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特開2024-39275タイヤデータ処理装置およびタイヤデータ処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039275
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】タイヤデータ処理装置およびタイヤデータ処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/20 20060101AFI20240314BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
G01B21/20 C
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143705
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】肥田野 峻哉
(72)【発明者】
【氏名】林 大千
【テーマコード(参考)】
2F069
3D131
【Fターム(参考)】
2F069AA66
2F069BB28
2F069CC03
2F069DD19
2F069GG04
2F069HH09
2F069JJ17
2F069NN16
2F069QQ05
3D131BB01
3D131LA21
(57)【要約】
【課題】タイヤ左右におけるトレッド面の不均一な表面形状を精度よく比較できるタイヤデータ処理装置およびタイヤデータ処理方法を提供すること。
【解決手段】このタイヤデータ処理装置1は、タイヤ表面形状を示す表面形状データを取得するデータ取得部21と、タイヤ軸方向における複数の軸方向位置のそれぞれにて、所定の径方向値を有する基準点Pを設定する基準点設定部22と、タイヤ赤道面CLを中心として対称な軸方向位置に配置された一対の基準点Pp、Pqを複数の基準点Pから選択する対称基準点選択部24と、一対の基準点Pp、Pqの径方向値Z1、Z2が一致するように前記一対の基準点Pp、Pqの一方あるいは双方を置換する基準点置換部25と、一致した径方向値Z1を有する一対の基準点Pp、Pqと表面形状データの測定点群Aとを比較して所定の比較結果を生成する比較結果生成部26と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ表面形状を示す表面形状データを取得するデータ取得部と、
タイヤ軸方向における複数の軸方向位置のそれぞれにて、所定の径方向値を有する基準点を設定する基準点設定部と、
タイヤ赤道面を中心として対称な軸方向位置に配置された一対の基準点を複数の前記基準点から選択する対称基準点選択部と、
前記一対の基準点の径方向値が一致するように前記一対の基準点の一方あるいは双方を置換する基準点置換部と、
前記一致した径方向値を有する前記一対の基準点と前記表面形状データの測定点群とを比較して所定の比較結果を生成する比較結果生成部と、
を含むことを特徴とするタイヤデータ処理装置。
【請求項2】
前記基準点設定部は、前記複数の軸方向位置にある前記表面形状データの前記測定点群の径方向値から前記基準点の前記径方向値を選択あるいは算出する請求項1に記載のタイヤデータ処理装置。
【請求項3】
前記基準点設定部は、前記複数の軸方向位置にある前記表面形状データの前記測定点群の径方向値の最大値を前記基準点の前記径方向値として選択する請求項2に記載のタイヤデータ処理装置。
【請求項4】
前記基準点設定部は、タイヤ周方向の角度が10[deg]以上130[deg]以下の範囲にある領域を定義し、当該領域にある前記測定点群の前記径方向値から前記基準点の前記径方向値を選択あるいは算出する請求項1に記載のタイヤデータ処理装置。
【請求項5】
前記比較結果生成部は、前記一対の基準点を有する一対の軸方向領域のそれぞれにおける前記複数の基準点の径方向値と前記表面形状データの測定点群の径方向値との差の総和を算出して前記比較結果を生成する請求項1に記載のタイヤデータ処理装置。
【請求項6】
前記比較結果生成部は、前記一対の基準点の径方向値と前記表面形状データの測定点群の径方向値との差を算出し、前記測定点群のうち前記径方向値の差が所定の閾値k未満である測定点を除外して、前記比較結果を生成する請求項1に記載のタイヤデータ処理装置。
【請求項7】
前記基準点の集合である基準線を所定のタイヤ情報に基づいて所定の近似曲線で近似する基準線近似部を備え、且つ、
前記基準線近似部は、タイヤの接地領域にある前記基準点が前記近似曲線に沿って配列されるように、前記基準点の前記径方向値を修正する請求項1に記載のタイヤデータ処理装置。
【請求項8】
タイヤ表面形状を示す表面形状データを取得するデータ取得ステップと、
タイヤ軸方向における複数の軸方向位置のそれぞれにて、所定の径方向値を有する基準点を設定する基準点設定ステップと、
タイヤ赤道面を中心として対称な軸方向位置に配置された一対の基準点を複数の前記基準点から選択する対称基準点選択ステップと、
