(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039307
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】固体撮像素子パッケージおよび固体撮像素子パッケージ製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20240314BHJP
H01L 23/08 20060101ALI20240314BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
H01L23/02 F
H01L23/08 A
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143763
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】黒田 健太
(72)【発明者】
【氏名】木下 大希
(72)【発明者】
【氏名】沓水 真琴
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA14
4M118FA06
4M118GB01
4M118GB13
4M118HA02
4M118HA11
4M118HA25
4M118HA30
(57)【要約】
【課題】撮影画像の画像品質が高い固体撮像素子パッケージを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る固体撮像素子パッケージ1は、撮像を行う機能部21および前記機能部21を取り囲むマージン部22を有する固体撮像素子20と、前記マージン部22に配設される枠状のフレーム30と、前記機能部21を覆うよう前記フレーム30に固定される透明基板40と、を備え、前記フレーム30の一部分31,32,33,34は、他の部分35と組成が異なる樹脂組成物から形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像を行う機能部および前記機能部を取り囲むマージン部を有する固体撮像素子と、
前記マージン部に配設される枠状のフレームと、
前記機能部を覆うよう前記フレームに固定される透明基板と、を備え、
前記フレームの一部分は、他の部分と組成が異なる樹脂組成物から形成される、固体撮像素子パッケージ。
【請求項2】
前記フレームは、前記固体撮像素子および前記透明基板に直接接合され、
前記フレームの前記固体撮像素子または前記透明基板に接する面の少なくとも一部の表層部の組成が他の部分と異なる、請求項1に記載の固体撮像素子パッケージ。
【請求項3】
前記フレームの前記固体撮像素子または前記透明基板に接する接合部のガラス転移点が他の部分のガラス転移点よりも低い、請求項2に記載の固体撮像素子パッケージ。
【請求項4】
前記フレームの周面部の組成が他の部分と異なる、請求項1または2に記載の固体撮像素子パッケージ。
【請求項5】
前記フレームの前記周面部におけるフィラーの含有率が他の部分における含有率よりも高い請求項4に記載の固体撮像素子パッケージ。
【請求項6】
前記フィラーは、光拡散材である、請求項5に記載の固体撮像素子パッケージ。
【請求項7】
撮像を行う機能部および前記機能部を取り囲むマージン部を有する固体撮像素子と、前記マージン部に配設される枠状のフレームと、前記機能部を覆うよう前記フレームに固定される透明基板と、を備える固体撮像素子パッケージを製造する方法であって、
前記固体撮像素子および前記透明基板の一方に、インクジェット3Dプリンターにより樹脂組成物を積層することで前記フレームを形成する工程と、
前記フレームに前記固体撮像素子および前記透明基板の他方を接着する工程と、
を備え、
前記フレームを形成する工程において、前記フレームの組成を部分的に異ならせるよう、出射する樹脂組成物の組成を変化させる、固体撮像素子パッケージ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子パッケージおよび固体撮像素子パッケージ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を実装した基板に固体撮像素子を取り囲む枠状のフレームを接着し、フレームの開口をガラス板等で覆った固体撮像素子パッケージが利用されている(例えば特許文献1参照)。固体撮像素子とフレームとガラスの相対位置がずれると、フレームの内周面やガラス面での反射光が固体撮像素子に入り込む等の問題が生じる可能性がある。