(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039309
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】スラリー供給装置、スラリー供給方法およびスラリー処理システム
(51)【国際特許分類】
B01J 4/00 20060101AFI20240314BHJP
B01F 33/40 20220101ALI20240314BHJP
B01F 27/112 20220101ALI20240314BHJP
B01F 27/90 20220101ALI20240314BHJP
B01F 35/213 20220101ALI20240314BHJP
B01F 35/221 20220101ALI20240314BHJP
B01F 35/75 20220101ALI20240314BHJP
B01J 2/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
B01J4/00 105D
B01F33/40
B01F27/112
B01F27/90
B01F35/213
B01F35/221
B01F35/75
B01J2/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143765
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000129183
【氏名又は名称】株式会社カワタ
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】張 春暁
(72)【発明者】
【氏名】大堀 進一
(72)【発明者】
【氏名】富永 圭介
(72)【発明者】
【氏名】廣川 治永
【テーマコード(参考)】
4G004
4G036
4G037
4G068
4G078
【Fターム(参考)】
4G004BA00
4G036AC03
4G037AA12
4G037AA18
4G037EA04
4G037EA10
4G068AA01
4G068AB17
4G068AC16
4G068AD40
4G068AE01
4G068AF01
4G068AF36
4G068AF37
4G078BA05
4G078DA01
4G078EA10
(57)【要約】
【課題】ポンプを使用せずに、スラリータンク内から処理装置のスラリー導入部にスラリーを供給できる、スラリー供給装置、スラリー供給方法およびスラリー処理システムを提供する。
【解決手段】コーティング装置2におけるコーティング処理の開始前に、スラリー流通路62を開閉する開閉弁64が閉の状態で、スラリータンク61内の圧力を調整する圧力調整弁78の開度が制御されて、スラリータンク61内の圧力がコーティング装置2のスラリー導入口25における圧力よりも高くされる。その後、スラリータンク61内の圧力がスラリー導入口25における圧力よりも高い状態で、開閉弁64が閉から開に切り替えられる。開閉弁64が閉から開に切り替えられると、スラリーがスラリータンク61内からスラリー流通路62を通してスラリー導入口25に供給される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリーを対象とする処理を実行する処理装置のスラリー導入部にスラリーを供給するスラリー供給装置であって、
スラリーを内部に貯留するスラリータンクと、
前記スラリータンク内の圧力を調整する圧力調整機構と、
前記スラリータンク内と前記スラリー導入部との間でスラリーが流通するスラリー流通路と、
前記スラリー流通路を開閉する開閉弁と、
前記処理装置における前記処理の開始前に、前記開閉弁が閉の状態で、前記圧力調整機構を制御して、前記スラリータンク内の圧力を前記スラリー導入部における圧力よりも高くし、前記スラリータンク内の圧力が前記スラリー導入部における圧力よりも高い状態で、前記開閉弁を閉から開に切り替える制御部と、を含む、スラリー供給装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記処理の終了後、前記開閉弁を開から閉に切り替える、請求項1に記載のスラリー供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記処理の終了後、前記スラリー導入部における圧力が前記スラリータンク内の圧力よりも高い状態で前記開閉弁を開とする回収期間を設ける、請求項2に記載のスラリー供給装置。
【請求項4】
前記圧力調整機構は、前記スラリータンク内を減圧する減圧機構を備え、
前記制御部は、少なくとも前記回収期間、前記減圧機構を作動させる、請求項3に記載のスラリー供給装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記処理が終了した後、前記処理装置の運転が終了し、前記処理装置の運転が終了した時点から前記回収期間が経過すると、前記開閉弁を開から閉に切り替える、請求項4に記載のスラリー供給装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記処理が終了すると、前記開閉弁を開から閉に切り替え、かつ、前記減圧機構の作動を停止し、その後、前記処理装置の運転が終了すると、前記減圧機構を作動させ、かつ、前記開閉弁を閉から開に切り替えて、前記処理装置の運転が終了した時点から前記回収期間が経過すると、前記開閉弁を開から閉に切り替える、請求項4に記載のスラリー供給装置。
【請求項7】
前記処理の実行中の前記スラリー導入部における圧力は、大気圧よりも低く、
前記制御部は、前記処理の開始前に、前記減圧機構の作動を開始させ、前記減圧機構が作動した状態で前記開閉弁を閉から開に切り替える、請求項4に記載のスラリー供給装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記処理の開始前および/または前記処理の実行中に、前記スラリータンク内のスラリー中にエアを供給してスラリーを撹拌するバブリング撹拌期間を設ける、請求項1に記載のスラリー供給装置。
【請求項9】
前記圧力調整機構は、前記スラリータンク内を減圧する減圧機構、を備え、
前記制御部は、前記バブリング撹拌期間、前記減圧機構を作動させて、前記スラリータンク内の圧力を大気圧より低くした状態で、前記スラリータンク内が前記スラリー流通路外と連通するように前記開閉弁を切り替える、請求項8に記載のスラリー供給装置。
【請求項10】
前記スラリータンク内のスラリー中にエアを供給するエア供給機構、をさらに含み、
前記制御部は、前記バブリング撹拌期間、前記エア供給機構を作動させる、請求項8に記載のスラリー供給装置。
【請求項11】
前記圧力調整機構は、前記スラリータンク内を減圧する減圧機構と、前記スラリータンク内と連通する圧力調整管と、前記圧力調整管に介装されて、開度を変更可能な圧力調整弁、または、前記圧力調整管に介装されて、互いに異なる開度に設定された複数の絞り弁と、を備える、請求項1に記載のスラリー供給装置。
【請求項12】
前記圧力調整機構は、前記スラリータンク内の圧力を大気圧より高くする加圧機構と、前記スラリータンク内と連通する圧力調整管と、前記圧力調整管に介装されて、開度を変更可能な圧力調整弁、または、前記圧力調整管に介装されて、互いに異なるリリーフ圧に設定された複数のリリーフ弁とを備える、請求項1に記載のスラリー供給装置。
【請求項13】
前記スラリー流通路におけるスラリーの流量を検出する流量検出部、をさらに含み、
前記制御部は、前記処理の実行中、前記流量検出部により検出される流量が目標値に一致するように、前記圧力調整機構を制御する、請求項1に記載のスラリー供給装置。
【請求項14】
前記スラリー流通路は、その一部を構成する管を備え、
前記管は、管径および/または管長の異なる別の管と交換可能に設けられている、請求項1に記載のスラリー供給装置。
【請求項15】
前記スラリータンク内に設けられ、前記スラリータンク内のスラリーを撹拌する攪拌翼と、
前記撹拌翼を回転させる駆動力を発生する撹拌モータと、をさらに含む、請求項1に記載のスラリー供給装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記処理の開始前および/または前記処理の実行中に、前記撹拌モータを作動させて、前記攪拌翼の回転を開始させる、請求項15に記載のスラリー供給装置。
【請求項17】
一端が前記スラリータンク内に貯留されるスラリーの液面よりも下方の位置で前記スラリータンク内に開放され、他端が前記液面よりも上方の位置で前記スラリータンク内に開放されるスラリー循環路と、
前記スラリー循環路に介装され、前記スラリー循環路の前記一端から前記他端に向けてスラリーを送るスラリー循環ポンプと、をさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のスラリー供給装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記処理の開始前であって、前記開閉弁を閉から開に切り替える前に、前記スラリー循環ポンプを作動させて、前記スラリータンク内のスラリーを前記スラリー循環路を通して循環させる、請求項17に記載のスラリー供給装置。
【請求項19】
前記スラリータンクは、第1スラリータンクと、前記第1スラリータンクとは別に設けられる第2スラリータンクとを備え、
一端が前記第1スラリータンク内に貯留されるスラリーの液面よりも下方の位置で前記スラリータンク内に開放され、他端が前記第2スラリータンク内に貯留されるスラリーの液面よりも上方の位置で前記スラリータンク内に開放される第1スラリー移送路と、
前記第1スラリー移送路に介装され、前記第1スラリー移送路の前記一端から前記他端に向けてスラリーを送る第1スラリー移送ポンプと、
一端が前記第2スラリータンク内に貯留されるスラリーの液面よりも下方の位置で前記スラリータンク内に開放され、他端が前記第1スラリータンク内に貯留されるスラリーの液面よりも上方の位置で前記スラリータンク内に開放される第2スラリー移送路と、
前記第2スラリー移送路に介装され、前記第2スラリー移送路の前記一端から前記他端に向けてスラリーを送る第2スラリー移送ポンプと、をさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のスラリー供給装置。
【請求項20】
前記制御部は、前記処理の開始前であって、前記開閉弁を閉から開に切り替える前に、前記第1スラリー移送ポンプおよび前記第2スラリー移送ポンプを作動させて、前記第1スラリータンク内のスラリーおよび前記第2スラリータンク内のスラリーを前記第1スラリータンクと前記第2スラリータンクとの間で循環させる、請求項19に記載のスラリー供給装置。
【請求項21】
スラリーを内部に貯留するスラリータンクからスラリーを対象とする処理を実行する処理装置のスラリー導入部にスラリーを供給するスラリー供給方法であって、
前記処理装置における前記処理の開始前に、前記スラリータンク内と前記スラリー導入部とを接続するスラリー流通路に介装された開閉弁が閉の状態で、前記スラリータンク内の圧力を前記スラリー導入部における圧力よりも高くし、
前記スラリータンク内の圧力が前記スラリー導入部における圧力よりも高い状態で、前記開閉弁を閉から開に切り替えて、前記スラリータンクから前記スラリー導入部に向けてスラリーを流通させる、スラリー供給方法。
【請求項22】
前記処理の終了後、前記スラリータンク内を減圧する減圧機構の作動により前記スラリー導入部における圧力を前記スラリータンク内の圧力よりも高くし、前記スラリー導入部における圧力が前記スラリータンク内の圧力よりも高い状態で前記開閉弁を開とする回収期間を設ける、請求項21に記載のスラリー供給方法。
【請求項23】
前記処理の実行中の前記スラリー導入部における圧力は、大気圧よりも低く、
前記処理の開始前に、前記減圧機構の作動を開始させ、前記減圧機構が作動した状態で前記開閉弁を閉から開に切り替える、請求項22に記載のスラリー供給方法。
【請求項24】
前記処理の開始前であって、前記開閉弁を閉から開に切り替える前に、前記スラリータンク内のスラリーを撹拌する、請求項21~23のいずれか一項に記載のスラリー供給方法。
【請求項25】
スラリーを対象とする処理を実行する処理装置と、
前記処理装置のスラリー導入部にスラリーを供給するスラリー供給装置と、を含み、
前記スラリー供給装置は、
スラリーを内部に貯留するスラリータンクと、
前記スラリータンク内の圧力を調整する圧力調整機構と、
前記スラリータンク内と前記スラリー導入部との間でスラリーが流通するスラリー流通路と、
前記スラリー流通路を開閉する開閉弁と、
前記処理装置における前記処理の開始前に、前記開閉弁が閉の状態で、前記圧力調整機構を制御して、前記スラリータンク内の圧力を前記スラリー導入部における圧力よりも高くし、前記スラリータンク内の圧力が前記スラリー導入部における圧力よりも高い状態で、前記開閉弁を閉から開に切り替える制御部と、を備える、スラリー処理システム。
【請求項26】
前記制御部は、前記処理の終了後、前記スラリー導入部における圧力が前記スラリータンク内の圧力よりも高い状態で前記開閉弁を開とする回収期間を設ける、請求項25に記載のスラリー処理システム。
【請求項27】
前記スラリー供給装置は、前記スラリータンク内を減圧する減圧機構、をさらに備え、
前記処理の実行中の前記スラリー導入部における圧力は、大気圧よりも低く、
前記制御部は、前記処理の開始前に、前記減圧機構の作動を開始させ、前記減圧機構が作動した状態で前記開閉弁を閉から開に切り替える、請求項26に記載のスラリー処理システム。
【請求項28】
前記スラリーは、原料粒子の粉体とコーティング溶液とを混合して作製され、
前記処理装置は、前記スラリーを前記コーティング溶液が表面に付着した前記原料粒子に分散させる分散部、を備え、
前記分散部は、
流路と、
前記流路内に高圧流体の気流を導入する気流導入口と、
前記気流導入口よりも前記気流の流通方向の下流側に設けられ、スラリーを前記流路内に導入するスラリー導入口と、を有し、
前記スラリー導入部は、前記スラリー導入口である、請求項27に記載のスラリー処理システム。
【請求項29】
前記流路は、前記気流導入口と前記スラリー導入口との間の途中部において、前記流通方向に流路断面が収縮した後に拡大している、請求項28に記載のスラリー処理システム。
【請求項30】
前記スラリーには、溶媒の揮発を抑えるため、前記溶媒よりも沸点の高い高沸点溶媒が添加されている、請求項25~29のいずれか一項に記載のスラリー処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー供給装置、スラリー供給方法およびスラリー処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
粉体の表面改質・複合化の技術では、主原料となる原料粒子にコーティング粒子を結合させて、原料粒子の表面にコーティング粒子の被覆層を形成することにより、粉体に種々の機能性が付与される。その技術は、食品、医薬品、化粧品などの分野で盛んに利用されており、それ以外の分野においても、電子部品や電池に用いられる材料の製造に利用されている。
【0003】
出願人は、原料粒子の粉体とコーティング溶液とを予め混合して作製されたスラリーを処理装置に供給し、処理装置において、高圧流体の気流によりスラリーを原料粒子の表面にコーティング溶液が付着した粉体に分散させ、その粉体を気流に乗せて搬送しながらコーティング溶液を乾燥させて、コーティング溶液の乾燥により得られる粉体を捕集する技術を先に提案している。
【0004】