前記一対の基準点の径方向値が一致するように前記一対の基準点の一方あるいは双方を置換する基準点置換ステップと、
前記一致した径方向値を有する前記一対の基準点と前記表面形状データの測定点群とを比較して所定の比較結果を生成する比較結果生成ステップと、
を含むことを特徴とするタイヤデータ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤデータ処理装置およびタイヤデータ処理方法に関し、さらに詳しくは、タイヤ左右におけるトレッド面の不均一な表面形状を精度よく比較できるタイヤデータ処理装置およびタイヤデータ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タイヤの表面形状を計測した三次元データに基づいてタイヤの表面形状を評価するタイヤデータ処理装置として、特許文献1、2に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/175555号
【特許文献1】国際公開第2015/083442号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、タイヤ左右におけるトレッド面の不均一な表面形状を精度よく比較できるタイヤデータ処理装置およびタイヤデータ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、この発明にかかるタイヤデータ処理装置は、タイヤ表面形状を示す表面形状データを取得するデータ取得部と、タイヤ軸方向における複数の軸方向位置のそれぞれにて、所定の径方向値を有する基準点を設定する基準点設定部と、タイヤ赤道面を中心として対称な軸方向位置に配置された一対の基準点を複数の前記基準点から選択する対称基準点選択部と、前記一対の基準点の径方向値が一致するように前記一対の基準点の一方あるいは双方を置換する基準点置換部と、前記一致した径方向値を有する前記一対の基準点と前記表面形状データの測定点群とを比較して所定の比較結果を生成する比較結果生成部と、を含むことを特徴とする。
【0006】
また、この発明にかかるタイヤデータ処理方法は、タイヤ表面形状を示す表面形状データを取得するデータ取得ステップと、タイヤ軸方向における複数の軸方向位置のそれぞれにて、所定の径方向値を有する基準点を設定する基準点設定ステップと、タイヤ赤道面を中心として対称な軸方向位置に配置された一対の基準点を複数の前記基準点から選択する対称基準点選択ステップと、前記一対の基準点の径方向値が一致するように前記一対の基準点の一方あるいは双方を置換する基準点置換ステップと、前記一致した径方向値を有する前記一対の基準点と前記表面形状データの測定点群とを比較して所定の比較結果を生成する比較結果生成ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明にかかるタイヤデータ処理装置およびタイヤデータ処理方法では、タイヤの表面形状を示す評価値(すなわち径方向値Zの差ΔZ)がタイヤ赤道面CLを中心とする対称な軸方向位置に配置された同一の径方向値Z1を有する基準点Pp、Pq’を基準として算出されるので、タイヤ左右におけるトレッド面の不均一な表面形状を精度よく比較できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、この発明の実施の形態にかかるタイヤデータ処理装置を示すブロック図である。
図2図2は、タイヤ表面形状を計測する計測装置を示す説明図である。
図3図3は、計測対象であるタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
図4図4は、この実施の形態におけるタイヤデータ処理方法を示すフローチャートである。
図5図5は、図4に記載したフローチャートの説明図である。
図6図6は、図4に記載したフローチャートの説明図である。
図7図7は、図4に記載したフローチャートの説明図である。
図8図8は、図4に記載したフローチャートの説明図である。
図9図9は、図4に記載したフローチャートの説明図である。
図10図10は、図4に記載したフローチャートの説明図である。
図11図11は、図4に記載したフローチャートの説明図である。
図12図12は、図4に記載したフローチャートの説明図である。
図13図13は、上記したタイヤデータ処理方法における比較結果の一例を示す説明図である。
図14図14は、上記したタイヤデータ処理方法における比較結果の一例を示す説明図である。
図15図15は、図4に記載したタイヤデータ処理方法の変形例を示す説明図である。
図16図16は、図4に記載したタイヤデータ処理方法の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0010】
[タイヤデータ処理装置]
図1は、この発明の実施の形態にかかるタイヤデータ処理装置1を示すブロック図である。
【0011】
