(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039306
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】故障子局検知装置、親局装置、衛星通信システム、検出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/185 20060101AFI20240314BHJP
H04B 17/318 20150101ALI20240314BHJP
【FI】
H04B7/185
H04B17/318
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143759
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 勇人
(72)【発明者】
【氏名】一ノ渡 和也
【テーマコード(参考)】
5K072
【Fターム(参考)】
5K072AA25
5K072BB22
5K072DD16
5K072DD17
5K072FF25
5K072HH03
(57)【要約】
【課題】衛星通信システムの故障子局を特定する故障子局検知装置、親局装置、衛星通信システム、検出方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】実施形態に係る妨害波検出装置は、スペクトラムアナライザと、前記スペクトラムアナライザの分解能帯域幅RBWを、前記スペクトラムアナライザへの入力電波の周波数帯域幅BWと同等に設定し、前記スペクトラムアナライザが前記入力電波から生成した周波数領域のスペクトラムデータのうち、前記入力電波の周波数帯域の一部を含みかつ中心周波数fcを含まない観測周波数帯域OBWのスペクトラムデータを取得し、前記取得したスペクトラムデータを時間領域の時間信号に変換し、タイムスロットに区切られた時間軸で前記時間信号を観測し、前記時間信号のレベルが他のタイムスロットよりも低いタイムスロットを異常タイムスロットとして検出する制御部とを備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペクトラムアナライザと、
前記スペクトラムアナライザの分解能帯域幅RBWを、前記スペクトラムアナライザへの入力電波の周波数帯域幅BWと同等に設定し、
前記スペクトラムアナライザが前記入力電波から生成した周波数領域のスペクトラムデータのうち、前記入力電波の周波数帯域の一部を含みかつ中心周波数fcを含まない観測周波数帯域OBWのスペクトラムデータを取得し、前記取得したスペクトラムデータを時間領域の時間信号に変換し、
タイムスロットに区切られた時間軸で前記時間信号を観測し、前記時間信号のレベルが他のタイムスロットよりも低いタイムスロットを異常タイムスロットとして検出する制御部とを備える故障子局検知装置。
【請求項2】
前記タイムスロットは、TDMA通信に基づく時区間であり、さらに、前記タイムスロットと前記タイムスロットが割り当てられる子局装置とが紐づけられた情報を含む子局データベースを備え、
前記制御部は、前記子局データベースを参照して、前記異常タイムスロットが割り当てられる子局装置を特定する請求項1に記載の故障子局検知装置。
【請求項3】
衛星を介してTDMA回線を用いて複数の子局装置と通信をする親局装置であって、
各前記子局装置が、それぞれ送信するデータである子局送信データを中心周波数fcで変調してデータ変調波を生成し、割り当てられたタイムスロットで送信する前記データ変調波を受信し、復調して、前記子局送信データを取得する親局復調部と、
前記データ変調波が前記入力電波として入力される請求項2に記載の故障子局検知装置を備え、
前記故障子局検知装置で、前記異常タイムスロットが割り当てられる子局装置である故障子局装置を特定する親局装置。
【請求項4】
前記複数の子局装置から正常にデータを受信できない異常を検知する異常検知部を備え、
前記異常検知部が異常を検知すると、
前記故障子局検知装置で、前記故障子局装置を特定する請求項3に記載の親局装置。
【請求項5】
複数の子局装置と請求項4に記載の親局装置とが衛星を介してTDMA回線を用いて通信をする衛星通信システム。
【請求項6】
スペクトラムアナライザの分解能帯域幅RBWを入力電波の周波数帯域幅BWと同等に設定し、
前記スペクトラムアナライザが前記入力電波から生成した周波数領域のスペクトラムデータのうち、前記入力電波の周波数帯域の一部を含みかつ中心周波数fcを含まない観測周波数帯域OBWのスペクトラムデータを取得し、
前記取得したスペクトラムデータを時間領域の時間信号に変換し、
タイムスロットに区切られた前記時間信号を観測し、
前記時間信号のレベルが他のタイムスロットよりも低いタイムスロットを異常タイムスロットとして検出する検出方法。
【請求項7】
コンピュータが実行するプログラムであって、
スペクトラムアナライザの分解能帯域幅RBWを入力電波の周波数帯域幅BWと同等に設定する手順と、
前記スペクトラムアナライザが前記入力電波から生成した周波数領域のスペクトラムデータのうち、前記入力電波の周波数帯域の一部を含みかつ中心周波数fcを含まない観測周波数帯域OBWのスペクトラムデータを取得する手順と、
前記取得したスペクトラムデータを時間領域の時間信号に変換する手順と、
タイムスロットに区切られた前記時間信号を観測する手順と、
