム中に分布するIS(Insection Sequence)についてのゲルイメージを示している。当該多数の分離データを含む解析画面においても、所定の1つのバンドに対応するピークに第2サイズガイドG2の位置を合わせることにより、第1サイズガイドG1を参照して、当該バンドに対応する成分のサイズを容易に求めることができる。さらに、サイズガイドは、複数のサンプルのバンドを同時に確認する上でも有用である。
【0069】
たとえば、図5では、エレクトロフェログラムにおけるウェルX1Aに対応するコントロールの約495bpのピークの頂点に対応する位置に第2サイズガイドG2が位置するように、第1サイズガイドG1が調整されている。
【0070】
これにより、ゲルイメージの第1サイズガイドG1を参照すると、どのサンプルのどのバンドが、コントロールと同じ約495bpのバンドであるかを容易に判定することができる。より具体的には、ユーザは第1サイズガイドG1がオーバーラップしているバンド、および、当該バンドを含むサンプルを容易に認識できる。これにより、コントロールと同じ約495bpの成分に対応するバンド、および、コントロールと同じ約495bpの成分を含むサンプルが容易に認識できる。以上より、サンプルあたりのバンド数が多いゲルイメージにおいて、約495bpのバンドが存在するか否かを見間違える(誤判定する)可能性を低減できる。当該誤判定を抑止する効果は、サンプル数が多くなればなるほど大きくなる。
【0071】
以上のように、解析装置1を用いれば、サンプル数および/またはサンプル当たりのバンドの数が多い場合において、所定の1つのバンドに対応する成分のサイズを容易に認識することができるだけでなく、多数のサンプルおよび/またはバンドについて、同時に比較検討することが可能になる。これにより、多数のサンプルおよび/またはバンドを含む解析データの解析において、ユーザの解析効率がさらに向上する。
【0072】
[6.サイズ差が小さい複数の成分を含む場合の実施形態に係る解析画面]
次に、解析装置1によって、サイズ差が小さい複数の成分を含むサンプルを解析する例を説明する。
【0073】
図6は、サイズ差が小さい複数の成分を含むサンプルを含む場合の実施形態に係る解析画面の例である。図6のゲルイメージにおいて矢印で示す、あたかも1つのバンドに見える領域(約5732bp)の解析を行なう場合を考える。この場合、図6において当該領域を観察するだけで、実際に当該領域に含まれるピークの数、および、当該ピークのサイズを認識することは困難である。すなわち、当該領域に対応する成分の種類および数を判定することは困難である。
【0074】
しかし、第1サイズガイドG1を当該領域に対応する位置に移動させ、エレクトロフェログラム中の第2サイズガイドG2を参照することにより、第2サイズガイドG2付近の4869bp、5708bp、7546bpの3つのピークが当該領域に含まれていたことが分かる。すなわち、4869bp、5708bp、7546bpのサイズをそれぞれ有する3つの成分に対応するバンドが当該領域に含まれていたことがわかる。なお、図6中では、図6における当該領域および当該領域を示す矢印の視認性を保つために、第1サイズガイドG1は当該領域および当該領域を示す矢印とオーバーラップしないように表記している。しかし、実際の解析画面においては第1サイズガイドG1は当該領域とオーバーラップさせて表示してよいことは言うまでもない。
【0075】
以上のように、サイズ差が小さい複数の成分を含むサンプルを含む場合、ゲルイメージにおいては、各成分に対応する複数のバンドが狭いサイズ領域内にオーバーラップおよび/または密接して存在する。この場合、当該複数のバンドは、あたかも1つのバンドのように見えるときもある。このような場合も、エレクトロフェログラム中の第2サイズガイドG2を参照すれば、当該複数のバンドに対応する成分のサイズまたは数を判定することが容易である。
【0076】
[7.解析装置の表示処理]
図7は、解析装置の表示処理を示すフローチャートである。図7に示すステップは、解析装置1のプロセッサ10によって実行される。なお、図中において、「S」は「STEP」の略称として用いられる。
【0077】
図7を参照して、S1において、プロセッサ10は、電気泳動分離により得られたデータに基づいて、ゲルイメージおよびエレクトロフェログラムを含む解析画面を表示部13に表示する。
【0078】
S2において、プロセッサ10は、ゲルイメージにおいて、サイズ軸に対応して移動可能な第1サイズガイドG1を、第1位置へ移動させるユーザの指示を受け付ける。
【0079】
S2の一実施例において、プロセッサ10は、当該ユーザの指示は、入力部12を用いて入力される。また、解析画面に複数のデータの解析結果が含まれる場合、プロセッサ10は、第1位置を示すサイズガイドを複数のデータについて表示する。
