(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039301
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】交通システム
(51)【国際特許分類】
B61B 12/02 20060101AFI20240314BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240314BHJP
B61B 12/12 20060101ALI20240314BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20240314BHJP
G16Y 40/30 20200101ALI20240314BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20240314BHJP
【FI】
B61B12/02 F
G08G1/00 X
B61B12/12 B
G16Y10/40
G16Y40/30
G16Y20/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143751
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 健
(72)【発明者】
【氏名】村上 弘記
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 孝行
(72)【発明者】
【氏名】村田 裕志
(72)【発明者】
【氏名】上田 茂数
(72)【発明者】
【氏名】望月 信宏
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA27
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB13
5H181FF13
5H181FF27
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】架空軌道上での車両間の衝突を避けること。
【解決手段】交通システム100は、第1の速度V1で動く架空軌道1と、路面を走行可能な車両2と、架空軌道1または車両2に設けられ、車両2を架空軌道1に取り外し可能に吊り下げる連結器21と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の速度で動く架空軌道と、
路面を走行可能な車両と、
前記架空軌道または前記車両に設けられ、前記車両を前記架空軌道に取り外し可能に吊り下げる連結器と、
を備える、交通システム。
【請求項2】
前記第1の速度よりも遅い第2の速度で前記車両を移動させる入口軌道を備え、
前記車両は、前記入口軌道によって前記第2の速度で移動させられた後に、前記架空軌道に吊り下げられる、
請求項1に記載の交通システム。
【請求項3】
前記第1の速度よりも遅い第3の速度で前記車両を移動させる出口軌道を備え、
前記車両は、前記架空軌道から取り外された後に、前記出口軌道によって前記第3の速度で移動させられ、前記交通システムから出る、
請求項1または2に記載の交通システム。
【請求項4】
前記連結器は、前記車両に設けられる、
請求項1または2に記載の交通システム。
【請求項5】
前記連結器は、前記車両に設けられる、
請求項3に記載の交通システム。
【請求項6】
前記連結器は、前記架空軌道に設けられる、
請求項1または2に記載の交通システム。
【請求項7】
前記連結器は、前記架空軌道に設けられる、
請求項3に記載の交通システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、交通システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架空軌道を使用して車両を移動させる交通システムが知られている。例えば、特許文献1は、架空軌道と、架空軌道に沿って乗客車両を推進させるキャリッジと、を備えるシステムを開示する。キャリッジは、乗客車両を分離可能に支持する。キャリッジと乗客車両との組み合わせは、ロード/アンロード領域において分離可能である。分離されたキャリッジは、新たな乗客車両と結合することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムでは、複数のキャリッジの各々が独立して架空軌道上を移動する。したがって、架空軌道上での乗客車両間の衝突を避けるためには、複数のキャリッジの動作を制御しなければならない。これは、複雑な制御に繋がり得る。
【0005】
本発明は、架空軌道上での車両間の衝突を避けることができる交通システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る交通システムは、第1の速度で動く架空軌道と、路面を走行可能な車両と、架空軌道または車両に設けられ、車両を架空軌道に取り外し可能に吊り下げる連結器と、を備える。