このような位置ずれを防ぐために、高精度な接着作業を行う場合は、人手によるマニュアル作業もしくは画像認識によるアライメント作業を行う必要があり、非常にコストのかかるものであった。また、フレームの位置ずれは、例えばフレームを基板に接着するための接着剤の硬化時の収縮等により生じ得る。そのため、接着剤の硬化時に被着体同士が動かないように固定する必要があり、工程に時間が掛かっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体撮像素子パッケージの小型化および高精細化に対する要求は日々高まっている。このため、本発明は、撮影画像の画像品質が高い固体撮像素子パッケージおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る固体撮像素子パッケージは、撮像を行う機能部および前記機能部を取り囲むマージン部を有する固体撮像素子と、前記マージン部に配設される枠状のフレームと、前記機能部を覆うよう前記フレームに固定される透明基板と、を備え、前記フレームの一部分は、他の部分と組成が異なる樹脂組成物から形成される。
【0006】
上述の固体撮像素子パッケージにおいて、前記フレームは、前記固体撮像素子および前記透明基板に直接接合され、前記フレームの前記固体撮像素子または前記透明基板に接する面の少なくとも一部の表層の組成が他の部分と異なってもよい。
【0007】
上述の固体撮像素子パッケージにおいて、前記フレームの前記固体撮像素子または前記透明基板に接する接合部のガラス転移点が他の部分のガラス転移点よりも低くてもよい。
【0008】
上述の固体撮像素子パッケージにおいて、前記フレームの周面部の組成が他の部分と異なってもよい。
【0009】
上述の固体撮像素子パッケージにおいて、前記フレームの前記周面部におけるフィラーの含有率が他の部分における含有率よりも高くてもよい。
【0010】
上述の固体撮像素子パッケージにおいて、前記フィラーは、光拡散材であってもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る固体撮像素子パッケージ製造方法は、撮像を行う機能部および前記機能部を取り囲むマージン部を有する固体撮像素子と、前記マージン部に配設される枠状のフレームと、前記機能部を覆うよう前記フレームに固定される透明基板と、を備える固体撮像素子パッケージを製造する方法であって、前記固体撮像素子および前記透明基板の一方に、インクジェット3Dプリンターにより樹脂組成物を積層することで前記フレームを形成する工程と、前記フレームに前記固体撮像素子および前記透明基板の他方を接着する工程と、を備え、前記フレームを形成する工程において、前記フレームの組成を部分的に異ならせるよう、出射する樹脂組成物の組成を変化させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、撮影画像の画像品質が高い固体撮像素子パッケージおよびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子パッケージの断面図である。
【
図2】本発明の変形例に係る固体撮像素子パッケージの断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子パッケージ製造方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明をする。
図1は、本発明の一実施形態に係る固体撮像素子パッケージ1の断面図である。
【0015】
固体撮像素子パッケージ1は、実装基板10と、実装基板10に実装される固体撮像素子20と、固体撮像素子20に配設される枠状のフレーム30と、固体撮像素子20を間隔を空けて覆うようフレーム30に固定される透明基板40と、実装基板10上のフレーム30および透明基板40の外側を封止する封止材50と、を備える。
【0016】
実装基板10は、固体撮像素子20を支持する構造部材である。このため、実装基板10は、十分な剛性を有する材料から形成される。実装基板10は、電気的に回路に組み込まれる構成要素を有しない単なる支持体であってもよいが、固体撮像素子20に電力を供給し、固体撮像素子20から信号を取り出す回路が形成された回路基板であることが好ましい。本実施形態において、実装基板10は、固体撮像素子20と電気的に接続するために端子11を含む回路が形成された回路基板である。
【0017】
