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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003929
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】整流器
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/861 20060101AFI20240109BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240109BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20240109BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20240109BHJP
   H01L 21/8238 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H01L29/91 L
H01L29/78 301V
H01L29/78 301J
H01L29/91 F
H01L29/86 301D
H01L27/088 C
H01L27/088 J
H01L27/06 102A
H01L27/092 L
H01L27/092 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103295
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 聡紀
(72)【発明者】
【氏名】那須 賢太郎
【テーマコード(参考)】
5F048
5F140
【Fターム(参考)】
5F048AA05
5F048AB10
5F048AC01
5F048AC03
5F048AC10
5F048BA02
5F048BA14
5F048BB19
5F048BD07
5F048BF15
5F048BF16
5F048BF18
5F048CB07
5F140AA29
5F140AB03
5F140AC01
5F140AC39
5F140BA01
5F140BA02
5F140BF43
5F140CB08
5F140CD02
(57)【要約】
【課題】新規な構成を有する整流器を提供する。
【解決手段】整流器1Aは、ドレインソースコモン電界効果型の第1トランジスタTr1と、第1トランジスタTr1をダイオード動作させるように第1トランジスタTr1にダイオード接続され、第1トランジスタTr1と整流段Rを構成するドレインソースコモン電界効果型の第2トランジスタTr2と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレインソースコモン電界効果型の第1トランジスタと、
前記第1トランジスタをダイオード動作させるように前記第1トランジスタにダイオード接続され、前記第1トランジスタと整流段を構成するドレインソースコモン電界効果型の第2トランジスタと、を含む、整流器。
【請求項2】
前記整流段は、前記第1トランジスタのゲート閾値電圧からなる順方向閾値電圧を有している、請求項1に記載の整流器。
【請求項3】
前記整流段の順方向電圧が印加されたとき、前記第1トランジスタがオン状態になり、前記第2トランジスタがオフ状態になる、請求項1に記載の整流器。
【請求項4】
前記第1トランジスタに前記整流段の順方向電流が流れる、請求項3に記載の整流器。
【請求項5】
前記整流段の逆方向電圧が印加されたとき、前記第1トランジスタがオフ状態になり、前記第2トランジスタがオン状態になる、請求項1に記載の整流器。
【請求項6】
前記第1トランジスタに前記整流段の逆方向電流が流れる、請求項5に記載の整流器。
【請求項7】
前記第1トランジスタは、pチャネル型である、請求項1~6のいずれか一項に記載の整流器。
【請求項8】
前記第1トランジスタは、ゲート、前記整流段のアノードとして機能する第1ドレインソース、前記整流段のカソードとして機能する第2ドレインソース、ならびに、前記第1ドレインソースに電気的に接続されたバックゲートを有し、
前記第2トランジスタは、前記第1トランジスタの前記ゲートを零電位に固定するバイアス回路を構成している、請求項7に記載の整流器。
【請求項9】
前記ゲートは、前記整流段のオン時およびオフ時において零電位に固定される、請求項8に記載の整流器。
【請求項10】
前記第1トランジスタは、前記第1ドレインソースおよび前記第2ドレインソースの間において逆バイアスに直列接続された第1ボディダイオードおよび第2ボディダイオードを含むダイオード対を有している、請求項8に記載の整流器。
【請求項11】
前記第1トランジスタは、nチャネル型である、請求項1~6のいずれか一項に記載の整流器。
【請求項12】
前記第1トランジスタは、ゲート、前記ゲートに電気的に接続され、前記整流段のアノードとして機能する第1ドレインソース、前記整流段のカソードとして機能する第2ドレインソース、ならびに、バックゲートを有し、
前記第2トランジスタは、前記第1トランジスタの前記バックゲートを零電位に固定するバイアス回路を構成している、請求項11に記載の整流器。
【請求項13】
前記バックゲートは、前記整流段のオン時およびオフ時において零電位に固定される、請求項12に記載の整流器。
【請求項14】
前記第1トランジスタは、前記第1ドレインソースおよび前記第2ドレインソースの間において逆バイアスに直列接続された第1ボディダイオードおよび第2ボディダイオードを含むダイオード対を有している、請求項12に記載の整流器。
【請求項15】
零電位に固定されるゲート、整流段のアノードとして機能する第1ドレインソース、前記整流段のカソードとして機能する第2ドレインソース、ならびに、前記第1ドレインソースに電気的に接続されたバックゲートを有するpチャネルのドレインソースコモン電界効果型のトランジスタを含む、整流器。
【請求項16】
前記ゲートは、前記整流段のオン時およびオフ時において零電位に固定される、請求項15に記載の整流器。
【請求項17】
前記ゲートを零電位に固定するバイアス回路をさらに含む、請求項15または16に記載の整流器。
【請求項18】
ゲート、前記ゲートに電気的に接続され、整流段のアノードとして機能する第1ドレインソース、前記整流段のカソードとして機能する第2ドレインソース、ならびに、零電位に固定されるバックゲートを有するnチャネルのドレインソースコモン電界効果型のトランジスタを含む、整流器。
【請求項19】
前記バックゲートは、前記整流段のオン時およびオフ時において零電位に固定される、請求項18に記載の整流器。
【請求項20】
前記バックゲートを零電位に固定するバイアス回路をさらに含む、請求項18または19に記載の整流器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、整流器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ドレインソースコモン電界効果型のトランジスタを開示している。特許文献2は、ゲートにダイオード接続されたソースまたはドレインを有するMOSトランジスタを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0145474号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0216566号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一実施形態は、新規な構成を有する整流器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態は、ドレインソースコモン電界効果型の第1トランジスタと、前記第1トランジスタをダイオード動作させるように前記第1トランジスタにダイオード接続され、前記第1トランジスタと整流段を構成するドレインソースコモン電界効果型の第2トランジスタと、を含む、整流器を提供する。
【0006】
一実施形態は、零電位に固定されるゲート、整流段のアノードとして機能する第1ドレインソース、前記整流段のカソードとして機能する第2ドレインソース、ならびに、前記第1ドレインソースに電気的に接続されたバックゲートを有するpチャネルのドレインソースコモン電界効果型のトランジスタを含む、整流器を提供する。
【0007】
一実施形態は、ゲート、前記ゲートに電気的に接続され、整流段のアノードとして機能する第1ドレインソース、前記整流段のカソードとして機能する第2ドレインソース、ならびに、零電位に固定されるバックゲートを有するnチャネルのドレインソースコモン電界効果型のトランジスタを含む、整流器を提供する。
【0008】
上述のまたはさらに他の目的、特徴および効果は、添付図面の参照によって説明される実施形態により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る整流器の電気的構成を示す回路図である。
図2図2は、図1に示す整流器の具体的な電気的構成を示す回路図である。
図3A図3Aは、図1に示す整流器の順方向動作を示す回路図である。
図3B図3Bは、図1に示す整流器の逆方向動作を示す回路図である。
図4図4は、順方向特性を示すグラフである。
図5図5は、逆方向特性を示すグラフである。
図6図6は、逆方向特性を示すグラフである。
図7図7は、図1に示す整流器の第1構成例を示す概略平面図である。
図8図8は、図7に示す整流器の概略断面図である。
図9図9は、図1に示す整流器の第2構成例を示す概略平面図である。
図10図10は、図9に示す整流器の概略断面図である。
図11図11は、第2実施形態に係る整流器の電気的構成を示す回路図である。
図12A図12Aは、図11に示す整流器の順方向動作を示す回路図である。
図12B図12Bは、図11に示す整流器の逆方向動作を示す回路図である。
図13図13は、図11に示す整流器の第1構成例を示す概略平面図である。
図14図14は、図13に示す整流器の概略断面図である。
図15図15は、図11に示す整流器の第2構成例を示す概略平面図である。
図16図16は、図15に示す整流器の概略断面図である。
図17図17は、第3実施形態に係る整流器の電気的構成を示す回路図である。
図18A図18Aは、図17に示す整流器の順方向動作を示す回路図である。
図18B図18Bは、図17に示す整流器の逆方向動作を示す回路図である。
図19図19は、図17に示す整流器の第1構成例を示す概略平面図である。
図20図20は、図19に示す整流器の概略断面図である。
図21図21は、図17に示す整流器の第2構成例を示す概略平面図である。
図22図22は、図21に示す整流器の概略断面図である。
図23図23は、第4実施形態に係る整流器の電気的構成を示す回路図である。
図24A図24Aは、図23に示す整流器の順方向動作を示す回路図である。
図24B図24Bは、図23に示す整流器の逆方向動作を示す回路図である。
図25図25は、図23に示す整流器の第1構成例を示す概略平面図である。
図26図26は、図25に示す整流器の概略断面図である。
図27図27は、図23に示す整流器の第2構成例を示す概略平面図である。
図28図28は、図27に示す整流器の概略断面図である。
図29図29は、第5実施形態に係る整流器の電気的構成を示す回路図である。
図30A図30Aは、図29に示す整流器の第1順方向動作を示す回路図である。
図30B図30Bは、図29に示す整流器の第2順方向動作を示す回路図である。
図30C図30Cは、図29に示す整流器の逆方向動作を示す回路図である。
図31図31は、図29に示す整流器の第1構成例を示す概略平面図である。
図32図32は、図31に示す整流器の概略断面図である。
図33図33は、図29に示す整流器の第2構成例を示す概略平面図である。
図34図34は、図33に示す整流器の概略断面図である。
図35図35は、図29に示す整流器の第3構成例を示す概略平面図である。
図36図36は、図35に示す整流器の概略断面図である。
図37図37は、第6実施形態に係る整流器の電気的構成を示す回路図である。
図38A図38Aは、図37に示す整流器の順方向動作を示す回路図である。
図38B図38Bは、図37に示す整流器の逆方向動作を示す回路図である。
図39図39は、図37に示す整流器の構成例を示す概略平面図である。
図40図40は、図39に示す整流器の概略断面図である。
図41図41は、第7実施形態に係る整流器の電気的構成を示す回路図である。
図42図42は、第8実施形態に係る整流器の電気的構成を示す回路図である。
図43A図43Aは、図42に示す整流器の順方向動作を示す回路図である。
図43B図43Bは、図42に示す整流器の逆方向動作を示す回路図である。
図44図44は、図42に示す整流器の構成例を示す概略平面図である。
図45図45は、図44に示す整流器の概略断面図である。
図46図46は、第9実施形態に係る整流器の電気的構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、実施形態が詳細に説明される。添付図面は、模式図であり、厳密に図示されたものではなく、縮尺等は必ずしも一致しない。また、添付図面の間で対応する構造には同一の参照符号が付され、重複する説明は省略または簡略化される。説明が省略または簡略化された構造については、省略または簡略化される前になされた説明が適用される。
【0011】
比較対象(comparison target)が存する説明において「ほぼ(substantially)等しい」等の文言が使用される場合、この文言は、比較対象の数値(形態)と等しい数値(形態)を含む他、比較対象の数値(形態)を基準とする±10%の範囲の数値誤差(形態誤差)も含む。実施形態では「第1」、「第2」、「第3」等の文言が使用されるが、これらは説明順序を明確にするために各構造の名称に付された記号であり、各構造の名称を限定する趣旨で付されていない。
【0012】
この明細書に係る「整流器」は、整流回路、整流装置、整流モジュール等を含む概念であり、必要に応じて「整流回路」、「半導体整流回路」、「半導体整流器」、「半導体整流装置」、「半導体装置」、「半導体モジュール」等と称されてもよい。
【0013】
図1は、第1実施形態に係る整流器1Aの電気的構成を示す回路図である。図2は、図1に示す整流器1Aの具体的な電気的構成を示す回路図である。図1を参照して、整流器1Aは、整流段R、アノード端Aおよびカソード端Kを含む。整流段Rは、「整流部」、「ダイオード段」または「ダイオード部」と称されてもよい。整流段Rは、アノードおよびカソードを有している。アノード端Aは、アノード電位の印加端であり、整流段Rのアノードに電気的に接続されている。カソード端Kは、カソード電位の印加端であり、整流段Rのカソードに電気的に接続されている。
【0014】
図2を参照して、整流段Rは、ドレインソースコモン電界効果型の第1トランジスタTr1およびドレインソースコモン電界効果型の第2トランジスタTr2を含む。この形態では、第1トランジスタTr1はpチャネル型であり、第2トランジスタTr2はnチャネル型である。以下、第1トランジスタTr1および第2トランジスタTr2の基本的な構成が説明された後、整流段Rの構成が説明される。
【0015】
第1トランジスタTr1は、Si(シリコン)単結晶に形成されたSi-トランジスタであってもよいし、ワイドバンドギャップ半導体の単結晶に形成されたワイドバンドギャップ半導体-トランジスタであってもよい。ワイドバンドギャップ半導体は、Siのバンドギャップよりも大きいバンドギャップを有する半導体である。第1トランジスタTr1は、ワイドバンドギャップ半導体の一例としてのSiC(炭化シリコン)単結晶に形成されたSiC-トランジスタであってもよい。
【0016】
第1トランジスタTr1は、第1ゲートG1、第1ドレインソースDS1、第2ドレインソースDS2、第1バックゲートBG1および第1ダイオード対DP1を有している。第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2は、ソースおよびドレインを一体的にそれぞれ含む。
【0017】
第1ゲートG1は、第1ゲート閾値電圧Vgth1を有している。第1ゲート閾値電圧Vgth1は、0Vを超えて1.0V以下であってもよい。第1ゲート閾値電圧Vgth1は、0Vを超えて0.1V以下、0.1V以上0.2V以下、0.2V以上0.3V以下、0.3V以上0.4V以下、0.4V以上0.5V以下、0.5V以上0.6V以下、0.6V以上0.7V以下、0.7V以上0.8V以下、0.8V以上0.9V以下、および、0.9V以上1.0V以下のいずれかの1つの範囲に属する値を有していてもよい。第1ゲート閾値電圧Vgth1は、0.5V以下であることが好ましい。
【0018】
第1ダイオード対DP1は、カソードコモンとなるように逆バイアス接続された第1ボディダイオードD1および第2ボディダイオードD2を含み、第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2に電気的に接続されている。第1ボディダイオードD1はpn接合ダイオードであり、第2ボディダイオードD2はpn接合ダイオードである。
【0019】
第1ボディダイオードD1は、第1ドレインソースDS1に電気的に接続されたアノード、および、第2ボディダイオードD2に対するノードを形成するカソードを含む。第2ボディダイオードD2は、第2ドレインソースDS2に電気的に接続されたアノード、および、第1ボディダイオードD1のカソードに電気的に接続されたカソードを含む。
【0020】
第1ダイオード対DP1は、第1ブレークダウン電圧VB1を有している。第1ブレークダウン電圧VB1は、第1ダイオード対DP1に対する電圧印加方向によって第1ボディダイオードD1および第2ボディダイオードD2のいずれか一方のブレークダウン電圧に制限される。
【0021】
第1ブレークダウン電圧VB1は、5V以上3000V以下であってもよい。第1ブレークダウン電圧VB1は、5V以上50V以下、50V以上100V以下、100V以上250V以下、250V以上500V以下、500V以上750V以下、750V以上1000V以下、1000V以上1250V以下、1250V以上1500V以下、1500V以上1750V以下、1750V以上2000V以下、2000V以上2250V以下、2250V以上2500V以下、2500V以上2750V以下、および、2750V以上3000V以下のいずれか1つの範囲に属する値を有していてもよい。
【0022】
第1ゲート閾値電圧Vgth1以上の電圧が第1ゲートG1に印加され、所定のドレインソース電圧が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間に印加された場合、第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間に第1トランジスタTr1の第1チャネルCH1を介してドレインソース電流が流れる。ドレインソース電流の方向は、ドレインソース電圧の正負によって反転する。つまり、第1トランジスタTr1は、第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の双方向にドレインソース電流を流すことが可能な双方向デバイスである。
【0023】
第1ゲート閾値電圧Vgth1未満の電圧が第1ゲートG1に印加され、第1ブレークダウン電圧VB1以上のドレインソース電圧が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間に印加された場合、第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間に第1ダイオード対DP1を介してブレークダウン電流が流れる。
【0024】
ドレインソース電流の特性(傾き)は、第1トランジスタTr1の第1オン抵抗Ron1によって調節される。たとえば、第1トランジスタTr1は、単位面積(1平方ミリメートル)当たりに50mΩ以上200mΩ以下の第1オン抵抗Ron1を有していてもよい。
【0025】
第1オン抵抗Ron1は、50mΩ以上75mΩ以下、75mΩ以上100mΩ以下、100mΩ以上125mΩ以下、125mΩ以上150mΩ以下、150mΩ以上175mΩ以下、および、175mΩ以上200mΩ以下のいずれか1つの範囲に属する値を有していてもよい。第1オン抵抗Ron1は、150mΩ以下であることが好ましい。
【0026】
第2トランジスタTr2は、Si単結晶に形成されたSi-トランジスタであってもよいし、ワイドバンドギャップ半導体の単結晶に形成されたワイドバンドギャップ半導体-トランジスタであってもよい。第2トランジスタTr2は、ワイドバンドギャップ半導体の一例としてのSiC単結晶に形成されたSiC-トランジスタであってもよい。