【0007】
交通システムは、第1の速度よりも遅い第2の速度で車両を移動させる入口軌道を備えてもよく、車両は、入口軌道によって第2の速度で移動させられた後に、架空軌道に吊り下げられてもよい。
【0008】
交通システムは、第1の速度よりも遅い第3の速度で車両を移動させる出口軌道を備えてもよく、車両は、架空軌道から取り外された後に、出口軌道によって第3の速度で移動させられ、交通システムから出てもよい。
【0009】
連結器は、車両に設けられてもよい。
【0010】
連結器は、架空軌道に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、架空軌道上での車両間の衝突を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係る交通システムを示す概略図である。
【
図2】
図2は、第1ステーションの内部を示す概略図である。
【
図3】
図3は、第2ステーションの内部を示す概略図である。
【
図4】
図4は、他の実施形態に係る交通システムの第1ステーションの内部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料および数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、実施形態に係る交通システム100を示す概略図である。例えば、交通システム100は、障害物OBを有する都市エリアに適用されることができる。障害物OBは、例えば、線路、高速道路、河川、急な坂道、または、頻繁な渋滞箇所等、様々な障害物であることができる。また、交通システム100は、例えば、河川または山等の障害物を有する地方エリア等の他のエリアに適用されてもよい。また、交通システム100は、障害物を有さないエリアに適用されてもよい。
【0015】
例えば、交通システム100は、第1ステーションS1と、第2ステーションS2と、架空軌道1と、複数の車両2と、制御装置90と、を備える。交通システム100は、その他の構成要素をさらに備えてもよい。例えば、交通システム100は、不図示のステーションをさらに備えてもよい。
【0016】
第1ステーションS1および第2ステーションS2は、車両2を架空軌道1に吊り下げるための、および、車両2を架空軌道1から取り外すためのエリアである。例えば、第1ステーションS1および第2ステーションS2は、障害物OBを挟んで障害物OBの両側に配置されてもよい。第1ステーションS1および第2ステーションS2の配置は、これに限定されない。第1ステーションS1および第2ステーションS2の内部については、詳しくは後述する。
【0017】
架空軌道1は、第1ステーションS1と第2ステーションS2との間に架け渡される。例えば、架空軌道1は、障害物OBを避けるように配置される。例えば、架空軌道1は、障害物OBの上方に架け渡されてもよい。また、例えば、障害物OBの高さが高い場合には、架空軌道1は、障害物OBの周囲に架け渡されてもよい。
【0018】
架空軌道1は、第1ステーションS1と第2ステーションS2との間を、速度(第1の速度)V1で移動する。例えば、架空軌道1は、第1ステーションS1と第2ステーションS2との間を循環する無端軌道であってもよい。速度V1は、例えば、数m/sまたは十数m/s程度であってもよい。架空軌道1は、例えば、ケーブル、ロープまたはチェーン等、フレキシブルな部材であってもよい。追加的に、交通システム100は、架空軌道1と平行に延在する非フレキシブルな補助レールを備えてもよい(不図示)。
【0019】
架空軌道1は、1つまたは複数の支柱3によって支持される。支柱3は、例えば、地面、川底または海底上に建てられる。
【0020】
車両2は、例えば、ガソリン自動車、電気自動車またはHEV(Hybrid Electric Vehicle)等、路面を走行可能ないかなる自動車であってもよい。車両2は、例えば、自律走行機能を有してもよい。例えば、車両2は、スマートフォン等の不図示の端末によって配車可能であってもよい。この場合、車両2は、自律走行によって迎車ポイントおよび目的地まで走行してもよい。例えば、交通システム100は、複数の車両2を駐車するための駐車スポットを備えてもよく、車両2は、この駐車スポットから迎車ポイントまで自律走行してもよい。代替的に、ユーザは、この駐車スポットから車両2に乗り込んでもよい。
【0021】
車両2のECU(Electronic Control Unit)は、公知の無線通信規格によって制御装置90と通信可能であってもよく、制御装置90から受信する信号に基づいて、自律走行してもよい。代替的にまたは追加的に、車両2は、カーナビゲーションシステムに入力される目的地に基づいて、自律走行してもよい。他の実施形態では、車両2は、自家用車であってもよい。また、他の実施形態では、車両2は、自律走行機能を有してなくてもよく、ユーザによって運転されてもよい。
【0022】