スラリーは、スラリータンク内に貯留されており、スラリータンク内から処理装置に供給される。スラリー供給の手法として、たとえば、スラリータンク(スラリー供給槽)と処理装置とを接続するスラリー供給管の途中部にポンプを介装し、そのポンプによりスラリーに圧力を加え、その圧力によりスラリーをスラリー供給管を通して処理装置に供給する手法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ポンプを使用せずに、スラリータンク内から処理装置のスラリー導入部にスラリーを供給できる、スラリー供給装置、スラリー供給方法およびスラリー処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明の一の局面に係るスラリー供給装置は、スラリーを対象とする処理を実行する処理装置のスラリー導入部にスラリーを供給するスラリー供給装置であって、スラリーを内部に貯留するスラリータンクと、スラリータンク内の圧力を調整する圧力調整機構と、スラリータンク内とスラリー導入部との間でスラリーが流通するスラリー流通路と、スラリー流通路を開閉する開閉弁と、処理装置における処理の開始前に、開閉弁が閉の状態で、圧力調整機構を制御して、スラリータンク内の圧力をスラリー導入部における圧力よりも高くし、スラリータンク内の圧力がスラリー導入部における圧力よりも高い状態で、開閉弁を閉から開に切り替える制御部とを含む。
【0008】
この構成によれば、処理装置では、スラリーを対象とする処理が実行される。スラリーは、スラリータンク内に貯留されている。スラリータンク内と処理装置のスラリー導入部との間では、スラリーがスラリー流通路を通して流通する。
【0009】
処理装置における処理の開始前に、スラリー流通路を開閉する開閉弁が閉の状態で、スラリータンク内の圧力を調整する圧力調整機構が制御されて、スラリータンク内の圧力が処理装置のスラリー導入部における圧力よりも高くされる。その後、スラリータンク内の圧力がスラリー導入部における圧力よりも高い状態で、開閉弁が閉から開に切り替えられる。開閉弁が閉から開に切り替えられると、スラリータンク内の圧力とスラリー導入部における圧力との圧力差により、スラリーがスラリータンク内からスラリー流通路を通してスラリー導入部に供給される。
【0010】
よって、ポンプを使用せずに、スラリータンク内から処理装置のスラリー導入部にスラリーを供給することができる。
【0011】
制御部は、処理装置における処理の終了後、開閉弁を開から閉に切り替える。
【0012】
これにより、ポンプを使用せずに、スラリータンク内から処理装置のスラリー導入部へのスラリーの供給を停止することができる。
【0013】
制御部は、処理装置における処理の終了後、スラリー導入部における圧力がスラリータンク内の圧力よりも高い状態で開閉弁を開とする回収期間を設けることが好ましい。
【0014】
回収期間において、スラリー導入部における圧力とスラリータンク内の圧力との圧力差により、処理装置における処理の終了後にスラリー流通路に残存するスラリーをスラリータンク内に回収することができる。その結果、スラリー流通路にスラリーが残ることを防止でき、スラリー流通路にスラリーが乾燥して固着することを防止できる。
【0015】
圧力調整機構は、スラリータンク内を減圧する減圧機構を備え、制御部は、少なくとも回収期間、減圧機構を作動させてもよい。
【0016】
減圧機構の作動により、スラリータンク内を減圧して、スラリータンク内の圧力をスラリー導入部における圧力よりも低くすることができる。その結果、スラリー導入部における圧力がスラリータンク内の圧力よりも高い状態を生じさせることができる。
【0017】
制御部は、処理装置における処理が終了した後、処理装置の運転が終了し、処理装置の運転が終了した時点から回収期間が経過すると、開閉弁を開から閉に切り替えてもよい。または、処理装置における処理が終了すると、開閉弁を開から閉に切り替え、かつ、減圧機構の作動を停止し、その後、処理装置の運転が終了すると、減圧機構を作動させ、かつ、開閉弁を閉から開に切り替えて、処理装置の運転が終了した時点から回収期間が経過すると、開閉弁を開から閉に切り替えてもよい。
【0018】
前者の場合、後者の場合よりも開閉弁の開閉回数および減圧機構の作動/停止回数を削減でき、開閉弁および減圧機構の劣化を抑制することができる。
【0019】
処理装置における処理の実行中のスラリー導入部における圧力は、大気圧よりも低く、制御部は、処理装置における処理の開始前に、減圧機構の作動を開始させ、減圧機構が作動した状態で開閉弁を閉から開に切り替えてもよい。
【0020】
制御部は、処理装置における処理の開始前および/または処理の実行中に、スラリータンク内のスラリー中にエアを供給してスラリーを撹拌するバブリング撹拌期間を設けてもよい。
【0021】
バブリング撹拌期間において、スラリータンク内のスラリー中にエアが供給されることにより、スラリー中に気泡が発生する。このバブリングにより、処理装置における処理の開始前および/または処理の実行中に、スラリータンク内のスラリーを撹拌することができ、スラリーの分散性を向上させることができる。
【0022】
圧力調整機構は、スラリータンク内を減圧する減圧機構を備え、制御部は、バブリング撹拌期間、減圧機構を作動させて、スラリータンク内の圧力を大気圧より低くした状態で、スラリータンク内がスラリー流通路外と連通するように前記開閉弁を切り替えてもよい。
【0023】
バブリング撹拌期間において、減圧機構の作動により、スラリータンク内の圧力が大気圧よりも低くされる。この状態で、スラリータンク内とスラリー流通路外とが連通すると、スラリー流通路外における圧力(大気圧)とスラリータンク内の圧力との圧力差により、スラリー流通路外からスラリー流通路にエアが吸い込まれて、スラリー流通路からスラリータンク内に貯留されているスラリー中にエアが吹き出し、スラリー中に気泡を発生させることができる。
【0024】
なお、開閉弁は、スラリータンク内とスラリー導入部とを連通させる管に介装される仕切弁であってもよいし、スラリータンク内と連通する第1管が第1ポートに接続され、スラリー導入部と連通する第2管が第2ポートに接続され、先端が大気に開放される第3管が第3ポートに接続されて、第1ポートと第2ポートが連通する状態と、第1ポートと第3ポートが連通する状態とに切り替えられる三方弁であってもよい。開閉弁が三方弁である場合、開閉弁は、第1ポートと第2ポートが連通する状態と、第1ポートと第3ポートが連通する状態とのいずれの状態に切り替えられてもよい。
【0025】
スラリー供給装置は、スラリータンク内のスラリー中にエアを供給するエア供給機構をさらに含み、制御部は、バブリング撹拌期間、エア供給機構を作動させてもよい。
【0026】
この構成によっても、スラリータンク内のスラリー中に気泡を発生させることができる。
【0027】
圧力調整機構は、スラリータンク内を減圧する減圧機構と、スラリータンク内と連通する圧力調整管と、圧力調整管に介装されて、開度を変更可能な圧力調整弁、または、前記圧力調整管に介装されて、互いに異なる開度に設定された複数の絞り弁とを備える構成であってもよい。
【0028】
この構成によって、スラリータンク内の圧力を大気圧以下に調整することができる。
【0029】
また、圧力調整機構は、スラリータンク内の圧力を大気圧より高くする加圧機構と、スラリータンク内と連通する圧力調整管と、圧力調整管に介装されて、開度を変更可能な圧力調整弁、または、圧力調整管に介装されて、互いに異なるリリーフ圧に設定された複数のリリーフ弁とを備える構成であってもよい。
【0030】
この構成によって、スラリータンク内の圧力を大気圧以上に調整することができる。
【0031】
スラリー供給装置は、スラリー流通路におけるスラリーの流量を検出する流量検出部をさらに含み、制御部は、処理装置における処理の実行中、流量検出部により検出される流量が目標値に一致するように、圧力調整機構を制御してもよい。
【0032】
この構成によって、スラリーをスラリー導入部に安定した流量で供給することができる。
【0033】
スラリー流通路は、その一部を構成する管を備え、管は、管径および/または管長の異なる別の管と交換可能に設けられていてもよい。
【0034】
この構成では、スラリー流通路の一部を構成する管を管径もしくは管長または管径および管長が異なる管と付け替えることにより、スラリー導入部に供給されるスラリーの流量を調整することができる。
【0035】
スラリー供給装置は、スラリータンク内に設けられ、スラリータンク内のスラリーを撹拌する攪拌翼と、撹拌翼を回転させる駆動力を発生する撹拌モータとをさらに含む構成であってもよい。
【0036】
そして、制御部は、処理装置における処理の開始前および/または処理の実行中に、撹拌モータを作動させて、攪拌翼の回転を開始させてもよい。
【0037】
処理装置における処理の開始前および/または処理の実行中に、攪拌翼の回転により、スラリータンク内のスラリーを撹拌することができ、スラリーの分散性を向上させることができる。
【0038】
スラリー供給装置は、一端がスラリータンク内に貯留されるスラリーの液面よりも下方の位置でスラリータンク内に開放され、他端が液面よりも上方の位置でスラリータンク内に開放されるスラリー循環路と、スラリー循環路に介装され、スラリー循環路の一端から他端に向けてスラリーを送るスラリー循環ポンプとをさらに含む構成であってもよい。
【0039】
この構成では、スラリー循環ポンプの作動により、スラリータンク内からスラリー循環路にスラリーが吸い出されて、そのスラリーがスラリー循環路を一端から他端に向けて流れ、スラリー循環路の他端からスラリータンク内にスラリーが戻される。これにより、スラリータンク内のスラリーがスラリー循環路を通して循環する。スラリーの循環により、スラリーを撹拌することができ、スラリーの分散性を向上させることができる。
【0040】
制御部は、処理装置における処理の開始前であって、開閉弁を閉から開に切り替える前に、スラリー循環ポンプを作動させて、スラリータンク内のスラリーをスラリー循環路を通して循環させてもよい。
【0041】
これにより、分散性に優れたスラリーを処理装置のスラリー導入部に供給することができ、処理装置において、スラリーを対象とする処理を良好に実行することができる。
【0042】
スラリータンクは、第1スラリータンクと、第1スラリータンクとは別に設けられる第2スラリータンクとを備え、スラリー供給装置は、一端が第1スラリータンク内に貯留されるスラリーの液面よりも下方の位置でスラリータンク内に開放され、他端が第2スラリータンク内に貯留されるスラリーの液面よりも上方の位置でスラリータンク内に開放される第1スラリー移送路と、第1スラリー移送路に介装され、第1スラリー移送路の一端から他端に向けてスラリーを送る第1スラリー移送ポンプと、一端が第2スラリータンク内に貯留されるスラリーの液面よりも下方の位置でスラリータンク内に開放され、他端が第1スラリータンク内に貯留されるスラリーの液面よりも上方の位置でスラリータンク内に開放される第2スラリー移送路と、第2スラリー移送路に介装され、第2スラリー移送路の一端から他端に向けてスラリーを送る第2スラリー移送ポンプとをさらに含む構成であってもよい。
【0043】
この構成では、第1スラリー移送ポンプの作動により、第1スラリータンク内から第1スラリー移送路にスラリーが吸い出されて、そのスラリーが第1スラリー移送路を一端から他端に向けて流れ、第1スラリー移送路の他端から第2スラリータンク内にスラリーが流入する。また、第2スラリー移送ポンプの作動により、第2スラリータンク内から第2スラリー移送路にスラリーが吸い出されて、そのスラリーが第2スラリー移送路を一端から他端に向けて流れ、第2スラリー移送路の他端から第1スラリータンク内にスラリーが流入する。これにより、スラリーが第1スラリータンク内と第2スラリータンク内のとの間で第1スラリー移送路および第2スラリー移送路を通して循環する。スラリーの循環により、スラリーを撹拌することができ、スラリーの分散性を向上させることができる。
【0044】
制御部は、処理装置における処理の開始前であって、開閉弁を閉から開に切り替える前に、第1スラリー移送ポンプおよび第2スラリー移送ポンプを作動させて、第1スラリータンク内のスラリーおよび第2スラリータンク内のスラリーを第1スラリータンクと第2スラリータンクとの間で循環させてもよい。
【0045】
これにより、分散性に優れたスラリーを処理装置のスラリー導入部に供給することができ、処理装置において、スラリーを対象とする処理を良好に実行することができる。
【0046】
本発明の他の局面に係るスラリー供給方法は、スラリーを内部に貯留するスラリータンクからスラリーを対象とする処理を実行する処理装置のスラリー導入部にスラリーを供給するスラリー供給方法であって、処理装置における処理の開始前に、スラリータンク内とスラリー導入部とを接続するスラリー流通路に介装された開閉弁が閉の状態で、スラリータンク内の圧力をスラリー導入部における圧力よりも高くし、スラリータンク内の圧力がスラリー導入部における圧力よりも高い状態で、開閉弁を閉から開に切り替えて、スラリータンクからスラリー導入部に向けてスラリーを流通させる。
【0047】
この方法によれば、処理装置におけるスラリーを対象とする処理の開始前に、スラリー流通路を開閉する開閉弁が閉の状態で、スラリータンク内の圧力が処理装置のスラリー導入部における圧力よりも高くされる。その後、スラリータンク内の圧力がスラリー導入部における圧力よりも高い状態で、開閉弁が閉から開に切り替えられる。開閉弁が閉から開に切り替えられると、スラリータンク内の圧力とスラリー導入部における圧力との圧力差により、スラリーがスラリータンク内からスラリー流通路を通してスラリー導入部に供給される。
【0048】
よって、ポンプを使用せずに、スラリータンク内から処理装置のスラリー導入部にスラリーを供給することができる。
【0049】
スラリー供給方法では、処理装置における処理の終了後、スラリータンク内を減圧する減圧機構の作動によりスラリー導入部における圧力をスラリータンク内の圧力よりも高くし、スラリー導入部における圧力がスラリータンク内の圧力よりも高い状態で開閉弁を開とする回収期間を設けることが好ましい。
【0050】
回収期間において、スラリー導入部における圧力とスラリータンク内の圧力との圧力差により、処理装置における処理の終了後にスラリー流通路に残存するスラリーをスラリータンク内に回収することができる。その結果、スラリー流通路にスラリーが残ることを防止でき、スラリー流通路にスラリーが乾燥して固着することを防止できる。
【0051】
処理装置における処理の実行中のスラリー導入部における圧力は、大気圧よりも低く、処理装置における処理の開始前に、減圧機構の作動を開始させ、減圧機構が作動した状態で開閉弁を閉から開に切り替えてもよい。
【0052】
また、スラリー供給方法では、処理装置における処理の開始前であって、開閉弁を閉から開に切り替える前に、スラリータンク内のスラリーを撹拌することが好ましい。
【0053】
これにより、スラリータンク内のスラリーを撹拌することができ、スラリーの分散性を向上させることができる。そして、分散性に優れたスラリーを処理装置のスラリー導入部に供給することができ、処理装置において、スラリーを対象とする処理を良好に実行することができる。
【0054】
本発明のさらに他の局面に係るスラリー処理システムは、スラリーを対象とする処理を実行する処理装置と、処理装置のスラリー導入部にスラリーを供給するスラリー供給装置とを含み、スラリー供給装置は、スラリーを内部に貯留するスラリータンクと、スラリータンク内の圧力を調整する圧力調整機構と、スラリータンク内とスラリー導入部との間でスラリーが流通するスラリー流通路と、スラリー流通路を開閉する開閉弁と、処理装置における処理の開始前に、開閉弁が閉の状態で、圧力調整機構を制御して、スラリータンク内の圧力をスラリー導入部における圧力よりも高くし、スラリータンク内の圧力がスラリー導入部における圧力よりも高い状態で、開閉弁を閉から開に切り替える制御部とを備える。
【0055】
この構成によれば、処理装置では、スラリーを対象とする処理が実行される。処理対象のスラリーは、スラリータンク内に貯留されている。スラリータンク内と処理装置のスラリー導入部との間では、スラリーがスラリー流通路を通して流通する。
【0056】