【0027】
第2トランジスタTr2は、第2ゲートG2、第3ドレインソースDS3、第4ドレインソースDS4、第2バックゲートBG2および第2ダイオード対DP2を有している。第3ドレインソースDS3および第4ドレインソースDS4は、ソースおよびドレインを一体的にそれぞれ含む。
【0028】
第2ゲートG2は、第2ゲート閾値電圧Vgth2を有している。第2ゲート閾値電圧Vgth2は、第1ゲート閾値電圧Vgth1とほぼ等しくてもよいし、第1ゲート閾値電圧Vgth1未満であってもよいし、第1ゲート閾値電圧Vgth1よりも大きくてもよい。第2ゲート閾値電圧Vgth2は、第1ゲート閾値電圧Vgth1以上であることが好ましい。第2ゲート閾値電圧Vgth2は、第1ダイオード対DP1の第1ブレークダウン電圧VB1未満である。
【0029】
第2ゲート閾値電圧Vgth2は、0Vを超えて1.0V以下であってもよい。第2ゲート閾値電圧Vgth2は、0Vを超えて0.1V以下、0.1V以上0.2V以下、0.2V以上0.3V以下、0.3V以上0.4V以下、0.4V以上0.5V以下、0.5V以上0.6V以下、0.6V以上0.7V以下、0.7V以上0.8V以下、0.8V以上0.9V以下、および、0.9V以上1.0V以下のいずれか1つの範囲に属する値を有していてもよい。第2ゲート閾値電圧Vgth2は、0.5V以下であることが好ましい。
【0030】
第2ダイオード対DP2は、アノードコモンとなるように逆バイアス接続された第3ボディダイオードD3および第4ボディダイオードD4を含み、第3ドレインソースDS3および第4ドレインソースDS4に電気的に接続されている。第3ボディダイオードD3はpn接合ダイオードであり、第4ボディダイオードD4はpn接合ダイオードである。
【0031】
第3ボディダイオードD3は、第4ボディダイオードD4に対するノードを形成するアノード、および、第3ドレインソースDS3に電気的に接続されたカソードを含む。第4ボディダイオードD4は、第3ボディダイオードD3のアノードに電気的に接続されたアノード、および、第4ドレインソースDS4に電気的に接続されたカソードを含む。
【0032】
第2ダイオード対DP2は、第2ブレークダウン電圧VB2を有している。第2ブレークダウン電圧VB2は、第2ダイオード対DP2に対する電圧印加方向によって第3ボディダイオードD3および第4ボディダイオードD4のいずれ一方のブレークダウン電圧に制限される。第2ブレークダウン電圧VB2は、第1ブレークダウン電圧VB1とほぼ等しくてもよいし、第1ブレークダウン電圧VB1未満であってもよいし、第1ブレークダウン電圧VB1よりも大きくてもよい。
【0033】
第2ブレークダウン電圧VB2は、5V以上2000V以下であってもよい。第1ブレークダウン電圧VB1は、5V以上50V以下、50V以上100V以下、100V以上250V以下、250V以上500V以下、500V以上750V以下、750V以上1000V以下、1000V以上1250V以下、1250V以上1500V以下、1500V以上1750V以下、1750V以上2000V以下、2000V以上2250V以下、2250V以上2500V以下、2500V以上2750V以下、および、2750V以上3000V以下のいずれか1つの範囲に属する値を有していてもよい。
【0034】
第2ゲート閾値電圧Vgth2以上の電圧が第2ゲートG2に印加され、所定のドレインソース電圧が第3ドレインソースDS3および第4ドレインソースDS4の間に印加された場合、第3ドレインソースDS3および第4ドレインソースDS4の間に第2トランジスタTr2の第2チャネルCH2を介してドレインソース電流が流れる。ドレインソース電流の方向は、ドレインソース電圧の正負によって反転する。つまり、第2トランジスタTr2は、第3ドレインソースDS3および第4ドレインソースDS4の双方向にドレインソース電流を流すことが可能な双方向デバイスである。
【0035】
第1ゲート閾値電圧Vgth1未満の電圧が第2ゲートG2に印加され、第2ブレークダウン電圧VB2以上のドレインソース電圧が第3ドレインソースDS3および第4ドレインソースDS4の間に印加された場合、第3ドレインソースDS3および第4ドレインソースDS4の間に第2ダイオード対DP2を介してブレークダウン電流が流れる。
【0036】
ドレインソース電流の特性(傾き)は、第2トランジスタTr2の第2オン抵抗Ron2によって調節される。たとえば、第2トランジスタTr2は、単位面積(1平方ミリメートル)当たりに50mΩ以上200mΩ以下の第2オン抵抗Ron2を有していてもよい。
【0037】
第2オン抵抗Ron2は、50mΩ以上75mΩ以下、75mΩ以上100mΩ以下、100mΩ以上125mΩ以下、125mΩ以上150mΩ以下、150mΩ以上175mΩ以下、および、175mΩ以上200mΩ以下のいずれか1つの範囲に属する値を有していてもよい。第2オン抵抗Ron2は、150mΩ以下であることが好ましい。
【0038】
整流段Rは、第1トランジスタTr1がダイオード動作するように第2トランジスタTr2が第1トランジスタTr1にダイオード接続されることによって構成されている。具体的には、第2トランジスタTr2は、バイアス電圧によって第1トランジスタTr1をダイオード動作させるバイアス回路として設けられ、第1トランジスタTr1と共に整流段Rを構成している。
【0039】
さらに具体的には、第2ゲートG2が第2ドレインソースDS2に電気的に接続され、第3ドレインソースDS3が第1ドレインソースDS1および第1バックゲートBG1に電気的に接続され、第4ドレインソースDS4が第1ゲートG1に電気的に接続され、第2バックゲートBG2が第1ドレインソースDS1および第1バックゲートBG1に電気的に接続されている。
【0040】
つまり、第1トランジスタTr1側では第1バックゲートBG1が第1ドレインソースDS1に電気的に接続され、第2トランジスタTr2側では第2バックゲートBG2が第3ドレインソースDS3に電気的に接続されている。これにより、第1ドレインソースDS1、第1バックゲートBG1、第3ドレインソースDS3および第2バックゲートBG2が同電位に固定されている。また、第1ゲートG1および第4ドレインソースDS4が同電位に固定されている。また、第2ドレインソースDS2および第2ゲートG2が同電位に固定されている。
【0041】
第4ドレインソースDS4は、第1ゲートG1と短絡回路を構成し、第1ゲートG1および第4ドレインソースDS4の間で電圧降下を形成しない。つまり、第1ゲートG1および第4ドレインソースDS4は零電位(同電位)に固定される。第1ゲートG1および第4ドレインソースDS4は、整流段R(第1トランジスタTr1)のオン時およびオフ時の双方において零電位に固定される。
【0042】
第1ドレインソースDS1はアノード端Aに電気的に接続され、第2ドレインソースDS2はカソード端Kに電気的に接続されている。この明細書および添付図面では、アノード端Aおよび第1ドレインソースDS1が別々に表現され、カソード端Kおよび第2ドレインソースDS2が別々に表現されている。しかし、アノード端Aが第1ドレインソースDS1によって構成されていると見なされ、カソード端Kが第2ドレインソースDS2によって構成されていると見なされてもよい。
【0043】
図3Aは、図1に示す整流器1Aの順方向動作を示す回路図である。図3Bは、図1に示す整流器1Aの逆方向動作を示す回路図である。図3Aおよび図3Bを参照して、順方向動作では第1トランジスタTr1に順方向電流IFが流れ、逆方向動作では第1トランジスタTr1に逆方向電流IRが流れる。
【0044】
具体的には、図3Aを参照して、順方向動作では、第2ドレインソースDS2を基準とする順方向電位VFが第1ドレインソースDS1に印加され、第1ドレインソースDS1から第2ドレインソースDS2に向けて順方向電流IFが流れる。図3Aでは、第2ドレインソースDS2に基準電位Vref(たとえばグランド電位)が印加され、第1ドレインソースDS1に順方向電位VFが印加された場合の回路動作が示されている。以下では、順方向電圧が「順方向電圧VF」と表現されることがある。
【0045】
順方向動作では、第1ドレインソースDS1、第1バックゲートBG1、第3ドレインソースDS3および第2バックゲートBG2が順方向電位VFに固定される。第2ドレインソースDS2および第2ゲートG2は、基準電位Vrefに固定される。第1ゲートG1および第4ドレインソースDS4は、電圧降下を形成せずに零電位に固定される。
【0046】
第1トランジスタTr1では、第1ゲートG1が零電位に固定され、第1バックゲートBG1が順方向電位VFに固定される。したがって、順方向電圧VFが第1ゲートG1の第1ゲート閾値電圧Vgth1未満の場合に第1トランジスタTr1はオフ状態になり、順方向電圧VFが第1ゲート閾値電圧Vgth1以上の場合に第1トランジスタTr1はオン状態になる。第1トランジスタTr1がオン状態になると、第1トランジスタTr1の第1チャネルCH1を介して第1ドレインソースDS1から第2ドレインソースDS2に向けて順方向電流IFが流れる。
【0047】
第2トランジスタTr2では、第2ゲートG2が基準電位Vrefに固定され、第2バックゲートBG2が順方向電位VFに固定される。したがって、第2トランジスタTr2はオフ状態になる。第2トランジスタTr2は第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間で電流経路を形成しないので、順方向電流IFは第2トランジスタTr2を流れない。
【0048】
このように、順方向動作では、第2トランジスタTr2に起因するバイアス効果によって、第1トランジスタTr1がオン状態に制御され、第2トランジスタTr2がオフ状態に制御される。順方向電流IFは、このような状態で、第1トランジスタTr1の第1チャネルCH1を介して第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0049】
つまり、第1トランジスタTr1は、整流段Rの順方向閾値電圧Vthとなる第1ゲート閾値電圧Vgth1を有している。また、第1トランジスタTr1は、整流段Rの順方向電流IFとなるドレインソース電流を流す。つまり、整流段Rの順方向電流IFの特性は、第1トランジスタTr1のドレインソース電流の特性に一致する。
【0050】
図3Bを参照して、逆方向動作では、第1ドレインソースDS1を基準とする逆方向電位VRが第2ドレインソースDS2に印加され、第2ドレインソースDS2から第1ドレインソースDS1に向けて逆方向電流IRが流れる。図3Bでは、第1ドレインソースDS1に基準電位Vref(たとえばグランド電位)が印加され、第2ドレインソースDS2に逆方向電位VRが印加された場合の回路動作が示されている。以下では、逆方向電圧が「逆方向電圧VR」と表現されることがある。
【0051】
逆方向動作では、第1ドレインソースDS1、第1バックゲートBG1、第3ドレインソースDS3および第2バックゲートBG2が基準電位Vrefに固定される。第2ゲートG2および第2ドレインソースDS2は、逆方向電位VRに固定される。第1ゲートG1および第4ドレインソースDS4は、電圧降下を形成せずに零電位に固定される。
【0052】
第1トランジスタTr1では、第1ゲートG1が零電位に固定され、第1バックゲートBG1が基準電位Vref(零電位)に固定される。したがって、第1トランジスタTr1はオフ状態になる。逆方向電圧VRが第1ブレークダウン電圧VB1未満の場合、逆方向電流IRとしてのリーク電流が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0053】
逆方向電圧VRが第1ブレークダウン電圧VB1以上の場合、第1ダイオード対DP1がブレークダウンし、逆方向電流IRとしてのブレークダウン電流が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。リーク電流の特性およびブレークダウン電流の特性は、いずれも第1ダイオード対DP1の特性に依存する。
【0054】
第2トランジスタTr2では、第2ゲートG2が逆方向電位VRに固定され、第2バックゲートBG2が基準電位Vrefに固定される。したがって、逆方向電圧VRが第2ゲート閾値電圧Vgth2未満の場合に第2トランジスタTr2がオフ状態になり、逆方向電圧VRが第2ゲート閾値電圧Vgth2以上の場合に第2トランジスタTr2はオン状態になる。
【0055】
第2ゲート閾値電圧Vgth2は、第1ブレークダウン電圧VB1未満である。したがって、第2トランジスタTr2は、第1ダイオード対DP1のブレークダウン前にオン状態になる。第2トランジスタTr2は第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間で電流経路を形成しないので、逆方向電流IRは第2トランジスタTr2を流れない。
【0056】
このように、逆方向動作では、第2トランジスタTr2に起因するバイアス効果によって、第1トランジスタTr1がオフ状態に制御され、第2トランジスタTr2がオン状態に制御される。逆方向電流IRは、このような状態で、第1ダイオード対DP1を介して第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0057】
つまり、逆方向電流IRの特性は、第1ダイオード対DP1の特性に一致する。逆方向電圧VRに対する整流段Rの耐圧は、第1ダイオード対DP1の耐圧(第1ブレークダウン電圧VB1)および第2トランジスタTr2のゲート耐圧(ゲート絶縁破壊耐圧)のうちの低い耐圧に制限される。
【0058】
図4は、順方向特性を示すグラフである。図4において、縦軸は順方向電流IF[A]を示し、横軸は順方向電圧VF[V]を示している。図4には、第1順方向特性FC1、第2順方向特性FC2および第3順方向特性FC3が示されている。第1順方向特性FC1は第1参考整流器R1の特性を示し、第2順方向特性FC2は第2参考整流器R2の特性を示し、第3順方向特性FC3は整流器1Aの特性を示している。第1参考整流器R1は、pn接合ダイオード単体によって構成されている。第2参考整流器R2は、ショットキバリアダイオード単体によって構成されている。
【0059】
第1順方向特性FC1を参照して、第1参考整流器R1は、比較的高い順方向閾値電圧Vth(ここでは0.7V程度)を有している。第1参考整流器R1の順方向電流IFは、比較的緩慢な立ち上がり特性を有している。第1参考整流器R1において100mAの順方向電流IFを流すときの消費電力は、順方向電圧VFおよび順方向電流IFの乗算によって算出され、ここでは、113mW(=1.13V×100mA)である。
【0060】
第2順方向特性FC2を参照して、第2参考整流器R2は、第1参考整流器R1の順方向閾値電圧Vthよりも低い順方向閾値電圧Vth(ここでは0.2V程度)を有している。第2参考整流器R2の順方向電流IFは、第1参考整流器R1と比較して急峻な立ち上がり特性を有している。
【0061】
つまり、第2参考整流器R2は、第1参考整流器R1と比較して優れたスイッチング応答特性を有している。第2参考整流器R2において100mAの順方向電流IFを流すときの消費電力は、順方向電圧VFおよび順方向電流IFの乗算によって算出され、ここでは、32mW(=0.32V×100mA)である。
【0062】
第3順方向特性FC3を参照して、整流器1Aは、この形態では、第1参考整流器R1の順方向閾値電圧Vthよりも低く、かつ、第2参考整流器R2の順方向閾値電圧Vthよりも高い順方向閾値電圧Vth(第1ゲート閾値電圧Vgth1)を有している。順方向閾値電圧Vth(第1ゲート閾値電圧Vgth1)は、この形態では、0.5V程度である。整流器1Aの順方向電流IFは、第1参考整流器R1および第2参考整流器R2と比較して急峻な立ち上がり特性を有している。
【0063】
具体的には、整流器1Aの順方向電流IFは、第1電圧範囲RV1に小電流領域IFSを有し、第2電圧範囲RV2に大電流領域IFLを有している。第1電圧範囲RV1は、順方向閾値電圧Vthおよび当該順方向閾値電圧Vthよりも0.1V高い第1電圧V1の間の電圧範囲である。第2電圧範囲RV2は、第1電圧V1および当該第1電圧V1よりも0.1V高い第2電圧V2の間の電圧範囲である。
【0064】
順方向電流IFの増幅率ARは、1を超えて100以下であることが好ましい。増幅率ARは、小電流領域IFSにおける順方向電流IFの第1最大値に対する大電流領域IFLにおける順方向電流IFの第2最大値の比である。
【0065】
増幅率ARは、1を超えて5以下、5以上10以下、10以上15以下、15以上20以下、20以上25以下、25以上30以下、30以上35以下、35以上40以下、40以上45以下、45以上50以下、50以上60以下、60以上70以下、70以上80以下、80以上90以下、および、90以上100以下のいずれか1つの範囲に属する値に設定されていてもよい。増幅率ARは、5以上であることが好ましい。増幅率ARは、10以上であることが特に好ましい。
【0066】
順方向電流IFの第1最大値は、0.01A以上0.2A以下であってもよい。第1最大値は、0.15A以下であってもよい。第1最大値は、0.1A以下であることが好ましい。順方向電流IFの第2最大値は、0.1A以上5A以下であってもよい。第2最大値は、0.5A以上であることが好ましい。第2最大値は、1A以上であることが特に好ましい。第2最大値は、4A以下であってもよい。第2最大値は、3A以下であってもよい。第2最大値は、2A以下であってもよい。
【0067】
第1電圧範囲RV1における小電流領域IFSの接線の傾きは、0.1以上1以下である。小電流領域IFSの接線の傾きは、0.1以上0.25以下、0.25以上0.5以下、0.5以上0.75以下、および、0.75以上1以下のいずれか1つの範囲に属する値に設定されていてもよい。小電流領域IFSの接線の傾きは、0.5以上0.9以下であることが好ましい。
【0068】
第2電圧範囲RV2における大電流領域IFLの接線の傾きは、小電流領域IFSの接線の傾きよりも大きい。大電流領域IFLの接線の傾きは、2.5以上20以下である。大電流領域IFLの接線の傾きは、2.5以上5以下、5以上7.5以下、7.5以上10以下、10以上12.5以下、12.5以上15以下、15以上17.5以下、および、17.5以上20以下のいずれか1つの範囲に属する値に設定されていてもよい。
【0069】
大電流領域IFLの接線の傾きは、5以上であることが好ましい。大電流領域IFLの接線の傾きは、10以上であることが特に好ましい。大電流領域IFLの接線の傾きは、15以下であることが好ましい。
【0070】
このように、整流器1Aは、第1参考整流器R1および第2参考整流器R2と比較して優れたスイッチング応答特性を有している。とりわけ、整流器1Aは、順方向閾値電圧Vthよりも0.2V高い順方向電圧VFを印加することによって、0.5A以上の順方向電流IFを流すことが可能である。具体的には、整流器1Aは、順方向閾値電圧Vthよりも0.2V高い順方向電圧VFを印加することによって、1A以上の順方向電流IFを流すことが可能である。
【0071】
つまり、整流器1Aによれば、第2参考整流器R2と比較して、大電流領域IFL(たとえば0.5A以上の電流領域)における消費電力を削減できる。整流器1Aにおいて100mAの順方向電流IFを流すときの消費電力は、順方向電流IFの2乗と第1オン抵抗Ron1の乗算(IF×IF×R1、50mΩ≦Ron1≦200mΩ)によって算出され、ここでは、0.5mW以上2mW以下である。つまり、整流器1Aによれば、第1参考整流器R1および第2参考整流器R2と比較して、消費電力を削減できる。
【0072】
この形態では、整流器1Aが第2参考整流器R2の順方向閾値電圧Vthよりも高い順方向閾値電圧Vth(第1ゲート閾値電圧Vgth1)を有する例が示された。しかし、順方向閾値電圧Vthは、第1ゲート閾値電圧Vgth1によって所望の値(つまり、0Vを超えて1.0V以下)に調節可能である。
【0073】
図5は、逆方向特性を示すグラフである。図5において、縦軸は逆方向電流IR[μA]を示し、横軸は逆方向電圧VR[V]を示している。図5には、第1逆方向特性RC1および第2逆方向特性RC2が示されている。第1逆方向特性RC1は、前述の第1参考整流器R1(pn接合ダイオード)の特性を示している。第2逆方向特性RC2は、前述の第2参考整流器R2(ショットキバリアダイオード)の特性を示している。
【0074】
第1逆方向特性RC1を参照して、第1参考整流器R1の逆方向電流IRは、測定電圧範囲(0V~20V)において1μA未満であった。つまり、第1参考整流器R1は、順方向特性において比較的大きい消費電力特性を有し、逆方向特性において比較的小さい消費電力特性を有している。
