(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003931
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】慣性センサー、慣性センサーの製造方法、及び慣性計測装置
(51)【国際特許分類】
G01P 15/08 20060101AFI20240109BHJP
G01P 15/125 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G01P15/08 102Z
G01P15/125 Z
G01P15/08 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103298
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】梅野 智和
(57)【要約】
【課題】検出部と蓋体との間隔を一定とし、安定したセンサー特性を有する慣性センサー等を提供する。
【解決手段】慣性センサー1は、基板10と、蓋体20と、基板10と蓋体20との間の空間に収容される可動体31及び固定体32と、を有し、可動体31の周囲において、基板10と蓋体20の間に第1部分34が介在する構造体30と、可動体31の周囲において、構造体30の第1部分34と蓋体20とを接合する接合材60と、構造体30の第1部分34の一部に設けられた凹部35と、平面視で、凹部35と重なる位置に設けられ、接合材60の高さを制御する制御部36と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、蓋体と、前記基板と前記蓋体との間の空間に収容される可動体及び固定体と、を有し、
前記可動体の周囲において、前記基板と前記蓋体の間に第1部分が介在する構造体と、
前記可動体の周囲において、前記構造体の前記第1部分と前記蓋体とを接合する接合材と、
前記構造体の前記第1部分の一部に設けられた凹部と、
平面視で、前記凹部と重なる位置に設けられ、前記接合材の高さを制御する制御部と、を備える、
慣性センサー。
【請求項2】
前記構造体は、矩形であり、前記制御部は、前記構造体の少なくとも1辺に沿って配置される、
請求項1に記載の慣性センサー。
【請求項3】
前記制御部は、前記構造体に設けられる、
請求項1又は請求項2に記載の慣性センサー。
【請求項4】
前記制御部は、前記蓋体に設けられる、
請求項1又は請求項2に記載の慣性センサー。
【請求項5】
前記固定体は、固定電極を備え、
前記可動体は、前記固定電極と異なる厚さの可動電極を備え、
前記凹部は、前記固定電極又は前記可動電極と同時に形成される、
請求項1又は請求項2に記載の慣性センサー。
【請求項6】
可動体と、固定体と、前記可動体の周囲に設けられた第1部分と、構造体の前記第1部分の一部に設けられた凹部と、を備える前記構造体を基板上に形成する工程と、
平面視で、前記凹部と重なる位置に、前記構造体又は蓋体に制御部を形成する工程と、
前記制御部を用いて接合材の厚みを制御して、前記可動体の周囲において、前記構造体の前記第1部分と前記蓋体とを前記接合材により接合する工程と、を含む、
慣性センサーの製造方法。
【請求項7】
前記固定体は、固定電極を備え、
前記可動体は、前記固定電極と異なる厚さの可動電極を備え、
前記凹部は、前記固定電極又は前記可動電極と同時に形成される、
請求項6に記載の慣性センサーの製造方法。
【請求項8】
前記制御部を形成する工程は、前記固定電極又は前記可動電極の形成と同時に行われる、
請求項7に記載の慣性センサーの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の慣性センサーと、
前記慣性センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路と、を備える、