処理装置における処理の開始前に、スラリー流通路を開閉する開閉弁が閉の状態で、スラリータンク内の圧力を調整する圧力調整弁の開度が制御されて、スラリータンク内の圧力が処理装置のスラリー導入部における圧力よりも高くされる。その後、スラリータンク内の圧力がスラリー導入部における圧力よりも高い状態で、開閉弁が閉から開に切り替えられる。開閉弁が閉から開に切り替えられると、スラリータンク内の圧力とスラリー導入部における圧力との圧力差により、スラリーがスラリータンク内からスラリー流通路を通してスラリー導入部に供給される。
【0057】
よって、ポンプを使用せずに、スラリータンク内から処理装置のスラリー導入部にスラリーを供給することができる。
【0058】
制御部は、処理装置における処理の終了後、スラリー導入部における圧力がスラリータンク内の圧力よりも高い状態で開閉弁を開とすることが好ましい。
【0059】
回収期間において、スラリー導入部における圧力とスラリータンク内の圧力との圧力差により、処理装置における処理の終了後にスラリー流通路に残存するスラリーをスラリータンク内に回収することができる。その結果、スラリー流通路にスラリーが残ることを防止でき、スラリー流通路にスラリーが乾燥して固着することを防止できる。
【0060】
スラリー供給装置は、スラリータンク内を減圧する減圧機構をさらに備え、処理装置における処理の実行中のスラリー導入部における圧力は、大気圧よりも低く、制御部は、処理装置における処理の開始前に、減圧機構の作動を開始させ、減圧機構が作動した状態で開閉弁を閉から開に切り替えてもよい。
【0061】
スラリーは、原料粒子の粉体とコーティング溶液とを混合して作製され、処理装置は、スラリーをコーティング溶液が表面に付着した原料粒子に分散させる分散部を備え、分散部は、流路と、流路内に高圧流体の気流を導入する気流導入口と、気流導入口よりも気流の流通方向の下流側に設けられ、スラリーを流路内に導入するスラリー導入口とを有し、スラリー導入部は、スラリー導入口であってもよい。
【0062】
流路は、気流導入口とスラリー導入口との間の途中部において、流通方向に流路断面が収縮した後に拡大していてもよい。すなわち、分散部は、ラバルノズルを備える構成であってもよい。
【0063】
この構成では、気流導入口から流路に導入される気流が狭まった途中部を通過することにより、気流を加速させることができる。
【0064】
スラリーには、溶媒の揮発を抑えるため、溶媒よりも沸点の高い高沸点溶媒が添加されていてもよい。
【0065】
溶媒の揮発を抑えることにより、スラリーの粘度が高くなることを抑制でき、スラリーをスラリー導入部に良好に供給することができる。
【発明の効果】
【0066】
本発明によれば、ポンプを使用せずに、スラリータンク内から処理装置のスラリー導入部にスラリーを供給することができ、また、その供給を停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスラリー処理システムの構成を図解的に示す断面図である。
【
図2】スラリー処理システムの電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】スラリー供給装置で実行される運転開始処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】コーティング装置で実行される運転終了処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】スラリー供給装置で実行される運転終了処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】スラリー供給装置で実行される運転開始処理の他の例を示すフローチャートである。
【
図7】スラリー供給装置で実行される運転終了処理の他の例を示すフローチャートである。
【
図8】スラリー供給装置の他の構成(その1)を図解的に示す断面図である。
【
図9】スラリー供給装置の他の構成(その2)を図解的に示す断面図である。
【
図10】スラリー供給装置の他の構成(その3)を図解的に示す断面図である。
【
図11】スラリー供給装置の他の構成(その4)を図解的に示す断面図である。
【
図12】スラリー供給装置の他の構成(その5)を図解的に示す断面図である。
【
図13】スラリー供給装置の他の構成(その6)を図解的に示す断面図である。
【
図14】スラリー供給装置の他の構成(その7)を図解的に示す断面図である。
【
図15】スラリー供給装置の他の構成(その8)を図解的に示す断面図である。
【
図16】スラリー供給装置の他の構成(その9)を図解的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0069】
<スラリー処理システム>
図1は、本発明の一実施形態に係るスラリー処理システム1の構成を図解的に示す断面図である。
【0070】
スラリー処理システム1は、原料粒子の粉体とコーティング溶液とを混合して作製されたスラリーをコーティング装置2に供給し、コーティング装置2において、スラリーを原料粒子の表面にコーティング溶液が付着した粉体に分散させ、コーティング溶液を乾燥させて、その乾燥により得られる粉体を捕集するシステムである。スラリーは、スラリー供給装置3により、コーティング装置2に供給される。
【0071】
<コーティング装置>
コーティング装置2は、分散混合部11、搬送乾燥部12、分級部13、第1捕集部14および第2捕集部15を備えている。
【0072】
分散混合部11は、略直方体形状の外形を有している。分散混合部11の内部には、分散混合部11の長手方向に延びる流路21が形成されている。流路21の一端は、分散混合部11の長手方向の一方側の側面22において、粉体流排出口23として開放されている。また、分散混合部11には、流路21の他端部に高圧流体の気流を供給する分散エア導入口24と、分散エア導入口24よりも気流の流通方向の下流側に設けられ、流路21にスラリーを導入するスラリー導入口25とが形成されている。そして、流路21には、分散エア導入口24とスラリー導入口25との間の途中部に、その流路断面が気流の流通方向に収縮した後に拡大することにより、ラバルノズル26が形成されている。
【0073】
分散エア導入口24には、分散エア供給管27の一端が接続されている。分散エア供給管27には、その他端から高圧流体である圧縮ガス(窒素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガスや大気を高圧ガス状態としたもの)が分散エアとして供給される。分散エア供給管27の途中部には、ミストセパレータ28が介装されている。また、分散エア供給管27は、ミストセパレータ28よりも分散エアの流通方向の下流側において、分散エアヒータ29を経由している。分散エア供給管27を流れる分散エアは、ミストセパレータ28で水分が除去された後、分散エアヒータ29により加温されて、分散エア導入口24から流路21に供給される。流路21に供給された分散エアは、ラバルノズル26を通過することにより、流速が大きく上昇し、たとえば、流速が音速の3倍まで達する。
【0074】
スラリー導入口25は、ラバルノズル26の出口付近、つまり流路断面が収縮から拡大に転じた直後の位置に形成されている。そのため、分散エアが流路21を流れている状態では、スラリー導入口25の圧力が大気圧よりも大きく低下する。スラリー導入口25には、スラリー供給装置3から延びるスラリー流通路62(後述する)が接続されており、スラリー流通路62からスラリーが供給される。スラリー導入口25に供給されるスラリーは、スラリー導入口25から流路21に導入される。一方、そのスラリーが導入される部分には、ラバルノズル26の作用による高速の気流が生じている。高速の気流が流路21に導入されるスラリーを追い越すことにより、スラリーは、気流から剪断力を受け、原料粒子の表面にコーティング溶液が付着した粉体に分散される。そして、その粉体を乗せた気流(粉体流)が粉体流排出口23から排出される。
【0075】
搬送乾燥部12は、円筒状の第1円筒部31と第1円筒部31よりも小径の第2円筒部32との間に、第1円筒部31から離れるにつれて窄まる縮径部33を有している。第1円筒部31の縮径部33側と反対側の一端は、端面板34で閉じられている。端面板34には、第1円筒部31の中心線上に、分散混合部11の粉体流排出口23に対応する粉体流導入口35が形成されている。分散混合部11の粉体流排出口23と粉体流導入口35とが位置合わせされて、分散混合部11の側面22と端面板34の外面とが対向して配置されることにより、分散混合部11の流路21と搬送乾燥部12内とが連通している。
【0076】
第1円筒部31の周面には、アシストエア導入口36が形成されている。アシストエア導入口36には、アシストエア供給管37の一端が接続されている。アシストエア供給管37の他端は、エア供給源38に接続されている。エア供給源38としては、たとえば、ブロワ、ポンプ、エアコンプレッサ、圧縮ガスボンベなどを挙げることができる。アシストエア供給管37には、エア供給源38からエアが供給され、そのエアがアシストエア導入口36に向けて流れる。アシストエア供給管37の途中部には、ミストセパレータ39が介装されている。また、アシストエア供給管37は、ミストセパレータ39よりもアシストエアの流通方向の下流側において、アシストエアヒータ41を経由している。アシストエア供給管37を流れるエアは、ミストセパレータ39で水分が除去された後、アシストエアヒータ41で加温されることにより、加温乾燥エアとなり、アシストエア導入口36から搬送乾燥部12内にアシストエアとして導入される。
【0077】
アシストエア供給管37は、アシストエアがアシストエア導入口36から第1円筒部31内に第1円筒部31の内周面の接線方向に吹き出すように、アシストエア導入口36に接続されている。そのため、アシストエア導入口36から搬送乾燥部12内に導入されるアシストエアは、第1円筒部31の内周面に沿って流れる渦状の気流となって、第2円筒部32に向けて流れる。
【0078】
分散混合部11の粉体流排出口23から排出される粉体を乗せた気流は、粉体流導入口35から搬送乾燥部12内に導入される。そして、粉体は、アシストエアの渦状の気流に乗って、搬送乾燥部12内を第2円筒部32に向けて搬送される。この搬送中に、原料粒子の表面に付着したコーティング溶液が乾燥することにより、原料粒子の表面がコーティング粒子の前駆体で被覆された粉体(以下、この粉体を「ドライゲル粉体」という。)が生成される。コーティング溶液の乾燥を促進するため、搬送乾燥部12がヒータなどで加温されてもよい。
【0079】
ドライゲル粉体を乗せた気流は、搬送乾燥部12の第2円筒部32を通過して、分級部13に流入する。分級部13は、サイクロン型分級装置からなる。分級部13では、搬送乾燥部12からの気流が旋回して渦流となり、その渦流が有する遠心力により渦流からドライゲル粉体が分離する。
【0080】
具体的には、分級部13は、外筒部51、内筒部52および円錐部53を有している。外筒部51は、中心線が上下方向に延びる円筒状に形成されている。外筒部51の上端は、上面板54で閉じられている。内筒部52は、外筒部51と同心かつ外筒部51よりも小径の円筒状に形成されて、上面板54を貫通して設けられている。円錐部53は、外筒部51の下端に連続し、外筒部51から離れるにつれて窄まる(縮径する)円錐状に形成されている。
【0081】
外筒部51の周面には、接続口55が形成されている。搬送乾燥部12の第2円筒部32は、第2円筒部32を通過する気流が接続口55から外筒部51内に外筒部51の内周面の接線方向に吹き出すように、接続口55に接続されている。内筒部52の上端には、内筒部52と交差する方向に延びる吸引管56が接続されている。内筒部52内は、吸引管56内と連通している。なお、吸引管56は、内筒部52と一体に形成されていてもよい。吸引管56内は、ブロワ57の吸込口と連通している。
【0082】
ブロワ57が作動すると、外筒部51、内筒部52、円錐部53および吸引管56内が負圧となり、第2円筒部32から接続口55を介して外筒部51内にドライゲル粉体を含むエアが積極的に吸い込まれて、そのドライゲル粉体を含むエアが外筒部51および円錐部53の内周面に沿って螺旋状に旋回しつつ下降する。ドライゲル粉体を含むエアが円錐部53の下端部に達すると、エアの流れが円錐部53の中心部を螺旋状に旋回しつつ上昇する方向に変わり、エアが内筒部52内に吸い出される。エアに含まれるドライゲル粉体は、旋回しながら、遠心力が働くことにより旋回半径の方向に移動して円錐部53の内周面に集まり、エアから分離して、円錐部53の内周面に沿って螺旋状に下降する。
【0083】
第1捕集部14は、略円筒形状の容器であり、分級部13の円錐部53の下端は、第1捕集部14に接続されている。円錐部53の下端は、開口しており、第1捕集部14内と分級部13内とは、その開口を介して連通している。分級部13内でエアから分離したドライゲル粉体は、円錐部53の下端の開口から第1捕集部14内に入り、第1捕集部14内に集まる。
【0084】
第2捕集部15は、吸引管56の途中部に介装されている。第2捕集部15には、バグフィルタ58が設けられている。搬送乾燥部12内では、原料粉体に付着していないコーティング溶液の液滴が乾燥することによる乾燥片が生じ、分級部13内でドライゲル粉体と分離したエアには、ドライゲル粉体よりも粒径および重量の小さい乾燥片が含まれる。その乾燥片を含むエアは、内筒部52内に吸い出されて、内筒部52内から吸引管56内に流入し、吸引管56内をブロワ57に向けて流れる。乾燥片を含むエアが第2捕集部15を通過する際に、乾燥片がバグフィルタ58に捕獲され、エアがバグフィルタ58を通過する。その結果、ドライゲル粉体および乾燥片が除去された後の清浄なエアがブロワ57の吐出口から吐出される。
【0085】
<スラリー供給装置>
スラリー供給装置3は、スラリータンク61を備えている。スラリータンク61は、その周面の中心線が上下方向に延びるように配置される。スラリータンク61内には、スラリーが貯留されている。
【0086】
スラリーは、前述したように、原料粒子の粉体とコーティング溶液とを混合することにより作製される。スラリー処理システム1が全固体電池用の正極活物質粉体の生成に用いられる場合、原料粒子は、たとえば、リチウム金属複合酸化物の粒子であり、リチウム金属複合酸化物としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2、Li4Ti5O12、LiFePO4、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2などを挙げることができる。コーティング溶液は、たとえば、原料粒子と結合するコーティング粒子がニオブ酸リチウム(LiNbO3)である場合、リチウムおよびニオブのアルコキシド溶液であり、リチウム源として、エトキシリチウム(LiOC2H5)を用い、ニオブ源として、ペンタエトキシニオブ(Nb(OC2H5)5)を用い、溶媒として、エタノールを用いることができる。コーティング溶液がリチウムおよびニオブのアルコキシド溶液である場合、コーティング装置2の第1捕集部14に捕集されたドライゲル粉体を250℃以上500℃未満で焼成することにより、原料粒子がニオブ酸リチウム薄膜で被覆された正極活物質粉体を得ることができる。スラリーには、溶媒の揮発を抑えるため、溶媒よりも沸点の高い高沸点溶媒が添加されてもよい。
【0087】
スラリー供給装置3は、スラリータンク61内とコーティング装置2のスラリー導入口25との間でスラリーを流通させるスラリー流通路62を備えている。スラリー流通路62の一端は、スラリータンク61の最底部に形成されたスラリー流通口63に接続され、スラリー流通路62の他端は、コーティング装置2のスラリー導入口25に接続されている。スラリー流通路62には、スラリー流通路62を開閉する開閉弁64が介装されている。開閉弁64は、たとえば、仕切弁である。また、スラリー流通路62には、開閉弁64よりもスラリー導入口25側の部分におけるスラリーの流量を計測するための流量検出部の一例としての流量計65が設けられている。