【0075】
第2逆方向特性RC2を参照して、第2参考整流器R2の逆方向電流IRは、逆方向電圧VRの増加と共に増加し、第1参考整流器R1の逆方向電流IRよりも大きくなる。つまり、第2参考整流器R2は、順方向特性において第1参考整流器R1よりも小さい消費電力特性を有し、逆方向特性において第1参考整流器R1よりも大きい消費電力特性を有している。
【0076】
図6は、逆方向特性を示すグラフである。図6において、縦軸は逆方向電流IR[mA]を示し、横軸は逆方向電圧VR[V]を示している。図6には、第3逆方向特性RC3が示されている。第3逆方向特性RC3は、整流器1Aの特性を示している。
【0077】
第3逆方向特性RC3を参照して、整流器1Aの逆方向電流IR(リーク電流)は、第1ダイオード対DP1の第1ブレークダウン電圧VB1未満の電圧範囲(ここでは0V以上30V未満)において1μA未満であった。逆方向電圧VRが第1ブレークダウン電圧VB1以上(ここでは30V以上)になると、第1ダイオード対DP1がブレークダウンし、逆方向電流IRが急激に立ち上がる。
【0078】
整流器1Aの逆方向電流IRは、第1ブレークダウン電圧VB1未満の範囲において第1参考整流器R1の逆方向電流IRの特性とほぼ同等の特性を有している。つまり、整流器1Aは、順方向特性において第1参考整流器R1よりも小さい消費電力特性を有し、逆方向特性において第2参考整流器R2よりも小さい消費電力特性を有している。さらに、整流器1Aは、順方向特性の大電流領域IFL(たとえば0.5A以上の電流領域)において第2参考整流器R2よりも小さい消費電力特性を有している。
【0079】
以上、整流器1Aは、ドレインソースコモン電界効果型の第1トランジスタTr1およびドレインソースコモン電界効果型の第2トランジスタTr2を含む。第2トランジスタTr2は、第1トランジスタTr1をダイオード動作させるように第1トランジスタTr1にダイオード接続され、第1トランジスタTr1と整流段Rを構成している。
【0080】
この構造によれば、新規な構成を有する整流器1Aを提供できる。具体的には、pn接合ダイオード(第1参考整流器R1)やショットキバリアダイオード(第2参考整流器R2)では実現し得ない電気的特性を有する整流器1Aを提供できる(図4等も併せて参照)。
【0081】
整流段Rは、第1トランジスタTr1の第1ゲート閾値電圧Vgth1を順方向閾値電圧Vthとして有している。整流段Rは、第1トランジスタTr1に順方向電圧VFが印加されたとき、第1トランジスタTr1がオン状態になり、第2トランジスタTr2がオフ状態になるように構成されている。順方向電流IFは、第1トランジスタTr1に流れ、第2トランジスタTr2には流れない。
【0082】
整流段Rは、第1トランジスタTr1に逆方向電圧VRが印加されたとき、第1トランジスタTr1がオフ状態になり、第2トランジスタTr2がオン状態になるように構成されている。逆方向電流IRは、第1トランジスタTr1に流れ、第2トランジスタTr2には流れない。
【0083】
第1トランジスタTr1は、この形態では、pチャネル型である。第1トランジスタTr1は、第1ゲートG1、整流段Rのアノードとして機能する第1ドレインソースDS1、整流段Rのカソードとして機能する第2ドレインソースDS2、ならびに、第1ドレインソースDS1に電気的に接続された第1バックゲートBG1を有している。
【0084】
第2トランジスタTr2は、第1トランジスタTr1に対するバイアス回路として設けられている。具体的には、第2トランジスタTr2は、第1トランジスタTr1の第1ゲートG1を零電位に固定するバイアス回路を構成している。第1ゲートG1は、整流段Rのオン時および整流段Rのオフ時の双方において零電位に固定されることが好ましい。
【0085】
第2トランジスタTr2は、この形態では、nチャネル型である。第2トランジスタTr2は、第2ドレインソースDS2に電気的に接続された第2ゲートG2、第1ドレインソースDS1および第1バックゲートBG1に電気的に接続された第3ドレインソースDS3、第1ゲートG1に電気的に接続された第4ドレインソースDS4、ならびに、第1ドレインソースDS1および第1バックゲートBG1に電気的に接続された第2バックゲートBG2を有している。この構成によれば、整流段Rのオン時および整流段Rのオフ時の双方において、第1ゲートG1が零電位に固定される。
【0086】
第1ドレインソースDS1にはアノード電位が付与され、第2ドレインソースDS2にはカソード電位が付与される。第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間に順方向電圧VFが印加されたとき、第1トランジスタTr1がオフ状態になり、第2トランジスタTr2がオン状態になる。
【0087】
順方向電流IFは、このような制御状態において、第1トランジスタTr1を介して第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。順方向電流IFは、具体的には、第1トランジスタTr1を介して第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。順方向電流IFは、具体的には、第1トランジスタTr1の第1チャネルCH1を介して第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0088】
第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間に逆方向電圧VRが印加されたとき、第1トランジスタTr1がオフ状態になり、第2トランジスタTr2がオン状態になる。逆方向電流IRは、このような制御状態において、第1トランジスタTr1を介して第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0089】
第1トランジスタTr1は、第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2に電気的に接続された第1ダイオード対DP1を有している。第1ダイオード対DP1は、逆バイアスに直列接続された第1ボディダイオードD1および第2ボディダイオードD2を含む。
【0090】
前述の逆方向電流IRは、第1トランジスタTr1の第1ダイオード対DP1を介して第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。逆方向電圧VRが第1ダイオード対DP1の第1ブレークダウン電圧VB1以上であるとき、逆方向電流IRとしてのブレークダウン電流が第1ダイオード対DP1を介して第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0091】
第2トランジスタTr2は、第3ドレインソースDS3および第4ドレインソースDS4に電気的に接続された第2ダイオード対DP2を含む。第2ダイオード対DP2は、逆バイアスに直列接続された第3ボディダイオードD3および第4ボディダイオードD4を有している。
【0092】
整流器1Aは、図7および図8に示される構成を有していてもよい。図7は、図1に示す整流器1Aの第1構成例を示す概略平面図である。図8は、図7に示す整流器1Aの概略断面図である。
【0093】
図7および図8に示されるように、整流器1Aは、第1トランジスタTr1および第2トランジスタTr2が形成されたチップ11を含む単一チップ構造を有していてもよい。チップ11は、直方体形状に形成され、四角形状の主面12を有している。チップ11は、Si単結晶またはワイドバンドギャップ半導体の単結晶(たとえばSiC単結晶)を含んでいてもよい。
【0094】
整流器1Aは、主面12に設けられた少なくとも1つ(この形態では複数)の回路領域13を含む。複数の回路領域13は、この形態では、第1回路領域13Aおよび第2回路領域13Bを含む。第1回路領域13Aは主面12の一方側に設けられ、第2回路領域13Bは主面12の他方側に設けられている。第2回路領域13Bは、第1回路領域13Aから電気的分離されている。
【0095】
整流器1Aは、第1回路領域13Aに形成された第1トランジスタTr1、および、第2回路領域13Bに形成された第2トランジスタTr2を含む。この形態では、第1トランジスタTr1はpチャネルのドレインソースコモン電界効果型のp型トランジスタ構造14を含み、第2トランジスタTr2はnチャネルのドレインソースコモン電界効果型のn型トランジスタ構造15を含む。以下、p型トランジスタ構造14(=第1トランジスタTr1)の構成およびn型トランジスタ構造15(=第2トランジスタTr2)の構成が順に説明される。
【0096】
図8を参照して、p型トランジスタ構造14(第1トランジスタTr1)は、トレンチゲート・ラテラル構造を有している。p型トランジスタ構造14は、第1回路領域13Aにおいて主面12の表層部に形成されたn型の第1バックゲート領域21を含む。第1バックゲート領域21は、主面12に沿って延びる層状に形成されている。
【0097】
p型トランジスタ構造14は、第1回路領域13Aの主面12の表層部において主面12および第1バックゲート領域21の間の領域に形成されたp型の第1ドリフト領域22を含む。第1バックゲート領域21は、主面12および第1バックゲート領域21の間の領域を主面12に沿って延びる層状に形成され、主面12から露出している。
【0098】
p型トランジスタ構造14は、第1回路領域13Aの主面12に形成された複数の第1トレンチゲート構造23を含む。図8では、1つの第1トレンチゲート構造23が示されている。複数の第1トレンチゲート構造23は、主面12に沿う第1方向に延びる帯状にそれぞれ形成され、主面12に沿って第1方向に交差(好ましくは直交)する第2方向に間隔を空けて配列されていてもよい。複数の第1トレンチゲート構造23は、第1バックゲート領域21に至るように第1ドリフト領域22を貫通し、第1バックゲート領域21内に位置する底壁を有している。
【0099】
各第1トレンチゲート構造23は、第1トレンチ24、第1ゲート絶縁膜25、第1ゲート電極26および第1絶縁体27を含む。第1トレンチ24は、主面12に形成され、第1トレンチゲート構造23の壁面を区画している。第1ゲート絶縁膜25は、第1トレンチ24の壁面を被覆している。
【0100】
第1ゲート電極26は、第1ゲート絶縁膜25を挟んで第1トレンチ24に埋設されている。第1ゲート電極26は、この形態では、第1トレンチ24の開口端から第1トレンチ24の底壁側に間隔を空けて第1トレンチ24に埋設されている。第1ゲート電極26は、第1トレンチ24の深さ範囲中間部から第1トレンチ24の底壁側に間隔を空けて埋設されていることが好ましい。第1ゲート電極26は、第1バックゲート領域21および第1ドリフト領域22の境界部を横切る厚さを有し、第1ゲート絶縁膜25を挟んで第1バックゲート領域21および第1ドリフト領域22に対向している。
【0101】
第1絶縁体27は、第1ゲート電極26を被覆するように第1ゲート絶縁膜25を挟んで第1トレンチ24に埋設されている。第1絶縁体27は、第1トレンチ24から露出し、第1ゲート絶縁膜25を挟んで第1ドリフト領域22に対向している。複数の第1トレンチゲート構造23は、第1回路領域13Aに複数の第1メサ領域28および複数の第2メサ領域29を交互に区画している。
【0102】
p型トランジスタ構造14は、複数の第1メサ領域28に形成された複数のp型の第1ドレインソース領域31を含む。複数の第1ドレインソース領域31は、ドレイン領域およびソース領域を一体的に含む領域である。複数の第1ドレインソース領域31は、この形態では、第1ドリフト領域22の一部を利用して形成されている。
【0103】
p型トランジスタ構造14は、複数の第2メサ領域29に形成された複数のp型の第2ドレインソース領域32を含む。複数の第2ドレインソース領域32は、ドレイン領域およびソース領域を一体的に含む領域である。複数の第2ドレインソース領域32は、この形態では、第1ドリフト領域22の一部を利用して形成されている。
【0104】
複数の第2ドレインソース領域32は、1つの第1トレンチゲート構造23を挟んで複数の第1ドレインソース領域31と交互に形成されている。1つの第1トレンチゲート構造23に着目すると、第1トレンチゲート構造23に対して一方側の領域(第1メサ領域28)に第1ドレインソース領域31が形成され、第1トレンチゲート構造23に対して他方側の領域(第2メサ領域29)に第2ドレインソース領域32が形成されている。
【0105】
p型トランジスタ構造14は、複数の第1ドレインソース領域31の表層部に形成された複数のp型の第1コンタクト領域33を含む。第1コンタクト領域33は、第1ドレインソース領域31よりも高いp型不純物濃度を有している。第1コンタクト領域33は、第1ドレインソース領域31の一部を挟んで第1絶縁体27に対向している。
【0106】
p型トランジスタ構造14は、複数の第2ドレインソース領域32の表層部に形成された複数のp型の第2コンタクト領域34を含む。第2コンタクト領域34は、第2ドレインソース領域32よりも高いp型不純物濃度を有している。第2コンタクト領域34は、第2ドレインソース領域32の一部を挟んで第1絶縁体27に対向している。
【0107】
p型トランジスタ構造14は、第1バックゲート領域21内において複数の第1トレンチゲート構造23の底壁に沿う領域にそれぞれ形成された複数のn型の第1チャネル領域35を含む。第1チャネル領域35は、第1バックゲート領域21よりも高いn型不純物濃度を有している。第1チャネル領域35は、第1ゲート絶縁膜25を挟んで第1ゲート電極26に対向している。
【0108】
第1チャネル領域35は、第1ドレインソース領域31の底部および第2ドレインソース領域32の底部から第1トレンチゲート構造23の底壁側に間隔を空けて形成されていることが好ましい。第1チャネル領域35は、第1バックゲート領域21の一部を挟んで第1ドレインソース領域31の底部および第2ドレインソース領域32の底部に対向していることが好ましい。
【0109】
p型トランジスタ構造14は、第1バックゲート領域21および第1ドレインソース領域31の間のpn接合部によって形成された第1ボディダイオード部36を含む。第1ボディダイオード部36は、第1ドレインソース領域31によって形成されたアノード、および、第1バックゲート領域21によって形成されたカソードを含む。
【0110】
p型トランジスタ構造14は、第1バックゲート領域21および第2ドレインソース領域32の間のpn接合部によって形成された第2ボディダイオード部37を含む。第2ボディダイオード部37は、第2ドレインソース領域32によって形成されたアノード、および、第1バックゲート領域21によって形成されたカソードを含む。つまり、第2ボディダイオード部37のカソードは、第1ボディダイオード部36のカソードに電気的に接続されている。これにより、第1ドレインソース領域31および第2ドレインソース領域32の間に第1ダイオード対部38が形成されている。
【0111】
図8を参照して、n型トランジスタ構造15(第2トランジスタTr2)は、トレンチゲート・ラテラル構造を有している。n型トランジスタ構造15は、第2回路領域13Bにおいて主面12の表層部に形成されたp型の第2バックゲート領域41を含む。第2バックゲート領域41は、主面12に沿って延びる層状に形成されている。
【0112】
n型トランジスタ構造15は、第2回路領域13Bの主面12の表層部において主面12および第2バックゲート領域41の間の領域に形成されたn型の第2ドリフト領域42を含む。第2バックゲート領域41は、主面12および第2バックゲート領域41の間の領域を主面12に沿って延びる層状に形成され、主面12から露出している。
【0113】
n型トランジスタ構造15は、第2回路領域13Bの主面12に形成された複数の第2トレンチゲート構造43を含む。図8では、1つの第2トレンチゲート構造43が示されている。複数の第2トレンチゲート構造43は、主面12に沿う第1方向に延びる帯状にそれぞれ形成され、主面12に沿って第1方向に交差(好ましくは直交)する第2方向に間隔を空けて配列されていてもよい。複数の第2トレンチゲート構造43は、第2バックゲート領域41に至るように第2ドリフト領域42を貫通し、第2バックゲート領域41内に位置する底壁を有している。
【0114】
各第2トレンチゲート構造43は、第2トレンチ44、第2ゲート絶縁膜45、第2ゲート電極46および第2絶縁体47を含む。第2トレンチ44は、主面12に形成され、第2トレンチゲート構造43の壁面を区画している。第2ゲート絶縁膜45は、第2トレンチ44の壁面を被覆している。
【0115】
第2ゲート電極46は、第2ゲート絶縁膜45を挟んで第2トレンチ44に埋設されている。第2ゲート電極46は、この形態では、第2トレンチ44の開口端から第2トレンチ44の底壁側に間隔を空けて第2トレンチ44に埋設されている。第2ゲート電極46は、第2トレンチ44の深さ範囲中間部から第2トレンチ44の底壁側に間隔を空けて埋設されていることが好ましい。第2ゲート電極46は、第2バックゲート領域41および第2ドリフト領域42の境界部を横切る厚さを有し、第2ゲート絶縁膜45を挟んで第2バックゲート領域41および第2ドリフト領域42に対向している。
【0116】
第2絶縁体47は、第2ゲート電極46を被覆するように第2ゲート絶縁膜45を挟んで第2トレンチ44に埋設されている。第2絶縁体47は、第2トレンチ44から露出し、第2ゲート絶縁膜45を挟んで第2ドリフト領域42に対向している。複数の第2トレンチゲート構造43は、第2回路領域13Bの主面12に複数の第3メサ領域48および複数の第4メサ領域49を交互に区画している。
【0117】
n型トランジスタ構造15は、複数の第3メサ領域48に形成された複数のn型の第3ドレインソース領域51を含む。複数の第3ドレインソース領域51は、ドレイン領域およびソース領域を一体的に含む領域である。複数の第3ドレインソース領域51は、この形態では、第2ドリフト領域42の一部を利用して形成されている。
【0118】
n型トランジスタ構造15は、複数の第4メサ領域49に形成された複数のn型の第4ドレインソース領域52を含む。複数の第4ドレインソース領域52は、ドレイン領域およびソース領域を一体的に含む領域である。複数の第4ドレインソース領域52は、この形態では、第2ドリフト領域42の一部を利用して形成されている。
【0119】
複数の第4ドレインソース領域52は、1つの第2トレンチゲート構造43を挟んで複数の第3ドレインソース領域51と交互に形成されている。1つの第2トレンチゲート構造43に着目すると、第2トレンチゲート構造43に対して一方側の領域(第3メサ領域48)に第3ドレインソース領域51が形成され、第2トレンチゲート構造43に対して他方側の領域(第4メサ領域49)に第4ドレインソース領域52が形成されている。
【0120】
n型トランジスタ構造15は、複数の第3ドレインソース領域51の表層部に形成された複数のn型の第3コンタクト領域53を含む。第3コンタクト領域53は、第3ドレインソース領域51よりも高いn型不純物濃度を有している。第3コンタクト領域53は、第3ドレインソース領域51の一部を挟んで第2絶縁体47に対向している。
【0121】
n型トランジスタ構造15は、複数の第4ドレインソース領域52の表層部に形成された複数のn型の第4コンタクト領域54を含む。第4コンタクト領域54は、第4ドレインソース領域52よりも高いn型不純物濃度を有している。第4コンタクト領域54は、第4ドレインソース領域52の一部を挟んで第2絶縁体47に対向している。
【0122】
n型トランジスタ構造15は、第2バックゲート領域41内において複数の第2トレンチゲート構造43の底壁に沿う領域にそれぞれ形成された複数のp型の第2チャネル領域55を含む。第2チャネル領域55は、第2バックゲート領域41よりも高いp型不純物濃度を有している。第2チャネル領域55は、第2ゲート絶縁膜45を挟んで第2ゲート電極46に対向している。
【0123】
第2チャネル領域55は、第3ドレインソース領域51の底部および第4ドレインソース領域52の底部から第2トレンチゲート構造43の底壁側に間隔を空けて形成されていることが好ましい。第2チャネル領域55は、第2バックゲート領域41の一部を挟んで第3ドレインソース領域51の底部および第4ドレインソース領域52の底部に対向していることが好ましい。
【0124】
n型トランジスタ構造15は、第2バックゲート領域41および第3ドレインソース領域51の間のpn接合部によって形成された第3ボディダイオード部56を含む。第3ボディダイオード部56は、第2バックゲート領域41によって形成されたアノード、および、第3ドレインソース領域51によって形成されたカソードを含む。
