(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039286
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】衝突形態判別装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/0136 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
B60R21/0136 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143728
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】井上 真哉
(57)【要約】
【課題】車両の衝突形態を適切に判別可能な衝突形態判別装置を提供する。
【解決手段】車室10及び左右一対のフレーム20を有する車両1に設けられる衝突形態判別装置100を、左右のフレームにそれぞれ設けられ横加速度Gyl.Gyrを検出するフレーム横加速度センサ110と、車室に設けられ前後加速度Gxcを検出する車室加速度センサ120と、フレーム横加速度センサ及び車室加速度センサの出力に基づいて車両の衝突形態を判別する衝突形態判別部130とを備え、衝突形態判別部は、左右のフレーム横加速度センサが同方向かつ所定以上の横加速度を検出しかつ車室加速度センサが検出した加速度又は該前後加速度の積分値が所定のオブリーク衝突判別値以上である場合に、衝突形態がオブリーク衝突であると判別する構成とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室及び前記車室の前端部から車両前方に突出した左右一対のフレームを有する車両に設けられる衝突形態判別装置であって、
左右の前記フレームにそれぞれ設けられ横加速度を検出するフレーム横加速度センサと、
前記車室に設けられ前後加速度を検出する車室加速度センサと、
前記フレーム横加速度センサ及び前記車室加速度センサの出力に基づいて車両の衝突形態を判別する衝突形態判別部とを備え、
前記衝突形態判別部は、左右の前記フレーム横加速度センサが同方向かつ所定以上の横加速度を検出しかつ前記車室加速度センサが検出した前後加速度又は該前後加速度の積分値が所定のオブリーク衝突判別値以上である場合に、前記衝突形態がオブリーク衝突であると判別すること
を特徴とする衝突形態判別装置。
【請求項2】
前記衝突形態判別部は、左右の前記フレーム横加速度センサが同方向かつ所定以上の横加速度を検出しかつ前記車室加速度センサが検出した前後加速度又は該前後加速度の積分値が所定のスモールオーバラップオフセット衝突判別値未満である場合に、前記衝突形態がスモールオーバラップオフセット衝突であると判別すること
を特徴とする請求項1に記載の衝突形態判別装置。
【請求項3】
車室及び前記車室の前端部から車両前方に突出した左右一対のフレームを有する車両に設けられる衝突形態判別装置であって、
左右の前記フレームにそれぞれ設けられ横加速度を検出するフレーム横加速度センサと、
前記車室に設けられ前後加速度を検出する車室加速度センサと、
前記フレーム横加速度センサ及び前記車室加速度センサの出力に基づいて車両の衝突形態を判別する衝突形態判別部とを備え、
前記衝突形態判別部は、左右の前記フレーム横加速度センサが同方向かつ所定以上の横加速度を検出しかつ前記車室加速度センサが検出した前後加速度又は該前後加速度の積分値が所定のスモールオーバラップオフセット衝突判別値未満である場合に、前記衝突形態がスモールオーバラップオフセット衝突であると判別すること
を特徴とする衝突形態判別装置。
【請求項4】
前記衝突形態判別部は、左右の前記フレーム横加速度センサが逆方向かつ車幅方向外側の横加速度を検出した場合に、前記衝突形態がフルラップ衝突であると判別すること
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の衝突形態判別装置。
【請求項5】
左右の前記フレームにそれぞれ設けられ前後加速度を検出するフレーム前後加速度センサを備え、
前記衝突形態判別部は、左右の前記フレーム前後加速度センサがそれぞれ検出した前後加速度の偏差が所定以上である場合に、前記衝突形態がオフセット衝突であると判別すること