実装基板10としては、例えばポリイミド、ポリエステル、セラミック、エポキシ、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フェノール樹脂等の有機物や、紙やガラス繊維不織布などに前記の有機物を含侵させて加熱硬化させた構造物、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、窒化ケイ素などのセラミック、金属基板などが挙げられる。この中で好ましいものとしてはガラスエポキシ基板、セラミック基板、ビスマレイミドトリアジン樹脂基板が挙げられる。これら絶縁基板の表面または内部に、金属配線パターンや金属バンプを有する回路を形成することができる。
【0018】
固体撮像素子20は、撮像を行う機能部21と、機能部21を取り囲むマージン部22と、マージン部22のさらに外側に設けられる接続部23と、を有する。固体撮像素子20は、実装基板10の透明基板40に対向する側に実装され得る。機能部21としては、例えばCMOSイメージセンサ等の2次元撮像素子構造が形成され得る。マージン部22は、フレーム30を固定する領域であり、露出すべき構成要素が設けられていない。接続部23は、固体撮像素子20を実装基板10等に電気的に接続するための端子231が配設される領域である。本実施形態において、固体撮像素子20と実装基板10は、ワイヤ232によって電気的に接続されている。
【0019】
フレーム30は、透明基板40と共に固体撮像素子20上に機能部21を封入する密閉空間を形成し、機能部21に側方から光が入射することを防止する。さらに、フレーム30は、内周面での反射光が機能部21に入射することを抑制するために、内周面が透明基板40側に向かって縮径する逆テーパー状に形成されることが好ましく、例えば階段状またはドーム状に透明基板40側で内周面の縮径率がより小さくなるような形状とされてもよい。
【0020】
フレーム30は、固体撮像素子20に対する相対位置姿勢および透明基板40に対する相対位置姿勢を正確に定めるために、固体撮像素子20および透明基板40の両方に、接着剤等を介せずに直接接合されることが好ましい。
【0021】
フレーム30の少なくとも一部分は他の部分と組成が異なる樹脂組成物から形成される。具体的には、内周の表層部である内周面部31、外周の表層部である外周面部32、固体撮像素子20に接する面の表層部である素子接合部33および透明基板に接する面の表層部である透明基板接合部34の少なくともいずれかを形成する樹脂組成物の組成は、フレーム30の深層部である本体部35を形成する樹脂組成物の組成と異なり得る。内周面部31、外周面部32、素子接合部33および透明基板接合部34を形成する樹脂組成物の組成は、互いに異なってもよい。また、内周面部31、外周面部32、素子接合部33および透明基板接合部34のうち少なくともいずれかの組成が本体部35の組成と異なっていればよく、それ以外の部分の組成は、本体部35と同じ樹脂組成物から形成されてもよい。例として、
図2に示す変形例の固体撮像素子パッケージ1Aのように、素子接合部33および透明基板接合部34のみがフレーム30の他の部分と組成が異なる樹脂組成物から形成されてもよい。また素子接合部33および透明基板接合部34のうちの少なくとも一方のみが本体部35の組成と異なっていてもよい(不図示)。
【0022】
組成を異ならせる例として、素子接合部33および透明基板接合部34の少なくともいずれかのガラス転移点を他の部分のガラス転移点よりも低くすることにより、他の機能の低下を抑制しつつ、フレーム30の固体撮像素子20および透明基板40に対する密着性を向上できる。また、内周面部31および外周面部32のガラス転移点を他の部分のガラス転移点よりも高くすることにより、フレーム30を固体撮像素子20および透明基板40に熱圧着する場合に、フレーム30全体が押し潰されて変形することを防止できる。このような観点からは、
図1に示すように、内周面部31および外周面部32は、素子接合部33および透明基板接合部34の外側および内側に延在し、固体撮像素子20および透明基板40に接するよう設定されることが好ましい。換言すると、ガラス転移点を低く設定される素子接合部33および透明基板接合部34は、固体撮像素子20および透明基板40に接する面の一部の表層部であってもよい。
【0023】
