IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-磁場計測装置 図1
  • 特開-磁場計測装置 図2
  • 特開-磁場計測装置 図3
  • 特開-磁場計測装置 図4
  • 特開-磁場計測装置 図5
  • 特開-磁場計測装置 図6
  • 特開-磁場計測装置 図7
  • 特開-磁場計測装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039319
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】磁場計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/26 20060101AFI20240314BHJP
   H03L 7/26 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
G01R33/26
H03L7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143776
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】松本 健太
【テーマコード(参考)】
5J106
【Fターム(参考)】
5J106BB05
5J106CC08
5J106GG02
5J106LL10
(57)【要約】
【課題】磁場を計測する位置において、光ポンピング磁力計の動作可能範囲を超える強度の外乱磁場を測定することができないこと。
【解決手段】本発明の磁場計測装置100は、アルカリ金属原子が封入されたガスセル101と、ガスセルに照射する光を、偏光状態を制御して発生する光発生装置102と、光発生装置が発生する光の周波数を変調する光周波数変調装置103とガスセルを透過した光の強度及び偏光状態を計測する光検出装置104と、光検出装置で計測した光の強度及び光の偏光状態のそれぞれに基づいてガスセル内部の所定の位置における磁場値を決定する制御装置105と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属原子が封入されたガスセルと、
前記ガスセルに照射する光を、偏光状態を制御して発生する光発生装置と、
前記光発生装置が発生する光の周波数を変調する光周波数変調装置と、
前記ガスセルを透過した光の強度及び偏光状態を計測する光検出装置と、
前記光検出装置で計測した光の強度及び光の偏光状態のそれぞれに基づいて前記ガスセル内部の所定の位置における磁場値を決定する制御装置と、
を備えた磁場計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁場計測装置であって、
前記光周波数変調装置は、前記光発生装置から少なくとも2つの周波数を含む光を前記ガスセルに照射するよう光の周波数を変調し、
前記制御装置は、前記光の強度に基づいて、少なくとも2つの周波数を含む光を前記ガスセルに照射することで前記アルカリ金属原子に生じる量子干渉状態を検出して、当該量子干渉状態の共鳴周波数に基づいて前記ガスセル内部の所定の位置における磁場値を決定する、
磁場計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の磁場計測装置であって、
前記ガスセルの内部に磁場を印加する磁場印加装置を備え、
前記制御装置は、前記光の強度に基づいて決定した磁場値に応じて前記磁場印加装置にて印加する磁場の強度を制御する、
磁場計測装置。
【請求項4】
請求項3に記載の磁場計測装置であって、
前記制御装置は、前記光の強度に基づいて決定した磁場値に応じて、前記ガスセルの位置における磁場を弱めるよう、前記磁場印加装置にて印加する磁場の強度を制御する、
磁場計測装置。
【請求項5】
請求項1に記載の磁場計測装置であって、
前記制御装置は、前記光の強度に基づいて磁場値を決定した後に、当該決定した磁場値に応じて、前記光の偏光状態に基づいて磁場値を決定する、
磁場計測装置。
【請求項6】
請求項4に記載の磁場計測装置であって、
前記制御装置は、前記光の強度に基づいて磁場値を決定し、当該決定した磁場値に応じて前記磁場印加装置にて印加する磁場の強度を制御し、その後、前記光の偏光状態に基づいて磁場値を決定する、
磁場計測装置。
【請求項7】
請求項6に記載の磁場計測装置であって、
前記光発生装置は、円偏光を含む光と直線偏光を含む光とを照射するよう構成されており、
前記制御装置は、前記磁場印加装置にて印加する磁場の強度を制御した後に、前記円偏光を含む光を前記ガスセルに照射することで生じる励起原子に、前記直線偏光を含む光を照射することで前記光検出装置にて計測された前記光の偏光状態に基づいて、前記ガスセル内部の所定の位置における磁場値を決定する、
磁場計測装置。
【請求項8】
請求項6に記載の磁場計測装置であって、
前記制御装置は、前記磁場印加装置にて印加する磁場の強度の制御値と、前記光の偏光状態に基づいて決定した磁場値と、に基づいて、前記ガスセル内部の所定の位置における磁場値を決定する、
磁場計測装置。
【請求項9】
請求項1に記載の磁場計測装置であって、
前記光発生装置は、周波数が前記ガスセルに封入された原子の吸収線に一致する光源と、前記光周波数変調装置によって周波数が変調可能な光源と、を含む、
磁場計測装置。