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の衝突形態判別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の衝突形態を判別する衝突形態判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両における衝突検知等に関する技術として、例えば特許文献1には、車両の衝突形態が正突であるか否かを的確に判別するため、正突である場合には、フロアセンサにより検出される減速度の時間積分値の時刻に対する軌跡を正規化すると2次曲線に精度よく近似され、対称衝突ではあるが正突以外の場合には、同様に正規化された軌跡は2次曲線から大きく外れることを用いて、衝突形態を判別することが記載されている。
特許文献2には、衝突形態をより精度良く判別するため、乗員保護装置の起動制御装置は、左右フロントセンサと、起動制御部とを備え、左右フロントセンサの車両幅方向の移移動量により定まる点が衝突形態毎に予め定められた領域の何れに属しているかを判定することにより衝突形態を特定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-247001号公報
【特許文献2】特開2017-144747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばエアバッグ装置などの乗員保護装置の制御をより適切に制御するため、衝突のセンシング能力を向上することが要望されている。
衝突のセンシングが難しいのは、前後方向の衝撃に加えて車幅方向(横方向)への衝撃が発生する衝突形態(車体のヨーイング挙動を伴う衝突形態)である。
特に、衝突対象物が自車両の車幅方向にラップする範囲が異なる以外は衝突形態が類似しているスモールオーバラップ衝突(フロントサイドフレームより外側での衝突)と、オブリーク衝突(車幅半分以下で斜め前方側から衝突)の判別は困難である。
これに対し、車体各部に設けられる加速度センサ等の数を増やして対応することも考えられるが、この場合、装置構成の複雑化やコストアップの要因となってしまう。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、車両の衝突形態を適切に判別可能な衝突形態判別装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係る衝突形態判別装置は、車室及び前記車室の前端部から車両前方に突出した左右一対のフレームを有する車両に設けられる衝突形態判別装置であって、左右の前記フレームにそれぞれ設けられ横加速度を検出するフレーム横加速度センサと、前記車室に設けられ前後加速度を検出する車室加速度センサと、前記フレーム横加速度センサ及び前記車室加速度センサの出力に基づいて車両の衝突形態を判別する衝突形態判別部とを備え、前記衝突形態判別部は、左右の前記フレーム横加速度センサが同方向かつ所定以上の横加速度を検出しかつ前記車室加速度センサが検出した前後加速度又は該前後加速度の積分値が所定のオブリーク衝突判別値以上である場合に、前記衝突形態がオブリーク衝突であると判別することを特徴とする。
これによれば、左右のフレームの同方向の横加速度、及び、車室における著大な前後加速度の検出に応じてオブリーク衝突を判別することにより、オブリーク衝突を適切に判別することができる。
【0006】
本発明において、前記衝突形態判別部は、左右の前記フレーム横加速度センサが同方向かつ所定以上の横加速度を検出しかつ前記車室加速度センサが検出した前後加速度又は該前後加速度の積分値が所定のスモールオーバラップオフセット衝突判別値未満である場合に、前記衝突形態がスモールオーバラップオフセット衝突であると判別する構成とすることができる。
また、本発明の他の一態様に係る衝突形態判別装置は、車室及び前記車室の前端部から車両前方に突出した左右一対のフレームを有する車両に設けられる衝突形態判別装置であって、左右の前記フレームにそれぞれ設けられ横加速度を検出するフレーム横加速度センサと、前記車室に設けられ前後加速度を検出する車室加速度センサと、前記フレーム横加速度センサ及び前記車室加速度センサの出力に基づいて車両の衝突形態を判別する衝突形態判別部とを備え、前記衝突形態判別部は、左右の前記フレーム横加速度センサが同方向かつ所定以上の横加速度を検出しかつ前記車室加速度センサが検出した前後加速度又は該前後加速度の積分値が所定のスモールオーバラップオフセット衝突判別値未満である場合に、前記衝突形態がスモールオーバラップオフセット衝突であると判別することを特徴とする。
これによれば、左右のフレームの同方向の横加速度、及び、車室における比較的小さい前後加速度の検出に応じてスモールオーバラップオフセット衝突を判別することにより、スモールオーバラップオフセット衝突を適切に判別することができる。