組成を異ならせる別の例として、内周面部31および外周面部32のフィラー含有率を他の部分のフィラー含有率よりも大きくしてもよい。フィラーとして光拡散材(白色顔料)または光吸収材(黒色顔料)を用いる場合、内周面部31および外周面部32のフィラー含有率を大きくすることにより、固体撮像素子20および透明基板40に対する密着性を担保しながらフレーム30の遮光性を向上できる。特に内周面部31のフィラー含有率を大きくすることにより、傾斜方向から入射する光を散乱または吸収させ、反射光が固体撮像素子20に入射して撮像品質を低下させるノイズとなることを防止できる。また、マージン部22の表面に配線が存在する場合等、マージン部22が光を反射しやすい場合には、素子接合部33を、光吸収材を含有する樹脂組成物で形成することにより、マージン部22の表面での反射に起因して光ノイズが機能部21に入射することを抑制できる。光拡散材としては、例えばマイカ、カオリン、タルク、シリカ、ガラス、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン等の微粒子が用いられる。光吸収材としては、例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ等の微粒子が用いられる。波長選択性を有するフィラーつまり着色材を使用してもよい。また、フィラーとして補強材を用いる場合、内周面部31および外周面部32のフィラー含有率を大きくすることにより、フレーム30を固体撮像素子20および透明基板40に熱圧着する際にフレーム30が変形することを効果的に防止できる。
【0024】
透明基板40は、固体撮像素子20に光が入射することを可能にする。透明基板40は、ガラスやサファイヤなどの透明セラミック、アクリル樹脂やポリカーボネート等の透明プラスチックを用いることができ、信頼性の観点から透明セラミックが好ましい。汎用性の観点から、ガラスが用いられることが好ましい。ガラスの種類は特に限定されないが、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。透明基板40は、フレーム30に接着剤により接着されてもよいが、透明基板40の一方の面にフレーム30の材料が直接積層されることが好ましい。
【0025】
封止材50は、実装基板10上の固体撮像素子20、フレーム30および透明基板40の外側を封止することにより、フレーム30および透明基板40が外部の物体により固体撮像素子20から引き剥がされることを防止する。また、封止材50は、ワイヤ232を保護し、実装基板10と固体撮像素子20との電気的接続を担保する。
【0026】
封止材50としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましく、強靭性や耐熱性の観点からエポキシ樹脂が特に好ましい。また、封止材50は、機能部21に意図しないノイズ光が入射することを防止できるよう、光拡散材または光吸収材を含有する樹脂組成物から形成されることが好ましい。また、封止材50は、形成を容易にするために、硬化前においてチクソ性有するようシリカ等の充填剤を含有してもよい。
【0027】
以上の固体撮像素子パッケージ1は、
図3に示す本発明の一実施形態に係る固体撮像素子パッケージ製造方法によって製造できる。本実施形態に係る固体撮像素子パッケージ製造方法は、固体撮像素子20に固体撮像素子20を実装する工程(ステップS1:素子実装工程)と、透明基板40に3Dプリンターによりフレーム30を形成する工程(ステップS2:フレーム形成工程)と、実装基板10に実装された固体撮像素子20をフレーム30に接着する工程(ステップS3:素子接着工程)と、を備える。
【0028】
ステップS1の素子実装工程では、実装基板10に固体撮像素子20を実装する。固体撮像素子20の実装方法としては、特に限定されず、例えばワイヤボンディング、フリップチップボンディング等の周知の実装技術を採用することができる。
【0029】
ステップS2のフレーム形成工程では、透明基板40にインクジェット3Dプリンターにより樹脂組成物を積層することでフレーム30を形成する。インクジェット3Dプリンターは、光硬化性樹脂を主体とする樹脂組成物を噴射し、噴射した樹脂組成物に光を照射して硬化させる工程を繰り返すことにより、所望の形状の樹脂成形体を形成する。
【0030】
このフレーム形成工程では、形成されるフレーム30の組成を部分的に異ならせるよう、出射する樹脂組成物の組成を変化させる。具体的には、異なる樹脂組成物を噴射する複数のノズルを備えるインクジェット3Dプリンターを用い、場所ごとに噴射する樹脂組成物を選択することにより、フレーム30の材質を部分的に異ならせることができる。また、複数種類の樹脂組成物を同じ場所に噴射し、樹脂組成物の比率を連続的に変化させればグラデーション状の組成変化も可能である。