慣性計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性センサー、慣性センサーの製造方法、及び慣性計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加速度等の物理量を素子部の容量変化として検出する慣性センサーが開発されている。このような慣性センサーとして、例えば特許文献1には、物理量を検出する素子部を備えた基板と、基板と共に素子部を収容する収容空間を構成する蓋体と、を素子部周辺に配置した接合材により接合した機能素子としての慣性センサーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された慣性センサーは、基板と蓋体とを接合する際に接合材の高さを制御することができないため、素子部と蓋体との間隔にばらつきが生じ、センサー特性に影響を及ぼす虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
慣性センサーは、基板と、蓋体と、前記基板と前記蓋体との間の空間に収容される可動体及び固定体と、を有し、前記可動体の周囲において、前記基板と前記蓋体の間に第1部分が介在する構造体と、前記可動体の周囲において、前記構造体の前記第1部分と前記蓋体とを接合する接合材と、前記構造体の前記第1部分の一部に設けられた凹部と、平面視で、前記凹部と重なる位置に設けられ、前記接合材の高さを制御する制御部と、を備える。
【0006】
慣性センサーの製造方法は、可動体と、固定体と、前記可動体の周囲に設けられた第1部分と、構造体の前記第1部分の一部に設けられた凹部と、を備える前記構造体を基板上に形成する工程と、平面視で、前記凹部と重なる位置に、前記構造体又は蓋体に制御部を形成する工程と、前記制御部を用いて接合材の厚みを制御して、前記可動体の周囲において、前記構造体の前記第1部分と前記蓋体とを前記接合材により接合する工程と、を含む。
【0007】
慣性計測装置は、上記に記載の慣性センサーと、前記慣性センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る慣性センサーの概略構造を示す平面図。
【
図14】第2実施形態に係る慣性センサーの概略構造を示す断面図。
【
図15】第3実施形態に係る慣性センサーを備えた慣性計測装置の概略構造を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第1実施形態
先ず、第1実施形態に係る慣性センサー1について、鉛直方向の加速度を検出する加速度センサーを一例として挙げ、
図1、
図2、及び
図3を参照して説明する。
【0010】
尚、
図1において、慣性センサー1の内部の構成を説明する便宜上、蓋体20を取り外した状態を図示している。また、以降の平面図、断面図、斜視図には、説明の便宜上、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、及びZ軸を図示している。また、X軸に沿う方向を「X方向」、Y軸に沿う方向を「Y方向」、Z軸に沿う方向を「Z方向」と言う。また、各軸方向の矢印先端側を「プラス側」、基端側を「マイナス側」、Z方向プラス側を「上」、Z方向マイナス側を「下」とも言う。また、Z方向は、鉛直方向に沿い、XY平面は、水平面に沿っている。また、本明細書では、プラスZ方向とマイナスZ方向とを合わせてZ方向と呼ぶ。
【0011】
本実施形態に係る慣性センサー1は、
図1、
図2、及び
図3に示すように、鉛直方向であるZ方向の加速度を検出することができる。このような慣性センサー1は、基板10と、蓋体20と、可動体31、固定体32、及び枠体33を有する構造体30と、を備える。
【0012】
基板10は、
図1に示すように、X方向及びY方向に広がりを有する矩形で、Z方向を厚さとする。また、基板10は、
図2に示すように、基板10の上面から下方に窪む凹部11が形成されている。この凹部11は、Z方向からの平面視で、加速度を検出する可動体31と固定体32とを内側に内包し、可動体31及び固定体32よりも大きく形成されている。凹部11は、可動体31を揺動するための逃げ部として機能する。また、基板10は、
図3に示すように、凹部11の底面から可動体31及び固定体32側に突出している支持部12を有し、支持部12の上に可動体31及び固定体32を接合し固定している。これにより、可動体31及び固定体32を、凹部11の底面と離間させた状態で基板10に固定することができる。
【0013】
基板10としては、例えば、シリコン基板を用いることができる。ただし、これに特に限定されず、例えば、ガラス基板や石英基板を用いてもよい。
【0014】
蓋体20は、