【請求項10】
アルカリ金属原子が封入されたガスセルと、前記ガスセルに照射する光を、偏光状態を制御して発生する光発生装置と、前記光発生装置が発生する光の周波数を変調する光周波数変調装置と、前記ガスセルを透過した光の強度及び偏光状態を計測する光検出装置と、を備えた磁場計測装置による磁場計測方法であって、
前記光検出装置で計測した光の強度及び光の偏光状態のそれぞれに基づいて前記ガスセル内部の所定の位置における磁場値を決定する、
磁場計測方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁場計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ポンピング磁力計は、スピン偏極したアルカリ金属原子気体に光照射し、偏光面の回転量を測定することで原子気体位置での磁場を検出する原子磁力計である。光ポンピング磁力計は、微小磁場をベクトル検出できる点に利点があるが、測定位置での磁場が大きい場合には、正常に動作できない点が課題である。このため、一般に、光ポンピング磁力計は、大型のシールドルームを設置するなどして外乱磁場を除去した状態で使用される。また、外乱磁場を検出し、それを打ち消すように印加磁場を発生させる磁場補正機能を備える場合もある。
【0003】
例えば、特許文献1に、光ポンピング磁力計を用いて磁場を計測し、これに加え、磁場打消し機能を備えた磁場補正装置に関する技術が開示されている。具体的に、特許文献1では、磁場センサ部であるアルカリ金属原子気体が封入された2つのセルを、被測定物からの距離を変えて配置し、被測定物から遠いセルでの検出磁場を打ち消すように印加磁場を発生させることで、外乱磁場の影響を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-215499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、光ポンピング磁力計の動作可能範囲を超える強度の外乱磁場を計測することができず、かかる磁場を補正することができない、という問題が生じる。
【0006】
このため、本開示の目的は、上述した課題である、磁場を計測する位置において、光ポンピング磁力計の動作可能範囲を超える強度の外乱磁場を測定することができない、ことを解決することができる磁場計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態である磁場計測装置は、
アルカリ金属原子が封入されたガスセルと、
前記ガスセルに照射する光を、偏光状態を制御して発生する光発生装置と、
前記光発生装置が発生する光の周波数を変調する光周波数変調装置と、
前記ガスセルを透過した光の強度及び偏光状態を計測する光検出装置と、
前記光検出装置で計測した光の強度及び光の偏光状態のそれぞれに基づいて前記ガスセル内部の所定の位置における磁場値を決定する制御装置と、
を備えた、
という構成をとる。
【0008】
また、本発明の一形態である磁場計測方法は、
アルカリ金属原子が封入されたガスセルと、前記ガスセルに照射する光を、偏光状態を制御して発生する光発生装置と、前記光発生装置が発生する光の周波数を変調する光周波数変調装置と、前記ガスセルを透過した光の強度及び偏光状態を計測する光検出装置と、を備えた磁場計測装置による磁場計測方法であって、
前記光検出装置で計測した光の強度及び光の偏光状態のそれぞれに基づいて前記ガスセル内部の所定の位置における磁場値を決定する、
という構成をとる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上のように構成されることにより、磁場を計測する位置において、光ポンピング磁力計の動作可能範囲を超える強度の外乱磁場であっても測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】透過光スペクトルに現れる共鳴周波数の異なる複数のCPT共鳴の図である。
図2】異なる複数のCPT共鳴の観測による共鳴周波数の差分の検出方法を示す図である。
図3】共鳴周波数の差分に基づく磁場の算出方法を示す図である。
図4】実施形態1における磁場計測装置の構成を示す図である。
図5】実施形態1における磁場計測装置の動作を示すフローチャートである。
図6】実施形態2における磁場計測装置の構成を示す図である。
図7】実施形態2における磁場計測装置の動作を示すフローチャートである。
図8】本発明の第3の実施形態における磁場計測装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
本開示の第1の実施形態を、図1乃至図5を参照して説明する。まずはじめに、図1乃至図3を参照して、本発明に関連する技術について説明する。
【0012】
光ポンピング磁力計は、アルカリ金属原子などの気体を利用して高精度に磁場を計測する装置である。光ポンピング装置は、原子気体が封入されたガスセルを有する。そして、円偏光を含むポンプ光をガスセルに照射することで、封入された原子を励起し、熱平衡状態とは異なる状態分布を有するスピン偏極状態を形成できる。さらに、スピン偏極した原子に直線偏光を含むプローブ光を照射すると、原子位置での磁場強度に応じて、プローブ光の偏光面が回転する。偏光面の回転量は磁場強度に比例するため、ガスセルを透過した光の偏光面を光検出器で計測することで、かかる計測値に応じたガスセル内部の所定の位置における磁場強度を決定することで、磁場を測定できる。光ポンピング磁力計では、非常に微弱な磁場に対しても偏光面の回転が生じるため、生体磁場のような極小強度の磁場の検出に利用される。一方で、光ポンピング磁力計の短所として、ガスセルの位置で大きい磁場が生じている場合、偏光面の回転量を正確に計測できなくなり、磁場強度の測定が困難になる。
