(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039298
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】構造体の耐火被覆構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20240314BHJP
E04C 3/12 20060101ALI20240314BHJP
E04C 3/36 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
E04B1/94 R
E04C3/12
E04C3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143747
(22)【出願日】2022-09-09
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】大木 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】三津橋 歩
【テーマコード(参考)】
2E001
2E163
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA01
2E001FA02
2E001GA12
2E001HA03
2E001HA21
2E163FA02
2E163FA12
2E163FC31
2E163FC41
2E163FF44
2E163FF73
(57)【要約】
【課題】複数層に重ね合わせられた耐火被覆材によって構造体の耐火性能を向上させるとともに、構造体の表面に複数層に重ね合わせられた耐火被覆材を支持しやすくする。
【解決手段】四角筒状に形成されて柱10又は梁20を構成する構造体が、四隅のフレーム材11・21と、四隅のフレーム材11・21間に架け渡された内部中空状の中間部材12・22と、を備え、中間部材12・22は、内部中空部に設けられた下地桟材Cを備えており、構造体の四側面のそれぞれに設けられた複数層の前記耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25のうち最内層の耐火被覆材13・23は、四隅のフレーム材11・21と中間部材12・22に固定材16・26で固定されていて、中間部材12・22に留められる固定材16・26は、下地桟材Cを固定下地として最内層の耐火被覆材13・23を固定している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角筒状に形成されて建物の躯体における柱又は梁を構成する構造体の耐火被覆構造であって、
前記構造体は、
前記構造体の四隅に配置され、前記構造体の長さ方向に沿って長尺に形成された木製のフレーム材と、
前記構造体の長さ方向に沿う四側面ごとに、四隅の前記フレーム材間に架け渡されて固定され、前記構造体の長さ方向に沿って長尺に形成された木製の中間部材と、を備えており、
前記中間部材は、中空状に形成されて内部中空部を有するパネル体であり、かつ、前記内部中空部に設けられて前記構造体の長さ方向に沿って長尺な下地桟材を備えており、
前記構造体の長さ方向に沿う四側面のそれぞれには、複数層に重ね合わせられた板状の耐火被覆材が設けられており、
複数層の前記耐火被覆材のうち最内層の耐火被覆材は、前記四隅のフレーム材と前記中間部材に固定材で固定されていて、前記中間部材に留められる前記固定材は、前記下地桟材を固定下地として前記最内層の耐火被覆材を固定していることを特徴とする構造体の耐火被覆構造。
【請求項2】
請求項1に記載の構造体の耐火被覆構造において、
前記複数層の耐火被覆材のうち前記最内層の耐火被覆材は、当該最内層の耐火被覆材より外層側に位置する耐火被覆材よりも厚さ寸法が大きく設定されていることを特徴とする構造体の耐火被覆構造。
【請求項3】
請求項1に記載の構造体の耐火被覆構造において、
前記複数層の耐火被覆材のうち前記最内層の耐火被覆材を除く外層側の耐火被覆材は、自身が重ね合わせられた内層側の耐火被覆材に固定されていることを特徴とする構造体の耐火被覆構造。
【請求項4】
請求項1に記載の構造体の耐火被覆構造において、
前記複数層の耐火被覆材における各層の耐火被覆材は、複数ピースの耐火被覆材を割り付けて構成されており、
内層側の前記耐火被覆材における前記複数ピースの耐火被覆材による目地と、外層側に重ね合わせられた前記耐火被覆材における前記複数ピースの耐火被覆材による目地が重ならないように設定されていることを特徴とする構造体の耐火被覆構造。
【請求項5】
請求項1に記載の構造体の耐火被覆構造において、
前記四側面のそれぞれに設けられた前記複数層の耐火被覆材における各層の耐火被覆材は、前記構造体の長さ方向に沿う長手方向に長く、前記構造体の長さ方向と直交する短手方向に短い矩形状に形成されており、
前記複数層の耐火被覆材は、外層側に位置する耐火被覆材ほど短手方向の長さが長く設定されて、短手方向両側端部が、内層側に位置する耐火被覆材における短手方向両側端部よりも外方に突出していることを特徴とする構造体の耐火被覆構造。
【請求項6】
請求項5に記載の構造体の耐火被覆構造において、
前記複数層の耐火被覆材のうち前記最内層の耐火被覆材を除く外層側の耐火被覆材は、直交する方向に設けられた他の側面の耐火被覆材に固定されていることを特徴とする構造体の耐火被覆構造。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の構造体の耐火被覆構造において、
前記複数層の耐火被覆材は、内層側に位置する耐火被覆材ほど長手方向の長さが長く設定されて、長手方向両側端部が、外層側に位置する耐火被覆材における長手方向両側端部よりも外方に突出していることを特徴とする構造体の耐火被覆構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建物の躯体を構成する構造体の耐火被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの推進による脱炭素社会の実現や、SDGs(Sustainable Development Goals)の目標達成が求められており、建築業界においても、建物を二酸化炭素排出量の少ない木造とする取り組みが進められている。そのため、比較的規模の大きい建物を建築する場合であっても、鉄骨造やRC造、SRC造等の工法ではなく、木造が採用されることがある。
例えば特許文献1には、四角筒状の柱及び梁から形成された躯体を有する木造建物の構築技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この技術では、柱と梁を、直方体状の柱梁接合金物や柱接合金物、梁接合金物等の仕口部材によって接合している。また、四角筒状の柱及び梁は、当該柱及び梁における四隅にそれぞれ配置された木質の角材と、隣り合う角材間に配置されて、これら角材同士を連結する2枚重ねで4セットの木質の建築用パネルとを備えて構成されている。そして、このような四角筒状の柱及び梁と、各接合金物と、を採用することによって比較的規模の大きい木造建物を構築することができる。建築用パネルは内部中空状に形成されて、柱及び梁の軽量化に寄与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、柱や梁といった構造体は、火災による延焼を防ぐために耐火被覆材で確実に被覆しなければならない。また、耐火性能を向上させるには、構造体に対して耐火被覆材を何枚か重ねて設ける必要がある。
ところが、建物の規模が大きいと、柱や梁といった構造体の断面も大きなものとなり、使用される耐火被覆材も一枚一枚が面積の広いものとなる。このような耐火被覆材は一枚でもかなりの重量があるため、複数層に重ね合わされた耐火被覆材のうち最も内層側(構造体側)の耐火被覆材には、外層側に位置する耐火被覆材の重量がかかり、支持しにくくなる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、複数層に重ね合わせられた耐火被覆材によって構造体の耐火性能を向上させるとともに、構造体の表面に複数層に重ね合わせられた耐火被覆材を支持しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば
図1~
図8に示すように、四角筒状に形成されて建物1の躯体2における柱10又は梁20を構成する構造体の耐火被覆構造であって、
前記構造体は、