このタイヤデータ処理装置1は、制御装置2と、記憶装置3と、モニタなどの表示装置(図示省略)およびキーボードやマウスなどの入力装置(図示省略)とを備える。制御装置2は、タイヤデータ処理装置1の動作を統括的に制御する装置であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random-Access Memory)などを備えたPC(Personal Computer)により構成される。また、制御装置2は、後述する、タイヤ表面形状を示す表面形状データを取得するデータ取得部21と、所定の径方向値を有する基準点を設定する基準点設定部22と、基準点の集合である基準線を所定のタイヤ情報に基づいて所定の近似曲線で近似する基準線近似部23と、タイヤ赤道面CLを中心として対称な軸方向位置に配置された一対の基準点を複数の基準点Pから選択する対称基準点選択部24と、一対の基準点の径方向値が一致するように一対の基準点の一方あるいは双方を置換する基準点置換部25と、一致した径方向値を有する一対の基準点と表面形状データの測定点群とを比較して所定の比較結果を生成する比較結果生成部26と、を含む。具体的には、制御装置2のCPUが、各種のプログラムを読み込んで実行することにより、これらの機能が実現される。記憶装置3は、制御装置2での処理に用いられる各種のプログラムやデータを格納する装置であり、例えば、PCに内蔵あるいは外付けされた不揮発性メモリあるいは磁気記憶装置により構成される。
【0012】
[計測装置]
図2は、タイヤ表面形状を計測する計測装置10を示す説明図である。同図は、計測装置10を用いて試験タイヤ100のトレッド面の形状を計測する様子を示している。
【0013】
計測装置10は、三次元解析装置であり、距離センサ11と、処理装置12と、スピンドル13とを備える(図2参照)。この計測装置10では、スピンドル13が測定対象であるタイヤ100をタイヤ軸方向(X)に移動させ、またタイヤ周方向(Y)に回転させつつ、距離センサ11が複数の測定点におけるタイヤ表面の相対距離(Z)を計測する。そして、処理装置12が距離センサ11からの出力信号に基づいて所定の計測データを生成する。このような計測装置10には、例えば Starrett-Bytewise 社製の TIRE360 を採用できる。
【0014】
[タイヤ]
図3は、計測対象であるタイヤ100を示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。ここでは、一例として乗用車用タイヤについて説明する。
【0015】
図3において、タイヤ子午線方向の断面は、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面として定義される。また、タイヤ赤道面CLは、JATMAに規定されたタイヤ断面幅の中点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面として定義される。また、タイヤ軸方向は、タイヤ回転軸に平行な方向として定義され、タイヤ径方向は、タイヤ回転軸に垂直な方向として定義される。
【0016】
図3に示すように、タイヤ100は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア111、111と、一対のビードフィラー112、112と、カーカス層113と、ベルト層114と、トレッドゴム115と、一対のサイドウォールゴム116、116と、一対のリムクッションゴム117、117とを備える。
【0017】
一対のビードコア111、111は、スチールから成る1本あるいは複数本のビードワイヤを環状かつ多重に巻き廻して成り、ビード部に埋設されて左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー112、112は、一対のビードコア111、111のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
【0018】
カーカス層113は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数枚のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア111、111間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。
【0019】
ベルト層114は、複数のベルトプライ(図中の符号省略)を積層して成り、カーカス層113の外周に掛け廻されて配置される。ベルトプライは、一対の交差ベルトと、ベルトカバーとを含む。
【0020】
トレッドゴム115は、カーカス層113およびベルト層114のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤ100のトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム116、116は、カーカス層113のタイヤ軸方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム117、117は、左右のビードコア111、111およびカーカス層113の巻き返し部のタイヤ径方向内側からタイヤ軸方向外側に延在して、ビード部のリム嵌合面を構成する。
【0021】