【0013】
ここで、光ポンピング磁力計に用いるのと同種のアルカリ金属原子などの気体に、原子の超微細構造分裂に相当する周波数差を有する2つの周波数を含む光を照射した場合、励起準位と基底準位との間の遷移が抑制される量子干渉効果(CPT(Coherent Population Trapping)と呼ばれる)を、透過光強度の増大として観測できる。この量子干渉効果が生じるときの照射光の差周波数をCPT共鳴周波数と呼ぶ。磁場印加によって基底状態のエネルギー準位が変動するため、観測されるCPT共鳴周波数に基づいて、ガスセル内部の所定の位置における磁場強度を決定できる。
【0014】
この方法で磁場強度を決定する場合、検出可能な磁場強度の最大値は、検出するCPT共鳴モードと、照射光の差周波数の設定範囲によって異なる。図1に、磁場を印加した状態で検出されるCs原子のCPT共鳴スペクトルの一例を示す。ガスセルの位置に磁場を印加することで、Cs原子の基底準位は複数の磁気副準位に分裂する。磁場を印加した状態で照射光の差周波数を広範囲で掃引した場合、図1に示すように、それぞれの磁気副準位間に対応したCPT共鳴信号が検出される。ここで、磁気副準位が+1の基底状態に対応する(1,1)共鳴周波数と、磁気副準位が-1の基底状態に対応する(-1,-1)共鳴周波数との間隔は、磁場強度に応じて変動する。図2では、これらのCPT共鳴が検出される差周波数の範囲を拡大して表示している。照射光の差周波数を変調しつつ、透過光スペクトルを測定することで、CPT共鳴周波数の間隔を決定することができる。
【0015】
図3に、これらの共鳴周波数間隔を磁場強度の関数として示す。共鳴周波数差は、磁場強度に対して略線形に変動し、この変動量は既知の物理定数から求めることができる。例えば、(1,1)共鳴周波数と(-1,-1)共鳴周波数との間隔は、B(μT)の磁場の下で、約14×B(kHz)である。照射光の差周波数を14kHz程度の範囲にわたって設定できるような光周波数変調部を備えており、これら2つのCPT共鳴周波数を決定できれば、1μT程度の磁場を評価できる。
【0016】
ここでは一例として円偏光の照射光を使用し、(1,1)共鳴周波数と(-1,-1)共鳴周波数との間隔から磁場強度を評価する方法を説明したが、磁場強度の評価には、検出可能な他のCPT共鳴周波数を用いてもよい。また、照射光の偏光状態は、直線偏光であってもよい。
【0017】
本開示にかかる実施形態では、後述するように、光ポンピング磁力計を備えることに加え、光周波数変調部を備えてCPT共鳴周波数の計測によって磁場値を決定し、さらに、決定された磁場値を基にガスセルの位置での磁場を補正する機構を備える。これにより、光ポンピング磁力計の動作可能範囲を超える強度の外乱磁場がある場合にも、磁場測定を行える磁場計測装置を提供できる。
【0018】
[構成]
次に、図4を参照して、実施形態1にかかる磁場計測装置の詳細な構成を説明する。本実施形態にかかる磁場計測装置は、光発生装置1と、光周波数変調装置2と、光検出装置3と、磁場印加装置4と、環境磁場補正機構5及び低磁場測定機構6を備える制御装置7と、アルカリ金属原子等が気体の状態で封入されたガスセル8と、を含む。
【0019】
光発生装置1は、円偏光を含むポンプ光L1と、直線偏光を含むプローブ光L2と、を発生する。これらの光は、図4に示すようにガスセル8に照射するように光路をとる。光発生装置1は、例えば、レーザ等からなる光を発する光源部11を含む。光ポンピング磁力計の動作に必要なポンプ光L1及びプローブ光L2は、例えば、光源部11から発する光を伝送し、波長板等の適当な光学素子を透過させ、偏光状態を制御することで実現できる。また、光周波数変調装置2によって、2つ以上の周波数を含む光を生成することで、量子干渉効果を観測するのに必要な照射光L2を生成することを実現する。
【0020】
光周波数変調装置2は、光発生装置1で発生する光の周波数を変調する。例えば、光源部11に含まれるレーザの駆動電流を変調することで、周波数差がガスセル8に封入された原子の超微細構造分裂にほぼ等しいようなサイドバンドを含む光を生成する。なお、照射光の差周波数は、磁場評価の基準となるCPT共鳴の検出が可能であるような範囲内で制御される。ここで要請される照射光の差周波数の制御範囲は、ガスセル8の位置での磁場強度に応じて変動する。例えば、磁場評価の基準となるCPT共鳴として(1,1)共鳴及び(-1,-1)共鳴を用いる場合、図3に示すように、ガスセル8の位置での磁場強度に略比例して共鳴周波数の差分が変動する。一例として、ガスセル8の位置での磁場強度が100μT程度であると期待される場合には、照射光の差周波数を1400kHz以上、例えば、1500kHz程度の範囲で制御できる機構を有することが好ましい。
【0021】
光検出装置3は、ガスセル8を透過した透過光L3の、光強度を計測する光強度検出部31と、偏光面の角度を計測する偏光回転検出部32と、を含む。
【0022】