【0088】
また、スラリー供給装置3は、スラリータンク61内の圧力を調整する圧力調整機構71を備えている。
【0089】
圧力調整機構71には、スラリータンク61内を減圧する減圧機構72が含まれ、減圧機構72には、減圧管73および減圧ポンプ74が含まれる。スラリータンク61の上面は、上面板75によって閉鎖されている。上面板75には、減圧口76が形成されている。減圧管73の一端は、減圧口76に接続されている。減圧管73の他端は、減圧ポンプ74に接続されている。
【0090】
圧力調整機構71には、圧力調整管77および圧力調整弁78が含まれる。スラリータンク61の上面板75には、圧力調整口79が形成されている。圧力調整管77の一端は、圧力調整口79に接続されている。これにより、圧力調整管77は、スラリータンク61内と連通している。圧力調整管77の他端は、大気に開放されている。圧力調整弁78は、開度を変更可能な弁であり、圧力調整管77の途中部に介装されている。
【0091】
減圧ポンプ74が作動(オン)すると、スラリータンク61内の上部に生じている空間(スラリータンク61内に貯留されているスラリーの液面とスラリータンク61の上面板75との間の空間)から減圧口76を介して減圧管73にエアが吸い出される。そのため、減圧ポンプ74が作動した状態で、圧力調整弁78の開度が変更されると、スラリータンク61内の圧力が大気圧以下の範囲で変化する。
【0092】
そして、スラリータンク61内の圧力がコーティング装置2のスラリー導入口25における圧力よりも高い状態で、開閉弁64が開にされていると、スラリータンク61内の圧力とスラリー導入口25における圧力との圧力差により、スラリーがスラリータンク61内からスラリー流通路62を通してスラリー導入口25に供給される。逆に、スラリー導入口25における圧力がスラリータンク61内の圧力よりも高い状態で、開閉弁64が開にされていると、スラリー導入口25における圧力とスラリータンク61内の圧力との圧力差により、スラリー流通路62内のスラリーがスラリータンク61内に回収される。
【0093】
スラリータンク61内には、スラリーを撹拌するための撹拌翼81が設けられている。撹拌翼81は、上下方向に延びる回転軸82の下端に取り付けられて、スラリータンク61内の底部に配置されている。回転軸82は、スラリータンク61の上面板75の中心または中心付近を貫通して、その上端部がスラリータンク61外に突出している。回転軸82のスラリータンク61外に突出した部分には、撹拌モータ83が結合されている。
【0094】
<スラリー処理システムの電気的構成>
図2は、スラリー処理システム1の電気的構成を示すブロック図である。
【0095】
コーティング装置2およびスラリー供給装置3は、それぞれ制御部91,92を備えている。制御部91,92はいずれも、マイコン(マイクロコントローラ)を含む構成であり、マイコンには、たとえば、CPUと、フラッシュメモリやDRAM(Dynamic Random Access Memory)などのメモリとが内蔵されている。制御部91と制御部92とは、双方向に通信可能に接続されている。
【0096】
制御部91は、コーティング装置2の分散エアヒータ29、エア供給源38、アシストエアヒータ41およびブロワ57の動作を制御する。
【0097】
制御部92には、スラリー供給装置3の流量計65の出力信号が入力されるようになっている。流量計65は、スラリー供給装置3のスラリー流通路62を流れるスラリーの流量に応じた信号を出力する。制御部92は、流量計65の出力信号などに基づいて、開閉弁64、減圧ポンプ74、圧力調整弁78および撹拌モータ83の動作を制御する。
【0098】
<スラリー供給装置における運転開始処理>
図3は、スラリー供給装置3で実行される運転開始処理の流れを示すフローチャートである。
【0099】
スラリー処理システム1の始動時には、コーティング装置2の運転開始に先立ち、スラリー供給装置3の運転が開始される。スラリー供給装置3の運転開始の際には、制御部92により、運転開始処理が実行される。
【0100】
スラリー供給装置3における運転開始処理では、撹拌モータ83がオフからオンに切り替えられる(ステップS11)。撹拌モータ83がオンにされると、撹拌モータ83が発生する駆動力により、撹拌翼81および回転軸82が一体に回転し、撹拌翼81の回転により、スラリータンク61内に貯留されているスラリーが撹拌される。
【0101】
一方、圧力調整弁78の開度が初期開放値に制御されたうえで(ステップS12)、減圧ポンプ74がオフからオンに切り替えられる(ステップS13)。初期開放値は、減圧ポンプ74がオンの状態(作動した状態)でスラリータンク61内の圧力P1が大気圧未満となる値に設定されている。これにより、スラリータンク61内から減圧管73にエアが吸い出されるとともに、圧力調整管77を通してスラリータンク61内にエア(大気)が吸い込まれて、スラリータンク61内の圧力P1が大気圧未満に低下する。
【0102】
そして、開閉弁64が閉から開に切り替えられる(ステップS14)。
【0103】
コーティング装置2の運転が停止し、スラリータンク61内の圧力P1が大気圧未満になっているので、開閉弁64が閉から開に切り替えられると、コーティング装置2の分散混合部11のスラリー導入口25からスラリー流通路62にエア(大気)が取り込まれ、そのエアがスラリー流通路62をスラリータンク61に向けて流れる。そして、スラリー流通路62を流れるエアがスラリータンク61の最底部のスラリー流通口63からスラリータンク61内に貯留されているスラリー中に吹き出し、スラリー中に気泡が発生する。このバブリングにより、スラリータンク61内に貯留されているスラリーが撹拌される。
【0104】
スラリータンク61内に貯留されているスラリーは、撹拌翼81の回転により撹拌され、また、バブリングにより撹拌される。これにより、スラリー中で原料粒子が沈降した状態が解消され、スラリーの分散性が向上する。なお、スラリーの撹拌は、撹拌翼81の回転による撹拌のみであってもよいし、バブリングによる撹拌のみであってもよいが、撹拌翼81の回転およびバブリングの両方による撹拌であれば、スラリーの分散性をより向上させることができる。
【0105】
バブリングによるスラリーの撹拌が所定のバブリング撹拌期間にわたって継続されると、つまり開閉弁64が開にされてからバブリング撹拌期間が経過すると、開閉弁64が開から閉に切り替えられる(ステップS15)。バブリング撹拌期間の経過後も、撹拌翼81によるスラリーの撹拌は継続される。また、バブリング撹拌期間が経過すると、スラリー供給装置3の制御部92からコーティング装置2の制御部91に、スラリー供給装置3におけるバブリング撹拌期間の終了が通知される。
【0106】
その後、コーティング装置2の暖機運転が開始されたか否かが判断される(ステップS16)。コーティング装置2では、スラリー供給装置3の制御部92からコーティング装置2の制御部91へのバブリング撹拌期間の終了の通知を受けて、スラリーからドライゲル粉体を生成して捕集するコーティング処理の開始に先立ち、暖機運転が開始される。暖機運転では、分散エア供給源(図示せず)による分散エアの供給およびエア供給源38によるアシストエアの供給が開始されるとともに、ブロワ57が作動され、分散エアヒータ29およびアシストエアヒータ41がオフからオンに切り替えられる。
【0107】
なお、コーティング装置2の暖機運転の開始のタイミングで、バブリング撹拌期間が終了とされてもよい。
【0108】
コーティング装置2の暖機運転の開始に際して、コーティング装置2の制御部91からスラリー供給装置3の制御部92に、暖機運転の開始が通知される。暖機運転の開始が通知されると、コーティング装置2の暖機運転が開始されたと判断される(ステップS16のYES)。
【0109】
暖機運転の開始が判断されると(ステップS16のYES)、開閉弁64が閉から開に切り替えられる(ステップS17)。このとき、コーティング装置2の暖機運転が既に開始されており、コーティング装置2の分散混合部11の流路21を分散エアが流れている。分散エアが流路21を流れている状態では、スラリー導入口25における圧力P2は、大気圧よりも低く、スラリータンク61内の圧力P1よりもさらに低い。そのため、開閉弁64が開にされると、スラリー供給装置3のスラリータンク61内からスラリー流通路62にスラリーが吸い出されて、スラリー流通路62を流れるスラリーがスラリー導入口25から流路21に導入される。
【0110】
開閉弁64が開にされた後、スラリー流通路62を流れるスラリーの流量、つまり流量計65により計測される流量が予め設定された目標値に一致しているか否かが判断される(ステップS18)。スラリーの流量が目標値に一致していない場合(ステップS18のNO)、圧力調整弁78の開度が調整される(ステップS19)。
【0111】
スラリー流通路62を流れるスラリーの流量が目標値に一致する状態では、スラリータンク61内の圧力とスラリー導入口25における圧力との圧力差が目標値に応じた圧力差となる。言い換えれば、スラリー流通路62を流れるスラリーの流量が目標値に一致する状態では、スラリータンク61内の圧力がスラリー導入口25における圧力よりもスラリーの流量を目標値に一致させるのに必要な圧力差だけ高くなる。
【0112】
スラリー流通路62を流れるスラリーの流量が目標値に一致すると(ステップS18のYES)、スラリー供給装置3における運転開始処理が終了される。スラリー供給装置3における運転開始処理の終了に伴い、スラリー供給装置3の制御部92からコーティング装置2の制御部91に、スラリー供給装置3における運転開始処理の終了が通知される。コーティング装置2では、その通知を受けて、既に暖機運転が終了していれば直ちに、暖機運転が終了していなければ暖機運転の終了後に、スラリーからドライゲル粉体を生成して捕集するコーティング処理が開始される。
【0113】
コーティング装置2におけるコーティング処理の実行中も含めて、減圧ポンプ74がオンであり、開閉弁64が開である間は、流量計65により計測される流量が目標値に一致するように、圧力調整弁78の開度の調整が続けられる。
【0114】
<コーティング装置における運転終了処理>
図4は、コーティング装置2で実行される運転終了処理の流れを示すフローチャートである。
【0115】
コーティング装置2におけるコーティング処理が終了されると、制御部91により、運転終了処理が実行される。
【0116】
コーティング装置2における運転終了処理では、分散エアヒータ29およびアシストエアヒータ41がオンからオフに切り替えられる(ステップS21)。一方、分散エア供給源(図示せず)による分散エアの供給およびエア供給源38によるアシストエアの供給が継続されるとともに、ブロワ57の作動が継続される。これにより、分散エアヒータ29およびアシストエアヒータ41が作動(発熱)していない状態で、分散混合部11、搬送乾燥部12、分級部13および第2捕集部15をエアが通過し、コーティング装置2の各部が冷却される。
【0117】
その後、コーティング装置2の各部の冷却が完了したか否かが判断される(ステップS22)。たとえば、分散エアヒータ29およびアシストエアヒータ41のオフから所定時間が経過したことにより、コーティング装置2の各部の冷却が完了したと判断されてもよいし、分散混合部11、搬送乾燥部12または分級部13内に温度センサが設けられて、その温度センサで検出されるエアの温度が所定温度以下に低下したことにより、コーティング装置2の各部の冷却が完了したと判断されてもよい。
【0118】
コーティング装置2の各部の冷却が完了したと判断されると(ステップS22のYES)、分散エア供給源による分散エアの供給およびエア供給源38によるアシストエアの供給がオフ(停止)されるとともに、ブロワ57がオフ(停止)されて(ステップS23)、コーティング装置2における運転終了処理が終了され、コーティング装置2の運転が終了となる。コーティング装置2の運転(運転終了処理)が終了すると、コーティング装置2の制御部91からスラリー供給装置3の制御部92に、コーティング装置2の運転の終了が通知される。
【0119】
<スラリー供給装置における運転終了処理>
図5は、スラリー供給装置3で実行される運転終了処理の流れを示すフローチャートである。
【0120】
スラリー供給装置3の運転終了時には、制御部92により、運転終了処理が行われる。
【0121】
スラリー供給装置3における運転終了処理では、コーティング装置2の運転が終了したか否かが判断される(ステップS31)。コーティング装置2の制御部91からスラリー供給装置3の制御部92へのコーティング装置2の運転の終了の通知を受けて、制御部92では、コーティング装置2の運転が終了したと判断される(ステップS31のYES)。
【0122】
コーティング装置2の運転が終了したと判断されると(ステップS31のYES)、スラリー供給装置3の運転が直ちに終了されるのではなく、その判断から所定の回収期間が経過するまで、スラリー供給装置3の運転が継続される。すなわち、開閉弁64が開に保持されるとともに、減圧ポンプ74および撹拌モータ83の作動が継続される。
【0123】
回収期間では、コーティング装置2の運転が停止しているので、コーティング装置2の分散混合部11の流路21の圧力が大気圧になっている。一方、スラリー供給装置3では、減圧ポンプ74が作動しているので、スラリータンク61内の圧力P1が大気圧未満になっている。そのため、開閉弁64が開にされていると、コーティング装置2の流路21に設けられているスラリー導入口25における圧力とスラリータンク61内の圧力との圧力差により、スラリー流通路62に残存するスラリーがスラリータンク61内に吸い込まれて回収される。
【0124】
コーティング装置2の運転終了の判断から回収期間が経過すると、開閉弁64が開から閉に切り替えられる(ステップS32)。そして、撹拌モータ83がオフ(停止)にされ、減圧ポンプ74がオフ(停止)にされて(ステップS33)、スラリー供給装置3における運転終了処理が終了されて、スラリー供給装置3の運転が終了となる。
【0125】
<作用効果>
以上のように、コーティング装置2では、スラリーを対象とする処理、具体的には、スラリーからドライゲル粉体を生成して捕集するコーティング処理が実行される。スラリーは、スラリー供給装置3のスラリータンク61内に貯留されている。スラリータンク61内とコーティング装置2のスラリー導入口25との間では、スラリーがスラリー流通路62を通して流通する。
【0126】
コーティング装置2におけるコーティング処理の開始前に、スラリー流通路62を開閉する開閉弁64が閉の状態で、スラリータンク61内の圧力P1を調整する圧力調整弁78の開度が制御されて、スラリータンク61内の圧力P1がコーティング装置2のスラリー導入口25における圧力P2よりも高くされる。その後、スラリータンク61内の圧力P1がスラリー導入口25における圧力P2よりも高い状態(P1>P2)で、開閉弁64が閉から開に切り替えられる。開閉弁64が閉から開に切り替えられると、スラリータンク61内の圧力P1とスラリー導入口25における圧力P2との圧力差により、スラリーがスラリータンク61内からスラリー流通路62を通してスラリー導入口25に供給される。また、コーティング装置2におけるコーティング処理の終了後、開閉弁64が開から閉に切り替えられる。これにより、スラリータンク61内からコーティング装置2のスラリー導入口25へのスラリーの供給が停止される。
【0127】
よって、ポンプを使用せずに、スラリータンク61内からコーティング装置2のスラリー導入口25にスラリーを供給することができ、また、その供給を停止することができる。スラリーの供給にポンプが使用される構成では、ポンプにおけるスラリーと接触する接液部への粒子の噛み込みや、粒子による接液部の摩耗を生じるおそれがある。スラリー供給装置3では、スラリーの供給にポンプが使用されないので、スラリーの供給にポンプが使用される構成に比べて、優れた長期信頼性を発揮することができる。