前記時間信号のレベルが他のタイムスロットよりも低いタイムスロットを異常タイムスロットとして検出する手順を備えるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、衛星通信に適用する故障子局検知装置、親局装置、衛星通信システム、検出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
防災無線通信などに用いられる衛星通信システムは、1つの親局と、親局の一斉指令用変復調部が送信する下り連続波に含まれる基準信号に従い、Time Division Mutiple Access(TDMA)回線で局ごとに予め決められたタイムスロットで電波を送信する複数の子局から構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-305123号公報
【特許文献2】特開平2-241145号公報
【特許文献2】特開平2-241141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本システムにおいて、ある子局が故障により無変調の連続波を送信している状態であるとき、正常な他の子局の電波が妨害され、親局において受信、復調ができなくなる。このような場合、原因となる無変調の連続波を出している子局を速やかに停波する必要がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、衛星通信システムの故障子局を特定する故障子局検知装置、親局装置、衛星通信システム、検出方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る妨害波検出装置は、スペクトラムアナライザと、前記スペクトラムアナライザの分解能帯域幅RBWを、前記スペクトラムアナライザへの入力電波の周波数帯域幅BWと同等に設定し、前記スペクトラムアナライザが前記入力電波から生成した周波数領域のスペクトラムデータのうち、前記入力電波の周波数帯域の一部を含みかつ中心周波数fcを含まない観測周波数帯域OBWのスペクトラムデータを取得し、前記取得したスペクトラムデータを時間領域の時間信号に変換し、タイムスロットに区切られた時間軸で前記時間信号を観測し、前記時間信号のレベルが他のタイムスロットよりも低いタイムスロットを異常タイムスロットとして検出する制御部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る衛星通信システムのイメージ図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る親局の構成図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る子局の構成図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る通信方式のイメージ図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る親局が受信した上り回線の変調波の第1の観測例を示すイメージ図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る親局が受信した上り回線の変調波の第2の観測例を示すイメージ図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る故障子局の検出方法及び応答不能状態の回避方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態に係る衛星機器監視装置が、故障子局の検出処理及び応答不能状態の回避処理を実行するためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、変形例に係る親局が受信した上り回線の変調波の第1の観測例を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
(実施形態)
本実施形態においては、衛星通信システムに適用されているTDMA通信方式において、無変調の連続波を出している子局を速やかに特定し、特定した子局の停波を実施する例を示す。
【0009】
図1は、実施形態に係る衛星通信システムのイメージ図である。
【0010】
本実施形態の衛星通信システムは、衛星3を介して親局1と複数の子局2A、2B
、2C(特に区別しない場合は、子局2と称する)とがTDMA通信方式をベースとする方式でデータ通信をするシステムである。例えば、県、市町村単位での防災無線システムへの適用が想定される。
【0011】
親局1は、後述する親局装置10が設置されるある一定の場所のことを示し、例えば司令部のある県庁などの建物や敷地などを示す。例えば、親局1にいる監視者が、親局装置10から子局2に対して制御データなど各種指令を出力したり、子局2からの情報を受信して、子局2を監視したり、制御したりする。
【0012】
子局2は、後述する子局装置10が設置されるある一定の場所のことを示し、例えば建物や敷地などを示す。例えば、子局2にいる作業者が、子局装置20を介して親局1にいる監視者と電話をしたり、子局装置20を介して親局1から受信した指令に従って、応答信号(ACK信号)を出力したり、子局2に設置されている例えば水門を制御したりする。また子局2に図示せぬセンサなどが設置されている場合は、子局装置20は、例えば気象情報などのセンサ情報を親局1に送信することでもよい。
【0013】