前記構造体の四隅に配置され、前記構造体の長さ方向に沿って長尺に形成された木製のフレーム材11・21と、
前記構造体の長さ方向に沿う四側面ごとに、四隅の前記フレーム材11・21間に架け渡されて固定され、前記構造体の長さ方向に沿って長尺に形成された木製の中間部材12・22と、を備えており、
前記中間部材12・22は、中空状に形成されて内部中空部を有するパネル体であり、かつ、前記内部中空部に設けられて前記構造体の長さ方向に沿って長尺な下地桟材C(補助桟材C)を備えており、
前記構造体の長さ方向に沿う四側面のそれぞれには、複数層に重ね合わせられた板状の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25が設けられており、
複数層の前記耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25のうち最内層の耐火被覆材13・23は、前記四隅のフレーム材11・21と前記中間部材12・22に固定材16・26で固定されていて、前記中間部材12・22に留められる前記固定材16・26は、前記下地桟材Cを固定下地として前記最内層の耐火被覆材13・23を固定していることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、木製のフレーム材11・21と、木製の中間部材12・22と、を備えた構造体の長さ方向に沿う四側面のそれぞれには、複数層に重ね合わせられた板状の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25が設けられているので、柱10又は梁20を構成する四角筒状の構造体の耐火性能を、複数層に重ね合わせられた耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25によって向上させることができる。
さらに、複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25のうち最内層の耐火被覆材13・23は、四隅のフレーム材11・21と中間部材12・22に固定材16・26で固定されていて、中間部材12・22に留められる固定材16・26は、中間部材12・22の内部中空部に設けられて構造体の長さ方向に沿って長尺な下地桟材Cを固定下地として最内層の耐火被覆材13・23を固定しているので、最内層の耐火被覆材13・23を、構造体における芯の部分(すなわち、四隅のフレーム材11・21及び下地桟材C)に固定できることとなる。これにより、構造体の表面に対する最内層の耐火被覆材13・23の取付安定性が向上するので、当該最内層の耐火被覆材13・23に重ね合わせられた外層側の耐火被覆材14,15・24,25を支持しやすくなる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、例えば
図2~
図8に示すように、請求項1に記載の構造体の耐火被覆構造において、
前記複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25のうち前記最内層の耐火被覆材13・23は、当該最内層の耐火被覆材13・23(230)より外層側に位置する耐火被覆材14,15・24,25よりも厚さ寸法が大きく設定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、最内層の耐火被覆材13・23は、当該最内層の耐火被覆材13・23(230)より外層側に位置する耐火被覆材14,15・24,25よりも厚さ寸法が大きく設定されているので、厚さが増した分、耐火性能を向上させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、例えば
図2~
図8に示すように、請求項1に記載の構造体の耐火被覆構造において、
前記複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25のうち前記最内層の耐火被覆材13・23を除く外層側の耐火被覆材14,15・230,24,25は、自身が重ね合わせられた内層側の耐火被覆材13,14・23(230),24に固定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、外層側の耐火被覆材14,15・230,24,25は、自身のすぐ内層側に位置する耐火被覆材13,14・23(230),24に固定されることになるので、耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25が3層以上に重ね合わせられた場合において、最内層の耐火被覆材13・23にかかる荷重を軽減することができ、複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25における取付安定性の向上に貢献できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、例えば
図2~
図7に示すように、請求項1に記載の構造体の耐火被覆構造において、
前記複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25における各層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25は、複数ピースの耐火被覆材を割り付けて構成されており、
内層側の前記耐火被覆材13,14・23(230),24における前記複数ピースの耐火被覆材による目地と、外層側に重ね合わせられた前記耐火被覆材14,15・230,24,25における前記複数ピースの耐火被覆材による目地が重ならないように設定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、内層側の前記耐火被覆材13,14・23(230),24における前記複数ピースの耐火被覆材による目地と、外層側に重ね合わせられた前記耐火被覆材14,15・230,24,25における前記複数ピースの耐火被覆材による目地が重ならないように設定されているので、例えば目地が重なり合う場合に比して耐火性能を向上させることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、例えば
図2~
図7に示すように、請求項1に記載の構造体の耐火被覆構造において、
前記四側面のそれぞれに設けられた前記複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25における各層の耐火被覆材は、前記構造体の長さ方向に沿う長手方向に長く、前記構造体の長さ方向と直交する短手方向に短い矩形状に形成されており、
前記複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25は、外層側に位置する耐火被覆材14,15・24,25ほど短手方向の長さが長く設定されて、短手方向両側端部が、内層側に位置する耐火被覆材13,14・23(230),24における短手方向両側端部よりも外方に突出していることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、四側面のそれぞれに設けられた複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25における短手方向両側端部が、外層側に向かうにつれて外方に突出する階段状に形成されることになるので、構造体の四側面における直交し合う側面に設けられた複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25同士の短手方向両側端部が合致するように嵌合させることができる。これにより、四側面のそれぞれに設けられた複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25同士を密着させることができるので、耐火性能を向上させることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、例えば
図2~
図7に示すように、請求項5に記載の構造体の耐火被覆構造において、
