(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039279
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
F16H 3/14 20060101AFI20240314BHJP
F16D 41/064 20060101ALI20240314BHJP
F16H 3/089 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
F16H3/14
F16D41/064
F16H3/089
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143709
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】河原 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】美濃羽 未紗樹
(72)【発明者】
【氏名】寺林 均
【テーマコード(参考)】
3J528
【Fターム(参考)】
3J528EA09
3J528EA25
3J528EB35
3J528EB37
3J528EB63
3J528EB73
3J528EB93
3J528FB05
3J528FC33
3J528FC42
3J528FC59
3J528GA01
3J528HA27
3J528JL03
(57)【要約】
【課題】前後進切替装置を設けることなく、正回転のトルクと逆回転のトルクとをそれぞれ異なるギアセットを介して伝達する。
【解決手段】トルク伝達機構100は、第1シャフト3、第2シャフト4、第1ギアセット5、及び第2ギアセット6を備える。第1ギアセット5は、正回転のトルクを、第2ギアセットは、逆回転のトルクを、第1シャフト3から第2シャフト4へ伝達する。第1ギアセット5は、第1クラッチ機構50を有する。第1クラッチ機構50は、駆動源2からの正回転のトルクを伝達し、駆動源2からの逆回転のトルク伝達を遮断する。第2ギアセット6は、第2クラッチ機構60を有する。第2クラッチ機構60は、駆動源2からの逆回転のトルクを伝達し、駆動源2からの正回転のトルク伝達を遮断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源が出力する正回転及び逆回転のトルクを出力部材に伝達するためのトルク伝達機構であって、
回転可能に配置される第1シャフトと、
回転可能に配置される第2シャフトと、
前記第1シャフトから前記第2シャフトへ正回転のトルクを伝達するように構成される第1ギアセットと、
前記第1シャフトから前記第2シャフトへ逆回転のトルクを伝達するように構成される第2ギアセットと、
を備え、
前記第1ギアセットは、
前記駆動源からの正回転のトルクを伝達し、前記駆動源からの逆回転のトルク伝達を遮断するように構成される第1クラッチ機構、
を有し、
前記第2ギアセットは、
前記駆動源からの逆回転のトルクを伝達し、前記駆動源からの正回転のトルク伝達を遮断するように構成される第2クラッチ機構、
を有する、
トルク伝達機構。
【請求項2】
前記第1クラッチ機構は、
前記駆動源からの正回転のトルクを伝達し、前記駆動源からの逆回転のトルク伝達を遮断するように構成されるワンウェイクラッチと、
前記出力部材からの正回転のトルクのみを伝達するように構成される第1クラッチと、
を有する、
請求項1に記載のトルク伝達機構。
【請求項3】
前記第1クラッチは、
駆動源からトルクが入力されるように構成される入力回転部材と、
出力部材側へトルクを出力するように構成され、前記入力回転部材と径方向において間隔をあけて配置される出力回転部材と、
前記入力回転部材と前記出力回転部材との間に配置され、前記入力回転部材との間に隙間を有する非係合状態と、前記入力回転部材と前記出力回転部材との間で噛み合う係合状態とを取り得る伝達部材と、
を有し、
前記出力回転部材が前記伝達部材に対して相対的に正回転したとき、前記伝達部材は前記係合状態となる、
請求項2に記載のトルク伝達機構。
【請求項4】
前記第1クラッチは、
前記伝達部材を非係合状態に付勢する付勢部材と、
前記入力回転部材と前記出力回転部材との間に配置され、前記入力回転部材及び前記出力回転部材と相対回転可能に配置され、前記伝達部材を保持する保持部材と、
を有する、
請求項3に記載のトルク伝達機構。
【請求項5】
前記第2クラッチ機構は、前記駆動源からの逆回転のトルクのみを伝達するように構成される第2クラッチを有する、
請求項1に記載のトルク伝達機構。
【請求項6】
前記第2クラッチは、
駆動源からトルクが入力されるように構成される入力回転部材と、
出力部材側へトルクを出力するように構成され、前記入力回転部材と径方向において間隔をあけて配置される出力回転部材と、
前記入力回転部材と前記出力回転部材との間に配置され、前記出力回転部材との間に隙間を有する非係合状態と、前記入力回転部材と前記出力回転部材との間で噛み合う係合状態とを取り得る伝達部材と、
を有し、
前記入力回転部材が前記伝達部材に対して相対的に逆回転したとき、前記伝達部材は前記係合状態となる、
請求項5に記載のトルク伝達機構。
【請求項7】
前記第2クラッチは、
前記伝達部材を非係合状態に付勢する付勢部材と、
前記入力回転部材と前記出力回転部材との間に配置され、前記入力回転部材及び前記出力回転部材と相対回転可能に配置され、前記伝達部材を保持する保持部材と、