【0128】
また、コーティング装置2におけるコーティング処理が終了し、さらにコーティング装置2の各部の冷却が完了して、コーティング装置2の運転が終了した後、スラリー導入口25における圧力P2がスラリータンク61内の圧力P1よりも高い状態(P1<P2)で開閉弁64を開とする回収期間が設けられる。
【0129】
回収期間において、スラリー導入口25における圧力P2とスラリータンク61内の圧力P1との圧力差により、コーティング装置2の運転処理の終了後にスラリー流通路62に残存するスラリーをスラリータンク61内に回収することができる。その結果、スラリー流通路62にスラリーが残ることを防止でき、スラリー流通路62にスラリーが乾燥して固着することを防止できる。
【0130】
回収期間では、減圧ポンプ74(減圧機構72)が作動される。減圧ポンプ74の作動により、スラリータンク61内が減圧されて、スラリータンク61内の圧力P1がスラリー導入口25における圧力P2(=大気圧)よりも低くなる。その結果、スラリー導入口25における圧力P2がスラリータンク61内の圧力P1よりも高い状態を生じさせることができる。
【0131】
コーティング装置2では、コーティング処理の開始に先立ち、暖機運転が行われる。スラリー供給装置3では、コーティング装置2の暖機運転の開始前に、減圧ポンプ74を作動させて、減圧ポンプ74が作動した状態で開閉弁64を開とするバブリング撹拌期間が設けられる。
【0132】
バブリング撹拌期間において、スラリー導入口25における圧力P2とスラリータンク61内の圧力P1との圧力差により、スラリー導入口25からスラリー流通路62にエア(大気)が吸い込まれて、スラリー流通路62からスラリータンク61内に貯留されているスラリー中にエアが吹き出し、スラリー中に気泡が発生する。このバブリングにより、スラリータンク61内のスラリーを撹拌することができ、スラリーの分散性を向上させることができる。
【0133】
また、スラリー供給装置3には、スラリータンク61内に設けられ、スラリータンク61内のスラリーを撹拌する撹拌翼81と、撹拌翼81を回転させる駆動力を発生する撹拌モータ83とが備えられている。そして、スラリー供給装置3では、コーティング装置2の暖機運転の開始前に、撹拌モータ83が作動されて、撹拌翼81の回転が開始される。
【0134】
コーティング装置2の暖機運転の開始前に、撹拌翼81の回転により、スラリータンク61内のスラリーを撹拌することができ、スラリーの分散性を向上させることができる。
【0135】
なお、コーティング処理の開始に先立って暖機運転が行われる場合には、暖機運転の開始前にバブリング撹拌期間が設けられるが、暖機運転が行われない場合には、コーティング処理の開始前にバブリング撹拌期間が設けられるとよい。また、コーティング処理の開始に先立って暖機運転が行われる場合には、暖機運転の開始前に撹拌翼81の回転が開始されるが、暖機運転が行われない場合には、コーティング処理の開始前に撹拌翼81の回転が開始されるとよい。
【0136】
スラリー供給装置3には、スラリー流通路62におけるスラリーの流量を計測する流量計65が設けられており、コーティング装置2におけるコーティング処理の実行中、流量計65により計測される流量が目標値に一致するように、圧力調整弁78の開度が制御される。これによって、スラリーをコーティング装置2のスラリー導入口25に安定した流量で供給することができる。
【0137】
<スラリー供給装置における運転開始処理の他の例>
図6は、スラリー供給装置3で実行される運転開始処理の他の例を示すフローチャートである。
【0138】
図3に示される運転開始処理では、コーティング装置2の暖機運転の開始前に、スラリー供給装置3において、撹拌モータ83がオンにされ、減圧ポンプ74がオンにされ、開閉弁64が開にされて、スラリータンク61内のスラリーが撹拌翼81の回転およびバブリングにより撹拌される。これに限らず、コーティング装置2の暖機運転と並行して、スラリー供給装置3において、スラリータンク61内のスラリーが撹拌翼81の回転により撹拌されてもよい。すなわち、スラリー供給装置3では、コーティング装置2の暖機運転の開始がコーティング装置2の制御部91からスラリー供給装置3の制御部92に通知されると、制御部92により、
図6に示される運転開始処理が実行されてもよい。
【0139】
図6に示される運転開始処理では、撹拌モータ83がオフからオンに切り替えられて(ステップS41)、撹拌翼81の回転により、スラリータンク61内に貯留されているスラリーが撹拌される。
【0140】
一方、圧力調整弁78の開度が初期開放値に制御されたうえで(ステップS42)、減圧ポンプ74がオフからオンに切り替えられる(ステップS43)。初期開放値は、減圧ポンプ74がオンの状態でスラリータンク61内の圧力P1が暖機運転中のコーティング装置2のスラリー導入口25における圧力P2よりも高くなる値に設定されている。
【0141】
そして、開閉弁64が閉から開に切り替えられる(ステップS44)。スラリータンク61内の圧力P1が暖機運転中のコーティング装置2のスラリー導入口25における圧力P2よりも高いので、開閉弁64が開にされると、スラリー供給装置3のスラリータンク61内からスラリー流通路62にスラリーが吸い出されて、スラリー流通路62を流れるスラリーがスラリー導入口25から流路21に導入される。
【0142】
開閉弁64が開にされた後、スラリー流通路62を流れるスラリーの流量、つまり流量計65により計測される流量が予め設定された目標値に一致しているか否かが判断される(ステップS45)。スラリーの流量が目標値に一致していない場合(ステップS45のNO)、圧力調整弁78の開度が調整される(ステップS46)。
【0143】
スラリー流通路62を流れるスラリーの流量が目標値に一致すると(ステップS45のYES)、スラリー供給装置3における運転開始処理が終了となり、スラリー供給装置3の制御部92からコーティング装置2の制御部91に、スラリー供給装置3における運転開始処理の終了が通知される。コーティング装置2では、その通知を受けて、既に暖機運転が終了していれば直ちに、暖機運転が終了していなければ暖機運転の終了後に、スラリーからドライゲル粉体を生成して捕集するコーティング処理が開始される。
【0144】
なお、撹拌翼81の回転によるスラリーの撹拌が行われる場合と同様に、コーティング装置2の暖機運転と並行して、スラリー供給装置3において、バブリングによるスラリーの撹拌が行われてもよい。
【0145】
また、コーティング装置2において、コーティング処理の開始に先立って暖機運転が行われる場合には、暖機運転の開始前に撹拌翼81の回転またはバブリングによるスラリーの撹拌が行われてもよく、暖機運転が行われない場合には、コーティング処理の開始前に撹拌翼81の回転またはバブリングによるスラリーの撹拌が行われてもよい。
【0146】
さらには、
図3に示される運転開始処理および
図6に示される運転開始処理では、スラリー流通路62を流れるスラリーの流量が目標値に一致すると、スラリー供給装置3における運転開始処理の終了がスラリー供給装置3の制御部92からコーティング装置2の制御部91に通知されるとした。しかし、コーティング装置2におけるコーティング処理の実行中も含めて、減圧ポンプ74がオンかつ開閉弁64が開である間は、流量計65により計測される流量が目標値に一致するように圧力調整弁78の開度が調整されるので、開閉弁64が閉から開に切り替えられたことに応じて、スラリー流通路62を流れるスラリーの流量が目標値に一致せずとも、スラリー供給装置3における運転開始処理の終了が通知されてもよい。
【0147】
<スラリー供給装置における運転終了処理の他の例>
図7は、スラリー供給装置3で実行される運転終了処理の他の例を示すフローチャートである。
【0148】
コーティング装置2では、コーティング処理の終了後に、各部を冷却する期間が設けられる。
図5に示される運転終了処理によれば、コーティング装置2の各部を冷却する期間中、スラリー供給装置3では、減圧ポンプ74がオンの状態で開閉弁64が開に保持される。これに限らず、コーティング装置2の各部を冷却する期間中、スラリー供給装置3では、開閉弁64が閉じられて、減圧ポンプ74がオフにされてもよい。すなわち、スラリー供給装置3では、
図5に示される運転終了処理に代えて、
図7に示される運転終了処理が実行されてもよい。
【0149】
図7に示される運転終了処理では、制御部92により、コーティング装置2におけるコーティング処理が終了したか否かが判断される(ステップS51)。コーティング処理が終了すると、コーティング装置2の制御部91からスラリー供給装置3の制御部92に、コーティング処理の終了が通知される。この通知を受けて、制御部92では、コーティング装置2におけるコーティング処理が終了したと判断される(ステップS51のYES)。
【0150】
コーティング処理が終了したと判断されると(ステップS51のYES)、開閉弁64が開から閉に切り替えられる(ステップS52)。そして、減圧ポンプ74がオフにされる(ステップS53)。
【0151】
その後、コーティング装置2の運転が終了したか否かが判断される(ステップS54)。コーティング装置2の運転の終了がコーティング装置2の制御部91からスラリー供給装置3の制御部92に通知されると、制御部92では、コーティング装置2の運転が終了したと判断される(ステップS54のYES)。
【0152】
コーティング装置2の運転が終了したと判断されると(ステップS54のYES)、減圧ポンプ74がオフからオンに切り替えられる(ステップS55)。そして、開閉弁64が閉から開に切り替えられる(ステップS56)。
【0153】
コーティング装置2の運転が終了しているので、コーティング装置2の分散混合部11の流路21の圧力が大気圧になっている。一方、スラリー供給装置3では、減圧ポンプ74の作動により、スラリータンク61内の圧力P1が大気圧未満になっている。そのため、開閉弁64が開にされると、コーティング装置2の流路21に設けられているスラリー導入口25における圧力とスラリータンク61内の圧力との圧力差により、スラリー流通路62に残存するスラリーがスラリータンク61内に吸い込まれて回収される。
【0154】
コーティング装置2の運転の終了から所定の回収期間が経過するまで、開閉弁64が開に保持されるとともに、減圧ポンプ74がオンに保持される。コーティング装置2の運転の終了から回収期間が経過すると、開閉弁64が開から閉に切り替えられる(ステップS57)。そして、減圧ポンプ74がオフにされる(ステップS58)。撹拌モータ83は、コーティング装置2の各部を冷却する期間もオンにされており、コーティング装置2の運転の終了から回収期間が経過すると、オフにされる(ステップS58)。以上により、スラリー供給装置3の運転が終了となる。
【0155】
なお、スラリーによっては、回収期間が設けられなくてもよく、回収期間が設けられない場合には、コーティング装置2におけるコーティング処理が終了したことに応じて、開閉弁64が開から閉に切り替えられて、減圧ポンプ74がオフにされるとよい。
【0156】
<スラリー供給装置の他の構成(その1)>
図8は、スラリー供給装置301の構成を図解的に示す断面図である。
図8において、
図1に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号が付された部分の説明を省略する。
【0157】
スラリー供給装置301は、スラリータンク61内のスラリーを循環させる循環撹拌機構101を備えている。循環撹拌機構101には、スラリー循環路102、スラリー循環ポンプ103およびスラリー循環弁104が含まれる。
【0158】
スラリー循環路102の一端は、スラリー流通路62の途中部であって、スラリータンク61の最底部のスラリー流通口63と開閉弁64との間の部分に接続されている。これにより、スラリー循環路102の一端は、スラリー流通路62およびスラリー流通口63を介して、スラリータンク61内に貯留されるスラリーの液面よりも下方の位置で開放されている。また、スラリー循環路102は、スラリータンク61の上部を貫通し、スラリー循環路102の他端は、スラリータンク61内に貯留されるスラリーの液面よりも上方の位置で開放されている。
【0159】
スラリー循環ポンプ103は、スラリー循環路102の途中部に介装されている。
【0160】
スラリー循環弁104は、スラリー循環路102の途中部であって、スラリー循環路102の一端(スラリー流通路62)とスラリー循環ポンプ103との間に介装されている。
【0161】
開閉弁64が閉の状態で、スラリー循環弁104が開にされて、スラリー循環ポンプ103がオンにされると、スラリー循環ポンプ103の働きにより、スラリータンク61内からスラリー流通路62を通してスラリー循環路102にスラリーが吸い出される。スラリー循環路102に吸い出されたスラリーは、スラリー循環路102を流れ、スラリー循環路102からスラリータンク61内に戻される。これにより、スラリータンク61内のスラリーがスラリー循環路102を通して循環することにより、スラリーが撹拌され、スラリーの分散性が向上する。
【0162】
この循環によるスラリーの撹拌は、バブリングによるスラリーの撹拌に代えて行われるとよい。ただし、スラリー供給装置301では、循環によるスラリーの撹拌が行われていない期間に、減圧ポンプ74を作動させて、開閉弁64を開にすることにより、バブリングによるスラリーの撹拌を行うこともできる。
【0163】
また、スラリー供給装置301では、スラリータンク61内に、上撹拌翼105Uおよび下撹拌翼105Lが上下2段に設けられている。
【0164】
下撹拌翼105Lは、回転軸82の下端に取り付けられて、スラリータンク61内の底部に配置されている。下撹拌翼105Lは、スラリータンク61の内底面106との距離を小さくするために、内底面106に沿った形状に形成されている。たとえば、スラリータンク61の内底面の形状が略半球状である場合、下撹拌翼105Lは、その略半球状の内底面106に沿って湾曲した形状に形成される。
【0165】
上撹拌翼105Uは、回転軸82に取り付けられて、下撹拌翼105Lから上方に間隔を空けた位置に配置されている。上撹拌翼105Uは、回転軸82の軸線と直交する方向に直線状に延びている。
【0166】
撹拌モータ83がオンにされると、撹拌モータ83が発生する駆動力により、回転軸82、上撹拌翼105Uおよび下撹拌翼105Lが一体に回転し、上撹拌翼105Uおよび下撹拌翼105Lの回転により、スラリータンク61内に貯留されているスラリーが撹拌される。
【0167】
なお、スラリータンク61の容積によっては、攪拌翼がさらに追加されて、撹拌翼が3段以上に設けられてもよい。
【0168】
また、スラリー供給装置301の圧力調整機構71には、スラリータンク61内を加圧する加圧機構107が設けられてもよい。加圧機構107には、加圧管108および加圧ポンプ109が含まれる。加圧機構107が備えられる構成では、スラリータンク61の上面板75に、加圧口110が形成される。そして、加圧管108の一端が加圧口110に接続され、加圧管108の他端が加圧ポンプ109に接続される。
【0169】
加圧機構107は、減圧機構72と選択的に用いることができる。加圧ポンプ109が作動すると、加圧ポンプ109から加圧管108にエアが送り出され、そのエアが加圧口110を介してスラリータンク61内に供給される。そのため、加圧ポンプ109が作動した状態で、圧力調整弁78の開度が変更されると、スラリータンク61内の圧力が大気圧以上の範囲で変化する。
【0170】
<他の構成(その1)による作用効果>
スラリー供給装置301の構成によれば、
図1に示されるスラリー供給装置3の構成と同様の作用効果に加えて、スラリータンク61内のスラリーを循環により撹拌でき、それによっても、スラリーの分散性を向上させることができる。
【0171】