前記複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25のうち前記最内層の耐火被覆材13・23(230)を除く外層側の耐火被覆材14,15・24,25は、直交する方向に設けられた他の側面の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25に固定されていることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、最内層の耐火被覆材13・23(230)を除く外層側の耐火被覆材14,15・24,25は、直交する方向に設けられた他の側面の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25に固定されているので、四側面のそれぞれに設けられた複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25同士の密着性を高めることができ、耐火性能を向上させることができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、例えば
図2~
図8に示すように、請求項5又は6に記載の構造体の耐火被覆構造において、
前記複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25は、内層側に位置する耐火被覆材13,14・23(230),24ほど長手方向の長さが長く設定されて、長手方向両側端部が、外層側に位置する耐火被覆材14,15・24,25における長手方向両側端部よりも外方に突出していることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、四側面のそれぞれに設けられた複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25における長手方向両側端部が、内層側に向かうにつれて外方に突出する階段状に形成されることになるので、柱10と梁20の取り合い部分において、柱10の側面に設けられた複数層の耐火被覆材13,14,15における長手方向側端部と、梁20の上面又は下面に設けられた複数層の耐火被覆材23(230),24,25における長手方向側端部が合致するように嵌合させることができる。これにより、柱10と梁20の取り合い部分において、複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25同士を密着させることができるので、耐火性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数層に重ね合わせられた耐火被覆材によって構造体の耐火性能を向上させるとともに、構造体の表面に複数層に重ね合わせられた耐火被覆材を支持しやすくすることができる。
しかも、比較的規模の大きい建物を木造で構築できるので、カーボンニュートラルの推進による脱炭素社会の実現や、SDGsの目標達成に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】木造建物の構造を説明するための概略図である。
【
図2】木質組立柱の耐火被覆構造を示す斜視図である。
【
図3】木質組立柱の耐火被覆構造を示す断面図である。
【
図4】木質組立柱の耐火被覆構造に用いられる各層の耐火被覆材を示す正面図である。
【
図5】木質組立梁の耐火被覆構造を示す斜視図である。
【
図6】木質組立梁の耐火被覆構造を示す断面図である。
【
図7】木質組立梁の耐火被覆構造に用いられる各層の耐火被覆材を示す正面図である。
【
図8】組立柱の耐火被覆材と組立梁の耐火被覆材との取り合い部分を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。なお、以下の実施形態及び図示例における方向は、あくまでも説明の便宜上設定したものである。
【0023】
図1において符号1は、建物を示す。この建物1は、10階建ての高層建築物であり、その躯体2が主に木造とされている。すなわち、本実施形態の建物1は、比較的規模の大きい木造建築物である。躯体2は、基礎3によって支持されている。躯体2の側面には、例えばALC(autoclaved lightweight aerated concrete)等からなる外壁4が取りけられている。また、躯体2の最上面には屋根5が取り付けられており、建物1の外表面が構成されている。なお、外壁4は、例えば躯体に設けられた壁受け部4aに取り付けられる(
図8参照)。
さらに、外壁4や屋根5の内側においては、躯体2に、床6や間仕切壁7が取り付けられて部屋が形成されている。
【0024】
躯体2は、柱10と梁20が、直方体状の柱梁接合金物30や、柱接合金物40、梁接合金物50等の仕口部材によって接合されて構成されている。すなわち、基礎3に突設されたアンカーボルト(図示省略)に複数の柱10が固定され、これら複数の柱10の上端部間に、仕口部材を介して梁20が架設されて建物1の1階が構築されている。そして、1階の各柱10の上端部に設けられた仕口部材の上に2階の柱10がそれぞれ固定され、これら複数の柱10の上端部間に、仕口部材を介して梁20が架設されて建物1の2階が構築されている。3階以上は同様の構成となっており、このようにして躯体2が構築されている。
換言すれば、本実施形態における建物1の躯体2は、仕口部材を介して連結された柱10及び梁20からなる柱梁架構が、水平方向及び高さ方向に連続して設けられることで構成されている。
【0025】
(木質組立柱について)
柱10は、全体として内部(中心側)が空洞とされた四角筒状(断面正方形筒状)の構造体であり、
図2,
図3に示すように、4本のフレーム材11と、複数の中間部材12と、を備えている。すなわち、柱10は、これら4本のフレーム材11と複数の中間部材12とが組み立てられることで構成された木質組立柱とされている。
なお、柱10は、四角筒状に形成されることで躯体2の軽量化に貢献している。
【0026】
4本のフレーム材11は、木質組立柱10の四隅に配置されている。各フレーム材11は、長さ方向(上下方向)と直交する断面視において正方形となる長尺材である。
なお、本実施形態のフレーム材11は、構造用集成材が採用されているが、無垢の角材(柱材)やLVL(Laminated Veneer Lumber)、CLT(Cross Laminated Timber)等が採用されてもよい。すなわち、このフレーム材11は、中実材である。
【0027】
各フレーム材11の下端面には、16本の連結ボルト11aが、その下端部をフレーム材11の下端面から突出させた状態となるように埋め込まれて固定されている。また、各フレーム材11の上端面には、4本の連結ボルト11aが、その上端部をフレーム材11の上端面から突出させた状態となるように埋め込まれて固定されている。
また、連結ボルト11aとフレーム材11との接合には、グルードインロッド(GIR:Glued in Rod)と呼ばれる方法が採用される。この方法は、各フレーム材11の上下端面に形成された連結ボルト11a用の差込穴と連結ボルト11aとの空隙に接着剤を充填し、その接着剤の硬化により、応力を接着剤の付着力と連結ボルト11aを介して伝達し、接合耐力を発生させる方法である。
【0028】
さらに、各フレーム材11の長さ方向両端部(上下端部)には、金属製の補強キャップ11bが被され、ビス・木ねじ等の固定材により固定されている。補強キャップ11bには、16本の連結ボルト11a用の孔が16個形成されている。
【0029】
中間部材12は、左右前後(X-X´方向及びY-Y´方向)に隣り合う四隅のフレーム材11間にそれぞれ設けられている。すなわち、隣り合う一方のフレーム材11と他方のフレーム材11との間(中間)に架け渡されるとともに固定されている。中間部材12は、各フレーム材11と共に、木質組立柱10における四側面(X側面、X´側面、Y側面、Y´側面)を構成している。さらに言えば、中間部材12は、隣り合うフレーム材11間において4枚重ねで配置され、表側に位置する中間部材12の表面と、隣り合うフレーム材11の表面は面一となっている。つまり、最も表側に位置する中間部材12は、四隅のフレーム材11と共に、木質組立柱10の四側面を形成していることとなる。
また、中間部材12の4枚分の厚み寸法と、フレーム材11における側面の幅寸法は等しく設定されている。
【0030】
本実施形態の中間部材12は、いわゆる建築用木質パネルによって構成されている。
建築用木質パネルは、縦横の框材Fが矩形状に組み立てられるとともに、この矩形枠の両面もしくは片面に、面材B(例えば合板)が貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。本実施形態において面材Bは両面に貼設されている。内部中空部には、通常、グラスウールやロックウール等の断熱材(図示省略)が装填される。
さらに、矩形枠の内部には、補助桟材C(下地桟材)が組み付けられる場合がある。
