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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039327
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】電圧調整装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/12 20060101AFI20240314BHJP
   H01F 29/04 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
H02J3/12
H01F29/04 502Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143795
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 博宣
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066DA01
(57)【要約】
【課題】タップ切換の有無を効率的に判定することが可能な電圧調整装置を提供する。
【解決手段】電圧調整装置は、交流を電源から負荷に配電する配電線に2次巻線が直列に接続される直列変圧器と、前記配電線に1次巻線が並列に接続された調整変圧器と、前記調整変圧器の1又は複数の巻線が有するタップを切り換えて選択するための切換スイッチを備え、前記巻線について選択されたタップを結線して交流を出力する負荷時タップ切換器とを含む電圧調整装置であって、前記負荷時タップ切換器は、前記タップに関する処理を行う制御部を備え、前記制御部は、前記電源側の電圧を示す1次側電圧値と、前記負荷側の電圧を示す2次側電圧値とを、時間経過に応じて複数回に亘って取得し、前記取得した1次側電圧値及び2次側電圧値それぞれによる検出電圧比率を算出し、算出した複数の前記検出電圧比率における変化量に基づき、タップ切換の有無を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流を電源から負荷に配電する配電線に2次巻線が直列に接続される直列変圧器と、
前記配電線に1次巻線が並列に接続された調整変圧器と、
前記調整変圧器の1又は複数の巻線が有するタップを切り換えて選択するための切換スイッチを備え、前記巻線について選択されたタップを結線して交流を出力する負荷時タップ切換器と
を含む電圧調整装置であって、
前記負荷時タップ切換器は、前記タップに関する処理を行う制御部を備え、
前記制御部は、
前記電源側の電圧を示す1次側電圧値と、前記負荷側の電圧を示す2次側電圧値とを、時間経過に応じて複数回に亘って取得し、
前記取得した1次側電圧値及び2次側電圧値それぞれによる検出電圧比率を算出し、
算出した複数の前記検出電圧比率における変化量に基づき、タップ切換の有無を判定する
電圧調整装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記時間経過において、連続する2つの前記検出電圧比率による差分の絶対値を算出し、
算出した前記差分の絶対値が、予め定められた閾値よりも大きい場合、タップ切換が行われたと判定し、
算出した前記差分の絶対値が、予め定められた閾値以下の場合、タップ切換が行われていないと判定する
請求項1に記載の電圧調整装置。
【請求項3】
前記検出電圧比率は、前記タップの切り換えにて決定されるタップ位置に対応する前記調整変圧器の巻数比による偏差を含む伝達関数に対応する
請求項2に記載の電圧調整装置。
【請求項4】
前記伝達関数は、前記直列変圧器の個数、及び前記直列変圧器の巻数比を含む
請求項3に記載の電圧調整装置。
【請求項5】
前記伝達関数は、前記タップ位置の個数に応じた複数の定数として定義される
請求項4に記載の電圧調整装置。
【請求項6】
順送電状態において、前記伝達関数は、1/(1-K・Ns・Nt(n))にて示される
請求項5に記載の電圧調整装置。
但し、
K:直列変圧器の個数
Ns:直列変圧器の巻数比
Nt(n):調整変圧器における素通しに対する偏差
n:タップ位置
【請求項7】
逆送電状態において、前記伝達関数は、1-K・Ns・Nt(n)にて示される
請求項6に記載の電圧調整装置。
但し、
K:直列変圧器の個数
Ns:直列変圧器の巻数比
Nt(n):調整変圧器における素通しに対する偏差
n:タップ位置
【請求項8】
前記調整変圧器は、1つの巻線を有する単巻変圧器、又は複数の巻線を有する複巻変圧器である
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電圧調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる間接切換方式による電圧調整装置は、2次巻線が配電線に直列に接続される直列変圧器と、1次巻線が配電線に並列に接続され、2次巻線に複数のタップが設けられた調整変圧器と、該複数のタップを切り換えて直列変圧器の1次巻線に接続するタップ切換器とを備えている。
【0003】
タップ切換器は、直列変圧器の1次巻線に接続するタップを切り換えるための切換スイッチと、タップ切換を行う過程でタップ間に流れる矯絡電流を制限する限流抵抗器等の限流素子と、該限流素子のタップ間への接続及び切り離しを行う矯絡用スイッチとを有する。限流抵抗器及び矯絡用スイッチは直列に接続されている。タップ切換器は、切換スイッチ及び矯絡用スイッチを所定のシーケンスでオンオフすることにより、調整変圧器から直列変圧器の1次巻線に印加する調整電圧の大きさ及び極性を切り換える。
【0004】
限流抵抗器及び矯絡用スイッチの直列回路には、機械接点を有する電磁接触器等の開閉器が並列に接続されている(特許文献1参照)。この開閉器は、切換スイッチが制御不能になった場合及び配電線における短絡事故等の原因によってタップ切換器に大電流が流れた場合に閉路されるようになっている。この場合の機械接点としては、電源喪失の場合に閉路されるようにb接点(常閉接点)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-312612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された開閉器は、タップ切換の有無を効率的に判定する観点について考慮されていない。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、タップ切換の有無を効率的に判定することが可能な電圧調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る電圧調整装置は、交流を電源から負荷に配電する配電線に2次巻線が直列に接続される直列変圧器と、前記配電線に1次巻線が並列に接続された調整変圧器と、前記調整変圧器の1又は複数の巻線が有するタップを切り換えて選択するための切換スイッチを備え、前記巻線について選択されたタップを結線して交流を出力する負荷時タップ切換器とを含む電圧調整装置であって、前記負荷時タップ切換器は、前記タップに関する処理を行う制御部を備え、前記制御部は、前記電源側の電圧を示す1次側電圧値と、前記負荷側の電圧を示す2次側電圧値とを、時間経過に応じて複数回に亘って取得し、前記取得した1次側電圧値及び2次側電圧値それぞれによる検出電圧比率を算出し、算出した複数の前記検出電圧比率における変化量に基づき、タップ切換の有無を判定する。
