(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039281
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】電源装置及び電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20240314BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240314BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
H02J9/06 120
H02J7/34 G
H02J7/00 301B
H02J7/00 302C
H02J7/00 303C
H02J7/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143716
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000164438
【氏名又は名称】九州電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】倉山 功治
(72)【発明者】
【氏名】古屋鋪 悟
(72)【発明者】
【氏名】城崎 竜司
【テーマコード(参考)】
5G015
5G503
【Fターム(参考)】
5G015GA07
5G015JA21
5G015JA56
5G015KA08
5G503AA01
5G503AA04
5G503BB05
5G503DA04
5G503DA05
5G503DA13
(57)【要約】
【課題】予備バッテリの充電・交換時においてメインバッテリによる電源装置の稼働を確実に維持することができると共に、予備バッテリと接続するケーブルが抜けた場合であっても安全性を高く保つことを可能とする電源装置及び電源システムを提供する。
【解決手段】電源装置1は、充放電可能なメインバッテリ2と、直流電流を交流電流に変換して負荷に供給するインバータ4と、電源装置1全体を管理・制御するCPU7と、外部の予備バッテリ10と負荷とを電気的に接続するための予備接続回路5と、負荷がメインバッテリ2に接続するか予備バッテリ10に接続するかを切り替える切替スイッチ6とを備え、予備接続回路5が、1つの予備バッテリ10との接続に対して、並列する第1配線51a及び第2配線52aの2つの配線、及びそれぞれの配線に対応する第1接続口51c及び第2接続口52cを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能なメインバッテリと、
直流電流を交流電流に変換して負荷に供給するインバータと、
電源装置全体を管理・制御する制御部と、
外部の予備バッテリと前記負荷とを電気的に接続するための接続回路と、
前記負荷がメインバッテリに接続するか予備バッテリに接続するかを切り替える切替スイッチとを備え、
前記接続回路が、1つの予備バッテリとの接続に対して、並列する第1配線及び第2配線の2つの配線、及びそれぞれの配線に対応する第1接続口及び第2接続口を有することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置において、
前記第1配線に対応し、前記制御部と前記予備バッテリのBMSとの間で通信を行う第1通信線と、
前記第2配線に対応し、前記制御部と前記予備バッテリのBMSとの間で通信を行う第2通信線とを備え、
前記制御部、前記第1通信線、前記第2通信線、及び前記予備バッテリのBMSでループ状に通信網が形成されていることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電源装置において、
前記制御部が、ループ状に形成された前記通信網のいずれかの箇所において通信が切断されて開放状態が検知された場合に、電源装置の稼働を停止する処理を行うことを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の電源装置において、
前記切替スイッチにより前記負荷が前記予備バッテリに接続されている場合に、前記メインバッテリに他の予備バッテリから充電を行う充電器を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の電源装置において、
前記切替スイッチにより前記負荷が前記予備バッテリに接続されている場合に、前記制御部が、前記予備バッテリの電池残量と前記負荷の消費電力に基づいて、前記予備バッテリから前記メインバッテリへの充電を行うかどうかを判断することを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれかに記載の電源装置において、