磁場印加装置4は、ガスセル8の内部の所定の位置に静磁場Mを印加する。磁場印加装置4は、例えば、ガスセル8を覆うように、ソレノイドコイルを配置することで実現される。この場合、ソレノイドコイルに印加する電流の向き及び大きさを、制御装置7の印加磁場制御部で調整することで、ガスセル8の内部の所定の位置に印加される静磁場の向き及び強度の制御が可能である。
【0023】
制御装置7は、演算装置と記憶装置とを備えた情報処理装置にて構成されている。そして、制御装置7は、図4に示すように、演算装置がプログラムを実行することで構築された、環境磁場補正機構5及び低磁場測定機構6を備える。また、制御装置7は、記憶装置に、上述した図3に示すような、CPT共鳴の共鳴周波数差分の磁場による変動量といった変動特性が記憶されている。
【0024】
環境磁場補正機構5は、図4に示すように、共鳴信号検出部51、環境磁場決定部52、印加磁場制御部53、光周波数制御部54を備える。そして、環境磁場補正機構5は、光強度検出部31による検出信号を取得し、これを基に、共鳴信号検出部51で量子干渉効果の共鳴周波数を算出する。続いて、環境磁場決定部52で、算出した共鳴周波数と、装置に記憶している共鳴周波数の磁場に対する変動特性を基に、ガスセル8内部の所定の位置での環境磁場強度を決定する。そして、決定した環境磁場強度を基に、印加磁場制御部53で、磁場印加装置4の制御信号を調整する。また、光周波数制御部54で、量子干渉効果の共鳴信号を検出するように、光周波数変調装置2の制御信号を調整する。なお、環境磁場補正機構5の詳細な機能については、動作説明にて詳述する。
【0025】
低磁場測定機構6は、図4に示すように、偏光回転量決定部61、低磁場決定部62、を備える。そして、低磁場測定機構6は、偏光回転量検出部61による検出信号を取得し、偏光面の回転量を決定する。そして、偏光面の回転量に基づいて、低磁場決定部62にて、ガスセル8の位置における低磁場の強度を決定する。なお、低磁場測定機構6の詳細な機能については、動作説明にて説明する。
【0026】
ガスセル8は、ガラス等の透明容器で構成されており、アルカリ金属原子等が気体の状態で封入されている。封入されているアルカリ金属原子等は、例えば、セシウム原子、ルビジウム原子、カリウム原子、ナトリウム原子のいずれかであってもよい。また、アルカリ金属原子の容器壁面との衝突による状態緩和を抑制する目的で、偏光面の回転及び量子干渉効果に影響しないバッファガスを封入していてもよい。また、アルカリ金属原子等の飽和蒸気圧を制御する目的で、抵抗加熱ヒーターで構成されるような温度調節機構を備えていてもよい。
【0027】
[動作]
次に、主に図5を参照して、上述した磁場計測装置の動作を説明する。図5は、第1の実施形態における磁場計測装置の動作を示すフローチャートであり、磁場計測装置によって実行される磁場計測方法を説明するための図である。
【0028】
まず、磁場計測装置は、量子干渉効果の検出時には、光周波数変調装置2にて照射光L2の差周波数を掃引しつつ透過光を検出し、磁場評価に用いるCPT共鳴を設定する(ステップS1)。このとき、磁場計測装置は、これらのCPT共鳴の共鳴周波数の磁場による変動量を記憶しておく。磁場評価に用いる共鳴として、磁場に対する共鳴周波数の変動が既知である、少なくとも2つのCPT共鳴を選ぶことができる。例えば、円偏光の照射光を照射する場合には、(1,1)共鳴と(-1,-1)共鳴を選ぶことができる。また、例えば、直線偏光の照射光を照射する場合には、(0,2)共鳴と(-2,0)共鳴を選ぶことができる。
【0029】
続いて、磁場計測装置は、照射光の差周波数の掃引範囲を、所定値に設定する(ステップS2)。好ましくは、磁場評価に用いる全ての共鳴の共鳴周波数を含むと期待される範囲に、差周波数を設定する。一例として、磁場評価に用いる共鳴として(1,1)共鳴と(-1,-1)共鳴を選ぶ場合、これらの共鳴周波数の差分は、図3に示すように、アルカリ原子位置での照射光の入射方向に平行な磁場強度をB(μT)として、14×B(kHz)である。照射光の差周波数の掃引範囲は、(1,1)共鳴周波数と(-1,-1)共鳴周波数の差分より広い範囲に設定する。例えば、ガスセル位置での磁場強度が100μT程度であると期待される場合には、(1,1)共鳴周波数と(-1,-1)共鳴周波数の差分は1400kHz程度であると期待されるため、照射光の差周波数の掃引範囲は、1400kHz以上に設定するのが好ましい。
【0030】
磁場計測装置は、上述した条件下で、照射光L2の周波数差を掃引しつつ、ガスセル8に入射し、その透過光L3を光検出装置3で検出する。検出した透過光スペクトルを制御装置7の環境磁場補正機構5で取得する(ステップS3)。そして、環境磁場補正機構5の共鳴信号検出部51で、CPT共鳴を検出する。ここで、測定した透過光スペクトルから、磁場評価に用いる全ての共鳴を検出しているかを判定し(ステップS4)、検出されていないCPT共鳴がある場合(ステップS4でNo)、照射光の差周波数の掃引範囲を、全てのCPT共鳴を検出できると期待される範囲に変更する(ステップS5)。一例として、照射光の差周波数の掃引範囲を拡大する。あるいは、一例として、照射光の差周波数の掃引範囲を、低周波数側あるいは高周波数側にシフトしてもよい。そして、処理フローはステップS2に戻る。具体的には、照射光の差周波数の掃引範囲を変更し、再度、透過光スペクトルの測定を行う。
【0031】