【0009】
本態様にあたっては、電圧調整装置は、直列変圧器、調整変圧器、及び負荷時タップ切換器を含み、負荷時タップ切換器は、調整変圧器のタップを切り換えて選択するための切換スイッチと、切換スイッチをオン又はオフして前記タップを切り換える制御を行う制御部を備える。これにより、負荷時タップ切換器の制御部が、調整変圧器のタップを切り換えることにより、配電線の電圧を調整することができる。制御部は、電圧調整装置に接続される電源の側における電圧を示す1次側電圧値と、電圧調整装置に接続される負荷の側における電圧を示す2次側電圧値とを、取得する。例えば、電源が単相電源である場合、配電線は、u相の配電線と、v相の配電線とを含み、これら配電線の間には、計測用変圧器が設けられているものであってもよい。計測用変圧器は、配電線における電源側及び負荷側の双方に設けられている。制御部は、電源側及び負荷側の双方の計測用変圧器から出力される1次側電圧値及び2次側電圧値を、実質的に同じ時点(時刻)にて取得する。制御部は、取得した1次側電圧値(V1m)及び2次側電圧値(V2m)の比率となる検出電圧比率(Gm=V2m/V1m)を算出する。制御部は、1次側電圧値及び2次側電圧値の取得、及び取得した1次側電圧値及び2次側電圧値の検出電圧比率を算出する処理を、所定の周期(計測サイクル)にて繰り返し実施することを継続する。制御部は、取得した1次側電圧値及び2次側電圧値と、これら電圧値にて算出した検出電圧比率とを、1次側電圧値及び2次側電圧値の取得時点(計測時点)と関連付けて、記憶部に記憶する。従って、記憶部には、各計測時点における検出電圧比率それぞれが、経時ログデータとして記憶されるものとなる。制御部は、これら時間経過に応じて算出された複数の検出電圧比率において、例えば、計測時点が異なる2つの検出電圧比率の変化量を算出し、当該変化量に基づき、タップ切換の有無、すなわち、これら2つの計測時点間にて、タップが切り換えられたか否かを判定する。これにより、タップ切換の検出を効率的に実施することができ、例えば、SVR(Step Voltage Regulator)、TVR(Thyristor Voltage Regulator)又はLVR(Low Voltage Regulator)等において、電圧調整指令の出力状態等を用いたタップ位置の検出に関する処理を不要とすることができる。
【0010】
本開示の一態様に係る電圧調整装置においては、前記制御部は、前記時間経過において、連続する2つの検出電圧比率による差分の絶対値を算出し、算出した前記差分の絶対値が、予め定められた閾値よりも大きい場合、タップ切換が行われたと判定し、算出した前記差分の絶対値が、予め定められた閾値以下の場合、タップ切換が行われていないと判定する。
【0011】
本態様にあたっては、制御部は、複数の検出電圧比率における変化量として、経時的に連続する2つの検出電圧比率による差分の絶対値を算出する。制御部は、例えば、所定の周期による計測サイクルにおいて、前回(t-1)集計した検出電圧比率(Gm[t-1]=V2m[t-1]/V1m[t-1])と、今回(t)集計した検出電圧比率(Gm[t]=V2m[t]/V1m[t])と差分の絶対値(ΔGm[t]=|Gm[t]-Gm[t-1]|=|(V2m[t]/V1m[t])-(V2m[t-1]/V1m[t-1])|)を算出する。前記制御部は、算出した差分の絶対値(ΔGm[t])が、予め定められた閾値(Gmth)よりも大きい場合(ΔGm[t]>Gmth)はタップ切換が行われたと判定し、予め定められた閾値以下の場合(ΔGm[t]≦Gmth)はタップ切換が行われていないと判定する。タップ切換の有無の判定に用いられる閾値(Gmth:判定閾値)は、記憶部等、制御部がアクセス可能な記憶領域に予め記憶されており、制御部は記憶部を参照することにより、当該閾値を取得する。計測電圧の変動によらず変圧比は一定となるため、タップ切換が発生してなければ判定閾値の理想値は零となることが想定されるが、計測機能における外乱を考慮し、タップ切換を確実に検出でき、かつ外乱による誤検知が発生し得ない値に判定閾値を設定するものであってもよい。外乱は、電圧調整装置(電圧調整器)の外部の要因の割合が圧倒的に大きい傾向となるため、判定閾値は、電圧調整装置の設置形態又は運用環境情報に応じた実績値にて決定されるものであってもよい。
【0012】
本開示の一態様に係る電圧調整装置においては、前記検出電圧比率は、前記タップの切り換えにて決定されるタップ位置に対応する前記調整変圧器の巻数比による偏差を含む伝
達関数に対応する。
【0013】
本態様にあたっては、検出電圧比率、すなわち1次側電圧値と2次側電圧値との比率(V2/V1)は、タップの切り換えにて決定されるタップ位置に対応する前記調整変圧器の巻数比(n)による偏差を含む伝達関数(G(n))に対応(V2/V1=G(n))する。直列変圧器、調整変圧器及び負荷時タップ切換器を含む電圧調整装置は、間接切換方式を用いるものであり、例えば順送電状態の電圧調整装置における電源側の1次側電圧値(入力側電圧値)と、負荷側の2次側電圧値(出力側電圧値)との比率(V2/V1)は、伝達関数(G(n))により示される。伝達関数は、タップを切り替えることにより決定されるタップ位置にて特定される調整変圧器(タップ付変圧器)の巻数比を用いた偏差を含むため、当該伝達関数によって算出される値は、巻数比に応じて異なるものとなる。当該偏差は、負荷時タップ切換器が出力する電圧が0となる素通しとなるタップ位置(素通しタップ)を0とし、当該0に対する偏差であってもよい。間接切換方式による電圧調整装置においては、1次側と2次側の電圧比には一定の法則性があるため、電源側電圧(1次側電圧)が変動するとタップ毎の負荷側電圧(2次側電圧)は変動し、タップ位置を1タップ毎に切り換えた際の電圧(1タップ電圧)は、一様にならないことが想定される。すなわち、本態様における電圧調整装置においては、例えば1タップ電圧を100V又は67V等と正規化した上での計算によっては最適な目標タップ位置に到達することが困難であり、タップ切換の有無の判定(タップ切換を検出)を効率的に実行することが求められる。これに対し、1次側電圧値と2次側電圧値との比率(検出電圧比率)は、タップ位置にて特定される調整変圧器(タップ付変圧器)の巻数比を用いた偏差を変数として含む多項式から成る伝達関数に対応しているため、タップ切換の有無の判定(タップ切換を検出)を効率的に実行することができる。