を有する、
請求項6に記載のトルク伝達機構。
【請求項8】
前記第1ギアセットは、前記第1シャフトに取り付けられる入力ギアと、前記第2シャフトに取り付けられる出力ギアと、を有し、
前記ワンウェイクラッチ及び前記第1クラッチは、前記第1シャフトと前記入力ギアとの間に配置される、
請求項2に記載のトルク伝達機構。
【請求項9】
前記第1ギアセットは、前記第1シャフトに取り付けられる入力ギアと、前記第2シャフトに取り付けられる出力ギアと、を有し、
前記ワンウェイクラッチ及び前記第1クラッチは、前記第2シャフトと前記出力ギアとの間に配置される、
請求項2に記載のトルク伝達機構。
【請求項10】
前記第2ギアセットは、前記第1シャフトに取り付けられる入力ギアと、前記第2シャフトに取り付けられる出力ギアと、を有し、
前記第2クラッチは、前記第2シャフトと前記出力ギアとの間に配置される、
請求項5に記載のトルク伝達機構。
【請求項11】
前記第2ギアセットは、前記第1シャフトに取り付けられる入力ギアと、前記第2シャフトに取り付けられる出力ギアと、を有し、
前記第2クラッチは、前記第1シャフトと前記入力ギアとの間に配置される、
請求項5に記載のトルク伝達機構。
【請求項12】
前記第1ギアセットの減速比は、前記第2ギアセットの減速比とは異なる、
請求項1に記載のトルク伝達機構。
【請求項13】
前記第2ギアセットの減速比は、前記第1ギアセットの減速比よりも大きい、
請求項1に記載のトルク伝達機構。
【請求項14】
前記駆動源と前記第1ギアセットとの間に配置され、前記駆動源が出力する正回転のトルクを増幅するように構成されるトルクコンバータをさらに備える、
請求項1に記載のトルク伝達機構。
【請求項15】
正回転及び逆回転のトルクを出力するように構成される駆動源と、
前記駆動源のトルクを伝達するように構成される請求項1に記載のトルク伝達機構と、
を備える、駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気モータ、前進用ギアセット、及び後進用ギアセットを有する駆動ユニットが提案されている。この駆動ユニットは、トルクの伝達経路を前進用ギアセットと後進用ギアセットとの間で切り替えるために、前後進切替装置を有している(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように構成された駆動ユニットでは、前進用ギアセットと後進用ギアセットとの間でトルク伝達経路を切り替えるために、前後進切替装置が必要となる。これに対して、前後進切替装置を省略したいとの要望がある。そこで、本発明の課題は、前後進切替装置を設けることなく、正回転のトルクと逆回転のトルクとをそれぞれ異なるギアセットを介して伝達することができるトルク伝達機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様に係るトルク伝達機構は、駆動源が出力する正回転及び逆回転のトルクを出力部材に伝達するように構成される。トルク伝達機構は、第1シャフト、第2シャフト、第1ギアセット、及び第2ギアセットを備える。第1及び第2シャフトは、回転可能に配置される。第1ギアセットは、第1シャフトから第2シャフトへ正回転のトルクを伝達するように構成される。第2ギアセットは、第1シャフトから第2シャフトへ逆回転のトルクを伝達するように構成される。第1ギアセットは、第1クラッチ機構を有する。第1クラッチ機構は、駆動源からの正回転のトルクを伝達し、駆動源からの逆回転のトルク伝達を遮断するように構成される。第2ギアセットは、第2クラッチ機構を有する。第2クラッチ機構は、駆動源からの逆回転のトルクを伝達し、駆動源からの正回転のトルク伝達を遮断するように構成される。
【0006】
この構成によれば、正回転のトルクは、第1ギアセットによって第1シャフトから第2シャフトへ伝達され、第2ギアセットによって伝達されない。また、逆回転のトルクは、第2ギアセットによって第1シャフトから第2シャフトへ伝達され、第1ギアセットによって伝達されない。このように、前後進切替装置を設けることなく、正回転のトルクと逆回転のトルクをそれぞれ異なるギアセットを介して伝達することができる。
【0007】
第2態様に係るトルク伝達機構は、第1態様に係るトルク伝達機構において、次のように構成される。第1クラッチ機構は、ワンウェイクラッチ及び第1クラッチを有する。ワンウェイクラッチは、駆動源からの正回転のトルクを伝達し、駆動源からの逆回転のトルク伝達を遮断するように構成される。第1クラッチは、出力部材からの正回転のトルクのみを伝達するように構成される。
【0008】
第3態様に係るトルク伝達機構は、第2態様に係るトルク伝達機構において、次のように構成される。第1クラッチは、第1入力回転部材と、第1出力回転部材と、第1伝達部材とを有する。第1入力回転部材は、駆動源からトルクが入力されるように構成される。第1出力回転部材は、出力部材側へトルクを出力するように構成される。第1出力回転部材は、第1入力回転部材と径方向において間隔をあけて配置される。第1伝達部材は、第1入力回転部材と第1出力回転部材との間に配置される。第1伝達部材は、第1入力回転部材との間に隙間を有する非係合状態と、第1入力回転部材と第1出力回転部材との間で噛み合う係合状態とを取り得る。第1伝達部材は、第1出力回転部材が第1伝達部材に対して相対的に正回転したとき、係合状態となる。