衛星3は、衛星無線通信用の通信衛星であり、親局1と複数の子局2との間の無線通信の中継をする。衛星3は、受信した電波をそのままの衛星通信用周波数帯で再送信する。例えば、衛星3は、親局1から受信した電波(衛星通信用周波数帯f1)は、電波(衛星通信用周波数帯f1)で子局2に転送し、子局2から受信した電波(衛星通信用周波数帯f2)は、電波(衛星通信用周波数帯f2)で親局1に転送する。
【0014】
【0015】
親局装置10は、親局1に設置される装置群であり、衛星通信用アンテナ装置11、衛星通信装置(ODU)12、遠方監視制御装置13、監視端末操作卓14を含む。親局装置10は、子局装置20と衛星3を介してデータ通信をする。親局装置10は、例えばJアラートなどを受信すると、子局2に指令を出力したり、子局装置20から気象情報などの各種情報を取得したりする。
【0016】
衛星通信用アンテナ装置11は、衛星3とやり取りする電波を送受信するアンテナなどを含み、融雪制御盤などの関連機器が備えられていてもよい。
【0017】
衛星通信装置(ODU)12は、OutDoor Unit(ODU)すなわち屋外装置であり、衛星通信装置(IDU)130が出力する電波を衛星通信用の周波数帯に変換したり、増幅したり、衛星通信用アンテナ装置11へ出力したりする。また衛星通信装置(ODU)12は、衛星通信用アンテナ装置11から受信した電波の周波数帯を変換するなどし、周波数変換後の電波を衛星通信装置(IDU)130へ出力する。
【0018】
遠方監視制御装置13は、衛星通信装置(IDU)130、回線接続制御装置132を含む架を示す。
【0019】
衛星通信装置(IDU)130は、InDoor Unit(IDU)すなわち屋内装置であり、衛星通信装置(ODU)12から受信する電波を復調したり、各種データの変調信号を生成して衛星通信装置(ODU)12に出力したりする。
【0020】
変復調装置筐体131は、データ伝送アダプタ部1311、TPC部1312
個別/IPデータ伝送用変復調部1313、一斉指令回線指令用変復調部1314
CSC専用変復調/監視制御部1315などが格納される筐体を示す。
データ伝送アダプタ部1311は、通信量の状況に応じて、送信するデータ量を制御する。
【0021】
TPC部1312は、衛星3が出力するビーコン波の受信レベルを観測する。またTPC部1312は、子局2などから受信する気象情報などの情報に基づいて、子局2との通信で用いる電波の強度などを制御する。
【0022】
個別/IPデータ伝送用変復調部1313は、子局2などと個別に各種IPデータ(Internet Protocolデータ)の通信をする際の変復調機能を備える。例えば、親局1は、個別/IPデータ伝送用変復調部1313により、特定の子局2とIP電話などを使用することができる。
【0023】
一斉指令回線指令用変復調部1314は、全ての子局2に一斉に指令するデータに基づいて変調信号を生成したり、各子局2から受信した信号を復調したりする。
【0024】
CSC専用変復調・監視制御部1315は、全ての子局2が共通に利用する共通制御回線の状況を監視、制御をしたり、共通制御回線で送受信するデータを送受信するための変復調をしたりする。
【0025】
合成分配部1316は、個別/IPデータ伝送用変復調部1313、一斉指令回線指令用変復調部1314、CSC専用変復調・監視制御部1315の変調信号を多重合成して出力したり、受信信号を分配したりする。
【0026】
回線接続制御装置132は、変復調装置筐体131と衛星機器監視装置140とのデータの中継をしたり、変復調装置筐体131からの受信データを監視したりする。
L2SW1321は、レイヤ2スイッチである。
本体1322は、CPU、メモリを含むコンピュータや各種インターフェースを備えたパーソナルコンピュータである。
【0027】
モニタ/キーボード1323は、本体1322に接続されるモニタやキーボード、マウスなどである。
監視端末操作卓14は、本体141、モニタ/キーボード142、電話機143、電話機143、一斉指令回線データ送信装置144を含めてそれらが設置される机のことを示す。
【0028】
衛星機器監視装置140は、本体141を主な構成とし、衛星機器の監視をする。衛星機器監視装置140には、衛星機器の監視をするためのソフトウェアなどがインストールされていてもよい。例えば親局装置10の各装置もしくは処理部には、自身を監視させ、異常を検知した場合に、アラームを出力させるようにしておき、衛星機器監視装置140のソフトウェアは、各装置もしくは各処理部からアラームなどを受信することで、異常が発生していることを検知する。
【0029】
本体141は、CPU、メモリや各種インターフェースを備えたコンピュータであり、例えばパーソナルコンピュータである。本体141は、L2SW1321と接続されている。
【0030】
制御部1411は、変復調装置筐体131の機器各部の監視や制御を行い、例えば本体141で実行されるソフトウェアプログラムであってもよい。また制御部1411は、スペクトラムアナライザ15から測定されたスペクトラムデータなどを受信して処理したり、スペクトラムアナライザ15への制御情報を生成し、スペクトラムアナライザ15を制御したりする。
【0031】
記憶部1412は、各種データを格納する本体141に接続される補助記憶装置である。モニタ/キーボード142は、本体1322に接続されるモニタやキーボード、マウスなどの周辺機器である。
通信部1413は、有線無線の各種通信機能であり、例えば、L2SW1321を介して、スペクトラムアナライザ15の通信部153と通信をする。
【0032】
電話機143は、例えばIP電話であり、個別/IPデータ伝送用変復調部1313を介して子局2の電話機と通話する電話機である。