当該電源装置の筐体表面に配設され、前記第1接続口、前記第2接続口、及び前記切替スイッチを切り替えるためのブレーカーとを有する操作部と、
前記操作部に対して開閉可能な状態で設置されるカバーと、
前記カバーが閉じられていることを検知する検知センサとを備え、
前記制御部が、前記第1接続口及び前記第2接続口にケーブルが接続され、且つ前記ブレーカーがONの状態で前記カバーが閉じられている場合に、前記負荷に対して前記予備バッテリから電力を供給するように制御することを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項2又は3に記載の電源装置と前記予備バッテリとが接続された電源システムであって、
前記第1接続口と前記予備バッテリとが電線及び通信線を有する第1複合ケーブルで接続され、前記第2接続口と前記予備バッテリとが電線及び通信線を有する第2複合ケーブルで接続されることを特徴とする電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の予備バッテリと接続して負荷に電力を供給する電源装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1にリチウムイオン電池を用いた電源装置が開示されている。このような電源装置は、ポータブル電源として一般家庭などにも普及し始めており、特に災害時などにおいては非常に重要なエネルギー源となる。
【0003】
一方で、災害時においては、上記のような電源装置に対して充電を行うための商用電源が長期に亘って停止する場合がある。すなわち、電源装置に充電されていた電力を消費した後は、当該電源装置を商用電源が稼働している場所まで運んで充電を行う必要があり、その間被災地においては電力がない状態で生活しなければならない。特に普段から医療機器などを装着して生活している人にとっては命に係わる問題となる。
【0004】
このような問題を解決するために、電源装置を商用電源が使える場所まで運ぶのではなく当該電源装置に充電済みの予備バッテリを外部から接続することが考えられる。この場合、例えば
図6に示すようにダイオードを介して予備バッテリを接続することで、メインバッテリと予備バッテリとの間の電流の流れ込みを防止し、負荷に対してメインバッテリ及び予備バッテリの双方から電力を供給することが可能となる。
【0005】
また、非常用のバッテリとしては、例えば特許文献2に示すような充電器が知られている。このような充電器は、モバイルバッテリとして広く普及しており、スマートフォンなどのモバイル端末が元々備えているメインバッテリの電池残量がなくなった場合に、このようなモバイルバッテリをモバイル端末に接続することで継続して使用することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5352014号公報
【特許文献2】特開2011-41351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、
図6に示すような回路構成の場合、メインバッテリと予備バッテリとで電圧が高い方から電力が使用され、いずれ同電位となり、その状態で次第に双方のバッテリの電圧が低下していく。そして最終的にはメインバッテリも予備バッテリも充電が必要なレベルまで低電位となってしまうため、予備バッテリを充電する間(又は充電済みの予備バッテリに交換する間)は電源装置を稼働することができなくなってしまう。
【0008】
また、特に災害時における避難所で使用するような場合、いつも以上に雑然とした中で不特定多数の避難者が使用するため、誤ってケーブルを外してしまったり、アクシデントで電源装置と予備バッテリとのケーブルが外れるといった状況が考えられる。
図6のような構成において予備バッテリから負荷に対して電力を供給しているときに突然ケーブルが外れてしまうと、予備バッテリが完全に切り離されてしまうためアークなどが発生して非常に危険である。そのため、予備バッテリを接続するにあたって安全性を確保する技術も望まれている。
【0009】
特許文献2に示す技術は、モバイルバッテリとして非常時に使用することができるが、そもそも通電する電流値がミリアンペアレベルであるため上記のような危険性は非常に小さい。また、モバイルバッテリで動作させる対象は主にスマートフォンやノートパソコンなどのモバイル端末であり、医療機器や日用家電など緊急性を要するものではないため、メインバッテリの残量が低下しても命に係わるような問題が生じる可能性は極めて少ない。
