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  • 特開-電動機の騒音低減装置、及び電動機 図1
  • 特開-電動機の騒音低減装置、及び電動機 図2
  • 特開-電動機の騒音低減装置、及び電動機 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039300
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】電動機の騒音低減装置、及び電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/24 20060101AFI20240314BHJP
   G10K 11/178 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
H02K5/24
G10K11/178 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143749
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】戸田 和宏
【テーマコード(参考)】
5D061
5H605
【Fターム(参考)】
5D061FF02
5H605AA05
5H605BB05
5H605CC01
5H605DD21
(57)【要約】
【課題】電動機の機械的な構造を変更することなく騒音を低減させる。
【解決手段】電動機の騒音低減装置は、電動機に設けられて電動機の周囲の音を集音するマイクと、マイクで集音した音を打ち消す位相となる打ち消し音を生成する処理装置と、電動機に設けられて処理装置で生成された打ち消し音を再生するスピーカーと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機に設けられて前記電動機の周囲の音を集音するマイクと、
前記マイクで集音した音を打ち消す位相となる打ち消し音を生成する処理装置と、
前記電動機に設けられて前記処理装置で生成された前記打ち消し音を再生するスピーカーと、
を備える電動機の騒音低減装置。
【請求項2】
前記マイク及び前記スピーカーは、前記電動機の外側面に設けられる、
請求項1に記載の電動機の騒音低減装置。
【請求項3】
前記マイク及び前記スピーカーは、前記電動機の負荷側及び反負荷側の両方に設けられる、
請求項1に記載の電動機の騒音低減装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の騒音低減装置を備える電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電動機の騒音低減装置、及び電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、電動機の運転時には、例えば電動機に設けられた外扇ファンの風切り音や、電動機の負荷側の軸受けで発生する軸受け音、及び磁気音若しくは磁励音等の各種の騒音が発生する。しかしながら、例えば外扇ファンの風切り音の対策には外扇ファンの形状を変更したり、軸受音の対策には隙間の小さい軸受を採用したりする等、従来、これらの騒音の対策には、機械的な構造を変更する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-068740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電動機の機械的な構造を変更すると、例えば電動機の冷却性能等の特性や能力も変化してしまう可能性があるため、全体の設計を一から見直す必要がある。また、既に運用されている電動機に対して後から機械的な変更を加えることは難しい。
【0005】
そこで、電動機の機械的な構造を変更することなく騒音を低減させることができる電動機の騒音低減装置、及びこの騒音低減装置を備えた電動機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態による電動機の騒音低減装置は、電動機に設けられて前記電動機の周囲の音を集音するマイクと、前記マイクで集音した音を打ち消す位相となる打ち消し音を生成する処理装置と、前記電動機に設けられて前記処理装置で生成された前記打ち消し音を再生するスピーカーと、を備える。
【0007】
また、実施形態による電動機は、上記した騒音低減装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態による電動機及び電動機の騒音低減装置の構成の一例を概略的に示す図
図2】一実施形態による電動機の騒音低減装置の機能ブロックの一例を示す図