本実施形態では、車両2は、車両2を架空軌道1に吊り下げるための連結器21を含む。例えば、連結器21は、車両2のルーフから上方に突出する。他の実施形態では、連結器21は、ルーフの内部に格納されてもよく、使用時のみルーフから突出してもよい。例えば、連結器21は、架空軌道1を掴むための機械式または電動式のクランプ機構を含んでもよい。連結器21は、これに限定されず、架空軌道1と取り外し可能に係合することができるいかなる他の形式であってもよい。
【0023】
制御装置90は、交通システム100の全体または一部を制御する。例えば、制御装置90は、管制センター等の建物に設けられてもよい。例えば、制御装置90は、1つまたは複数のコンピュータを含んでもよい。例えば、本開示で説明される制御装置90の動作は、1つのコンピュータによって実行されてもよく、または、複数のコンピュータによって分けて実行されてもよい。制御装置90は、例えば、プロセッサ90aおよび記憶装置90b等の構成要素を含む。例えば、プロセッサ90aは、CPU(Central Processing Unit)を含む。例えば、記憶装置90bは、ハードディスク、プログラムが格納されるROM、および、ワークエリアとしてのRAMを含む。本開示で説明される制御装置90の動作は、記憶装置90bに記憶されるプログラムをプロセッサ90aに実行することによって、実現されてもよい。制御装置90の構成要素はこれらに限定されず、制御装置90は、例えば、表示装置および入力装置等の他の構成要素を更に含んでもよい。
【0024】
制御装置90は、交通システム100の構成要素と無線で通信可能に接続される。例えば、制御装置90は、スマートフォン等の不図示の端末と通信可能であってもよく、端末から配車の指令を受信してもよい。また、例えば、制御装置90は、車両2のECUと通信可能であってもよく、端末からの指令に基づいて、迎車ポイントおよび目的地等の情報をECUに送信してもよい。また、制御装置90は、カーナビゲーションシステムに入力される目的地等の情報をECUから受信してもよい。
【0025】
図2は、第1ステーションS1の内部を示す概略図であり、車両2が架空軌道1に吊り下げられるときを示す。
図3は、第2ステーションS2の内部を示す概略図であり、車両2が架空軌道1から取り外されるときを示す。本実施形態では、第2ステーションS2は、第1ステーションS1と実質的に同じに構成される。したがって、以下では、第1ステーションS1の構成について説明し、第2ステーションS2の構成の説明は省略する。なお、第1ステーションS1および第2ステーションS2は、互いに異なるように構成されてもよい。
【0026】
図2を参照して、交通システム100は、第1ステーションS1の内部にプーリ11を備える。架空軌道1は、プーリ11に巻回される。プーリ11は、モータ等の不図示の駆動源によって回転され、架空軌道1を循環させる。なお、第1ステーションS1および第2ステーションS2の一方のプーリ11は、従動プーリであってもよい。
【0027】
交通システム100は、第1ステーションS1の内部に副軌道(入口軌道、出口軌道)5を備える。副軌道5は、架空軌道1とは別個に設けられる。本実施形態では、副軌道5は、車両2を架空軌道1に吊り下げるための「入口軌道」、および、車両2を架空軌道1から取り外すための「出口軌道」の双方として機能する。
【0028】
例えば、副軌道5は、第1ステーションS1の内部を循環する無端軌道であってもよい。例えば、副軌道5は、本体51と、複数のバー52と、一対のプーリ53,54と、を含む。副軌道5は、他の構成要素をさらに含んでもよい。
【0029】
本体51は、例えば、ケーブル、ロープまたはチェーン等のフレキシブルな部材であってもよい。追加的に、副軌道5は、本体51と平行に延在する非フレキシブルな補助レール55を備えてもよい。本体51は、プーリ53,54の間に架け渡される。プーリ53,54の少なくとも一方は、モータ等の不図示の駆動源によって回転される駆動プーリである。
【0030】
複数のバー52は、本体51に沿って一定の間隔で配置される。2つのバー52の間の間隔は、例えば、架空軌道1から取り外された車両2が、次の車両2によって追突されないように決定される。例えば、バー52は、本体51から水平方向に突出する。副軌道5は、バー52が、車両2の連結器21と接触するような高さに配置される。
【0031】
副軌道5は、架空軌道1の速度V1よりも遅い速度(第2の速度、第3の速度)V2で移動する。例えば、速度V2は、速度V1の数分の一、十数分の一、または、数十分の一程度の速度であってもよい。
【0032】