【0080】
S3において、プロセッサ10は、第1位置に対応する特定サイズを算出する。
【0081】
S4において、プロセッサ10は、エレクトロフェログラムにおいて、特定サイズに対応する第2位置を算出する。
【0082】
S5において、プロセッサ10は、エレクトロフェログラムにおいて、第2位置に第2サイズガイドG2を表示して、処理を終了する。
【0083】
図7の処理によれば、プロセッサ10は、ゲルイメージにおいて第1サイズガイドG1が特定サイズに対応する第1位置にある場合、エレクトロフェログラムにおいて特定サイズに対応する第2位置に、第2サイズガイドG2を表示する。これにより、ユーザは、第1サイズガイドG1および第2サイズガイドG2に基づいて、ゲルイメージ上のバンドの位置と、エレクトロフェログラムのピークの位置との関係を容易に認識できる。特に、第1サイズガイドG1を解析対象のバンド上に移動させることにより、対応するピークの位置を容易に認識できる。また、第2サイズガイドG2をピークの頂点に位置するように第1サイズガイドG1の位置を調整することにより、バンドに対応する成分のサイズを容易に認識することができる。これにより、ユーザの解析に係る時間を低減することができる。
【0084】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0085】
(第1項)一態様に係る解析装置は、サンプルについて電気泳動分離により得られた1以上のデータを解析する解析装置であって、メモリと、表示部と、プロセッサとを備える。メモリは、データを記憶する。表示部は、データに基づいて、ゲルイメージ、エレクトロフェログラム、ゲルイメージに対応する第1サイズガイド、および、エレクトロフェログラムに対応する第2サイズガイドを表示する。プロセッサは、ゲルイメージにおいて第1サイズガイドがサイズに関連する特定値に対応する第1位置にある場合、エレクトロフェログラムにおいて特定値に対応する第2位置に、第2サイズガイドを表示する。
【0086】
第1項に記載の解析装置によれば、ゲルイメージ上の第1サイズガイドに連動して、エレクトロフェログラム上に第2サイズガイドを表示する。これにより、ゲルイメージ上の第1サイズガイド、および、エレクトロフェログラム上の第2サイズガイドの対応を、容易に確認できる。また、エレクトロフェログラムのピーク形状を確認しながら、サイズガイドの位置を動かせるので、より正確にサイズガイドを調整できる。さらに、第2サイズガイドをピークの頂点に位置するように、第1サイズガイドを移動させることにより、ゲルイメージのバンドに対応する成分のサイズを容易に認識することが可能である。よって、ユーザの解析効率が向上する。
【0087】
(第2項)第1項に記載の解析装置において、第1サイズガイドは、ゲルイメージのサイズに関連する値を示す軸に対応して移動可能である。第1サイズガイドを第1位置へ移動させるユーザの指示を受け付けた場合、プロセッサは、第2位置に第2サイズガイドを表示する。
【0088】
第2項に記載の解析装置によれば、ユーザはエレクトロフェログラム中の所望する位置に第2サイズガイドが位置するように、第1サイズガイドを移動させることができる。当該所望する位置は、たとえば、解析を所望する特定バンドに対応する特定ピークの頂点に対応する位置である。
【0089】
(第3項)第2項に記載の解析装置において、解析装置に対するユーザの指示を入力するための入力部をさらに備える。プロセッサは、入力部による、第1サイズガイドの移動の指示を受け付ける。
【0090】
第3項に記載の解析装置によれば、これにより、ユーザは入力部を用いて、容易に第1サイズガイドの移動の指示を入力することができる。
【0091】
(第4項)第3項に記載の解析装置において、入力部は、ポインティングデバイスまたはキーボードである。
【0092】
第4項に記載の解析装置によれば、これにより、ユーザは汎用性のある入力機器であるポインティングデバイスまたはキーボードを用いて、容易に第1サイズガイドの移動の指示を入力することができる。
【0093】
(第5項)第1~4のいずれか1項に記載の解析装置において、特定値は、特定サイズ、特定泳動時間および特定移動時間インデックスの少なくとも1つを含む。特定値に対応する第2位置は、特定値に対応するサイズに対応する位置、特定値に対応する泳動時間に対応する位置、および、特定値に対応する移動時間インデックスに対応する位置の少なくとも1つを含む。
【0094】