上記各発明により、オブリーク衝突とスモールオーバラップオフセット衝突との判別が精度よく可能となる。
【0007】
本発明において、前記衝突形態判別部は、左右の前記フレーム横加速度センサが逆方向かつ車幅方向外側の横加速度を検出した場合に、前記衝突形態がフルラップ衝突であると判別する構成とすることができる。
これによれば、左右のフレームの外開き方向の横加速度の検出に応じてフルラップ衝突を判別することにより、フルラップ衝突を適切に判別することができる。
【0008】
本発明において、左右の前記フレームにそれぞれ設けられ前後加速度を検出するフレーム前後加速度センサを備え、前記衝突形態判別部は、左右の前記フレーム前後加速度センサがそれぞれ検出した前後加速度の偏差が所定以上である場合に、前記衝突形態がオフセット衝突であると判別する構成とすることができる。
これによれば、左右のフレームの前後加速度の差が大きい場合にオフセット衝突を判別することにより、オフセット衝突を適切に判別することができる。
ここで、左右のフレーム前後加速度センサが検出した前後加速度の偏差が所定以上である場合には、一方の前後加速度が微小である場合や、検出不能である場合も含むものとする。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、車両の衝突形態を適切に判別可能な衝突形態判別装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明を適用した衝突形態判別装置の実施形態を有する車両の車体前部構造を模式的に示す図である。
【
図2】実施形態の衝突形態判別装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】実施形態の車両におけるオブリーク衝突発生時の状態を示す図である。
【
図4】実施形態の車両におけるスモールオーバラップオフセット衝突発生時の状態を示す図である。
【
図5】実施形態の車両におけるオフセット衝突発生時の状態を示す図である。
【
図6】実施形態の車両におけるフルラップ衝突発生時の状態を示す図である。
【
図7】衝突時間と加速度データ及び加速度データ積分値の相関の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した衝突形態判別装置の実施形態について説明する。
実施形態の衝突形態判別装置は、例えば、乗用車等の自動車に設けられ、一例としてエアバッグ装置などの乗員保護装置(乗員拘束装置)の制御に用いられるものである。
図1は、実施形態の衝突形態判別装置を有する車両の車体前部構造を模式的に示す図である。
車両1は、車室10、フロントサイドフレーム20、バンパビーム30等を有する。
【0012】
車室10は、例えば乗員等が収容される空間部を有する部分である。
車室10の前端部には、図示しないパワーユニットが収容される空間部であるエンジンコンパートメントとの隔壁であるトーボード11が設けられる。
また、トーボード11の下端部から車両後方側に突出して、車室10の床面部を構成するフロアパネル12が設けられる。
【0013】
フロントサイドフレーム20は、車室10の前端部から車両前方側に突出して設けられた梁状の部材である。
フロントサイドフレーム20は、エンジンコンパートメントを挟んで、車両前後方向に沿って延在している。
フロントサイドフレーム20を車両前後方向と直交する平面で切って見た断面形状は、例えば、矩形状の閉断面として構成されている。
フロントサイドフレーム20は、例えば、フロントサスペンションの車体側取付部であるサスペンションクロスメンバや、ストラットタワーが取り付けられる基部となる。
サスペンションクロスメンバには、エンジン等のパワーユニットを支持するマウント類が設けられる。
【0014】
フロントサイドフレーム20の前端部21は、トーボード11に対して車両前方側に突出して配置されている。
フロントサイドフレーム20の後端部は、トーボード11の下端部の下方を通り、フロアパネル12の下面に沿って配置されている。
左右の前輪FWは、フロントサイドフレーム20の中間部の車幅方向外側に配置される。
【0015】
車室10、フロントサイドフレーム20は、例えば、一般鋼、高張力鋼などの鋼板をプレス加工したパネルを集成し、例えばスポット溶接、レーザ溶接等により接合することで、ホワイトボディ(未艤装車体)の一部として構成されている。
【0016】
バンパビーム30は、バンパビームステー31を介して左右のフロントサイドフレーム20の前端部21に取り付けられ、車幅方向に延在する梁状の部材である。