【0125】
n型トランジスタ構造15は、第2バックゲート領域41および第4ドレインソース領域52の間のpn接合部によって形成された第4ボディダイオード部57を含む。第4ボディダイオード部57は、第2バックゲート領域41によって形成されたアノード、および、第4ドレインソース領域52によって形成されたカソードを含む。つまり、第4ボディダイオード部57のアノードは、第3ボディダイオード部56のアノードに電気的に接続されている。これにより、第3ドレインソース領域51および第4ドレインソース領域52の間に第2ダイオード対部58が形成されている。
【0126】
このように、第1構成例に係る整流器1Aでは、第1トランジスタTr1としてのp型トランジスタ構造14が第1回路領域13Aに形成され、第2トランジスタTr2としてのn型トランジスタ構造15が第2回路領域13Bに形成されている。
【0127】
第1トランジスタTr1の第1ゲートG1、第1ドレインソースDS1、第2ドレインソースDS2、第1バックゲートBG1、第1チャネルCH1および第1ダイオード対DP1は、p型トランジスタ構造14の第1トレンチゲート構造23、第1ドレインソース領域31(第1コンタクト領域33)、第2ドレインソース領域32(第2コンタクト領域34)、第1バックゲート領域21、第1チャネル領域35(第1バックゲート領域21の一部)および第1ダイオード対部38によってそれぞれ構成されている。
【0128】
第2トランジスタTr2の第2ゲートG2、第3ドレインソースDS3、第4ドレインソースDS4、第2バックゲートBG2、第2チャネルCH2および第2ダイオード対DP2は、n型トランジスタ構造15の第2トレンチゲート構造43、第3ドレインソース領域51(第3コンタクト領域53)、第4ドレインソース領域52(第4コンタクト領域54)、第2バックゲート領域41、第2チャネル領域55(第2バックゲート領域41の一部)および第2ダイオード対部58によってそれぞれ構成されている。
【0129】
n型トランジスタ構造15は、p型トランジスタ構造14がダイオード動作するようにp型トランジスタ構造14にダイオード接続されている。具体的には、第2トレンチゲート構造43は、第2ドレインソース領域32に電気的に接続されている。また、第3ドレインソース領域51は、第1ドレインソース領域31および第1バックゲート領域21に電気的に接続されている。また、第4ドレインソース領域52は、第1トレンチゲート構造23に電気的に接続されている。また、第2バックゲート領域41は、第1ドレインソース領域31および第1バックゲート領域21に電気的に接続されている。
【0130】
p型トランジスタ構造14側では第1バックゲート領域21が第1ドレインソース領域31に電気的に接続され、n型トランジスタ構造15側では第2バックゲート領域41が第3ドレインソース領域51に電気的に接続されている。このようにして、単一のチップ11において、p型トランジスタ構造14(第1トランジスタTr1)およびn型トランジスタ構造15(第2トランジスタTr2)を含む整流段Rが構成されている。
【0131】
このような電気的接続は、主面12の上に多層配線構造を形成することによって実現されてもよい。この場合、多層配線構造は、主面12の上に積層された複数の絶縁膜、および、複数の絶縁膜の上にビア電極を介して多段に積層配置した複数の配線を含む。この場合、アノード端Aは、アノード端子として多層配線構造の上に配置されてもよい。また、カソード端Kは、カソード端子として多層配線構造の上に配置されてもよい。つまり、整流器1Aは、2端子デバイスとして構成されてもよい。
【0132】
整流器1Aは、図9および図10に示される構成を有していてもよい。図9は、図1に示す整流器1Aの第2構成例を示す概略平面図である。図10は、図9に示す整流器1Aの概略断面図である。図9および図10に示されるように、整流器1Aは、第1トランジスタTr1が形成された第1チップ11Aおよび第2トランジスタTr2が形成された第2チップ11Bを含む複合チップ構造を有していてもよい。
【0133】
第1チップ11Aは、直方体形状に形成され、四角形状の第1主面12Aを有している。第1チップ11Aは、Si単結晶またはワイドバンドギャップ半導体の単結晶(たとえばSiC単結晶)を含んでいてもよい。整流器1Aは、第1主面12Aに設けられた第1回路領域13A、および、第1回路領域13Aにおいて第1主面12Aに形成された第1トランジスタTr1を含む。第1トランジスタTr1は、この形態では、p型トランジスタ構造14を含む。
【0134】
p型トランジスタ構造14は、第1構成例の場合と同様、n型の第1バックゲート領域21、p型の第1ドリフト領域22、複数の第1トレンチゲート構造23、複数のp型の第1ドレインソース領域31、複数のp型の第2ドレインソース領域32、複数のp型の第1コンタクト領域33、複数のp型の第2コンタクト領域34、複数のn型の第1チャネル領域35および第1ダイオード対部38を含む。
【0135】
第2チップ11Bは、直方体形状に形成され、四角形状の第2主面12Bを有している。第2チップ11Bは、Si単結晶またはワイドバンドギャップ半導体の単結晶(たとえばSiC単結晶)を含んでいてもよい。整流器1Aは、第2主面12Bに設けられた第2回路領域13B、および、第2回路領域13Bにおいて第2主面12Bに形成された第2トランジスタTr2を含む。第2トランジスタTr2は、この形態では、n型トランジスタ構造15を含む。
【0136】
n型トランジスタ構造15は、第1構成例の場合と同様、p型の第2バックゲート領域41、n型の第2ドリフト領域42、複数の第2トレンチゲート構造43、複数のn型の第3ドレインソース領域51、複数のn型の第4ドレインソース領域52、複数のn型の第3コンタクト領域53、複数のn型の第4コンタクト領域54、複数のp型の第2チャネル領域55および第2ダイオード対部58を含む。
【0137】
p型トランジスタ構造14に対するn型トランジスタ構造15の電気的な接続形態は、第1構成例の場合と同様である。このような電気的接続は、PCB(Printed Circuit Board)等の実装基板に形成された複数の配線によって実現されてもよい。この場合、アノード端Aおよびカソード端Kは、実装基板上の配線によって形成されていてもよい。
【0138】
むろん、このような電気的接続は、第1チップ11Aおよび第2チップ11Bが搭載されたパッケージ内において複数のボンディングワイヤやリード端子等の接続形態を工夫することによって実現されてもよい。この場合、アノード端Aおよびカソード端Kは、パッケージ内に配置されたリード端子によって形成されていてもよい。
【0139】
図11は、第2実施形態に係る整流器1Bの電気的構成を示す回路図である。図11を参照して、整流器1Bは、整流器1A(図2参照)を変形させた形態を有している。具体的には、整流器1Bは、nチャネルのドレインソースコモン電界効果型の第2トランジスタTr2に代えてpチャネルのドレインソースコモン電界効果型の第2トランジスタTr2を含む。
【0140】
第2トランジスタTr2は、Si単結晶に形成されたSi-トランジスタであってもよいし、ワイドバンドギャップ半導体の単結晶に形成されたワイドバンドギャップ半導体-トランジスタであってもよい。第2トランジスタTr2は、ワイドバンドギャップ半導体の一例としてのSiC単結晶に形成されたSiC-トランジスタであってもよい。
【0141】
第2トランジスタTr2は、第2ゲートG2、第3ドレインソースDS3、第4ドレインソースDS4、第2バックゲートBG2および第2ダイオード対DP2を有している。第3ドレインソースDS3および第4ドレインソースDS4は、ソースおよびドレインを一体的にそれぞれ含む。
【0142】
第2ダイオード対DP2は、カソードコモンとなるように逆バイアス接続された第3ボディダイオードD3および第4ボディダイオードD4を含み、第3ドレインソースDS3および第4ドレインソースDS4に電気的に接続されている。第3ボディダイオードD3はpn接合ダイオードであり、第4ボディダイオードD4はpn接合ダイオードである。
【0143】
第3ボディダイオードD3は、第3ドレインソースDS3に電気的に接続されたアノード、および、第4ボディダイオードD4に対するノードを形成するカソードを含む。第4ボディダイオードD4は、第4ドレインソースDS4に電気的に接続されたアノード、および、第3ボディダイオードD3のカソードに電気的に接続されたカソードを含む。第2トランジスタTr2は、前述の第2ゲート閾値電圧Vgth2、前述の第2ブレークダウン電圧VB2および前述の第2オン抵抗Ron2を有している。
【0144】
整流段Rは、第1トランジスタTr1がダイオード動作するように第2トランジスタTr2が第1トランジスタTr1にダイオード接続されることによって構成されている。具体的には、第2トランジスタTr2は、バイアス電圧によって第1トランジスタTr1をダイオード動作させるバイアス回路として設けられ、第1トランジスタTr1と共に整流段Rを構成している。
【0145】
さらに具体的には、第2ゲートG2が第1ドレインソースDS1および第1バックゲートBG1に電気的に接続され、第3ドレインソースDS3が第1ドレインソースDS1および第1バックゲートBG1に電気的に接続され、第4ドレインソースDS4が第1ゲートG1に電気的に接続され、第2バックゲートBG2が第2ドレインソースDS2に電気的に接続されている。
【0146】
つまり、第1トランジスタTr1側では第1バックゲートBG1が第1ドレインソースDS1に電気的に接続され、第2トランジスタTr2側では第3ドレインソースDS3が第2ゲートG2に電気的に接続されている。これにより、第1ドレインソースDS1、第1バックゲートBG1、第2ゲートG2および第3ドレインソースDS3が同電位に固定されている。また、第1ゲートG1および第4ドレインソースDS4が同電位に固定されている。また、第2ドレインソースDS2および第2バックゲートBG2が同電位に固定されている。
【0147】
第4ドレインソースDS4は、第1ゲートG1と短絡回路を構成し、第1ゲートG1および第4ドレインソースDS4の間で電圧降下を形成しない。つまり、第1ゲートG1および第4ドレインソースDS4は零電位(同電位)に固定される。第1ゲートG1および第4ドレインソースDS4は、整流段R(第1トランジスタTr1)のオン時およびオフ時の双方において零電位に固定される。
【0148】
図12Aは、図7に示す整流器1Bの順方向動作を示す回路図である。図12Bは、図7に示す整流器1Bの逆方向動作を示す回路図である。図12Aおよび図12Bを参照して、順方向動作では第1トランジスタTr1に順方向電流IFが流れ、逆方向動作では第1トランジスタTr1に逆方向電流IRが流れる。
【0149】
具体的には、図12Aを参照して、順方向動作では、第2ドレインソースDS2を基準とする順方向電位VFが第1ドレインソースDS1に印加され、第1ドレインソースDS1から第2ドレインソースDS2に向けて順方向電流IFが流れる。図12Aでは、第2ドレインソースDS2に基準電位Vref(たとえばグランド電位)が印加され、第1ドレインソースDS1に順方向電位VFが印加された場合の回路動作が示されている。
【0150】
順方向動作では、第1ドレインソースDS1、第1バックゲートBG1、第2ゲートG2および第3ドレインソースDS3が順方向電位VFに固定される。第2ドレインソースDS2および第2バックゲートBG2は、基準電位Vrefに固定される。第1ゲートG1および第4ドレインソースDS4は、電圧降下を形成せずに零電位に固定される。
【0151】
第1トランジスタTr1では、第1ゲートG1が零電位に固定され、第1バックゲートBG1が順方向電位VFに固定される。したがって、順方向電圧VFが第1ゲートG1の第1ゲート閾値電圧Vgth1未満の場合に第1トランジスタTr1はオフ状態になり、順方向電圧VFが第1ゲート閾値電圧Vgth1以上の場合に第1トランジスタTr1はオン状態になる。第1トランジスタTr1がオン状態になると、第1トランジスタTr1の第1チャネルCH1を介して第1ドレインソースDS1から第2ドレインソースDS2に向けて順方向電流IFが流れる。
【0152】
第2トランジスタTr2では、第2ゲートG2が順方向電位VFに固定され、第2バックゲートBG2が基準電位Vrefに固定される。したがって、第2トランジスタTr2はオフ状態になる。第2トランジスタTr2は第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間で電流経路を形成しないので、順方向電流IFは第2トランジスタTr2を流れない。
【0153】
このように、順方向動作では、第2トランジスタTr2に起因するバイアス効果によって、第1トランジスタTr1がオン状態に制御され、第2トランジスタTr2がオフ状態に制御される。順方向電流IFは、このような状態で、第1トランジスタTr1の第1チャネルCH1を介して第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0154】
つまり、第1トランジスタTr1は、整流段Rの順方向閾値電圧Vthとなる第1ゲート閾値電圧Vgth1を有している。また、第1トランジスタTr1は、整流段Rの順方向電流IFとなるドレインソース電流を流す。つまり、順方向電流IFの特性は、第1トランジスタTr1のドレインソース電流の特性に一致する。
【0155】
図12Bを参照して、逆方向動作では、第1ドレインソースDS1を基準とする逆方向電位VRが第2ドレインソースDS2に印加され、第2ドレインソースDS2から第1ドレインソースDS1に向けて逆方向電流IRが流れる。図12Bでは、第1ドレインソースDS1に基準電位Vref(たとえばグランド電位)が印加され、第2ドレインソースDS2に逆方向電位VRが印加された場合の回路動作が示されている。
【0156】
逆方向動作では、第1ドレインソースDS1、第1バックゲートBG1、第2ゲートG2および第3ドレインソースDS3が基準電位Vrefに固定される。第2ドレインソースDS2および第2バックゲートBG2は、逆方向電位VRに固定される。第1ゲートG1および第4ドレインソースDS4は、電圧降下を形成せずに零電位に固定される。
【0157】
第1トランジスタTr1では、第1ゲートG1が零電位に固定され、第1バックゲートBG1が基準電位Vref(零電位)に固定される。したがって、第1トランジスタTr1はオフ状態になる。逆方向電圧VRが第1ブレークダウン電圧VB1未満の場合、逆方向電流IRとしてのリーク電流が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0158】
逆方向電圧VRが第1ブレークダウン電圧VB1以上の場合、第1ダイオード対DP1がブレークダウンし、逆方向電流IRとしてのブレークダウン電流が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。リーク電流の特性およびブレークダウン電流の特性は、いずれも第1ダイオード対DP1の特性に依存する。
【0159】
第2トランジスタTr2では、第2ゲートG2が基準電位Vrefに固定され、第2バックゲートBG2が逆方向電位VRに固定される。したがって、逆方向電圧VRが第2ゲート閾値電圧Vgth2未満の場合に第2トランジスタTr2がオフ状態になり、逆方向電圧VRが第2ゲート閾値電圧Vgth2以上の場合に第2トランジスタTr2はオン状態になる。
【0160】
第2ゲート閾値電圧Vgth2は、第1ブレークダウン電圧VB1未満である。したがって、第2トランジスタTr2は、第1ダイオード対DP1のブレークダウン前にオン状態になる。第2トランジスタTr2は第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間で電流経路を形成しないので、逆方向電流IRは第2トランジスタTr2を流れない。
【0161】
このように、逆方向動作では、第2トランジスタTr2に起因するバイアス効果によって、第1トランジスタTr1がオフ状態に制御され、第2トランジスタTr2がオン状態に制御される。逆方向電流IRは、このような状態で、第1ダイオード対DP1を介して第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0162】
つまり、逆方向電流IRの特性は、第1ダイオード対DP1の特性に一致する。逆方向電圧VRに対する整流段Rの耐圧は、第1ダイオード対DP1の耐圧(第1ブレークダウン電圧VB1)および第2トランジスタTr2のゲート耐圧(ゲート絶縁破壊耐圧)のうちの低い耐圧に制限される。
【0163】
以上、整流器1Bは、ドレインソースコモン電界効果型の第1トランジスタTr1およびドレインソースコモン電界効果型の第2トランジスタTr2を含む。第2トランジスタTr2は、第1トランジスタTr1をダイオード動作させるように第1トランジスタTr1にダイオード接続され、第1トランジスタTr1と整流段Rを構成している。
【0164】
第1トランジスタTr1は、この形態では、pチャネル型である。第2トランジスタTr2は、この形態では、pチャネル型である。この構造によれば、整流器1Aと同様、新規な構成を有する整流器1Bを提供できる。具体的には、pn接合ダイオード(第1参考整流器R1)やショットキバリアダイオード(第2参考整流器R2)では実現し得ない電気的特性を有する整流器1Bを提供できる(図4等も併せて参照)。
【0165】
整流器1Bは、図13および図14に示される構成を有していてもよい。図13は、図11に示す整流器1Bの第1構成例を示す概略平面図である。図14は、図13に示す整流器1Bの概略断面図である。図13および図14に示されるように、整流器1Bは、第1構成例に係る整流器1A(図7および図8参照)と同様、第1トランジスタTr1および第2トランジスタTr2が形成されたチップ11を含む単一チップ構造を有していてもよい。
【0166】
第1構成例に係る整流器1Bでは、第1トランジスタTr1としてのp型トランジスタ構造14が第1回路領域13Aに形成され、第2トランジスタTr2としてのp型トランジスタ構造14が第2回路領域13Bに形成されている。
【0167】
第1トランジスタTr1の第1ゲートG1、第1ドレインソースDS1、第2ドレインソースDS2、第1バックゲートBG1、第1チャネルCH1および第1ダイオード対DP1は、p型トランジスタ構造14の第1トレンチゲート構造23、第1ドレインソース領域31(第1コンタクト領域33)、第2ドレインソース領域32(第2コンタクト領域34)、第1バックゲート領域21、第1チャネル領域35(第1バックゲート領域21の一部)および第1ダイオード対部38によってそれぞれ構成されている。
【0168】
第2トランジスタTr2の第2ゲートG2、第3ドレインソースDS3、第4ドレインソースDS4、第2バックゲートBG2、第2チャネルCH2および第2ダイオード対DP2は、p型トランジスタ構造14の第1トレンチゲート構造23、第1ドレインソース領域31(第1コンタクト領域33)、第2ドレインソース領域32(第2コンタクト領域34)、第1バックゲート領域21、第1チャネル領域35(第1バックゲート領域21の一部)および第1ダイオード対部38によってそれぞれ構成されている。
【0169】
第2回路領域13B側のp型トランジスタ構造14は、第1回路領域13A側のp型トランジスタ構造14がダイオード動作するように第1回路領域13A側のp型トランジスタ構造14にダイオード接続されている。具体的には、第2回路領域13B側の第1トレンチゲート構造23は、第1回路領域13A側の第1ドレインソース領域31および第1バックゲート領域21に電気的に接続されている。
【0170】
また、第2回路領域13B側の第1ドレインソース領域31は、第1回路領域13A側の第1ドレインソース領域31および第1バックゲート領域21に電気的に接続されている。また、第2回路領域13B側の第2ドレインソース領域32は、第1回路領域13A側の第1トレンチゲート構造23に電気的に接続されている。また、第2回路領域13B側の第1バックゲート領域21は、第1回路領域13A側の第2ドレインソース領域32に電気的に接続されている。
【0171】
つまり、第1回路領域13A側では第1バックゲート領域21が第1ドレインソース領域31に電気的に接続され、第2回路領域13B側では第1ドレインソース領域31が第1トレンチゲート構造23に電気的に接続されている。このようにして、単一のチップ11において、p型トランジスタ構造14(第1トランジスタTr1)およびp型トランジスタ構造14(第2トランジスタTr2)を含む整流段Rが構成されている。
【0172】