【0014】
本開示の一態様に係る電圧調整装置においては、前記伝達関数は、前記直列変圧器の個数、及び前記直列変圧器の巻数比を含む。
【0015】
本態様にあたっては、伝達関数は、タップを切り替えることにより決定されるタップ位置にて特定される調整変圧器(タップ付変圧器)の巻数比を用いた偏差に加え、更に直列変圧器の個数、及び直列変圧器の巻数比を含む。伝達関数は、これら調整変圧器の巻数比を用いた偏差、直列変圧器の個数、及び直列変圧器の巻数比を、負荷側電圧(2次側電圧)に対する係数として含む多項式にて定義されるものであってもよい。1次側電圧値と2次側電圧値との比率(検出電圧比率)は、このように定義された伝達関数に対応しているため、タップ切換の有無の判定(タップ切換を検出)を効率的に実行することができる。
【0016】
本開示の一態様に係る電圧調整装置においては、前記伝達関数は、前記タップ位置の個数に応じた複数の定数として定義される。
【0017】
本態様にあたっては、間接切換方式による電圧調整装置においては、タップ位置それぞれに応じて、調整変圧器の巻数比を用いた偏差それぞれが、決定される。例えば、タップ位置の個数(タップ数)が7つ(7タップ)である場合、当該巻数比を用いた偏差の個数(パターン)も7つとなり、従って、伝達関数は7通りの定数(伝達関数それぞれにおける算出値)として定義される。これら定数それぞれは、例えば、タップ位置それぞれと関連付けられて、タップ位置テーブルに格納されることにより、記憶部に記憶されるものであってもよい。1次側電圧値と2次側電圧値との比率(検出電圧比率)は、このように定義された伝達関数に対応しているため、タップ切換の有無の判定(タップ切換を検出)を効率的に実行することができる。
【0018】
本開示の一態様に係る電圧調整装置においては、順送電状態において、前記伝達関数は、1/(1-K・Ns・Nt(n))にて示される。
但し、
K:直列変圧器の個数
Ns:直列変圧器の巻数比
Nt(n):調整変圧器における素通しに対する偏差
n:タップ位置
【0019】
本態様にあたっては、順送電状態において、伝達関数(G(n))は、1/(1-K・Ns・Nt)にて示される。この際、Kは、直列変圧器の個数を示し、例えば、直列変圧器がu相の配電線と、v相の配電線とのそれぞれに1つ設けられている場合、Kは2となる。Nsは、直列変圧器の巻数比(Ns2:2次巻線の巻数/Ns1:1次巻線の巻数)を示す。Nt(n)は、調整変圧器における素通しに対する偏差を示す。より具体的には、素通しを0とした場合、当該0に対する偏差を示すものであり、偏差は、調整変圧器のタップ位置(n)それぞれに対応する巻数比(Nt(n))を用いて示される。1次側電圧値と2次側電圧値との比率(検出電圧比率)は、当該伝達関数{G(n)=1/(1-K・Ns・Nt)に対応しているため、電圧調整装置が順送電状態におけるタップ切換の有無の判定(タップ切換を検出)を効率的に実行することができる。
【0020】
本開示の一態様に係る電圧調整装置においては、逆送電状態において、前記伝達関数は、1-K・Ns・Nt(n)にて示される。
但し、
K:直列変圧器の個数
Ns:直列変圧器の巻数比
Nt(n):調整変圧器における素通しに対する偏差
n:タップ位置
【0021】
本態様にあたっては、逆送電状態において、伝達関数(G’(n))は、1-K・Ns・Nt(n)にて示される。すなわち、逆送電状態の伝達関数(G’(n))は、順送電状態の伝達関数(G(n))の逆数(1/G(n))として示される。この際、Kは、直列変圧器の個数を示し、例えば、直列変圧器がu相の配電線と、v相の配電線とのそれぞれに1つ設けられている場合、Kは2となる。Nsは、直列変圧器の巻数比(Ns2:2次巻線の巻数/Ns1:1次巻線の巻数)を示す。Nt(n)は、調整変圧器における素通しに対する偏差を示す。より具体的には、素通しを0とした場合、当該0に対する偏差を示すものであり、偏差は、調整変圧器のタップ位置(n)それぞれに対応する巻数比(Nt(n))を用いて示される。1次側電圧値と2次側電圧値との比率(検出電圧比率)は、当該伝達関数{G’(n)=1-K・Ns・Nt(n)}に対応しているため、電圧調整装置が逆送電状態におけるタップ切換の有無の判定(タップ切換を検出)を効率的に実行することができる。
【0022】
本開示の一態様に係る電圧調整装置においては、前記調整変圧器は、1つの巻線を有する単巻変圧器、又は複数の巻線を有する複巻変圧器である。
【0023】
本態様にあたっては、調整変圧器は、1次巻線と2次巻線の一部を共有している変圧器である単巻変圧器、又は1次巻線と2次巻線とが別個の巻線である複巻変圧器にて構成される。単巻変圧器にて構成される場合、調整変圧器は、直列巻線(Nt1)と分路巻線(Nt2)とを含み、直列巻線(Nt1)と分路巻線(Nt2)とは、中間のタップによって区分けされている。これら分路巻線(Nt2)と直列巻線(Nt1)との巻数の関係において、分路巻線(Nt2)の巻数は、直列巻線(Nt1)の巻数よりも大きい(Nt2>Nt1)ものであってもよい。この場合、1次巻線の巻き数は、直列巻線(Nt1)と分路巻線(Nt2)との合計値(Nt1+Nt2)となる。2次巻線の巻き数は、タップ位置に応じて、異なる値となる。調整変圧器(タップ付変圧器)は、単巻変圧器である場
合、構成を簡略化しつつ、複巻変圧器を用いた場合と同様のタップ切換の制御を行うことができる。これら単巻変圧器又は複巻変圧器に対し伝達関数を共通的に用いることができ、1次側電圧値と2次側電圧値との比率(検出電圧比率)は、当該伝達関数に対応しているため、タップ切換の有無の判定(タップ切換を検出)を効率的に実行することができる。
【発明の効果】
【0024】
タップ切換の有無を効率的に判定する電圧調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態1に係る電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。
図2】切換スイッチの構成例を示す回路図である。