【0010】
本発明は、予備バッテリの充電・交換時においてメインバッテリによる電源装置の稼働を確実に維持することができると共に、予備バッテリと接続するケーブルが抜けた場合であっても安全性を高く保つことを可能とする電源装置及び電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電源装置は、充放電可能なメインバッテリと、直流電流を交流電流に変換して負荷に供給するインバータと、電源装置全体を管理・制御する制御部と、外部の予備バッテリと前記負荷とを電気的に接続するための接続回路と、前記負荷がメインバッテリに接続するか予備バッテリに接続するかを切り替える切替スイッチとを備え、前記接続回路が、1つの予備バッテリとの接続に対して、並列する第1配線及び第2配線の2つの配線、及びそれぞれの配線に対応する第1接続口及び第2接続口を有するものである。
【0012】
このように、本発明に係る電源装置は、充放電可能なメインバッテリと、直流電流を交流電流に変換して負荷に供給するインバータと、電源装置全体を管理・制御する制御部と、外部の予備バッテリと前記負荷とを電気的に接続するための接続回路と、前記負荷がメインバッテリに接続するか予備バッテリに接続するかを切り替える切替スイッチとを備え、前記接続回路が、1つの予備バッテリとの接続に対して、並列する第1配線及び第2配線の2つの配線、及びそれぞれの配線に対応する第1接続口及び第2接続口を有するため、予備バッテリが接続された場合には、メインバッテリの電池残量を消費することなく予備バッテリの電池残量だけで電源装置を稼働することとなり、メインバッテリの電力消費が抑制されて、電池残量を所定のレベルで維持することが可能となる。すなわち、予備バッテリの充電や交換が必要になった場合であっても、その間は電源装置をメインバッテリで稼働することができるため、電源装置を停止することなく常に電力供給を行うことができるという効果を奏する。
【0013】
また、予備バッテリと負荷とを接続する配線が並列する2つの配線であるため、仮に一方の配線がアクシデントで切断された場合であっても、他方の配線に電流が流れることでアークの発生を抑制し、安全性を確保することができるという効果を奏する。特に災害時の避難所などで使用する場合には、日常とは違う状況であるため事故やアクシデントが起こりやすく、特に安全性の確保が重要であるが、本発明の構成であればそのような状況においても安全に電源を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る電源装置を用いた電源システムのシステム構成図である。
【
図2】第1の実施形態に係る電源装置及び当該電源装置を用いた電源システムの構成を示す回路ブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る電源装置及び当該電源装置を用いた電源システムの構成を示す他の回路ブロック図である。
【
図4】第2の実施形態に係る電源装置及び当該電源装置を用いた電源システムの構成を示す回路ブロック図である。
【
図5】第3の実施形態に係る電源装置の操作パネルの外観図である。
【
図6】予備バッテリを接続した場合の回路構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る電源装置について、
図1ないし
図3を用いて説明する。本実施形態に係る電源装置は、容量が100Wh~100kWh程度で100W~100kW程度の電力を供給可能とするものであり、メインバッテリとしてのリチウムイオン電池を備えつつ、外付けで予備のリチウムイオン電池パックと接続可能にしたものである。
【0016】
図1は、本実施形態に係る電源装置を用いた電源システムのシステム構成図である。電源システム100は、リチウムイオン電池から負荷に対して電力を供給したりリチウムイオン電池に外部から電力を蓄電する電源装置1と、可搬性が良く電源装置1に外部から接続可能なリチウムイオン電池からなる予備バッテリ10と、電源装置1及び予備バッテリ10の間を並列に接続する2本の第1ケーブル11及び第2ケーブル12とを備える。
【0017】