バンパビーム30は、車両上方から見た平面形が、例えば前方側に凸となる弧状に湾曲して形成されている。
【0017】
バンパビーム30の車幅方向における中間部は、左右のフロントサイドフレーム20の前端部21間にわたして設けられている。
バンパビーム30の側端部は、左右のフロントサイドフレーム20に対して車幅方向外側にそれぞれ張り出している。
バンパビーム30の側端部は、前輪FWの前方側に配置されている。
【0018】
バンパビーム30の前方側には、図示しないバンパフェイスが設けられる。
バンパフェイスは、例えば樹脂系材料などによって形成された外装部材であって、車体外表面の一部を構成する意匠部材でもある。
バンパビーム30は、車両の前面衝突時には、バンパフェイスを介して衝突対象物O(
図3等参照)からの荷重が入力される。
バンパビーム30は、例えば、鋼板等をプレスしたパネルを集成して溶接等により接合し、あるいは、アルミニウム系合金の押出材などによって構成される。
【0019】
実施形態の衝突形態判別装置100は、フレームセンサ110、ECUセンサ120、エアバッグECU130等を有する。
フレームセンサ110は、左右のフロントサイドフレーム20にそれぞれ設けられた加速度センサである。
フレームセンサ110は、車両前後方向における位置が、例えば、フロントサイドフレーム20の前端部21の直後に配置される。
フレームセンサ110は、前後方向の加速度Gxl(左側)、Gxr(右側)、及び、車幅方向(左右方向)の加速度Gyl(左側)、Gyr(右側)を検出する機能を有する。
フレームセンサ110は、本発明のフレーム横加速度センサ、フレーム前後加速度センサとして機能する。
【0020】
ECUセンサ120は、ECUセンサ130に内蔵された加速度センサである。
ECUセンサ120は、車室10に作用する前後方向の加速度Gxcを検出する機能を有する。
ECUセンサ120は、本発明の車室加速度センサとして機能する。
【0021】
エアバッグECU130(エアバッグ制御ユニット)は、衝突時に乗員を拘束し、保護する図示しないエアバッグ装置における各エアバッグの展開制御を行う制御装置である。
エアバッグECU130は、車室10内において例えばフロアパネル12の中央部上面に取り付けられている。
各エアバッグ装置は、例えばナイロン系繊維などの織物からなる基布パネルからなるエアバッグと、エアバッグに展開用ガスを供給するガス発生装置を有する。
エアバッグは、車両の通常使用時においては、折り畳まれた状態で内装部材に収容されている。
ガス発生装置は、エアバッグECU130からの指令に応じて展開用ガスの発生を開始し、エアバッグを車室10内で展開させ、図示しない乗員の拘束を図る。
エアバッグECU130は、例えば、CPU等の情報処理部、RAMやROMなどの記憶部、入出力インターフェイス、及び、これらを接続するバス等を有して構成されている。
エアバッグECU130には、上述したECUセンサ120が内蔵されている。
【0022】
エアバッグECU130は、本発明の衝突形態判別部としての機能を有する。
図2は、実施形態の衝突形態判別装置の動作を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
【0023】
<ステップS01:フレームセンサ横加速度判断>
エアバッグECU130は、フレームセンサ110が予め設定された所定値(閾値)以上の横加速度Gyl,Gyrを検出したか否かを判別する。
この所定値は、衝突センシングロジックを起動させるトリガーとなる閾値であり、例えば、車両の通常走行時に発生し得る加速度Gyl,Gyrよりも大きく設定する。
フレームセンサ110の左右少なくとも一方が所定値以上の横加速度Gyl,Gyrを検出した場合は、ステップS02に進み、その他の場合は一連の処理を終了(リターン)する。
【0024】
<ステップS02:前後G積分値演算開始>
エアバッグECU130は、ECUセンサ120が検出した前後加速度Gxcの検出値の積分演算を開始する。
これは、エアバッグECU130は車室10内にあることから、フロントサイドフレーム20の圧壊によるエネルギ吸収(EA)などの効果によって加速度の瞬時値が低くなり、加速度そのものからの衝突判定が困難であることから、衝突判定、衝突態様の判別に積分値を用いるためである。
その後、ステップS03に進む。
【0025】
<ステップS03:サイドフレーム横G判断>
エアバッグECU130は、左側のフレームセンサ110が検出した横加速度Gylと、右側のフレームセンサ110が検出した横加速度Gyrとが同方向であるか否かを判別する。