図3】一実施形態による電動機の騒音低減装置について、マイクで集音した音、処理装置で生成された打ち消し音、及び打ち消し音の再生による騒音の打ち消し結果をそれぞれ概念的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態による電動機の騒音低減装置及び電動機について図面を参照しながら説明する。電動機10は、例えば図示しない外部の制御装置に接続され、制御装置に設けられている図示しないインバータから出力される電力によって駆動される。電動機10は、例えば予め回転数などが設定された運転条件にしたがって運転される。
【0010】
図1に例示する電動機10は、フレーム11、軸受けブラケット12、13、ファンカバー14、回転軸15、及び端子箱16を備えている。また、電動機10は、詳細は図示しないが、フレーム11の内部に設けられた固定子及び回転子を備えている。固定子は、例えば固定子鉄心とコイルとを有しており、フレーム11の内周面に固定されている。回転子は、例えば回転子鉄心と永久磁石とを有しており、フレーム11の内部において回転軸15とともに回転可能に設けられている。
【0011】
フレーム11、軸受けブラケット12、13、及びファンカバー14は、電動機10の外殻を構成する。フレーム11は、例えば内部に円筒状の空間を有して構成されており、図示しない固定子及び回転子を収容する。軸受けブラケット12、13は、それぞれフレーム11の両端部分に設けられており、回転軸15を回転可能に支持する。ファンカバー14は、フレーム11の一方の端部側に設けられており、図示しない冷却用の外扇ファンを収容する。
【0012】
回転軸15の一方の端部、この場合図1の左側の端部は、ファンカバー14内で図示しない外扇ファンに接続されている。また、図1に示すように、回転軸15の他方の端部、この場合、図1の右側の端部は、軸受けブラケット13から外部に露出しており、図示しない負荷に接続される。なお、回転軸15に接続される図示しない負荷は、例えばポンプなど、電動機10によって駆動可能な種々の要素を適用することができる。
【0013】
以下の説明において、電動機10に対し図示しない負荷が接続される側を「負荷側」と称し、負荷側とは反対側、この場合、図示しない外扇ファンが接続される側を「反負荷側」と称することがある。図1の例では、紙面右側が「負荷側」となり、紙面左側が「反負荷側」となる。
【0014】
端子箱16は、例えばフレーム11に固定されている。端子箱16は、例えばフレーム11と一体又は別体に構成されており、フレーム11の外方へ突出している。端子箱16内には、固定子のコイルに繋がる図示しない接続端子が収容されている。
【0015】
電動機10には、騒音低減装置20が例えば着脱可能に取り付けられている。本実施形態の場合、電動機10は、騒音低減装置20を備えている。騒音低減装置20は、マイク21、スピーカー22、及び処理装置23を備えている。騒音低減装置20は、複数のマイク21及び複数のスピーカー22を備えている。騒音低減装置20は、例えばマイク21及びスピーカー22をそれぞれ3つ以上備えている。
【0016】
マイク21は、電動機10に設けられており、電動機10の周囲の音を集音する機能を有する。マイク21は、例えば回転軸15の両端部側、つまり回転軸15の負荷側及び反負荷側に設けられている。この場合、負荷側に設けられたマイク21は、主に回転軸15の負荷側に発生する騒音を集音する。また、反負荷側に設けられたマイク21は、主に図示しない外扇ファンの風切り音による騒音を集音する。
【0017】
マイク21は、電動機10の外側面、この場合、例えば軸受けブラケット12、13の外側面に設けられている。本実施形態の場合、マイク21は、電動機10の外部の音を集音する。なお、マイク21は、例えばフレーム11又はファンカバー14の外側面に設けられていても良い。各マイク21は、軸受けブラケット12、13の外側面において、回転軸15の回転方向に沿って例えば等間隔に配置されている。
【0018】
スピーカー22は、電動機10に設けられており、処理装置23で生成された打ち消し音を再生する機能を有する。各スピーカー22は、それぞれ対応する各マイク21の近傍に設けられている。スピーカー22は、例えば回転軸15の両端部側、つまり回転軸15の負荷側及び反負荷側に設けられている。この場合、負荷側に設けられたスピーカー22は、主に回転軸15の負荷側に発生する騒音を打ち消す音を発生させる。また、反負荷側に設けられたマイク21は、主に図示しない外扇ファンの風切り音による騒音を打ち消す音を発生させる。
【0019】
スピーカー22は、電動機10の外側面、この場合、例えば軸受けブラケット12、13の外側面に設けられている。本実施形態の場合、スピーカー22は、電動機10の外部に対して打ち消し音を発生させる。なお、スピーカー22は、例えばフレーム11又はファンカバー14の外側面に設けられていても良い。各スピーカー22は、軸受けブラケット12、13の外側面において、回転軸15の回転方向に沿って例えば等間隔に配置されている。
【0020】