電源装置1は、後述するように、内部に有するメインバッテリを用いて単体で運用することが可能であるが、非常時などにおいては予備バッテリ10を接続して電源システム100が構築されることで、より長く安定して電力を供給することが可能となっている。すなわち電源装置1は、商用電源からの充電が可能な通常運用においては、負荷の近くに配置した状態で充放電を行いながら運用することが可能であるが、災害などにより商用電源が使用できない状況になると商用電源が使用できる場所に移動して充電する必要があり、その間負荷に対して電力を供給できなくなってしまう。特に普段から医療機器を装着して生活している人や、ケガや病気の治療に医療機器が必要である人などにとっては、電力が供給されないことは命に係わる問題である。そのため、本実施形態に係る電源装置1においては、可搬性が良い予備バッテリ10を接続することで、このような問題を解決し、長く安定した電力供給を実現可能としている。
【0018】
図2は、本実施形態に係る電源装置及び当該電源装置を用いた電源システムの構成を示す回路ブロック図である。電源装置1は、充放電可能なリチウムイオン電池からなるメインバッテリ2と、当該メインバッテリ2を充電するための充電器3と、接続される負荷に対して供給する電流を直流電流から交流電流に変換するインバータ4と、外部から接続される予備バッテリ10及び負荷を電気的に接続する予備接続回路5と、負荷がメインバッテリ2に接続するか予備バッテリ10に接続するかを切り替える切替スイッチ6と、電源装置1及び電源システム100の全体を監視・制御するCPU7と、CPU7の制御により負荷と各バッテリ(メインバッテリ2又は予備バッテリ10)との接続のON/OFFを切り替えるメインスイッチ8とを備える。
【0019】
予備接続回路5は、予備バッテリ10をインバータ4を介して負荷に電気的に接続するための第1配線51aと、予備バッテリ10からの信号をCPU7に伝送するための第1通信線51bと、予備バッテリ10に接続する第1ケーブル11のコネクタである第1接続口51cとを備える。第1ケーブル11は、電線と通信線とが1本の線で複合された複合ケーブルであり、第1接続口51cに接続することで第1配線51a及び第1通信線51bに同時に接続することが可能となっている。
【0020】
また、予備接続回路5は、第1配線51aに並列に配設され、予備バッテリ10をインバータ4を介して負荷に電気的に接続するための第2配線52aと、予備バッテリ10からの信号をCPU7に伝送するための第2通信線52bと、予備バッテリ10に接続する第2ケーブル12のコネクタである第2接続口52cとを備える。第2ケーブル12は、第1ケーブル11と同様に電線と通信線とが1本の線で複合された複合ケーブルであり、第2接続口52cに接続することで第2配線52a及び第2通信線52bに同時に接続することが可能となっている。
【0021】
メインバッテリ2は、電源装置1に内蔵されているメインとなるバッテリであり、負荷に対して電力を供給するために放電を行ったり、電池残量が減った場合には外部の電源から充電を行って電力を貯める充放電可能なリチウムイオンバッテリである。
【0022】
充電器3は、商用電源からの電力、又は予備バッテリからの電力をメインバッテリ2に充電するための充電器であり、商用電源からの充電の場合は交流を直流に変換して充電し、予備バッテリからの充電の場合は直流のまま充電を行う。
【0023】
インバータ4は、メインバッテリ2から供給される直流電流、又は予備バッテリ10から供給される直流電流を交流電流に変換して負荷に供給する。
【0024】
予備接続回路5は、外部の予備バッテリ10と電源装置1を接続するための回路であり、上述したように、並列する2本の第1ケーブル11及び第2ケーブル12がそれぞれ第1接続口51c及び第2接続口52cに接続される。
【0025】
切替スイッチ6は、負荷の接続先をメインバッテリ2又は予備バッテリ10のいずれかに切り替えるスイッチであり、第2の実施形態において後述する操作パネルのブレーカーで切り替えが行われる。
【0026】
CPU7は、電源装置1や電源システム100の監視・制御を行うものであり、例えばスタートボタン13が押下されたことを検知してメインスイッチ8をONにしたり、メインバッテリ2の充放電状態、電池残量、セルバランス、使用状態(電流、電圧)、温度等の情報を受信しながら監視を行う。また、予備バッテリ10が予備接続回路5に接続されている場合は、予備バッテリ10のBMS(Battery Management System)から送信される情報(予備バッテリ10の充放電状態、電池残量、セルバランス、使用状態(電流、電圧)、温度等の情報)を第1通信線51b及び第2通信線52bを介して並列に送受信し、予備バッテリ10の状態を監視する。このとき、予備バッテリ10のBMSから送信された情報は、第1ケーブル11の通信線、及び第1接続口51cを介してCPU7に送信されると共に、CPU7から第2接続口52c、及び第2ケーブル12の通信線を介して予備バッテリ10のBMSに送受信される。すなわち、予備バッテリ10の情報が、ループ状に形成された通信網を常時流れている状態となる。