【0009】
第4態様に係るトルク伝達機構は、第3態様に係るトルク伝達機構において、次のように構成される。第1クラッチは、第1付勢部材と、第1保持部材とを有する。第1付勢部材は、第1伝達部材を非係合状態に付勢する。第1保持部材は、第1入力回転部材と第1出力回転部材との間に配置される。第1保持部材は、第1入力回転部材及び第1出力回転部材と相対回転可能に配置される。第1保持部材は、第1伝達部材を保持する。
【0010】
第5態様に係るトルク伝達機構は、第1から第4態様のいずれかに係るトルク伝達機構において、次のように構成される。第2クラッチ機構は、第2クラッチを有する。第2クラッチは、駆動源からの逆回転のトルクのみを伝達するように構成される。
【0011】
第6態様に係るトルク伝達機構は、第5態様に係るトルク伝達機構において、次のように構成される。第2クラッチは、第2入力回転部材と、第2出力回転部材と、第2伝達部材とを有する。第2入力回転部材は、駆動源からトルクが入力されるように構成される。第2出力回転部材は、出力部材側へトルクを出力するように構成される。第2出力回転部材は、第2入力回転部材と径方向において間隔をあけて配置される。第2伝達部材は、第2入力回転部材と第2出力回転部材との間に配置される。第2伝達部材は、第2出力回転部材との間に隙間を有する非係合状態と、第2入力回転部材と第2出力回転部材との間で噛み合う係合状態とを取り得る。第2伝達部材は、第2入力回転部材が第2伝達部材に対して相対的に逆回転したとき、係合状態となる。
【0012】
第7態様に係るトルク伝達機構は、第6態様に係るトルク伝達機構において、次のように構成される。第2クラッチは、第2付勢部材と第2保持部材とを有する。第2付勢部材は、第2伝達部材を非係合状態に付勢する。第2保持部材は、第2入力回転部材と第2出力回転部材との間に配置される。第2保持部材は、第2入力回転部材及び第2出力回転部材と相対回転可能に配置される。第2保持部材は、第2伝達部材を保持する。
【0013】
第8態様に係るトルク伝達機構は、第2から第4態様のいずれかに係るトルク伝達機構において、次のように構成される。第1ギアセットは、第1シャフトに取り付けられる第1入力ギアと、第2シャフトに取り付けられる第1出力ギアと、を有する。ワンウェイクラッチ及び第1クラッチは、第1シャフトと第1入力ギアとの間に配置される。
【0014】
第9態様に係るトルク伝達機構は、第2から第4態様のいずれかに係るトルク伝達機構において、次のように構成される。第1ギアセットは、第1シャフトに取り付けられる第1入力ギアと、第2シャフトに取り付けられる第1出力ギアと、を有する。ワンウェイクラッチ及び第1クラッチは、第2シャフトと第1出力ギアとの間に配置される。
【0015】
第10態様に係るトルク伝達機構は、第5から第7態様のいずれかに係るトルク伝達機構において、次のように構成される。第2ギアセットは、第1シャフトに取り付けられる第2入力ギアと、第2シャフトに取り付けられる第2出力ギアと、を有する。第2クラッチは、第2シャフトと第2出力ギアとの間に配置される。
【0016】
第11態様に係るトルク伝達機構は、第5から第7態様のいずれかに係るトルク伝達機構において、次のように構成される。第2ギアセットは、第1シャフトに取り付けられる第2入力ギアと、第2シャフトに取り付けられる第2出力ギアと、を有する。第2クラッチは、第1シャフトと第2入力ギアとの間に配置される。
【0017】
第12態様に係るトルク伝達機構は、第1から第11態様のいずれかに係るトルク伝達機構において、次のように構成される。第1ギアセットの減速比は、第2ギアセットの減速比とは異なる。
【0018】
第13態様に係るトルク伝達機構は、第1から第12態様のいずれかに係るトルク伝達機構において、次のように構成される。第2ギアセットの減速比は、第1ギアセットの減速比よりも大きい。
【0019】
第14態様に係るトルク伝達機構は、第1から第13態様のいずれかに係るトルク伝達機構において、トルクコンバータをさらに備える。トルクコンバータは、駆動源と第1ギアセットとの間に配置される。トルクコンバータは、駆動源が出力する正回転のトルクを増幅するように構成される。
【0020】
第15態様に係る駆動ユニットは、駆動源と、第1態様から第14態様のいずれかに係るトルク伝達機構とを備える。駆動源は、正回転及び逆回転のトルクを出力するように構成される。トルク伝達機構は、駆動源のトルクを伝達するように構成される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、前後進切替装置を設けることなく、正回転のトルクと逆回転のトルクとをそれぞれ異なるギアセットを介して伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図7】電気モータからの正回転のトルク伝達経路を示す図。
【
図8】電気モータからの逆回転のトルク伝達経路を示す図。
【
図9】駆動輪からの正回転のトルク伝達経路を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本実施形態に係る駆動ユニット及びトルク伝達機構について図面を参照しつつ説明する。
【0024】
<駆動ユニット>