横加速度Gylと横加速度Gyrとが同方向である場合は、オブリーク衝突又はスモールオーバラップオフセット衝突が疑われるため、ステップS04に進み、その他の場合はステップS05に進む。
【0026】
<ステップS04:前後G積分値判断>
エアバッグECU130は、ステップS02で演算を開始後、所定時間経過時までの前後加速度Gxcの積分値を、予め設定された閾値であるオブリーク衝突判別値(ここでは、スモールオーバラップオフセット衝突判別値を兼ねるものとする)と比較する。
前後加速度の積分値がオブリーク衝突判別値以上である場合は、ステップS07に進む。
前後加速度の積分値がオブリーク衝突判別値(スモールオーバラップオフセット衝突判別値)未満である場合は、ステップS08に進む。
【0027】
<ステップS05:左右前後G差判断>
エアバッグECU130は、左側のフレームセンサ110が検出した前後加速度Gxlと、右側のフレームセンサ110が検出した前後加速度Gxrとを比較し、これらに予め設定された閾値以上の差があるか否かを判別する。
前後加速度Gxl、Gxrに閾値以上の差がある場合(Gxl,Gxrのいずれか一方が微小あるいは実質的にゼロである場合も含む)はステップS09に進み、その他の場合はステップS06に進む。
【0028】
<ステップS06:左右横加速度判断>
エアバッグECU130は、左側のフレームセンサ110が検出した横加速度Gylと、右側のフレームセンサ110が検出した横加速度Gyrとが逆方向(車幅方向外側・外開き方向)であるか否かを判別する。
そして、横加速度Gyl,Gyrが外開きの逆方向かつそれぞれ所定値以上である場合には、ステップS10に進み、それ以外の場合は、当該ロジックにより判別可能な衝突形態以外の衝突形態である可能性が高いものとして、一連の処理を終了する。
【0029】
<ステップS07:オブリーク衝突判定成立>
エアバッグECU130は、オブリーク衝突判定を成立させる。
図3は、実施形態の車両におけるオブリーク衝突発生時の状態を示す図である。
オブリーク衝突は、例えば他車両等の衝突対象物Oが、自車両の前部に、車幅の半分以下のラップ率で、斜め前方側から衝突する衝突形態である。
ここで、衝突対象物Oは、自車両の車幅方向における位置が、少なくとも一方のフロントサイドフレーム20とラップしている。
この場合、左右のフレームセンサ110は、同一方向(通常は衝突を受けた側とは反対側)への横加速度Gyl,Gyrを検出する。
また、ECUセンサ120が検出した前後加速度Gxcの積分値は、後述するスモールオーバラップオフセット衝突の場合に対して大きくなる。
その後、ステップS11に進む。
【0030】
<ステップS08:スモールオーバラップオフセット衝突判定成立>
エアバッグECU130は、スモールオーバラップオフセット衝突判定を成立させる。
図4は、実施形態の車両におけるスモールオーバラップオフセット衝突発生時の状態を示す図である。
スモールオーバラップオフセット衝突は、車幅方向においてフロントサイドフレーム20よりも車幅方向外側の局所的な領域に車両前方側から衝突を受ける衝突形態である。
この場合、左右のフレームセンサ110は、同一方向(通常は衝突を受けた側とは反対側)への横加速度Gyl,Gyrを検出する。
また、ECUセンサ120が検出した前後加速度Gxcの積分値は、上述したオブリーク衝突の場合に対して相対的に小さくなる。
その後、ステップS11に進む。
【0031】
<ステップS09:オフセット衝突判定成立>
エアバッグECU130は、オフセット衝突(非スモールオーバラップ)判定を成立させる。
図5は、実施形態の車両におけるオフセット衝突発生時の状態を示す図である。
オフセット衝突は、車幅方向において衝突対象物Oが左右一方のフロントサイドフレーム20とラップする状態で、自車両前方側から衝突を受ける衝突態様である。
この場合、衝突を受けた側(ここでは左側)のフレームセンサ110は、著大な前後加速度Gxlを検出するが、反衝突側のフレームセンサ110が検出する前後加速度Gxrは微小となる。
また、ECUセンサ120は、前後加速度Gxcを検出する。
その後、ステップS11に進む。
【0032】
<ステップS10:フルラップ衝突判定成立>
エアバッグECU130は、フルラップ衝突判定を成立させる。
図6は、実施形態の車両におけるフルラップ衝突発生時の状態を示す図である。
フルラップ衝突は、車幅方向において衝突対象物Oが左右両方のフロントサイドフレーム20とラップする状態で、自車両前方側から衝突を受ける衝突態様である。