図2に示すように、上方に窪む凹部21が基板10の凹部11と重なる位置に形成されている。蓋体20は、凹部21内に可動体31及び固定体32を収容して基板10の上に接合されている。より具体的には、基板10上に接合された構造体30上に接合材60を介して接合されている。そして、蓋体20の凹部21及び基板10の凹部11によって、その内側に、可動体31及び固定体32を収容する内部空間Sが形成されている。
また、蓋体20のプラスX方向の端部で、構造体30の枠体33に形成された凹部35に対向する部分は、可動体31及び固定体32を取り囲む領域の板厚よりも厚く、枠体33の凹部35内に形成された制御部36と対向する位置に上方に窪む凹部22が形成されている。
【0015】
内部空間Sは、気密空間であり、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが封入され、使用温度が-40℃~125℃程度で、ほぼ大気圧となっていることが好ましい。ただし、内部空間Sの雰囲気は、特に限定されず、例えば、減圧状態であってもよいし、加圧状態であってもよい。
【0016】
蓋体20としては、例えば、シリコン基板を用いることができる。ただし、これに特に限定されず、例えば、ガラス基板や石英基板を用いてもよい。
【0017】
構造体30は、
図1に示すように、X方向及びY方向に広がりを有する矩形で、Z方向を厚さとする。また、
図1及び
図2に示すように、可動体31、固定体32、及び枠体33で構成されている。また、構造体30は、可動体31の周囲において、基板10と蓋体20の間に第1部分34が介在し、構造体30の第1部分34及び可動体31の周囲の枠体33と蓋体20とが接合材60で接合されている。尚、構造体30は、例えば、リン(P)、ボロン(B)、砒素(As)等の不純物がドープされた導電性のシリコン基板をエッチング、特に、深堀エッチング技術であるボッシュ・プロセスによって垂直加工することにより形成される。
【0018】
可動体31は、基板10の凹部11の底面から突出している支持部12に固定される固定部40と、固定部40からX方向両側に延在する2つの梁部41と、2つの梁部41と連結し固定体32を取り囲む支持部42と、プラスY方向側の支持部42からマイナスY方向に延在する複数の可動電極43と、を有している。また、可動電極43は、櫛歯状に配置され、X方向からの平面視で、固定体32の固定電極51と重なる領域に可動電極43の上面から下方に窪む凹部44が形成されている。また、固定電極51に固定電極51の上面から下方に窪む凹部(図示せず)が形成されてもよい。つまり、固定体32と異なる厚さの可動電極43を備えている。尚、可動体31は、Z方向の加速度が加わると、2つの梁部41を回転軸とし、支持部42と可動電極43とがZ方向に揺動する、所謂片側シーソー構造となっている。
【0019】
固定体32は、基板10の凹部11の底面から突出している支持部12に固定される固定部50と、固定部50からプラスY方向に延在する複数の固定電極51と、を有している。また、固定電極51は、櫛歯状に配置されている。また、可動電極43と固定電極51とが、X方向において対向するように配置され、櫛歯構造80を成している。そのため、Z方向の加速度が加わると、可動電極43がZ方向に変位するので、可動電極43と固定電極51との対向面積が変化し可動電極43と固定電極51との間の静電容量の変化として加速度を検出することができる。
【0020】
尚、本実施形態では、可動電極43に上面から下方に窪む凹部44が設けられているため、マイナスZ方向の加速度が加わると、可動電極43がマイナスZ方向に変位し、可動電極43と固定電極51との対向面積が減少するので、加速度を検出することができる。しかし、プラスZ方向の加速度が加わった場合は、可動電極43がプラスZ方向に変位しても可動電極43と固定電極51との対向面積は一定に維持され、加速度を検出することができない。そのため、可動電極43と固定電極51とを同様に構成し、固定電極51に上面から下方に窪む凹部を設けた検出部をもう一組配置することで、プラスZ方向の加速度を検出することができる。
【0021】
枠体33は、可動体31の周囲において、基板10の外周部に沿って基板10上に接合されている。枠体33は、下面に熱酸化して形成した酸化シリコン(SiO2)の絶縁膜37を介して、例えば、陽極接合やプラズマ照射によって活性化させた接合面同士を接合させる活性化接合により基板10に接合されている。
【0022】