図1に示すように、駆動ユニット100は、電気モータ2(駆動源の一例)、トルク伝達機構10を有している。駆動ユニット100は、駆動輪101(出力部材の一例)にトルクを出力するように構成されている。駆動ユニット100は、例えば、電気自動車又はハイブリッド自動車などに搭載される。トルク伝達機構10は、電気モータ2が出力する正回転及び逆回転のトルクを駆動輪101に伝達するように構成されている。トルク伝達機構10は、第1シャフト3、第2シャフト4、第1ギアセット5、第2ギアセット6、及びトルクコンバータ7を有している。
【0025】
<電気モータ>
電気モータ2は、正回転及び逆回転のトルクを出力するように構成されている。なお、正回転とは、駆動ユニット100が搭載された車両が前進する際の各部材の回転を意味する。すなわち、電気モータ2が正回転のトルクを出力することで、各部材は正回転し、車両が前進する。また、逆回転とは、駆動ユニット100が搭載された車両が後進する際の各部材の回転を意味する。すなわち、電気モータ2が逆回転のトルクを出力することで、各部材は逆回転し、車両が後進する。
【0026】
<第1シャフト>
第1シャフト3は、回転可能に配置されている。第1シャフト3は、電気モータ2から延びている。詳細には、第1シャフト3は、電気モータ2からトルクコンバータ7へ延びる部分と、トルクコンバータ7から延びる部分とに分かれている。第1シャフト3は、電気モータ2からのトルクが入力される。
【0027】
トルクコンバータ7は、第1シャフト3に取り付けられている。トルクコンバータ7は、電気モータ2と第1ギアセット5との間に配置されている。トルクコンバータ7は、電気モータ2が出力した正回転のトルクを増幅するように構成されている。具体的には、トルクコンバータ7は、インペラ、タービン、及びステータを有している。また、トルクコンバータ7は、ロックアップ装置をさらに有していてもよい。電気モータ2が出力した正回転のトルクがトルクコンバータ7に伝達されると、インペラから作動油を介してタービンにトルクが伝達される。
【0028】
トルクコンバータ7は、電気モータ2が出力した逆回転のトルクは増幅しない。トルクコンバータ7は、電気モータ2から逆回転のトルクが入力されるとき、インペラとタービンとが一体的に回転するように構成されている。例えば、ロックアップ装置をロックアップオン状態にすることによって、インペラとタービンとが一体的に回転する。なお、ロックアップ装置の代わりに、ワンウェイクラッチなどによって、インペラとタービンとを一体的に回転させてもよい。
【0029】
<第2シャフト>
第2シャフト4は回転可能に配置されている。第2シャフト4は、第1シャフト3とほぼ平行に延びている。第2シャフト4は、第1シャフト3から、第1ギアセット5又は第2ギアセット6を介して伝達されたトルクを駆動輪101へと伝達する。
【0030】
<第1ギアセット>
第1ギアセット5は、第1シャフト3から第2シャフト4へ正回転のトルクを伝達するように構成される。詳細には、第1ギアセット5は、電気モータ2が出力した正回転のトルクを伝達する。また、第1ギアセット5は、駆動輪101からの正回転のトルクを、第2シャフト4から第1シャフト3へと伝達する。
【0031】
第1ギアセット5は、第1入力ギア51、第1出力ギア52、及び第1クラッチ機構50を有している。
【0032】
第1入力ギア51は、第1シャフト3に取り付けられている。詳細には、第1入力ギア51は、後述するワンウェイクラッチ53及び第1クラッチ54を介して第1シャフト3に取り付けられている。
【0033】
第1出力ギア52は、第2シャフト4に取り付けられている。第1出力ギア52は、第2シャフト4に固定されている。このため、第1出力ギア52は、第2シャフト4と一体的に回転する。第1出力ギア52は、第1入力ギア51と噛み合っている。
【0034】
第1出力ギア52は、第1入力ギア51よりも歯数が少ない。すなわち、第1ギアセット5は、第1シャフト3の回転を増速して第2シャフト4へと伝達する。なお、第1出力ギア52は、第1入力ギア51よりも歯数が多くてもよいし、第1入力ギア51と歯数が同じでもよい。
【0035】
第1クラッチ機構50は、電気モータ2からの正回転のトルクを伝達する一方で、電気モータ2からの逆回転のトルク伝達を遮断するように構成されている。なお、「電気モータ2からの逆回転のトルク伝達を遮断する」とは、電気モータ2からの逆回転のトルクを第1シャフト3から第2シャフト4へ伝達することを遮断するだけでなく、電気モータ2からの逆回転のトルクを第2シャフト4から第1シャフト3へ伝達することを遮断することも含む概念である。
【0036】
第1クラッチ機構50は、ワンウェイクラッチ53、及び第1クラッチ54を有している。ワンウェイクラッチ53及び第1クラッチ54は、第1シャフト3と第1入力ギア51との間に配置されている。
【0037】
ワンウェイクラッチ53は、電気モータ2からの正回転のトルクを伝達し、電気モータ2からの逆回転のトルク伝達を遮断するように構成されている。
図2に示すように、ワンウェイクラッチ53は、内輪531、外輪532、及び複数のローラ533を有している。ワンウェイクラッチ53は、一般的なワンウェイクラッチの構造を有している。
【0038】