また、図3に示すように、タイヤ100が、複数の周方向溝121~124と、これらの周方向溝121~124に区画されて成る複数の陸部131~135とを備える。
【0022】
[タイヤデータ処理方法]
図4は、この実施の形態におけるタイヤデータ処理方法を示すフローチャートである。図5図12は、図4に記載したフローチャートの説明図である。ここでは、第一の適用例として、摩耗初期から摩耗中期にあるタイヤのトレッド面の形状を計測して摩耗量に関する比較結果を生成する処理方法について説明する。
【0023】
ステップST1では、データ取得部21が、タイヤ表面形状を示す表面形状データを取得する。具体的には、記憶装置3が、上記した計測装置10から取得した計測データを記憶しており、データ取得部21が、この計測データを読み込んで表面形状データとして取得する。また、データ取得部21が計測装置10からの計測データを直接取得しても良い。
【0024】
表面形状データは、タイヤのトレッド面をタイヤ軸方向、タイヤ周方向およびタイヤ径方向で細分化した測定点群Aのデータであり、軸方向位置を示す軸方向値X(X=X1,X2,・・・,Xn)、周方向位置を示す周方向値Y(Y=Y1,Y2,・・・,Ym)および径方向位置を示す径方向値Zで表される各測定点A(X,Y,Z)のデータを含む。具体的には、タイヤのトレッド面が、タイヤ軸方向でn個の軸方向位置に分割され、タイヤ周方向でm個の周方向位置に分割される。そして、トレッド面の各位置における径方向値Zが計測されて取得される。例えば、この実施の形態では、タイヤ軸方向の分割数nが344であり、タイヤ周方向の分割数mが4096である。タイヤ軸方向およびタイヤ周方向の分割数n、mは、計測装置の仕様に応じて適宜選択できる。
【0025】
ステップST2では、基準点設定部22が、タイヤ軸方向における複数の軸方向位置のそれぞれにて、所定の径方向値Zを有する基準点Pを設定する。基準点Pの径方向値Zは、任意の軸方向値Xをもつ表面形状データの測定点群Aのうち、タイヤ周方向の所定の領域(すなわち、周方向値Yの範囲の一部あるいは全部)にある測定点群Aの径方向値Zから選択あるいは算出される。また、基準点Pの径方向値Zは、例えば各軸方向位置における測定点群Aの径方向値Zの最大値として選択されても良いし、他の基準で選択されても良い。
【0026】
例えば、この実施の形態では、基準点Pの径方向値Zが、任意の軸方向値Xをもつ表面形状データの測定点群Aのうち、タイヤ周方向の全域にある測定点群Aの径方向値Zの最大値、すなわち最も摩耗深さが浅い位置の径方向値として選択される。具体的に、摩耗初期から摩耗中期にあるタイヤでは、タイヤが不均一に摩耗するため、図5に示すように径方向値Zがタイヤ周方向で不均一である。また、異なる軸方向値Xp、Xqをもつ測定点群Ap、Aqにおいても、径方向値Zが相互に一致せずに不均一である。そこで、任意の軸方向値Xp;Xqをもつ測定点群Ap;Aqから径方向値Zの最大値Z1;Z2を有する測定点がそれぞれ選択されて、基準点Pp(Xp,Z1)、Pq(Xq,Z2)としてそれぞれ選択される。また、タイヤ軸方向の全域にて、各軸方向位置における基準点Pが設定される。これにより、タイヤの表面形状を示す評価値を精度よく算出できる。
【0027】
また、上記の構成では、基準点Pの径方向値Zがタイヤ周方向の全域における測定点群Aの径方向値Zから選択される。かかる構成では、タイヤ全周にて表面形状を評価できる点で好ましい。
【0028】
しかし、これに限らず、基準点Pの径方向値Zがタイヤ周方向の所定の領域にある測定点群Aの径方向値Zから選択されても良い。例えば、タイヤ周方向の角度θが10[deg]以上130[deg]以下の範囲にある領域を定義し、この領域にある測定点群Aの径方向値Zから基準点Pの径方向値Zが選択あるいは算出されても良い。これにより、人間の視野角(10[deg]~130[deg])に近い領域で、タイヤの表面形状を評価できる。なお、タイヤ周方向の角度θは、タイヤ回転軸周りの角度として定義される。
【0029】
ステップST2にて設定された複数の基準点は、後述する図7に示すように、タイヤ軸方向およびタイヤ径方向を直交軸として配列されることで、タイヤ軸方向に一列に配列されて1本の基準線(基準点の集合)を形成する。タイヤデータ処理装置1が、この基準線を表示装置(図示省略)に表示することにより、ユーザーが、所定の基準により抽出されたタイヤ表面形状の輪郭線を視覚的に把握できる。なお、トレッド面の平面視では、図6に示すように、タイヤ軸方向の各位置における基準点Pがタイヤ周方向で不均一に生じるため、これらの基準点を接続した基準線がステップ形状を有する。
【0030】
ステップST3では、基準線近似部23が、所定のタイヤ情報に基づいて基準点Pの集合である基準線を所定の近似曲線で近似する。
【0031】