このような電気的接続は、主面12の上に多層配線構造を形成することによって実現されてもよい。この場合、多層配線構造は、主面12の上に積層された複数の絶縁膜、および、複数の絶縁膜の上にビア電極を介して多段に積層配置した複数の配線を含む。この場合、アノード端Aは、アノード端子として多層配線構造の上に配置されてもよい。また、カソード端Kは、カソード端子として多層配線構造の上に配置されてもよい。つまり、整流器1Bは、2端子デバイスとして構成されてもよい。
【0173】
整流器1Bは、図15および図16に示される構成を有していてもよい。図15は、図11に示す整流器1Bの第2構成例を示す概略平面図である。図16は、図15に示す整流器1Bの概略断面図である。図15および図16に示されるように、整流器1Bは、第2構成例に係る整流器1A(図9および図10参照)と同様、第1トランジスタTr1が形成された第1チップ11Aおよび第2トランジスタTr2が形成された第2チップ11Bを含む複合チップ構造を有していてもよい。
【0174】
第2構成例に係る整流器1Bでは、第1トランジスタTr1としてのp型トランジスタ構造14が第1チップ11Aの第1回路領域13A(第1主面12A)に形成され、第2トランジスタTr2としてのp型トランジスタ構造14が第2チップ11Bの第2回路領域13B(第2主面12B)に形成されている。
【0175】
第1チップ11A側のp型トランジスタ構造14に対する第2チップ11B側のp型トランジスタ構造14の電気的な接続形態は、第1構成例の場合と同様である。このような電気的接続は、PCB等の実装基板に形成された複数の配線によって実現されてもよい。この場合、アノード端Aおよびカソード端Kは、実装基板上の配線によって形成されていてもよい。
【0176】
むろん、このような電気的接続は、第1チップ11Aおよび第2チップ11Bが搭載されたパッケージ内において複数のボンディングワイヤやリード端子等の接続形態を工夫することによって実現されてもよい。この場合、アノード端Aおよびカソード端Kは、パッケージ内に配置されたリード端子によって形成されていてもよい。
【0177】
図17は、第3実施形態に係る整流器1Cの電気的構成を示す回路図である。図17を参照して、整流器1Cは、整流器1Aを変形させた形態を有している。具体的には、整流器1Cは、pチャネルのドレインソースコモン電界効果型の第1トランジスタTr1に代えてnチャネルのドレインソースコモン電界効果型の第1トランジスタTr1を含み、nチャネルのドレインソースコモン電界効果型の第2トランジスタTr2に代えてpチャネルのドレインソースコモン電界効果型の第2トランジスタTr2を含む。
【0178】
図9を参照して、第1トランジスタTr1は、Si単結晶に形成されたSi-トランジスタであってもよいし、ワイドバンドギャップ半導体の単結晶に形成されたワイドバンドギャップ半導体-トランジスタであってもよい。第1トランジスタTr1は、ワイドバンドギャップ半導体の一例としてのSiC単結晶に形成されたSiC-トランジスタであってもよい。
【0179】
第1トランジスタTr1は、第1ゲートG1、第1ドレインソースDS1、第2ドレインソースDS2、第1バックゲートBG1および第1ダイオード対DP1を有している。第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2は、ソースおよびドレインを一体的にそれぞれ含む。
【0180】
第1ダイオード対DP1は、アノードコモンとなるように逆バイアス接続された第1ボディダイオードD1および第2ボディダイオードD2を含み、第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2に電気的に接続されている。第1ボディダイオードD1はpn接合ダイオードであり、第2ボディダイオードD2はpn接合ダイオードである。
【0181】
第1ボディダイオードD1は、第2ボディダイオードD2に対するノードを形成するアノード、および、第1ドレインソースDS1に電気的に接続されたカソードを含む。第2ボディダイオードD2は、第1ボディダイオードD1のアノードに電気的に接続されたアノード、および、第2ドレインソースDS2に電気的に接続されたカソードを含む。第1トランジスタTr1は、前述の第1ゲート閾値電圧Vgth1、前述の第1ブレークダウン電圧VB1および前述の第1オン抵抗Ron1を有している。
【0182】
第2トランジスタTr2は、Si単結晶に形成されたSi-トランジスタであってもよいし、ワイドバンドギャップ半導体の単結晶に形成されたワイドバンドギャップ半導体-トランジスタであってもよい。第2トランジスタTr2は、ワイドバンドギャップ半導体の一例としてのSiC単結晶に形成されたSiC-トランジスタであってもよい。
【0183】
第2トランジスタTr2は、第2ゲートG2、第3ドレインソースDS3、第4ドレインソースDS4、第2バックゲートBG2および第2ダイオード対DP2を有している。第3ドレインソースDS3および第4ドレインソースDS4は、ソースおよびドレインを一体的にそれぞれ含む。
【0184】
第2ダイオード対DP2は、カソードコモンとなるように逆バイアス接続された第3ボディダイオードD3および第4ボディダイオードD4を含み、第3ドレインソースDS3および第4ドレインソースDS4に電気的に接続されている。第3ボディダイオードD3はpn接合ダイオードであり、第4ボディダイオードD4はpn接合ダイオードである。
【0185】
第3ボディダイオードD3は、第3ドレインソースDS3に電気的に接続されたアノード、および、第4ボディダイオードD4に対するノードを形成するカソードを含む。第4ボディダイオードD4は、第4ドレインソースDS4に電気的に接続されたアノード、および、第3ボディダイオードD3のカソードに電気的に接続されたカソードを含む。第2トランジスタTr2は、前述の第2ゲート閾値電圧Vgth2、前述の第2ブレークダウン電圧VB2および前述の第2オン抵抗Ron2を有している。
【0186】
整流段Rは、第1トランジスタTr1がダイオード動作するように第2トランジスタTr2が第1トランジスタTr1にダイオード接続されることによって構成されている。具体的には、第2トランジスタTr2は、バイアス電圧によって第1トランジスタTr1をダイオード動作させるバイアス回路として設けられ、第1トランジスタTr1と共に整流段Rを構成している。
【0187】
さらに具体的には、第2ゲートG2が第1ゲートG1および第1ドレインソースDS1に電気的に接続され、第3ドレインソースDS3が第1ゲートG1および第1ドレインソースDS1に電気的に接続され、第4ドレインソースDS4が第1バックゲートBG1に電気的に接続され、第2バックゲートBG2が第2ドレインソースDS2に電気的に接続されている。
【0188】
つまり、第1トランジスタTr1側では第1ドレインソースDS1が第1ゲートG1に電気的に接続され、第2トランジスタTr2側では第3ドレインソースDS3が第2ゲートG2に電気的に接続されている。これにより、第1ゲートG1、第1ドレインソースDS1、第2ゲートG2および第3ドレインソースDS3が同電位に固定されている。また、第1バックゲートBG1および第4ドレインソースDS4が同電位に固定されている。また、第2ドレインソースDS2および第2バックゲートBG2が同電位に固定されている。
【0189】
第4ドレインソースDS4は、第1バックゲートBG1と短絡回路を構成し、第1バックゲートBG1および第4ドレインソースDS4の間で電圧降下を形成しない。つまり、第1バックゲートBG1および第4ドレインソースDS4は零電位(同電位)に固定される。第1バックゲートBG1および第4ドレインソースDS4は、整流段R(第1トランジスタTr1)のオン時およびオフ時の双方において零電位に固定される。
【0190】
図18Aは、図17に示す整流器1Cの順方向動作を示す回路図である。図18Bは、図17に示す整流器1Cの逆方向動作を示す回路図である。図18Aおよび図18Bを参照して、順方向動作では第1トランジスタTr1に順方向電流IFが流れ、逆方向動作では第1トランジスタTr1に逆方向電流IRが流れる。
【0191】
具体的には、図18Aを参照して、順方向動作では、第2ドレインソースDS2を基準とする順方向電位VFが第1ドレインソースDS1に印加され、第1ドレインソースDS1から第2ドレインソースDS2に向けて順方向電流IFが流れる。図18Aでは、第2ドレインソースDS2に基準電位Vref(たとえばグランド電位)が印加され、第1ドレインソースDS1に順方向電位VFが印加された場合の回路動作が示されている。
【0192】
順方向動作では、第1ゲートG1、第1ドレインソースDS1、第2ゲートG2および第3ドレインソースDS3が順方向電位VFに固定される。第2ドレインソースDS2および第2バックゲートBG2は、基準電位Vrefに固定される。第1バックゲートBG1および第4ドレインソースDS4は、電圧降下を形成せずに零電位に固定される。
【0193】
第1トランジスタTr1では、第1ゲートG1が順方向電位VFに固定され、第1バックゲートBG1が零電位に固定される。したがって、順方向電圧VFが第1ゲート閾値電圧Vgth1未満の場合に第1トランジスタTr1はオフ状態になり、順方向電圧VFが第1ゲート閾値電圧Vgth1以上の場合に第1トランジスタTr1はオン状態になる。第1トランジスタTr1がオン状態になると、第1トランジスタTr1の第1チャネルCH1を介して第1ドレインソースDS1から第2ドレインソースDS2に向けて順方向電流IFが流れる。
【0194】
第2トランジスタTr2では、第2ゲートG2が順方向電位VFに固定され、第2バックゲートBG2が基準電位Vrefに固定される。したがって、第2トランジスタTr2はオフ状態になる。第2トランジスタTr2は第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間で電流経路を形成しないので、順方向電流IFは第2トランジスタTr2を流れない。
【0195】
このように、順方向動作では、第2トランジスタTr2に起因するバイアス効果によって、第1トランジスタTr1がオン状態に制御され、第2トランジスタTr2がオフ状態に制御される。順方向電流IFは、このような状態で、第1トランジスタTr1の第1チャネルCH1を介して第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0196】
つまり、第1トランジスタTr1は、整流段Rの順方向閾値電圧Vthとなる第1ゲート閾値電圧Vgth1を有している。また、第1トランジスタTr1は、整流段Rの順方向電流IFとなるドレインソース電流を流す。つまり、順方向電流IFの特性は、第1トランジスタTr1のドレインソース電流の特性に一致する。
【0197】
図18Bを参照して、逆方向動作では、第1ドレインソースDS1を基準とする逆方向電位VRが第2ドレインソースDS2に印加され、第2ドレインソースDS2から第1ドレインソースDS1に向けて逆方向電流IRが流れる。図18Bでは、第1ドレインソースDS1に基準電位Vref(たとえばグランド電位)が印加され、第2ドレインソースDS2に逆方向電位VRが印加された場合の回路動作が示されている。
【0198】
逆方向動作では、第1ゲートG1、第1ドレインソースDS1、第2ゲートG2および第3ドレインソースDS3が基準電位Vrefに固定される。第2ドレインソースDS2および第2バックゲートBG2は、逆方向電位VRに固定される。第1バックゲートBG1および第4ドレインソースDS4は、電圧降下を形成せずに零電位に固定される。
【0199】
第1トランジスタTr1では、第1ゲートG1が基準電位Vref(零電位)に固定され、第1バックゲートBG1が零電位に固定される。したがって、第1トランジスタTr1はオフ状態になる。逆方向電圧VRが第1ブレークダウン電圧VB1未満の場合、逆方向電流IRとしてのリーク電流が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0200】
逆方向電圧VRが第1ブレークダウン電圧VB1以上の場合、第1ダイオード対DP1がブレークダウンし、逆方向電流IRとしてのブレークダウン電流が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。リーク電流の特性およびブレークダウン電流の特性は、いずれも第1ダイオード対DP1の特性に依存する。
【0201】
第2トランジスタTr2では、第2ゲートG2が基準電位Vrefに固定され、第2バックゲートBG2が逆方向電位VRに固定される。したがって、逆方向電圧VRが第2ゲート閾値電圧Vgth2未満の場合に第2トランジスタTr2がオフ状態になり、逆方向電圧VRが第2ゲート閾値電圧Vgth2以上の場合に第2トランジスタTr2はオン状態になる。
【0202】
第2ゲート閾値電圧Vgth2は、第1ブレークダウン電圧VB1未満である。したがって、第2トランジスタTr2は、第1ダイオード対DP1のブレークダウン前にオン状態になる。第2トランジスタTr2は第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間で電流経路を形成しないので、逆方向電流IRは第2トランジスタTr2を流れない。
【0203】
このように、逆方向動作では、第2トランジスタTr2に起因するバイアス効果によって、第1トランジスタTr1がオフ状態に制御され、第2トランジスタTr2がオン状態に制御される。逆方向電流IRは、このような状態で、第1ダイオード対DP1を介して第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0204】
つまり、逆方向電流IRの特性は、第1ダイオード対DP1の特性に一致する。逆方向電圧VRに対する整流段Rの耐圧は、第1ダイオード対DP1の耐圧(第1ブレークダウン電圧VB1)および第2トランジスタTr2のゲート耐圧(ゲート絶縁破壊耐圧)のうちの低い耐圧に制限される。
【0205】
以上、整流器1Cは、ドレインソースコモン電界効果型の第1トランジスタTr1およびドレインソースコモン電界効果型の第2トランジスタTr2を含む。第2トランジスタTr2は、第1トランジスタTr1をダイオード動作させるように第1トランジスタTr1にダイオード接続され、第1トランジスタTr1と整流段Rを構成している。
【0206】
第1トランジスタTr1は、この形態では、nチャネル型である。第2トランジスタTr2は、この形態では、pチャネル型である。この構造によれば、整流器1Aと同様、新規な構成を有する整流器1Cを提供できる。具体的には、pn接合ダイオード(第1参考整流器R1)やショットキバリアダイオード(第2参考整流器R2)では実現し得ない電気的特性を有する整流器1Cを提供できる(図4等も併せて参照)。
【0207】
整流器1Cは、図19および図20に示される構成を有していてもよい。図19は、図11に示す整流器1Cの第1構成例を示す概略平面図である。図20は、図19に示す整流器1Cの概略断面図である。図19および図20に示されるように、整流器1Cは、第1構成例に係る整流器1A(図7および図8参照)と同様、第1トランジスタTr1および第2トランジスタTr2が形成されたチップ11を含む単一チップ構造を有していてもよい。
【0208】
第2構成例に係る整流器1Cでは、第1トランジスタTr1としてのn型トランジスタ構造15が第1回路領域13Aに形成され、第2トランジスタTr2としてのp型トランジスタ構造14が第2回路領域13Bに形成されている。
【0209】
第1トランジスタTr1の第1ゲートG1、第1ドレインソースDS1、第2ドレインソースDS2、第1バックゲートBG1、第1チャネルCH1および第1ダイオード対DP1は、n型トランジスタ構造15の第2トレンチゲート構造43、第3ドレインソース領域51(第3コンタクト領域53)、第4ドレインソース領域52(第4コンタクト領域54)、第2バックゲート領域41、第2チャネル領域55(第2バックゲート領域41の一部)および第2ダイオード対部58によってそれぞれ構成されている。
【0210】
第2トランジスタTr2の第2ゲートG2、第3ドレインソースDS3、第4ドレインソースDS4、第2バックゲートBG2、第2チャネルCH2および第2ダイオード対DP2は、p型トランジスタ構造14の第1トレンチゲート構造23、第1ドレインソース領域31(第1コンタクト領域33)、第2ドレインソース領域32(第2コンタクト領域34)、第1バックゲート領域21、第1チャネル領域35(第1バックゲート領域21の一部)および第1ダイオード対部38によってそれぞれ構成されている。
【0211】
p型トランジスタ構造14は、n型トランジスタ構造15がダイオード動作するようにn型トランジスタ構造15にダイオード接続されている。具体的には、第1トレンチゲート構造23は、第2トレンチゲート構造43および第3ドレインソース領域51に電気的に接続されている。また、第1ドレインソース領域31は、第2トレンチゲート構造43および第3ドレインソース領域51に電気的に接続されている。また、第2ドレインソース領域32は、第2バックゲート領域41に電気的に接続されている。また、第1バックゲート領域21は、第4ドレインソース領域52に電気的に接続されている。
【0212】
つまり、n型トランジスタ構造15側では第3ドレインソース領域51が第2トレンチゲート構造43に電気的に接続され、p型トランジスタ構造14側では第1ドレインソース領域31が第1トレンチゲート構造23に電気的に接続されている。このようにして、単一のチップ11において、n型トランジスタ構造15(第1トランジスタTr1)およびp型トランジスタ構造14(第2トランジスタTr2)を含む整流段Rが構成されている。
【0213】
このような電気的接続は、主面12の上に多層配線構造を形成することによって実現されてもよい。この場合、多層配線構造は、主面12の上に積層された複数の絶縁膜、および、複数の絶縁膜の上にビア電極を介して多段に積層配置した複数の配線を含む。この場合、アノード端Aは、アノード端子として多層配線構造の上に配置されてもよい。また、カソード端Kは、カソード端子として多層配線構造の上に配置されてもよい。つまり、整流器1Cは、2端子デバイスとして構成されてもよい。
【0214】
整流器1Cは、図21および図22に示される構成を有していてもよい。図21は、図17に示す整流器1Cの第2構成例を示す概略平面図である。図22は、図21に示す整流器1Cの概略断面図である。図21および図22に示されるように、整流器1Cは、第2構成例に係る整流器1A(図9および図10参照)と同様、第1トランジスタTr1が形成された第1チップ11Aおよび第2トランジスタTr2が形成された第2チップ11Bを含む複合チップ構造を有していてもよい。
【0215】
第2構成例に係る整流器1Cでは、第1トランジスタTr1としてのn型トランジスタ構造15が第1チップ11Aの第1回路領域13A(第1主面12A)に形成され、第2トランジスタTr2としてのp型トランジスタ構造14が第2チップ11Bの第2回路領域13B(第2主面12B)に形成されている。
【0216】
第1チップ11A側のn型トランジスタ構造15に対する第2チップ11B側のp型トランジスタ構造14の電気的な接続形態は、第1構成例の場合と同様である。このような電気的接続は、PCB等の実装基板に形成された複数の配線によって実現されてもよい。この場合、アノード端Aおよびカソード端Kは、実装基板上の配線によって形成されていてもよい。
【0217】
むろん、このような電気的接続は、第1チップ11Aおよび第2チップ11Bが搭載されたパッケージ内において複数のボンディングワイヤやリード端子等の接続形態を工夫することによって実現されてもよい。この場合、アノード端Aおよびカソード端Kは、パッケージ内に配置されたリード端子によって形成されていてもよい。
【0218】
図23は、第4実施形態に係る整流器1Dの電気的構成を示す回路図である。図23を参照して、整流器1Dは、整流器1Aを変形させた形態を有している。具体的には、整流器1Dは、pチャネルのドレインソースコモン電界効果型の第1トランジスタTr1に代えてnチャネルのドレインソースコモン電界効果型の第1トランジスタTr1を含む。
【0219】
第1トランジスタTr1は、Si単結晶に形成されたSi-トランジスタであってもよいし、ワイドバンドギャップ半導体の単結晶に形成されたワイドバンドギャップ半導体-トランジスタであってもよい。第1トランジスタTr1は、ワイドバンドギャップ半導体の一例としてのSiC単結晶に形成されたSiC-トランジスタであってもよい。
【0220】
第1トランジスタTr1は、第1ゲートG1、第1ドレインソースDS1、第2ドレインソースDS2、第1バックゲートBG1および第1ダイオード対DP1を有している。第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2は、ソースおよびドレインを一体的にそれぞれ含む。