本実施形態においては、木質組立柱10における一辺につき4枚の中間部材12が設けられているが、そのうち、最も表面側に位置する中間部材12のみ、矩形枠の内部に補助桟材Cが組み付けられている。
補助桟材Cは、少なくとも中間部材12の縦方向(木質組立柱10の高さ方向)に沿って設けられているが、中間部材12の横方向にも交差して設けられてよい。
また、縦方向の補助桟材Cは、最も表面側に位置する中間部材12における矩形枠の内部に、当該中間部材12の幅方向中央部に沿って配置されている。
なお、中間部材12は、内部中空状に形成されることで、木質組立柱10の軽量化に寄与している。
【0031】
また、木質組立柱10が、このような中間部材12によって組み立てられる場合、中間部材12は、上下寸法が同一のものが、隣り合うフレーム材11間において上下に並んで配置されてもよいし、上下寸法の異なるものが、隣り合うフレーム材11間において上下に並んで配置されてもよい。
【0032】
なお、4枚重ねの中間部材12同士は、接着剤によって接合されている。
また、各中間部材12は、フレーム材11に対して接着剤によって接合されており、ビス留めを併用してもよい。
【0033】
以上のような木質組立柱10の上下端部には、仕口部材である柱接合金物40が設けられている。柱接合金物40は、柱梁接合金物30に対して接合固定される金物である。
柱接合金物40は、左右前後(X-X´方向及びY-Y´方向)に離間して配置された4つの接合用箱形金物41と、これら接合用箱形金物41同士を連結する4つの連結部42とによって四角形枠状に形成されている。
【0034】
接合用箱形金物41は、四隅のフレーム材11における端面に固定されている。より詳細には、フレーム材11の長さ方向両端面に固定された補強キャップ11bに接して固定されている。
接合用箱形金物41におけるフレーム材11側の板部には、16本の連結ボルト11aが挿通される貫通孔が形成されている。当該貫通孔に挿通された16本の連結ボルト11aの先端にはナットが締め付けられて設けられ、これにより、柱接合金物40を木質組立柱10の長さ方向側端面に固定できるようになっている。
なお、接合用箱形金物41は、一面側が開放されており、この開放された箇所からナットの締付作業ができるようになっている。
【0035】
接合用箱形金物41におけるフレーム材11とは反対側の板部には、柱接合金物40を柱梁接合金物30に接合する際に用いられる連結ボルト(図示省略)又は基礎3に突設されたアンカーボルトが挿通される4つの貫通孔41aが形成されている。柱梁接合金物30との接合に用いられる連結ボルト又はアンカーボルトの先端にナットを締め付ける作業も、上記の開放された箇所から行われる。
【0036】
連結部42は、H型鋼又は2つの溝形鋼のウェブ同士を接合した状態のものであり、隣り合う接合用箱形金物41間に架け渡されて設けられている。この連結部42における中間部材12側のフランジは、4枚重ねの中間部材12の端面に接し、いずれかの中間部材12に対してビス留めされている。
【0037】
なお、柱接合金物40のうち、木質組立柱10の下端部に設けられるものを柱脚接合金物と称呼し、木質組立柱10の上端部に設けられるものを柱頭接合金物と称呼してもよい。これら柱脚接合金物40と柱頭接合金物40は、上下反転させた状態で木質組立柱10に固定されている。
【0038】
柱脚接合金物40及び柱頭接合金物40が固定された状態の木質組立柱10における四側面には、耐火被覆材13,14,15が取り付けられている。すなわち、フレーム材11及び中間部材12だけでなく、柱脚接合金物40及び柱頭接合金物40も含めて、耐火被覆材13,14,15によって被覆されている。
耐火被覆材13,14,15は、本実施形態においては、石膏ボードやケイカル板等のような板状のものが採用されており、具体的には、強化石膏ボードが採用されている。
【0039】
耐火被覆材13,14,15は、複数層に重ね合わせられて設けられている。層数は、耐火時間に応じて異なり、1時間耐火の場合は2枚重ね、2時間耐火の場合は3枚重ねとされている。本実施形態においては3枚重ねが採用されている。そのため、耐火被覆材13,14,15には、木質組立柱10の表面に直接取り付けられる最内層の第一耐火被覆材13と、その外側に位置する中間層の第二耐火被覆材14と、露出する最外層の第三耐火被覆材15と、が含まれている。
【0040】
第一耐火被覆材13は、第二耐火被覆材14及び第三耐火被覆材15に比して厚みが厚く設定されている。本実施形態においては例えば厚さ25mmとされている。
一方、第二耐火被覆材14及び第三耐火被覆材15は、例えば厚さ21mmとされており、第一耐火被覆材13よりも厚みが薄く設定されている。
【0041】
耐火被覆材13,14,15は、一枚でもかなりの重量があるため、
図2~
図4に示すように、複数に分割された状態で固定される。
また、耐火被覆材13,14,15は、内層に位置する耐火被覆材13,14を、外層に位置する耐火被覆材14,15が被覆するため、内層に位置する耐火被覆材13,14ほど幅寸法は狭くなっている。換言すれば、内層に位置する耐火被覆材13,14の左側端部は、外層に位置する耐火被覆材14,15の左側端部よりも左方に突出し、内層に位置する耐火被覆材13,14の右側端部は、外層に位置する耐火被覆材14,15の右側端部よりも右方に突出している。これにより、木質組立柱10における左右側端部において、複数層の耐火被覆材13,14,15は、階段状を成すように重ね合わせられる。
さらに、耐火被覆材13,14,15は、内層に位置する耐火被覆材13,14ほど上下寸法が長く設定されている。換言すれば、内層に位置する耐火被覆材13,14の上端部は、外層に位置する耐火被覆材14,15の上端部よりも上方に突出し、内層に位置する耐火被覆材13,14の下端部は、外層に位置する耐火被覆材14,15の下端部よりも下方に突出している。これにより、木質組立柱10における上下端部において、複数層の耐火被覆材13,14,15は、階段状を成すように重ね合わせられる。
【0042】
第一耐火被覆材13は、
図4(a)に示すように、複数ピースの耐火被覆材が割り付けられて構成されている。本実施形態における第一耐火被覆材13は、一側面につき計4枚のピースが使用されており、これら4枚の第一耐火被覆材13は、左右方向の寸法(幅寸法)が等しく設定されている。つまり、第一耐火被覆材13は、縦2枚、横2枚の割り付けとなっている。
また、上下方向の寸法は、下2枚と上2枚で異なるが、これに限られるものではなく、下2枚と上2枚で同一であってもよい。
これにより、最内層の第一耐火被覆材13は、十字状の目地が形成された状態に配置されることとなる。
【0043】
なお、第一耐火被覆材13は、木質組立柱10の四側面にそれぞれ設けられるが、平行する二側面ごとに幅寸法が異なる。
すなわち、
図3に示すように、木質組立柱10のX側面に設けられる第一耐火被覆材13の幅寸法と、X´側面に設けられる第一耐火被覆材13の幅寸法は等しく設定されている。
一方、木質組立柱10のY側面に設けられる第一耐火被覆材13の幅寸法と、Y´側面に設けられる第一耐火被覆材13の幅寸法は等しく設定されている。そして、これらY側面及びY´側面における第一耐火被覆材13の幅寸法は、X側面及びX´側面における第一耐火被覆材13の幅寸法よりも長く設定されている。具体的には、X側面及びX´側面における第一耐火被覆材13の厚み分だけ長く設定されている。
【0044】
また、最内層の第一耐火被覆材13は、木質組立柱10における木質部分(フレーム材11及び中間部材12)に対して、ビス16(固定材)によって固定されている。ビス16は、基本的に、各第一耐火被覆材13の幅方向両端部に打ち込まれるが、必要に応じて、幅方向中央部に打ち込まれてもよい。
第一耐火被覆材13は、上記のように、縦2枚、横2枚の割り付けとなっているので、横2枚の第一耐火被覆材13における隣り合う端部同士は、木質組立柱10の各側面における幅方向中央部に位置することになる。木質組立柱10の各側面における幅方向中央部には、
図3に示すように、最も表面側に位置する中間部材12の補助桟材Cが配置されている。そのため、横2枚の第一耐火被覆材13における隣り合う端部同士は、補助桟材Cを固定下地としてビス留めすることができる。
横2枚の第一耐火被覆材13における幅方向外側の端部は、フレーム材11に対してビス留めされている。
【0045】
第二耐火被覆材14は、