内輪531は、第1シャフト3に取り付けられ、第1シャフト3と一体的に回転する。内輪531は、第1シャフト3と一つの部材によって一体的に形成されていてもよい。外輪532は、第1入力ギア51に取り付けられ、第1入力ギア51と一体的に回転する。外輪532は、第1入力ギア51と一つの部材によって一体的に形成されていてもよい。ローラ533は、内輪531と外輪532との間に配置されている。内輪531が外輪532に対して正回転すると、内輪531と外輪532との間でローラ533が噛み合う。その結果、ワンウェイクラッチ53は、第1シャフト3から第1入力ギア51へ正回転のトルクを伝達する。一方、内輪531が外輪532に対して逆回転すると、内輪531と外輪532との間でローラ533が空回りする。その結果、ワンウェイクラッチ53は、第1シャフト3から第1入力ギア51への逆回転のトルク伝達を遮断する。
【0039】
図1に示すように、第1クラッチ54は、駆動輪101からの正回転のトルクのみを伝達するように構成されている。なお、第1クラッチ54は、駆動輪101からの逆回転のトルク、並びに、電気モータ2からの正回転及び逆回転のトルクを伝達しない。
【0040】
図2に示すように、第1クラッチ54は、ワンウェイクラッチ53と同軸上に配置されている。
図3に示すように、第1クラッチ54は、内輪541(入力回転部材の一例)、外輪542(出力回転部材の一例)、ローラ543(伝達部材の一例)、コイルばね544(付勢部材の一例)、及び保持部材545を有している。
【0041】
内輪541は、電気モータ2からトルクが入力されるように構成されている。すなわち、内輪541は、電気モータ2側の部材に取り付けられている。具体的には、内輪541は、第1シャフト3に取り付けられている。内輪541は、第1シャフト3と一体的に回転する。内輪541は、第1シャフト3と一つの部材によって一体的に形成されていてもよい。電気モータ2が正回転すると、内輪541も正回転し、電気モータ2が逆回転すると内輪541も逆回転する。
【0042】
外輪542は、駆動輪101側の部材に取り付けられている。具体的には、外輪542は、第1入力ギア51に取り付けられている。外輪542は、第1入力ギア51と一体的に回転する。外輪542は、第1入力ギア51と一つの部材によって一体的に形成されていてもよい。外輪542は、内輪541と径方向に間隔をあけて配置されている。詳細には、外輪542は、内輪541に対して径方向外側に配置されている。駆動輪101が正回転すると、外輪542も正回転し、駆動輪101が逆回転すると、外輪542も逆回転する。なお、
図3における時計回りの回転が正回転であり、反時計回りの回転が逆回転である。
【0043】
外輪542は、複数のカム面546を内周面に有している。各カム面546は、周方向において間隔をあけて形成されている。好ましくは、各カム面546は、周方向において、等間隔に配置されている。
【0044】
カム面546は、径方向において外側に凹むように構成されている。カム面546は、正回転方向に向かって半径が大きくなっている。詳細には、カム面546は、正回転方向に向かって漸次的に半径が大きくなっている。すなわち、カム面546と回転軸との距離が、正回転方向に向かって漸次的に大きくなっている。なお、カム面546は、曲面によって形成されている。
【0045】
[保持部材]
保持部材545は、内輪541と外輪542との間に配置されている。保持部材545は、内輪541及び外輪542と相対回転可能に配置されている。保持部材545は、全体として環状に形成されている。保持部材545の内周面は、内輪541の外周面と接触していない。保持部材545は、ローラ543を非係合状態で保持している。詳細には、保持部材545は、コイルばね544を介してローラ543を保持している。
【0046】
図4に示すように、保持部材545は、複数のベース部547、複数の延在部548、及び環状部549を有している。ベース部547、延在部548、及び環状部549は、1つの部材によって構成されている。
【0047】
各ベース部547は、環状部549から軸方向に延びている。各ベース部547は、周方向に互いに間隔をあけて配置されている。
【0048】
延在部548は、環状部549から軸方向に延びている。また、延在部548は、ベース部547から正回転方向に延びている。詳細には、延在部548は、コイルばね544と外輪542との間を延びている。すなわち、延在部548は、ベース部547の径方向外側端部から正回転方向に延びている。また、延在部548は、環状部549の外周端部から軸方向に延びている。延在部548は、コイルばね544の径方向外側面と接触する。
【0049】
図3に示すように、ローラ543は、周方向においてコイルばね544と保持部材545のベース部547との間に配置されている。正回転方向において、保持部材545、コイルばね544、ローラ543の順で配置されている。
【0050】
各ローラ543は、円柱状である。ローラ543は、径方向において、内輪541と外輪542との間に配置されている。詳細には、ローラ543は、径方向において、内輪541の外周面と、外輪542のカム面546との間に配置されている。
【0051】
ローラ543は、非係合状態と係合状態とを取り得る。非係合状態において、ローラ543は、内輪541と外輪542との間で噛合っていない。
図3に示すように、ローラ543は、非係合状態にあるとき、内輪541の外周面との間に隙間を有している。このため、ローラ543は、非係合状態にあるとき、内輪541と外輪542との間でトルクを伝達しない。なお、ローラ543はカム面546と接触している。
【0052】
また、