また、スラリー供給装置301では、スラリータンク61内に、上撹拌翼105Uおよび下撹拌翼105Lが上下2段に設けられている。これにより、スラリー供給装置301では、スラリー供給装置3と比較して、スラリータンク61内のスラリーの上下方向における分散性をさらに向上させることができる(スラリータンク61内のスラリーの分散性に上下方向でむらが生じることを抑制できる)。
【0172】
そのうえ、下撹拌翼105Lがスラリータンク61の内底面106に沿った形状に形成されて、下撹拌翼105Lと内底面106との距離が小さいので、スラリータンク61の底部にあるスラリーまで良好に撹拌できる。その結果、スラリータンク61内のスラリーの分散性がより一層向上する。
【0173】
加圧機構107が設けられた構成では、スラリータンク61内の圧力を大気圧よりも高くすることにより、スラリータンク61内の圧力とコーティング装置2のスラリー導入口25における圧力との圧力差を大きく確保でき、その圧力差によって、スラリーをスラリー導入口25に良好に供給することができる。
【0174】
なお、加圧機構107の加圧源は、加圧ポンプ109に限定されず、工場内で圧縮空気を生成するコンプレッサなどであってもよいし、他の方式によるものであってもよい。
【0175】
<スラリー供給装置の他の構成(その2)>
図9は、スラリー供給装置302の構成を図解的に示す断面図である。
図9において、
図1に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号が付された部分の説明を省略する。
【0176】
スラリー供給装置302は、第1スラリータンク111および第2スラリータンク112を備えている。
【0177】
第1スラリータンク111の最底部には、スラリー流通口113が形成されている。スラリー供給装置302では、スラリー流通路62が第1分割路114および第2分割路115に分割して構成されている。スラリー流通口113には、第1分割路114の一端が接続されている。第1分割路114の他端は、第1三方弁116の第1ポートに接続されている。第2分割路115の一端は、第1三方弁116の第2ポートに接続され、第2分割路115の他端は、コーティング装置2のスラリー導入口25に接続されている。開閉弁64は、第1分割路114の途中部に介装され、流量計65は、第2分割路115に介装されている。
【0178】
第1三方弁116の第3ポートには、第1スラリー移送路117の一端が接続されている。これにより、第1スラリー移送路117の一端は、第1三方弁116、第1分割路114およびスラリー流通口113を介して、第1スラリータンク111内に貯留されるスラリーの液面よりも下方の位置で開放されている。第1スラリー移送路117は、第2スラリータンク112の上部を貫通し、第1スラリー移送路117の他端は、第2スラリータンク112内に貯留されるスラリーの液面よりも上方の位置で開放されている。第1スラリー移送路117の途中部には、第1スラリー移送ポンプ118が介装されている。
【0179】
スラリー流通路62の第1分割路114には、スラリー流通口113と開閉弁64との間において、第1スラリー循環路121の一端が接続されている。これにより、第1スラリー循環路121の一端は、第1分割路114およびスラリー流通口113を介して、第1スラリータンク111内に貯留されるスラリーの液面よりも下方の位置で開放されている。また、第1スラリー循環路121は、第1スラリータンク111の上部を貫通し、第1スラリー循環路121の他端は、第1スラリータンク111内に貯留されるスラリーの液面よりも上方の位置で開放されている。第1スラリー循環路121の途中部には、第1スラリー循環弁122および第1スラリー循環ポンプ123が第1分割路114側からこの順に介装されている。
【0180】
第2スラリータンク112には、第2スラリー移送路131が接続されている。第2スラリー移送路131は、第1分割路132および第2分割路133に分割して構成されている。第2スラリータンク112の最底部には、スラリー流通口134が形成されている、スラリー流通口134には、第1分割路132の一端が接続されている。第1分割路132の他端は、第2三方弁135の第1ポートに接続されている。第2分割路133の一端は、第2三方弁135の第2ポートに接続されている。第2分割路133は、第1スラリータンク111の上部を貫通し、第2分割路133の他端は、第1スラリータンク111内に貯留されるスラリーの液面よりも上方の位置で開放されている。第1分割路132の途中部には、第2スラリー移送弁136および第2スラリー移送ポンプ137がスラリー流通口134側からこの順に介装されている。
【0181】
第2三方弁135の第3ポートには、第2スラリー循環路138の一端が接続されている。第2スラリー循環路138は、第2スラリータンク112の上部を貫通し、第2スラリー循環路138の他端は、第2スラリータンク112内に貯留されるスラリーの液面よりも上方の位置で開放されている。
【0182】
開閉弁64が閉の状態で、第1スラリー循環弁122が開にされて、第1スラリー循環ポンプ123がオンにされると、第1スラリー循環ポンプ123の働きにより、第1スラリータンク111内からスラリー流通路62の第1分割路114を通して第1スラリー循環路121にスラリーが吸い出される。第1スラリー循環路121に吸い出されたスラリーは、第1スラリー循環路121を流れ、第1スラリー循環路121から第1スラリータンク111内に戻される。これにより、第1スラリータンク111内のスラリーが第1スラリー循環路121を通して循環することにより、スラリーが撹拌され、スラリーの分散性が向上する。
【0183】
第2三方弁135の第1ポートと第3ポートとが連通した状態で、第2スラリー移送弁136が開にされて、第2スラリー移送ポンプ137がオンにされると、第2スラリー移送ポンプ137の働きにより、第2スラリータンク112内から第2スラリー移送路131の第1分割路132にスラリーが吸い出される。第1分割路132に吸い出されたスラリーは、第1分割路132を第2三方弁135に向けて流れ、第2三方弁135から第2スラリー循環路138に流れて、第2スラリー循環路138から第2スラリータンク112内に戻される。これにより、第2スラリータンク112内のスラリーが第2スラリー循環路138を通して循環することにより、スラリーが撹拌され、スラリーの分散性が向上する。
【0184】
また、第1三方弁116の第1ポートと第3ポートとが連通し、第2三方弁135の第1ポートと第2ポートとが連通し、第1スラリー循環弁122が閉の状態で、開閉弁64および第2スラリー移送弁136が開にされて、第1スラリー移送ポンプ118および第2スラリー移送ポンプ137がオンにされると、第1スラリー移送ポンプ118の働きにより、第1スラリータンク111内からスラリー流通路62の第1分割路114を通して第1スラリー移送路117にスラリーが吸い出される。第1スラリー移送路117に吸い出されたスラリーは、第1スラリー移送路117を流れ、第1スラリー移送路117から第2スラリータンク112内に流入する。一方、第2スラリー移送ポンプ137の働きにより、第2スラリータンク112内から第2スラリー移送路131の第1分割路132にスラリーが吸い出される。第1分割路132に吸い出されたスラリーは、第1分割路132を第2三方弁135に向けて流れ、第2三方弁135から第2分割路133を流れ、第2分割路133から第1スラリータンク111内に流入する。これにより、スラリーが第1スラリータンク111内と第2スラリータンク112内との間でスラリー流通路62、第1スラリー移送路117および第2スラリー移送路131を通して循環する。スラリーの循環により、スラリーが撹拌され、スラリーの分散性が向上する。
【0185】
また、スラリー供給装置301は、第1スラリータンク111内の圧力を調整する圧力調整機構141を備えている。
【0186】
圧力調整機構141には、第1スラリータンク111内を減圧する減圧機構142が含まれ、減圧機構142には、減圧管143および減圧ポンプ144が含まれる。第1スラリータンク111の上面は、上面板145によって閉鎖されている。上面板145には、減圧口146が形成されている。減圧管143の一端は、減圧口146に接続されている。減圧管143の他端は、減圧ポンプ144に接続されている。
【0187】
圧力調整機構141には、圧力調整管147および圧力調整弁148が含まれる。第1スラリータンク111の上面板145には、圧力調整口149が形成されている。圧力調整管147の一端は、圧力調整口149に接続されている。圧力調整管147の他端は、大気に開放されている。圧力調整弁148は、開度を変更可能な弁であり、圧力調整管147の途中部に介装されている。
【0188】
減圧ポンプ144が作動すると、第1スラリータンク111内の上部に生じている空間(第1スラリータンク111内に貯留されているスラリーの液面と第1スラリータンク111の上面板145との間の空間)から減圧口146を介して減圧管143にエアが吸い出される。そのため、減圧ポンプ144が作動した状態で、圧力調整弁148の開度が変更されると、第1スラリータンク111内の圧力が大気圧以下の範囲で変化する。
【0189】
そして、第1三方弁116の第1ポートと第2ポートとが連通し、第1スラリー循環弁122が閉であり、第1スラリータンク111内の圧力がコーティング装置2のスラリー導入口25における圧力よりも高い状態で、開閉弁64が開にされていると、第1スラリータンク111内の圧力とスラリー導入口25における圧力との圧力差により、スラリーが第1スラリータンク111内からスラリー流通路62を通してスラリー導入口25に供給される。逆に、第1三方弁116の第1ポートと第2ポートとが連通し、第1スラリー循環弁122が閉であり、スラリー導入口25における圧力が第1スラリータンク111内の圧力よりも高い状態で、開閉弁64が開にされていると、スラリー導入口25における圧力と第1スラリータンク111内の圧力との圧力差により、スラリー流通路62内のスラリーが第1スラリータンク111内に回収される。
【0190】
また、第1三方弁116の第1ポートと第2ポートとが連通し、開閉弁64が閉にされた状態で、第1スラリー移送ポンプがオンにされると、第1スラリー移送ポンプ118の働きにより、スラリー流通路62内のスラリーが第1スラリー移送路117を通して第2スラリータンク112内に回収される。
【0191】
第1スラリータンク111内には、スラリーを撹拌するための第1撹拌翼151が設けられている。第1撹拌翼151は、上下方向に延びる第1回転軸152の下端に取り付けられて、第1スラリータンク111内の底部に配置されている。第1回転軸152は、第1スラリータンク111の上面板145の中心または中心付近を貫通して、その上端部が第1スラリータンク111外に突出している。第1回転軸152の第1スラリータンク111外に突出した部分には、第1撹拌モータ153が結合されている。
【0192】
第1撹拌モータ153がオンにされると、第1撹拌モータ153が発生する駆動力により、第1回転軸152、第1撹拌翼151が一体に回転し、第1撹拌翼151の回転により、第1スラリータンク111内に貯留されているスラリーが撹拌される。
【0193】
第2スラリータンク112内には、スラリーを撹拌するための第2撹拌翼154が設けられている。第2撹拌翼154は、上下方向に延びる第2回転軸155の下端に取り付けられて、第2スラリータンク112内の底部に配置されている。第2スラリータンク112の上面は、上面板156によって閉鎖されている。第2回転軸155は、上面板156の中心または中心付近を貫通して、その上端部が第2スラリータンク112外に突出している。第2回転軸155の第2スラリータンク112外に突出した部分には、第2撹拌モータ157が結合されている。
【0194】
第2撹拌モータ157がオンにされると、第2撹拌モータ157が発生する駆動力により、第2回転軸155、第2撹拌翼154が一体に回転し、第2撹拌翼154の回転により、第2スラリータンク112内に貯留されているスラリーが撹拌される。
【0195】
<他の構成(その2)による作用効果>
スラリー供給装置302の構成によれば、
図1に示されるスラリー供給装置3の構成と同様の作用効果に加えて、第1スラリータンク111内のスラリーを第1スラリー循環路121を通して循環させることができ、その循環により第1スラリータンク111内のスラリーを撹拌できる。また、第2スラリータンク112内のスラリーを第2スラリー循環路138を通して循環させることができ、その循環により第2スラリータンク112内のスラリーを撹拌できる。
【0196】
さらには、第1スラリータンク111内と第2スラリータンク112内との間でスラリーを循環させることができ、その循環によっても、第1スラリータンク111内のスラリーおよび第2スラリータンク112内のスラリーを撹拌できる。
【0197】
<スラリー供給装置の他の構成(その3)>
図10は、スラリー供給装置303の構成を図解的に示す断面図である。
図10において、
図9に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、
図10に示されるスラリー供給装置303の構成について、
図9に示されるスラリー供給装置302の構成との相違点を取り上げて説明する。
【0198】
スラリー供給装置303では、スラリー供給装置302の構成から、第1三方弁116および第1スラリー移送路117が省略され、スラリー流通路62が第1分割路114および第2分割路115に分割されていない。
【0199】
また、スラリー供給装置303は、第2スラリータンク112内の圧力を調整する圧力調整機構161を備えている。
【0200】
圧力調整機構161には、第2スラリータンク112内を減圧する減圧機構162が含まれ、減圧機構162には、減圧管163および減圧ポンプ164が含まれる。第2スラリータンク112の上面板156には、減圧口166が形成されており、減圧管163の一端は、減圧口166に接続されている。減圧管163の他端は、減圧ポンプ164に接続されている。
【0201】
圧力調整機構161には、圧力調整管167および圧力調整弁168が含まれる。第2スラリータンク112の上面板156には、圧力調整口169が形成されている。圧力調整管167の一端は、圧力調整口169に接続されている。圧力調整管167の他端は、大気に開放されている。圧力調整弁168は、開度を変更可能な弁であり、圧力調整管167の途中部に介装されている。
【0202】
減圧ポンプ164が作動すると、第2スラリータンク112内の上部に生じている空間(第2スラリータンク112内に貯留されているスラリーの液面と第2スラリータンク112の上面板156との間の空間)から減圧口166を介して減圧管163にエアが吸い出される。そのため、減圧ポンプ164が作動した状態で、圧力調整弁168の開度が変更されると、第2スラリータンク112内の圧力が大気圧以下の範囲で変化する。
【0203】
第2三方弁135の第1ポートと第2ポートとが連通した状態で、第2スラリー移送弁136が開にされて、第2スラリー移送ポンプ137がオンにされると、第2スラリー移送ポンプ137の働きにより、第2スラリータンク112内から第2スラリー移送路131の第1分割路132にスラリーが吸い出される。第1分割路132に吸い出されたスラリーは、第1分割路132を第2三方弁135に向けて流れ、第2三方弁135から第2分割路133を流れ、第2分割路133から第1スラリータンク111内に流入する。これにより、第2スラリータンク112内のスラリーが第1スラリータンク111内に供給される。
【0204】
スラリー供給装置303は、第1スラリータンク111内の圧力と第2スラリータンク112内の圧力との圧力差により、第2スラリータンク112内のスラリーが第1スラリータンク111内に移送される構成であってもよい。
【0205】