図4(b)に示すように、複数ピースの耐火被覆材が割り付けられて構成されている。本実施形態における第二耐火被覆材14は、一側面につき計3枚のピースが使用されている。3枚のうち真ん中の1枚は幅広に設定され、左右の2枚は、真ん中の1枚よりも幅狭に設定されている。左右2枚の第二耐火被覆材14における左右方向の寸法(幅寸法)は等しく設定されている。
また、3枚の第二耐火被覆材14を接した状態で並べた場合の左右方向の寸法(幅寸法)は、第一耐火被覆材13における左右方向の寸法(幅寸法)よりも長く設定されている。そして、第一耐火被覆材13と第二耐火被覆材14とが重ね合わせられた場合の、第二耐火被覆材14における左右側端部は、第一耐火被覆材13における左右側端部よりも側方に突出している。
中間層の第二耐火被覆材14は、左右側部に縦2本の目地が形成された状態に配置されることとなる。これにより、最内層の第一耐火被覆材13における目地とは重なり合わないようになっている。
【0046】
第二耐火被覆材14は、幅狭な左右の2枚については、幅方向両端部がステープル17によって、第一耐火被覆材13(及び直交する方向の第二耐火被覆材14)に対して固定されている。
より詳細に説明すると、X側面及びX´側面に設けられた第二耐火被覆材14のうち幅狭な2枚の第二耐火被覆材14は、真ん中の第二耐火被覆材14側の端部については同一面の第一耐火被覆材13に対してステープル17で固定されているが、外方の端部については、直交する方向の第一耐火被覆材13の側端面に対してステープル17で固定されている。
また、Y側面及びY´側面に設けられた第二耐火被覆材14のうち幅狭な2枚の第二耐火被覆材14は、真ん中の第二耐火被覆材14側の端部については同一面の第一耐火被覆材13に対してステープル17で固定されているが、外方の端部については、直交する方向の第二耐火被覆材14の側端面に対してステープル17で固定されている。
さらに、真ん中に設けられた幅広の1枚の第二耐火被覆材14は、幅方向両端部と幅方向中央部が、ステープル17によって、第一耐火被覆材13に対して固定されている。
【0047】
第三耐火被覆材15は、
図4(c)に示すように、複数ピースの耐火被覆材が割り付けられて構成されている。本実施形態における第三耐火被覆材15は、一側面につき計2枚のピースが使用されている。これら2枚の第三耐火被覆材15は、左右方向の寸法(幅寸法)が等しく設定されている。
また、2枚の第三耐火被覆材15を接した状態で並べた場合の左右方向の寸法(幅寸法)は、第二耐火被覆材14における左右方向の寸法(幅寸法)よりも長く設定されている。そして、第二耐火被覆材14と第三耐火被覆材15とが重ね合わせられた場合の、第三耐火被覆材15における左右側端部は、第二耐火被覆材14における左右側端部よりも側方に突出している。
最外層の第三耐火被覆材15は、真ん中に縦1本の目地が形成された状態に配置されることとなる。これにより、中間層の第二耐火被覆材14における目地とは重なり合わないようになっている。
【0048】
第三耐火被覆材15は、横2枚の割り付けとなっている。各第三耐火被覆材15は、幅方向両端部と幅方向中央部が、ステープル17によって、第二耐火被覆材14(及び直交する方向の第三耐火被覆材15)に対して固定されている。
より詳細に説明すると、X側面及びX´側面に設けられた各第三耐火被覆材15は、中央側の端部については同一面の第二耐火被覆材14に対してステープル17で固定されているが、外方の端部については、直交する方向の第二耐火被覆材14の側端面に対してステープル17で固定されている。
また、Y側面及びY´側面に設けられた各第三耐火被覆材15は、中央側の端部については同一面の第二耐火被覆材14に対してステープル17で固定されているが、外方の端部については、直交する方向の第三耐火被覆材15の側端面に対してステープル17で固定されている。
【0049】
なお、ビス16やステープル17による各耐火被覆材13,14,15の固定位置は、上記の例に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。ただし、各耐火被覆材13,14,15の四隅や、撓みの生じやすい部分はビス16やステープル17による固定は必須とする。また、ビス16や下地側のステープル17と重複しないようにする。また、ビス16やステープル17は、図示はしないが、各耐火被覆材13,14,15の長手方向にも間隔を空けて適宜設けられるものとする。
【0050】
(木質組立梁について)
梁20は、全体として内部(中心側)が空洞とされた四角筒状(断面長方形筒状)の構造体であり、
図5,
図6に示すように、4本のフレーム材21と、複数の中間部材22と、を備えている。すなわち、梁20は、これら4本のフレーム材21と複数の中間部材212とが組み立てられることで構成された木質組立梁とされている。
なお、梁20は、四角筒状に形成されることで躯体2の軽量化に貢献している。
【0051】
4本のフレーム材21は、木質組立梁20の四隅に配置されている。各フレーム材21は、長さ方向(水平方向)と直交する断面視において正方形となる長尺材である。
なお、本実施形態のフレーム材21は、上記の木質組立柱10のフレーム材11と同様の中実材である。
【0052】
各フレーム材21の長さ方向両端面には、16本の連結ボルト21aが、その先端部をフレーム材21の端面から突出させた状態となるように埋め込まれて固定されている。
また、連結ボルト21aとフレーム材21との接合には、グルードインロッド(GIR:Glued in Rod)と呼ばれる方法が採用される。
【0053】
さらに、各フレーム材21の長さ方向両端部(上下端部)には、金属製の補強キャップ21bが被され、ビス・木ねじ等の固定材により固定されている。補強キャップ21bには、16本の連結ボルト21a用の孔が16個形成されている。
【0054】
中間部材22は、縦横(Z-Z´方向及びY-Y´方向)に隣り合う四隅のフレーム材21間にそれぞれ設けられている。すなわち、隣り合う一方のフレーム材21と他方のフレーム材21との間(中間)に架け渡されるとともに固定されている。中間部材22は、各フレーム材21と共に、木質組立梁20における四側面(Z側面、Z´側面、Y側面、Y´側面)を構成している。さらに言えば、中間部材22は、隣り合うフレーム材21間において4枚重ねで配置され、表側に位置する中間部材22の表面と、隣り合うフレーム材21の表面は面一となっている。つまり、最も表側に位置する中間部材22は、四隅のフレーム材21と共に、木質組立梁20の四側面を形成していることとなる。
また、中間部材22の4枚分の厚み寸法と、フレーム材21における側面の幅寸法(短手方向の寸法)は等しく設定されている。
【0055】
本実施形態の中間部材22は、いわゆる建築用木質パネルによって構成されている。
建築用木質パネルは、縦横の框材Fが矩形状に組み立てられるとともに、この矩形枠の両面もしくは片面に、面材Bが貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。本実施形態において面材Bは両面に貼設されている。内部中空部には、通常、グラスウールやロックウール等の断熱材(図示省略)が装填される。
さらに、矩形枠の内部には、補助桟材C(下地桟材)が組み付けられる場合がある。
本実施形態においては、木質組立梁20における一辺につき4枚の中間部材22が設けられているが、そのうち、最も表面側に位置する中間部材22のみ、矩形枠の内部に補助桟材Cが組み付けられている。
補助桟材Cは、少なくとも中間部材22の縦方向(木質組立梁20の長さ方向)に沿って設けられているが、中間部材22横方向にも交差して設けられてよい。
また、縦方向の補助桟材Cは、最も表面側に位置する中間部材22における矩形枠の内部に、当該中間部材22の幅方向中央部に沿って配置されている。
なお、中間部材22は、内部中空状に形成されることで、木質組立梁20の軽量化に寄与している。
【0056】
また、木質組立梁20が、このような中間部材22によって組み立てられる場合、中間部材22は、長さ寸法が同一のものが、隣り合うフレーム材21間において長さ方向に並んで配置されてもよいし、長さ寸法の異なるものが、隣り合うフレーム材21間において長さ方向に並んで配置されてもよい。
【0057】
なお、4枚重ねの中間部材22同士は、接着剤によって接合されている。
また、各中間部材22は、フレーム材21に対して接着剤によって接合されており、ビス留めを併用してもよい。
【0058】
以上のような木質組立梁20の長さ方向両端部には、仕口部材である梁接合金物50が設けられている。梁接合金物50は、柱梁接合金物30に対して接合固定される金物である。