【0031】
本実施形態のように、インクジェット3Dプリンターにより透明基板40にフレーム30を形成する場合、フレーム30と透明基板40との密着性は比較的高くなるため、透明基板接合部34は本体部35と同じ組成の樹脂組成物で形成されてもよいが、次の素子接着工程で固体撮像素子20に接合される素子接合部33は、熱圧着性の高い樹脂組成物で形成されることが好ましい。具体的には、素子接合部33を光硬化後のガラス転移点が低い樹脂組成物によって形成してもよく、光硬化により半硬化し、さらに熱硬化する樹脂組成物によって形成してもよい。光硬化後に熱硬化する樹脂組成物としては、光重合開始剤と、光によっては活性化せず、熱圧着時の熱により活性化する熱重合開始剤と、を含む組成物が調整され得る。
【0032】
ステップS3の素子接着工程では、フレーム30の透明基板40と反対側に固体撮像素子20を接着する。フレーム30と固体撮像素子20との接着は、熱圧着により素子接合部33を固体撮像素子20に溶着させることにより行うことが好ましい。接着剤を使用しないことで、接着剤の厚みのバラツキ等に起因する固体撮像素子20と透明基板40との相対位置の誤差を防止できる。
【0033】
以上の固体撮像素子パッケージ製造方法によって製造される固体撮像素子パッケージ1は、フレーム30がノイズ光を抑制する機能性と固体撮像素子20および透明基板40に対する接合を含めた高い寸法精度とを有するため、撮影画像の画像品質が高い。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。本発明に係る固体撮像素子パッケージ製造方法では、固体撮像素子および透明基板の一方にフレームを形成し、フレームに他方を接着すればよく、固体撮像素子にフレームを形成し、形成したフレームに透明基板を接着してもよい。
【実施例0035】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
<感光性樹脂組成物>
フレームの形成材料として、主鎖に環状ポリシロキサン構造を有し、カチオン重合性基およびアルカリ可溶性基を有する主ポリマー100重量部に、ダイセル社製の脂環式エポキシ化合物「セロキサイド2021P」15~40重量部と、サンアプロ社製の光カチオン重合開始剤「CPI-210S」3質量部と、BASF社製の酸化防止剤「IRGANOX1010」0.1重量部と、フィラーとして日本アエロジル社製のヒュームドシリカ「R974」(比表面積200)、「R8200」(比表面積200)または「R972」(比表面積130)0重量部または5重量部と、を混合した感光性樹脂組成物1~7を調整した。なお、脂環式エポキシ化合物は、感光性樹脂組成物のガラス転移点を調整する目的で配合した。
【0037】
前記主ポリマーは、以下の手順で調整した。先ず、ジアリルイソシアヌレート40gとジアリルモノメチルイソシアヌレート29gと1,4-ジオキサン264gとの混合物に、ユミコアプレシャスメタルズ・ジャパン社製の白金ビニルシロキサン錯体キシレン溶液「Pt-VTSC-3X」124mgを加えて溶液S1を得た。また、別途、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン88gをトルエン176gに溶解させて溶液S2を得た。そして、酸素を3体積%含有する窒素雰囲気下において、溶液S2を温度105℃に加熱した状態で、溶液S2に溶液S1を3時間かけて滴下し、滴下終了後、温度105℃に保持しつつ30分間攪拌して、溶液S3を得た。なお、得られた溶液S3に含まれる化合物のアルケニル基の反応率を、1H-NMRで測定したところ、当該反応率は95%以上であった。また、別途、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン62gをトルエン62gに溶解させて溶液S4を得た。そして、酸素を3体積%含有する窒素雰囲気下、溶液S3を温度105℃に加熱した状態で、溶液S3に、溶液S4を1時間かけて滴下し、滴下終了後、温度105℃に保持しつつ30分間攪拌して、溶液S5を得た。なお、得られた溶液S5に含まれる化合物のアルケニル基の反応率を、1H-NMRで測定したところ、当該反応率は95%以上であった。次いで、溶液S5を冷却した後、溶液S5から溶媒(トルエン、キシレンおよび1,4-ジオキサン)を減圧留去し、主ポリマーを得た。主ポリマーは、1分子中に複数個のカチオン重合性基と複数個のアルカリ可溶性基とを有し、かつ主鎖に環状ポリシロキサン構造を有していた。