図5に示すように、ローラ543は、係合状態にあるとき、内輪541の外周面と接触している。具体的には、ローラ543は、カム面546と内輪541の外周面との両方に接触している。そして、ローラ543は、カム面546と内輪541の外周面との間で噛み合っている。このため、ローラ543は、係合状態にあるとき、外輪542と内輪541との間でトルクを伝達する。
【0053】
図3に示すように、コイルばね544は、ローラ543を非係合状態に付勢している。詳細には、コイルばね544は、ローラ543を正回転方向及び径方向外側に付勢している。このため、ローラ543は、内輪541との間に隙間を有する一方で、カム面546と接触している。コイルばね544は、周方向においてベース部547とローラ543との間に配置されている。コイルばね544は圧縮された状態でセットされている。
【0054】
この第1クラッチ54によれば、電気モータ2から正回転又は逆回転のトルクが出力されると、内輪541が回転する。ここで、内輪541はローラ543と接触していないため、ローラ543の非係合状態が維持される。この結果、内輪541が空転し、第1クラッチ54は、電気モータ2からの正回転及び逆回転のトルクを伝達しない。
【0055】
また、後進中に減速するなどして駆動輪101から逆回転のトルクが出力されると、外輪542は逆回転する。ローラ543は外輪542と一緒に回転し、ローラ543の非係合状態が維持されるため、外輪542は空転する。この結果、第1クラッチ54は、駆動輪101からの逆回転のトルクを伝達しない。
【0056】
一方、前進中に減速するなどして駆動輪101から正回転のトルクが出力されると、外輪542は正回転する。すると、外輪542は、ローラ543に対して相対的に正回転し、カム面546がローラ543を内輪541側へ移動させ、ローラ543は係合状態となる。この結果、第1クラッチ54は、駆動輪101からの正回転のトルクを伝達する。なお、内輪541の方が外輪542よりも回転速度が速いと、ローラ543は係合状態とはならない。
【0057】
<第2ギアセット>
図1に示すように、第2ギアセット6は、第1シャフト3から第2シャフト4へ逆回転のトルクを伝達するように構成されている。詳細には、第2ギアセット6は、電気モータ2が出力した逆回転のトルクを伝達する。
【0058】
第2ギアセット6は、第2入力ギア61、第2出力ギア62、及び第2クラッチ機構60を有している。
【0059】
第2入力ギア61は、第1シャフト3に取り付けられている。第2入力ギア61は、第1シャフト3に固定されている。このため、第2入力ギア61は、第1シャフト3と一体的に回転する。
【0060】
第2出力ギア62は、第2シャフト4に取り付けられている。詳細には、第2出力ギア62は、後述する第2クラッチ63を介して第2シャフト4に取り付けられている。第2出力ギア62は、第2入力ギア61と噛み合っている。
【0061】
第2出力ギア62は、第2入力ギア61よりも歯数が多い。すなわち、第2ギアセット6は、第1シャフト3の回転を減速して第2シャフト4へと伝達する。なお、第2出力ギア62は、第2入力ギア61よりも歯数が少なくてもよいし、第2入力ギア61と歯数が同じでもよい。
【0062】
第2ギアセット6の減速比は、第1ギアセット5の減速比と異なる。詳細には、第2ギアセット6の減速比は、第1ギアセット5の減速比よりも大きい。
【0063】
第2クラッチ機構60は、電気モータ2からの逆回転のトルクを伝達する一方で、電気モータ2からの正回転のトルク伝達を遮断するように構成されている。なお、「電気モータ2からの正回転のトルク伝達を遮断する」とは、電気モータ2からの正回転のトルクを第1シャフト3から第2シャフト4へ伝達することを遮断するだけでなく、電気モータ2からの正回転のトルクを第2シャフト4から第1シャフト3へ伝達することを遮断することも含む概念である。
【0064】
第2クラッチ機構60は、第2クラッチ63を有している。第2クラッチ63は、第2シャフト4と第2出力ギア62との間に配置されている。第2クラッチ63は、第1クラッチ54と実質的に構成が同じであるため、第1クラッチ54と異なる部分を中心に説明する。
【0065】
第2クラッチ63は、電気モータ2からの逆回転のトルクのみを伝達するように構成されている。なお、第2クラッチ63は、電気モータ2からの正回転のトルク、並びに駆動輪101からの正回転及び逆回転のトルクを伝達しない。
【0066】
図6に示すように、第2クラッチ63は、内輪631(出力回転部材の一例)、外輪632(入力回転部材の一例)、ローラ633(伝達部材の一例)、コイルばね634(付勢部材の一例)、及び保持部材635を有している。
【0067】
外輪632は、電気モータ2からのトルクが入力されるように構成されている。すなわち、外輪632は、電気モータ2側の部材に取り付けられている。具体的には、外輪632は、第2出力ギア62に取り付けられている。外輪632は、第2出力ギア62と一体的に回転する。外輪632は、第2出力ギア62と一つの部材によって一体的に形成されていてもよい。電気モータ2が正回転すると、外輪632も正回転し、電気モータ2が逆回転すると外輪632も逆回転する。
【0068】