また、交通システム100は、架空軌道1および副軌道5の動作を制御するための制御装置80を備えてもよい。例えば、制御装置80は、第1ステーションS1および第2ステーションS2の少なくとも一方に設けられてもよい。例えば、制御装置80は、1つまたは複数のコンピュータを含んでもよい。例えば、本開示で説明される制御装置80の動作は、1つのコンピュータによって実行されてもよく、または、複数のコンピュータによって分けて実行されてもよい。制御装置80は、例えば、プロセッサ80aおよび記憶装置80b等の構成要素を含む。例えば、プロセッサ80aは、CPU等を含む。例えば、記憶装置80bは、ハードディスク、プログラムが格納されるROM、および、ワークエリアとしてのRAMを含む。本開示で説明される制御装置80の動作は、記憶装置80bに記憶されるプログラムをプロセッサ80aに実行することによって、実現されてもよい。制御装置80の構成要素はこれらに限定されず、制御装置80は、例えば表示装置および入力装置等の他の構成要素を更に含んでもよい。
【0033】
制御装置80は、例えば、架空軌道1および副軌道5の駆動源と無線または有線で通信可能に接続されてもよく、これらの動作を制御してもよい。また、制御装置80は、車両2のECUと無線で通信可能であってもよく、ECUから受信する信号に基づいて、架空軌道1および副軌道5を制御してもよい。また、制御装置80は、車両2のECUに対して、速度指令等の信号を送信してもよい。
【0034】
続いて、車両2を架空軌道1に吊り下げる動作、および、車両2を架空軌道1から取り外す動作について説明する。
【0035】
図2および
図3では、車両2が第1ステーションS1から第2ステーションS2に向けて交通システム100を利用する例について説明する。しかしながら、車両2が第2ステーションS2から第1ステーションS1に向けて交通システム100を利用する場合にも、交通システム100は同様に動作する。
【0036】
図2を参照して、車両2が第1ステーションS1に到着すると、車両2は、通常の速度Vnで第1ステーションS1内を第1の位置P1まで走行する(エリアLn)。速度Vnは、例えば、3m/s程度である。なお、速度Vnは、副軌道5の速度V2よりも速くてもよく、または、遅くてもよい。車両2は、第1の位置P1で一時停止してもよい。
【0037】
車両2は、第1の位置P1から第2の位置P2までのエリアLsを、低速の速度Vsで走行する。速度Vsは、例えば、1m/s程度である。例えば、第1の位置P1では、速度Vsまたは速度Vs未満で走行するよう、音声によるまたは表示によるドライバへの注意があってもよい。
【0038】
車両2は、第2の位置P2において、車両2の連結器21が、副軌道5の複数のバー52のうち、1つのバー52と係合するように速度を調整する。例えば、車両2は、目標とするバー52と同期するように、第2の位置P2の手前で、加速、減速または一時停止してもよい。第2の位置P2または第2の位置P2の近傍において、目標とするバー52が、連結器21と接触する。
【0039】
車両2は、第2の位置P2から第3の位置P3までのエリアL2を、副軌道5のバー52によって速度V2で押される。速度V2は、例えば、0.5m/s程度である。例えば、第2の位置P2では、車両2の動力源を停止するよう、音声によるまたは表示によるドライバへの注意があってもよい。本実施形態では、床Fは、第2の位置P2と第3の位置P3との間のエリアL2において、平坦面から傾斜面に切り替わる。副軌道5および車両2の少なくとも一方は、傾斜面の途中から、車両2が副軌道5にぶら下がることが可能な機構を含む(本開示において、「ぶら下がり機構」とも称され得る)。例えば、副軌道5は、本体51と平行に延在する非フレキシブルな補助レール55を含んでもよい。また、例えば、連結器21は、副軌道5上を転がる車輪21aを含んでもよい。車輪21aは、車両2が傾斜面上を移動する間に、補助レール55に乗り上げ、補助レール55上を転がる。これによって、車両2は、補助レール55に支持される。車輪21aが補助レール55に乗り上げ後は、車両2は、床Fから空中に持ち上げられる。なお、床Fが平坦面から傾斜面に切り替わる位置は、上記の位置に限定されず、エリアL2,L1内の他の位置であってもよい。また、床Fは傾斜面を含まなくてもよい。この場合、副軌道5は、ぶら下がり機構を含まなくてもよい。
【0040】
第3の位置P3では、車両2の連結器21が、架空軌道1を掴む。例えば、第3の位置P3には、連結器21のクランプ機構を押し下げるための突起または傾斜板等の構造12が設けられてもよい。架空軌道1は、副軌道5の速度V2よりも早い速度V1で移動することから、架空軌道1を掴んだ連結器21は、副軌道5のバー52より自動的に分離される。また、車両2が第3の位置P3を通過した後に、連結器21の車輪21aは、補助レール55から離れる。副軌道5および架空軌道1の少なくとも一方は、空中での副軌道5から架空軌道1への移動の際の車両2の落下を防止するための安全機構を含んでもよい。
【0041】
車両2は、第3の位置P3から第2ステーションS2まで、架空軌道1によって速度V1で移動される(エリアL1)。速度V1は、例えば、5m/s程度である。
【0042】
車両2が自律走行機能を有する場合、第2の位置P2までの車両2の上記の速度制御は、車両2のECUと制御装置80との間の通信に基づいて、ECUによって実行されてもよい。車両2が自律走行機能を有さない場合、または、ドライバが望む場合には、車両2の上記の速度制御は、ドライバによって実行されてもよい。