梁接合金物40は、縦横(Z-Z´方向及びY-Y´方向)に離間して配置された4つの接合用箱形金物51と、これら接合用箱形金物51同士を連結する4つの連結部52とによって四角形枠状に形成されている。
【0059】
接合用箱形金物51は、四隅のフレーム材21における端面に固定されている。より詳細には、フレーム材21の長さ方向両端面に固定された補強キャップ21bに接して固定されている。固定の態様は、上記の木質組立柱10の場合と同様であり、フレーム材21における16本の連結ボルト21aに対して、接合用箱形金物51の開放された箇所からナットの締付作業が行われる。
【0060】
接合用箱形金物51におけるフレーム材21とは反対側の板部には、梁接合金物50を柱梁接合金物30に接合する際に用いられる連結ボルト(図示省略)が挿通される1つの貫通孔51aが形成されている。柱梁接合金物30との接合に用いられる連結ボルトの先端にナットを締め付ける作業も、上記の開放された箇所から行われる。
【0061】
連結部52は、H型鋼又は2つの溝形鋼のウェブ同士を接合した状態のものであり、隣り合う接合用箱形金物51間に架け渡されて設けられている。この連結部52における中間部材22側のフランジは、4枚重ねの中間部材22の端面に接し、いずれかの中間部材22に対してビス留めされている。
【0062】
梁接合金物50が両端部に固定された状態の木質組立梁20における四側面には、耐火被覆材23,24,25が取り付けられている。すなわち、フレーム材21及び中間部材22だけでなく、梁接合金物50も含めて、耐火被覆材23,24,25によって被覆されている。
耐火被覆材23,24,25は、本実施形態においては強化石膏ボードが採用されている。
【0063】
耐火被覆材23,24,25は、複数層に重ね合わせられて設けられている。ただし、木質組立梁20の場合、下面は最も火炎の影響を受けやすいため、上面や側面よりも耐火被覆材23が1枚多く取り付けられている。
木質組立梁20の上面や側面に設けられる耐火被覆材23,24,25の層数は、耐火時間に応じて異なり、1時間耐火の場合は2枚重ね、2時間耐火の場合は3枚重ねとされている。下面の場合は1枚多い。本実施形態においては、上面及び側面には3枚重ねが採用され、下面には4枚重ねが採用されている。
本実施形態において、耐火被覆材23,24,25には、木質組立梁20の表面(上下面、側面)に直接取り付けられる最内層の第一耐火被覆材23と、下面に追加されて耐火性能を向上させるための追加耐火被覆材230と、第一耐火被覆材23及び追加耐火被覆材230の外側に位置する中間層の第二耐火被覆材24と、露出する最外層の第三耐火被覆材25と、が含まれている。
【0064】
第一耐火被覆材23及び追加耐火被覆材230は、第二耐火被覆材24及び第三耐火被覆材25に比して厚みが厚く設定されている。本実施形態においては例えば厚さ25mmとされている。
一方、第二耐火被覆材24及び第三耐火被覆材25は、例えば厚さ21mmとされており、第一耐火被覆材23及び追加耐火被覆材230よりも厚みが薄く設定されている。
【0065】
耐火被覆材23(230),24,25は、一枚でもかなりの重量があるため、
図5~
図7に示すように、複数に分割された状態で固定される。
また、耐火被覆材23(230),24,25は、内層に位置する耐火被覆材23(230),24を、外層に位置する耐火被覆材24,25が被覆するため、内層に位置する耐火被覆材23(230),24ほど幅寸法は狭くなっている。換言すれば、内層に位置する耐火被覆材23,24の左側端部は、外層に位置する耐火被覆材24,25の左側端部よりも左方に突出し、内層に位置する耐火被覆材23(230),24の右側端部は、外層に位置する耐火被覆材24,25の右側端部よりも右方に突出している。これにより、木質組立梁20における左右側端部において、複数層の耐火被覆材23(230),24,25は、階段状を成すように重ね合わせられる。
さらに、耐火被覆材23(230),24,25は、内層に位置する耐火被覆材23(230),24ほど長さ寸法が長く設定されている。換言すれば、内層に位置する耐火被覆材23(230),24の長さ方向両端部は、外層に位置する耐火被覆材24,25の長さ方向両端部よりも外方に突出している。これにより、木質組立梁20における長さ方向両端部において、複数層の耐火被覆材23(230),24,25は、階段状を成すように重ね合わせられる。
なお、
図7は、左側の列における各図(a),(d),(f)が、木質組立梁20の側面に設けられる耐火被覆材23,24,25の割り付けを示しており、右側の列における各図(b),(c),(e),(g)が、木質組立梁20の下面及び上面に設けられる耐火被覆材23,24,25の割り付けを示している。ただし、
図7(c)に示す追加耐火被覆材230は、木質組立梁20の下面にのみ設けられる。
【0066】
第一耐火被覆材23は、
図7(a),(b)に示すように、複数ピースの耐火被覆材が割り付けられて構成されている。本実施形態における第一耐火被覆材23は、一側面につき計4枚のピースが使用されており、これら4枚の第一耐火被覆材23は、縦横の寸法が等しく設定されている。つまり、各面の第一耐火被覆材23は、長手方向に2枚、短手方向に2枚の割り付けとなっている。また、縦横の寸法は、4枚とも同一とされている。
これにより、最内層の第一耐火被覆材23は、十字状の目地が形成された状態に配置されることとなる。
【0067】
なお、第一耐火被覆材23は、木質組立梁20の上下面及び側面にそれぞれ設けられるが、平行する二面ごとに幅寸法が異なる。
すなわち、木質組立梁20のY側面(一側面)に設けられる第一耐火被覆材23の幅寸法(Z-Z´方向の寸法)と、Y´側面(他側面)に設けられる第一耐火被覆材23の幅寸法(Z-Z´方向の寸法)は等しく設定されている。
一方、木質組立梁20のZ側面(下面)に設けられる第一耐火被覆材23の幅寸法(Y-Y´方向の寸法)と、Z´側面(上面)に設けられる第一耐火被覆材23の幅寸法(Y-Y´方向の寸法)は等しく設定されている。そして、これらZ側面及びZ´側面における第一耐火被覆材23の幅寸法は、Y側面及びY´側面における第一耐火被覆材23の幅寸法よりも短く設定されている。
【0068】
また、最内層の第一耐火被覆材23は、木質組立梁20における木質部分(フレーム材21及び中間部材22)に対して、ビス26(固定材)によって固定されている。ビス26は、基本的に、各第一耐火被覆材23の幅方向両端部に打ち込まれるが、必要に応じて、幅方向中央部に打ち込まれてもよい。
各面の第一耐火被覆材23は、上記のように、長手方向に2枚、短手方向に2枚の割り付けとなっているので、短手方向に並ぶ2枚の第一耐火被覆材23における隣り合う端部同士は、木質組立梁20の各側面における幅方向中央部に位置することになる。木質組立梁20の各側面における幅方向中央部には、
図6に示すように、最も表面側に位置する中間部材22の補助桟材Cが配置されている。そのため、短手方向に並ぶ2枚の第一耐火被覆材23における隣り合う端部同士は、補助桟材Cを固定下地としてビス留めすることができる。
短手方向に並ぶ2枚の第一耐火被覆材23における幅方向外側の端部は、フレーム材21に対してビス留めされている。
【0069】
追加耐火被覆材230は、
図7(c)に示すように、複数ピースの耐火被覆材が割り付けられて構成されている。本実施形態における追加耐火被覆材230は、計9枚のピースが使用されている。つまり、追加耐火被覆材230は、長手方向に3枚ずつ、短手方向に3枚ずつの割り付けとなっている。
長手方向においては、長手方向中央の追加耐火被覆材230が最も長く、長手方向両端部の追加耐火被覆材230は同一の長手寸法に設定されている。
短手方向においては、短手方向中央の追加耐火被覆材230が最も短く幅狭とされている。一方、短手方向両端部の追加耐火被覆材230は、同一の短手寸法に設定され、かつ、中央の追加耐火被覆材230よりも幅広に設定されている。
木質組立梁20の下面(下面側に位置する第一耐火被覆材23の下面)に追加された追加耐火被覆材230は、長手方向に2本、短手方向に2本の目地が形成された状態に配置されることとなる。これにより、最内層の第一耐火被覆材13における目地とは重なり合わないようになっている。
追加耐火被覆材230の各々は、短手方向両端部と短手方向中央部が、ステープル27によって、下面側に位置する第一耐火被覆材23に対して固定されている。
【0070】
第二耐火被覆材24は、
図7(d),(e)に示すように、Y側面及びY´側面と、Z側面及びZ´側面とで割り付けが異なる。
Y側面及びY´側面における第二耐火被覆材24は、