内輪631は、駆動輪101へトルクを出力するように構成されている。すなわち、内輪631は、駆動輪101側の部材に取り付けられている。具体的には、内輪631は、第2シャフト4に取り付けられている。内輪631は、第2シャフト4と一体的に回転する。内輪631は、第2シャフト4と一つの部材によって一体的に形成されていてもよい。内輪631は、外輪632と径方向に間隔をあけて配置されている。詳細には、内輪631は、外輪632に対して径方向内側に配置されている。駆動輪101が正回転すると、内輪631も正回転し、駆動輪101が逆回転すると、内輪631も逆回転する。なお、
図6における時計回りの回転が正回転であり、反時計回りの回転が逆回転である。
【0069】
外輪632は、複数のカム面636を内周面に有している。各カム面636は、周方向において間隔をあけて形成されている。好ましくは、各カム面636は、周方向において、等間隔に配置されている。
【0070】
カム面636は、径方向において外側に凹むように構成されている。カム面636は、逆回転方向に向かって半径が大きくなっている。詳細には、カム面636は、逆回転方向に向かって漸次的に半径が大きくなっている。すなわち、カム面636と回転軸との距離が、逆回転方向に向かって漸次的に大きくなっている。なお、カム面636は、曲面によって形成されている。
【0071】
保持部材635は、複数のベース部637、複数の延在部638、及び環状部(図示省略)を有している。保持部材635は、第1クラッチ54の保持部材545と実質的に同じ構成であるため、その詳細な説明を省略する。なお、延在部638は、ベース部637から逆回転方向に延びている。
【0072】
ローラ633は、第1クラッチ54のローラ543と実質的に同じ構成であるため、その詳細な説明を省略する。
【0073】
この第2クラッチ63によれば、電気モータ2から逆回転のトルクが出力されると、外輪632は逆回転する。これにより、外輪632は、ローラ633に対して相対的に逆回転するため、ローラ633は係合状態となる。この結果、第2クラッチ63は、電気モータ2からの逆回転のトルクを伝達する。
【0074】
また、電気モータ2から正回転のトルクが出力されると、外輪632は正回転する。ローラ633は、外輪632と一緒に回転するため、ローラ633の非係合状態は維持され、外輪632は空転する。この結果、第2クラッチ63は、電気モータ2が出力した正回転のトルクを伝達しない。
【0075】
また、前進中又は後進中に減速するなどして駆動輪101から正回転又は逆回転のトルクが出力されると、内輪631が回転する。ここで、内輪631は、ローラ633と接触していないため、ローラ633の非係合状態が維持される。この結果、内輪631が空転し、第2クラッチ63は、駆動輪101からの正回転及び逆回転のトルクを伝達しない。
【0076】
<動作>
上述したように構成された駆動ユニット100の動作について以下において説明する。
【0077】
車両を前進させる場合、電気モータ2は、正回転のトルクを出力する。この正回転のトルクは、
図7の矢印で示すように第1ギアセット5を介して伝達される。詳細に説明すると、まず、電気モータ2が出力した正回転のトルクは、第1シャフト3に伝達され、トルクコンバータ7で増幅される。そして、第1クラッチ機構50のワンウェイクラッチ53は、その増幅された正回転のトルクを第1シャフト3から第1入力ギア51へと伝達する。続いて、正回転のトルクは、第1入力ギア51から第1出力ギア52、第2シャフト4の順で伝達され、最終的に駆動輪101へと伝達される。
【0078】
なお、第2クラッチ63は、第1シャフト3から第2入力ギア61、第2出力ギア62の順で伝達された正回転のトルクを、第2シャフト4へと伝達しない。また、第2クラッチ63は、第1ギアセット5を介して第2シャフト4へ伝達された正回転のトルクを、第2出力ギア62へと伝達しない。すなわち、第2ギアセット6は、電気モータ2が出力した正回転のトルクを、第1シャフト3から第2シャフト4と伝達しないし、第2シャフト4から第1シャフト3へも伝達しない。
【0079】
車両を後進させる場合、電気モータ2は、逆回転のトルクを出力する。この逆回転のトルクは、
図8の矢印で示すように第2ギアセット6を介して伝達される。詳細に説明すると、まず、電気モータ2が出力した逆回転のトルクは、第1シャフト3に伝達される。ここで、トルクコンバータ7は逆回転のトルクを増幅しないため、トルクコンバータ7のロックアップ装置をオン状態にする。第1シャフト3に伝達された逆回転のトルクは、第2入力ギア61、第2出力ギア62の順で伝達される。第2クラッチ63は、第2出力ギア62の逆回転のトルクを第2シャフト4へ伝達する。そして、逆回転のトルクは、第2シャフト4から駆動輪101へと伝達され、車両が後進する。
【0080】
なお、ワンウェイクラッチ53及び第1クラッチ54は、第1シャフト3の逆回転のトルクを第1入力ギア51へと伝達しない。また、第2シャフト4から第1出力ギア52を介して第1入力ギア51へ逆回転のトルクが伝達されるが、ワンウェイクラッチ53は、内輪531の方が外輪532よりも回転速度が速くなるため、逆回転のトルクを第1入力ギア51から第1シャフト3へと伝達しない。また、第1クラッチ54も、逆回転のトルクを第1入力ギア51から第1シャフト3へと伝達しない。すなわち、第1ギアセット5は、電気モータ2から出力された逆回転のトルクを、第1シャフト3から第2シャフト4へと伝達しないし、第2シャフト4から第1シャフト3へも伝達しない。
【0081】
車両を前進中に減速した場合、駆動輪101から正回転のトルクが第2シャフト4へと伝達される。この正回転のトルクは、