一方、全てのCPT共鳴が検出されている場合(ステップS4でYes)、環境磁場補正機構5の環境磁場決定部52で、磁場評価に用いる共鳴の共鳴周波数の差分から、ガスセル3内部の所定の位置における磁場値を決定する(ステップS6)。一例として、磁場評価に用いる共鳴として(1,1)共鳴と(-1,-1)共鳴を選ぶ場合、これらの共鳴周波数の差分は、図3に示すように、磁場に応じて変動する。これらの共鳴周波数の差分をΔf(Hz)とした場合、ガスセル8の位置での磁場値は、Δf/1400(μT)と決定される。ここで、決定した磁場値が、光ポンピング磁力計の動作可能範囲内であるか否かを判定する(ステップS7)。なお、光ポンピング磁力計の動作可能範囲の磁場値は、予め設定された範囲の値として記憶されている。
【0032】
ガスセル8内部の所定の位置における決定された磁場値が動作可能範囲外であった場合(ステップS7でNo)、打消し磁場として印加する磁場強度を設定し、印加磁場制御部53で磁場印加装置の設定値を調整する(ステップS8)。例えば、決定された磁場値が動作可能範囲を超えている場合には、ガスセル8の位置における磁場を弱くするよう、かかる磁場を打ち消す印加磁場を大きくするように設定する。ガスセル8の位置での印加磁場の調整は、ソレノイドコイルに印加する電流値を変更することで実現される。そして、処理フローがS3に戻り、再度、透過光スペクトルの測定を行う。
【0033】
一方、上述した印加磁場の調整の後、あるいは、印加磁場を調整することなく、ガスセル8の位置で決定した磁場値が動作可能範囲内であった場合(ステップS7でYes)、量子干渉効果の観測に基づく磁場補正機構の調整を終了する。そして、磁場測定装置は、光周波数が変調されていない光源部11が発する光を伝送し、ポンプ光L1とプローブ光L2を順に照射することで、低磁場測定機構6の偏光回転量検出部61により検出信号を取得して偏光面の回転量を決定し、偏光面の回転量に基づいて低磁場決定部62でガスセル8の位置における低磁場の強度を決定する(ステップS9)。このとき、低磁場決定部62は、印加磁場制御部53で設定した印加磁場の強度と、低磁場決定部62で計測した低磁場の強度とに基づいて、ガスセル8内部の所定の位置における磁場値を決定する。例えば、設定した印加磁場の方向及び強度と、計測した低磁場の方向及び強度とに基づいて、ガスセル8内部の所定の位置における磁場値を決定する。
【0034】
以上のように、本実施形態における磁場計測装置では、ガスセルの位置に光ポンピング磁力計の動作可能範囲を超える強度の外乱磁場がある場合の磁場計測を実現することができる。具体的に、磁場計測装置は、まず、円偏光成分を含むポンプ光L1をガスセル8に照射することで、ガスセル8内の原子をスピン偏極させ、続いて直線偏光成分を含むプローブ光L2をガスセルに照射することで、ガスセル8内部での磁場強度に応じた偏光面の回転が生じ、その回転量を計測することで磁場値を決定する光ポンピング磁力計として動作する。これに加え、磁場計測装置は、光周波数変調装置2によって光発生装置1を調整し、少なくとも2つの異なる周波数成分を有する照射光L2を発生してガスセル8に照射し、その透過光L3の透過光量を測定することで、照射光の周波数のうち2つの周波数差がアルカリ金属原子の基底準位の超微細構造分裂と略等しい場合に生じる量子干渉効果を検出し、そのスペクトルから磁場値を決定する磁場計測装置として動作する。そして、磁場計測装置は、量子干渉効果のスペクトルから決定した磁場強度に基づいてガスセル8の位置での印加磁場強度を調整する機構を備えることで、光ポンピング磁力計の動作可能範囲を超える強度の外乱磁場がある場合にも磁場測定を行える磁場計測装置を実現する。
【0035】
<実施形態2>
本開示の第2の実施形態を、図6乃至図7を参照して説明する。なお、本実施形態においては、上述した実施形態1における磁場計測装置とは異なる構成について主に説明する。
【0036】
[構成]
本実施形態における磁場計測装置は、図6に示すように、実施形態1で説明した光源部11に替えて、第一光源12と、光周波数変調装置2で変調可能な第二光源13と、を備えている。そして、第一光源12と第二光源13とによって、量子干渉効果の観測に必要な照射光を構成する量子干渉効果に関与する2つの周波数のみを含む照射光が生成されるため、量子干渉効果に関与しない光電場に由来する共鳴周波数の変動を抑制し、ガスセル位置での磁場に由来する共鳴周波数の変動を高精度に検出できる。これにより、光ポンピング磁力計の動作可能範囲を超える強度の外乱磁場がある場合にも磁場測定を行える磁場計測装置を提供できる。なお、説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0037】
具体的に、本実施形態にかかる磁場計測装置は、光発生装置1と、光周波数変調装置2と、光検出装置3と、磁場印加装置4と、環境磁場補正機構5及び低磁場測定機構6を制御する制御装置7と、アルカリ金属原子等が気体の状態で封入されたガスセル8と、を含む。光検出装置3と、磁場印加装置4と、制御装置7と、ガスセル8とは、第1の実施形態にかかるものと実質的に同様であるので、説明を省略する。
【0038】