【0033】
一斉指令回線データ送信装置144は、例えば監視者の操作により、機能停止など各種指令データを、子局すべてに一斉に送信する装置である。一斉指令回線データ送信装置144が出力したデータは、一斉指令回線指令用変復調部1314を介して、衛星通信により、子局に届けられる。
【0034】
スペクトラムアナライザ15は、電波が入力されて電波のスペクトラムなどを測定する通常のスペクトラムアナライザである。より具体的には、スペクトラムアナライザ15は、合成分配部1316から入力される電波のスペクトラムを測定する。スペクトラムアナライザ15は、衛星通信装置(ODU)が受信して周波数変換された後の電波が入力される。衛星通信装置(ODU)が受信して周波数変換された後の電波は、子局の衛星通信装置(IDU)が出力する電波(この電波を特に変調波と称する)に相当する。本実施形態のスペクトラムアナライザ15は、L2SW1321などを介して、衛星機器監視装置140の本体141と通信可能な図示せぬインターフェースを備える。
【0035】
測定部150は、入力される電波のスペクトラムを測定する通常のスペクトルアナライザの機能を示す。
【0036】
制御部151は、衛星機器監視装置140の本体141から受信した制御情報などに基づいて、スペクトラムアナライザ15の測定パラメータなどを変更して、測定部150にスペクトラム測定を実行させる。また制御部151は、測定部150が取得する測定データをリアルタイムで衛星機器監視装置140の本体141へ出力してもよいし、測定データを記憶部152に格納しておき、任意のタイミングで本体141へ出力してもよい。また制御部151は、衛星機器監視装置140の本体141から受信した制御情報などに基づいて、測定部150が取得するスペクトラムデータを時間領域の時間信号に変換して、通信部153を介して、本体141へ出力してもよい。その際、本体141から受信した制御情報の観測帯域に基づいたスペクトラムデータのみを時間領域の時間信号に変換して、本体141へ出力してもよい。
【0037】
記憶部152は、各種データを格納する補助記憶装置である。
【0038】
通信部153は、有線無線の各種通信機能であり、例えば、L2SW1321を介して、本体141の通信部1413と通信をする。
【0039】
【0040】
子局装置20は、子局2に設置される装置群であり、衛星通信用アンテナ装置21、衛星通信装置(ODU)22、衛星通信装置(IDU)23を含む。子局装置20は、親局装置10から受信した指令へのレスポンス(Ack)、子局2に備えられるセンサなどで取得した気象情報などを親局装置10へ出力する。
【0041】
衛星通信用アンテナ装置21は、本実施形態の衛星通信システムにおいて衛星とやり取りする電波を送受信するアンテナなどを含み、融雪制御盤などの関連機器が備えられていてもよい。
【0042】
衛星通信装置(ODU)22は、OutDoor Unit(ODU)すなわち屋外装置であり、衛星通信装置(IDU)23が出力する電波を衛星通信用の周波数帯に変換したり、増幅したり、衛星通信用アンテナ装置21へ出力したりする。また衛星通信装置(ODU)22は、衛星通信用アンテナ装置21から受信した電波の周波数帯を変換するなどして、周波数変換後の電波を衛星通信装置(IDU)22へ出力する。
【0043】
衛星通信装置(IDU)23は、InDoor Unit(IDU)すなわち屋内装置であり、衛星通信装置(ODU)22から受信する電波を復調したり、各種データの変調信号を生成して、衛星通信装置(ODU)22に出力したりする。以降、特に区別しない限り、衛星通信装置(IDU)23の生成する変調信号を指して変調波と称する。
【0044】
データ伝送アダプタ部231は、通信量の状況に応じて、送信するデータ量を制御する。
【0045】
個別/IPデータ伝送用変復調部232は、親局装置10などと個別に各種IPデータ(Internet Protocolデータ)の通信をする際の変復調機能を備え、親局装置10の個別/IPデータ伝送用変復調部1313に対応する機能である。例えば、子局2は、個別/IPデータ伝送用変復調部232により、親局1とIP電話などを使用することができる。
【0046】
親局制御所要一斉指令回線受令用変復調部233は、親局装置10の一斉指令回線指令用変復調部1314に対応する部位であり、親局装置10が送信した一斉指令データを復調したり、親局装置10へACKなどの応答データに基づいて変調信号を生成したりするなどの変復調機能を備える。本実施形態のシステムは、親局装置10を1台設置する場合の例であるが、バックアップ用などとして親局装置10を複数台設置する場合がある。この場合、衛星通信装置(IDU)23は、親局制御所要一斉指令回線受令用変復調部233を複数備えてもよい。
【0047】
CSC専用変復調・監視制御部234は、親局装置10のCSC専用変復調・監視制御部1315に対応する部位であり、共通制御回線で送受信するデータを送受信するための変復調機能を備える。
電話機24は、例えばIP電話であり、個別/IPデータ伝送用変復調部232を介して子局2に設置される電話機と通話する電話である。
【0048】
図4は、実施形態に係る通信方式のイメージ図である。
【0049】
本実施形態の衛星通信システムは、上り回線(子局2から親局1への無線通信)と下り回線(親局1から子局2への通信)とで異なる無線周波数帯が用いられる。上り回線には、TDMA方式(時分割多元接続方式)をベースとした無線通信方式が適用され、各子局2は割り振られたタイムスロットで通信を実施する。
【0050】