第5項に記載の解析装置によれば、これにより、ゲルイメージおよびエレクトロフェログラムの各々において、サイズ、泳動時間および移動時間インデックスのうち、いずれの単位を用いた軸が使用されている場合においても、共通の特定値に対応する位置に、サイズガイドを表示することができる。
【0095】
(第6項)第1~5のいずれか1項に記載の解析装置において、第1サイズガイドは、第1位置を示す線分を含む。第2サイズガイドは、第2位置を示す線分を含む。
【0096】
第6項に記載の解析装置によれば、ユーザはゲルイメージ上の第1位置、および、エレクトロフェログラム上の第2位置を容易に認識できる。
【0097】
(第7項)第1~6のいずれか1項に記載の解析装置において、第1サイズガイドは、特定値の数値の表示を含む。第2サイズガイドは、第2位置に対応する数値の表示を含む。
【0098】
第7項に記載の解析装置によれば、ユーザは第1サイズガイドに対応する特定値の数値、および、第2サイズガイドの第2位置に対応する数値を容易に認識することができる。
【0099】
(第8項)第1~7のいずれか1項に記載の解析装置において、1以上のデータが複数のデータである場合、プロセッサは、第1位置を示す第1サイズガイドを複数のデータについて表示する。
【0100】
第8項に記載の解析装置によれば、共通の第1サイズガイドと複数のゲルイメージの各々のバンドとの位置関係を一度に認識することができる。より特定的には、複数のゲルイメージの各々が、第1サイズガイドが示すサイズと同じサイズのバンドを含むかを同時に認識できる。さらに特定的には、所定のゲルイメージにおいて解析対象となるバンドと、同一のサイズのバンドを含むゲルイメージが容易に認識できる。この場合、後述するように、所定の解析対象となるバンドに対応する成分のサイズを認識した場合、当該同一のサイズのバンドに対応する成分のサイズも同時に明らかになる。また、後述するように、複数のサンプルを同時に比較検討することも容易になる。
【0101】
(第9項)第1~8のいずれか1項に記載の解析装置において、第2サイズガイドは、エレクトロフェログラムのサイズに関連する値を示す軸に対応して移動可能である。第2サイズガイドを、エレクトロフェログラムにおいて第3位置へ移動させるユーザの指示を受け付けた場合、プロセッサは、第3位置に対応するサイズに関連する値に対応する第4位置に、第2サイズガイドを表示する。
【0102】
第9項に記載の解析装置によれば、これにより、ユーザは、第1サイズガイドの位置が解析を所望するバンドにオーバーラップするように第2サイズガイドを所定のピークに移動させたのち、第2サイズガイドを当該ピークの頂点に移動させることができる。その結果、解析を所望するバンドに対応する成分のサイズを容易に認識することができる。
【0103】
(第10項)一態様に係る表示方法は、サンプルについて電気泳動分離により得られた1以上のデータの表示方法であって、データに基づいて、ゲルイメージおよびエレクトロフェログラムを表示するステップと、ゲルイメージにおいて、サイズに関連する値に対応する値を示す軸に対応して移動可能な第1サイズガイドを、第1位置へ移動させるユーザの指示を受け付けるステップと、第1位置に対応するサイズに関連する特定値を算出するステップと、エレクトロフェログラムにおいて、特定値に対応する第2位置を算出するステップと、エレクトロフェログラムにおいて、第2位置に第2サイズガイドを表示するステップとを含む。
【0104】
第10項に記載の表示方法によれば、ゲルイメージ上の第1サイズガイドに連動して、エレクトロフェログラム上に第2サイズガイドを表示する。これにより、ゲルイメージ上の第1サイズガイド、および、エレクトロフェログラム上の第2サイズガイドの対応を、容易に確認できる。また、エレクトロフェログラムのピーク形状を確認しながら、サイズガイドの位置を動かせるので、より正確にサイズガイドを調整できる。さらに、第2サイズガイドがピークの頂点に位置するように、第1サイズガイドを移動させることにより、ゲルイメージのバンドに対応する成分のサイズを容易に認識することが可能である。よって、ユーザの解析効率が向上する。
【0105】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0106】
1 解析装置、2 電気泳動装置、10 プロセッサ、11 メモリ、12 入力部、13 表示部、21 プレート、32 サイズガイド表示ボタン、100 解析システム、A1,A4,X1A ウェル、G1,G1A 第1サイズガイド、G2 第2サイズガイド、V1,V2 数値、W1 ゲルイメージウィンドウ、W2 エレクトロフェログラムウィンドウ、W3 プレートイメージウィンドウ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7