図7(d)に示すように、複数ピースの耐火被覆材が割り付けられて構成されている。本実施形態のY側面及びY´側面における第二耐火被覆材24は、計5枚のピースが使用されている。つまり、長手方向両端部に設けられた短手方向に長い2枚と、これら長手方向の2枚の第二耐火被覆材24間に、短手方向に3枚並ぶ第二耐火被覆材24が割り付けられている。なお、短手方向3枚のうち中央の第二耐火被覆材24が、短手方向外側の2枚よりも幅広に設定されている。
Z側面及びZ´側面における第二耐火被覆材24は、
図7(e)に示すように、複数ピースの耐火被覆材が割り付けられて構成されている。本実施形態のZ側面及びZ´側面における第二耐火被覆材24は、計6枚のピースが使用されている。つまり、長手方向に2枚ずつ、短手方向に3枚ずつの第二耐火被覆材24が割り付けられている。なお、短手方向3枚のうち中央の第二耐火被覆材24が、短手方向外側の2枚よりも幅広に設定されている。
【0071】
短手方向に3枚の第二耐火被覆材24を接した状態で並べた場合の短手方向の寸法(幅寸法)は、第一耐火被覆材23及び追加耐火被覆材230における短手方向の寸法(幅寸法)よりも長く設定されている。そして、第一耐火被覆材23及び追加耐火被覆材230と第二耐火被覆材24とが重ね合わせられた場合の、第二耐火被覆材24における短手方向側端部は、第一耐火被覆材23及び追加耐火被覆材230における短手方向側端部よりも外方に突出している。
【0072】
Y側面及びY´側面における第二耐火被覆材24は、長手方向両端部において短手方向に沿った2本の目地と、これら2本の目地間に亘って長手方向に沿った2本の目地が形成された状態に配置されることとなる。これにより、最内層の第一耐火被覆材23における目地とは重なり合わないようになっている。
Z側面及びZ´側面における第二耐火被覆材24は、長手方向に沿った2本、短手方向に沿った1本の目地が形成された状態に配置されることとなる。これにより、最内層の第一耐火被覆材23及び追加耐火被覆材230における目地とは重なり合わないようになっている。
【0073】
第二耐火被覆材24は、ステープル27によって、第一耐火被覆材23又は追加耐火被覆材230に対して固定されている。
より詳細に説明すると、Y側面及びY´側面に設けられた第二耐火被覆材24のうち幅狭な2枚の第二耐火被覆材24は、短手方向中央部と、真ん中の第二耐火被覆材24側の端部については同一面の第一耐火被覆材23に対してステープル27で固定されている。外方(Z-Z´方向外側)の端部については、直交する方向の第一耐火被覆材23の側端面に対してステープル27で固定されている。
また、Z側面(下面)に設けられた第二耐火被覆材24のうち幅狭な2枚の第二耐火被覆材24は、真ん中の第二耐火被覆材24側の端部については追加耐火被覆材230に対してステープル27で固定されているが、外方(Y-Y´方向外側)の端部については、直交する方向の第二耐火被覆材24の側端面に対してステープル27で固定されている。
一方、Z´側面(上面)に設けられた第二耐火被覆材24のうち幅狭な2枚の第二耐火被覆材24は、真ん中の第二耐火被覆材24側の端部については同一面の第一耐火被覆材23に対してステープル27で固定されているが、外方(Y-Y´方向外側)の端部については、直交する方向の第二耐火被覆材24の側端面に対してステープル27で固定されている。
【0074】
さらに、各面の、短手方向中央に設けられた幅広の1枚の第二耐火被覆材24は、幅方向両端部と幅方向中央部が、ステープル27によって、第一耐火被覆材23又は追加耐火被覆材230に対して固定されている。
また、Y側面及びY´側面における長手方向に2枚の第二耐火被覆材24は、木質組立梁20の短手方向に沿って長尺に形成されており、少なくとも四隅が、ステープル27によって、第一耐火被覆材23に対して固定されている。
【0075】
第三耐火被覆材25は、
図7(f),(g)に示すように、Y側面及びY´側面と、Z側面及びZ´側面とで割り付けが異なる。
Y側面及びY´側面における第三耐火被覆材25は、
図7(f)に示すように、複数ピースの耐火被覆材が割り付けられて構成されている。本実施形態のY側面及びY´側面における第三耐火被覆材25は、計5枚のピースが使用されている。つまり、長手方向両端部に設けられた短手方向に長い2枚と、これら長手方向の2枚の第二耐火被覆材25間に、短手方向に3枚並ぶ第二耐火被覆材25が割り付けられている。なお、短手方向3枚のうち中央の第二耐火被覆材25が、短手方向外側の2枚よりも幅狭に設定されている。
Z側面及びZ´側面における第三耐火被覆材15は、
図7(g)に示すように、複数ピースの耐火被覆材が割り付けられて構成されている。本実施形態のZ側面及びZ´側面における第三耐火被覆材25は、計4枚のピースが使用されている。つまり、長手方向両端部に設けられた短手方向に長い2枚と、これら長手方向の2枚の第二耐火被覆材25間に、短手方向に2枚並ぶ第二耐火被覆材25が割り付けられている。なお、短手方向に並ぶ2枚の第三耐火被覆材15は、幅寸法が等しく設定されている。
【0076】
Y側面及びY´側面の第三耐火被覆材25において、短手方向に3枚の第三耐火被覆材25を接した状態で並べた場合の短手方向の寸法(Z-Z´方向の寸法)は、Y側面及びY´側面の第二耐火被覆材24における短手方向の寸法(Z-Z´方向の寸法)よりも長く設定されている。そして、Y側面及びY´側面の第二耐火被覆材24と、Y側面及びY´側面の第三耐火被覆材25が重ね合わせられた場合の、当該第三耐火被覆材25における短手方向側端部は、Y側面及びY´側面の第二耐火被覆材24における短手方向側端部よりも外方に突出している。
Z側面及びZ´側面の第三耐火被覆材25において、短手方向に2枚の第三耐火被覆材25を接した状態で並べた場合の短手方向の寸法(Y-Y´方向の寸法)は、Z側面及びZ´側面の第二耐火被覆材24における短手方向の寸法(Y-Y´方向の寸法)よりも長く設定されている。そして、Z側面及びZ´側面の第二耐火被覆材24と、Z側面及びZ´側面の第三耐火被覆材25が重ね合わせられた場合の、当該第三耐火被覆材25における短手方向側端部は、Z側面及びZ´側面の第二耐火被覆材24における短手方向側端部よりも外方に突出している。
【0077】
Y側面及びY´側面における第三耐火被覆材25は、長手方向両端部において短手方向に沿った2本の目地と、これら2本の目地間に亘って長手方向に沿った2本の目地が形成された状態に配置されることとなる。真ん中の第三耐火被覆材25は、真ん中の第二耐火被覆材24よりも幅狭に設定されている。これにより、中間層の第二耐火被覆材24における目地とは重なり合わないようになっている。
Z側面及びZ´側面における第三耐火被覆材25は、長手方向両端部において短手方向に沿った2本の目地と、これら2本の目地間に亘って長手方向に沿った真ん中の1本の目地が形成された状態に配置されることとなる。これにより、中間層の第二耐火被覆材24における目地とは重なり合わないようになっている。
【0078】
第三耐火被覆材25は、ステープル27によって、第二耐火被覆材24又は第三耐火被覆材25に対して固定されている。
より詳細に説明すると、Y側面及びY´側面に設けられた第三耐火被覆材25のうち幅広な2枚の第二耐火被覆材24は、短手方向中央部と、真ん中の第三耐火被覆材25側の端部については同一面の第二耐火被覆材24に対してステープル27で固定されている。外方(Z-Z´方向外側)の端部については、直交する方向の第二耐火被覆材24の側端面に対してステープル27で固定されている。
また、Z側面及びZ´側面における第三耐火被覆材25は、短手方向中央部と、隣接する第三耐火被覆材15側の端部については第二耐火被覆材24に対してステープル27で固定されている。外方(Y-Y´方向外側)の端部については、直交する方向の第三耐火被覆材25の側端面に対してステープル27で固定されている。
【0079】
なお、ビス26やステープル27による各耐火被覆材23,24,25の固定位置は、上記の例に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。ただし、各耐火被覆材23,24,25の四隅や、撓みの生じやすい部分はビス26やステープル27による固定は必須とする。また、ビス26や下地側のステープル27と重複しないようにする。また、ビス26やステープル27は、図示はしないが、各耐火被覆材23,24,25の長手方向にも間隔を空けて適宜設けられるものとする。
【0080】
(木質組立柱と木質組立梁との取り合い部分について)
仕口部材である柱梁接合金物30は、直方体状に形成されており、