図4(a)は、下り回線の状況を表しており、親局1は、データ送信(時区間BC0、BC1、BC2)を行う中で定期的に同期用の電波(時区間SS1、SS2)を送信する。
【0051】
図4(b)は、上り回線の状況を表しており、各子局2は、親局1から同期用の電波を受信すると、予め指定された順番(タイムスロット)で、親局1へデータ送信を実施する。各子局2は、例えば、時刻t1に同期用の電波を受信すると、それぞれ時間をカウントするなどし、タイムスロットT1で子局2Aが、タイムスロットT2で子局2Bが、タイムスロットT3で子局2Cがそれぞれ上り回線用の周波数帯の電波を用いてデータ送信を実施する。以降同様にして、各子局2は、親局1が送信した同期用の電波を基準に、指定されたタイムスロットでデータ送信をすることで、TDMA通信方式が実現される。
【0052】
親局1は、各子局2に割り当てられたタイムスロットを予め知っており(もしくは親局1が予め指定)、同期用の電波を送信してからの経過時間などに基づいて、受信したデータを送信した子局2が特定できるようになっている。本実施形態においては各子局2に対して同期用電波を基準として固定時間後のタイムスロットが割り当てられるものとする。
【0053】
図5は、実施形態に係る親局が受信した上り回線の変調波の第1の観測例を示すイメージ図であり、子局2に問題が発生する場合としない場合の比較を示す図である。
【0054】
図5(a)、(b)は、全子局2が正常に機能している際に、親局1内のスペクトラムアナライザ15が衛星通信装置(ODU)12の出力を観測した例である。衛星通信装置(ODU)12の出力は、子局2の衛星通信装置(IDU)23の出力に相当し、変調波と称する。
図5(a)は横軸を周波数とし、
図5(b)は横軸を時間とした場合の受信電波の電力レベル(受信電波の時間信号)を表示した例である。
【0055】
図5(c)、(d)は、いずれかの子局2が故障して、無変調の連続波を出力し続けている場合に、スペクトラムアナライザ15が衛星通信装置(ODU)12の出力である変調波を観測した例である。
図5(c)は横軸を周波数とし、
図5(d)は横軸を時間とした場合の受信電波の電力レベルを表示した例である。
【0056】
図5(a)、(c)は、スペクトルアナライザ15のResolution Band Width(RBW:分解能帯域幅)を正常な変調信号の帯域(BW)と同等の値に設定して、変調信号の中心周波数fc0を観測帯域OBW0の中心としてスペクトラムを観測した場合のイメージ例である。観測帯域OBW0は、RBWと同程度の帯域幅として、正常な変調信号の帯域BWとも重なるため、
図5(a)、(c)は、スペクトルアナライザ15が受信した変調信号を観測帯域OBW0フィルタした場合のイメージ図とみることもできる。
【0057】
図5(c)の場合、いずれかの子局2が無変調の連続波を常に出力しているため、
図5(a)の場合と異なり、正常なスペクトラムSA0に対してSA1のスペクトラムが発生している。同様に
図5(d)の場合、いずれかの子局2が無変調の連続波を常に出力しているため、
図5(b)と異なり、正常な受信電波のレベルTS0に加えて、TS1のような電波が受信される。なお
図5は、本実施形態を説明するためのイメージ図であり、実際に観測される信号は、雑音や変動が含まれることもある。
【0058】
図6は、実施形態に係る親局が受信した上り回線の変調波の第2の観測例を示すイメージ図であり、子局2に問題が発生する場合と、問題の子局2を特定する場合との比較のための図である。
【0059】
図6(a)、(b)は、
図5(c)、(d)と同じであり、いずれかの子局2に問題が生じ、無変調の連続波を出し続けている場合にスペクトラムアナライザ15が観測した変調波のイメージ図である。
【0060】
図6(c)、(d)は、問題の発生している子局2を検出するために制御を実施したスペクトラムアナライザで観測した場合にスペクトラムアナライザ15が観測した変調波のイメージ図である。
【0061】
図6(a)、(c)は、ともにスペクトルアナライザ15のResolution Band Width(RBW:分解能帯域幅)を正常な変調信号の帯域(BW)に設定してスペクトラムを観測した場合の例であるが、
図6(c)においては、スペクトルアナライザ15で観測する中心周波数をfc1にずらして観測しており、すなわち観測帯域幅に無変調のスペクトラムSA1が含まれないように、観測帯域OBW0を観測帯域OBW1にずらしている。
【0062】
図6(d)は、観測帯域OBW1の信号の時間領域での表示である。観測帯域OBW1にずらしたことにより、
図6(c)のTS0、TS1ともに観測帯域に含まれる成分が低下し、表示される受信信号のレベルは低下する。特に、無変調波TS11の信号は、大きく減少する。
【0063】
同様に
図6(e)は、観測帯域OBW1の信号の時間領域での表示であるが、故障子局2Aに割り当てられたタイムスロットの時間信号のイメージを示している。
図6(e)においては、大きくレベルが低下した無変調波TS11しか表示されない。
【0064】
図6(d)、(e)を観測することにより、例えば、無変調波SA1を出力し続けている故障子局2Aのタイムスロット時区間のみ受信レベルが低下し、そのタイムスロットに割り当てられている子局2Aが故障していることがわかる。例えば、受信信号のレベルに閾値thを設定しておき、thを常に下回るようなタイムスロットの時区間を検出した場合に、そのタイムスロットに割り当てられた子局2Aが故障子局であると判定してもよい。また受信信号の瞬時レベルでなく、時間信号に対して、時区間の平均や移動平均などをしたうえで表示させた平均時間信号と、予め設定したthとを比較してもよい。