処理装置23は、電動機10に設けられている。処理装置23は、例えば端子箱16内に設けられている。なお、処理装置23は、端子箱16の外部に設けられていても良い。処理装置23は、各マイク21で集音した音を打ち消す位相となる打ち消し音を生成する機能を有する。すなわち、処理装置23は、各マイク21で集音した音に基づいて、その音を打ち消すために各スピーカー22で再生される打ち消し音を生成し、その打ち消し音を各スピーカー22で再生させる。
【0021】
処理装置23は、例えば図2に示すように、デジタル変換部231、打ち消し音生成部232、及び打ち消し音再生部233を有している。デジタル変換部231、打ち消し音生成部232、及び打ち消し音再生部233は、例えば1つ又は複数の基板に実装された電気回路で構成することができる。
【0022】
デジタル変換部231は、各マイク21で集音した音をデジタル変換する機能を有する。打ち消し音生成部232は、デジタル変換部231でデジタル変換されたデータを基に、各マイク21で集音した音を打ち消すための打ち消し音を生成する機能を有する。打ち消し音生成部232は、例えば図3に示すように、各マイク21で集音した音とは逆位相となる音を生成する。
【0023】
電動機10で発生する騒音は、例えば回転軸15の回転周期と同一の周期を有する。このため、打ち消し音生成部232は、例えば図3に示すように、各マイク21で集音した音の周期Tに対して一定周期、例えば半分の周期T/2を遅延させることで、各マイク21で集音した音とは逆位相となる音を生成する構成とすることができる。また、打ち消し音生成部232は、例えばデジタル変換部231でデジタル変換されたデータを反転させることで、各マイク21で集音した音とは逆位相となる音を生成する構成とすることもできる。
【0024】
打ち消し音再生部233は、打ち消し音生成部232で生成された打ち消し音を、各スピーカー22から再生させる機能を有する。これにより、図3の「打ち消し結果」に示すように、マイク21で集音された電動機10の周囲の騒音が、スピーカー22から再生される打ち消し音によって打ち消される。その結果、電動機10で発生する騒音が低減若しくは消音される。打ち消し音再生部233は、例えばスピーカー22を動作させるアンプやドライバ等を含んで構成することができる。
【0025】
以上説明した実施形態によれば、電動機の騒音低減装置20は、マイク21と、スピーカー22と、処理装置23と、を備える。マイク21は、電動機10に設けられて、電動機10の周囲の音を集音する機能を有する。処理装置23は、マイク21で集音した音を打ち消す位相となる打ち消し音を生成する機能を有する。そして、スピーカー22は、電動機10に設けられており、処理装置23で生成された打ち消し音を再生する機能を有する。そして、本実施形態の電動機10は、上記した騒音低減装置20を備える。
【0026】
これによれば、スピーカー22で発生する打ち消し音によって電動機10の周囲の騒音を打ち消すことで、電動機10の機械的な構造を変更することなく、電動機10の周囲の騒音を低減若しくは消音することができる。なお、騒音低減装置20は、電動機10に含まれる構成とすることもできるし、既存の電動機10に後付けすることもできる。
【0027】
ここで、電動機10で発生する騒音は、主に電動機10の内部、この場合、フレーム11、軸受けブラケット12、13、及びファンカバー14で囲まれた内部の空間で発生するものが多い。このため、マイク21及びスピーカー22を、電動機10の内部に設けて、電動機10の内部で騒音を打ち消すことも考えられる。
【0028】
しかしながら、ユーザ等が問題とする騒音は、電動機10の内部の騒音よりも、主に電動機10の外部に出た騒音である。また、マイク21及びスピーカー22を電動機10の内部に設けると、スピーカー22で発生した打ち消し音が電動機10の内部で反響し、その反響した音をマイク21が拾ってしまうことがあり、そうするとかえって騒音が増大するおそれがある。
【0029】
そこで、本実施形態において、マイク21及びスピーカー22は、電動機10の外側面に設けられる。つまり、騒音低減装置20は、電動機10の外側面に設けられるマイク21及びスピーカー22を備えている。すなわち、本実施形態において、マイク21は、電動機10の外側の開放された空間の音を集音する。また、スピーカー22は、電動機10の外側の開放された空間に向かって打ち消し音を発生させる。これによれば、ユーザ等が問題とする電動機10の外部の騒音を、効率よく確実に低減若しくは消音させることができる。
【0030】
また、マイク21及びスピーカー22は、電動機10の負荷側及び反負荷側の両方に設けられる。これによれば、騒音低減装置20は、回転軸15の負荷側で生じる騒音と、反負荷側で生じる外扇ファンの風切り音による騒音と、の両方を効率よく低減することができる。
【0031】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0032】
10…電動機、20…騒音低減装置、21…マイク、22…スピーカー、23…処理装置
図1
図2
図3