光発生装置1は、円偏光を含むポンプ光L1と、直線偏光を含むプローブ光L2と、を発生するよう構成されている。これらの光は、ガスセル8に照射するように光路をとる。そして、光発生装置1は、第一光源12と、光周波数変調装置2によって周波数を変調可能な第二光源13とを含む。第一光源12は、例えば、アルカリ金属原子の吸収線にロックするなどして、発振周波数が吸収線に一致して安定化されていてもよい。光ポンピング磁力計の動作に必要なポンプ光L1及びプローブ光L2は、例えば、第一光源12から発する光を伝送し、波長板等の適当な光学素子を透過させ、偏光状態を制御することで実現できる。また、光周波数変調装置2によって第二光源13から発する光の周波数を変調し、第一光源12から発する光と合波することで、量子干渉効果を観測するのに必要な照射光を実現する。
【0039】
光周波数変調装置2は、第二光源13から発する光の周波数を変調する。第二光源13の光周波数変調は、例えば、第一光源12が発する光との干渉波に基づいて変調することで実現される。なお、照射光の差周波数は、磁場評価の基準となるCPT共鳴の検出が可能であるような範囲内で制御される。ここで要請される照射光の差周波数の制御範囲は、ガスセル位置での磁場強度に応じて変動する。例えば、磁場評価の基準となるCPT共鳴として(1,1)共鳴及び(-1,-1)共鳴を用いる場合、図3に示すように、ガスセル位置での磁場強度に略比例して共鳴周波数の差分が変動する。一例として、ガスセル位置での磁場強度が100μT程度であると期待される場合には、照射光の差周波数を1400kHz以上、例えば、1500kHz程度の範囲で制御できる機構を有することが好ましい。
【0040】
[動作]
図7は、第2の実施の形態にかかる磁場計測装置の動作を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、第2の実施の形態にかかる磁場計測装置によって実行される磁場計測方法を示す。本実施形態における動作を、図7に示すフローチャートに沿って説明する。なお、図7のフローチャートにおいては、実施形態1で説明した図5のフローチャートにおける動作と同様の動作の場合には、同じステップ番号で示すこととする。
【0041】
まず、第一光源12の発する光の周波数を、ガスセル8に封入された原子ガスの吸収点に合致するように設定させる(ステップS0)。例えば、第一光源12の発する光を参照ガスセルに照射し、参照ガスセルの吸収が最大になるように制御することで、第一光源12の発する光の周波数を、ガスセル8に封入された原子ガスの吸収点に合致するように安定化してもよい。
【0042】
磁場計測装置は、量子干渉効果の検出時には、第一光源12の発する光と第二光源13の発する光とを合波して照射光L2とし、第二光源13の周波数を掃引しつつ透過光L3を検出する。そして、まず、磁場評価に用いるCPT共鳴を設定する(ステップS1)。これらのCPT共鳴の共鳴周波数の磁場による変動量を、制御装置7の環境磁場決定部に記憶させる。磁場評価に用いる共鳴として、磁場に対する共鳴周波数の変動が既知である、少なくとも2つのCPT共鳴を選ぶことができる。例えば、円偏光の照射光を照射する場合には、(1,1)共鳴と(-1,-1)共鳴を選ぶことができる。また、例えば、直線偏光の照射光を照射する場合には、(0,2)共鳴と(-2,0)共鳴を選ぶことができる。
【0043】
続いて、第二光源13の周波数の掃引範囲を、所定値に設定する(ステップS2’)。好ましくは、磁場評価に用いる全ての共鳴の共鳴周波数を含むと期待される範囲に、第一光源12と第二光源13との差周波数を設定する。一例として、磁場評価に用いる共鳴として(1,1)共鳴と(-1,-1)共鳴を選ぶ場合、これらの共鳴周波数の差分は、図3に示すように、アルカリ原子位置での照射光の入射方向に平行な磁場強度をB(μT)として、14×B(kHz)である。照射光の差周波数の掃引範囲は、(1,1)共鳴周波数と(-1,-1)共鳴周波数の差分より広い範囲に設定する。例えば、ガスセル位置での磁場強度が100μT程度であると期待される場合には、(1,1)共鳴周波数と(-1,-1)共鳴周波数の差分は1400kHz程度であると期待されるため、照射光の差周波数の掃引範囲は、1400kHz以上に設定するのが好ましい。
【0044】
この条件下で、第二光源13の周波数を掃引しつつ、ガスセル8に入射し、その透過光を光検出装置3で検出する。そして、検出した透過光スペクトルを制御装置7の環境磁場補正機構5で取得する(ステップS3’)。このとき、環境磁場補正機構5の共鳴信号検出部51でCPT共鳴を検出する。ここで、測定した透過光スペクトルから、磁場評価に用いる全ての共鳴を検出しているかを判定する(ステップS4)。
【0045】
検出されていないCPT共鳴がある場合(ステップS4でNo)、第二光源13の周波数の掃引範囲を、全てのCPT共鳴を検出できると期待される範囲に変更する(ステップS5’)。一例として、第二光源13の周波数の掃引範囲を拡大する。あるいは、一例として、第二光源13の周波数の掃引範囲を、低周波数側あるいは高周波数側にシフトしてもよい。そして、処理フローはS2’に戻る。具体的には、第二光源13の周波数の掃引範囲を変更し、再度、透過光スペクトルの測定を行う。
【0046】
一方、全てのCPT共鳴が検出されている場合(ステップS4でYes)、環境磁場補正機構5の環境磁場決定部52で、磁場評価に用いる共鳴の共鳴周波数の差分から、ガスセル3内部の所定の位置における磁場値を決定する(ステップS6)。一例として、磁場評価に用いる共鳴として(1,1)共鳴と(-1,-1)共鳴を選ぶ場合、これらの共鳴周波数の差分は、図3に示すように、磁場に応じて変動する。これらの共鳴周波数の差分をΔf(Hz)とした場合、ガスセル8の位置での磁場値は、Δf/1400(μT)と決定される。ここで、決定した磁場値が、光ポンピング磁力計の動作可能範囲内であるか否かを判定する(ステップS7)。