【0065】
以上のように、観測帯域OBW1を用いて、観測帯域に無変調波SA1を入れないようにすることで、故障子局が割り当てられたタイムスロットを確認することができる。理論的には、観測帯域の中心周波数focと変調波の中心周波数fc及び前記BWとの関係が|foc-fc|>BW/2を満たすように観測帯域OBW1の中心周波数focを設定することでもよい。
【0066】
以上の観測帯域OBW1に対する処理は、スペクトルアナライザ15が行ってもよいし、衛星機器監視装置140の例えば制御部1411が、スペクトルアナライザ15から取得したスペクトルデータに対して、実施することでもよい。
【0067】
以下に、本実施形態の手順について示す。
【0068】
複数の子局2のうちの一つが故障し、他の子局2は正常であるものとする。子局2Aが故障したものとし、故障子局2Aは衛星通信において、割り当てられたタイムスロットに関係なく、無変調波を出力し続けているものとする。故障子局2Aが出力する無変調波が他の子局2に対する妨害波となり、親局装置10においては、全局が無応答となる状態(応答不能状態)が発生している。
【0069】
まず親局1にいる監視者が、スペクトラムアナライザ15を用いて故障子局2Aを見つける例を示す。監視者は、親局装置10の衛星機器監視装置140のPC141のモニタ142で子局2Aとの親局装置10との通信データなどを確認しているものとする。
【0070】
図7は、実施形態に係る検出方法を示すフローチャートである。
【0071】
ステップS1において、監視者は、親局装置10の衛星機器監視装置140のPC141のモニタ142で、全子局2からの受信データの受信状況を確認する。監視者は、全子局2の無応答すなわち全子局2から正常にデータを受信していない状況が継続していることを検出した場合(ステップS1のYes)、ステップS2において、TPC部1312が受信する衛星のビーコン波の受信レベルの観測データにより、天候等により親局1が回線断になるような受信レベル低下が出ていないことを確認する。
【0072】
ステップS3において、監視者は、PC141のモニタ142に表示されるアラーム情報などにより、親局1内の機器に異常があるかを確認する。親局1内の機器に異常がない場合(ステップS3のNo)、ステップS4に進む。親局1内の機器に異常がある場合(ステップS3のYes)、親局1内の機器の確認をすることでもよい。
【0073】
ステップS4において、監視者はスペクトラムアナライザ15を用いて波形を確認し、所定の周波数(
図5の観測帯域OBW0)で無変調の連続波が出ているかを確認する。ステップS4において、無変調のスペクトラム(例えば
図5(c)のSA1)が出ていることを確認した場合(ステップS4のYes)、ステップS5に進む。
【0074】
ステップS5において、監視者は、親局1のスペクトラムアナライザ15で観測する中心周波数を
図6(c)に示すように中心周波数fc1にずらし(
図6(c)の観測帯域OBW1とする)、時間軸にて表示をする。ステップS5により、正常に変調波を送信している子局のバースト波が見えるようになる。
【0075】
ステップS5においては、スペクトラムアナライザに、分解能帯域幅RBWを入力電波の周波数帯域幅BWと同等に設定し、入力する変調波の中心周波数fcを含めないように観測帯域OBW1を設定するとも解することができる。例えば、観測帯域OBW1の中心周波数fc1を、及び前記BWと|fc1-fc|>BW/2の関係を満たすように設定する。
【0076】
ステップS6において、監視者は、親局内の一斉指令回線指令用変復調部1314が持つ基準信号情報を参照して、ステップS5での確認で、変調波が観測されなかったタイムスロットを特定する。
【0077】
ステップS7において、監視者は、ステップS6で特定した変調波が観測されなかったタイムスロット位置を、衛星機器監視装置の記憶部1412のデータベース情報と照らし合わせて、そのタイムスロットに割り当てられている子局を特定し、特定された子局を無変調の連続波を送信している可能性のある子局として故障子局と判定する。データベース情報には、タイムスロット位置とそのタイムスロットに割り当てられている子局が紐づけられて格納されている。
【0078】
ステップS8において、監視者は、ステップS7で故障子局と判定した子局2Aに対して、衛星機器監視装置140から一斉指令回線指令用変復調部1314を介して、送信OFFの指令信号を送出する。送信OFFの指令信号を受信した子局2においては、制御所用一斉指令回線受令用変復調部の機能を止める。これにより、子局2が出力している無変調波を止めることができる。
【0079】
ステップS9において、監視者は、正常状態に復旧するかどうかを確認する。監視者は、送信OFFの指令信号を送出した故障子局である子局2A以外の子局2からのデータが正常に受信できない場合すなわち全局無応答の状態が継続していている場合(ステップS9のNo)は、故障している子局2がまだ別にあるものと判断し、再度ステップS3からの処理を実行する。
一方、監視者は、ステップS8の結果、子局2A以外の子局2からのデータが正常に受信された場合(ステップS9のYes)は、子局2Aが故障しているものと判定し、調査を終了する。
【0080】
本実施形態においては、故障子局が1つの場合について示したが、ステップS9の手順により、複数の子局に同様の故障が生じた場合にも対応可能である。
【0081】