具体的には、タイヤの接地領域(すなわち、周方向溝121~124に区画された各陸部131~135の踏面)のそれぞれにて、すべての基準点Pが単一の近似曲線に沿って配列されるように、基準点Pの径方向値Zを修正する。これにより、タイヤの接地領域における基準点群Pの配列状態が平滑化される。また、近似曲線は、公知の数学的手法により、各接地領域における基準点Pの径方向値Zに基づいて算出されても良いし、ユーザーが適宜設定しても良い。図7は、近似されて平滑化された基準線を示している。タイヤ情報は、例えば、トレッド面における周方向溝121~124(図3および図6参照)の位置、タイヤ赤道面CLの位置、トレッド端(図中の符号省略)の位置、タイヤサイズや溝深さ等のタイヤ仕様などの情報を含む。
【0032】
例えば、この実施の形態では、タイヤデータ処理装置1が、ステップST3にて作成した基準線(基準点Pの集合)を表示装置(図示省略)に表示し、ユーザーが表示された基準線を視認して周方向溝121~124の位置などのタイヤ情報を入力する。そして、この入力されたタイヤ情報に基づいて、基準点Pの集合が所定の近似曲線の上にあるように修正されて近似される。
【0033】
具体的には、トレッド面における周方向溝121~124の位置およびトレッド端の位置の指定に基づいて、基準線近似部23が、タイヤの接地領域(後述する軸方向領域R31~R35。図12参照)を定義する。そして、基準線近似部23が、これらのタイヤの接地領域にある基準点Pが単一の近似曲線に沿って配列されるように、隣り合う基準点に対してタイヤ径方向に大きく離間した基準点Pの径方向値Zを修正する。径方向値Zの修正の要否は、例えば、隣り合う基準点Pの径方向値Zの差が所定の閾値以上である場合に、基準線近似部23が離間した基準点Pの径方向値Zを修正しても良いし、ユーザーが目視により適宜判断して修正しても良い。これにより、各陸部131~135の接地面にある基準線が平滑化される。
【0034】
また、上記に限らず、基準線近似部23が、予め記憶装置3に記憶されたタイヤ情報に基づいて基準線を自動で近似しても良い。
【0035】
なお、上記ステップST3は、省略されても良い。この場合には、ステップST2にて設定された(ステップST3の修正が行われていない)基準点Pが使用されて、以下の処理が行われる。
【0036】
ステップST4では、対称基準点選択部24が、タイヤ赤道面CLを中心として対称な軸方向位置に配置された一対の基準点Pp、Pqを上記した複数の基準点Pから選択する。具体的には、図8に示すように、第一の基準点Pp(Xp,Z1)が任意に選択され、その後に第一の基準点Ppに対してタイヤ赤道面CLを中心として対称に配置された第二の基準点Pq(Xq,Z2)が選択される。そして、これらの基準点Pp、Pqが相互に関連付けられて記憶装置3に記憶される。タイヤ赤道面CLの軸方向位置は、対称基準点選択部24が、記憶装置3に記憶された表面形状データおよびタイヤ情報に基づいて算出できる。
【0037】
ステップST5では、基準点置換部25が、上記した一対の基準点Pp(Xp,Z1)、Pq(Xq,Z2)の径方向値Z1、Z2が一致するように、一方あるいは双方の基準点Pp、Pqを置換する。すなわち、摩耗初期から摩耗中期にあるタイヤでは、タイヤ左右の領域が不均一に摩耗するため、一対の基準点Pp、Pqの径方向値Z1、Z2が相互に一致しない。そこで、一対の基準点Pp、Pqの径方向値Z1、Z2が一致するように一方あるいは双方の径方向値Z1、Z2が修正されて、基準点Pp、Pqが置換される。
【0038】
例えば、図8のグラフでは、図中右側の領域が左側の領域よりも大きく摩耗しており、第二の軸方向位置における基準点Pqの径方向値Z2が、第一の軸方向位置における基準点Ppの径方向値Z1よりも小さい。そこで、一対の基準点Pp、Pqの径方向値Z1、Z2が比較されて、小径な方の径方向値Z2が大径な方の径方向値Z1に置換される。具体的には、図9に示すように、第二の軸方向位置における基準点Pqが、置換された径方向値Z1を有する新たな基準点Pq’に置換される。そして、これらの基準点Pp、Pq’が記憶装置3に記憶される。なお、図9は、タイヤ軸方向の全域にて上記基準点Pの置換処理を行った場合の基準線を示している。このため、図9では、基準線(基準点Pの集合)がタイヤ赤道面CLを中心として左右対称な形状を有している。
【0039】
ステップST6では、比較結果生成部26が、上記一致した径方向値Z1を有する基準点Pp、Pq’と表面形状データの測定点群Ap、Aqとを比較して、所定の比較結果を生成する。比較結果の生成では、一対の軸方向位置における基準点Pp、Pq’の径方向値Z1と、対応する表面形状データの測定点群Ap、Aqの径方向値Zとの差ΔZ1、ΔZ2(図10および図11)が、算出される。また、トレッド面の全域にて基準点Pと表面形状データの測定点群Aとの径方向値Zの差ΔZを算出することで、トレッド面の摩耗状態を示すコンター図(同一の摩耗量を有する位置を等値線で接続した図。図示省略)を作成できる。
【0040】
また、例えば、図12に示すように、各陸部131~135(図3および図6参照)の接地領域に対応する複数の軸方向領域R31~R35を定義する。そして、複数の軸方向領域R31~R35のそれぞれにて、タイヤ軸方向およびタイヤ周方向の全域における基準点Pと表面形状データの測定点群Aとの径方向値Zの差ΔZ31~ΔZ35が算出される。そして、軸方向領域R31~R35のそれぞれにおける差ΔZ31~ΔZ35の総和ΣΔZ31~ΣΔZ35が算出されて、比較結果が生成される(図示省略)。これにより、例えば左右のショルダー陸部131、135に対応する軸方向領域R31、R35における表面形状(ここでは総摩耗量)を比較できる。