この場合、左右のフレームセンサ110は、左右で逆向き(車幅方向外向き)の横加速度Gyl,Glxを検出するとともに、前後加速度Gxl,Gxrを検出する。
また、ECUセンサ120は、比較的大きい前後加速度Gxcを検出する。
その後、ステップS11に進む。
【0033】
<ステップS11:前後加速度積分値をゲート値と比較>
エアバッグECU120は、ステップS02で演算を開始した前後加速度Gxcの積分値を、予め設定された積分値センシングゲート(閾値)と比較する。
図7は、衝突時間と加速度データ及び加速度データ積分値の相関の一例を示す図である。
図7において、横軸は衝突発生からの時間を示し、縦軸はECUセンサ120が検出した前後加速度及びその積分値と、積分値に対して設定される閾値である積分値センシングゲートを示している。
図7に示すように、前後加速度は、例えば車体のどの部分で圧壊(エネルギ吸収)が進行しているかなどに起因して大きく変動しており、検出値そのものも比較的小さい。
そこで、前後加速度の積分値を、積分値センシングゲートと比較して衝突のセンシングを行うようにしている。
積分値センシングゲートは、例えば、衝突発生からの経過時間の増加に応じて、段階的に増加する構成とすることができる。
積分値が積分値センシングゲートを超過した場合はステップS12に進み、その他の場合はステップS11を繰り返す。
【0034】
<ステップS12:センシング判定成立>
エアバッグECU130は、衝突センシング判定(エアバッグ展開要判定)を成立させ、判別された衝突態様に応じた部位のエアバッグ装置に展開指令を、所定のセンシング時間(エアバッグ展開開始時間)に出力する。
これにより、当該エアバッグに展開用ガスを供給するガス発生装置が作動し、当該エアバッグが展開する。
その後、一連の処理を終了する。
【0035】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)左右のフロントサイドフレーム20の所定以上かつ同方向の横加速度Gyl,Gyr、及び、車室10におけるオブリーク衝突判定閾値以上の前後加速度Gxcの検出に応じて、オブリーク衝突を判別することにより、スモールオーバラップオフセット衝突との判別が難しいオブリーク衝突を適切に判別することができる。
(2)左右のフロントサイドフレーム20の所定以上かつ同方向の横加速度Gyl,Gyr、及び、車室10におけるスモールオーバラップオフセット衝突判別値未満の前後加速度Gxcの検出に応じて、スモールオーバラップオフセット衝突を判別することにより、オブリーク衝突との判別が難しいスモールオーバラップオフセット衝突を適切に判別することができる。
(3)左右のフロントサイドフレーム20の外開き方向(車幅方向外側)への横加速度Gyl,Gyrの検出に応じてフルラップ衝突を判別することにより、フルラップ衝突を適切に判別することができる。
(4)左右のフロントサイドフレーム20の前後加速度Gxl,Gxrの差が大きい場合(典型的には一方が微小である場合)にオフセット衝突を判別することにより、オフセット衝突を適切に判別することができる。
【0036】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)衝突形態判別装置や車両の構成は、上述した実施形態に限定されることなく、適宜変更することが可能である。
(2)車両の車体構造やセンサ類の配置は一例であって、適宜変更することが可能であり、実施形態において説明した以外の車体構造部材や、センサ類をさらに付加した構成としてもよい。
(3)実施形態においては、車室での加速度検出をエアバッグECUに内蔵されたECUセンサによって行っているが、車室での加速度検出をECU等と独立して設けられたセンサを用いて行ってもよい。また、このようなセンサが取り付けられる箇所も、車室を構成する部分である限り特に限定されない。
(4)実施形態においては、車室内加速度の積分値を用いて衝突形態の判別等を行っているが、本発明はこれに限らず、車室内加速度の瞬間値(一例として最大値)を用いて衝突形態の判別等を行ってもよい。
(5)実施形態においては、単一のフレームセンサを用いて横加速度及び前後加速度の検出を行っているが、これらのセンサを独立して設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 車両 10 車室
11 トーボード 12 フロアパネル
20 フロントサイドフレーム 21 先端部
30 バンパビーム 31 バンパビームステー
100 衝突形態判別装置 110 フレームセンサ
120 ECUセンサ 130 エアバッグECU
FW 前輪 O 衝突対象物