図9の矢印で示すように第1ギアセット5を介して伝達される。詳細に説明すると、第2シャフト4へと伝達された正回転のトルクは、第1出力ギア52、第1入力ギア51の順で伝達される。第1クラッチ54は、第1入力ギア51から第1シャフト3へと正回転のトルクを伝達する。そして、第1シャフト3からトルクコンバータ7のロックアップ装置などを介して電気モータ2へと伝達される。この結果、電気モータ2を発電機として作動させることができる。
【0082】
なお、第2クラッチ63は、第2シャフト4から第2出力ギア62へと正回転のトルクを伝達しない。また、第2クラッチ63は、第1シャフト3から第2入力ギア61、第2出力ギア62へと伝達された正回転のトルクを第2シャフト4へと伝達しない。すなわち、第2ギアセット6は、駆動輪101から出力された正回転のトルクを、第2シャフト4から第1シャフト3へ伝達しないし、第1シャフト3から第2シャフト4へも伝達しない。
【0083】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の各変形例は、基本的には同時に適用することができる。
【0084】
(a)上記実施形態では、トルク伝達機構10はトルクコンバータ7を有していたが、トルク伝達機構10はトルクコンバータ7を有していなくてもよい。
【0085】
(b)上記実施形態では、第1クラッチ機構50は第1シャフト3と第1入力ギア51との間に配置され、第2クラッチ機構60は、第2シャフト4と第2出力ギア62との間に配置されていたが、第1クラッチ機構50及び第2クラッチ機構60の配置はこれに限定されない。
【0086】
例えば、
図10に示すように、第1クラッチ機構50は、第2シャフト4と第1出力ギア52との間に配置されていてもよい。
【0087】
この場合、ワンウェイクラッチ53は、内輪531が第2シャフト4に取り付けられ、外輪532が第1出力ギア52に取り付けられる。そして、外輪532が内輪531に対して正回転すると、内輪531と外輪532との間でローラ533が噛み合う。その結果、ワンウェイクラッチ53は、第1出力ギア52から第2シャフト4へ正回転のトルクを伝達する。一方、外輪532が内輪531に対して逆回転すると、内輪531と外輪532との間でローラ533が空回りする。その結果、ワンウェイクラッチ53は、第1出力ギア52から第2シャフト4への逆回転のトルク伝達を遮断する。
【0088】
また、
図11に示すように、第1クラッチ54は、外輪542が入力回転部材となり、内輪541が出力回転部材となる。すなわちは、外輪542が電気モータ2側の部材に取り付けられ、内輪541が駆動輪101側の部材に取り付けられる。具体的には、外輪542が第1出力ギア52に取り付けられ、内輪541が第2シャフト4に取り付けられる。
【0089】
内輪541は、複数のカム面546を外周面に有している。カム面546は、径方向内側に凹むように構成されている。カム面546は、正回転方向に向かって径が小さくなっている。詳細には、カム面546は、正回転方向に向かって漸次的に径が小さくなっている。すなわち、カム面546と回転軸との距離が、正回転方向に向かって漸次的に小さくなっている。
【0090】
ローラ543は、非係合状態にあるとき、外輪542との間に隙間を有している。
【0091】
また、
図12に示すように、第2クラッチ機構60は、第1シャフト3と第2入力ギア61との間に配置されていてもよい。
【0092】
この場合、
図13に示すように、第2クラッチ63は、内輪631が入力回転部材となり、外輪632が出力回転部材となる。すなわちは、内輪631が電気モータ2側の部材に取り付けられ、外輪632が駆動輪101側の部材に取り付けられる。具体的には、内輪631が第1シャフト3に取り付けられ、外輪632が第2入力ギア61に取り付けられる。
【0093】
内輪631は、複数のカム面636を外周面に有している。カム面636は、径方向内側に凹むように構成されている。カム面636は、逆回転方向に向かって径が小さくなっている。詳細には、カム面636は、逆回転方向に向かって漸次的に径が小さくなっている。すなわち、カム面636と回転軸との距離が、逆回転方向に向かって漸次的に小さくなっている。
【0094】
ローラ633は、非係合状態にあるとき、外輪632との間に隙間を有している。
【0095】
また、
図14に示すように、第1クラッチ機構50が、第2シャフト4と第1出力ギア52との間に配置され、第2クラッチ機構60が第1シャフト3と第2入力ギア61との間に配置されていてもよい。この場合、ワンウェイクラッチ53、第1クラッチ54、及び第2クラッチ63は、例えば、この変形例で説明したような構成とする。
【符号の説明】
【0096】
1 :第1シャフト
2 :電気モータ
3 :第1シャフト
4 :第2シャフト
5 :第1ギアセット
6 :第2ギアセット
7 :トルクコンバータ
10 :トルク伝達機構
50 :第1クラッチ機構
51 :第1入力ギア
52 :第1出力ギア
53 :ワンウェイクラッチ
54 :第1クラッチ
541 :内輪
542 :外輪
543 :ローラ
544 :コイルばね
545 :保持部材
60 :第2クラッチ機構
61 :第2入力ギア
62 :第2出力ギア
63 :第2クラッチ
631 :内輪
632 :外輪
633 :ローラ
634 :コイルばね
635 :保持部材
100 :駆動ユニット
101 :駆動輪