【0041】
上記の構成では、タイヤの表面形状を示す評価値(径方向値Zの差ΔZ)がタイヤ赤道面CLを中心とする対称な軸方向位置に配置された同一の径方向値Z1を有する基準点Pp、Pq’を基準として算出されるので、タイヤ左右におけるトレッド面の不均一な表面形状を精度よく比較できる。例えば図8のように、対称な軸方向位置に配置された基準点Pp、Pqが相互に異なる径方向値Z1、Z2を有する場合には、共通の基準を用いて両者を比較できないため、タイヤの表面形状の不均一さを適切に比較できないという問題点がある。
【0042】
図13および図14は、上記したタイヤデータ処理方法における比較結果の一例を示す説明図である。ここでは、各陸部131~135における過剰摩耗の発生頻度の比較処理について説明する。
【0043】
上記のように、任意の軸方向位置における基準点Pと表面形状データの測定点Aとの径方向値Zの差ΔZを算出し、軸方向領域R31~R35(図12参照)のそれぞれにて、タイヤ軸方向およびタイヤ周方向の全域における基準点Pと表面形状データとの差ΔZ31~ΔZ35の総和ΣΔZ31~ΣΔZ35を算出することで、各陸部131~135における総摩耗量を相対的に比較できる。
【0044】
これに対して、任意の軸方向位置における基準点Pと表面形状データの測定点Aとの径方向値Zの差ΔZを算出し、軸方向領域R31~R35(図12参照)のそれぞれにて、差ΔZが所定の閾値kを越えた測定点Aの総数NWと各領域R31~R35における測定点の総数NAとの比を算出することにより、各陸部131~135における過剰摩耗の発生頻度を相対的に比較できる。
【0045】
また、径方向値Zの差ΔZが所定の閾値k以上である測定点Aでは、過剰摩耗が発生していると判断される。そこで、軸方向領域R31~R35(図12参照)のそれぞれにて、径方向値Zの差ΔZが所定の閾値k未満の測定点Aを除外し、差ΔZが所定の閾値kを越えた測定点Aの総数NWを算出する。そして、この過剰摩耗が発生した測定点Aの総数NWと各領域R31~R35における測定点の総数NAとの比を算出する(図14参照)。この比NW/NAは、各陸部における過剰摩耗の発生率NW/NAとして把握される。図14の例では、一方のショルダー陸部135における過剰摩耗の発生率NW/NAが他方のショルダー陸部131よりも大きい。このとき、一対のショルダー陸部131、135における過剰摩耗の発生率NW/NAが、タイヤ赤道面CLを中心とする対称な軸方向位置にて同一の径方向値Z1を有する基準点Pp、Pq’(図10参照)を基準として算出されるので、一対のショルダー陸部131、135における過剰摩耗の発生率NW/NAの不均一さを精度よく比較できる。
【0046】
なお、閾値kは、目的に応じて適宜選択できる。過剰摩耗の比較判定においては、例えば2.5[mm]~3.0[mm]の範囲から選択される。
【0047】
[変形例]
図15および図16は、図4に記載したタイヤデータ処理方法の変形例を示す説明図である。ここでは、第二の適用例として、新品タイヤのトレッド面の形状を計測してタイヤの加工精度に関する比較結果を生成する処理方法について説明する。また、フローチャートは、図4に記載したフローチャートと同一であるので、その図示を省略する。
【0048】
ステップST1では、データ取得部21が、タイヤ表面形状を示す表面形状データを取得する。ステップST2では、基準点設定部22が、タイヤ軸方向における複数の軸方向位置のそれぞれにて、所定の径方向値Zを有する基準点Pを設定する。ここでは、基準点Pの径方向値Zが、任意の軸方向値Xをもつ表面形状データの測定点群Aのうち、タイヤ周方向の全域にある測定点群Aの径方向値Zの最大値として選択される。
【0049】
ステップST3では、基準線近似部23が、所定のタイヤ情報に基づいて基準点Pの集合である基準線を所定の近似曲線で近似する。
【0050】
すなわち、新品タイヤのトレッド面にはベントやオーバーフローによる部分的な凸部が存在するため、タイヤ表面形状の測定点群Aが、設計上のトレッドプロファイルの径方向値Zよりも大きな径方向値Zを有する測定点Aを含む(図示省略)。このため、ステップST2で設定された基準点Pが凸部の径方向値Zを有する場合があり、ステップST3にて作成された基準線が凸部の発生位置にて部分的に突出した形状を有する(図15参照)。
【0051】
そこで、タイヤの接地領域(すなわち、周方向溝121~124に区画された各陸部131~135の踏面)のそれぞれにて、すべての基準点Pが単一の近似曲線に沿って配列されるように、基準点Pの径方向値Zを修正する。これにより、各陸部131~135の接地面にある基準線が平滑化される。
【0052】
例えば、この実施の形態では、タイヤデータ処理装置1が、ステップST3にて作成した基準線(基準点の集合)を表示装置(図示省略)に表示し、ユーザーが表示された基準線を視認して周方向溝の位置などのタイヤ情報を入力する。そして、この入力されたタイヤ情報に基づいて、基準点Pの集合が所定の近似曲線の上にあるように修正されて近似される。