【0027】
上記のような構成である電源装置1は、通常運用(例えば、災害などが発生しておらず商用電源が使用可能である状態での運用)においては、例えば外部の商用電源からの電力を充電器3でメインバッテリ2に充電し、メインバッテリ2に貯まった電力を負荷に供給するように稼働する。第1接続口51cや第2接続口52cには何も接続されておらず、メインバッテリ2のみで運用がなされる。すなわち、通常運用においては、切替スイッチ6はメインバッテリ2側に接続された状態になる。
【0028】
一方で予備運用(例えば、災害などが発生したことで商用電源が使用できず外部の予備バッテリを使用する状態での運用)においては、第1接続口51cに予備バッテリ10の第1ケーブル11が接続されると共に、第2接続口52cに予備バッテリ10の第2ケーブル12が接続される。このとき、切替スイッチ6は予備接続回路5側に接続された状態となり、予備バッテリ10の電力のみが負荷に供給される運用がなされ、メインバッテリ2の電池残量は現状維持の状態となる。
【0029】
上述したように、災害などが発生して商用電源が使用できない状態の場合、メインバッテリ2を充電することができないが、被災地以外の地域や商用電源が使用できる地域から充電された予備バッテリ10の供給を受けることは可能である。このとき、メインバッテリ2の電池残量が残ってないと、予備バッテリ10を取り換える間や予備バッテリ10を充電する間(例えば、予備バッテリ10を商用電源が使用可能な地域に運搬し、そこで充電を行い、充電が完了したものを再び被災地に運搬する間)は、電源装置1を稼働することができない。つまり、予備運用の状態においては、メインバッテリ2の電力消費を抑えて予備バッテリ10の電力を優先して使用し、予備バッテリ10を取り換える間や充電する間をメインバッテリ2の電力で補うのが理想的となる。
【0030】
電源装置1においては、切替スイッチ6により負荷がメインバッテリ2に接続するか予備バッテリ10に接続するかのいずれかの回路となっているため、予備バッテリ10の電池残量がある間は予備バッテリ10に接続し、予備バッテリ10の電池残量がなくなって取り換えを行う間や充電を行う間はメインバッテリ2に接続を切り替えることで、メインバッテリ2の電力消費を最小限に抑えて電源装置1を常時稼働できる状態に維持することができる。
【0031】
予備バッテリ10との接続は、第1ケーブル11と第2ケーブル12との2本のケーブルが使用される。第1配線51a及び第1ケーブル11が第1接続口51cで接続された第1接続と、第2配線52a及び第2ケーブル12が第2接続口52cで接続された第2接続とは、それぞれ同じ仕様となっており、予備バッテリ10からの電力は、第1接続と第2接続とでほぼ均等に供給される。仮に一方のケーブルが抜けたり、不具合が生じた場合であっても、他方のケーブルは電気的に接続された状態となっているため、アークなどが発生することがなく安全に使用することが可能となっている。特に、避難所などの雑然とした中で不特定多数の人が電源装置1を使用する場合には、ケーブルが外されたり引っ掛かって抜けてしまうなどの事故やアクシデントが想定されるため、接続経路を第1接続と第2接続との2つに分散することでアークなどの発生を抑制することは安全性の面で特に効果的である。
【0032】
また、このような事故やアクシデントでいずれかのケーブルが抜けたような場合は、安全性を最優先にして瞬時に電源装置1の稼働を停止することが望ましい。そのためには、第1ケーブル11が第1接続口51cから外れたこと、又は第2ケーブル12が第2接続口52cから外れたことなどの異常をCPU7が検出し、メインスイッチ8をOFFにする動作を行う必要がある。本実施形態においては、予備バッテリ10のBMSからの情報が第1通信線51bや第2通信線52bを介したループの通信網によりCPU7と常時送受信されているため、第1ケーブル11や第2ケーブル12が抜けたり、何か異常が生じた場合には通信が途切れることで、CPU7が瞬時に異常を検出することが可能となる。仮に単一のケーブルで予備バッテリ10に接続した場合は、当該ケーブルが抜けた瞬間にアークなどが発生し危険である。本実施形態のように2系統のケーブルで接続することで、一方のケーブルで異常が発生した場合でも、他方が接続状態であるためアークなどの発生を抑えることができ、且つ、CPU7が瞬時に異常を検出することで、接続中の他方の系統についても安全に運用停止するよう制御することが可能になる。
【0033】