【0047】
ガスセル8の位置での決定された磁場値が動作可能範囲外であった場合には(ステップS7でNo)、打消し磁場として印加する磁場強度を設定し、印加磁場制御部53で磁場印加装置4の設定値を調整する(ステップS8)。例えば、決定された磁場値が動作可能範囲を超えていた場合、かかる磁場値を打ち消す印加磁場を大きくするように設定する。ガスセル8の位置での印加磁場の調整は、ソレノイドコイルに印加する電流値を変更することで実現される。そして、処理フローをS3’に戻し、再度、透過光スペクトルの測定を行う。
【0048】
一方、ガスセル8内部の所定の位置で決定した磁場値が動作可能範囲内であった場合(ステップS7でYes)、量子干渉効果の観測に基づく磁場補正機構の調整を終了する。そして、第一光源12の発する光を伝送し、ポンプ光とプローブ光を順に照射することで、低磁場測定機構6が、偏光面の回転を計測して、偏光面の回転量に基づいて低磁場の強度を決定する(ステップS9)。このとき、低磁場決定部62は、印加磁場制御部53で設定した印加磁場の強度と、低磁場決定部62で決定した低磁場の強度とに基づいて、ガスセル8内部の所定の位置における磁場値を決定する。
【0049】
以上のように、第2の実施形態における磁場計測装置によれば、上述した方法によって調整された印加磁場をガスセル8の位置に発生させることで、光ポンピング磁力計の動作可能範囲を超える強度の外乱磁場がある場合にも、磁場測定を行える磁場計測装置を実現できる。また、第一光源12と、光周波数変調装置2で変調可能な光源13とによって、量子干渉効果の観測に必要な照射光を構成する量子干渉効果に関与する2つの周波数のみを含む照射光が生成されるため、量子干渉効果に関与しない光電場に由来する共鳴周波数の変動を抑制し、ガスセル位置での磁場に由来する共鳴周波数の変動を高精度に検出できる。これにより、光ポンピング磁力計の動作可能範囲を超える強度の外乱磁場がある場合にも磁場測定を行える磁場計測装置を提供できる。
【0050】
<実施形態3>
次に、本発明の第3の実施形態を、図8を参照して説明する。図8は、実施形態3における磁場計測装置の構成を示すブロック図である。なお、本実施形態では、上述した実施形態で説明した磁場計測装置の構成の概略を示している。
【0051】
図8に示すように、本実施形態における磁場計測装置100は、アルカリ金属原子が封入されたガスセル101と、前記ガスセルに照射する光を、偏光状態を制御して発生する光発生装置102と、前記光発生装置が発生する光の周波数を変調する光周波数変調装置103と、前記ガスセルを透過した光の強度及び偏光状態を計測する光検出装置104と、前記光検出装置で計測した光の強度及び光の偏光状態のそれぞれに基づいて前記ガスセル内部の所定の位置における磁場値を決定する制御装置105と、を備える。
成されている。
【0052】
そして、上記構成の制御装置105は、光の周波数が変調させてガスセル101に照射された光の透過光の強度を計測し、かかる強度に基づいてガスセル101内部の所定の位置における磁場値を決定する。また、制御装置105は、光の偏光状態を制御してガスセル101に照射された光の透過光の偏光状態を計測し、かかる偏光状態に基づいてガスセル101内部の所定の位置における磁場値を決定する。このため、光の偏光状態に基づく光ポンピング磁力計による低磁場の計測が可能であると共に、かかる光ポンピング磁力計の動作可能範囲を超える強度の外乱磁場がある場合であっても、周波数が変調された光の強度に基づいて磁場測定が可能となる。
【0053】
以上、上記実施形態等を参照して本開示を説明したが、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示の構成には、本開示の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0054】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。以下、本開示における磁場計測装置、磁場計測方法の構成の概略を説明する。但し、本発明は、以下の構成に限定されない。
【0055】
(付記1)
アルカリ金属原子が封入されたガスセルと、
前記ガスセルに照射する光を、偏光状態を制御して発生する光発生装置と、
前記光発生装置が発生する光の周波数を変調する光周波数変調装置と、
前記ガスセルを透過した光の強度及び偏光状態を計測する光検出装置と、
前記光検出装置で計測した光の強度及び光の偏光状態のそれぞれに基づいて前記ガスセル内部の所定の位置における磁場値を決定する制御装置と、
を備えた磁場計測装置。
(付記2)
付記1に記載の磁場計測装置であって、
前記光周波数変調装置は、前記光発生装置から少なくとも2つの周波数を含む光を前記ガスセルに照射するよう光の周波数を変調し、
前記制御装置は、前記光の強度に基づいて、少なくとも2つの周波数を含む光を前記ガスセルに照射することで前記アルカリ金属原子に生じる量子干渉状態を検出して、当該量子干渉状態の共鳴周波数に基づいて前記ガスセル内部の所定の位置における磁場値を決定する、