図8に示すように、下面及び上面に柱接合金物40が連結され、側面に梁接合金物50が連結される。
木質組立柱10は、柱梁接合金物30と柱接合金物40(柱脚接合金物40、柱頭接合金物40)とを連結ボルト(図示省略)で連結することによって、柱梁接合金物30に接合されている。
また、木質組立梁20は、柱梁接合金物30と梁接合金物50とを連結ボルト(図示省略)で連結することによって、柱梁接合金物30に接合されている。
【0081】
柱接合金物40における接合用箱形金物41の側面と、柱梁接合金物30の側面は面一となっている。また、梁接合金物50における接合用箱形金物51の上面及び下面と、柱梁接合金物30の上面及び下面は面一となっている。さらに、柱接合金物40における柱梁接合金物30側の面(下面又は上面)と、木質組立梁20(梁接合金物50)の上面又は下面は、同一水平面上に配置される位置関係となっている。
【0082】
柱接合金物40と梁接合金物50が、以上のように、柱梁接合金物30を介して直交する位置関係となっている。木質組立柱10の表面に設けられた耐火被覆材13,14,15と、木質組立梁20の表面に設けられた耐火被覆材23,24,25は、耐火のため隙間なく噛み合う状態とする必要がある。
そのため、
図8に示すように、木質組立柱10における上下端部において、複数層の耐火被覆材13,14,15は、階段状を成すように重ね合わせられている。さらに、木質組立梁20における長さ方向両端部において、複数層の耐火被覆材23(230),24,25は、階段状を成すように重ね合わせられている。これにより、木質組立柱10にける複数層の耐火被覆材13,14,15と、木質組立梁20における複数層の耐火被覆材23,24,25は、互いに噛み合った状態に接している。
【0083】
より詳細に説明すると、木質組立柱10の各側面に取り付けられた複数層の耐火被覆材13,14,15は、内層側ほど上下寸法が長く設定されている。また、内層側の耐火被覆材13,14は、外層側の耐火被覆材14,15に対して上方又は下方に突出しているので、複数層の耐火被覆材13,14,15は上下端部が階段状に形成されている。
一方、木質組立梁20の上面及び下面と両側面に取り付けられた複数層の耐火被覆材23(230),24,25は、内層側ほど長さ寸法が長く設定されている。また、内層側の耐火被覆材23(230),24は、外層側の耐火被覆材24,25に対して長さ方向に突出しているので、複数層の耐火被覆材23(230),24,25は長さ方向両端部が階段状に形成されている。
【0084】
また、本実施形態においては、
図8に示すように、木質組立柱10に取り付けられた第一耐火被覆材13が、柱接合金物40の端面(柱梁接合金物30に接する面)までは達しない長さに設定されている。一方、木質組立梁20に取り付けられた第一耐火被覆材23は、梁接合金物50の端面(柱梁接合金物30に接する面)まで達する長さに設定されている。これにより、木質組立柱10にける複数層の耐火被覆材13,14,15と、木質組立梁20における複数層の耐火被覆材23,24,25は、隙間なく互いに噛み合った状態となっている。
【0085】
本実施形態によれば、以下のような優れた効果を奏する。
すなわち、木製のフレーム材11・21と、木製の中間部材12・22と、を備えた構造体の長さ方向に沿う四側面のそれぞれには、複数層に重ね合わせられた板状の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25が設けられているので、柱10又は梁20を構成する四角筒状の構造体の耐火性能を、複数層に重ね合わせられた耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25によって向上させることができる。
さらに、複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25のうち最内層の耐火被覆材13・23は、四隅のフレーム材11・21と中間部材12・22に固定材16・26で固定されていて、中間部材12・22に留められる固定材16・26は、中間部材12・22の内部中空部に設けられて構造体の長さ方向に沿って長尺な下地桟材Cを固定下地として最内層の耐火被覆材13・23を固定しているので、最内層の耐火被覆材13・23を、構造体における芯の部分(すなわち、四隅のフレーム材11・21及び下地桟材C)に固定できることとなる。これにより、構造体の表面に対する最内層の耐火被覆材13・23の取付安定性が向上するので、当該最内層の耐火被覆材13・23に重ね合わせられた外層側の耐火被覆材14,15・24,25を支持しやすくなる。
【0086】
また、最内層の耐火被覆材13・23は、当該最内層の耐火被覆材13・23(230)より外層側に位置する耐火被覆材14,15・24,25よりも厚さ寸法が大きく設定されているので、厚さが増した分、耐火性能を向上させることができる。
【0087】
また、外層側の耐火被覆材14,15・230,24,25は、自身のすぐ内層側に位置する耐火被覆材13,14・23(230),24に固定されることになるので、耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25が3層以上に重ね合わせられた場合において、最内層の耐火被覆材13・23にかかる荷重を軽減することができ、複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25における取付安定性の向上に貢献できる。
【0088】
また、内層側の前記耐火被覆材13,14・23(230),24における前記複数ピースの耐火被覆材による目地と、外層側に重ね合わせられた前記耐火被覆材14,15・230,24,25における前記複数ピースの耐火被覆材による目地が重ならないように設定されているので、例えば目地が重なり合う場合に比して耐火性能を向上させることができる。
【0089】
また、四側面のそれぞれに設けられた複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25における短手方向両側端部が、外層側に向かうにつれて外方に突出する階段状に形成されることになるので、構造体の四側面における直交し合う側面に設けられた複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25同士の短手方向両側端部が合致するように嵌合させることができる。これにより、四側面のそれぞれに設けられた複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25同士を密着させることができるので、耐火性能を向上させることができる。
【0090】
また、最内層の耐火被覆材13・23(230)を除く外層側の耐火被覆材14,15・24,25は、直交する方向に設けられた他の側面の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25に固定されているので、四側面のそれぞれに設けられた複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25同士の密着性を高めることができ、耐火性能を向上させることができる。
【0091】
また、四側面のそれぞれに設けられた複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25における長手方向両側端部が、内層側に向かうにつれて外方に突出する階段状に形成されることになるので、柱10と梁20の取り合い部分において、柱10の側面に設けられた複数層の耐火被覆材13,14,15における長手方向側端部と、梁20の上面又は下面に設けられた複数層の耐火被覆材23(230),24,25における長手方向側端部が合致するように嵌合させることができる。これにより、柱10と梁20の取り合い部分において、複数層の耐火被覆材13,14,15・23(230),24,25同士を密着させることができるので、耐火性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 建物
2 躯体
10 木質組立柱
11 フレーム材
12 中間部材
13 第一耐火被覆材
14 第二耐火被覆材
15 第三耐火被覆材
20 木質組立梁
21 フレーム材
22 中間部材
23 第一耐火被覆材
230 追加耐火被覆材
24 第二耐火被覆材
25 第三耐火被覆材
30 柱梁接合金物
40 柱接合金物
50 梁接合金物
F 框材
B 面材
C 補助桟材