【0053】
具体的には、トレッド面における周方向溝121~124の位置およびトレッド端の位置の指定に基づいて、基準線近似部23が、タイヤの接地領域(後述する軸方向領域R31~R35。図12参照)を定義する。そして、基準線近似部23が、これらのタイヤの接地領域のそれぞれにて基準点Pが単一の近似曲線に沿って配列されるように、隣り合う基準点に対してタイヤ径方向に大きく離間した基準点Pの径方向値Zを修正する。また、図16に示すように、タイヤ接地領域の全域に渡って延在する単一の近似曲線が用いられて、基準点Pの集合が近似されても良い。これにより、ベントやオーバーフローによる部分的な凸部の影響を効果的に排除できる。
【0054】
また、上記に限らず、基準線近似部23が、予め記憶装置3に記憶されたタイヤ情報に基づいて基準線を自動で近似しても良い。
【0055】
ステップST4では、対称基準点選択部24が、タイヤ赤道面CLを中心として対称な軸方向位置に配置された一対の基準点Pp、Pqを上記した複数の基準点Pから選択する。ステップST5では、基準点置換部25が、上記した一対の基準点Pp(Xp,Z1)、Pq(Xq,Z2)の径方向値Z1、Z2が一致するように、一方あるいは双方の基準点Pp、Pqを置換する。すなわち、新品タイヤにおいても、一対の基準点Pp、Pqの径方向値Z1、Z2が相互に一致しない場合がある。そこで、一対の基準点Pp、Pqの径方向値Z1、Z2が一致するように一方あるいは双方の径方向値Z1、Z2が修正されて、基準点Pp、Pqが置換される。
【0056】
ステップST6では、比較結果生成部26が、上記一致した径方向値Z1を有する基準点Pp、Pq’と表面形状データの測定点群Ap、Aqとを比較して、所定の比較結果を生成する。また、トレッド面の全域にて基準点Pと表面形状データの測定点群Aとの径方向値Zの差ΔZを算出することで、新品タイヤの加工精度を示すコンター図(同一の凹量を有する位置を等値線で接続した図。図示省略)を作成できる。
【0057】
また、例えば、径方向値Zの差ΔZが所定の閾値k以上である測定点Aでは、製造誤差の許容範囲を越えた深い凹部が新品タイヤのトレッド面に発生していると判断される。そこで、複数の軸方向領域R31~R35(図16参照)のそれぞれにて、径方向値Zの差ΔZが所定の閾値k未満の測定点Aを除外し、差ΔZが所定の閾値kを越えた測定点Aの総数NWを算出する。そして、この深い凹部が発生した測定点Aの総数NWと各領域R31~R35における測定点の総数NAとの比を算出する。この比NW/NAは、各陸部における深い凹部の発生率NW/NAとして把握される。これにより、新品タイヤの各陸部における加工精度を精度よく比較できる。
【0058】
なお、閾値kは、目的に応じて適宜選択できる。上記した新品タイヤの加工精度の比較判定においては、例えば1.0[mm]~1.5[mm]の範囲から選択される。
【0059】
[タイヤデータ処理プログラム]
上記した実施の形態のタイヤデータ処理装置1で実行されるタイヤデータ処理プログラムは、タイヤ表面形状を示す表面形状データを取得するデータ取得ステップST1と、タイヤ軸方向における複数の軸方向位置のそれぞれにて、所定の径方向値を有する基準点Pを設定する基準点設定ステップST2と、タイヤ赤道面CLを中心として対称な軸方向位置に配置された一対の基準点Pp、Pqを複数の基準点Pから選択する対称基準点選択ステップST4と、一対の基準点Pp、Pqの径方向値Z1、Z2が一致するように一方あるいは双方の基準点Pp、Pqを置換する基準点置換ステップST5と、一致した径方向値Z1を有する一対の基準点Pp、Pqと表面形状データの測定点群Aとを比較して所定の比較結果を生成する比較結果生成ステップST6と、を制御装置2に実行させる。
【0060】
また、上記タイヤデータ処理プログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、上記タイヤデータ処理プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、上記タイヤデータ処理プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0061】
[効果]
以上説明したように、[1]このタイヤデータ処理装置1は、タイヤ表面形状を示す表面形状データを取得するデータ取得部21と、タイヤ軸方向における複数の軸方向位置のそれぞれにて、所定の径方向値を有する基準点Pを設定する基準点設定部22と、タイヤ赤道面CLを中心として対称な軸方向位置に配置された一対の基準点Pp、Pqを複数の基準点Pから選択する対称基準点選択部24と、一対の基準点Pp、Pqの径方向値Z1、Z2が一致するように前記一対の基準点Pp、Pqの一方あるいは双方を置換する基準点置換部25と、一致した径方向値Z1を有する一対の基準点Pp、Pqと表面形状データの測定点群Aとを比較して所定の比較結果を生成する比較結果生成部26と、を含む(図1参照)。
【0062】