【0221】
第1ダイオード対DP1は、アノードコモンとなるように逆バイアス接続された第1ボディダイオードD1および第2ボディダイオードD2を含み、第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2に電気的に接続されている。第1ボディダイオードD1はpn接合ダイオードであり、第2ボディダイオードD2はpn接合ダイオードである。
【0222】
第1ボディダイオードD1は、第2ボディダイオードD2に対するノードを形成するアノード、および、第1ドレインソースDS1に電気的に接続されたカソードを含む。第2ボディダイオードD2は、第1ボディダイオードD1のアノードに電気的に接続されたアノード、および、第2ドレインソースDS2に電気的に接続されたカソードを含む。第1トランジスタTr1は、前述の第1ゲート閾値電圧Vgth1、前述の第1ブレークダウン電圧VB1および前述の第1オン抵抗Ron1を有している。
【0223】
整流段Rは、第1トランジスタTr1がダイオード動作するように第2トランジスタTr2が第1トランジスタTr1にダイオード接続されることによって構成されている。具体的には、第2トランジスタTr2は、バイアス電圧によって第1トランジスタTr1をダイオード動作させるバイアス回路として設けられ、第1トランジスタTr1と共に整流段Rを構成している。
【0224】
さらに具体的には、第2ゲートG2が第2ドレインソースDS2に電気的に接続され、第3ドレインソースDS3が第1ゲートG1および第1ドレインソースDS1に電気的に接続され、第4ドレインソースDS4が第1バックゲートBG1に電気的に接続され、第2バックゲートBG2が第1ゲートG1および第1ドレインソースDS1に電気的に接続されている。
【0225】
つまり、第1トランジスタTr1側では第1ドレインソースDS1が第1ゲートG1に電気的に接続され、第2トランジスタTr2側では第2バックゲートBG2が第3ドレインソースDS3に電気的に接続されている。これにより、第1ゲートG1、第1ドレインソースDS1、第3ドレインソースDS3および第2バックゲートBG2が同電位に固定されている。また、第1バックゲートBG1および第4ドレインソースDS4が同電位に固定されている。また、第2ドレインソースDS2および第2ゲートG2が同電位に固定されている。
【0226】
第4ドレインソースDS4は、第1バックゲートBG1と短絡回路を構成し、第1バックゲートBG1および第4ドレインソースDS4の間で電圧降下を形成しない。つまり、第1バックゲートBG1および第4ドレインソースDS4は零電位(同電位)に固定される。第1バックゲートBG1および第4ドレインソースDS4は、整流段R(第1トランジスタTr1)のオン時およびオフ時の双方において零電位に固定される。
【0227】
図24Aは、図23に示す整流器1Dの順方向動作を示す回路図である。図24Bは、図23に示す整流器1Dの逆方向動作を示す回路図である。図24Aおよび図24Bを参照して、順方向動作では第1トランジスタTr1に順方向電流IFが流れ、逆方向動作では第1トランジスタTr1に逆方向電流IRが流れる。
【0228】
具体的には、図24Aを参照して、順方向動作では、第2ドレインソースDS2を基準とする順方向電位VFが第1ドレインソースDS1に印加され、第1ドレインソースDS1から第2ドレインソースDS2に向けて順方向電流IFが流れる。図24Aでは、第2ドレインソースDS2に基準電位Vref(たとえばグランド電位)が印加され、第1ドレインソースDS1に順方向電位VFが印加された場合の回路動作が示されている。
【0229】
順方向動作では、第1ゲートG1、第1ドレインソースDS1、第3ドレインソースDS3および第2バックゲートBG2が順方向電位VFに固定される。第2ドレインソースDS2および第2ゲートG2は、基準電位Vrefに固定される。第1バックゲートBG1および第4ドレインソースDS4は、電圧降下を形成せずに零電位に固定される。
【0230】
第1トランジスタTr1では、第1ゲートG1が順方向電位VFに固定され、第1バックゲートBG1が零電位に固定される。したがって、順方向電圧VFが第1ゲート閾値電圧Vgth1未満の場合に第1トランジスタTr1はオフ状態になり、順方向電圧VFが第1ゲート閾値電圧Vgth1以上の場合に第1トランジスタTr1はオン状態になる。第1トランジスタTr1がオン状態になると、第1トランジスタTr1の第1チャネルCH1を介して第1ドレインソースDS1から第2ドレインソースDS2に向けて順方向電流IFが流れる。
【0231】
第2トランジスタTr2では、第2ゲートG2が基準電位Vrefに固定され、第2バックゲートBG2が順方向電位VFに固定される。したがって、第2トランジスタTr2はオフ状態になる。第2トランジスタTr2は第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間で電流経路を形成しないので、順方向電流IFは第2トランジスタTr2を流れない。
【0232】
このように、順方向動作では、第2トランジスタTr2に起因するバイアス効果によって、第1トランジスタTr1がオン状態に制御され、第2トランジスタTr2がオフ状態に制御される。順方向電流IFは、このような状態で、第1トランジスタTr1の第1チャネルCH1を介して第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0233】
つまり、第1トランジスタTr1は、整流段Rの順方向閾値電圧Vthとなる第1ゲート閾値電圧Vgth1を有している。また、第1トランジスタTr1は、整流段Rの順方向電流IFとなるドレインソース電流を流す。つまり、順方向電流IFの特性は、第1トランジスタTr1のドレインソース電流の特性に一致する。
【0234】
図24Bを参照して、逆方向動作では、第1ドレインソースDS1を基準とする逆方向電位VRが第2ドレインソースDS2に印加され、第2ドレインソースDS2から第1ドレインソースDS1に向けて逆方向電流IRが流れる。図24Bでは、第1ドレインソースDS1に基準電位Vref(たとえばグランド電位)が印加され、第2ドレインソースDS2に逆方向電位VRが印加された場合の回路動作が示されている。
【0235】
逆方向動作では、第1ゲートG1、第1ドレインソースDS1、第3ドレインソースDS3および第2バックゲートBG2が基準電位Vrefに固定される。第2ドレインソースDS2および第2ゲートG2は、逆方向電位VRに固定される。第1バックゲートBG1および第4ドレインソースDS4は、電圧降下を形成せずに零電位に固定される。
【0236】
第1トランジスタTr1では、第1ゲートG1が基準電位Vref(零電位)に固定され、第1バックゲートBG1が零電位に固定される。したがって、第1トランジスタTr1はオフ状態になる。逆方向電圧VRが第1ブレークダウン電圧VB1未満の場合、逆方向電流IRとしてのリーク電流が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0237】
逆方向電圧VRが第1ブレークダウン電圧VB1以上の場合、第1ダイオード対DP1がブレークダウンし、逆方向電流IRとしてのブレークダウン電流が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。リーク電流の特性およびブレークダウン電流の特性は、いずれも第1ダイオード対DP1の特性に依存する。
【0238】
第2トランジスタTr2では、第2ゲートG2が逆方向電位VRに固定され、第2バックゲートBG2が基準電位Vrefに固定される。したがって、逆方向電圧VRが第2ゲート閾値電圧Vgth2未満の場合に第2トランジスタTr2がオフ状態になり、逆方向電圧VRが第2ゲート閾値電圧Vgth2以上の場合に第2トランジスタTr2はオン状態になる。
【0239】
第2ゲート閾値電圧Vgth2は、第1ブレークダウン電圧VB1未満である。したがって、第2トランジスタTr2は、第1ダイオード対DP1のブレークダウン前にオン状態になる。第2トランジスタTr2は第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間で電流経路を形成しないので、逆方向電流IRは第2トランジスタTr2を流れない。
【0240】
このように、逆方向動作では、第2トランジスタTr2に起因するバイアス効果によって、第1トランジスタTr1がオフ状態に制御され、第2トランジスタTr2がオン状態に制御される。逆方向電流IRは、このような状態で、第1ダイオード対DP1を介して第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0241】
つまり、逆方向電流IRの特性は、第1ダイオード対DP1の特性に一致する。逆方向電圧VRに対する整流段Rの耐圧は、第1ダイオード対DP1の耐圧(第1ブレークダウン電圧VB1)および第2トランジスタTr2のゲート耐圧(ゲート絶縁破壊耐圧)のうちの低い耐圧に制限される。
【0242】
以上、整流器1Dは、ドレインソースコモン電界効果型の第1トランジスタTr1およびドレインソースコモン電界効果型の第2トランジスタTr2を含む。第2トランジスタTr2は、第1トランジスタTr1をダイオード動作させるように第1トランジスタTr1にダイオード接続され、第1トランジスタTr1と整流段Rを構成している。
【0243】
第1トランジスタTr1は、この形態では、nチャネル型である。第2トランジスタTr2は、この形態では、nチャネル型である。この構造によれば、整流器1Aと同様、新規な構成を有する整流器1Dを提供できる。具体的には、pn接合ダイオード(第1参考整流器R1)やショットキバリアダイオード(第2参考整流器R2)では実現し得ない電気的特性を有する整流器1Dを提供できる(図4等も併せて参照)。また、整流器1Dは、整流器1A~1Cと比較して小電流領域IFS(第1電圧範囲RV1)における順方向電流IFが小さい傾向を有することができる(図4等も併せて参照)。
【0244】
整流器1Dは、図25および図26に示される構成を有していてもよい。図25は、図11に示す整流器1Dの第1構成例を示す概略平面図である。図26は、図25に示す整流器1Dの概略断面図である。図25および図26に示されるように、整流器1Dは、第1構成例に係る整流器1A(図7および図8参照)と同様、第1トランジスタTr1および第2トランジスタTr2が形成されたチップ11を含む単一チップ構造を有していてもよい。
【0245】
第2構成例に係る整流器1Dでは、第1トランジスタTr1としてのn型トランジスタ構造15が第1回路領域13Aに形成され、第2トランジスタTr2としてのn型トランジスタ構造15が第2回路領域13Bに形成されている。
【0246】
第1トランジスタTr1の第1ゲートG1、第1ドレインソースDS1、第2ドレインソースDS2、第1バックゲートBG1、第1チャネルCH1および第1ダイオード対DP1は、n型トランジスタ構造15の第2トレンチゲート構造43、第3ドレインソース領域51(第3コンタクト領域53)、第4ドレインソース領域52(第4コンタクト領域54)、第2バックゲート領域41、第2チャネル領域55(第2バックゲート領域41の一部)および第2ダイオード対部58によってそれぞれ構成されている。
【0247】
第2トランジスタTr2の第2ゲートG2、第3ドレインソースDS3、第4ドレインソースDS4、第2バックゲートBG2、第2チャネルCH2および第2ダイオード対DP2は、n型トランジスタ構造15の第2トレンチゲート構造43、第3ドレインソース領域51(第3コンタクト領域53)、第4ドレインソース領域52(第4コンタクト領域54)、第2バックゲート領域41、第2チャネル領域55(第2バックゲート領域41の一部)および第2ダイオード対部58によってそれぞれ構成されている。
【0248】
第2回路領域13B側のn型トランジスタ構造15は、第1回路領域13A側のn型トランジスタ構造15がダイオード動作するように第1回路領域13A側のn型トランジスタ構造15にダイオード接続されている。具体的には、第2回路領域13B側の第2トレンチゲート構造43は、第1回路領域13A側の第4ドレインソース領域52に電気的に接続されている。
【0249】
また、第2回路領域13B側の第3ドレインソース領域51は、第1回路領域13A側の第2トレンチゲート構造43および第3ドレインソース領域51に電気的に接続されている。また、第2回路領域13B側の第4ドレインソース領域52は、第1回路領域13A側の第2バックゲート領域41に電気的に接続されている。また、第2回路領域13B側の第2バックゲート領域41は、第1回路領域13A側の第2トレンチゲート構造43および第3ドレインソース領域51に電気的に接続されている。
【0250】
つまり、第1回路領域13A側では第3ドレインソース領域51が第2トレンチゲート構造43に電気的に接続され、第2回路領域13B側では第2バックゲート領域41が第3ドレインソース領域51に電気的に接続されている。このようにして、単一のチップ11において、n型トランジスタ構造15(第1トランジスタTr1)およびn型トランジスタ構造15(第2トランジスタTr2)を含む整流段Rが構成されている。
【0251】
このような電気的接続は、主面12の上に多層配線構造を形成することによって実現されてもよい。この場合、多層配線構造は、主面12の上に積層された複数の絶縁膜、および、複数の絶縁膜の上にビア電極を介して多段に積層配置した複数の配線を含む。この場合、アノード端Aは、アノード端子として多層配線構造の上に配置されてもよい。また、カソード端Kは、カソード端子として多層配線構造の上に配置されてもよい。つまり、整流器1Dは、2端子デバイスとして構成されてもよい。
【0252】
整流器1Dは、図27および図28に示される構成を有していてもよい。図27は、図11に示す整流器1Dの第2構成例を示す概略平面図である。図28は、図27に示す整流器1Dの概略断面図である。図27および図28に示されるように、整流器1Dは、第2構成例に係る整流器1A(図9および図10参照)と同様、第1トランジスタTr1が形成された第1チップ11Aおよび第2トランジスタTr2が形成された第2チップ11Bを含む複合チップ構造を有していてもよい。
【0253】
第2構成例に係る整流器1Dでは、第1トランジスタTr1としてのn型トランジスタ構造15が第1チップ11Aの第1回路領域13A(第1主面12A)に形成され、第2トランジスタTr2としてのn型トランジスタ構造15が第2チップ11Bの第2回路領域13B(第2主面12B)に形成されている。
【0254】
第1チップ11A側のn型トランジスタ構造15に対する第2チップ11B側のn型トランジスタ構造15の電気的な接続形態は、第1構成例の場合と同様である。このような電気的接続は、PCB等の実装基板に形成された複数の配線によって実現されてもよい。この場合、アノード端Aおよびカソード端Kは、実装基板上の配線によって形成されていてもよい。
【0255】
むろん、このような電気的接続は、第1チップ11Aおよび第2チップ11Bが搭載されたパッケージ内において複数のボンディングワイヤやリード端子等の接続形態を工夫することによって実現されてもよい。この場合、アノード端Aおよびカソード端Kは、パッケージ内に配置されたリード端子によって形成されていてもよい。
【0256】
図29は、第5実施形態に係る整流器1Eの電気的構成を示す回路図である。整流器1Eは、整流器1Dに補完ダイオードDCを追加した構成を有している。補完ダイオードDCは、Si単結晶に形成されたSi-ダイオードであってもよいし、ワイドバンドギャップ半導体の単結晶に形成されたワイドバンドギャップ半導体-ダイオードであってもよい。補完ダイオードDCは、ワイドバンドギャップ半導体の一例としてのSiC単結晶に形成されたSiC-ダイオードであってもよい。
【0257】
補完ダイオードDCは、pn接合ダイオード、pin接合ダイオード、ツェナーダイオードおよびショットキバリアダイオードのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。補完ダイオードDCは、この形態では、ショットキバリアダイオードからなる。
【0258】
補完ダイオードDCは、第1ドレインソースDS1に電気的に接続されたアノード、および、第2ドレインソースDS2に電気的に接続されたカソードを含む。つまり、補完ダイオードDCは、第1トランジスタTr1に対して順方向並列接続され、第1トランジスタTr1および第2トランジスタTr2と共に整流段Rを構成している。
【0259】
補完ダイオードDCは、第1トランジスタTr1の第1ゲート閾値電圧Vgth1(順方向閾値電圧Vth)未満の第2順方向閾値電圧Vth2を有していることが好ましい。つまり、補完ダイオードDCは、第1トランジスタTr1がオン状態になる前にオン状態になるように構成されていることが好ましい。第2順方向閾値電圧Vth2は、第2ゲート閾値電圧Vgth2以上であってもよいし、第2ゲート閾値電圧Vgth2未満であってもよい。
【0260】
第2順方向閾値電圧Vth2は、0Vを超えて1V未満であってもよい。第2順方向閾値電圧Vth2は、0Vを超えて0.1V以下、0.1V以上0.2V以下、0.2V以上0.3V以下、0.3V以上0.4V以下、0.4V以上0.5V以下、0.5V以上0.6V以下、0.6V以上0.7V以下、0.7V以上0.8V以下、0.8V以上0.9V以下、および、0.9V以上1V未満のいずれか1つの範囲に属する値を有していてもよい。第2順方向閾値電圧Vth2は、0.5V以下であることが好ましい。
【0261】
補完ダイオードDCは、第3ブレークダウン電圧VB3を有している。第3ブレークダウン電圧VB3は、第1ゲート閾値電圧Vgth1および第2ゲート閾値電圧Vgth2よりも大きい。第3ブレークダウン電圧VB3は、第1トランジスタTr1の第1ブレークダウン電圧VB1とほぼ等しくてもよいし、第1ブレークダウン電圧VB1未満であってもよいし、第1ブレークダウン電圧VB1よりも大きくてもよい。第3ブレークダウン電圧VB3は、第2トランジスタTr2の第2ブレークダウン電圧VB2とほぼ等しくてもよいし、第2ブレークダウン電圧VB2未満であってもよいし、第2ブレークダウン電圧VB2よりも大きくてもよい。
【0262】
図30Aは、図29に示す整流器1Eの第1順方向動作を示す回路図である。図30Bは、図29に示す整流器1Eの第2順方向動作を示す回路図である。図30Cは、図29に示す整流器1Eの逆方向動作を示す回路図である。図30A図30Cを参照して、第1順方向動作では補完ダイオードDCに第1順方向電流IF1が流れ、第2順方向動作では補完ダイオードDCおよび第1トランジスタTr1に第2順方向電流IF2が流れ、逆方向動作では補完ダイオードDCおよび第1トランジスタTr1に逆方向電流IRが流れる。
【0263】
具体的には、図30Aを参照して、第1順方向動作では、第1順方向電位VF1が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間に印加される。第1順方向電位VF1は、第2順方向閾値電圧Vth2以上であり、第1ゲート閾値電圧Vgth1(順方向閾値電圧Vth)未満である。図30Aでは、第2ドレインソースDS2に基準電位Vref(たとえばグランド電位)が印加され、第1ドレインソースDS1に第1順方向電位VF1が印加された場合の回路動作が示されている。
【0264】
第1順方向動作では、第1ゲートG1、第1ドレインソースDS1、第3ドレインソースDS3および第2バックゲートBG2が第1順方向電位VF1に固定される。第2ドレインソースDS2および第2ゲートG2は、基準電位Vrefに固定される。第1バックゲートBG1および第4ドレインソースDS4は、電圧降下を形成せずに零電位に固定される。
【0265】
補完ダイオードDCでは、アノードが第1順方向電位VF1(≧Vth2)に固定され、カソードが基準電位Vrefに固定される。したがって、補完ダイオードDCは、オン状態になる。第1トランジスタTr1では、第1ゲートG1が第1順方向電位VF1(<Vgth1)に固定され、第1バックゲートBG1が零電位に固定される。したがって、第1トランジスタTr1は、オフ状態になる。第2トランジスタTr2では、第2ゲートG2が基準電位Vrefに固定され、第2バックゲートBG2が第1電圧V1に固定される。したがって、第2トランジスタTr2は、オフ状態になる。
【0266】
このように、第1順方向動作では、第2トランジスタTr2に起因するバイアス効果によって、補完ダイオードDCがオン状態に制御され、第1トランジスタTr1がオフ状態に制御され、第2トランジスタTr2がオフ状態に制御される。これにより、第1順方向電流IF1が補完ダイオードDCを介して第1ドレインソースDS1から第2ドレインソースDS2に向けて流れる。第1順方向電流IF1の特性は、補完ダイオードDCの順方向電流IFの特性に一致する。