枠体33の可動体31及び固定体32を挟みプラスX方向側の第1部分34の一部には、上面から下方に窪む凹部35が設けられており、Z方向からの平面視で、凹部35と重なる位置には、蓋体20の凹部22に対向する位置に上方に突出する制御部36が設けられている。また、制御部36は、構造体30に設けられ、構造体30のプラスX方向側の1辺に沿って配置されている。制御部36を設けることで接合材60の高さを制御することがきる。また、凹部35の上面から底面までの深さt1は、可動体31の可動電極43に設けられた凹部44の上面から底面までの深さt2と略同じである。これは、枠体33の凹部35と可動電極43の凹部44とがエッチングにより同時に形成されているためである。尚、本実施形態では、制御部36が構造体30のプラスX方向側の1辺に沿って配置されているが、これに限定されず、構造体30のプラスY方向側の1辺やマイナスY方向側の1辺に沿って配置してもよいし、複数辺に沿って配置してもよい。
【0023】
また、枠体33の可動電極43及び固定電極51を挟みマイナスX方向の上面には、絶縁膜37を介して可動電極43及び固定電極51と電気的に接続する複数の配線38と外部端子39とが設けられている。
【0024】
外部端子39aは、枠体33及び可動体31の固定部40に設けられた配線38aを介して可動体31の可動電極43に電気的に接続されている。また、外部端子39bは、枠体33、可動体31の固定部40、及び固定体32の固定部50に設けられた配線38bを介して固定体32の固定電極51に電気的に接続されている。また、絶縁膜37は、配線38や外部端子39と構造体30との絶縁をするだけでなく、枠体33と可動体31の固定部40との配線38の架橋構造や可動体31の固定部40と固定体32の固定部50との配線38の架橋構造を補強するために配置されている。
【0025】
尚、配線38及び外部端子39の構成材料は、例えば、Al、AlCu、Ti、TiN等の金属単層もしくは、Al、AlCu、Ti、TiN等で構成される複数層である。また、配線38a,38b及び外部端子39a,39b以外の配線38及び外部端子39は、図示しないX方向の加速度を検出する加速度センサーや図示しないY方向の加速度を検出する加速度センサーとの電気的接続に用いられる。
【0026】
以上述べたように、本実施形態の慣性センサー1は、蓋体20を接合する構造体30の第1部分34に凹部35を設け、凹部35内に蓋体20側に突出する制御部36が設けられているので、蓋体20を構造体30に接合する際に制御部36を蓋体20に接触されることにより接合材60の高さを制御することができる。そのため、検出部となる可動体31及び固定体32と蓋体20との間隔にばらつきが生じるのを抑制でき、安定したセンサー特性を有する慣性センサー1を得ることができる。
【0027】
次に、本実施形態に係る慣性センサー1の製造方法について、可動体31、固定体32、及び凹部35の製造方法を主に、
図4~
図13を参照して説明する。
【0028】
先ず、シリコン基板から構成される構造体基板30aを熱酸化し、構造体基板30aの上下両面に酸化シリコン(SiO
2)である絶縁膜37を形成する。その後、
図4に示すように、基板10の上面から下方に窪む凹部11を有する基板10上に絶縁膜37を形成した構造体基板30aを接合する。尚、基板10と構造体基板30aとの接合方法としては、例えば、陽極接合やプラズマ照射によって活性化させた接合面同士を接合させる活性化接合等を用いることができる。
【0029】
次に、フォトリソ技術を用いて、絶縁膜37上に配線38及び外部端子39を形成する。尚、配線38及び外部端子39パターン下の絶縁膜37以外は、除去されている。その後、
図5に示すように、スパッタ法により構造体基板30a上に酸化シリコン(SiO
2)である絶縁膜37bを成膜する。その後、絶縁膜37b上にレジスト70を塗布し、フォトリソ技術を用いて、
図6に示すように、可動体31、固定体32、枠体33、凹部35、及び制御部36等のパターンを形成する。
【0030】
次に、
図7に示すように、レジスト70から露出した絶縁膜37bを厚みが所望の厚みになるまでエッチングする。その後、レジスト70を除去した後に、再度絶縁膜37b上にレジスト70aを塗布し、フォトリソ技術を用いて、
図8に示すように、可動体31、固定体32、及び枠体33等のパターンを形成する。
【0031】
次に、レジスト70aから露出した絶縁膜37bをエッチングし除去する。その後、