図3】タップ位置とオンにする切換スイッチ等との関係を定義するタップ位置テーブルの説明図である。
図4】順送電状態における制御ブロック線図である。
図5】逆送電状態における制御ブロック線図である。
図6】制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施形態1)
以下、実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。電圧調整装置(SVR=Step Voltage Regulator)100は、順送電状態において、紙面左側の電源側から供給される単相交流の電圧を調整し、紙面右側の負荷側へ、配電線1u,1vを介して単相交流を配電する。電圧調整装置100は、逆送電状態において、紙面右側の負荷側から供給される単相交流の電圧を調整し、紙面左側の電源側へ、配電線1u,1vを介して単相交流を配電する。
【0027】
電圧調整装置100は、配電線1u,1vそれぞれに2次巻線112,122が直列に接続される直列変圧器11,12と、配電線1u,1vに巻線20が並列に接続される調整変圧器2(タップ付変圧器)とを備える。直列変圧器11の2次巻線112は配電線1uに設けられ、直列変圧器12の2次巻線122は配電線1vに設けられており、すなわち、電圧調整装置100は2つの直列変圧器11,12を備える。電圧調整装置100は、更に、調整変圧器2の巻線20及び直列変圧器11,12それぞれの1次巻線111,121それぞれの間に設けられた負荷時タップ切換器3を備える。負荷時タップ切換器3及び調整変圧器2が、負荷時タップ切換変圧器200を構成する。
【0028】
直列変圧器11,12は、2次巻線112,122それぞれに1次巻線111,121が対応している。1次巻線111,121は、それぞれ2次巻線112,122に互いに逆位相の電圧が誘起するように並列に接続されている。2次巻線112,122それぞれの上記負荷側の端子に対応する1次巻線111,121の端子をu1,v1とする。また、2次巻線112,122それぞれの上記電源側の端子に対応する1次巻線111,121の端子をu2,v2とする。
【0029】
調整変圧器2は、単巻変圧器であり、1次巻線と2次巻線の一部を共有している変圧器である。調整変圧器2は、巻線20が配電線1u,1v間に接続されている。単巻変圧器である調整変圧器2の巻線20は、直列巻線20a(Nt1)と、分路巻線20b(Nt2)とを含み、直列巻線20a(Nt1)と分路巻線20b(Nt2)とは、中間のタップt2によって区分けされている。これら分路巻線20b(Nt2)と直列巻線20a(Nt1)との巻数において、分路巻線20b(Nt2)の巻数は、直列巻線20a(Nt1)の巻数よりも大きい(Nt2>Nt1)ものであってもよい。この場合、1次巻線の
巻き数は、直列巻線20a(Nt1)と分路巻線20b(Nt2)との合計値(Nt1+Nt2)となる。2次巻線の巻き数は、タップ位置に応じて、異なる値となる。
【0030】
巻線20は、一端及び他端から引き出されたタップt1及びt3と、一端及び他端の間に位置し、当該巻線20を直列巻線20a(Nt1)と分路巻線20b(Nt2)に区分けする中間のタップt2とを有する。巻線20は、タップt1からt3のいずれか1つが負荷時タップ切換器3を介して直列変圧器11,12の1次側の端子u2,v1に接続され、当該1つと同一又は異なる他の1つが負荷時タップ切換器3を介して直列変圧器11,12の1次側の端子u1,v2に接続される。同一のタップが直列変圧器11,12の1次側の各端子に接続されるのは、後述する素通しタップの場合である。
【0031】
本実施形態において、調整変圧器2は単巻変圧器であるとしたがこれに限定されず、調整変圧器2は、複巻変圧器であってもよい。調整変圧器2が複巻変圧器である場合、1次巻線21が配電線1u,1v間に接続されている。1次巻線21に対応する2次巻線22は、一端及び他端から引き出されたタップt1及びt3と,一端及び他端の間から引き出された中間のタップt2とを有し、調整変圧器2が単巻変圧器である場合と同様にタップ制御が行われる。
【0032】
調整変圧器2の巻線20に印加される電圧を計測するために、配電線1u,1v間には計測用変圧器PT2の1次巻線が接続されているものであってもよい。計測用変圧器PT2により、負荷側の電圧を示す2次側電圧値(V2m)を計測することができる。更に、直列変圧器よりも電源側の配電線1u,1v間には計測用変圧器PT1の1次巻線が接続されているものであってもよい。計測用変圧器PT1により、電源側の電圧を示す1次側電圧値(V1m)を計測することができる。計測用変圧器PT1、計測用変圧器PT2に代えて、例えば抵抗分圧等の手段を用いて配電線1u,1v間の電圧を検出してもよい。
【0033】
負荷時タップ切換器3は、調整変圧器2の巻線20のタップt1~t3を切り換えるための6つの切換スイッチThA,ThB,ThC,Th1,Th2,Th3を有する。タップ切換器の構成は図1に示すものに限定されず、例えば、直列変圧器11,12に印加する電圧の極性を切り換える極性切換用タップ選択スイッチを含む構成であってもよい。
【0034】
負荷時タップ切換器3は、更に、上記各切換スイッチの切り換えを制御する制御部31と、制御部31からの駆動信号に基づいて各切換スイッチをオンに駆動する駆動部32とを有する。制御部31には、計測用変圧器PT1、計測用変圧器PT2の2次巻線、及び後述する変流器CT1(電流検出部に相当)の2次巻線が接続されている。制御部31と、計測用変圧器PT1、計測用変圧器PT2及び変流器CT1との接続、並びに駆動部32と各切換スイッチとの接続は、図示を省略する。
【0035】
制御部31は、例えばマイコン等により構成され、不図示のCPU(Central Processing Unit )及び、ROM又はRAM等の記憶部311を有する。ROM等の記憶部311に予め記憶された制御プログラムに従って、電圧の調整を制御する。一時的に発生した情報はRAMに記憶されるものであってもよい。記憶部311は、後述するタップ位置テーブル、及び基準電圧値(V2ref:2次側基準電圧値、V1ref:1次側基準電圧値)が記憶されているものであってもよい。制御部31は、経過時間を計測するためのタイマカウンタを有する。
【0036】
巻線20のタップt1は、保護用のヒューズ(不図示:以下同様)を介して切換スイッチThA及びTh1の一端に接続され、タップt2は、ヒューズを介して切換スイッチThB及びTh2の一端に接続され、タップt3は、ヒューズを介して切換スイッチThC及びTh3の一端に接続されている。切換スイッチThA,ThB,ThCの他端同士は