以上の手順により、複数の子局2のうち1以上の子局2が故障した場合において、故障子局を検知し、故障子局からの送信を止め、衛星通信システムの応答不能状態を回避することができる。
【0082】
上記、監視者がスペクトルアナライザ15で確認する場合の例を示したが、一刻を争う防災無線に適用されることを考慮すると、ソフトウェアなどにより自動化した方が望ましい。
【0083】
図8は、実施形態に係る衛星機器監視装置が、故障子局の検出処理及び応答不能状態の回避処理を実行するためのフローチャートである。
【0084】
制御部1411は、例えば衛星機器監視装置140のPC141にインストールされているソフトウェアプログラムである。また、スペクトルアナライザ15においても、制御部1411に対応するソフトウェアプログラムがインストールされており、スペクトルアナライザ15と制御部1411とを通信可能な状態とする。
【0085】
ステップS101において、親局装置10の衛星機器監視装置140のPC141において、制御部1411は、全子局2からの受信データの受信状況を確認する。制御部1411は、全子局2の無応答が継続していることを検出した場合(ステップS101のYes)、ステップS102において、TPC部1312が受信する衛星のビーコン波の受信レベルの観測データを取得し、天候等により親局1が回線断になるような受信レベル低下が出ていないことを確認する。
【0086】
ステップS102がNoの場合、制御部1411は、しばらく待って再度ステップS102を実施するか、または、他の場所に設置されている親局装置10(親局装置10Aとする)がある場合は、親局装置10Aに対して、ステップS101からの処理を実行するようにしてもよい。
【0087】
一方、ステップS103において、ステップS102のYesの場合、制御部1411は、親局内の機器から機器の異常を示すアラームを受信しているか否かを確認する。
【0088】
ステップS103のYesの場合、制御部1411は、親局内の機器に異常があると判定し、アラームなどをモニタ142に出力したり、図示せぬスピーカなどから音を発したりなどし、監視者に知らせることでもよい。
【0089】
一方、ステップS103のNoの場合、ステップS104において、制御部1411は、スペクトラムアナライザ15から周波数領域のデータを取得し、所定の周波数(
図5の観測帯域OBW0)で無変調の連続波が出ているかを確認する。
【0090】
制御部1411は、ステップS104の結果、無変調のスペクトラム(例えば
図5(c)のSA1)を検知した場合(ステップS104がYes)、ステップS105において、スペクトラムアナライザ15に対して、を
図6(c)に示すように中心周波数fc0の観測帯域OBW0をfc0から中心周波数fc1の観測帯域OBW1の時間信号データを送信する命令を出力する。
【0091】
ステップS105においては、スペクトラムアナライザ15に、分解能帯域幅RBWを入力電波の周波数帯域幅BWと同等に設定し、入力する変調波の中心周波数fc0を含めないように観測帯域OBW1を設定する。例えば、観測帯域OBW1の中心周波数fc1を|fc1-fc|>BW/2の関係を満たすように設定する。スペクトラムアナライザは、受信した変調波から生成した周波数領域のスペクトラムデータから観測周波数帯域OBW1のスペクトラムデータを取得し、時間信号に変換して、制御部1411に出力する。
ここで、ステップS105における、スペクトルアナライザ15の処理は、スペクトルアナライザ15が備えるマイクロコンピュータなどのコンピュータによって実行されるプログラムで実行されることでもよい。
【0092】
ステップS106において、制御部1411は、ステップS105の結果、スペクトラムアナライザ15から時間信号データを受信すると、親局内の一斉指令回線指令用変復調部1314が持つ基準信号情報を参照して、時間信号のレベルが低下しているタイムスロット(劣化タイムスロットと称する)を検出する。
【0093】
ステップS107において、制御部1411は、記憶部1412に格納されているデータベース情報を参照して、ステップS106で検出した劣化タイムスロットに割り当てられている子局2を特定して、特定した子局2を故障子局と判断する。
【0094】
制御部1411は、ステップS107で特定した故障子局に対して、一斉指令回線指令用変復調部1314を介して送信OFFの信号を送出する(ステップS108)。
【0095】
ステップS109において、制御部1411は、故障子局以外の全子局2からの受信データの受信状況を確認する。
ここで、制御部1411は、ステップS108の処理の結果、送信OFFの指令信号を送出した子局2A以外の子局2からのデータが正常に受信できない場合すなわち全局無応答の状態が継続していている場合(ステップS109のNo)は、故障している子局2がまだ別にあるものと判断し、再度ステップS103からの処理を実行する。
一方、制御部1411は、ステップS108の結果、子局2A以外の子局2からのデータが正常に受信された場合(ステップS109のYes)は、子局2Aが故障しているものと判定し、モニタ142などに故障子局2Aの情報を出力する。
【0096】
以上の手順により、ソフトウェアプログラム(制御部1411)によって、複数の子局2のうち1以上の子局2が故障した場合において、故障子局を検知し、故障子局からの送信を止め、衛星通信システムの応答不能状態を回避することができる。
【0097】
(変形例1)
本変形例においては、第1実施形態の変形例として、故障子局が複数存在し、それらの故障子局が出力する変調信号の中心周波数(理論値はfc0)が子局によって少しずれる場合などについて示す。