【0043】
速度V1,V2,Vs,Vnは、上記の値に限定されず、交通システム100が設けられる環境および安全性等の様々な要因に応じて変わってもよい。
【0044】
図3を参照して、車両2が第2ステーションS2に到着すると、車両2は、第2ステーションS2内の第3の位置P3まで、引き続き架空軌道1によって速度V1で運ばれる(エリアL1)。例えば、車両2が第3の位置P3に達する前に、連結器21の車輪21aが、補助レール55上に乗り上げる。
【0045】
第3の位置P3では、車両2の連結器21が、架空軌道1を離す。例えば、第3の位置P3には、連結器21のクランプ機構を解除するための突起または傾斜板等の構造12が設けられてもよい。第3の位置P3または第3の位置P3の近傍では、副軌道5のバー52が、車両2の連結器21と接触する。
【0046】
車両2は、第3の位置P3から第2の位置P2までのエリアL2を、副軌道5のバー52によって速度V2で押される。車両2は、第3の位置P3から第2の位置P2の間に、床F(傾斜面)に下される。例えば、第3の位置P3では、車両2の動力源をスタートするよう、音声によるまたは表示によるドライバへの注意があってもよい。
【0047】
第2の位置P2を通過すると、副軌道5のバー52は、もはや車両2を押さない。したがって、車両2は、第2の位置P2から走行を開始する。車両2は、第2の位置P2から第1の位置P1までのエリアLsを、低速の速度Vsで走行する。例えば、第2の位置P2では、低速での走行を開始するよう、音声によるまたは表示によるドライバへの注意があってもよい。
【0048】
車両2は、第1の位置P1を通過した後に通常の速度Vnで走行し(エリアLn)、第2ステーションS2から出る。例えば、第1の位置P1では、速度を上げるよう、音声によるまたは表示によるドライバへの注意があってもよい。
【0049】
車両2が自律走行機能を有する場合、第2の位置P2からの車両2の上記の速度制御は、車両2のECUと制御装置80との間の通信に基づいて、ECUによって実行されてもよい。車両2が自律走行機能を有さない場合、または、ドライバが望む場合には、車両2の上記の速度制御は、ドライバによって実行されてもよい。
【0050】
以上のような交通システム100は、速度V1で動く架空軌道1と、路面を走行可能な車両2と、車両2に設けられ、車両2を架空軌道1に取り外し可能に吊り下げる連結器21と、を備える。このような構成によれば、架空軌道1上において、車両2は、移動する架空軌道1によって運ばれるため、架空軌道1上では、複数の車両2は、互いに対して相対移動しない。したがって、架空軌道1上では、車両2間の衝突は起こらない。このため、複雑な制御無しに、架空軌道1上での車両2間の衝突を避けることができる。また、このような構成によれば、架空軌道1上を走行するためのモータ等の動力源を、各連結器21に追加する必要が無い。したがって、連結器21を簡単にすることができる。また、このような構成によれば、ユーザは、交通システム100にアクセスする前に、第1ステーションS1または第2ステーションS2まで、車両2で移動することができ、さらに、交通システム100を利用した後に、第1ステーションS1または第2ステーションS2から最終目的地まで、車両2で移動することができる。したがって、高い移動性をユーザに提供することができる。
【0051】
また、交通システム100は、速度V1よりも遅い速度V2で車両2を移動させる副軌道5を備え、車両2は、副軌道5によって速度V2で移動させられた後に、架空軌道1に吊り下げられる。このような構成によれば、車両2を停止させることなく、車両2を架空軌道1に吊り下げることができる。したがって、第1ステーションS1または第2ステーションS2における渋滞を低減することができる。
【0052】
また、交通システム100は、速度V1よりも遅い速度V2で車両2を移動させる副軌道5を備え、車両2は、架空軌道1から取り外された後に、副軌道5によって速度V2で移動させられ、交通システム100から出る。このような構成によれば、車両2を停止させることなく、車両2を架空軌道1から取り外すことができる。したがって、第1ステーションS1または第2ステーションS2における渋滞を低減することができる。
【0053】
また、交通システム100では、連結器21は、車両2に設けられる。このような構成によれば、架空軌道1、第1ステーションS1および第2ステーションS2を含むインフラストラクチャーを建造するためのコストを低減することができる。
【0054】
続いて、他の実施形態について説明する。
【0055】
図4は、他の実施形態に係る交通システム100Aの第1ステーションS1の内部を示す概略図である。交通システム100Aは、連結器13が、車両2に代えて、架空軌道1に設けられる点で、上記の交通システム100と異なる。また、車両2は、連結器21に代えて、コネクタ22を含む。また、副軌道5は、バー52に代えて、複数のキャリア56を含み、キャリア56は、車両2の車体を押し、かつ、車体を下方から保持するように構成される。その他の点については、交通システム100Aは、上記の交通システム100と同じであってもよい。