【0267】
図30Bを参照して、第2順方向動作では、第2順方向電位VF2が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間に印加される。第2順方向電位VF2は、第1ゲート閾値電圧Vgth1(順方向閾値電圧Vth)以上である。図30Bでは、第2ドレインソースDS2に基準電位Vref(たとえばグランド電位)が印加され、第1ドレインソースDS1に第2順方向電位VF2が印加された場合の回路動作が示されている。
【0268】
第2順方向動作では、第1ゲートG1、第1ドレインソースDS1、第3ドレインソースDS3および第2バックゲートBG2が第2順方向電位VF2に固定される。第2ドレインソースDS2および第2ゲートG2は、基準電位Vrefに固定される。第1バックゲートBG1および第4ドレインソースDS4は、電圧降下を形成せずに零電位に固定される。
【0269】
補完ダイオードDCでは、アノードが第2順方向電位VF2(>Vth2)に固定され、カソードが基準電位Vrefに固定される。したがって、補完ダイオードDCは、オン状態になる。第1トランジスタTr1では、第1ゲートG1が第2順方向電位VF2(≧Vgth1)に固定され、第1バックゲートBG1が零電位に固定される。したがって、第1トランジスタTr1は、オン状態になる。第2トランジスタTr2では、第2ゲートG2が基準電位Vrefに固定され、第2バックゲートBG2が第2電圧V2に固定される。したがって、第2トランジスタTr2は、オフ状態になる。
【0270】
このように、第2順方向動作では、第2トランジスタTr2に起因するバイアス効果によって、補完ダイオードDCがオン状態に制御され、第1トランジスタTr1がオン状態に制御され、第2トランジスタTr2がオフ状態に制御される。これにより、第2順方向電流IF2が第1トランジスタTr1および補完ダイオードDCを介して第1ドレインソースDS1から第2ドレインソースDS2に流れる。
【0271】
つまり、第2順方向電流IF2は、補完ダイオードDCを流れる第1電流成分IFA、および、第1トランジスタTr1を流れる第2電流成分IFBを含む。第2電流成分IFBは、整流器1Dの順方向電流IFに相当する。
【0272】
第1電圧範囲RV1(図4参照)において、第2電流成分IFBは、第1電流成分IFA未満であることが好ましい。第2電圧範囲RV2(図4参照)において、第2電流成分IFBは、第1電流成分IFA以上になることが好ましい。第2電圧範囲RV2において、第1電流成分IFA(最大値)に対する第2電流成分IFB(最大値)の比IFB/IFAは、1以上50以下であってもよい。
【0273】
比IFB/IFAは、1以上5以下、5以上10以下、10以上15以下、15以上20以下、20以上25以下、25以上30以下、30以上35以下、35以上40以下、40以上45以下、および、45以上50以下のいずれか1つの範囲に属する値に設定されていてもよい。比IFB/IFAは、2以上であることが好ましい。比IFB/IFAは、5以上であることが特に好ましい。
【0274】
第2電圧範囲RV2において、第2電流成分IFBの最大値は、0.1A以上5A以下であってもよい。第2電流成分IFBの最大値は、0.5A以上であることが好ましい。第2電流成分IFBの最大値は、1A以上であることが特に好ましい。第2電流成分IFBの最大値は、4A以下であってもよい。第2電流成分IFBの最大値は、3A以下であってもよい。第2電流成分IFBの最大値は、2A以下であってもよい。
【0275】
図30Cを参照して、逆方向動作では、第1ドレインソースDS1を基準とする逆方向電位VRが第2ドレインソースDS2に印加され、第2ドレインソースDS2から第1ドレインソースDS1に向けて逆方向電流IRが流れる。図30Cでは、第1ドレインソースDS1に基準電位Vref(たとえばグランド電位)が印加され、第2ドレインソースDS2に逆方向電位VRが印加された場合の回路動作が示されている。
【0276】
逆方向動作では、第1ゲートG1、第1ドレインソースDS1、第3ドレインソースDS3および第2バックゲートBG2が基準電位Vrefに固定される。第2ドレインソースDS2および第2ゲートG2は、逆方向電位VRに固定される。第1バックゲートBG1および第4ドレインソースDS4は、電圧降下を形成せずに零電位に固定される。
【0277】
補完ダイオードDCでは、アノードが基準電位Vref(零電位)に固定され、カソードが逆方向電位VRに固定される。したがって、補完ダイオードDCは、オフ状態になる。逆方向電圧VRが第3ブレークダウン電圧VB3未満の場合、逆方向電流IRとしてのリーク電流が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0278】
逆方向電圧VRが第3ブレークダウン電圧VB3以上の場合、補完ダイオードDCがブレークダウンし、逆方向電流IRとしてのブレークダウン電流が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。リーク電流の特性およびブレークダウン電流の特性は、いずれも、補完ダイオードDCの特性に依存する。
【0279】
第1トランジスタTr1では、第1ゲートG1が基準電位Vref(零電位)に固定され、第1バックゲートBG1が零電位に固定される。したがって、第1トランジスタTr1はオフ状態になる。逆方向電圧VRが第1ブレークダウン電圧VB1未満の場合、逆方向電流IRとしてのリーク電流が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0280】
逆方向電圧VRが第1ブレークダウン電圧VB1以上の場合、第1ダイオード対DP1がブレークダウンし、逆方向電流IRとしてのブレークダウン電流が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。リーク電流の特性およびブレークダウン電流の特性は、いずれも第1ダイオード対DP1の特性に依存する。
【0281】
第2トランジスタTr2では、第2ゲートG2が逆方向電位VRに固定され、第2バックゲートBG2が基準電位Vrefに固定される。したがって、逆方向電圧VRが第2ゲート閾値電圧Vgth2未満の場合に第2トランジスタTr2がオフ状態になり、逆方向電圧VRが第2ゲート閾値電圧Vgth2以上の場合に第2トランジスタTr2はオン状態になる。
【0282】
第2ゲート閾値電圧Vgth2は、第3ブレークダウン電圧VB3未満である。したがって、第2トランジスタTr2は、補完ダイオードDCのブレークダウン前にオン状態になる。また、第2ゲート閾値電圧Vgth2は、第1ブレークダウン電圧VB1未満である。したがって、第2トランジスタTr2は、第1ダイオード対DP1のブレークダウン前にオン状態になる。第2トランジスタTr2は第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間で電流経路を形成しないので、逆方向電流IRは第2トランジスタTr2を流れない。
【0283】
以上、整流器1Eは、ドレインソースコモン電界効果型の第1トランジスタTr1、ドレインソースコモン電界効果型の第2トランジスタTr2および補完ダイオードDCを含む。第2トランジスタTr2は、第1トランジスタTr1をダイオード動作させるように第1トランジスタTr1にダイオード接続され、第1トランジスタTr1と整流段Rを構成している。補完ダイオードDCは、第1トランジスタTr1に対して順方向並列接続されている。
【0284】
第1トランジスタTr1は、この形態では、nチャネル型である。第2トランジスタTr2は、この形態では、nチャネル型である。この構造によれば、整流器1Aと同様、新規な構成を有する整流器1Eを提供できる。具体的には、pn接合ダイオード(第1参考整流器R1)やショットキバリアダイオード(第2参考整流器R2)では実現し得ない電気的特性を有する整流器1Eを提供できる(図4等も併せて参照)。
【0285】
また、整流器1Eによれば、第1トランジスタTr1がオン状態になる前に補完ダイオードDCを介して第1順方向電流IF1を流し、第1トランジスタTr1がオン状態になった後に第1トランジスタTr1および補完ダイオードDCを介して第2順方向電流IF2を流すことができる。
【0286】
整流器1Eは、図31および図32に示される構成を有していてもよい。図31は、図29に示す整流器1Eの第1構成例を示す概略平面図である。図32は、図31に示す整流器1Eの概略断面図である。図31および図32に示されるように、整流器1Eは、第1構成例に係る整流器1D(図25および図26参照)と同様、チップ11、第1回路領域13A(第1トランジスタTr1)および第2回路領域13B(第2トランジスタTr2)を含む。
【0287】
整流器1Eは、さらに、チップ11の主面12において第1回路領域13Aおよび第2回路領域13Bとは異なる領域に設けられた第3デバイス領域13Cを含む。第3デバイス領域13Cは、第1回路領域13Aおよび第2回路領域13Bから電気的分離されている。
【0288】
整流器1Eは、第3デバイス領域13Cに形成された補完ダイオードDCを含む。補完ダイオードDCは、この形態では、ショットキバリアダイオードからなる。補完ダイオードDCは、主面12の表層部に形成されたn型のダイオード領域61、および、当該ダイオード領域61とショットキ接合を形成するように主面12の上に配置されたショットキ電極62を含む。
【0289】
これにより、アノードとしてのショットキ電極62、および、カソードとしてのダイオード領域61を含む補完ダイオードDC(ショットキバリアダイオード)が形成されている。ダイオード領域61の導電型は、p型であってもよい。補完ダイオードDCがpn接合ダイオードからなる場合、補完ダイオードDCは、主面12の表層部に形成されたp型のアノード領域、および、当該アノード領域とpn接合を形成するn型のカソード領域を含む。
【0290】
第1トランジスタTr1および第2トランジスタTr2は、第1構成例に係る整流器1D(図25および図26参照)と同様の態様で電気的に接続されている。補完ダイオードDCのショットキ電極62(アノード)は、第1トランジスタTr1の第3ドレインソース領域51に電気的に接続されている。補完ダイオードDCのダイオード領域61(カソード)は、第1トランジスタTr1の第4ドレインソース領域52に電気的に接続されている。
【0291】
このような電気的接続は、主面12の上に多層配線構造を形成することによって実現されてもよい。この場合、多層配線構造は、主面12の上に積層された複数の絶縁膜、および、複数の絶縁膜の上にビア電極を介して多段に積層配置した複数の配線を含む。この場合、アノード端Aは、アノード端子として多層配線構造の上に配置されてもよい。また、カソード端Kは、カソード端子として多層配線構造の上に配置されてもよい。つまり、整流器1Eは、2端子デバイスとして構成されてもよい。
【0292】
整流器1Eは、図33および図34に示される構成を有していてもよい。図33は、図29に示す整流器1Eの第2構成例を示す概略平面図である。図34は、図33に示す整流器1Eの概略断面図である。図33および図34に示されるように、整流器1Eは、第1トランジスタTr1および第2トランジスタTr2が形成された第1チップ11A、ならびに、補完ダイオードDCが形成された第2チップ11Bを含んでいてもよい。
【0293】
第1チップ11Aは、直方体形状に形成され、四角形状の第1主面12Aを有している。第1チップ11Aは、Si単結晶またはワイドバンドギャップ半導体の単結晶(たとえばSiC単結晶)を含んでいてもよい。整流器1Eは、第1チップ11Aにおいて第1主面12Aに形成された第1回路領域13A(第1トランジスタTr1)および第2回路領域13B(第2トランジスタTr2)を含む。
【0294】
第2チップ11Bは、直方体形状に形成され、四角形状の第2主面12Bを有している。第2チップ11Bは、Si単結晶またはワイドバンドギャップ半導体の単結晶(たとえばSiC単結晶)を含んでいてもよい。整流器1Eは、第2チップ11Bにおいて第2主面12Bに形成された第3デバイス領域13C(補完ダイオードDC)を含む。第1トランジスタTr1、第2トランジスタTr2および補完ダイオードDCは、第1構成例と同様の態様で電気的に接続されている。
【0295】
整流器1Eは、図35および図36に示される構成を有していてもよい。図35は、図29に示す整流器1Eの第3構成例を示す概略平面図である。図36は、図35に示す整流器1Eの概略断面図である。図35および図36に示されるように、整流器1Eは、第1トランジスタTr1が形成された第1チップ11A、第2トランジスタTr2が形成された第2チップ11B、ならびに、補完ダイオードDCが形成された第3チップ11Cを含んでいてもよい。
【0296】
第1チップ11Aは、直方体形状に形成され、四角形状の第1主面12Aを有している。第1チップ11Aは、Si単結晶またはワイドバンドギャップ半導体の単結晶(たとえばSiC単結晶)を含んでいてもよい。整流器1Eは、第1チップ11Aにおいて第1主面12Aに形成された第1回路領域13A(第1トランジスタTr1)を含む。
【0297】
第2チップ11Bは、直方体形状に形成され、四角形状の第1主面12Aを有している。第2チップ11Bは、Si単結晶またはワイドバンドギャップ半導体の単結晶(たとえばSiC単結晶)を含んでいてもよい。整流器1Eは、第2チップ11Bにおいて第2主面12Bに形成された第2回路領域13B(第2トランジスタTr2)を含む。
【0298】
第3チップ11Cは、直方体形状に形成され、四角形状の第3主面12Cを有している。第3チップ11Cは、Si単結晶またはワイドバンドギャップ半導体の単結晶(たとえばSiC単結晶)を含んでいてもよい。整流器1Eは、第3チップ11Cにおいて第3主面12Cに形成された第3デバイス領域13C(補完ダイオードDC)を含む。第1トランジスタTr1、第2トランジスタTr2および補完ダイオードDCは、第1構成例と同様の態様で電気的に接続されている。
【0299】
図37は、第6実施形態に係る整流器1Fの電気的構成を示す回路図である。図37を参照して、整流器1Fは、pチャネルのドレインソースコモン電界効果型のトランジスタTrを含む。トランジスタTrは、Si単結晶に形成されたSi-トランジスタであってもよいし、ワイドバンドギャップ半導体の単結晶に形成されたワイドバンドギャップ半導体-トランジスタであってもよい。トランジスタTrは、ワイドバンドギャップ半導体の一例としてのSiC単結晶に形成されたSiC-トランジスタであってもよい。
【0300】
トランジスタTrは、ゲートG、第1ドレインソースDS1、第2ドレインソースDS2、バックゲートBGおよびダイオード対DPを有している。第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2は、ソースおよびドレインを一体的にそれぞれ含む。
【0301】
ダイオード対DPは、カソードコモンとなるように逆バイアス接続された第1ボディダイオードD1および第2ボディダイオードD2を含み、第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2に電気的に接続されている。第1ボディダイオードD1はpn接合ダイオードであり、第2ボディダイオードD2はpn接合ダイオードである。
【0302】
第1ボディダイオードD1は、第1ドレインソースDS1に電気的に接続されたアノード、および、第2ボディダイオードD2に対するノードを形成するカソードを含む。第2ボディダイオードD2は、第2ドレインソースDS2に電気的に接続されたアノード、および、第1ボディダイオードD1のカソードに電気的に接続されたカソードを含む。
【0303】
トランジスタTrは、ゲート閾値電圧Vgth、ブレークダウン電圧VBおよびオン抵抗Ronを有している。ゲート閾値電圧Vgth、ブレークダウン電圧VBおよびオン抵抗Ronは、前述の第1ゲート閾値電圧Vgth1、第1ブレークダウン電圧VB1および第1オン抵抗Ron1にそれぞれ対応している。
【0304】
整流段Rは、ゲートGが零電位に固定され、バックゲートBGが第1ドレインソースDS1に電気的に接続されることによって構成されている。つまり、整流器1Fは、零電位印加端としてのゲート端GTを有している。第1ドレインソースDS1はアノード端Aに電気的に接続され、第2ドレインソースDS2はカソード端Kに電気的に接続されている。
【0305】
図38Aは、図37に示す整流器1Fの順方向動作を示す回路図である。図38Bは、図37に示す整流器1Fの逆方向動作を示す回路図である。図38Aおよび図38Bを参照して、順方向動作ではトランジスタTrに順方向電流IFが流れ、逆方向動作ではトランジスタTrに逆方向電流IRが流れる。
【0306】
具体的には、図38Aを参照して、順方向動作では、第2ドレインソースDS2を基準とする順方向電位VFが第1ドレインソースDS1に印加され、第1ドレインソースDS1から第2ドレインソースDS2に向けて順方向電流IFが流れる。図38Aでは、第2ドレインソースDS2に基準電位Vref(たとえばグランド電位)が印加され、第1ドレインソースDS1に順方向電位VFが印加された場合の回路動作が示されている。
【0307】
順方向動作では、ゲートGが零電位に固定され、第1ドレインソースDS1およびバックゲートBGが順方向電位VFに固定され、第2ドレインソースDS2が基準電位Vrefに固定される。したがって、順方向電圧VFがゲート閾値電圧Vgth未満の場合にトランジスタTrはオフ状態になり、順方向電圧VFがゲート閾値電圧Vgth以上の場合にトランジスタTrはオン状態になる。
【0308】
トランジスタTrがオン状態になると、トランジスタTrのチャネルCHを介して第1ドレインソースDS1から第2ドレインソースDS2に向けて順方向電流IFが流れる。つまり、トランジスタTrは、整流段Rの順方向閾値電圧Vthとなるゲート閾値電圧Vgthを有している。また、トランジスタTrは、整流段Rの順方向電流IFとなる第1ドレインソースDS1電流を流す。つまり、順方向電流IFの特性は、トランジスタTrのドレインソース電流の特性に一致する。
【0309】
図38Bを参照して、逆方向動作では、第1ドレインソースDS1を基準とする逆方向電位VRが第2ドレインソースDS2に印加され、第2ドレインソースDS2から第1ドレインソースDS1に向けて逆方向電流IRが流れる。図38Bでは、第1ドレインソースDS1に基準電位Vref(たとえばグランド電位)が印加され、第2ドレインソースDS2に逆方向電位VRが印加された場合の回路動作が示されている。
【0310】
逆方向動作では、ゲートGが零電位に固定され、第1ドレインソースDS1およびバックゲートBGが基準電位Vrefに固定され、第2ドレインソースDS2が逆方向電位VRに固定される。したがって、トランジスタTrはオフ状態になる。逆方向電圧VRがブレークダウン電圧VB未満の場合、逆方向電流IRとしてのリーク電流が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0311】
逆方向電圧VRがブレークダウン電圧VB以上の場合、ダイオード対DPがブレークダウンし、逆方向電流IRとしてのブレークダウン電流が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。つまり、逆方向電流IRの特性は、ダイオード対DPの特性に一致する。リーク電流の特性およびブレークダウン電流の特性は、いずれもダイオード対DPの特性に依存する。
【0312】
以上、整流器1Fは、pチャネルのドレインソースコモン電界効果型のトランジスタTrを含む。トランジスタTrは、整流段Rを構成している。具体的には、トランジスタTrは、零電位に固定されるゲートG、整流段Rのアノードとして機能する第1ドレインソースDS1、整流段Rのカソードとして機能する第2ドレインソースDS2、ならびに、第1ドレインソースDS1に電気的に接続されたバックゲートBGを有している。
【0313】
この構造によれば、整流器1Aと同様、新規な構成を有する整流器1Fを提供できる。具体的には、pn接合ダイオード(第1参考整流器R1)やショットキバリアダイオード(第2参考整流器R2)では実現し得ない電気的特性を有する整流器1Fを提供できる(図4等も併せて参照)。
【0314】
図39は、図37に示す整流器1Fの構成例を示す概略平面図である。図40は、図39に示す整流器1Fの概略断面図である。図39および図40に示されるように、整流器1Fは、トランジスタTrが形成されたチップ11を含む単一チップ構造を有していてもよい。整流器1Fでは、トランジスタTrとしてのp型トランジスタ構造14が回路領域13に形成されている。