すなわち、第2スラリータンク112内のスラリーが第1スラリータンク111内に移送される際に、減圧ポンプ144,164が作動した状態で、圧力調整弁148,168の開度が調整されて、第2スラリータンク112内の圧力が第1スラリータンク111内の圧力よりも高くされてもよい。第2スラリータンク112内の圧力が第1スラリータンク111内の圧力よりも高い状態では、その圧力差により、第2スラリータンク112内のスラリーが第2スラリー移送路131を通して第1スラリータンク111内に供給される。
【0206】
かかる構成が採用される場合、第2スラリー移送ポンプ137が省略されてもよい。
【0207】
また、第1スラリータンク111内の圧力が大気圧未満にされる場合、第2スラリータンク112内が大気圧であれば、第1スラリータンク111内の圧力と第2スラリータンク112内の圧力との圧力差により第2スラリータンク112内から第1スラリータンク111内にスラリーが移送されるので、減圧機構162が省略されてもよい。
【0208】
<他の構成(その3)による作用効果>
スラリー供給装置303の構成によれば、
図9に示されるスラリー供給装置302の構成と同様の作用効果を奏することができる。
【0209】
<スラリー供給装置の他の構成(その4)>
図11は、スラリー供給装置304の構成を図解的に示す断面図である。
図11において、
図9に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。また、
図11では、第2スラリータンク112について、
図10に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。以下では、
図11に示されるスラリー供給装置304の構成について、
図9に示されるスラリー供給装置302の構成との相違点を取り上げて説明する。
【0210】
スラリー供給装置304では、スラリー供給装置302の構成から、第1三方弁116、第2三方弁135、第1スラリー移送路117、第1スラリー移送ポンプ118、第2スラリー移送路131、第2スラリー移送弁136および第2スラリー移送ポンプ137が省略されている。
【0211】
スラリー供給装置304には、多方弁171が設けられている。多方弁171の第1ポートには、第1枝路172の一端が接続されている。第1枝路172の他端は、第1スラリータンク111のスラリー流通口113に接続されている。多方弁171の第2ポートには、接続路173の一端が接続されている。接続路173の他端は、コーティング装置2のスラリー導入口25に接続されている。多方弁171の第3ポートには、第2枝路174の一端が接続されている。第2枝路174の他端は、第2スラリータンク112のスラリー流通口134に接続されている。
【0212】
多方弁171の第1ポートと第2ポートが連通する状態で、第1枝路172と接続路173とが連通する。また、多方弁171の第2ポートと第3ポートとが連通した状態で、接続路173と第2枝路174とが連通する。スラリー供給装置304では、第1枝路172、接続路173および第2枝路174により、コーティング装置2のスラリー導入口25と第1スラリータンク111内または第2スラリータンク112内との間でスラリーを流通させるスラリー流通路62が構成されている。
【0213】
また、開閉弁64には、第1開閉弁175および第2開閉弁176が含まれる。第1開閉弁175は、第1枝路172の途中部に介装されている。第2開閉弁176は、第2枝路174の途中部に介装されている。流量計65は、接続路173に介装されている。
【0214】
スラリー流通路62の第1枝路172には、スラリー流通口113と第1開閉弁175との間において、第1スラリー循環路181の一端が接続されている。これにより、第1スラリー循環路181の一端は、第1枝路172およびスラリー流通口113を介して、第1スラリータンク111内に貯留されるスラリーの液面よりも下方の位置で開放されている。また、第1スラリー循環路181は、第1スラリータンク111の上部を貫通し、第1スラリー循環路121の他端は、第1スラリータンク111内に貯留されるスラリーの液面よりも上方の位置で開放されている。第1スラリー循環路181の途中部には、第1スラリー循環弁182および第1スラリー循環ポンプ183が第1枝路172側からこの順に介装されている。
【0215】
第1開閉弁175が閉の状態で、第1スラリー循環弁182が開にされて、第1スラリー循環ポンプ183がオンにされると、第1スラリー循環ポンプ183の働きにより、第1スラリータンク111内からスラリー流通路62の第1枝路172を通して第1スラリー循環路181にスラリーが吸い出される。第1スラリー循環路181に吸い出されたスラリーは、第1スラリー循環路181を流れ、第1スラリー循環路181から第1スラリータンク111内に戻される。これにより、第1スラリータンク111内のスラリーが第1スラリー循環路181を通して循環することにより、スラリーが撹拌され、スラリーの分散性が向上する。
【0216】
スラリー流通路62の第2枝路174には、スラリー流通口134と第2開閉弁176との間において、第2スラリー循環路184の一端が接続されている。これにより、第2スラリー循環路184の一端は、第2枝路174およびスラリー流通口134を介して、第2スラリータンク112内に貯留されるスラリーの液面よりも下方の位置で開放されている。また、第2スラリー循環路184は、第2スラリータンク112の上部を貫通し、第1スラリー循環路121の他端は、第2スラリータンク112内に貯留されるスラリーの液面よりも上方の位置で開放されている。第2スラリー循環路184の途中部には、第2スラリー循環弁185および第2スラリー循環ポンプ186が第2枝路174側からこの順に介装されている。
【0217】
第2開閉弁176が閉の状態で、第2スラリー循環弁185が開にされて、第2スラリー循環ポンプ186がオンにされると、第2スラリー循環ポンプ186の働きにより、第2スラリータンク112内からスラリー流通路62の第2枝路174を通して第2スラリー循環路184にスラリーが吸い出される。第2スラリー循環路184に吸い出されたスラリーは、第2スラリー循環路184を流れ、第2スラリー循環路184から第2スラリータンク112内に戻される。これにより、第2スラリータンク112内のスラリーが第2スラリー循環路184を通して循環することにより、スラリーが撹拌され、スラリーの分散性が向上する。
【0218】
スラリー供給装置304は、第1スラリータンク111内および第2スラリータンク112内の圧力を選択的に調整する圧力調整機構191を備えている。
【0219】
圧力調整機構191には、第1スラリータンク111内および第2スラリータンク112内を選択的に減圧する減圧機構192が含まれ、減圧機構192には、第1減圧管193、第2減圧管194、三方弁195、減圧合流管196および減圧ポンプ197が含まれる。
【0220】
第1減圧管193の一端は、第1スラリータンク111の上面板145の減圧口146に接続されている。第1減圧管193の他端は、三方弁195の第1ポートに接続されている。第2減圧管194の一端は、第2スラリータンク112の上面板156に形成された減圧口166に接続されている。第2減圧管194の他端は、三方弁195の第2ポートに接続されている。三方弁195の第3ポートには、減圧合流管196の一端が接続されている。減圧合流管196の他端は、減圧ポンプ197に接続されている。
【0221】
また、圧力調整機構191には、圧力調整管147,167および圧力調整弁148,168が含まれる。
【0222】
三方弁195の第1ポートと第3ポートとが連通した状態で、減圧ポンプ197が作動すると、第1スラリータンク111内の上部に生じている空間から減圧口146を介して第1減圧管193にエアが吸い出され、エアが第1減圧管193、三方弁195および減圧合流管196をこの順に流通する。そのため、減圧ポンプ197が作動した状態で、圧力調整弁148の開度が変更されると、第1スラリータンク111内の圧力が大気圧以下の範囲で変化する。
【0223】
そして、多方弁171の第1ポートと第2ポートとが連通し、第1スラリー循環弁182が閉であり、第1スラリータンク111内の圧力がコーティング装置2のスラリー導入口25における圧力よりも高い状態で、第1開閉弁175が開にされていると、第1スラリータンク111内の圧力とスラリー導入口25における圧力との圧力差により、スラリーが第1スラリータンク111内からスラリー流通路62(第1枝路172および接続路173)を通してスラリー導入口25に供給される。逆に、第1スラリー循環弁182が閉であり、スラリー導入口25における圧力が第1スラリータンク111内の圧力よりも高い状態で、第1開閉弁175が開にされていると、スラリー導入口25における圧力と第1スラリータンク111内の圧力との圧力差により、スラリー流通路62(第1枝路172および接続路173)内のスラリーが第1スラリータンク111内に回収される。
【0224】
また、三方弁195の第2ポートと第3ポートとが連通した状態で、減圧ポンプ197が作動すると、第2スラリータンク112内の上部に生じている空間から減圧口166を介して第2減圧管194にエアが吸い出される。そのため、減圧ポンプ197が作動した状態で、圧力調整弁168の開度が変更されると、第2スラリータンク112内の圧力が大気圧以下の範囲で変化する。
【0225】
そして、多方弁171の第2ポートと第3ポートとが連通し、第2スラリー循環弁185が閉であり、第2スラリータンク112内の圧力がコーティング装置2のスラリー導入口25における圧力よりも高い状態で、第2開閉弁176が開にされていると、第2スラリータンク112内の圧力とスラリー導入口25における圧力との圧力差により、スラリーが第2スラリータンク112内からスラリー流通路62(接続路173および第2枝路174)を通してスラリー導入口25に供給される。逆に、第2スラリー循環弁185が閉であり、スラリー導入口25における圧力が第2スラリータンク112内の圧力よりも高い状態で、第2開閉弁176が開にされていると、スラリー導入口25における圧力と第2スラリータンク112内の圧力との圧力差により、スラリー流通路62(接続路173および第2枝路174)内のスラリーが第2スラリータンク112内に回収される。
【0226】
<他の構成(その4)による作用効果>
スラリー供給装置304の構成によれば、
図1に示されるスラリー供給装置3の構成と同様の作用効果を奏することができる。また、スラリー供給装置304では、第1スラリータンク111内に貯留されているスラリーと、第2スラリータンク112に貯留されているスラリーとを選択的に切り替えて、コーティング装置2のスラリー導入口25に供給することができる。
【0227】
第1スラリータンク111の使用後、第1開閉弁175が開にされ、多方弁171の第1ポートと排水ポートとが連通された状態で、第1スラリータンク111内を洗浄液(水など)で洗浄することができ、スラリーを洗い流した洗浄液を多方弁171の排水ポートから排出(排水)することができる。
【0228】
第2スラリータンク112の使用後、第2開閉弁176が開にされ、多方弁171の第3ポートと排水ポートとが連通された状態で、第2スラリータンク112内を洗浄液(水など)で洗浄することができ、スラリーを洗い流した洗浄液を多方弁171の排水ポートから排出(排水)することができる。
【0229】
<スラリー供給装置の他の構成(その5)>
図12は、スラリー供給装置305の構成を図解的に示す断面図である。
図12において、
図11に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。以下では、
図12に示されるスラリー供給装置305の構成について、
図11に示されるスラリー供給装置304の構成との相違点を取り上げて説明する。
【0230】
スラリー供給装置305では、
図11に示されるスラリー供給装置304の構成に、三方弁201,202,203、第1スラリー排出路204、第2スラリー排出路205、スラリー共通路206、第1スラリー供給路207、第2スラリー供給路208およびスラリー移送ポンプ209が追加されている。
【0231】
三方弁201は、スラリー流通路62の第1枝路172途中部であって、多方弁171と第1開閉弁175との間の部分に介装されている。具体的には、第1枝路172は、第1スラリータンク111のスラリー流通口113に接続されたタンク側部分と、多方弁171の第1ポートに接続された多方弁側部分とに分割されている。タンク側部分は、三方弁201の第1ポートに接続さている。多方弁側部分は、三方弁201の第2ポートに接続されている。
【0232】
三方弁202は、スラリー流通路62の第2枝路174の途中部であって、多方弁171と第2開閉弁176との間の部分に介装されている。具体的には、第2枝路174は、第2スラリータンク112のスラリー流通口134に接続されたタンク側部分と、多方弁171の第3ポートに接続された多方弁側部分とに分割されている。タンク側部分は、三方弁202の第1ポートに接続さている。多方弁側部分は、三方弁202の第2ポートに接続されている。
【0233】
三方弁201の第3ポートに、第1スラリー排出路204の一端が接続されている。また、三方弁202の第3ポートに、第2スラリー排出路205の一端が接続されている。第1スラリー排出路204および第2スラリー排出路205の各他端は、スラリー共通路206の一端に合流して接続されている。
【0234】
スラリー共通路206の他端は、三方弁203の第1ポートに接続されている。三方弁203の第2ポートには、第1スラリー供給路207の一端が接続されている。第1スラリー供給路207は、第1スラリータンク111の上部を貫通し、第1スラリー供給路207の他端は、第1スラリータンク111内に貯留されるスラリーの液面よりも上方の位置で開放されている。三方弁203の第3ポートには、第2スラリー供給路208の一端が接続されている。第2スラリー供給路208は、第2スラリータンク112の上部を貫通し、第2スラリー供給路208の他端は、第2スラリータンク112内に貯留されるスラリーの液面よりも上方の位置で開放されている。
【0235】
スラリー移送ポンプ209は、スラリー共通路206の途中部に介装されている。
【0236】
多方弁171の第1ポートと第2ポートとが連通し、三方弁201の第1ポートと第2ポートとが連通し、第1スラリー循環弁182が閉であり、第1スラリータンク111内の圧力がコーティング装置2のスラリー導入口25における圧力よりも高い状態で、第1開閉弁175が開にされていると、第1スラリータンク111内の圧力とスラリー導入口25における圧力との圧力差により、スラリーが第1スラリータンク111内からスラリー流通路62(第1枝路172および接続路173)を通してスラリー導入口25に供給される。逆に、第1スラリー循環弁182が閉であり、スラリー導入口25における圧力が第1スラリータンク111内の圧力よりも高い状態で、第1開閉弁175が開にされていると、スラリー導入口25における圧力と第1スラリータンク111内の圧力との圧力差により、スラリー流通路62(第1枝路172および接続路173)内のスラリーが第1スラリータンク111内に回収される。
【0237】
また、多方弁171の第2ポートと第3ポートとが連通し、三方弁202の第1ポートと第2ポートが連通し、第2スラリー循環弁185が閉であり、第2スラリータンク112内の圧力がコーティング装置2のスラリー導入口25における圧力よりも高い状態で、第2開閉弁176が開にされていると、第2スラリータンク112内の圧力とスラリー導入口25における圧力との圧力差により、スラリーが第2スラリータンク112内からスラリー流通路62(接続路173および第2枝路174)を通してスラリー導入口25に供給される。逆に、第2スラリー循環弁185が閉であり、スラリー導入口25における圧力が第2スラリータンク112内の圧力よりも高い状態で、第2開閉弁176が開にされていると、スラリー導入口25における圧力と第2スラリータンク112内の圧力との圧力差により、スラリー流通路62(接続路173および第2枝路174)内のスラリーが第2スラリータンク112内に回収される。