、接続線3uを介して直列変圧器11,12の1次側の端子u1及びv2に接続されている。切換スイッチTh1,Th2,Th3_Uの他端同士は、接続線3vを介して直列変圧器11,12の1次側の端子u2及びv1に接続されている。
【0037】
接続線3u及び3v間には、限流抵抗器RS及び矯絡用スイッチThSの直列回路と、トライアックTr1(半導体スイッチ)の両端とが接続されている。トライアックTr1の両端には点弧回路Tg1が接続されており、点弧回路Tg1にはトライアックTr1の両端電圧が供給されている。点弧回路Tg1の出力はトライアックTr1のゲートに接続されている。
【0038】
接続線3uにおけるトライアックTr1及び上記直列回路との接続点よりも出力側には、負荷時タップ切換器3が出力する単相交流の線電流を計測するために、変流器CT1の1次巻線が結合しているものであってもよい。CT1の1次巻線を接続線3vに結合させて、単相交流の線電流を計測するようにしてもよい。
【0039】
矯絡用スイッチThSは、タップt1~t3を切り換える過程で、限流抵抗器RSを介してタップ間を矯絡させておくために、タップ間への限流抵抗器RSの接続及び切り離しを行うためのものである。トライアックTr1は、過電流が検出されて各切換スイッチが保護される場合、又は負荷時タップ切換器3の運用が停止される場合に点弧される。この場合、直列変圧器11,12の1次側の端子u1,u2間及び端子v1,v2間が矯絡されるため、直列変圧器11,12の1次側が開放状態になることが防止される。
【0040】
変流器CT1を上述の位置に設けることにより、切換スイッチ及び矯絡用スイッチThSに流れる電流を計測することができる。トライアックTr1が点弧した場合は、変流器CT1により、直列変圧器11,12の1次巻線111,121からトライアックTr1に流れる電流を計測することができる。このため、例えば配電線1u,1vにおける短絡事故発生時に、配電線1u,1vに流れる最大電流を算出することができる。トライアックTr1に流れる電流を検出する必要がない場合は、変流器CT1を設ける位置は上述の位置に限定されず、接続線3uにおけるトライアックTr1との接続点よりも巻線20に近い位置であってもよい。本実施形態においは、トライアックTr1にて説明したがこれに限定されず、トライアックTr1に替えて、2つのサイリスタを逆並列に接続した回路を用いるものであってもよい。
【0041】
図2は、切換スイッチThAの構成例を示す回路図である。各スイッチの構成を、切換スイッチThAを例として説明する。他の切換スイッチ及び矯絡用スイッチThSについても同様である。切換スイッチThAは、アノードからカソードへ一方向に導通するサイリスタThAa及びThAbを逆並列に接続してなる。サイリスタThAaのアノード及びサイリスタThAbのカソードは、接続線3uに接続されている。サイリスタThAaのカソード及びサイリスタThAbのアノードは、調整変圧器2の巻線20のタップt1に接続されている。サイリスタThAa及びThAbのゲートは、駆動部32に接続されている。駆動部32からトリガ信号が各サイリスタのゲートに印加された場合、切換スイッチThAは双方向に導通する。切換スイッチThAを1つのトライアックで構成してもよい。
【0042】
図3は、タップ位置とオンにする切換スイッチ等との関係を定義するタップ位置テーブルの説明図である。当該タップ位置テーブルを用いて、オンにする切換スイッチの組み合わせについて説明する。切換スイッチの組み合わせは7通りあり、これらの組み合わせをタップ1からタップ7までのタップ位置で表す。例えば、タップ位置をタップ1にした場合、切換スイッチThC及びTh1がオンする。これにより、タップt1が接続線3vに接続され、タップt3が接続線3uに接続される。この場合、タップt1及びt3間の巻
数が2次巻線22の巻数に等しくなり、負荷時タップ切換器3が出力する電圧の大きさが最大となる。
【0043】
タップ2からタップ3までについては、タップ間の巻数が段階的に少なくなるようなタップの組み合わせに応じて、2つのタップを接続線3u及び3vに接続する切換スイッチが決まる。例えば、タップ位置をタップ3にした場合、切換スイッチThC及びTh2がオンする。これにより、タップt2が接続線3vに接続され、タップt3が接続線3uに接続される。この場合、タップt2及びt3間の巻数が0を除いて最小となり、負荷時タップ切換器3が出力する電圧の大きさが0を除いて最小となる。
【0044】
タップ位置をタップ4にした場合、切換スイッチThA及びTh1がオンする。これにより、タップt1が接続線3u及び3vに接続される。この場合、負荷時タップ切換器3が出力する電圧が0となる。これが、いわゆる素通しタップである。なお、素通しタップにするための切換スイッチは、切換スイッチThA及びTh1に限定されず、切換スイッチThB及びTh2でもよいし、切換スイッチThC及びTh3でもよい。
【0045】
タップ5からタップ7までについては、タップ間の巻数が段階的に多くなるようなタップの組み合わせに応じて、2つのタップを接続線3u及び3vに接続する切換スイッチが決まる。例えば、タップ位置をタップ7にした場合、切換スイッチThA及びTh3がオンする。これにより、タップt1が接続線3uに接続され、タップt3が接続線3vに接続される。この場合、タップt1及びt3間の巻数が2次巻線22の巻数に等しくなり、負荷時タップ切換器3が出力する電圧の大きさが最大となる。但し、タップ1の場合と比較して、出力される電圧の位相が反転する。
【0046】
前述のとおり、タップ切換によって接続線3u及び3vに接続される2つのタップに係るタップ間の巻数は、タップ位置に応じて決まる、換言すれば、タップ位置に応じて、調整変圧器2の巻数比が決まる。ここで言う巻数比は、タップ切換によって接続線3u及び3vに接続される2つのタップに係るタップ間の巻数に対する1次巻線21の巻数の比(巻数比)である。
【0047】
当該巻数比は、素通しタップを0とした際の偏差を定義する際に用いられる。上述のとおり、タップ位置が4(n:4)である場合、当該偏差は、0となる。タップ位置が7(n:7)である場合、偏差は、(Nt1+Nt2)/(Nt1+Nt2)となり、すなわち1となる。タップ位置が6(n:6)である場合、偏差は、Nt2/(Nt1+Nt2)となる。タップ位置が5(n:5)である場合、偏差は、Nt1/(Nt1+Nt2)となる。タップ位置が3(n:3)である場合、偏差は、-Nt1/(Nt1+Nt2)となる。タップ位置が2(n:2)である場合、偏差は、-Nt2/(Nt1+Nt2)となる。タップ位置が1(n:1)である場合、偏差は、-(Nt1+Nt2)/(Nt1+Nt2)となり、すなわち-1となる。ここで、Nt1は直列巻線20aの巻き数を示し、Nt2は分路巻線20bの巻き数を示す。Nt1とNt2とを加算した値を分母とし、Nt1、Nt2、又はNt1とNt2とを加算した値を分子とする分数にて、調整変圧器2における巻数比が定義される。