【0038】
感光性樹脂組成物1~7の組成およびガラス転移点を、次の表1に、まとめて示す。なお、表中の「-」は、配合していないこと、つまり配合量がゼロであることを示す。
【0039】
【0040】
<固体撮像素子パッケージの試作>
インクジェット3Dプリンターまたはディスペンサーを使用し、異なる条件で、透明基板または固体撮像素子に上記感光性樹脂組成物よってフレームを形成し、固体撮像素子パッケージの試作例1~10を試作した。この際、1層塗布するごとの紫外光を露光することで、半硬化の状態で積層した。インクジェット3Dプリンターを用いる場合、本体部と、周面部(内周面部および外周面部)と、接合部(素子接合部および透明基板接合部)の3つの部位に分けてそれぞれ使用する感光性樹脂組成物を選択した。また、フレームの内周面と内側の透明基板との角度(以下、「テーパー角」という)も変えて試作した。なお、試作例16は、従来の方法で従来の感光性樹脂組成物によってフレームを形成したものである。
【0041】
具体的には、透明基板(10cm×10cm、厚み0.4mm)上に、線幅200μm、厚み50μmの四角筒状構造を有するフレームを複数個形成し、透明基板のフレームが設けられていない面にダイシングフィルムを仮接着した後、ダイシングブレードで切断し、ダイシングフィルムをはがして、個片化されたフレーム付透明基板を得た。次いで、得られたフレーム付透明基板と、固体撮像素子が実装された実装基板とを積層し、温度120℃のホットプレート上で500gの荷重を30秒間かけることにより固体撮像素子とフレームを熱圧着して固体撮像素子パッケージの試作例を得た。なお、実装基板としては、固体撮像素子を外部と接続するための配線を提供する配線基板を使用した。また、固体撮像素子とフレームを接着した後、実装基板の外周部に封止樹脂を盛り付け、固体撮像素子、フレームおよび透明基板の外周部を封止した。
【0042】
<固体撮像素子パッケージの評価>
[ゴースト指数]
固体撮像素子パッケージの各試作例の撮像性能について、壺坂電機社製のゴーストフレア評価システム「GCS-2T」を用いて、光源の明るさに対して1億分の1を超えた画素数である異常画素数を全画素数で除した異常画素数比率(異常画素数/全画素数)を算出し、従来例である試作例10の異常画素数比率を100%として、試作例1~9の異常画素数比率を正規化したゴースト指数を算出した。このゴースト指数が小さいほど、ゴースト発生を抑制できる性能が高いと評価される。
【0043】
[ダイシェア強度]
固体撮像素子パッケージの各試作例について、DAGE製社のダイシェア試験機「SERIES4000」を用いて、固体撮像素子から透明基板を剥離する試験を行い、剥離荷重の最大値をダイシェア強度とした。具体的には、ダイシェア強度は、MIL規格883に準拠し、シェア高さ50μm、シェアスピード80μm/sで測定した。ダイシェア強度が高いほど、接着性が高く、冷熱衝撃等の信頼性が高いと評価される。
【0044】
[冷熱衝撃耐性]
固体撮像素子パッケージの各試作例について、日立ジョンソンコントロールズ空調社製のヒートショック試験装置「コスモピアS」を用いて、-50℃の雰囲気下で30分保持した後、125℃の雰囲気下で30分保持する操作を500サイクル行った。次いで、光学顕微鏡により光半導体装置をガラス基板側から観察し、フレームのクラック箇所の数と、フレームの剥離箇所の数とを計数した。そして、クラック箇所の数と剥離箇所の数との合計が5未満であるものを「A」、クラック箇所の数と剥離箇所の数との合計が5以上10未満であるものを「B」、クラック箇所の数と剥離箇所の数との合計が10以上であるものを「C」とした。
【0045】
固体撮像素子パッケージの各試作例について、各部に使用した感光性樹脂組成物の番号と、テーパー角と、ゴースト指数と、ダイシェア強度と、冷熱衝撃耐性と、を次の表2にまとめて示す。
【0046】
【0047】
試作例15,16と試作例7,8との対比から明らかなように、インクジェット3Dプリンタを使用することにより、ディスペンサーを用いるよりも高精度にフレームを形成し、ダイシェア強度を同等としながらゴースト指数を小さくできる。さらに、試作例1~6のように、本体部、周面部および接合部を形成する樹脂組成物を独立して選択することによって、ゴースト指数、ダイシェア強度および冷熱衝撃耐性をさらに向上できることが確認された。また、試作例~14が示すように、テーパー角を大きくすることによって、ダイシェア強度および冷熱衝撃耐性を低下させずにゴースト指数をさらに小さくできることも確認された。