図9に示すように、レジスト70aや絶縁膜37bから露出した構造体基板30aをエッチングし除去する。
【0032】
次に、レジスト70aを除去した後に、絶縁膜37bをエッチングし、
図10に示すように、厚みの薄い絶縁膜37bを除去する。その後、残った絶縁膜37bを保護膜として、絶縁膜37bから露出した構造体基板30aをエッチングし、
図11に示すように、可動電極43の凹部44と、枠体33の第1部分34に凹部35及び制御部36と、を同時に形成する。従って、制御部36を形成する工程は、固定体32と異なる厚さを有する可動電極43を形成する工程と同時である。尚、凹部44は、可動電極43ではなく固定電極51に形成し、凹部35及び制御部36は、固定電極51の凹部44と同時に形成してもよい。
【0033】
次に、
図12に示すように、構造体基板30aの下面の絶縁膜37をエッチングし除去する。以上の工程までが可動体31と、固定体32と、可動体31の周囲に設けられた第1部分34と、構造体30の第1部分34の一部に設けられた凹部35と、を備える構造体30を基板10上に形成する工程であり、Z方向からの平面視で、凹部35と重なる位置に、構造体30に制御部36を形成する工程である。
【0034】
次に、Z方向からの平面視で、基板10の凹部11と重なる位置に凹部21を有し、構造体30の制御部36と重なる位置に凹部22を有する蓋体20を準備し、構造体30上面で可動体31の周囲に熱硬化性樹脂等の接合材60をディスペンサー等で塗布する。その後、
図13に示すように、Z方向からの平面視で、蓋体20の凹部21を基板10の凹部11と重なる位置に、また、蓋体20の凹部22を構造体30の制御部36と重なる位置に配置し、蓋体20の凹部22の底面が構造体30の制御部36に接触するように蓋体20を押圧して接合材60の厚みが一定となるように制御し、接合材60を加熱硬化させる。以上により、本実施形態の慣性センサー1が完成する。
【0035】
尚、本実施形態では、複数の凹部11を有する大型基板と複数の凹部21を有する大型基板を用いてバッチ処理し、複数の慣性センサー1を同時に製造する方法なので、X方向に沿って隣接する構造体30が有する制御部36により構造体30と蓋体20との並行が保たれ、検出部となる可動体31及び固定体32と蓋体20との間隔を一定にすることができる。従って、本工程が制御部36を用いて接合材60の厚みを制御して、可動体31の周囲において、構造体30の第1部分34と蓋体20とを接合材60により接合する工程である。
【0036】
以上述べたように、本実施形態の慣性センサー1の製造方法は、可動体31と、固定体32と、可動体31の周囲に設けられた第1部分34と、構造体30の第1部分34の一部に設けられた凹部35と、を備える構造体30を基板10上に形成する工程と、Z方向からの平面視で、凹部35と重なる位置に、構造体30に制御部36を形成する工程と、制御部36を用いて接合材60の厚みを制御して、可動体31の周囲において、構造体30の第1部分34と蓋体20とを接合材60により接合する工程と、を含むため、検出部となる可動体31及び固定体32と蓋体20との間隔にばらつきが生じるのを抑制でき、安定したセンサー特性を有する慣性センサー1を製造することができる。
【0037】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る慣性センサー1aについて、
図14を参照して説明する。
【0038】
本実施形態の慣性センサー1aは、第1実施形態の慣性センサー1に比べ、制御部36aが蓋体20aに形成されていること以外は、第1実施形態の慣性センサー1と同様である。尚、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0039】
慣性センサー1aは、
図14に示すように、基板10、蓋体20a、及び構造体30cを備える。
蓋体20aは、蓋体20aのプラスX方向の端部で、構造体30cの枠体33に形成された凹部35に対向する位置に凹部35側に突出する制御部36aが形成されている。従って、慣性センサー1aの製造方法では、Z方向からの平面視で、凹部35と重なる位置に、蓋体20aに制御部36aを形成する工程が含まれる。
【0040】
このような構成とすることで、蓋体20aの制御部36aと構造体30cの凹部35の底面とを接触されることにより接合材60の高さを制御することができ、第1実施形態の慣性センサー1と同等の効果を得ることができる。