かかる構成では、タイヤの表面形状を示す評価値(径方向値Zの差ΔZ)がタイヤ赤道面CLを中心とする対称な軸方向位置に配置された同一の径方向値Z1を有する基準点Pp、Pq’を基準として算出されるので、タイヤ左右におけるトレッド面の不均一な表面形状を精度よく比較できる利点がある。
【0063】
また、[2]このタイヤデータ処理装置1は、上記[1]に記載のタイヤデータ処理装置1において、基準点設定部22は、表面形状データの測定点群Aの径方向値Zから基準点Pの径方向値Zを選択あるいは算出する。これにより、タイヤの表面形状を示す評価値を精度よく算出できる利点がある。
【0064】
また、[3]このタイヤデータ処理装置1は、上記[2]に記載のタイヤデータ処理装置1において、基準点設定部22は、複数の軸方向位置にある表面形状データの測定点群Ap、Aqの径方向値Zの最大値Z1、Z1を基準点Pp、Pqの径方向値Zとして選択する(図5参照)。これにより、タイヤの表面形状を示す評価値を精度よく算出できる利点がある。
【0065】
また、[4]このタイヤデータ処理装置1は、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のタイヤデータ処理装置1において、基準点設定部22は、タイヤ周方向の角度θが10[deg]以上130[deg]以下の範囲にある領域を定義し、当該領域にある測定点群Aの径方向値Zから基準点Pの径方向値Zを選択あるいは算出する。れにより、人間の視野角(10[deg]~130[deg])に近い領域で、タイヤの表面形状を評価できる利点がある。
【0066】
また、[5]このタイヤデータ処理装置1は、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のタイヤデータ処理装置1において、比較結果生成部26は、一対の基準点Pp、Pq’を有する一対の軸方向領域R31、R35のそれぞれにおける複数の基準点Pの径方向値Zと表面形状データの測定点群Aの径方向値Zとの差ΔZ31、ΔZ35の総和ΣΔZ31、ΣΔZ35を算出して比較結果を生成する。これにより、対応する軸方向領域R31、R35における表面形状を比較できる利点がある。
【0067】
また、[6]このタイヤデータ処理装置1は、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載のタイヤデータ処理装置1において、比較結果生成部26は、一対の基準点Pp、Pq’の径方向値Z1と表面形状データの測定点群Aの径方向値Zとの差ΔZを算出し、測定点群Aのうち径方向値Zの差ΔZが所定の閾値k未満である測定点を除外して、比較結果を生成する。これにより、ノイズをカットして比較結果の精度を高め得る利点がある。
【0068】
また、[7]このタイヤデータ処理装置1は、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載のタイヤデータ処理装置1において、基準点Pの集合である基準線を所定のタイヤ情報に基づいて所定の近似曲線で近似する基準線近似部23を備える。また、基準線近似部23は、タイヤの接地領域にある基準点Pが前記近似曲線に沿って配列されるように、基準点Pの径方向値Zを修正する。これにより、タイヤの接地領域における基準点群Pの配列状態が平滑化されて、タイヤの表面形状を精度よく評価できる利点がある。
【0069】
また、[8]このタイヤデータ処理方法は、タイヤ表面形状を示す表面形状データを取得するデータ取得ステップST1と、タイヤ軸方向における複数の軸方向位置のそれぞれにて、所定の径方向値を有する基準点Pを設定する基準点設定ステップST2と、タイヤ赤道面CLを中心として対称な軸方向位置に配置された一対の基準点Pp、Pqを複数の基準点Pから選択する対称基準点選択ステップST4と、一対の基準点Pp、Pqの径方向値Z1、Z2が一致するように前記一対の基準点Pp、Pqの一方あるいは双方を置換する基準点置換ステップST5と、一致した径方向値Z1を有する一対の基準点Pp、Pqと表面形状データの測定点群Aとを比較して所定の比較結果を生成する比較結果生成ステップST6と、を含む(図4参照)。かかる構成では、タイヤの表面形状を示す評価値(径方向値Zの差ΔZ)がタイヤ赤道面CLを中心とする対称な軸方向位置に配置された同一の径方向値Z1を有する基準点Pp、Pq’を基準として算出されるので、タイヤ左右におけるトレッド面の不均一な表面形状を精度よく比較できる利点がある。
【符号の説明】
【0070】
1 タイヤデータ処理装置;2 制御装置;3 記憶装置;10 計測装置;11 距離センサ;12 処理装置;13 スピンドル;21 データ取得部;22 基準点設定部;23 基準線近似部;24 対称基準点選択部;25 基準点置換部;26 比較結果生成部;100 タイヤ;111 ビードコア;112 ビードフィラー;113 カーカス層;114 ベルト層;115 トレッドゴム;116 サイドウォールゴム;117 リムクッションゴム;121~124 周方向溝;131~135 陸部
図1
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