【0098】
図9は、変形例に係る親局が受信した上り回線の変調波の第1の観測例を示すイメージ図である。
【0099】
図9(a)は、故障子局Aの無変調波SA1が発生している場合(
図6(c)の場合に相当)にさらに、故障子局Aでない故障子局(故障子局Bとする)の無変調波SA11が発生している例である。本例においては、無変調波SA1とSA11すなわち故障子局Aの出力する変調波の中心周波数と故障子局Bの出力する変調波の中心周波数とは少しずれている。
この場合、観測帯域OBW1には、無変調波SA1、SA11ともに含まれないために、故障子局A、Bに割り当てられたタイムスロットにて、
図6(e)のように時間信号のレベルが劣化する。従ってこの場合、制御部1411は、
図8のフローチャートと同様の処理によって、故障子局A、Bに割り振られたタイムスロットを特定できる。
【0100】
図9(b)は、
図9(a)同様に故障子局Aの無変調波SA1が発生している場合(
図6(c)の場合に相当)にさらに、故障子局Aでない故障子局(故障子局Bとする)の無変調波SA12が発生している例であるが、故障子局Bによる無変調波SA12が、観測帯域OBW1に含まれる例である。
図9(b)の場合、観測帯域OBW1に無変調波SA12が含まれるため、例えば、第1の実施形態の
図6(e)に示したように、十分に無変調波(
図6(e)のTS11に相当)を低下させることができないため、異常タイムスロットを特定することが難しい。このような場合は、
図9(c)に示すように変調波の中心周波数fc0の反対側に観測帯域を設定する。
【0101】
図9(c)は、
図9(b)の状態において、観測帯域を観測帯域OBW2にずらした場合の例である。観測帯域OBW2には、無変調波SA1、SA11ともに含まれないために、故障子局A、Bに割り当てられたタイムスロットにて、
図6(e)のように時間信号のレベルが劣化する。従ってこの場合、
図8のフローチャートと同様の処理によって、故障子局A、Bに割り振られたタイムスロットを特定できる。
ただし、制御部1411は、例えば
図8のステップS106において、受信レベルの低下したタイムスロット(異常タイムスロット)を特定できなかった場合は、観測帯域をずらして再度異常タイムスロットを特定する処理を入れる。本例の場合では、制御部1411は、例えば、最初に観測帯域OBW1で異常タイムスロットの検出処理を実行して、検出できなかった場合は、観測帯域OBW2に変更して検出処理を実施する。上記の処理によって、故障子局A、Bに割り振られたタイムスロットを特定できる。
【0102】
(変形例2)
図9(d)は、観測帯域をOBW1、OBW2として、子局が出力する変調信号の中心周波数(理論値はfc0)を避けて観測帯域を設定する例である。本例によれば、正常なタイムスロットと、異常タイムスロットとの受信信号のレベル差を大きくすることができ、より精度高く異常タイムスロットの検出すなわち故障子局の検出ができる。
【0103】
以上に述べた実施形態によれば、衛星通信システムの故障子局を特定する故障子局検知装置、親局装置、衛星通信システム、検出方法及びプログラムを提供することができる。
【0104】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。また、フローチャート、シーケンスチャートなどに示す処理は、CPU、ICチップ、デジタル信号処理プロセッサ(Digital Signal ProcessorまたはDSP)などのハードウェアもしくはマイクロコンピュータを含めたコンピュータなどで動作させるソフトウェア(プログラムなど)またはハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現してもよい。また請求項を制御ロジックとして表現した場合、コンピュータを実行させるインストラクションを含むプログラムとして表現した場合、及び前記インストラクションを記載したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として表現した場合でも本発明の装置を適用したものである。また、使用している名称や用語についても限定されるものではなく、他の表現であっても実質的に同一内容、同趣旨であれば、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0105】
1…親局、2A…子局、3…衛星、10…親局装置、11…衛星通信用アンテナ装置、12…衛星通信装置(ODU)、13…遠方監視制御装置、14…監視端末操作卓、15…スペクトラムアナライザ、21…衛星通信用アンテナ装置、22…衛星通信装置(ODU)、23…衛星通信装置(IDU)、24…電話機、130…衛星通信装置(IDU)、131…変復調装置筐体、132…回線接続制御装置、140…衛星機器監視装置、141…本体、142…モニタ/キーボード、143…電話機、144…一斉指令回線データ送信装置、150…測定部、151…制御部、152…記憶部、153…通信部、231…データ伝送アダプタ部、232…個別/IPデータ伝送用変復調部、233…制御所要一斉指令回線受令用変復調部、234…CSC専用変復調/監視制御部、235…合成分配部、1311…データ伝送アダプタ部、1312…TPC部、1313…個別/IPデータ伝送用変復調部、1314…一斉指令回線指令用変復調部、1315…CSC専用変復調・監視制御部、1316…合成分配部、1321…L2SW、1322…本体、1323…モニタ/キーボード、1411…制御部、1412…記憶部、1413…通信部。