【0048】
タップ位置テーブルは、マイコン等にて構成される制御部31の記憶部311(ROM)に予め記憶されている。すなわち、記憶部311には、タップの切り替えにより定まるタップ位置と、当該タップ位置における調整変圧器の巻数比に関する値(巻数比を用いた偏差)とが関連付けられ、タップ位置テーブル(テーブル形式)として記憶されている。タップ位置を上げ下げする毎にタップ位置テーブルを参照して、オンにすべき切換スイッチを示す情報と巻数比とを読み出すことにより、タップ切換の処理が容易に行える。
【0049】
タップ位置テーブルは、管理項目(フィールド)として、例えば、タップ位置、切換スイッチ、素通しタップを0とした際の偏差、順送電状態でのG(n)による定数、及び逆送電状態でのG'(n)の定数を含む。タップ位置のフィールドには、切換スイッチの状態に応じたタップ位置の番号が格納される。本実施形態においては、タップ位置は、1から7までの値をとり、タップ位置の個数(タップ数)は7つ(7タップ)となる。
【0050】
切換スイッチのフィールドには、選択する交流スイッチ素子(切換スイッチ)の組み合わせが格納される。すなわち、対応するタップ位置において、オンとなる切換スイッチの番号が格納される。
【0051】
素通しタップを0とした際の偏差のフィールドには、対応するタップ位置における1次巻線と2次巻線の巻数比を用いた偏差が、格納される。当該偏差は、素通しタップを0とした際の偏差を意味し、更に、点弧回路の両端電圧となるOLTC電圧(Vo)を、負荷側の電圧を示す2次側電圧値(V2)にて除算した値(Vo/V2)に相当する
【0052】
順送電状態でのG(n)による定数のフィールドには、電圧調整装置が順送電状態において、対応するタップ位置における偏差を用いて導電関数(G(n))により算出される定数が格納される。逆送電状態でのG'(n)の定数のフィールドには、電圧調整装置が逆送電状態において、対応するタップ位置における偏差を用いて導電関数(G’(n))により算出される定数が格納される。導電関数の詳細については、後述する。
【0053】
次に、電源側からの交流電圧に加算又は減算される電圧について説明する。タップ位置がタップ1からタップ3までのいずれかである場合と、タップ位置がタップ5からタップ7までのいずれかである場合とでは、負荷時タップ切換器3が出力する電圧の位相が互いに反転する。ここでは、タップ位置がタップ4からタップ7までの間にある場合について説明する。
【0054】
タップ位置がタップ4からタップ7までの間にある場合、接続線3vに対する接続線3uの電圧は、配電線1vに対する配電線1uの電圧と同相になる。即ち、直列変圧器11,12の1次巻線111の端子u2に対する端子u1の電圧は、配電線1vに対する配電線1uの電圧と同相になる。また、1次巻線121の端子v2に対する端子v1の電圧は、配電線1vに対する配電線1uの電圧と逆相になる。従って、接続線3u及び3v間の電圧が直列変圧器11,12の1次巻線111,121に印加されることにより、2次巻線112,122から配電線1u,1vに配電される電圧が昇圧されて負荷側に配電される。
【0055】
以上のことから、タップ位置をタップ1からタップ7まで切り換えることにより、電源側からの単相交流を降圧した電圧から昇圧した電圧まで段階的に調整して負荷側に配電することができる。詳細は、後述するが、制御部31は、計測用変圧器PT1又は計測用変圧器PT2により、配電線1u,1v間の電圧を検出し、検出した電圧が、例えば不感帯を逸脱した場合に、タップ位置を上げ下げすることによって、配電線1u,1v間電圧が基準電圧に近づくように調整する。制御部31は、タップ位置を上げ下げするにあたり、例えば伝達関数を用いて目標タップ位置を決定するものであってもよい。
【0056】
図4は、順送電状態における制御ブロック線図である。電圧調整装置100が順送電状態である場合、電圧調整装置100の入力電圧(V1:電源側の電圧を示す1次側電圧値)と、出力電圧(V2:負荷側の電圧を示す2次側電圧値)とは、比例フィードバックにより本制御ブロック線図によって示される。この場合、当該比例フィードバックは、以下の(1)式にて示される。
V2=V1+K・Ns・Nt(n)・V2 (1)
但し、
K:直列変圧器11,12の個数(本実施形態では、2)
Ns:直列変圧器11,12の巻数比(Ns2/Ns1)
Nt(n):調整変圧器2における素通しに対する偏差
n:タップ位置
本実施形態のように直列変圧器11,12の個数(K)が2つである場合、V2=V1+2・Ns・Nt(n)・V2となる。
【0057】
順送電状態の伝達関数(G(n))は、以下の(2)式にて示される。
G(n)=V2/V1=1/(1-K・Ns・Nt(n)) (2)
本実施形態のように直列変圧器11,12の個数(K)が2つである場合、G(n)=V2/V1=1/(1-2・Ns・Nt(n))となる。伝達関数(G(n))は、Nt(n)を含む関数であり、当該Nt(n)は、タップ位置テーブルにて示すとおり、タップ位置(n)に応じて決定される値となる。すなわち、伝達関数(G(n))は、タップ数分(タップ位置(n)の個数分)の定数として、定義される。
【0058】
例えば、タップ位置が6(n=6)の場合、Nt(6)は、Nt2/(Nt1+Nt2)となる。従って、伝達関数にNt(6)の値が代入されることにより、G(6)=1/(1-K・Ns・Nt(6))=1/(1-K・Ns・{Nt2/(Nt1+Nt2)})となる。このように、伝達関数(G(n))は、タップ位置に応じて(本実施形態では、n:1から7)において、タップ数分(本実施形態では、7個)の定数として、定義される。これら定数それぞれは、タップ位置テーブルにて、タップ位置それぞれと関連付けて、保存(記憶)されているものであってもよい。
【0059】
電圧調整装置100が順送電状態である場合、入力電圧は電源側の電圧を示す1次側電圧値(V1)となり、出力電圧は負荷側の電圧を示す2次側電圧値(V2)となる。制御部31は、例えば、電源側の電圧を示す1次側電圧値(V1m)を計測する計測用変圧器PT1から、1次側電圧値(V1m)を取得する。当該1次側電圧値(V1m)は、例えば、直近1サイクルの実行値、一定時間の実行値平均、フィルタ計算した値等、1次側電圧データに基づくものであれば、いかなるデータであっても適用することができる。制御部31は、例えば、負荷側の電圧を示す2次側電圧値(V2m)を計測する計測用変圧器PT2から、2次側電圧値(V2m)を取得する。当該2次側電圧値(V2m)は、例えば、直近1サイクルの実行値、一定時間の実行値平均、フィルタ計算した値等、2次側電圧データに基づくものであれば、いかなるデータであっても適用することができる。