【0238】
<他の構成(その5)による作用効果>
スラリー供給装置305の構成によれば、
図11に示されるスラリー供給装置304の構成と同様の作用効果を奏することができる。
【0239】
三方弁201の第1ポートと第3ポートとが連通し、三方弁203の第1ポートと第2ポートとが連通し、第2開閉弁176が閉にされた状態で、第1開閉弁175が開にされて、スラリー移送ポンプ209がオンにされると、スラリー移送ポンプ209の働きにより、第1スラリータンク111内からスラリー流通路62の第1枝路172にスラリーが吸い出される。第1枝路172に吸い出されたスラリーは、三方弁201から第1スラリー排出路204、スラリー共通路206、三方弁203および第1スラリー供給路207をこの順に流通し、第1スラリー供給路207から第1スラリータンク111内に戻される。これにより、第1スラリー循環路181を通さなくても、第1スラリータンク111内のスラリーを第1スラリー排出路204などを通して循環させることができる。
【0240】
三方弁202の第1ポートと第3ポートとが連通し、三方弁203の第1ポートと第3ポートとが連通し、第1開閉弁175が閉にされた状態で、第2開閉弁176が開にされて、スラリー移送ポンプ209がオンにされると、スラリー移送ポンプ209の働きにより、第2スラリータンク112内からスラリー流通路62の第2枝路174にスラリーが吸い出される。第2枝路174に吸い出されたスラリーは、三方弁201から第2スラリー排出路205、スラリー共通路206、三方弁203および第2スラリー供給路208をこの順に流通し、第2スラリー供給路208から第2スラリータンク112内に戻される。これにより、第2スラリー循環路184を通さなくても、第2スラリータンク112内のスラリーを第2スラリー排出路205などを通して循環させることができる。
【0241】
三方弁201の第1ポートと第3ポートとが連通し、三方弁203の第1ポートと第3ポートとが連通し、第2開閉弁176が閉にされた状態で、第1開閉弁175が開にされて、スラリー移送ポンプ209がオンにされると、スラリー移送ポンプ209の働きにより、第1スラリータンク111内からスラリー流通路62の第1枝路172にスラリーが吸い出される。第1枝路172に吸い出されたスラリーは、三方弁201から第1スラリー排出路204、スラリー共通路206、三方弁203および第2スラリー供給路208をこの順に流通し、第2スラリー供給路208から第2スラリータンク112内に供給される。これにより、第1スラリータンク111内のスラリーを第2スラリータンク112内に移送することができる。
【0242】
したがって、スラリー供給装置305では、第1スラリー排出路204、スラリー共通路206および第2スラリー供給路208によって、第1スラリー移送路が構成される。第1スラリー移送路の一端は、三方弁201、第1枝路172およびスラリー流通口113を介して、第1スラリータンク111内に貯留されるスラリーの液面よりも下方の位置で開放されている。一方、第1スラリー移送路の他端は、第2スラリータンク112内に貯留されるスラリーの液面よりも上方の位置で開放されている。
【0243】
三方弁202の第1ポートと第3ポートとが連通し、三方弁203の第1ポートと第2ポートとが連通し、第1開閉弁175が閉にされた状態で、第2開閉弁176が開にされて、スラリー移送ポンプ209がオンにされると、スラリー移送ポンプ209の働きにより、第2スラリータンク112内からスラリー流通路62の第2枝路174にスラリーが吸い出される。第2枝路174に吸い出されたスラリーは、三方弁201から第2スラリー排出路205、スラリー共通路206、三方弁203および第1スラリー供給路207をこの順に流通し、第1スラリー供給路207から第1スラリータンク111内に供給される。これにより、第2スラリータンク112内のスラリーを第1スラリータンク111内に移送することができる。
【0244】
したがって、スラリー供給装置305では、第2スラリー排出路205、スラリー共通路206および第1スラリー供給路207によって、第2スラリー移送路が構成される。第2スラリー移送路の一端は、三方弁202、第2枝路174およびスラリー流通口134を介して、第2スラリータンク112内に貯留されるスラリーの液面よりも下方の位置で開放されている。一方、第2スラリー移送路の他端は、第1スラリータンク111内に貯留されるスラリーの液面よりも上方の位置で開放されている。
【0245】
なお、スラリー供給装置305では、スラリー移送ポンプ209が第1スラリー移送ポンプおよび第2スラリー移送ポンプとして共用されている。
【0246】
たとえば、第1スラリータンク111の使用後、第1スラリータンク111内に残ったスラリーを第2スラリータンク112内に移送することにより、第1スラリータンク111内を空にすることができる。そして、第1スラリータンク111内が空にされた後、三方弁201の第1ポートと第2ポートとが連通され、多方弁171の第1ポートと排水ポートとが連通され、第1開閉弁175が開にされた状態で、第1スラリータンク111内を洗浄液で洗浄することができ、スラリーを洗い流した洗浄液を多方弁171の排水ポートから排出(排水)することができる。
【0247】
また、第2スラリータンク112の使用後、第2スラリータンク112内に残ったスラリーを第1スラリータンク111内に移送することにより、第2スラリータンク112内を空にすることができる。そして、第2スラリータンク112内が空にされた後、三方弁201の第1ポートと第2ポートとが連通され、第2開閉弁176が開にされ、多方弁171の第3ポートと排水ポートとが連通された状態で、第2スラリータンク112内を洗浄液で洗浄することができ、スラリーを洗い流した洗浄液を多方弁171の排水ポートから排出(排水)することができる。
【0248】
<スラリー供給装置の他の構成(その6)>
図13は、スラリー供給装置306の構成を図解的に示す断面図である。
図13において、
図8に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。以下では、
図13に示されるスラリー供給装置306の構成について、
図8に示されるスラリー供給装置301の構成との相違点を取り上げて説明する。
【0249】
スラリー供給装置306では、スラリー流通路62が第1部分211、第2部分212、第3部分213に分割して構成されている。第3部分213は、接続部214,215において、それぞれ第1部分211の一端および第2部分212の一端に対して接続/分離可能な管に形成されている。第1部分211の他端は、スラリータンク61のスラリー流通口63に接続されている。第2部分212の他端は、コーティング装置2のスラリー導入口25に接続されている。
【0250】
スラリー供給装置306では、流量計65が第3部分213の途中部に設けられて、接続部214が開閉弁64と流量計65との間に設定され、接続部215が流量計65とコーティング装置2のスラリー導入口25との間に設定されている。これに限らず、流量計65が第1部分211の途中部に介装されて、接続部214,215が流量計65とコーティング装置2のスラリー導入口25との間に設定されてもよい。また、流量計65が第2部分212の途中部に介装されて、接続部214,215が開閉弁64と流量計65との間に設定されてもよい。
【0251】
<他の構成(その6)による作用効果>
スラリー供給装置306の構成によれば、
図8に示されるスラリー供給装置301の構成と同様の作用効果を奏することができる。
【0252】
そのうえ、スラリー流通路62の第3部分213を第1部分211および第2部分212から分離させて、第3部分213を第3部分213と管径および/または管長の異なる別の管と交換することができる。第3部分213を交換することにより、スラリー流通路62を流通するスラリーの流量を容易に調節することができる。
【0253】
<変形例>
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
【0254】
たとえば、
図8を参照した説明では、圧力調整機構71に、減圧機構72に加えて、加圧機構107が設けられてもよいとしたが、加圧機構107が設けられる構成では、減圧機構72が省略されてもよい。
【0255】
圧力調整機構71に加圧機構107が設けられた構成では、開度を変更可能な圧力調整弁78に代えて、互いに異なるリリーフ圧に設定された複数(2個以上)のリリーフ弁が採用されてもよい。
【0256】
図14には、2個のリリーフ弁221,222を採用した構成が示されている。この構成では、圧力調整管77が途中で第1枝管223および第2枝管224に分岐している。第1枝管223には、仕切弁225およびリリーフ弁221がスラリータンク61側からその順に介装されている。第2枝管224には、仕切弁226およびリリーフ弁222がスラリータンク61側からその順に介装されている。リリーフ弁221,222は、互いに異なるリリーフ圧に設定されている。
【0257】
そして、スラリー供給装置3の制御部92(
図2参照)は、リリーフ弁221,222の各リリーフ圧の値に基づいて、流量計65により計測される流量が予め設定された目標値により近い値となるように、仕切弁225,226の一方を開とし、その他方を閉とする。これにより、スラリー流通路62を流れるスラリーの流量を目標値または目標値に近い値に安定させることができる。
【0258】
また、圧力調整機構71に減圧機構72が設けられた構成では、開度を変更可能な圧力調整弁78に代えて、互いに異なる開度に設定された複数(2個以上)の絞り弁が採用されてもよい。
【0259】
図15には、2個の絞り弁231,232を採用した構成が示されている。この構成では、圧力調整管77が途中で第1枝管233および第2枝管234に分岐している。第1枝管233には、仕切弁235および絞り弁231がスラリータンク61側からその順に介装されている。第2枝管234には、仕切弁236および絞り弁232がスラリータンク61側からその順に介装されている。絞り弁231,232は、互いに異なる開度に設定されている。
【0260】
そして、スラリー供給装置3の制御部92(
図2参照)は、絞り弁231,232の各開度に基づいて、流量計65により計測される流量が予め設定された目標値により近い値となるように、仕切弁235,236の一方を開とし、その他方を閉とする。これにより、スラリー流通路62を流れるスラリーの流量を目標値または目標値に近い値に安定させることができる。
【0261】
なお、圧力調整機構141,161,191においても、圧力調整機構71と同様の変更を施すことが可能である。
【0262】
また、前述の実施形態では、コーティング装置2の運転の開始前に、減圧ポンプ74がオフからオンに切り替えられて、スラリータンク61内の圧力P1が大気圧未満に低下した状態で、開閉弁64が閉から開に切り替えられることにより、コーティング装置2の分散混合部11のスラリー導入口25からスラリー流通路62にエアが取り込まれて、そのエアがスラリー流通路62からスラリー流通口63を介してスラリータンク61内に貯留されているスラリー中に吹き出すことにより、スラリーがバブリングにより撹拌されるとした。これに限らず、
図16に示される構成が採用されて、スラリーをバブリングによって撹拌するために、エア供給機構241により、スラリータンク61内に貯留されているスラリー中に供給されてもよい。
【0263】
エア供給機構241には、エア供給路242およびエア供給ポンプ243が含まれる。エア供給路242の一端は,スラリー流通路62の途中部であって、スラリータンク61の最底部のスラリー流通口63と開閉弁64との間の部分に接続されている。エア供給路242の他端は、エア供給ポンプ243に接続されている。
【0264】
たとえば、コーティング装置2の運転の開始前に、開閉弁64が閉の状態で、エア供給ポンプ243がオンにされる。エア供給ポンプ243がオンにされると、エア供給ポンプ243の働きにより、エア供給路242をエア供給ポンプ243側からスラリー流通路62に向けてエアが流れ、そのエアがスラリー流通路62からスラリー流通口63を介してスラリータンク61内に貯留されているスラリー中に吹き出し、スラリー中に気泡が発生する。このバブリングにより、スラリータンク61内のスラリーを撹拌することができ、スラリーの分散性を向上させることができる。
【0265】
図16に示される構成では、コーティング装置2の運転の開始前に限らず、コーティング装置2におけるコーティング処理の実行中にも、開閉弁64を一時的に閉にして、エア供給ポンプ243をオンにすることにより、スラリータンク61内のスラリーをバブリングにより撹拌することができる。
【0266】
流量検出部の一例として、流量計65を取り上げたが、スラリー流通路62におけるスラリーの流量は、流量計65を用いる方式以外の方式によって検出されてもよい。たとえば、スラリーおよびスラリータンク61を含む機器の重量を時間的に連続で検出できるロードセルなどの重量検出機器を用いて、スラリーおよびスラリータンク61を含む機器の重量の時間変化から、スラリータンク61内のスラリーが流出する速度(流量)を求めてもよい。
【0267】
また、前述の実施形態では、開閉弁64は、仕切弁であるとしたが、第1ポートと第2ポートが連通する状態と、第1ポートと第3ポートが連通する状態とに切り替えられる三方弁であってもよい。その場合、たとえば、
図1に示される構成において、スラリータンク61内と連通する第1管が三方弁である開閉弁64の第1ポートに接続され、コーティング装置2のスラリー導入口25と連通する第2管が開閉弁64の第2ポートに接続され、先端が大気に開放される第3管が開閉弁64の第3ポートに接続される。バブリング撹拌期間では、開閉弁64は、第1ポートと第2ポートが連通する状態と、第1ポートと第3ポートが連通する状態とのいずれの状態に切り替えられてもよい。
【0268】
その他、前述の各構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0269】
1:スラリー処理システム
2:コーティング装置(処理装置)
3,301,302,302,304,205,306:スラリー供給装置
11:分散混合部(分散部)
21:流路
24:分散エア導入口(気流導入口)
25:スラリー導入口(スラリー導入部)
26:ラバルノズル
61:スラリータンク
62:スラリー流通路
64:開閉弁
65:流量計
71,141,161,191:圧力調整機構
72,142,162,192:減圧機構
77,147,167:圧力調整管
78,148,168:圧力調整弁
81:撹拌翼
83:撹拌モータ
92:制御部
102:スラリー循環路
103:スラリー循環ポンプ
105L:下撹拌翼(撹拌翼)
105U:上撹拌翼(撹拌翼)
111:第1スラリータンク
112:第2スラリータンク
117:第1スラリー移送路
118:第1スラリー移送ポンプ
121:第1スラリー循環路
123:第1スラリー循環ポンプ
131:第2スラリー移送路
137:第2スラリー移送ポンプ
138:第2スラリー循環路
151:第1撹拌翼(撹拌翼)
153:第1撹拌モータ(撹拌モータ)
154:第2撹拌翼(撹拌翼)
157:第2撹拌モータ(撹拌モータ)
181:第1スラリー循環路
183:第1スラリー循環ポンプ
184:第2スラリー循環路
186:第2スラリー循環ポンプ
204:第1スラリー排出路(第1スラリー移送路)
205:第2スラリー排出路(第2スラリー移送路)
206:スラリー共通路(第1スラリー移送路、第2スラリー移送路)
207:第1スラリー供給路(第2スラリー移送路)
208:第2スラリー供給路(第1スラリー移送路)
209:スラリー移送ポンプ(第1スラリー移送ポンプ、第2スラリー移送ポンプ)
213:第3部分(管)
221,222:リリーフ弁
231,232:絞り弁
241:エア供給機構