磁場計測装置。
(付記3)
付記1又は2に記載の磁場計測装置であって、
前記ガスセルの内部に磁場を印加する磁場印加装置を備え、
前記制御装置は、前記光の強度に基づいて決定した磁場値に応じて前記磁場印加装置にて印加する磁場の強度を制御する、
磁場計測装置。
(付記4)
付記3に記載の磁場計測装置であって、
前記制御装置は、前記光の強度に基づいて決定した磁場値に応じて、前記ガスセルの位置における磁場を弱めるよう、前記磁場印加装置にて印加する磁場の強度を制御する、
磁場計測装置。
(付記5)
付記1乃至4のいずれかに記載の磁場計測装置であって、
前記制御装置は、前記光の強度に基づいて磁場値を決定した後に、当該決定した磁場値に応じて、前記光の偏光状態に基づいて磁場値を決定する、
磁場計測装置。
(付記6)
付記3又は4に記載の磁場計測装置であって、
前記制御装置は、前記光の強度に基づいて磁場値を決定し、当該決定した磁場値に応じて前記磁場印加装置にて印加する磁場の強度を制御し、その後、前記光の偏光状態に基づいて磁場値を決定する、
磁場計測装置。
(付記7)
付記3,4又は6に記載の磁場計測装置であって、
前記光発生装置は、円偏光を含む光と直線偏光を含む光とを照射するよう構成されており、
前記制御装置は、前記磁場印加装置にて印加する磁場の強度を制御した後に、前記円偏光を含む光を前記ガスセルに照射することで生じる励起原子に、前記直線偏光を含む光を照射することで前記光検出装置にて計測された前記光の偏光状態に基づいて、前記ガスセル内部の所定の位置における磁場値を決定する、
磁場計測装置。
(付記8)
付記3,4,6又は7に記載の磁場計測装置であって、
前記制御装置は、前記磁場印加装置にて印加する磁場の強度の制御値と、前記光の偏光状態に基づいて決定した磁場値と、に基づいて、前記ガスセル内部の所定の位置における磁場値を決定する、
磁場計測装置。
(付記9)
付記1乃至8のいずれかに記載の磁場計測装置であって、
前記光発生装置は、周波数が前記ガスセルに封入された原子の吸収線に一致する光源と、前記光周波数変調装置によって周波数が変調可能な光源と、を含む、
磁場計測装置。
(付記10)
アルカリ金属原子が封入されたガスセルと、前記ガスセルに照射する光を、偏光状態を制御して発生する光発生装置と、前記光発生装置が発生する光の周波数を変調する光周波数変調装置と、前記ガスセルを透過した光の強度及び偏光状態を計測する光検出装置と、を備えた磁場計測装置による磁場計測方法であって、
前記光検出装置で計測した光の強度及び光の偏光状態のそれぞれに基づいて前記ガスセル内部の所定の位置における磁場値を決定する、
磁場計測方法。
(付記11)
付記10に記載の磁場計測方法であって、
前記光周波数変調装置は、前記光発生装置から少なくとも2つの周波数を含む光を前記ガスセルに照射するよう光の周波数を変調するよう構成されており、
前記光の強度に基づいて、少なくとも2つの周波数を含む光を前記ガスセルに照射することで前記アルカリ金属原子に生じる量子干渉状態を検出して、当該量子干渉状態の共鳴周波数に基づいて前記ガスセルの位置における磁場値を決定する、
磁場計測方法。
(付記12)
付記10又は11に記載の磁場計測方法であって、
前記磁場計測装置がさらに前記ガスセルの内部に磁場を印加する磁場印加装置を備えており、
前記光の強度に基づいて決定した磁場値に応じて前記磁場印加装置にて印加する磁場の強度を制御する、
磁場計測方法。
(付記13)
付記10乃至12のいずれかに記載の磁場計測方法であって、
前記光の強度に基づいて磁場値を決定した後に、当該決定した磁場値に応じて、前記光の偏光状態に基づいて磁場値を決定する、
磁場計測方法。
(付記14)
付記12に記載の磁場計測方法であって、
前記光の強度に基づいて磁場値を決定し、当該決定した磁場値に応じて前記磁場印加装置にて印加する磁場の強度を制御し、その後、前記光の偏光状態に基づいて磁場値を決定する、
磁場計測方法。
(付記15)
付記12又は14に記載の磁場計測方法であって、
前記光発生装置は、円偏光を含む光と直線偏光を含む光とを照射するよう構成されており、
前記磁場印加装置にて印加する磁場の強度を制御した後に、前記円偏光を含む光を前記ガスセルに照射することで生じる励起原子に、前記直線偏光を含む光を照射することによって前記光検出装置にて計測された前記光の偏光状態に基づいて、前記ガスセル内部の所定の位置における磁場値を決定する、
磁場計測方法。
(付記16)
付記12,14又は15に記載の磁場計測方法であって、
前記磁場印加装置にて印加する磁場の強度の制御値と、前記光の偏光状態に基づいて決定した磁場値と、に基づいて、前記ガスセル内部の所定の位置における磁場値を算出する、
磁場計測方法。
【符号の説明】
【0056】
1 光発生装置
11 光源部
12 第一光源
13 第二光源
2 光周波数変調装置
3 光検出装置
31 光強度検出部
32 偏光回転検出部
4 磁場印加装置
5 環境磁場補正機構
51 共鳴信号検出部
52 環境磁場決定部
53 印加磁場制御部
54 光周波数制御部
6 低磁場測定機構
61 偏光回転量決定部
62 低磁場決定部
7 制御装置
8 ガスセル
100 磁場計測装置
101 ガスセル
102 光発生装置
103 光周波数変調装置
104 光検出装置
105 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8