なお、本実施形態に係る電源装置1においては、予備バッテリ10から負荷に対して電力を供給している間にメインバッテリ2を充電することも可能である。上記にように本実施形態においては、メインバッテリ2の電力消費を最小限に抑えるとは言え、商用電源の復旧が遅れたり使用できない期間が長期化した場合は、メインバッテリ2の電池残量も次第に低下することが考えられる。そのような場合に、
図3に示すようなシステム構成とすることで、負荷への電力供給を予備バッテリ10で行いつつ、メインバッテリ2を他の予備バッテリ10aで充電することが可能となる。
【0034】
図3において、切替スイッチ6は予備接続回路5側に接続されている。メインバッテリ2に充電を行う充電器3は、DC/ACコンバータ14を介して他の予備バッテリ10aに接続されている。すなわち、DC/ACコンバータ14を介することで通常運用の際に商用電源からメインバッテリ2に充電する場合と同様の仕組みで、他の予備バッテリ10aからメインバッテリ2に充電することができる。こうすることで、商用電源が使用できない状態でメインバッテリ2の電池残量が低下した場合であっても、負荷への電力供給を継続しつつ、メインバッテリ2を充電して安定した運用を行うことが可能になる。
【0035】
このように、本実施形態に係る電源装置1においては、充放電可能なメインバッテリ2と、直流電流を交流電流に変換して負荷に供給するインバータ4と、電源装置1全体を管理・制御するCPU7と、外部の予備バッテリ10と負荷とを電気的に接続するための予備接続回路5と、負荷がメインバッテリ2に接続するか予備バッテリ10に接続するかを切り替える切替スイッチ6とを備え、予備接続回路5が、1つの予備バッテリ10との接続に対して、並列する第1配線51a及び第2配線52aの2つの配線、及びそれぞれの配線に対応する第1接続口51c及び第2接続口52cを有するため、予備バッテリ10が接続された場合には、メインバッテリ2の電池残量を消費することなく予備バッテリ10の電池残量だけで電源装置1を稼働することとなり、メインバッテリ2の電力消費が抑制されて、電池残量を所定のレベルで維持することが可能となる。すなわち、予備バッテリ10の充電や交換が必要になった場合であっても、その間は電源装置1をメインバッテリ2で稼働することができるため、電源装置1を停止することなく常に電力供給を行うことができる。
【0036】
また、予備バッテリ10と負荷とを接続する配線が並列する2つの配線であるため、仮に一方の配線がアクシデントで切断された場合であっても、他方の配線に電流が流れることでアークの発生を抑制し、安全性を確保することができる。特に災害時の避難所などで使用する場合には、日常とは違う状況であるため事故やアクシデントが起こりやすく、特に安全性の確保が重要であるが、本発明の構成であればそのような状況においても安全に電源を確保することが可能となる。
【0037】
さらに、第1配線51aに対応し、CPU7と予備バッテリのBMSとの間で通信を行う第1通信線51bと、第2配線52aに対応し、CPU7と予備バッテリのBMSとの間で通信を行う第2通信線52bとを備え、CPU7、第1通信線51b、第2通信線52b、及び予備バッテリのBMSでループ状に通信網が形成されているため、このループ状の通信網の途中のいずれかの箇所で異常が生じて通信が切断された場合には、CPU7が瞬時に当該異常を検知してメインスイッチ8をOFFにすることができ、高い安全性を確保することができる。
【0038】
さらにまた、切替スイッチ6により負荷が予備バッテリ10に接続されている場合に、メインバッテリ2に他の予備バッテリ10aから充電を行う充電器3を備えるため、メインバッテリ2の電池残量が減った場合であっても、予備バッテリ10で負荷への電力供給を維持しつつ、メインバッテリ2の電池残量を増やすことができる。
【0039】
なお、本実施形態においては、第1ケーブル11及び第2ケーブル12を電線及び通信線が複合された複合ケーブルとして説明したが、それぞれのケーブルはこれに限定されるものではなく、電線と通信線とを対応付けした別々のケーブルであってもよい。すなわち、第1接続口51cは、第1配線51aに接続するための電線コネクタと第1通信線51bに接続するための信号コネクタとを有しており、第2接続口52cは、第2配線52aに接続するための電線コネクタと第2通信線52bに接続するための信号コネクタとを有する構造であってもよい。
【0040】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る電源装置について、
図4を用いて説明する。本実施形態に係る電源装置は、外部の予備バッテリ10から負荷に対して電力を供給するのと同時にメインバッテリ2への充電も行えるものである。なお、本実施形態において前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0041】