【0315】
トランジスタTrのゲートG、第1ドレインソースDS1、第2ドレインソースDS2、バックゲートBG、チャネルCHおよびダイオード対DPは、p型トランジスタ構造14の第1トレンチゲート構造23、第1ドレインソース領域31(第1コンタクト領域33)、第2ドレインソース領域32(第2コンタクト領域34)、第1バックゲート領域21、第1チャネル領域35(第1バックゲート領域21の一部)および第1ダイオード対部38によってそれぞれ構成されている。
【0316】
p型トランジスタ構造14は、零電位に固定される第1トレンチゲート構造23、および、第1ドレインソース領域31に電気的に接続された第1バックゲート領域21を含む。このような電気的接続は、主面12の上に多層配線構造を形成することによって実現されてもよい。この場合、多層配線構造は、主面12の上に積層された複数の絶縁膜、および、複数の絶縁膜の上にビア電極を介して多段に積層配置した複数の配線を含む。
【0317】
この場合、整流器1Fは、多層配線構造の上に配置されたアノード端Aとしてのアノード端子、多層配線構造の上に配置されたカソード端Kとしてのカソード端子、および、多層配線構造の上に配置されたゲート端GTとしてのゲート端子を含んでいてもよい。つまり、整流器1Fは、3端子デバイスとして構成されてもよい。
【0318】
むろん、このような電気的接続は、PCB等の実装基板に形成された複数の配線によって実現されてもよい。この場合、アノード端A、カソード端Kおよびゲート端GTは、実装基板上の配線によって形成されていてもよい。また、このような電気的接続は、チップ11が搭載されたパッケージ内において複数のボンディングワイヤやリード端子等の接続形態を工夫することによって実現されてもよい。この場合、アノード端A、カソード端Kおよびゲート端GTは、パッケージ内に配置されたリード端子によって形成されていてもよい。
【0319】
図41は、第7実施形態に係る整流器1Gの電気的構成を示す回路図である。図41を参照して、整流器1Gは、前述の整流器1Fにおいて、ゲートGを零電位に固定するようにゲートGに電気的に接続されたバイアス回路BCをさらに含む。バイアス回路BCは、前述の第1~第2実施形態に係る第2トランジスタTr2のように1つの回路デバイスによって構成されていてもよい。
【0320】
むろん、バイアス回路BCは、複数の回路デバイスによって構成されていてもよい。また、バイアス回路BCの構成は、ゲートGを零電位に固定できる限り任意であり、種々の回路構成(回路デバイス)を含む事ができる。また、バイアス回路BCは、第1構成例に係る整流器1F(図40参照)において、トランジスタTrと共に単一のチップ11に形成されていてもよい。この場合、バイアス回路BC用の回路領域13を主面12に設け、バイアス回路BCを回路領域13に形成すればよい。むろん、バイアス回路BCは、トランジスタTrとは異なる1つまたは複数のチップを用いて実現されてもよい。
【0321】
図42は、第8実施形態に係る整流器1Hの電気的構成を示す回路図である。図42を参照して、整流器1Hは、nチャネルのドレインソースコモン電界効果型のトランジスタTrを含む。トランジスタTrは、Si単結晶に形成されたSi-トランジスタであってもよいし、ワイドバンドギャップ半導体の単結晶に形成されたワイドバンドギャップ半導体-トランジスタであってもよい。トランジスタTrは、ワイドバンドギャップ半導体の一例としてのSiC単結晶に形成されたSiC-トランジスタであってもよい。
【0322】
トランジスタTrは、ゲートG、第1ドレインソースDS1、第2ドレインソースDS2、バックゲートBGおよびダイオード対DPを有している。第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2は、ソースおよびドレインを一体的にそれぞれ含む。
【0323】
ダイオード対DPは、アノードコモンとなるように逆バイアス接続された第1ボディダイオードD1および第2ボディダイオードD2を含み、第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2に電気的に接続されている。第1ボディダイオードD1はpn接合ダイオードであり、第2ボディダイオードD2はpn接合ダイオードである。
【0324】
第1ボディダイオードD1は、第2ボディダイオードD2に対するノードを形成するアノード、および、第1ドレインソースDS1に電気的に接続されたカソードを含む。第2ボディダイオードD2は、第1ボディダイオードD1のアノードに電気的に接続されたアノード、および、第2ドレインソースDS2に電気的に接続されたカソードを含む。
【0325】
トランジスタTrは、ゲート閾値電圧Vgth、ブレークダウン電圧VBおよびオン抵抗Ronを有している。ゲート閾値電圧Vgth、ブレークダウン電圧VBおよびオン抵抗Ronは、前述の第1ゲート閾値電圧Vgth1、第1ブレークダウン電圧VB1および第1オン抵抗Ron1にそれぞれ対応している。
【0326】
整流段Rは、第1ドレインソースDS1がゲートGに電気的に接続され、バックゲートBGが零電位に固定されることによって構成されている。つまり、整流器1Hは、零電位印加端としてのバックゲート端BGTを有している。第1ドレインソースDS1はアノード端Aに電気的に接続され、第2ドレインソースDS2はカソード端Kに電気的に接続されている。
【0327】
図43Aは、図42に示す整流器1Hの順方向動作を示す回路図である。図43Bは、図42に示す整流器1Hの逆方向動作を示す回路図である。図43Aおよび図43Bを参照して、順方向動作ではトランジスタTrに順方向電流IFが流れ、逆方向動作ではトランジスタTrに逆方向電流IRが流れる。
【0328】
具体的には、図43Aを参照して、順方向動作では、第2ドレインソースDS2を基準とする順方向電位VFが第1ドレインソースDS1に印加され、第1ドレインソースDS1から第2ドレインソースDS2に向けて順方向電流IFが流れる。図43Aでは、第2ドレインソースDS2に基準電位Vref(たとえばグランド電位)が印加され、第1ドレインソースDS1に順方向電位VFが印加された場合の回路動作が示されている。
【0329】
順方向動作では、ゲートGおよび第1ドレインソースDS1が順方向電位VFに固定され、バックゲートBGが零電位に固定され、第2ドレインソースDS2が基準電位Vrefに固定される。したがって、順方向電圧VFがゲート閾値電圧Vgth未満の場合にトランジスタTrはオフ状態になり、順方向電圧VFがゲート閾値電圧Vgth以上の場合にトランジスタTrはオン状態になる。
【0330】
トランジスタTrがオン状態になると、トランジスタTrのチャネルCHを介して第1ドレインソースDS1から第2ドレインソースDS2に向けて順方向電流IFが流れる。つまり、トランジスタTrは、整流段Rの順方向閾値電圧Vthとなるゲート閾値電圧Vgthを有している。また、トランジスタTrは、整流段Rの順方向電流IFとなるドレインソース電流を流す。つまり、順方向電流IFの特性は、トランジスタTrのドレインソース電流の特性に一致する。
【0331】
図43Bを参照して、逆方向動作では、第1ドレインソースDS1を基準とする逆方向電位VRが第2ドレインソースDS2に印加され、第2ドレインソースDS2から第1ドレインソースDS1に向けて逆方向電流IRが流れる。図43Bでは、第1ドレインソースDS1に基準電位Vref(たとえばグランド電位)が印加され、第2ドレインソースDS2に逆方向電位VRが印加された場合の回路動作が示されている。
【0332】
逆方向動作では、ゲートGおよび第1ドレインソースDS1が基準電位Vrefに固定され、バックゲートBGが零電位に固定され、第2ドレインソースDS2が逆方向電位VRに固定される。したがって、トランジスタTrはオフ状態になる。逆方向電圧VRがブレークダウン電圧VB未満の場合、逆方向電流IRとしてのリーク電流が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。
【0333】
逆方向電圧VRがブレークダウン電圧VB以上の場合、ダイオード対DPがブレークダウンし、逆方向電流IRとしてのブレークダウン電流が第1ドレインソースDS1および第2ドレインソースDS2の間を流れる。つまり、逆方向電流IRの特性は、ダイオード対DPの特性に一致する。リーク電流の特性およびブレークダウン電流の特性は、いずれもダイオード対DPの特性に依存する。
【0334】
以上、整流器1Hは、nチャネルのドレインソースコモン電界効果型のトランジスタTrを含む。トランジスタTrは、整流段Rを構成している。具体的には、トランジスタTrは、ゲートG、ゲートGに電気的に接続され、整流段Rのアノードとして機能する第1ドレインソースDS1、整流段Rのカソードとして機能する第2ドレインソースDS2、ならびに、零電位に固定されるバックゲートBGを有している。
【0335】
この構造によれば、整流器1Aと同様、新規な構成を有する整流器1Hを提供できる。具体的には、pn接合ダイオード(第1参考整流器R1)やショットキバリアダイオード(第2参考整流器R2)では実現し得ない電気的特性を有する整流器1Hを提供できる(図4等も併せて参照)。
【0336】
図44は、図42に示す整流器1Hの構成例を示す概略平面図である。図45は、図44に示す整流器1Hの概略断面図である。図44および図45に示されるように、整流器1Hは、トランジスタTrが形成されたチップ11を含む単一チップ構造を有していてもよい。整流器1Hでは、トランジスタTrとしてのn型トランジスタ構造15が回路領域13に形成されている。
【0337】
トランジスタTrのゲートG、第1ドレインソースDS1、第2ドレインソースDS2、バックゲートBG、チャネルCHおよびダイオード対DPは、n型トランジスタ構造15の第2トレンチゲート構造43、第3ドレインソース領域51(第3コンタクト領域53)、第4ドレインソース領域52(第4コンタクト領域54)、第2バックゲート領域41、第2チャネル領域55(第2バックゲート領域41の一部)および第2ダイオード対部58によってそれぞれ構成されている。
【0338】
n型トランジスタ構造15は、第2トレンチゲート構造43に電気的に接続された第3ドレインソース領域51、および、零電位に固定される第2バックゲート領域41を含む。このような電気的接続は、主面12の上に多層配線構造を形成することによって実現されてもよい。この場合、多層配線構造は、主面12の上に積層された複数の絶縁膜、および、複数の絶縁膜の上にビア電極を介して多段に積層配置した複数の配線を含む。
【0339】
この場合、整流器1Hは、多層配線構造の上に配置されたアノード端Aとしてのアノード端子、多層配線構造の上に配置されたカソード端Kとしてのカソード端子、および、多層配線構造の上に配置されたバックゲート端BGTとしてのバックゲート端子を含んでいてもよい。つまり、整流器1Hは、3端子デバイスとして構成されてもよい。むろん、バックゲート端子は、チップ11の裏面側に設けられていてもよい。
【0340】
むろん、このような電気的接続は、PCB等の実装基板に形成された複数の配線によって実現されてもよい。この場合、アノード端A、カソード端Kおよびバックゲート端BGTは、実装基板上の配線によって形成されていてもよい。また、このような電気的接続は、チップ11が搭載されたパッケージ内において複数のボンディングワイヤやリード端子等の接続形態を工夫することによって実現されてもよい。この場合、アノード端A、カソード端Kおよびバックゲート端BGTは、パッケージ内に配置されたリード端子によって形成されていてもよい。
【0341】
図46は、第9実施形態に係る整流器1Iの電気的構成を示す回路図である。図46を参照して、整流器1Iは、前述の整流器1Hにおいて、バックゲートBGを零電位に固定するようにバックゲートBGに電気的に接続されたバイアス回路BCをさらに含む。バイアス回路BCは、前述の第3~第4実施形態に係る第2トランジスタTr2のように1つの回路デバイスによって構成されていてもよい。
【0342】
むろん、バイアス回路BCは、複数の回路デバイスによって構成されていてもよい。また、バイアス回路BCの構成は、バックゲートBGを零電位に固定できる限り任意であり、種々の回路構成(回路デバイス)を含む事ができる。また、バイアス回路BCは、第1構成例に係る整流器1H(図44参照)において、トランジスタTrと共に単一のチップ11に形成されていてもよい。この場合、バイアス回路BC用の回路領域13を主面12に設け、バイアス回路BCを回路領域13に形成すればよい。むろん、バイアス回路BCは、トランジスタTrとは異なる1つまたは複数のチップを用いて実現されてもよい。
【0343】
以上、第1~第9実施形態が説明されたが、第1~第9実施形態に係る整流器1A~1Iのうちの少なくとも2つを同時に含む複合型の整流器が採用されてもよい。複合型の整流器は、単一のチップを用いて実現されてもよいし、複数のチップを用いて実現されてもよい。
【0344】
以下、この明細書および添付図面から抽出される特徴例が示される。以下、括弧内の英数字等は前述の各実施形態における対応構成要素等を表すが、各項目(Clause)の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。以下の項目に係る「整流器(1A~1I)」は、必要に応じて「整流回路(1A~1I)」、「半導体整流回路(1A~1I)」、「半導体整流器(1A~1I)」、「半導体整流装置(1A~1I)」、「半導体装置(1A~1I)」または「半導体モジュール(1A~1I)」に置き換えられてもよい。
【0345】
[A1]ドレインソースコモン電界効果型の第1トランジスタ(Tr1)と、前記第1トランジスタ(Tr1)をダイオード動作させるように前記第1トランジスタ(Tr1)にダイオード接続され、前記第1トランジスタ(Tr1)と整流段(R)を構成するドレインソースコモン電界効果型の第2トランジスタ(Tr2)と、を含む、整流器(1A~1I)。
【0346】
[A2]前記整流段(R)は、前記第1トランジスタ(Tr1)のゲート閾値電圧(Vgth1)からなる順方向閾値電圧(Vth)を有している、A1に記載の整流器(1A~1I)。
【0347】
[A3]前記整流段(R)の順方向電圧(VF)が印加されたとき、前記第1トランジスタ(Tr1)がオン状態になり、前記第2トランジスタ(Tr2)がオフ状態になる、A1またはA2に記載の整流器(1A~1I)。
【0348】
[A4]前記第1トランジスタ(Tr1)に前記整流段(R)の順方向電流(IF)が流れる、A3に記載の整流器(1A~1I)。
【0349】
[A5]前記整流段(R)の逆方向電圧(VR)が印加されたとき、前記第1トランジスタ(Tr1)がオフ状態になり、前記第2トランジスタ(Tr2)がオン状態になる、A1~A4のいずれか一つに記載の整流器(1A~1I)。
【0350】
[A6]前記第1トランジスタ(Tr1)に前記整流段(R)の逆方向電流(IR)が流れる、A5に記載の整流器(1A~1I)。
【0351】
[A7]前記第1トランジスタ(Tr1)は、pチャネル型である、A1~A6のいずれか一つに記載の整流器(1A~1I)。
【0352】
[A8]前記第1トランジスタ(Tr1)は、ゲート(G1)、前記整流段(R)のアノード(A)として機能する第1ドレインソース(DS1)、前記整流段(R)のカソード(K)として機能する第2ドレインソース(DS2)、ならびに、前記第1ドレインソース(DS1)に電気的に接続されたバックゲート(BG1)を有し、前記第2トランジスタ(Tr2)は、前記第1トランジスタ(Tr1)の前記ゲート(G1)を零電位に固定するバイアス回路を構成している、A7に記載の整流器(1A~1I)。
【0353】
[A9]前記ゲート(G1)は、前記整流段(R)のオン時およびオフ時において零電位に固定される、A8に記載の整流器(1A~1I)。
【0354】
[A10]前記第1トランジスタ(Tr1)は、前記第1ドレインソース(DS1)および前記第2ドレインソース(DS2)の間において逆バイアスに直列接続された第1ボディダイオード(D1)および第2ボディダイオード(D2)を含むダイオード対(DP1)を有している、A8またはA9に記載の整流器(1A~1I)。
【0355】
[A11]前記第1トランジスタ(Tr1)は、nチャネル型である、A1~A6のいずれか一つに記載の整流器(1A~1I)。
【0356】
[A12]前記第1トランジスタ(Tr1)は、ゲート(G1)、前記ゲート(G1)に電気的に接続され、前記整流段(R)のアノード(A)として機能する第1ドレインソース(DS1)、前記整流段(R)のカソード(K)として機能する第2ドレインソース(DS2)、ならびに、バックゲート(BG1)を有し、前記第2トランジスタ(Tr2)は、前記第1トランジスタ(Tr1)の前記バックゲート(BG1)を零電位に固定するバイアス回路を構成している、A11に記載の整流器(1A~1I)。
【0357】
[A13]前記バックゲート(BG1)は、前記整流段(R)のオン時およびオフ時において零電位に固定される、A12に記載の整流器(1A~1I)。
【0358】
[A14]前記第1トランジスタ(Tr1)は、前記第1ドレインソース(DS1)および前記第2ドレインソース(DS2)の間において逆バイアスに直列接続された第1ボディダイオード(D1)および第2ボディダイオード(D2)を含むダイオード対(DP1)を有している、A12またはA13に記載の整流器(1A~1I)。
【0359】
[A15]零電位に固定されるゲート(G、G1)、整流段(R)のアノード(A)として機能する第1ドレインソース(DS1)、前記整流段(R)のカソード(K)として機能する第2ドレインソース(DS2)、ならびに、前記第1ドレインソース(DS1)に電気的に接続されたバックゲート(BG、BG1)を有するpチャネルのドレインソースコモン電界効果型のトランジスタ(Tr、Tr1)を含む、整流器(1A~1I)。
【0360】
[A16]前記ゲート(G、G1)は、前記整流段(R)のオン時およびオフ時において零電位に固定されている、A15に記載の整流器(1A~1I)。
【0361】
[A17]前記ゲート(G、G1)を零電位に固定するバイアス回路(BC、Tr2)をさらに含む、A15またはA16に記載の整流器(1A~1I)。
【0362】
[A18]ゲート(G、G1)、前記ゲート(G、G1)に電気的に接続され、整流段(R)のアノード(A)として機能する第1ドレインソース(DS1)、前記整流段(R)のカソード(K)として機能する第2ドレインソース(DS2)、ならびに、零電位に固定されるバックゲート(BG、BG1)を有するnチャネルのドレインソースコモン電界効果型のトランジスタ(Tr、Tr1)を含む、整流器(1A~1I)。
【0363】
[A19]前記バックゲート(BG、BG1)は、前記整流段(R)のオン時およびオフ時において零電位に固定される、A18に記載の整流器(1A~1I)。
【0364】
[A20]前記バックゲート(BG、BG1)を零電位に固定するバイアス回路(BC、Tr2)をさらに含む、A18またはA19に記載の整流器(1A~1I)。
【0365】
以上、実施形態について詳細に説明してきたが、これらは技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の範囲は添付の請求の範囲によって限定される。
【符号の説明】
【0366】
1A 整流器
1B 整流器
1C 整流器
1D 整流器
1E 整流器
1F 整流器
1G 整流器
1H 整流器
1I 整流器
R 整流段
A アノード端
K カソード端
Tr1 第1トランジスタ
G1 第1ゲート
DS1 第1ドレインソース
DS2 第2ドレインソース
BG1 第1バックゲート
DP1 第1ダイオード対
D1 第1ボディダイオード
D2 第2ボディダイオード
Tr2 第2トランジスタ
G2 第2ゲート
DS3 第3ドレインソース
DS4 第4ドレインソース
BG2 第2バックゲート
DP2 第2ダイオード対
D3 第3ボディダイオード
D4 第4ボディダイオード
Tr トランジスタ
G ゲート
DS1 第1ドレインソース
DS2 第2ドレインソース
BG バックゲート
DP ダイオード対
D1 第1ボディダイオード
D2 第2ボディダイオード
BC バイアス回路
VF 順方向電位(順方向電圧)
IF 順方向電流
VR 逆方向電位(逆方向電圧)
IR 逆方向電流
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21
図22
図23
図24A
図24B
図25
図26
図27
図28
図29
図30A
図30B
図30C
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38A
図38B
図39
図40
図41
図42
図43A
図43B
図44
図45
図46