【0056】
複数の連結器13は、架空軌道1に沿って一定の間隔で配置される。2つの連結器13の間の間隔は、例えば、副軌道5のキャリア56の間の間隔等の様々な要因に応じて決定されてもよい。連結器13は、架空軌道1に固定される。連結器13は、架空軌道1から下方に突出する。
【0057】
コネクタ22は、例えば、車両2のルーフに設けられる。コネクタ22は、架空軌道1の連結器13と係合するように構成される。例えば、コネクタ22は、連結器13の下端部を掴むように構成される機械式または電動式のグリッパを含んでもよい。コネクタ22は、これに限定されず、連結器13と取り外し可能に係合することができるいかなる他の形式であってもよい。他の実施形態では、車両2は、コネクタ22を含まなくてもよい。例えば、連結器13が、車両2の底部のサイドフレーム等、車両2の一部を掴むように構成されていてもよい。
【0058】
このような構成において、車両2が架空軌道1に吊り下げられる場合、車両2は、第2の位置P2において、車体が、副軌道5の複数のキャリア56のうち、1つのキャリア56と係合するように速度を調整する。第2の位置P2または第2の位置P2の近傍において、目標とするキャリア56が、車両2の車体と接触する。また、車体は、車両2が傾斜面上を移動する間に、キャリア56によって床Fから空中に持ち上げられる。
【0059】
第3の位置P3では、車両2のコネクタ22が、架空軌道1の連結器13を掴む。また、キャリア56は、車両2の車体から分離される。その他の動作については、上記の交通システム100のものと同じであってもよい。
【0060】
また、図面には示されないが、車両2が架空軌道1から取り外される場合、第3の位置P3では、車両2のコネクタ22が、連結器13を離す。また、キャリア56が、車両2の車体を保持する。その他の動作については、上記の交通システム100のものと同じであってもよい。
【0061】
本実施形態に係る交通システム100Aは、上記の交通システム100と同様な効果を奏することができる。
【0062】
特に、交通システム100Aでは、連結器13は、架空軌道1に設けられる。このような構成によれば、連結器13が架空軌道1に設けられるので、架空軌道1の運用会社が、全ての連結器13を定期的に検査することができる。したがって、安全性を向上することができる。また、車両2に追加の突起を設ける必要がないので、車両2の見栄えを維持することができる。
【0063】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0064】
例えば、上記の実施形態では、副軌道5は、車両2を架空軌道1に吊り下げるための「入口軌道」、および、車両2を架空軌道1から取り外すための「出口軌道」の双方として機能する。他の実施形態では、「入口軌道」および「出口軌道」が別々に設けられてもよい。この場合、入口軌道の速度(第2の速度)および出口軌道の速度(第3の速度)は、互いに異なってもよい。
【0065】
また、上記の実施形態では、副軌道5は、本体51と、複数のバー52と、一対のプーリ53,54と、を含む。代替的にまたは追記的に、他の実施形態では、副軌道5は、例えば、車両2を下方から支えるベルトコンベア等の他の軌道を含んでもよい。「入口軌道」および「出口軌道」はこれらに限定されず、架空軌道1と干渉せずに車両2を移動することができるいかなる他の形式であってもよい。
【0066】
また、上記の実施形態では、交通システム100,100Aは、「入口軌道」および「出口軌道」として副軌道5を備える。他の実施形態では、例えば、自律走行機能によって車両2の速度を副軌道5と同様に制御することができれば、交通システム100,100Aは、「入口軌道」および「出口軌道」の一方または双方を備えてなくもよい。車両2が自律走行することが可能であるならば、車両2は、例えば第1の位置P1において、一旦停止または減速してもよい。車両2は、再び加速してから、架空軌道1の入口まで、架空軌道1の速度V1より少し遅い速度で走行してもよく、その後、架空軌道1に吊り下げられてもよい。この場合、交通システム100,100Aは、「入口軌道」および「出口軌道」の双方を備えなくてもよい。
【0067】
本開示は、都市の交通を改善することができるので、例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標11「都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 架空軌道
2 車両
5 副軌道(入口軌道、出口軌道)
13 連結器
21 連結器
100 交通システム
100A 交通システム
V1 速度(第1の速度)
V2 速度(第2の速度、第3の速度)