図4は、第2の実施形態に係る電源装置及び当該電源装置を用いた電源システムの構成を示す回路ブロック図である。
図4において
図2の構成と異なるのは、インバータ4の出力電流を計測するCT60と、予備バッテリ10とメインバッテリ2との接続のON/OFFを切り替える補助充電スイッチ61とを備え、インバータ4の出力ケーブルが補助充電スイッチ61を介してメインバッテリ2に接続されていることである。
【0042】
CPU7は、CT60で計測される測定値とメインバッテリ2のBMUから得られる電池情報と予備バッテリ10のBMUから得られる電池情報とに基づいて、補助充電スイッチ61のON/OFFを制御する。具体的には予備バッテリ10から負荷に対して電力供給がなされている状況において、予備バッテリ10の電池残量に対して負荷への電力供給が十分されていると判断される場合には、補助充電スイッチ61をONにすることで予備バッテリ10からメインバッテリ2への充電も行う。こうすることで、予備バッテリ10の電力を効率良く使用することができると共に、メインバッテリ2の電池残量を増やすことができる。
【0043】
なお、特に災害時などにおいては、上記で説明したように、負荷への電力供給を最優先としつつメインバッテリ2の電池残量を出来るだけ維持することが重要であるが、場合によってはメインバッテリ2の電池残量維持を最優先としたいケースがある。例えば、メインバッテリ2の電池残量が極めて少なくなっており、予備バッテリ10の交換に時間を要するような場合は、メインバッテリ2の電池残量を増やすことを最優先にする必要がある。このようなケースを想定して、スタートボタン13に負荷切替用スイッチを備える構成としてもよい。
【0044】
この負荷切替用スイッチは、例えば緊急モードと通常モードを切り替えることが可能であり、通常モードにおいてはどのような負荷に対しても予備バッテリ10から電力が供給されるが、緊急モードにおいては予め登録されている重要機器(例えば医療機器のように停止すると命に関わるような重要機器)に対してのみ予備バッテリ10の電力が供給され、その他の負荷(例えば緊急性がないスマートフォンなど)には電力供給が行われない。より具体的には、緊急用コンセントと通常用コンセントがあり、負荷切替用スイッチが通常モードにセットされている場合はどちらのコンセントに接続した場合であっても負荷に対して電力が供給されるが、負荷切替用スイッチが緊急モードにセットされている場合は緊急用コンセントに接続された負荷にしか電力が供給されない。緊急モードにおいては余剰分の電力がメインバッテリ2の充電に使用される。これらのスイッチの切り替えはCPU7の制御により行われる。
【0045】
このように、本実施形態に係る電源装置においては、予備バッテリ10の電力をメインバッテリ2にも充電することが可能になると共に、負荷の優先度に応じて予備バッテリ10の電力を効率よく且つ適正に利用することが可能となる。
【0046】
(本発明の第3の実施形態)
本実施形態に係る電源装置について、
図5を用いて説明する。以下の本実施形態においては、電源システム100の運用をより安全に行うための操作パネルや操作方法について具体的に説明する。なお、本実施形態において前記各実施形態と重複する説明は省略する。
【0047】
図5は、本実施形態に係る電源装置の操作パネルの外観図である。操作パネル20は電源装置1の外側側面に配設されており、第1ケーブル11を接続するための第1接続口51c(2本の電線(正極,負極)と2本の通信線とアース線の接続コネクタ)と、第2ケーブル12を接続するための第2接続口52c(2本の電線(正極,負極)と2本の通信線とアース線の接続コネクタ)と、切替スイッチ6の接続を切り替えるブレーカー21とを有する。また、接続された第1ケーブル11や第2ケーブル12を引き出すための切欠き部22を有し、操作パネル20全体を被覆するカバー23が設置されている。このカバー23は開閉式になっており、ロック機構24により簡単に開くことができない構造となっている。
【0048】
また、操作パネル20とカバー23には開閉センサ25を備えており、カバー23が閉じているかどうかの情報が開閉センサ25からCPU7に送信される。CPU7は、第1通信線51b及び第2通信線52bが接続状態(予備バッテリ10の情報がループ状に送受信されている状態)であり、且つブレーカー21により切替スイッチ6が予備接続回路5側に接続されており、且つ開閉センサ25が閉じている状態である場合にスタートボタン13が押下されると、メインスイッチ8をONにして予備バッテリ10と負荷とを電気的に接続する。1つでも条件を満たさない場合は、いくらスタートボタン13を押下してもメインスイッチ8がONにならず稼働することができない。すなわち、安全性が十分に確保されていない状態では稼働することができない。