【0041】
3.第3実施形態
次に、第3実施形態に係る慣性センサー1,1aを備えた慣性計測装置2000について、
図15及び
図16を参照して説明する。
図15に示す慣性計測装置2000(IMU:Inertial Measurement Unit)は、自動車やロボットなどの運動体の姿勢や挙動などの慣性運動量を検出する装置である。慣性計測装置2000は、3軸に沿った方向の加速度ax、ay、azを検出する加速度センサーと、3軸回りの角速度ωx,ωy,ωzを検出する角速度センサーと、を備えた、いわゆる6軸モーションセンサーである。尚、以下では、慣性センサー1を適用した構成を例示して説明する。
【0042】
慣性計測装置2000は、平面形状が略正方形の直方体である。また正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に、マウント部としてのネジ穴2110が形成されている。この2ヶ所のネジ穴2110に2本のネジを通して、自動車などの被装着体の被装着面に慣性計測装置2000を固定することができる。なお、部品の選定や設計変更により、例えば、スマートフォンやデジタルカメラに搭載可能なサイズに小型化することも可能である。
【0043】
慣性計測装置2000は、アウターケース2100と、接合部材2200と、センサーモジュール2300を有し、アウターケース2100の内部に、接合部材2200を介在させて、センサーモジュール2300を挿入した構成となっている。センサーモジュール2300は、インナーケース2310と回路基板2320を有している。インナーケース2310には、回路基板2320との接触を防止するための凹部2311や、後述するコネクター2330を露出させるための開口2312が形成されている。そしてインナーケース2310の下面には、接着剤を介して回路基板2320が接合されている。
【0044】
図16に示すように、回路基板2320の上面には、コネクター2330、Z軸回りの角速度を検出する角速度センサー2340z、X軸、Y軸、及びZ軸の各軸方向の加速度を検出する加速度センサーユニット2350などが実装されている。また回路基板2320の側面には、X軸回りの角速度を検出する角速度センサー2340x及びY軸回りの角速度を検出する角速度センサー2340yが実装されている。
【0045】
加速度センサーユニット2350は、前述したZ軸方向の加速度を測定するための慣性センサー1を少なくとも含み、必要に応じて、一軸方向の加速度を検出したり、二軸方向や三軸方向の加速度を検出したりすることができる。なお角速度センサー2340x、2340y、2340zとしては、特に限定されないが、例えばコリオリの力を利用した振動ジャイロセンサーを用いることができる。
【0046】
また回路基板2320の下面には、制御回路2360が実装されている。慣性センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路2360は、例えばMCU(Micro Controller Unit)であり、不揮発性メモリーを含む記憶部や、A/Dコンバーターなどを内蔵しており、慣性計測装置2000の各部を制御する。尚、回路基板2320には、その他にも複数の電子部品が実装されている。
【0047】
以上のように本実施形態の慣性計測装置2000は、慣性センサー1と慣性センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路2360を含む。この慣性計測装置2000によれば、慣性センサー1を含む加速度センサーユニット2350を用いているため、慣性センサー1の効果を享受でき、高精度化等を実現できる慣性計測装置2000を提供できる。
【符号の説明】
【0048】
1,1a…慣性センサー、10…基板、11…凹部、12…支持部、20…蓋体、21…凹部、22…凹部、30…構造体、30a…構造体基板、31…可動体、32…固定体、33…枠体、34…第1部分、35…凹部、36…制御部、37,37b…絶縁膜、38…配線、39…外部端子、40…固定部、41…梁部、42…支持部、43…可動電極、44…凹部、50…固定部、51…固定電極、60…接合材、70,70a…レジスト、80…櫛歯構造、2000…慣性計測装置、t1,t2…深さ、S…内部空間。