【0060】
制御部31は、以下の(3)式にて、取得(検出)した1次側電圧値(V1m)及び2次側電圧値(V2m)の比率(V2m/V1m)に相当する検出電圧比率(Gm)を算出する。
V2m/V1m=Gm≒G(n) (3)
すなわち、制御部31は、取得(検出)した2次側電圧値(V2m)を、当該2次側電圧値(V2m)の取得(検出)時点と実質的に同じ時点にて取得(検出)した1次側電圧値(V1m)にて除算した値(Gm:検出電圧比率)に対し、最も近接する定数(G(n):タップ位置にて決定する伝達関数の値)を、例えばタップ位置テーブルを参照することにより、特定するものであってもよい。
【0061】
図5は、逆送電状態における制御ブロック線図である。電圧調整装置100が逆送電状態である場合、負荷側の電圧(V2)が入力電圧となり、電源側の電圧(V1)が出力電圧となる。従って、電圧調整装置100の入力電圧(V2:負荷側の電圧を示す2次側電圧値)と、出力電圧(V1:電源側の電圧を示す1次側電圧値)とは、比例フィードバックにより本制御ブロック線図によって示される。
【0062】
この場合、当該比例フィードバックは、以下の(4)式にて示される。
V1=V2-K・Ns・Nt(n)・V2 (4)
但し、
K:直列変圧器11,12の個数(本実施形態では、2)
Ns:直列変圧器11,12の巻数比(Ns2/Ns1)
Nt(n):調整変圧器2における素通しに対する偏差
n:タップ位置
本実施形態のように直列変圧器11,12の個数(K)が2つである場合、V1=V2-2・Ns・Nt(n)・V2となる。
【0063】
逆送電状態の伝達関数(G'(n))は、以下の(5)式にて示される。
G'(n)=V1/V2=1-K・Ns・Nt(n)=1/G(n) (5)
本実施形態のように直列変圧器11,12の個数(K)が2つである場合、G'(n)=1-2・Ns・Nt(n)となる。従って、順送電と逆送電とでは、伝達関数が逆数(1/G(n)=G'(n))の関係となり、入出力の可逆性が確認でき、すなわちこれら伝達関数は可逆性を有するものとなる。
【0064】
電圧調整装置100が逆送電状態である場合、入力電圧は負荷側の電圧を示す2次側電圧値(V2)となり、出力電圧は電源側の電圧を示す1次側電圧値(V1)となる。制御部31は、例えば、負荷側の電圧を示す2次側電圧値(V2m)を計測する計測用変圧器PT2から、2次側電圧値(V2m)を取得する。当該2次側電圧値(V2m)は、例えば、直近1サイクルの実行値、一定時間の実行値平均、フィルタ計算した値等、2次側電圧データに基づくものであれば、いかなるデータであっても適用することができる。制御部31は、例えば、電源側の電圧を示す1次側電圧値(V1m)を計測する計測用変圧器PT1から、1次側電圧値(V1m)を取得する。当該1次側電圧値(V1m)は、例えば、直近1サイクルの実行値、一定時間の実行値平均、フィルタ計算した値等、1次側電圧データに基づくものであれば、いかなるデータであっても適用することができる。
【0065】
逆送電状態において、制御部31は、実施形態1における順送電状態と同様に、前述した(3)式にて、取得(検出)した1次側電圧値(V1m)及び2次側電圧値(V2m)の比率(V2m/V1m)に相当する検出電圧比率(Gm)を算出する。すなわち、制御部31は、取得(検出)した2次側電圧値(V2m)を、当該2次側電圧値(V2m)の取得(検出)時点と実質的に同じ時点にて取得(検出)した1次側電圧値(V1m)にて除算した値(Gm:検出電圧比率)に対し、最も近接する定数(G(n):タップ位置にて決定する伝達関数の値)を、例えばタップ位置テーブルを参照することにより、特定するものであってもよい。なお、(3)式は、以下の式(3)’にて示されるものであってもよい。
V1m/V2m=G’m≒G’(n) (3)’
(3)’式は、(3)式の逆数として展開したものであり、同義であることは、言うまでもない。これら定数(G(n)、G’(n))それぞれは、タップ位置テーブルにて、タップ位置それぞれと関連付けて、保存(記憶)されているものであってもよい。
【0066】
制御部31は、実施形態1における順送電状態と同様に、(3)式又は(3)’式を用いて、Gm又はG’mを算出する。制御部31は、算出したGm又はG’mに対し、最も近接する定数(タップ位置にて決定する伝達関数の値)を、例えばタップ位置テーブルを参照することにより、特定するものであってもよい。制御部31は、更に、特定した定数に対応するタップ位置をタップ位置テーブルに基づき導出するものであってもよい。
【0067】
図6は、制御部31の処理手順を示すフローチャートである。制御部31は、ROM等
の記憶部311に予め格納されている制御プログラム(プログラム製品)に従って、負荷時タップ切換器3の運用中に本処理を実行する。当該制御プログラム(プログラム製品)は、制御部31が読み込み可能な記憶媒体に記憶されているものであってもよい。又は、制御部31は、通信可能に接続される外部サーバから、制御プログラム(プログラム製品)を取得するものであってもよい。
【0068】
制御部31は、1次側電圧値及び2次側電圧値を取得する(S101)。制御部31は、例えば、電源側の電圧を示す1次側電圧値(V1m)を計測する計測用変圧器PT1から、1次側電圧値(V1m)を取得する。当該1次側電圧値(V1m)は、例えば、直近1サイクルの実行値、一定時間の実行値平均、フィルタ計算した値等、1次側電圧データに基づくものであれば、いかなるデータであっても適用することができる。更に、制御部31は、例えば、負荷側の電圧を示す2次側電圧値(V2m)を計測する計測用変圧器PT2から、2次側電圧値(V2m)を取得する。当該2次側電圧値(V2m)は、例えば、直近1サイクルの実行値、一定時間の実行値平均、フィルタ計算した値等、2次側電圧データに基づくものであれば、いかなるデータであっても適用することができる。制御部31は、電源側及び負荷側の双方の計測用変圧器PT1、PT2から出力される1次側電圧値及び2次側電圧値を、実質的に同じ時点(時刻)にて取得する。
【0069】