【0049】
なお、上記稼働条件は予備運用の場合のものであり、通常運用の場合は一般的に行われているメインバッテリ2の状態などの情報に基づいて、CPU7がメインスイッチ8をONにして稼働する。通常運用での起動であるか予備運用での起動であるかは、ブレーカー21の状態(例えば、ブレーカー21がON(切替スイッチ6が予備接続回路5に接続している状態)であれば予備運用、OFF(切替スイッチ6がメインバッテリ2に接続している状態)であれば通常運用)で判定するのが最もシンプルであるが、これ以外にも予備バッテリ10からの情報がCPU7に正常に送信されているかどうかも判断材料にするのが望ましい。
【0050】
このように、本実施形態に係る電源装置1においては、電源装置1の筐体表面に配設される操作パネル20と、当該操作パネル20に対して開閉可能な状態で設置されるカバー23と、カバー23が閉じられていることを検知する開閉センサ25とを備え、CPU7が、第1接続口51c及び第2接続口52cに第1ケーブル11及び第2ケーブル12がそれぞれ接続され、且つブレーカー21がONの状態でカバー23が閉じられている場合に、負荷に対して予備バッテリ10から電力を供給するように制御するため、安全性を極めて高く確保することができる。
【0051】
(本発明のその他の実施形態)
以下、その他の実施形態について説明する。上記各実施形態においては、第1ケーブル11及び/又は第2ケーブル12が外されたり抜けたりした場合に、CPU7がそれを瞬時に検知し、安全性を最優先にしてメインスイッチ8を開放する。また、それぞれのケーブル自体は物理的にコネクタに繋がったままでも、ケーブル内の電線や通信線に異常が生じたことで通信が途切れてCPU7がメインスイッチ8を開放する場合もある。
【0052】
前者の場合は、外れたケーブルを差し込んで再起動することで、以前と同様の運用が可能となる。後者の場合は、再起動を行ってもケーブルを取り換えない限り以前と同様の運用は困難である。しかしながら、ループ状に形成された通信網での運用は困難であっても、シリアル通信で一方のケーブルのみを使用して運用を維持することは可能である。
【0053】
本実施形態においては、通常運用、予備運用のモードに加えて、非常運用モードを有する構成となる。第1ケーブル11又は第2ケーブル12に異常が生じている場合(電気的な接続や通信接続が不可能になっている場合)に、非常運用モードボタン(図示しない)を押下して起動することを可能とする。上述したような医療機器などに電力を供給している場合は、安全性と同じぐらい運用維持が重要である。すなわち、一方のケーブルのみで予備バッテリ10と接続可能で、且つ極めて緊急事態であると判断される場合は、非常運用モードにて運用を再開する。
【0054】
非常運用モードでは、予備バッテリ10と電源装置1が単線で接続されているため、接続が切れた瞬間を瞬時にCPU7が判断し、メインスイッチ8をOFFにするといった上記第1及び第2の実施形態のような極めて高い安全性を保つのが難しくなるものの、負荷への電力供給は継続することが可能である。非常運用モードボタンによる起動は、少なくとも予備バッテリ10と通信ができる状態で、且つブレーカー21がON(切替スイッチ6が予備接続回路5に接続している状態)である場合にCPU7がメインスイッチ8をONにすることで実行される。
【0055】
このように、本実施形態に係る電源装置においては、第1ケーブル11又は第2ケーブル12の一方に異常が生じて使用できなくなった場合であっても、単線で電源装置1と予備バッテリ10とを接続することで負荷への電力供給を継続することが可能となる。ただし、この運用はあくまで緊急時のものであり、代替のケーブルが供給されるまでの一時的な使用であることをルール付けするのが望ましい。
【符号の説明】
【0056】
1 電源装置
2 メインバッテリ
3 充電器
4 インバータ
5 予備接続回路
6 切替スイッチ
7 CPU
8 メインスイッチ
10 予備バッテリ
10a 他の予備バッテリ
11 第1ケーブル
12 第2ケーブル
13 スタートボタン
14 DC/ACコンバータ
20 操作パネル
21 ブレーカー
22 切欠き部
23 カバー
24 ロック機構
25 開閉センサ
51a 第1配線
51b 第1通信線
51c 第1接続口
52a 第2配線
52b 第2通信線
52c 第2接続口
60 CT
61 補助充電スイッチ
100 電源システム