制御部31は、1次側電圧値と2次側電圧値との検出電圧比率を算出する(S102)。制御部31は、例えば、2次側電圧値(V2m)を、1次側電圧値(V1m)にて除算(V2m/V1m)することにより、2次側電圧値と1次側電圧値との検出電圧比率(Gm=V2m/V1m)を算出する。制御部31は、取得した1次側電圧値及び2次側電圧値と、これら電圧値にて算出した検出電圧比率とを、1次側電圧値及び2次側電圧値の取得時点(計測時点)と関連付けて、記憶部311に記憶する。記憶部311には、各計測時点(t)における1次側電圧値(V1m[t])、2次側電圧値(V2m[t])、及び検出電圧比率(Gm[t])それぞれが、経時ログデータとして記憶されるものとなる。後述するように、本実施形態におけるフローチャートに含まれる各処理は、所定の計測サイクルに応じて繰り返し実行(周期的に実行)されるため、当該経時ログデータは、計測サイクルに応じて記憶部311に順次、記憶されるものとなる。従って、制御部31は、記憶部311を参照することにより、現時点(t)よりも以前(t-1)に取得及び算出した1次側電圧値(V1m[t-1])、2次側電圧値(V2m[t-1])、及び検出電圧比率(Gm[t-1])を取得することができる。
【0070】
制御部31は、算出した複数の検出電圧比率における差分の絶対値を算出する(S103)。制御部31は、計測サイクルに応じた時間経過において、連続する2つの検出電圧比率による差分の絶対値を算出する。すなわち、連続する2つの検出電圧比率は、例えば、現時点にて取得した1次側電圧値(V1m[t])及び2次側電圧値(V2m[t])による検出電圧比率(Gm[t])と、現時点よりも以前となる直近に取得した1次側電圧値(V1m[t-1])及び2次側電圧値(V2m[t-1])による検出電圧比率(Gm[t-1])とに相当する。制御部31は、連続する2つの検出電圧比率(Gm[t]、Gm[t-1])による差分の絶対値(ΔGm[t]=|Gm[t]-Gm[t-1]|=|(V2m[t]/V1m[t])-(V2m[t-1]/V1m[t-1])|)を算出する。制御部31は、算出した絶対値(ΔGm[t])を、現時点にて取得した1次側電圧値(V1m[t])及び2次側電圧値(V2m[t])の取得時点を関連付けて記憶部311に記憶するものであってもよい。
【0071】
制御部31は、算出した差分の絶対値が、予め定められた閾値よりも大きいか否かを判定する(S104)。制御部31は、算出した差分の絶対値(ΔGm[t])が、予め定められた閾値(Gmth:判定閾値)よりも大きいか否かを判定する。閾値(Gmth:判定閾値)は、記憶部311に予め記憶されており、制御部31は、記憶部311を参照することにより、閾値を取得するものであってもよい。閾値(Gmth:判定閾値)は、例えば、
零、又は零よりも大きい値ととして予め定められている。閾値(Gmth:判定閾値)は、電圧調整装置の製品特性、仕様型式、設置形態又は運用環境情報に応じた実績値にて決定されるものであってもよい。算出した差分の絶対値(ΔGm[t])の元データとなる検出電圧比率(Gm[t]、Gm[t-1])は、タップの切り換えにて決定されるタップ位置に対応する前記調整変圧器の巻数比(n)による偏差を含む伝達関数(G(n))に対応しているため、タップ切換の有無の判定(タップ切換を検出)を行うことができる。当該伝達関数(G(n))は可逆性を有し、順送電状態(伝達関数:G(n))においてのみならず、逆送電状態(伝達関数:G'(n))においても適用(1/G(n)=G'(n))することができるため、制御部31は、順送電状態及び逆送電状態の双方の状態において、タップ切換の有無の判定(タップ切換を検出)を行うことができる。
【0072】
閾値よりも大きい場合(S104:YES)、制御部31は、タップ切換が行われたと判定する(S105)。制御部31は、算出した差分の絶対値(ΔGm[t])が、閾値(Gmth:判定閾値)よりも大きい場合(ΔGm[t]>Gmth)、タップ切換が行われたと判定する。
【0073】
閾値よりも大きくない場合(S104:NO)、すなわち閾値以下である場合、制御部31は、タップ切換が行われていないと判定する(S1041)。制御部31は、算出した差分の絶対値(ΔGm[t])が、閾値(Gmth:判定閾値)よりも大きくない場合、すなわち閾値以下である場合(ΔGm[t]≦Gmth)、タップ切換が行われていないと判定する。
【0074】
制御部31は、所定期間が経過したか否かを判定する(S106)。制御部31は、計測サイクルに対応する所定期間が経過したか否かを判定する。制御部31は、内包する時計機能等を用いて、例えば、前回取得した1次側電圧値及び2次側電圧値を取得時点から、所定期間が経過したか否かを判定する。当該計測サイクル、すなわち1次側電圧値及び2次側電圧値を取得するにあたってのサンプリング周期は、記憶部311に記憶されている。
【0075】
所定期間が経過していない場合(S106:NO)、制御部31は、再度S106を実行すべくループ処理を行う。これにより、制御部31は、前回取得した1次側電圧値及び2次側電圧値の取得時点から、所定期間が経過するまでの間、待機処理を行うものとなる。
【0076】
所定期間が経過した場合(S106:YES)、制御部31は、再度S101を実行すべくループ処理を行う。これにより、1次側電圧値及び2次側電圧値を取得し、算出した検出電圧比率に基づきタップ切換の検出を行う処理を、計測サイクルに応じて周期的に実行することができる。
【0077】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0078】
特許請求の範囲に記載されている複数の請求項に関して、引用形式に関わらず、相互に組み合わせることが可能である。特許請求の範囲では、複数の請求項に従属する多項従属請求項が記載されている。特許請求の範囲では、多項従属請求項に従属する多項従属請求項は記載されていないが、多項従属請求項に従属する多項従属請求項を記載してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1u,1v 配電線、 100 電圧調整装置、 11,12 直列変圧器、 111,121 1次巻線、 112,122 2次巻線、 u1,u2,v1,v2 端子 200 負荷時タップ切換変圧器、 2 調整変圧器、 20 巻線、 20a 直列巻線、 20b 分路巻線、 21 1次巻線、 22 2次巻線、 t1,t2,t3 タップ、 3 負荷時タップ切換器、 31 制御部(マイコン)、 311 記憶部、
32 駆動部、 Th1,Th2,Th3,ThA,ThB,ThC 切換スイッチ、
ThAa,ThAb サイリスタ、 3u,3v 接続線、 ThS 矯絡用スイッチ、 RS 限流抵抗器、 PT1,PT2 計測用変圧器、 CT1 変流器、 Tr1
トライアック、 Tg1 点弧回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6